(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-120715(P2015-120715A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】アミノ酸組成物を含有する疲労防止剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20150605BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20150605BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20150605BHJP
A61K 31/4172 20060101ALI20150605BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20150605BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20150605BHJP
A23L 1/305 20060101ALN20150605BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20150605BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/401
A61K31/405
A61K31/4172
A61P21/00
A61P25/00 101
A23L1/305
A23L2/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-8128(P2015-8128)
(22)【出願日】2015年1月19日
(62)【分割の表示】特願2008-521230(P2008-521230)の分割
【原出願日】2007年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2006-163683(P2006-163683)
(32)【優先日】2006年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】有田 宏行
(72)【発明者】
【氏名】土田 博
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筋肉疲労と神経疲労との双方を同時に防止することが出来る疲労防止剤の提供。
【解決手段】特定種・特定量のアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含む、筋肉疲労と神経疲労との双方を同時に防止する疲労防止剤。好ましいアミノ酸種と量比としては、プロリン30〜200重量部;グリシン60〜140重量部;アラニン25〜260重量部;リジン40〜130重量部;トリプトファン20〜75重量部;ヒスチジン15〜40重量部を含むアミノ酸組成物。さらスレオニン35〜65重量部;チロシン15〜65重量部;アルギニン25〜45重量部を含むことが好ましく、またバリン30〜55重量部;ロイシン35〜60重量部;イソロイシン25〜45重量部を含むことが好ましいアミノ酸組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含む疲労防止剤:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部。
【請求項2】
さらに、以下のアミノ酸を含有する請求項1に記載の疲労防止剤:
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部。
【請求項3】
さらに、以下のアミノ酸を含有する請求項1又は2に記載の疲労防止剤:
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
【請求項4】
筋肉疲労および神経疲労の双方を同時に防止する、請求項1〜3のいずれかに記載の疲労防止剤。
【請求項5】
筋肉疲労が行動量測定によって評価されるものであり、神経疲労が血中バイオマーカー測定によって評価されるものである、請求項4に記載の疲労防止剤。
【請求項6】
行動量測定による評価において、非投与群の行動量を100とした場合に投与群の行動量(相対値)が110以上であり、かつ、血中バイオマーカー測定による評価において、非投与群の測定濃度を100とした場合に投与群の測定濃度(相対値)が96以下であり、筋肉疲労および神経疲労の防止効果を有すると評価される、請求項5に記載の疲労防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定種のアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含有する疲労防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会に生きる人間にとって「疲労」という現象は、既に単純には無視できない状況となりつつある。近年の調査結果によると、全国民の60%近くが疲労を感じており、そのうち40%弱の人々が6ヶ月以上継続する疲労を感じていると回答している。これを就労人口に換算すると3000万人近くの労働者が継続した疲労感を伴ったままで業務に従事していることになる。また、重篤な慢性疲労の場合には日常生活にも支障を来す場合もある。さらに、これらの疲労によって引き起こされる経済的損失は、回復措置に係る費用も含めると、数千億円から一兆円規模となると推測されている。
【0003】
疲労は、発現から分類した場合には急性疲労と慢性疲労とに大別され、前者は数分から数時間の単位で発生し、比較的短時間の休息で回復する場合が多い。後者は急性疲労が蓄積された場合に、回復せずに数日、長い場合には週間単位で回復するレベルのものであるが、上記のように長期に渡る場合には6ヶ月以上継続することもある。
【0004】
また、疲労が生じる部位から分類した場合には、肉体疲労と精神(神経)疲労とに大別される。但し、これらの疲労については筋肉疲労と神経疲労とで分類できるものではあるが、そのストレスから見た場合には、実際には常にお互いが複雑に関連して生じている。したがって、上記の単純な分類では対処方法は一義的には見いだせず、この点についての知見が得られれば、効果的な疲労回復措置を構築することにもつながる。
【0005】
疲労防止や回復の方法としては、入浴などの簡易的なストレス解消方法から、薬剤投与まで含めた治療方法が種々検討されている。これらの方法は、上記した筋肉疲労と神経疲労とのそれぞれの疲労を回復することを目的としているが、実際にはその双方を同時に満足するような方法は未だ得られていない。
【0006】
また、これらの方法においてはある種の薬剤又はサプリメントなどの投与を含んでいる場合がある。薬剤投与の場合には医者などによる診断や処方の対応が必要であることから煩雑である。一方、サプリメントとしての食餌による対応方法は、簡便であり日常生活に取り入れやすいこともあり、近年その研究開発・商品開発が進められており、サプリメント市場は拡大の一途をたどっている。例えば、クエン酸、ビタミン、コエンザイムQ10を初めとする疲労回復用サプリメントはコンビニエンスストア等でも市販されている。しかし、これらのサプリメントにおいても、上記した筋肉疲労と神経疲労とのそれぞれの疲労を回復する効果については明らかにされておらず、実際にはその双方を同時に満足するような明確な方法は未だ得られていない。
【0007】
一方、主に運動能力向上の目的で注目を集め商品名「VAAM」(明治乳業株式会社製)として知られているスズメバチの幼虫が分泌するだ液中に含まれる複数のアミノ酸組成物については、疲労回復にも効果があるとされており(例えば特許文献1)、さらにこの技術から派生した種々のアミノ酸組成物についても開発が進められている。例えば特許文献2には、筋肉自体の疲労ならびにそれに伴う倦怠感などの精神的疲労を速やかに回復するアミノ酸組成物が開示されている。
【0008】
また、BCAAとして知られているバリン、ロイシン、イソロイシンについては、これらにも運動能力向上としての用途以外に、中枢神経系の疲労(脳性疲労)予防若しくは脳疲労回復効果があるとして、これを用いた中枢神経系用疲労予防/回復剤が提供されている(特許文献3)。
【0009】
一方、いくつかの疲労に関する研究の結果から、疲労に伴いある種のアミノ酸の血中濃度の低下や特定組織への取り込みが行われることが知られている。例えば、非特許文献1には自転車による長時間負荷を与えたヒトにおいて、プロリン、グリシン、アラニンなどのアミノ酸が有意に消費され低下することが開示されている。
【0010】
また非特許文献2には運動時における炭水化物の補給の有無条件での血漿中成分についての濃度変化について検討が行われている。この文献ではグリシン、アラニン、リジン、スレオニン、ヒスチジンの血漿中濃度低下がみられ、特にヒスチジンの低下率が大きいことが示されている。
【0011】
非特許文献3にも運動時における給餌有無の系における各種血漿中成分の濃度変化についての研究結果が開示されている。ここでは特にトリプトファンの濃度低下率が大きいことが開示されている。
【0012】
その量が低下したそれぞれのアミノ酸についての運動や疲労現象との因果関係は未だ明確にはされていないが、エネルギー代謝サイクルにおいてこれらのアミノ酸が何らかの関わりがあり消費されているものと推測される。したがって、これらの濃度低下が見られるアミノ酸を補充することで疲労回復することは容易に想像される。しかし、肉体疲労、精神疲労後にこれらを単純に補充することでも容易には疲労回復することは無く、またこれらを事前に投与したとしても、疲労回復効果が得られるという事実は未だ知られていない。
【0013】
【特許文献1】特許第2518692号公報
【特許文献2】特開平8−198748号公報
【特許文献3】再表2002/034257号公報
【非特許文献1】G.アーボルグ等(G.Ahlborg et al),The Journal of Clinical Investigation,第53巻,1974年4月号,p.1080-1090
【非特許文献2】T.L.バザーレ等(T.L.Bazzare et al),Journal of the American College of Nutrition,1992年,第11巻,第5号,p.501-511
【非特許文献3】A.H.フォースランド等(A.H.Forslund et al),Am.J.Physiol Endocrinol Metab.,2000年,第278巻,p.857-867
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、これら従来のアミノ酸組成物は、運動能力の向上が主たる目的であり、抗疲労効果、疲労防止という観点からの検討については未だ不十分であった。また、特に疲労回復や予防についての効果を謳う技術もあるが、いずれも筋肉疲労と神経疲労との防止効果についての検討は不十分なものであり、未だ解決されたとは言い難い。さらに、これら従来のアミノ酸組成物は多種かつ多量のアミノ酸を組成物として供給しなければならず、必然的に高コストなものとなってしまう問題点が潜在している。
【0015】
本発明者等は、鋭意研究の結果、従来には無い組成と量比にてアミノ酸組成物を構成することで、従来不十分であった疲労防止効果を得ることを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、特定種類の特定量のアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含有する疲労防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は以下のアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含む疲労防止剤を提供する:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部。
【0017】
また、上記構成のアミノ酸組成物にさらに、以下のアミノ酸を含有する疲労防止剤が好ましい:
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部。
【0018】
また、上記構成のアミノ酸組成物にさらに、以下のアミノ酸を含有する疲労防止剤が好ましい:
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
【0019】
さらに本発明は、筋肉疲労および神経疲労の双方を同時に防止する、前記の疲労防止剤に関する。
また本発明は、筋肉疲労が行動量測定によって評価されるものであり、神経疲労が血中バイオマーカー測定によって評価されるものである、前記の疲労防止剤に関する。
さらに本発明は、行動量測定による評価において、非投与群の行動量を100とした場合に投与群の行動量(相対値)が110以上であり、かつ、血中バイオマーカー測定による評価において、非投与群の測定濃度を100とした場合に投与群の測定濃度(相対値)が96以下であり、筋肉疲労および神経疲労の防止効果を有すると評価される、前記の疲労防止剤に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の疲労防止剤に用いられる組成物は、従来には無い組成と量比によるアミノ酸組成物である。これにより、従来不十分であった疲労防止について高い効果を得ることが出来る。すなわち本発明により初めて、実際の筋肉疲労と神経疲労との双方を同時に防止することが出来る。
【0021】
本発明においては、その評価系として疲労時の行動量測定と疲労時の血中バイオマーカー測定との2種の評価系を特に用いて、それぞれを筋肉疲労と精神疲労の指標とした。その結果、本発明のアミノ酸組成物に関して特に両評価系における顕著な疲労防止効果を得ることが出来た。
【0022】
また本発明によれば、従来のアミノ酸組成物よりも少ない種類のアミノ酸で高い疲労防止効果を得ることが出来るために、調製に必要な原材料種が減り、工業的にも経済的にも高い効果を奏する。
【0023】
さらに、従来のアミノ酸組成物よりも少ない量のアミノ酸により高い疲労防止効果が得られることからも、工業的にも経済的にも高い効果を奏する。また、従来同等の効果を得るように調製した場合には、それぞれのアミノ酸の使用量が少なく、これを飲料等に適するように調製した場合には飲料として低容量化を計ることができ、特にスポーツドリンクなど携帯用飲料として有効なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に述べる個々の形態には限定されない。
【0025】
本発明の疲労防止剤に含まれるアミノ酸組成物としては、下記のアミノ酸を下記の量比で含むものが好ましい。
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部。
【0026】
上記組成のアミノ酸組成物には、下記のアミノ酸をさらに含有することが好ましい。
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部。
【0027】
また、上記組成のアミノ酸組成物には、下記のアミノ酸をさらに含有することが好ましい。
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
【0028】
本発明の疲労防止剤に含まれるアミノ酸組成物としては、好ましくは下記のアミノ酸を下記の量比で含むものである。
プロリン 40〜150重量部;
グリシン 75〜110重量部;
アラニン 30〜220重量部;
リジン 55〜95重量部;
トリプトファン 25〜65重量部;
ヒスチジン 20〜35重量部;
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部。
また、この9種のみのアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含む疲労防止剤が好ましい。
【0029】
さらに、本発明の疲労防止剤に含まれるアミノ酸組成物としては、好ましくは下記のアミノ酸を下記の量比で含むものである。
プロリン 40〜150重量部;
グリシン 75〜110重量部;
アラニン 30〜220重量部;
リジン 55〜95重量部;
トリプトファン 25〜65重量部;
ヒスチジン 20〜35重量部;
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
また、この9種のみのアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含む疲労防止剤が好ましい。
【0030】
また、本発明の疲労防止剤に含まれるアミノ酸組成物としては、好ましくは下記のアミノ酸を下記の量比で含むものである。
プロリン 40〜120重量部;
グリシン 60〜85重量部;
アラニン 25〜170重量部;
リジン 40〜75重量部;
トリプトファン 20〜50重量部;
ヒスチジン 20〜30重量部;
スレオニン 35〜55重量部;
チロシン 15〜55重量部;
アルギニン 25〜40重量部;
バリン 30〜40重量部;
ロイシン 35〜50重量部;
イソロイシン 25〜40重量部。
本発明においては、特に好ましくはこれら12種のみのアミノ酸からなるアミノ酸組成物を含む疲労防止剤である。
なお、上記構成のアミノ酸組成物においては、チロシンはさらに好ましくは35〜55重量部である。
【0031】
また本発明の疲労防止剤は、疲労時の行動量測定と疲労時の血中バイオマーカー測定との2種の評価系により、筋肉疲労および神経疲労の双方において疲労防止効果があると評価される。
【0032】
行動量測定による評価は、例えば、投与群(アミノ酸組成物を投与)と非投与群(コントロール群)との2つの群に対し、トレッドミルなどによって運動負荷を与え、2群の行動量をそれぞれ測定し、非投与群の行動量を100とした場合の投与群の相対的な行動量を算出して行った。投与群の行動量(相対値)が、100を越えた場合、好ましくは110以上、さらに好ましくは120以上、とくに好ましくは190以上の場合、投与したアミノ酸組成物は、筋肉疲労の防止効果を有すると評価できる。なお、投与群の行動量(相対値)は、数値が大きいほど筋肉疲労の防止効果が高いと評価できる。
【0033】
血中バイオマーカー測定による評価は、例えば、投与群(アミノ酸組成物を投与)と非投与群(コントロール群)との2つの群に対し、トレッドミルなどによって運動負荷を与え、一定時間経過後に採血し、2群の血中バイオマーカーの濃度をそれぞれ測定し、非投与群の測定濃度を100とした場合の投与群の相対的な測定濃度を算出して行った。任意の血中バイオマーカー(コルチゾール、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−10(IL−10)を含む)を指標とした場合、投与群の測定濃度(相対値)が100未満の場合、好ましくは96以下の場合、神経疲労の防止効果を有すると評価できる。
【0034】
とくにコルチゾールを指標とした場合、投与群の測定濃度(相対値)が、好ましくは95以下、さらに好ましくは80以下の場合、神経疲労の防止効果を有すると評価できる。またIFN−γを指標とした場合、投与群の測定濃度(相対値)が、好ましくは60以下、さらに好ましくは45以下の場合、神経疲労の防止効果を有すると評価できる。さらにIL−10を指標とした場合、投与群の測定濃度(相対値)が、好ましくは70以下、さらに好ましくは50以下の場合、神経疲労の防止効果を有すると評価できる。
なお、投与群の測定濃度(相対値)は、数値が小さいほど神経疲労の防止効果が高いと評価できる。
【0035】
本発明の疲労防止剤には上記アミノ酸の他に、必要に応じて、メチオニン(好ましくは0.3〜0.7モル%、更に好ましくは0.4〜0.6モル%)、アスパラギン酸(好ましくは0.1〜0.3モル%)、タウリン(好ましくは3モル%以下)、リン酸エタノールアミン(好ましくは2モル%以下)、シスチン(好ましくは0.5モル%以下)、β−アラニン(好ましくは1モル%以下)、γ−アミノ酪酸(好ましくは0.5モル%以下)、オルニチン又はエタノールアミン(好ましくは3モル%以下)、アンモニア(好ましくは2モル%以下)、1−メチルヒスチジン(好ましくは3モル%以下)、3−メチルヒスチジン(好ましくは1モル%以下)を含んでいてもよい。本発明に使用するアミノ酸組成物中のアミノ酸は、特にL−アミノ酸であることが好ましい。
【0036】
本発明で使用する各アミノ酸は、各々、単品で高純度のものが好ましい。例えば、「食品添加物公定書」に規定する純度以上のアミノ酸を使用する。また、これらのアミノ酸としては、その生理学的に許容し得る塩の形態のものも使用可能である。
【0037】
本発明のアミノ酸組成物を製造するにあたっては、市販の上記アミノ酸を上記の所定割合で混合すれば良い。また溶液として使用する場合にはこれを、蒸留水に溶解すれば良い。通常は粉末状で均一に混合して組成物としておき、使用時に蒸留水に溶解すれば良い。本発明の組成物を製造、保存する温度は特に限定されないが、室温以下で製造、保存することが好ましい。
【0038】
本発明の疲労防止剤の投与形態としては、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、溶液、シロップ剤、乳液等による経口投与をあげることができる。これらの各種製剤は、常法に従って本発明によるアミノ酸組成物に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
【0039】
本発明の疲労防止剤の主成分であるアミノ酸組成物は極めて安全性が高く、投与量は広範に設定することができる。一般的には、投与経路、ヒトを含む投与対象動物の年齢、体重、症状など、種々の要因を考慮して、適宜設定することができる。本発明はこれに限定されないが、好ましくは、有効成分として1g〜8g/kg/dayが適当である。
【0040】
本発明の組成物は、疲労を防止したい時に事前に投与し疲労防止剤として使用するばかりでなく、疲労を感じた時に事後的に投与して疲労回復剤としても使用でき、0.3〜6.0重量%溶液として、1日当たり100〜500mlを1〜3回投与すればよい。注射剤としては0.3〜6.0重量%溶液として1回あたり100〜400ml、好ましくは150〜300mlを投与すればよい。
また本発明の疲労防止剤は、経口投与又は非経口投与(筋肉内、皮下、静脈内、坐薬、経皮等)のいずれでも投与できる。
【0041】
本発明の疲労防止剤をその組成で含有する特定保健用食品等の特別用途食品とすることも可能であり、また本発明の疲労防止剤は食品組成物に含ませ、栄養機能食品等の機能性食品として直接摂取することにより、疲労防止効果を簡便に得ることができる。
【0042】
具体的には、食品組成物として使用する場合には、各種飲食品(牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、幼児用粉乳等食品、授乳婦用粉乳等食品、栄養食品等)に、本発明の疲労防止剤をその組成で添加し、これを摂取してもよい。さらに他の食品ないし食品成分と混合するなど、通常の食品組成物における常法にしたがって使用できる。また、その性状についても、通常用いられる飲食品の状態、例えば、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状ないし懸濁状のいずれでもよい。
【0043】
食品組成物として使用する場合に、その他の成分についても特に限定はないが、上記食品組成物に包含される、例えば飲食物には、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ−カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳清ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などが挙げられる。糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができ、合成品及び/又はこれらを多く含む食品を用いてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明を行うが、本発明は、これらの具体的な実施例に限定されない。
【0045】
マウス(雄、8週齢、C57BL/6N、飼育環境23±3℃で明暗12時間サイクル)を各群の体重が出来るだけ均一になるように割り付け、各群3〜4匹からなるサンプル群(実施例)とコントロール群(比較例)とに分けた。これらは絶食させずに、本発明の疲労防止剤又はコントロールとしての生理食塩水を強制経口投与した。投与後1時間後にトレッドミル試験(25m/minで60分)による運動負荷を与えた。
【0046】
なお、投与量はアミノ酸換算で500mg/kg体重(5%懸濁液を10μL/g体重にて投与)とした。ここで投与した本発明の疲労防止剤のアミノ酸組成を表1に示す(アミノ酸組成の数値は重量部にて示す)。
【0047】
[試験1](疲労時の行動量測定)
トレッドミルによる運動負荷付与後に行動量測定を行った。なお行動量としては、赤色ランプ点灯下で30分間に行動した道のりの合計を測定した。コントロール群(比較例1)を100としたときのそれぞれの実施例における行動量を示した。すなわち、数値が大きいほど筋肉疲労が少ないものと考えられる。
【0048】
[試験2](疲労時の血中バイオマーカー測定)
トレッドミル試験終了後一定時間経過後に採血し、血液中の免疫学的指標としてコルチゾール、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−10(IL−10)を測定した。コントロール群を100としたときのそれぞれの実施例における濃度を示した。すなわち、数値が小さいほど疲労感が低く、精神的疲労が少ないものと考えられる。
【0049】
なお、これらの評価方法は、大阪市立大学医学部生化学・分子病態学講座井上正康教授らが2005年の日本生化学会で発表した方法(演題:運動疲労における免疫応答システムの性差解析、生化学、2005年、第77巻、p.1056)に基づいて行った。
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の実施例1〜6の疲労防止剤においては、比較例1と比べ、トレッドミルによる運動負荷を与えた後にもさらに行動することが出来るという筋肉疲労の防止効果が高いことが分かる。特に、実施例5及び6においては非常に高い運動後の行動量を示している。
【0052】
また、血中バイオマーカー測定による結果では、本発明の実施例1〜6においては、コルチゾール、IFN−γ、IL−10の濃度上昇が著しく抑制されている。これら化合物は疲労感の上昇に比例して濃度が高くなるため、精神疲労の代替指標として評価することができる。即ち、本発明の実施例1〜6では精神疲労の防止効果においても高い効果を有することが分かる。さらに、この傾向は実施例5及び6においてより顕著に現れることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上記のように、本発明によるアミノ酸組成物を含んでなる疲労防止剤は、筋肉疲労と精神疲労との双方を同時に防止するという、高い疲労防止効果を提供することが出来る。また、従来のような運動能力などの向上を目的とするアミノ酸組成物と比較して、より少ない種類のアミノ酸種類からなる組成物であるため、調製に必要な原材料種が減り、工業的にも経済的にも優れた効果を奏する。したがって、産業上の利用価値は高いものである。
【手続補正書】
【提出日】2015年2月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸からなる疲労防止用アミノ酸組成物:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部。
【請求項2】
以下のアミノ酸からなる疲労防止用アミノ酸組成物:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部;
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部。
【請求項3】
以下のアミノ酸からなる疲労防止用アミノ酸組成物:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部;
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
【請求項4】
以下のアミノ酸からなる疲労防止用アミノ酸組成物:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部;
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部;
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の疲労防止用アミノ酸組成物を有効成分として含む、疲労防止剤。
【請求項6】
有効成分としての疲労防止用アミノ酸組成物が、1g〜8g/kg/dayの範囲で投与される、請求項5に記載の疲労防止剤。
【請求項7】
筋肉疲労および神経疲労の双方を同時に防止する、請求項5または6に記載の疲労防止剤。
【請求項8】
筋肉疲労が行動量測定によって評価されるものであり、神経疲労がコルチゾール、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−10(IL−10)から選択される血中バイオマーカー測定によって評価されるものである、請求項7に記載の疲労防止剤。
【請求項9】
行動量測定による評価において、非投与群の行動量を100とした場合に投与群の行動量(相対値)が110以上であり、かつ、血中バイオマーカー測定による評価において、非投与群の測定濃度を100とした場合に投与群の測定濃度(相対値)が96以下であり、筋肉疲労および神経疲労の防止効果を有すると評価される、請求項7または8に記載の疲労防止剤。
【請求項10】
以下のアミノ酸を混合する、疲労防止用アミノ酸組成物の製造方法:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部。
【請求項11】
以下のアミノ酸を混合する、疲労防止用アミノ酸組成物の製造方法:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部;
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部。
【請求項12】
以下のアミノ酸を混合する、疲労防止用アミノ酸組成物の製造方法:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部;
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
【請求項13】
以下のアミノ酸を混合する、疲労防止用アミノ酸組成物の製造方法:
プロリン 30〜200重量部;
グリシン 60〜140重量部;
アラニン 25〜260重量部;
リジン 40〜130重量部;
トリプトファン 20〜75重量部;
ヒスチジン 15〜40重量部;
スレオニン 35〜65重量部;
チロシン 15〜65重量部;
アルギニン 25〜45重量部;
バリン 30〜55重量部;
ロイシン 35〜60重量部;
イソロイシン 25〜45重量部。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の疲労防止剤用アミノ酸組成物を混合する、疲労防止剤の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2015年5月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉疲労および神経疲労の防止効果を有するアミノ酸組成物のスクリーニング方法であって、
アミノ酸組成物を投与した対象および非投与の対象の行動量を測定する工程、
アミノ酸組成物を投与した対象および非投与の対象における、コルチゾール、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−10(IL−10)から選択される血中バイオマーカーを測定する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
行動量測定による評価において、非投与群の行動量を100とした場合に投与群の行動量(相対値)が110以上である場合に、筋肉疲労の防止効果を有すると評価する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血中バイオマーカー測定による評価において、非投与群の測定濃度を100とした場合に投与群の測定濃度(相対値)が96以下である場合に、神経疲労の防止効果を有すると評価する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
行動量測定による評価において、非投与群の行動量を100とした場合に投与群の行動量(相対値)が110以上であり、かつ、血中バイオマーカー測定による評価において、非投与群の測定濃度を100とした場合に投与群の測定濃度(相対値)が96以下であり、筋肉疲労および神経疲労の防止効果を有すると評価する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アミノ酸組成物が、プロリン、グリシン、アラニン、リジン、トリプトファンおよびヒスチジンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アミノ酸組成物が、プロリン、グリシン、アラニン、リジン、トリプトファン、ヒスチジン、スレオニン、チロシンおよびアルギニンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アミノ酸組成物が、プロリン、グリシン、アラニン、リジン、トリプトファン、ヒスチジン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アミノ酸組成物が、プロリン、グリシン、アラニン、リジン、トリプトファン、ヒスチジン、スレオニン、チロシン、アルギニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アミノ酸組成物が、さらに、メチオニン、アスパラギン酸、タウリン、リン酸エタノールアミン、シスチン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、オルニチン、エタノールアミン、アンモニア、1−メチルヒスチジンおよび3−メチルヒスチジンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。