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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-119734(P2015-119734A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】含浸食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/00 20060101AFI20150605BHJP
   A23G 1/00 20060101ALI20150605BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20150605BHJP
   A23G 3/50 20060101ALI20150605BHJP
【FI】
   A23L1/00 Z
   A23G1/00
   A23G3/00 102
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-69223(P2015-69223)
(22)【出願日】2015年3月30日
(62)【分割の表示】特願2011-507262(P2011-507262)の分割
【原出願日】2010年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2009-87254(P2009-87254)
(32)【優先日】2009年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】藤原 成一
(72)【発明者】
【氏名】▲くわ▼野 豊
(72)【発明者】
【氏名】市川 文登
(72)【発明者】
【氏名】黒須 充春
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB04
4B014GE01
4B014GP27
4B014GY01
4B035LC01
4B035LC03
4B035LE20
4B035LG12
4B035LG57
4B035LP25
4B035LP55
(57)【要約】
【課題】固形可食物に含浸した液状食品の風味が良好でありながらも、含浸食品の食感が硬くなく、しかも固形可食物と液状食品の一体感が達成された含浸食品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】35℃における粘度が10000〜100000mPa・sである液状食品が固形可食物に含浸した含浸食品は、液状食品の風味が良好でありながらも、含浸食品の食感が硬くなく、しかも固形可食物と液状食品の一体感が達成される。上記含浸食品は、密閉系内において、液状食品に固形可食物を接触させた状態で系内を加圧し、その後系内の圧力を大気圧まで戻すことを特徴とする含浸食品の製造方法により製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
35℃における粘度が50000〜100000mPa・sである液状食品が固形可食物に含浸した含浸食品であって、切断平面において、液状食品が浸透していない部分の面積が切断平面全体の面積に占める割合が8%以下である含浸食品。
【請求項2】
切断平面において、液状食品が浸透していない部分の面積が切断平面全体の面積に占める割合は、1.6%以下である請求項1に記載の含浸食品。
【請求項3】
固形可食物に含浸した液状食品の重量が含浸食品全体の重量に占める割合は、40〜80%である請求項1または2に記載の含浸食品。
【請求項4】
固形可食物が焼き菓子、膨化食品または凍結乾燥食品である請求項1〜3のいずれか一項に記載の含浸食品。
【請求項5】
液状食品がチョコレートである請求項1〜4のいずれか一項に記載の含浸食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質の固形可食物に液状食品が含浸し、且つ適度に内部に空隙を有する食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質の固形可食物、例えば、焼き菓子、乾燥食品、肉、野菜、果実等の凍結乾燥食品を、減圧処理する前後または減圧状態で液状食品と接触させて、食品中に液状食品を含浸させる事により得られる含浸食品やその製造方法が提案されている(特許文献1〜3)。しかし、これらの方法では、例えば、厚みのある固形可食物に常温で固化する液状食品を含浸した場合、可食物の空隙が固化した液状食品で充填されるため、非常に硬い食感となってしまい好ましくない場合がある。そこで減圧度を小さくして含浸を行うと、液状食品が固形可食物の内部の浅い部分までしか到達せず、中心部まで到達しないために固形可食物と液状食品の一体感が損なわれてしまう。
【0003】
また、1回目の減圧処理により多孔質の固形可食物に液状食品を含浸させた後、固形可食物を液状食品に埋没させることなく再度減圧処理することで、固形可食物内部深くまで液状食品が含浸されていながら内部の液状食品が適度に押し出された含浸食品及びその製造方法が提案されている(特許文献4)。
【0004】
しかし、この方法では、例えば液状食品の粘度が高い場合、固形可食物内部に液状食品を十分含浸させることができない場合がある。また、仮に1回目の減圧処理により固形可食物内部まで液状食品を含浸できたとしても、2回目の減圧処理で十分な量の液状食品を押し出すことができない場合があるため、例えば厚みのある固形可食物に常温で固化する液状食品を含浸させた場合、食感が硬くなりすぎる場合がある。そこで液状食品の粘度を下げるために各種配合調整を行なうと、目標量の液状食品を押し出すことはできるが、液状食品の風味が弱くなってしまい好ましくない。さらに、減圧処理を2回繰り返す必要があるため、工程が複雑になるというデメリットもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO97/47207号公報
【特許文献2】特開平10−150917号公報
【特許文献3】特開2001−238612号公報
【特許文献4】特開2008−5745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、固形可食物に含浸した液状食品の風味が良好でありながらも、含浸食品の食感が硬くなく、しかも固形可食物と液状食品の一体感が達成された含浸食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、比較的粘度が高い液状食品が固形可食物の内部中心部まで含浸し、且つ適度に内部に空隙を有する含浸食品は、含浸した液状食品の風味が良好でありながらも、食感が硬くなく、しかも固形可食物と液状食品の一体感が達成されるものであることを見出した。
【0008】
また、液状食品の粘度が比較的高くても、液状食品に固形可食物を接触させた状態で加圧することによって一旦固形可食物の内部中心部まで液状食品を含浸させ、その後圧力を下げることで、一旦固形可食物の内部中心部まで含浸した液状食品が、固形可食物中心部に圧縮された空気の膨張する力で押し出されることにより、固形可食物内部に適度に空隙を有する好ましい食感をもった含浸食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の構成からなる。
(1) 35℃における粘度が10000〜100000mPa・sである液状食品が固形可食物に含浸した含浸食品。
(2) 固形可食物に含浸した液状食品の重量が含浸食品全体の重量に占める割合は、40〜80%である上記(1)に記載の含浸食品。
(3) 固形可食物が焼き菓子、膨化食品または凍結乾燥食品である上記(1)または(2)に記載の含浸食品。
(4) 液状食品がチョコレートである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の含浸食品。
(5) 切断平面において、液状食品が浸透していない部分の面積が切断平面全体の面積に占める割合は、8%以下である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の含浸食品。
(6) 密閉系内において、液状食品に固形可食物を接触させた状態で系内を加圧し、その後系内の圧力を大気圧まで戻すことを特徴とする含浸食品の製造方法。
(7) 上記(6)の製造方法において、系内の圧力を大気圧まで戻した後、液状食品に固形可食物を接触させない状態で系内を減圧し、その後系内の圧力を大気圧まで戻すことを特徴とする含浸食品の製造方法。
(8) 加圧時の最大圧力が絶対圧200kPa〜10130kPaである上記(6)または(7)に記載の含浸食品の製造方法。
(9) 減圧時の最低圧力が絶対圧2〜101kPaである上記(7)または(8)に記載の含浸食品の製造方法。
(10) 35℃における粘度が10000〜100000mPa・sである液状食品に固形可食物を接触させた状態で加圧して液状食品を固形可食物の内部まで含浸させ、その後圧力を大気圧まで戻すことにより固形可食物の内部に含浸された液状食品の一部を押し出して固形可食物の内部に空隙を作り出した、液状食品が固形可食物に含浸した含浸食品。
(11) 固形可食物が焼き菓子または膨化食品であり、液状食品がチョコレートであり、液状食品を含浸させた固形可食物の空隙率が10〜20%である、上記(10)に記載の含浸食品。
(12) 液状食品を固形可食物に含浸させる方法であって、密閉系内において、35℃における粘度が10000〜100000mPa・sである液状食品に固形可食物を接触させた状態で系内を加圧して液状食品を固形可食物の内部まで含浸させ、その後系内の圧力を大気圧まで戻すことにより固形可食物の内部に含浸された液状食品の一部を押し出して固形可食物の内部に空隙を作り出すことを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含浸食品によれば、比較的粘度が高い液状食品が固形可食物の内部中心部まで含浸しているので、含浸した液状食品の風味が濃厚である。また、本発明の含浸食品の好ましい態様によれば、さらに適度に内部に空隙を有するので、たとえ厚みがあっても食感が硬くなく、固形可食物と液状食品の一体感が達成される。
また本発明の含浸食品の製造方法によれば、前記比較的粘度が高い液状食品が固形可食物の内部中心部まで含浸し、且つ適度に内部に空隙を有する含浸食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】密閉系内においてヘッドスペースに圧縮気体を送りこむことによって行う加圧処理方法の模式図である。
図2】変形可能な密閉容器の中に固形可食物と液状食品を入れ、変形可能な容器の周りから圧縮気体や、圧縮液体で加圧する方法の模式図である。
図3】固形可食物を埋没させた液状食品を直接加圧する方法の模式図である。
図4】実施例4〜6の含浸食品の断面写真である。
図5】比較例2〜6の含浸食品の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において固形可食物とは、内部に多孔質の空隙を有する食品であればよく、特に限定されない。例えば、果実類、野菜類、魚介類、畜肉類、卵類、成型食品(各種原料を混合して成型されたもの)などの凍結乾燥品や、油で揚げたり、ペレットを熱風で膨化したり、原料をエクストルーダーによりクッキング・膨化して製造される膨化スナックなどの各種膨化食品、せんべい、あられ、おこし、かりんとう、ウエハース、クルトン、メレンゲ、ビスケット、パイ、クッキー、スポンジケーキなどの焼き菓子などが挙げられる。他にも、食パンやフランスパンなどのパン類、ドーナツ、ワッフル、凍り豆腐、麩などが挙げられる。
【0012】
本発明において、固形可食物に含浸させる液状食品とは、液体、溶液、スラリー、分散液、油系、水系、乳化物など形態を問わず、含浸時に流動性のある液状の可食物を全て含む。例えば液状食品は含浸食品中では固化していてもよい。したがって、液状食品はバター、マーガリン、チョコレート、グミ、キャンディーのように、常温では固体であっても、温度を調整することで液体として含浸処理できる物も含む。
【0013】
固形可食物に含浸させる液状食品として、例えば、オリーブオイル、サラダ油、バター、マーガリン等の食用油脂類、油脂類に固体(砂糖、カカオマス、茶葉、粉乳、凍結乾燥食品、チーズ乾燥物、各種乾燥粉体、各種スパイスなど)を分散させたスラリー液や油性クリーム、各種糖類からなる水飴およびそれらに各種増粘多糖類(寒天、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチンなど)を溶解させた溶液、醤油、味噌などの発酵調味料、コーヒーや茶の抽出物などの食品抽出物、ブランデー、ラム酒、蒸留酒、リキュールなどの酒類、果汁、ジュース、スープ、牛乳、ココアなどの飲料、コンデンスミルク、ヨーグルト、生クリームなどが挙げられる。
【0014】
本発明では、上記のような液状食品のうち、含浸処理時の粘度が10000〜100000mPa・sの比較的高粘度のものに有効であり、好ましくは含浸処理時の粘度が50000〜100000mPa・sの高粘度のものに特に有効である。高粘度の液状食品において、本発明の特長がいっそう明確となる。チョコレートにおいては35℃における粘度が10000〜100000mPa・sであると、風味を濃厚にできるので好ましい。
粘度は単一円筒型回転粘度計(B型粘度計)を用いて測定した場合の粘度を指す。
【0015】
本願において圧力(kPa)の数値は絶対圧の値を意味し、大気圧等の環境の圧力と意図して加えた圧力との和である。本願の圧力測定は1気圧の環境下で行ったものである。1気圧の環境下において、意図して圧力を加えない場合の圧力値は101kPaとなる。
【0016】
本願においてチョコレートとは広義に用いられ、日本国公正取引委員会認定のルールである「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」に拘束されない。すなわち、特定の温度以下において硬化する可食性油脂の連続層からなるマトリックスに、可食成分、例えばココアパウダーや、糖類、乳固形分などの微粉砕物を懸濁させた食品で、任意には各種の乳化剤や添加剤、香料などを添加してもよい。典型的には、スイートチョコレート、ミルクチョコレートやホワイトチョコレートがある。また、上記可食性油脂としてはココアバターに限定されず、ココアバター代用油脂として、動物や植物由来のテンパリング脂あるいはノンテンパリング脂、さらには当該代用油脂とココアバターの混合物を使用したチョコレートも本願発明のチョコレートに含まれる。
【0017】
(製造方法)
本発明の含浸食品の製造方法は、密閉系内において、液状食品に固形可食物を接触させた状態で系内を加圧し、その後系内の圧力を大気圧まで戻すことを特徴とする。接触には部分接触を含むが、好ましくは全体接触である。
本発明の含浸食品は、例えば上記の液状食品中に上記の固形可食物を完全に埋没させた状態で加圧し、加圧状態で一定時間保持(工程1)した後、大気圧に戻す(工程2)ことで得られる。さらに必要に応じて大気圧に戻した後に、固形可食物を液状食品に埋没させない状態で引き続き減圧し(工程3)、再び大気圧に戻し(工程4)てもよい。以下工程毎にさらに詳しく説明する。
【0018】
(工程1)
初めに行う加圧処理においては、固形可食物は液状食品中に完全に埋没した状態で行う必要はないが、固形可食物の一部が液状食品に埋没していないと、その部分へ液状食品が十分に含浸されないので、固形可食物は液状食品中に完全に埋没した状態で行うほうが好ましい。
液状食品に加圧することができれば、加圧方法は特に限定されない。加圧処理としては例えば、密閉系内においてヘッドスペースに圧縮気体を送りこむことによって行う方法(図1)、または、変形可能な密閉容器の中に固形可食物と液状食品を入れ、変形可能な容器の周りから圧縮気体や、圧縮液体で加圧する方法(図2)、または、固形可食物を埋没させた液状食品を直接加圧する方法(図3)のいずれで行ってもかまわない。
【0019】
この加圧処理により、固形可食物の表面から内部中心に向かって液状食品が含浸されると同時に、もともと固形可食物内部に存在していた空気は内部中心部分に向かって圧縮される。また、液状食品にかける圧力が大きいほど、液状食品を固形可食物の中心近くまで含浸させることができる。液状食品の粘度が高い場合や、固形可食物の組織が緻密な場合や、固形可食物の体積が大きい場合には、固形可食物の中心付近まで液状食品を含浸しにくくなる傾向にあるが、適宜加圧の強さを強めることにより、中心付近まで含浸させることが可能である。好ましくは加圧時の最大圧力は、絶対圧200kPa〜10130kPaであり、固形可食物と液状食品の組み合わせに応じて選択されて良い。
一方、従来の減圧法により液状食品を含浸させる方法では、絶対真空付近まで減圧したとしても最大101.3kPaの差圧しか生じないため、前述のような含浸しにくい条件では中心付近まで含浸させることができない場合がある。
工程1においては、所定の圧力に到達後、速やかに次の工程2に進んでもよく、あるいは、所定の圧力を一定時間維持した後工程2に進んでもよい。
【0020】
(工程2)
加圧後に大気圧に戻す工程は、圧縮気体や圧縮液体を介して加圧を行なっている場合はそれらの圧力を開放することにより行なう。また、液状食品を押圧体で直接加圧している場合は、押圧体の圧力を開放することにより行なう。大気圧に戻す工程は、固形可食物を液状食品に埋没させた状態のまま行なってもよく、あるいは液状食品に接触しない状態で行なってもよい。いずれの方法においても、固形可食物の中心部分付近まで圧縮された空気が大気圧に戻る際に膨張し、含浸された液状食品の一部を押し出す。これにより、固形可食物内部に適度な空隙を有する含浸食品を得ることができる。この固形可食物中心部分に圧縮された空気が膨張する力は、加圧した圧力の大きさに伴い増加してくる。液状食品の粘度が高い場合や、固形可食物の組織が緻密な場合や、固形可食物の体積が大きい場合には、液状食品を押し出しにくくなる傾向にあるが、加圧の強さを高めることで、液状食品を押し出すことが可能である。なお、大気圧に戻す際の速度については、あまり急激に加圧状態から大気圧に戻すと、固形可食物が崩壊してしまうことがあるため、適宜速度の調節は必要である。一方、2度減圧により液状食品を押し出す方法(特許文献4)では、絶対真空付近まで減圧したとしても最大101.3kPaの差圧しか生じないため、前述のような押し出しにくい条件下では、液状食品を十分押し出すことができない。
【0021】
(工程3)
工程2に引き続き、必要に応じて、固形可食物を液状食品に埋没させない状態で絶対圧2〜101kPaに減圧してもよい。
これにより、工程2で生じた空隙に存在する空気が膨張することで、固形可食物中の液状食品を更に押し出すことが可能である。減圧のレベルを調整することで、押し出される液状食品の量をコントロールすることができ、仕上がりの食感や風味をコントロールすることができる。
【0022】
(工程4)
その後、再度大気圧に戻すことで、工程2終了時より更に空隙の多い含浸食品を得ることができる。
【0023】
本発明の製造方法は最初の工程で加圧することを特徴とする。先に減圧してから加圧する方法もあるが、その場合には固化する温度が高めの液状食品は含浸操作においてあまり温度を低くできない。そのため減圧時に沸騰するような液状食品を扱う場合に最初に減圧すると、泡が立ってうまく含浸されないが、本発明の方法であればそのような問題は起こらない。また本発明の製造方法において減圧処理を行わない場合には、低沸点の香気成分の散逸が抑えられる。
【0024】
上記操作によって得られた含浸食品を冷却して、含浸させた液状食品を固化させてもよい。また、必要に応じて、被覆やトッピングなどの公知の方法で更に加工を施してもよい。
【0025】
本発明の別の実施形態に係る、液状食品が固形可食物に含浸した含浸食品は、35℃における粘度が10000〜100000mPa・sである液状食品に固形可食物を接触させた状態で加圧して液状食品を固形可食物の内部まで含浸させ、その後圧力を大気圧まで戻すことにより固形可食物の内部に含浸された液状食品の一部を押し出して固形可食物の内部に空隙を作り出すことを特徴とする。適度な空隙を作り出すことで、好ましい食感が達成される。上記含浸食品は、固形可食物が焼き菓子または膨化食品であり、液状食品がチョコレートであり、液状食品を含浸させた固形可食物の空隙率が10〜20%であることが好ましい。空隙率は、15〜20%であることがより好ましい。固形可食物が焼き菓子または膨化食品であり、液状食品がチョコレートである場合、空隙率が上記範囲内であると好ましい食感が得られる。
【0026】
また、本発明に係る、液状食品を固形可食物に含浸させる方法は、密閉系内において、35℃における粘度が10000〜100000mPa・sである液状食品に固形可食物を接触させた状態で系内を加圧して液状食品を固形可食物の内部まで含浸させ、その後系内の圧力を大気圧まで戻すことにより固形可食物の内部に含浸された液状食品の一部を押し出して固形可食物の内部に空隙を作り出すことを特徴とする。前述したように、加圧処理により、粘度が10000〜100000mPa・sである液状食品でも固形可食物の内部中心付近まで含浸させることが可能である。また、その後の大気圧まで戻す処理により、含浸された液状食品の一部が押し戻され、固形可食物内部に適度な空隙を有する含浸食品が得られる。
【0027】
(測定方法)
本願発明の含浸食品の切断平面において、液状食品が浸透していない部分(未到達な部分)の面積が切断平面全体の面積に占める割合は、どこを切っても8%以下であることが、固形可食物と液状食品の一体感を達成するのに好ましい。液状食品が浸透していない部分未到達な部分の面積の測定方法は試験例1による。
【0028】
本願発明において、含浸された液状食品の重量が含浸食品全体の重量に占める割合は、液状食品の比重、固形可食物のかさ比重等によって適宜変化するが、特にチョコレートもしくは油性クリームを焼き菓子や膨化スナックや凍結乾燥品に含浸させた場合は、40〜80%であると、固形可食物と液状食品双方の特長が生かされ、好ましい食感と風味を有する食品となる。なお、含浸食品に占める液状食品の重量比率の求め方は試験例2による。
【0029】
本願発明における粘度の測定は、B型粘度計を用い、ローターNo.6、測定回転数4rpmにて行った。
本願発明における食品内部の空隙率の測定方法は試験例3による。
本願発明における破断強度の測定方法は試験例4による。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(焼き菓子調製工程)
鶏卵230重量部、砂糖170重量部、乳化油脂90重量部、乳化剤3重量部、水150重量部、薄力粉300重量部、油脂30重量部をよく混合し、水種生地を得た。これを金属製の型に流し込み、180℃のオーブンで、20分焼成後、更に100℃で1時間乾燥し、15mm×10mm×50mmの焼き菓子を得た。
【0031】
(チョコレート生地調製工程)
また、カカオマス190重量部、砂糖370重量部、粉乳160重量部、ココアバター280重量部、乳化剤5重量部の配合で、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は15000mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合した。
【0032】
(含浸工程)
この生地を35℃に維持したまま上記焼き菓子を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器の空間に圧縮空気を送り込むことで絶対圧301kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、大気圧まで減圧した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0033】
実施例2
実施例1において、加圧条件を絶対圧501kpaにする以外は同様にして、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0034】
実施例3
実施例1において、加圧条件を絶対圧701kpaにする以外は同様にして、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0035】
比較例1
実施例1と同じ焼き菓子とチョコレート生地を使用し、同様に、チョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合し、35℃を維持したまま上記焼き菓子を埋没させた物を密閉容器内に入れ、密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することで絶対圧11kpaに減圧後、大気圧に戻した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0036】
試験例1
実施例1〜3、および比較例1において、最終的に得られた含浸物各10個の中心部分において平面で2等分に切断し、断面をデジタルカメラで撮影した。その後、画像を画像処理ソフトウエアimageJ(サンマイクロ・システムズ社製)を用い、色の違いにより、チョコレートが未到達な部分の面積を測定し、断面積全体に占める割合を計算した(表1)。実施例1〜3の比較により、加圧が大きくなれば、チョコレート生地が未到達な部分の大きさが小さくなっていた。また、実施例3および比較例1は、チョコレート生地が未到達部分の面積がほぼ同程度に小さかった。
【0037】
試験例2
実施例1〜3、および比較例1において、含浸前の焼き菓子の重量と、含浸後の含浸物各10個の重量を測定することで、含浸されたチョコレート生地の重量が含浸物の重量に占める割合を計算した。実施例1〜3の比較により、加圧が大きくなれば、チョコレート生地が多く含浸されていた。更に、実施例3と比較例1の比較により、実施例3と比較例1はチョコレート生地未到達面積がほぼ同程度でありながら、比較例1の方がチョコレート生地が多く含浸されていた(表1)。
【0038】
試験例3
実施例3および比較例1において空隙率を調べるため、以下のような試験を行なった。まずサラダ油を入れたメスシリンダーに、得られた含浸物を完全に埋没させることで、含浸物の体積を測定した。この含浸物をサラダ油から引き上げ、周りに付着したサラダ油を十分にティッシュで拭き取った後、乳鉢で、細かく砕いた。これを、サラダ油を入れたメスシリンダーに入れ、減圧により(絶対圧8kPa到達後1分間保持して大気圧に戻す)細かい気泡を脱気することで、含浸物の空隙以外の体積を測定し、計算により含浸物全体の体積に占める空隙率を得た。空隙率の値は含浸物各10個の平均値である。実施例3の方が、比較例1よりも空隙率が大きかった(表1)。
【0039】
試験例4
実施例1〜3、および比較例1において、得られた含浸物の破断強度を測定した。レオメーター(株式会社レオテック製,FUDOH RTC−3010D−CW)を使用し、テーブル上に8mm間隔の支持台をおき、その上に含浸物を置いて、含浸物の長手方向中央部分上部から刃先角度が40度のプランジャーがあたるようテーブルを2cm/分で上昇させ、破断するまでにかかった最大応力を測定した。測定値は含浸物各10個の平均値である。実施例1〜3の比較から、加圧値が大きくなれば、破断強度が大きくなった。また、実施例3よりも比較例1の方が、破断強度が大きかった(表1)。
【0040】
【表1】
【0041】
以上より、加圧処理において圧力を強めることで、焼き菓子中心付近までチョコレートを到達させることが可能であった。また、減圧処理により焼き菓子にチョコレートを同程度に浸透させたものに比べて、加圧処理品はチョコレートの重量割合が少なく空隙率が大きいため、食感が硬くないことがわかった。
【0042】
実施例4
実施例1の焼き菓子調製工程と同様にして、30mm×20mm×150mmの焼き菓子を得た。
また、カカオマス200重量部、砂糖420重量部、粉乳200重量部、ココアバター170重量部、乳化剤5重量部の配合で、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は55000mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
【0043】
このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合し、35℃を維持したまま上記焼き菓子を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器の空間に圧縮空気を送り込むことで絶対圧701kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、大気圧まで減圧した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0044】
実施例5
実施例4において、加圧条件を絶対圧2701kpaにする以外は同様にして、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0045】
実施例6
実施例5において、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却する前に、焼き菓子のみを再度密閉容器内に入れ、密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することにより絶対圧15kpaに減圧後、大気圧に戻した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0046】
比較例2
実施例4と同じチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合した。チョコレート生地を35℃に維持したまま実施例4と同じ焼き菓子を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することで絶対圧15kpaに減圧(1次減圧)後、大気圧に戻した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、この焼き菓子のみを再度密閉容器内に入れ、密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することで絶対圧4kpaに減圧(2次減圧)後、大気圧に戻した。その後、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0047】
比較例3
比較例2において、1次減圧を絶対圧9kpaとする以外は同様にして、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0048】
比較例4
比較例2において、1次減圧を絶対圧4kpaとする以外は同様にして、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0049】
比較例5
カカオマス170重量部、砂糖320重量部、粉乳140重量部、ココアバター370重量部、乳化剤5重量部の配合で、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は6300mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合して、35℃を維持したまま、実施例4と同じ焼き菓子を埋没させて密閉容器内に入れた。密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することで絶対圧8kpaに減圧後、大気圧に戻した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0050】
比較例6
比較例5において、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃に冷却する前に、焼き菓子のみを再度密閉容器内に入れ、密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することで絶対圧15kpaに再度減圧(2次減圧)後、大気圧に戻した。その後、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。
【0051】
試験例5
実施例4〜6、および比較例2〜6において、試験例1と同様の方法を用いて、チョコレート未到達部分の面積が断面積全体に占める割合を計算した(表2)。その時撮影した断面の写真を図4図5に示す。チョコレート生地の粘度が55000mPa・sである実施例4〜6および比較例2〜4において、実施例4ではチョコレート生地が未到達である部分が存在したが、加圧条件を上げた実施例5および6ではほぼ存在しなかった。しかし、減圧処理を2回行なう比較例2〜4は、絶対圧を現実的な限界値まで下げているにもかかわらず、いずれもチョコレート生地が未到達である部分が多く存在した。一方、チョコレート生地の35℃における粘度が6300mPa・sである比較例5および6では、共にチョコレート生地が未到達である部分がほぼ存在しなかった。
【0052】
試験例6
実施例4〜6、および比較例2〜6において、含浸前の焼き菓子の重量と、含浸後の含浸物の重量を測定することで、含浸されたチョコレート生地の重量が含浸物の重量に占める割合を計算した。
実施例4と実施例5の比較により、加圧が大きくなれば、チョコレート生地が多く含浸されていた。
更に、実施例5と実施例6の比較により、加圧処理のあと減圧処理を行なった実施例6の方がチョコレート生地が押し出されて重量割合が少なくなっていた。
【0053】
チョコレート生地の35℃における粘度が6300mPa・sである比較例5および6において、比較例5は、チョコレート生地が最も多く含浸されていた。比較例6は、比較例5の操作の後に減圧処理することでチョコレート生地が押し出され、実施例5と同程度にチョコレート生地が含浸されていた(表2)。
【0054】
試験例7
実施例5、実施例6、および比較例5、比較例6において、得られた含浸物の破断強度を測定した。テーブル上の支持台の間隔を40mmにする以外は、試験例4と同様の方法で測定した。
実施例5と実施例6の比較から、加圧処理のあと減圧処理を行なった実施例6の方が破断強度が小さかった。チョコレート生地の粘度が6300mPa・sと低く、チョコレートの含浸量が最も多い比較例5の破断強度が最も大きく、比較例5の操作の後にさらに減圧処理を行った比較例6は実施例5と同程度の含浸量になっており、破断強度も実施例5と同程度であった(表2)。
【0055】
試験例8
同程度のチョコレート含浸量と同程度の破断強度である実施例5と比較例6の含浸物に対して、「どちらがチョコレート風味が強いか」および「どちらがおいしいか」を、チョコレートの専門パネラー5名にて調査したところ、100%の選択率で、実施例5の方がチョコレート風味が強く、おいしい、という結果を得た(表2)。
【0056】
試験例5〜8をまとめると、チョコレート生地の粘度が55000mPa・sと高い場合は、実施例5および実施例6のような、高い圧力で加圧する含浸方法の方が、従来の減圧による含浸方法より、焼き菓子中心部分までチョコレートを含浸させるには有利である。さらに、実施例6のように、加圧処理の後さらに減圧処理をすることで、チョコレートの重量割合と破断強度を調整し、風味や硬さといった品質をコントロールすることができる。
【0057】
一方、チョコレートの粘度が6300mPa・sといった低い場合は、従来の減圧方式である比較例5により焼き菓子中心付近までチョコレートを含浸できるが、全体に占めるチョコレートの重量割合が高いため破断強度が大きい硬い食感となる。従来の減圧処理であっても、減圧処理を2回繰り返す方法である比較例6により、実施例5と同程度のチョコレートの割合、破断強度を持つものを作ることはできたが、チョコレートの風味が弱く、おいしさにおいて劣る品質となった。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例7
粉乳280重量部、砂糖340重量部、ココアバター370重量部、乳化剤7重量部の配合で、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は13500mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
【0060】
このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合した。チョコレート生地を35℃に維持したまま、これにホールイチゴの凍結乾燥物を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器の空間に圧縮空気を送り込むことで絶対圧701kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、大気圧まで減圧した。その後、チョコレート生地からイチゴ凍結乾燥物を取り出し、そのまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸したイチゴ凍結乾燥物を得た。
【0061】
比較例7
実施例7と同じチョコレート生地、ホールイチゴ凍結乾燥物を使用し、同様にして得られたチョコレート生地にホールイチゴの凍結乾燥物を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することで絶対圧11kpaに減圧後、大気圧に戻した。その後、チョコレート生地からイチゴ凍結乾燥物を取り出し、そのまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸したイチゴ凍結乾燥物を得た。
【0062】
実施例7および比較例7で得られた含浸物において、チョコレート生地の全体に占める重量割合はそれぞれ、87%および90%であり、加圧処理を行なった実施例7の方がチョコレートの重量割合が低かったが、チョコレート生地は実施例7のほうがホールイチゴの中央付近まで含浸していた。そして、実施例7のほうが心地よい食感であった。
【0063】
実施例8
カカオマス340重量部、砂糖390重量部、粉乳65重量部、ココアバター200重量部、乳化剤8重量部の配合で、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地690重量部と生クリーム(乳脂肪分45%)280重量部、洋酒30重量部を35℃にて混合し、生チョコレート生地を作成した。この生チョコレート生地の35℃における粘度は15000mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
【0064】
実施例1で使用した15mm×10mm×50mmの焼き菓子を予め入れておいた容器に、この生チョコレート生地をモーノポンプ(兵神装備株式会社製)にて輸送し、容器を生チョコレート生地で満たして容器内にあったヘッドスペースの空気を大気圧下で完全に抜いた。その後更に、モーノポンプで生チョコレート生地を輸送することで、容器内生チョコレート生地の圧力を絶対圧1101kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、容器内の圧力を解放して大気圧まで減圧した。その後、生チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着した生チョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却固化させ、生チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。濃厚な味わいの生チョコレートが中心部まで含浸し、且つ適度に空隙を有する含浸食品が得られた。また、得られた含浸物全体に占める生チョコレートの重量割合は65.8%であった。
【0065】
実施例9
鶏卵230重量部、砂糖170重量部、乳化油脂90重量部、乳化剤3重量部、水150重量部、薄力粉300重量部、油脂30重量部をよく混合し、水種生地を得た。これを金属製の型に流し込み、180℃のオーブンで、20分焼成後、更に100℃で1時間乾燥し、15mm×10mm×50mmの焼き菓子を得た。
【0066】
カカオマス190重量部、砂糖370重量部、粉乳150重量部、ココアバター290重量部、乳化剤5重量部にて、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は13000mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
【0067】
このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合した。35℃を維持したまま上記焼き菓子を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器の空間に圧縮空気を送り込むことで絶対圧701kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、大気圧まで減圧した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。得られた物の切断平面におけるチョコレート生地の未到達部分の面積割合は7.7%であり、チョコレート生地が中心部まで含浸し、且つ適度に空隙を有する含浸食品が得られた。
【0068】
実施例10
実施例1の焼き菓子調製工程と同様にして、30mm×20mm×150mmの焼き菓子を得た。
また、カカオマス190重量部、砂糖370重量部、粉乳160重量部、ココアバター280重量部、乳化剤5重量部の配合で、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は15000mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
【0069】
このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合し、35℃を維持したまま上記焼き菓子を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器の空間に圧縮空気を送り込むことで絶対圧2701kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、大気圧まで減圧した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。得られた物の切断平面におけるチョコレート生地の未到達部分の面積割合は0.9%であり、チョコレート生地が中心部まで含浸し、且つ適度に空隙を有する含浸食品が得られた。
【0070】
実施例11
実施例1の焼き菓子調製工程と同様にして、30mm×20mm×150mmの焼き菓子を得た。
また、カカオマス225重量部、砂糖370重量部、粉乳265重量部、ココアバター133重量部、乳化剤7重量部の配合で、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は98000mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
【0071】
このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合し、35℃を維持したまま上記焼き菓子を埋没させて耐圧シリンダー内に入れ、ピストンを押し込んでシリンダー内の空間に存在した空気をリーク口から排出した後リーク口を閉じ、ピストンで直接チョコレート生地を押すことで絶対圧10130kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、大気圧まで減圧した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のみを再度密閉容器内に入れ、密閉容器内の空気を真空ポンプで排出することにより絶対圧3kpaに減圧後、大気圧に戻した。その後、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取り、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。濃厚な味わいのチョコレート生地が中心部まで含浸し、且つ適度に空隙を有する含浸食品が得られた。
【0072】
実施例12
コーングリッツ85重量部に水15重量部を添加して水分を15重量%に調整したスナック原料を、1軸エクストルーダー(葵精機製)のフィード口に投入し、バレル温度200℃、ローター回転数250rpmにてクッキングした。そして膨化スナック生地をエクストルーダーから吐出させ、底面の直径30mm×高さ100mmの略円柱状に切断し、乾燥して水分を2重量%まで下げて膨化食品を得た。
【0073】
また、カカオマス190重量部、砂糖370重量部、粉乳160重量部、ココアバター280重量部、乳化剤5重量部にて、常法によりチョコレート生地を作成した。このチョコレート生地の35℃の粘度は15000mPa・s(B型粘時計、No.6ローター、4rpm)であった。
【0074】
このチョコレート生地100重量部を35℃に温調し、チョコシードB(不二製油株式会社製)3重量部を混合した。35℃を維持したまま上記焼き菓子を埋没させて密閉容器内に入れ、密閉容器の空間に圧縮空気を送り込むことで絶対圧201kpaに加圧し、10秒間加圧状態を維持した後、大気圧まで減圧した。その後、チョコレート生地から焼き菓子を取り出し、焼き菓子のまわりに付着したチョコレート生地を十分に拭き取った後、15℃で冷却することでチョコレートを固化させ、チョコレート生地が含浸した焼き菓子を得た。チョコレート生地が含浸し、且つ適度に空隙を有する含浸食品であった。
【符号の説明】
【0075】
1…密封容器、2…液状食品、3…固形可食物、4…変形可能な密封容器。
図1
図2
図3
図4
図5