【解決手段】耐折り曲げ性試験装置は、フレキシブル回路基板を折り曲げる動作と、折り曲げられたフレキシブル回路基板を展開する動作とが可能な折り曲げ機構10と、フレキシブル回路基板を挟み込む挟み込み機構20と、折り曲げ機構10の動作と挟み込み機構20の動作とを組み合わせた一連の試験動作の内容の設定を可能にする動作設定部60と、動作設定部60によって設定された内容に従って折り曲げ機構10と挟み込み機構20を制御する動作制御部70とを備えている。
前記動作設定部は、更に、前記第1および第2の挟み込み動作時において前記フレキシブル回路基板に印加する荷重の大きさを設定可能であることを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験装置。
前記動作設定部は、更に、前記第1および第2の挟み込み動作時における前記ステージと接触子の間隔を設定可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験装置。
前記動作設定部は、更に、前記折り曲げ部における前記接触子の接触位置の往復移動の回数を設定可能であることを特徴とする請求項5記載のフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験装置。
前記第2の挟み込み動作では、前記フレキシブル回路基板のうち展開前に前記折り曲げ部であった部分における前記接触子の接触位置を変化させることを特徴とする請求項5または6記載のフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験装置。
前記動作設定部は、更に、前記フレキシブル回路基板のうち展開前に前記折り曲げ部であった部分における前記接触子の接触位置の往復移動の回数を設定可能であることを特徴とする請求項7記載のフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験装置。
前記折り曲げ機構は、前記フレキシブル回路基板において前記折り曲げ部となる部分を挟む2箇所のうちの一方を前記ステージに固定する固定部と、前記2箇所のうちの他方を支持する支持部と、所定の中心軸を中心として前記固定部に対して前記支持部を回転させる回転装置とを有し、
前記動作設定部は、更に、前記折り曲げ動作時に前記回転装置によって前記支持部を回転させる角度を設定可能であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1ないし
図5を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験装置(以下、単に、試験装置と記す。)の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る試験装置の正面図である。
図2は、
図1に示した試験装置の一部を示す斜視図である。
図3は、
図1に示した試験装置の一部を示す正面図である。
図4は、
図1に示した試験装置の一部を示す側面図である。
図5は、
図1に示した試験装置のステージを示す平面図である。
【0026】
本実施の形態に係る試験装置1は、折り曲げられるフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性の試験を行うための装置である。この試験装置1は、複数のフレキシブル回路基板に対して同時に試験を行うことが可能である。以下、主に、試験装置1が3つのフレキシブル回路基板に対して同時に試験を行う場合を例にとって説明する。
図1ないし
図4に示したように、試験装置1は、上面2aを有するベース2と、このベース2の上面2aの一部から上方に延びる支柱部3と、試験装置1の一部を収容する筐体4と、制御装置5とを備えている。なお、
図2ないし
図4では、筐体4の図示を省略している。
【0027】
ここで、X方向、Y方向、Z方向を以下のように定義する。X方向とY方向は、ベース2の上面2aに平行で、且つ互いに直交する方向である。X方向は、
図1および
図3における左右方向である。Y方向は、
図4における左右方向である。Z方向は、ベース2の上面2aに垂直な方向である。支柱部3は、上方から見てX方向に長い形状を有し、ベース2の上面2aにおけるY方向の中央部分から上方に延びている。
【0028】
試験装置1は、更に、折り曲げ機構10と、挟み込み機構20とを備えている。折り曲げ機構10は、フレキシブル回路基板を折り曲げる動作と、折り曲げられたフレキシブル回路基板を展開する動作とが可能である。挟み込み機構20は、フレキシブル回路基板を挟み込むものである。
【0029】
以下、折り曲げ機構10および挟み込み機構20について詳しく説明する。始めに、
図2ないし
図5を参照して、挟み込み機構20について詳しく説明する。本実施の形態では特に、挟み込み機構20は、複数のフレキシブル回路基板を挟み込むことが可能である。挟み込み機構20は、フレキシブル回路基板が載置されるステージ21と、ステージ21の上方に配置されて、上下動可能な1つ以上の接触子22とを有している。ステージ21は、上面21aを有している。
図5に示したように、ステージ21は、X方向に長い形状を有している。ステージ21は、複数(
図5に示した例では4つ)のフレキシブル回路基板を載置することができる大きさを有している。
【0030】
また、ステージ21は、ステージ本体211と、絶縁材料よりなる絶縁部212とを有している。ステージ本体211は、上面と、この上面で開口し、絶縁部212を収容する溝部とを有している。ステージ本体211の溝部は、X方向に延びている。絶縁部212は、ステージ本体211の溝部内に収容されている。また、絶縁部212は、上面を有している。ステージ21の上面21aは、ステージ本体211の上面と絶縁部212の上面によって構成されている。
【0031】
図2ないし
図5に示したように、挟み込み機構20は、更に、プレート23と、このプレート23をX方向に移動可能な駆動装置24と、プレート23をX方向に案内する案内機構25とを有している。駆動装置24は、ボールねじ、ステッピングモータ等によって構成され、ベース2の上面2a上に配置されている。ステージ21は、プレート23に取り付けられている。従って、ステージ21は、X方向に移動可能である。なお、プレート23がX方向およびY方向に移動可能になるように駆動装置および案内機構を構成して、ステージ21をX方向およびY方向に移動可能にしてもよいし、プレート23がX方向、Y方向およびZ方向に移動可能になるように駆動装置および案内機構を構成して、ステージ21をX方向、Y方向およびZ方向に移動可能にしてもよい。
【0032】
接触子22の数は、試験装置1が同時に試験するフレキシブル回路基板の数に合わせてもよい。
図2および
図3には、特に、接触子22の数が3つである例を示している。3つの接触子22は、ステージ21の上方においてX方向に並ぶように配置されている。以下、3つの接触子22を互いに区別して表す場合には、
図3における左から順に符号22A,22B,22Cを付して表す。
【0033】
挟み込み機構20は、更に、3つの接触子22A,22B,22Cを支持する3つの接触子支持部26A,26B,26Cと、支柱部3の壁面に設置された3つの駆動装置27A,27B,27Cと、3つの荷重センサ28A,28B,28Cとを有している。接触子支持部26A,26B,26Cは、それぞれ駆動装置27A,27B,27Cに連結されている。
【0034】
荷重センサ28Aは、接触子支持部26Aの下端部に取り付けられ、接触子22Aは、この荷重センサ28Aの下端部に取り付けられている。荷重センサ28Bは、接触子支持部26Bの下端部に取り付けられ、接触子22Bは、この荷重センサ28Bの下端部に取り付けられている。荷重センサ28Cは、接触子支持部26Cの下端部に取り付けられ、接触子22Cは、この荷重センサ28Cの下端部に取り付けられている。
【0035】
駆動装置27A〜27Cは、それぞれ、ボールねじ、ステッピングモータ等によって構成され、接触子支持部26A〜26CをZ方向に移動可能である。これにより、接触子22A〜22Cは、Z方向に移動可能である。荷重センサ28A〜28Cは、それぞれ、接触子支持部26A〜26Cに着脱自在になっていてもよい。荷重センサ28A〜28Cは、それぞれ、接触子22A〜22Cが、それに接触する物に対して加えるZ軸方向の荷重を検出し、その荷重の検出値を電気信号として出力する。荷重センサ28A〜28Cとしては、例えば、ピエゾ抵抗効果を利用した高感度、高精度、高レスポンスの半導体荷重センサを使用することができる。
【0036】
後で詳しく説明するが、接触子22A〜22Cは、ステージ21上に載置されたフレキシブル回路基板に接触する。接触子22A〜22Cは、例えば、円柱状のローラでもよいし、ブロック形状の部材や、フレキシブル回路基板に接触する面が湾曲している形状の部材でもよい。接触子22A〜22Cがローラの場合には、ローラの直径は、例えば20〜25mmの範囲内である。
【0037】
本実施の形態では、1つのフレキシブル回路基板に対して、1組の接触子、接触子支持部、駆動装置および荷重センサが用意される。
図1ないし
図4に示した試験装置1では、複数のフレキシブル回路基板に対して同時に試験を行うことができるように、複数組の接触子、接触子支持部、駆動装置および荷重センサを設けることができるようになっている。
図1ないし
図3には、特に、3組の接触子、接触子支持部、駆動装置および荷重センサを設けた例を示している。
【0038】
次に、
図2ないし
図5を参照して、折り曲げ機構10について詳しく説明する。本実施の形態では特に、折り曲げ機構10は、複数のフレキシブル回路基板を折り曲げる動作と、折り曲げられた複数のフレキシブル回路基板を展開する動作とが可能である。折り曲げ機構10は、1つ以上の固定部11と、支持部12と、回転装置13とを有している。フレキシブル回路基板が折り曲げられる際には、フレキシブル回路基板の特定の位置を中心として、フレキシブル回路基板の一部が、フレキシブル回路基板の他の部分に対して回転させられる。固定部11は、フレキシブル回路基板において折り曲げ部となる部分を挟む2箇所のうちの一方(以下、被固定部と言う。)をステージ21に固定する。支持部12は、上記2箇所のうちの他方(以下、被支持部と言う。)を支持する。なお、フレキシブル回路基板の折り曲げ部とは、フレキシブル回路基板のうちの、上記の特定の位置およびその近傍の部分であって、折り曲げられる前に比べて大きく変形している部分である。
【0039】
固定部11は、例えば、ステージ21の上面21aとの間にフレキシブル回路基板の被固定部を挟むことにより、フレキシブル回路基板をステージ21に固定する。固定部11の数は、試験装置1が同時に試験するフレキシブル回路基板の数に合わせてもよい。
図2、
図3および
図5には、特に、固定部11の数が3つである例を示している。3つの固定部11は、ステージ21の上面21aにおいてX方向に並ぶように配置されている。また、3つの固定部11は、それぞれ、ステージ本体211の上面と絶縁部212の上面にまたがって配置されている。
【0040】
図5に示したように、支持部12は、2つの脚部12A,12Bと、1つの基板取り付け部12Cとを有している。折り曲げ機構10は、更に、2つの回転支持部14A,14Bを有している。2つの回転支持部14A,14Bは、互いにX方向に離れた位置においてプレート23に取り付けられ、2つの脚部12A,12Bのそれぞれの一端の近傍部分を回転可能に支持している。基板取り付け部12Cは、2つの脚部12A,12Bの他端の近傍部分同士を連結している。
図5に示したように、基板取り付け部12Cは、X方向に長い形状を有している。基板取り付け部12Cは、複数(
図5に示した例では4つ)のフレキシブル回路基板を支持することができる大きさを有している。
【0041】
回転装置13は、所定の中心軸Cを中心として1つ以上の固定部11に対して支持部12を回転させるものである。
図2および
図4において、記号Rを付した曲線の矢印は、支持部12が
図2および
図4に示した状態から回転する方向を示している。支持部12は、ほぼ180度回転可能である。支持部12の2つの脚部12A,12Bは、支持部12が回転した際にステージ21に接触しないように、ステージ21のX方向の外側に配置されている。
【0042】
回転装置13は、プレート23に取り付けられている。
図5には、回転装置13の構成の一例を示している。この例では、回転装置13は、ステッピングモータ13Aと、連結機構13Bと、タイミングプーリ13C,13Dと、タイミングベルト13Eとを含んでいる。連結機構13Bは、その一端部が支持部12の脚部12Aに連結され、所定の中心軸Cを中心として回転する図示しない軸部を有している。タイミングプーリ13Cは、ステッピングモータ13Aの回転軸に取り付けられている。タイミングプーリ13Dは、連結機構13Bの図示しない軸部の他端部に取り付けられている。タイミングベルト13Eは、タイミングプーリ13C,13D間に掛け渡されている。
【0043】
フレキシブル回路基板の被支持部は、例えば粘着テープによって、支持部12の基板取り付け部12Cに固定される。このように基板取り付け部12Cにフレキシブル回路基板の被支持部を固定し、支持部12を回転させることにより、フレキシブル回路基板の被支持部も回転する。これにより、フレキシブル回路基板を折り曲げる動作と、折り曲げられたフレキシブル回路基板を展開する動作とが可能になる。特に、支持部12をほぼ180度回転させた場合には、フレキシブル回路基板の被支持部もほぼ180度回転し、フレキシブル回路基板は二つ折りに折り曲げられる。なお、折り曲げられたフレキシブル回路基板を展開するというのは、フレキシブル回路基板を、折り曲げられる前の平坦な状態またはそれに近い状態に戻すことである。
【0044】
図2および
図5には、フレキシブル回路基板の一例を、二点鎖線で示している。この例では、フレキシブル回路基板40は、一方向に長く、長手方向がY方向に向くようにステージ21の上面21a上に載置されている。また、フレキシブル回路基板40は、X方向についての幅が異なる2つの部分を含んでいる。このうち、幅が相対的に大きい部分を幅広部40Aと呼び、幅が相対的に小さい部分を細幅部40Bと呼ぶ。幅広部40Aの一部は、ステージ21の絶縁部212の上に位置し、上面21a上に固定されている。細幅部40Bの一部は、支持部12の基板取り付け部12Cに固定されている。この場合、支持部12を回転させると、基板取り付け部12Cに固定された細幅部40Bの一部が回転する。これにより、フレキシブル回路基板40が折り曲げられる。なお、フレキシブル回路基板の形状は、
図2および
図5に示した例に限られず、任意である。例えば、フレキシブル回路基板は、X方向について一定の幅を有していてもよい。
【0045】
図2および
図5に示した例では、同じ形状の3つのフレキシブル回路基板40が示されている。3つのフレキシブル回路基板40は、X方向に並ぶようにステージ21に載置されている。本実施の形態では、3つのフレキシブル回路基板40を折り曲げる動作と、折り曲げられた3つのフレキシブル回路基板を展開する動作は、同時に行われる。折り曲げられた3つのフレキシブル回路基板40のそれぞれの折り曲げ部は、そのフレキシブル回路基板40に対して用意された接触子22のほぼ真下に位置する。試験の際には、接触子22が下降してフレキシブル回路基板40の折り曲げ部に接触する。後で詳しく説明するが、接触子22がフレキシブル回路基板40に接触するときには、フレキシブル回路基板40に印加される荷重の大きさと、ステージ21と接触子22の間隔のうちの少なくとも一方を設定することが可能である。
【0046】
同様に、展開された3つのフレキシブル回路基板40のそれぞれにおいて展開前に折り曲げ部であった部分は、そのフレキシブル回路基板40に対して用意された接触子22のほぼ真下に位置する。試験の際には、接触子22が下降してフレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部であった部分に接触する。
【0047】
接触子22は、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部の一部にのみ接触する大きさを有していてもよい。この場合、折り曲げ部における接触子22の接触位置を変化させてもよい。折り曲げ部における接触子22の接触位置を変化させることは、具体的には、駆動装置24を駆動して、ステージ21およびその上のフレキシブル回路基板40をX方向に移動させることによって行われる。同様に、フレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部であった部分における接触子22の接触位置を変化させてもよい。
【0048】
ここまで説明してきた試験装置1の構成要素は、ベース2および制御装置5を除いて、筐体4内に収容されている。
【0049】
試験装置1は、更に、動作設定部60と、動作制御部70とを備えている。動作設定部60は、折り曲げ機構10の動作と挟み込み機構20の動作とを組み合わせた一連の試験動作の内容の設定を可能にする。動作制御部70は、動作設定部60によって設定された内容に従って折り曲げ機構10と挟み込み機構20を制御する。
【0050】
以下、
図1および
図6を参照して、動作設定部60および動作制御部70について詳しく説明する。
図6は、動作設定部60および動作制御部70の構成を示すブロック図である。動作設定部60は、設定制御部61と、設定入力部62と、パーソナルコンピュータ63とを備えている。動作制御部70は、折り曲げ機構10の回転装置13を制御する折り曲げ制御部71と、挟み込み機構20の駆動装置24,27A〜27Cを制御する挟み込み制御部72と、シーケンス制御部73とを備えている。
【0051】
設定入力部62は、試験を行う際の各種の設定情報の入力や試験装置1の各種の動作の指示(動作の有無を含む)を行うためのものである。
図1に示したように、本実施の形態では、設定入力部62は、入力装置と、試験装置1の各種の動作の状態の情報等を表示する表示装置とを兼ねたタッチパネルであり、筐体4に設けられている。
【0052】
パーソナルコンピュータ63は、設定入力部62と同様に、設定情報の入力や試験装置1の各種の動作の指示を行うことができる。また、パーソナルコンピュータ63は、動作制御部70のシーケンス制御部73と通信を行うことによって、試験結果を保存したり、試験結果の出力(表示を含む)を行ったりすることができる。なお、パーソナルコンピュータ63は、動作設定部60における必須の構成要素ではなく、設けられていなくてもよい。
【0053】
設定制御部61は、ユーザーインタフェース制御部61Aと設定情報記憶部61Bとを含んでいる。ユーザーインタフェース制御部61Aは、設定入力部62、パーソナルコンピュータ63および設定情報記憶部61Bに接続されている。ユーザーインタフェース制御部61Aは、設定入力部62およびパーソナルコンピュータ63における情報の表示と、設定入力部62およびパーソナルコンピュータ63からの情報の入力を制御する。設定情報記憶部61Bは、設定入力部62およびパーソナルコンピュータ63によって入力されてユーザーインタフェース制御部61Aが受け取った設定情報や試験装置1の各種の動作の指示を記憶する。設定制御部61は、設定情報記憶部61Bに記憶された情報に基づいて、一連の試験動作の内容の設定を行う。
【0054】
試験装置1は、更に、抵抗測定器74を備えている。この抵抗測定器74は、後で説明するフレキシブル回路基板40の配線部の抵抗値を測定するものである。本実施の形態では、4つのフレキシブル回路基板40のそれぞれの配線部の抵抗値を測定することが可能である。抵抗測定器74は、シーケンス制御部73に接続されている。また、挟み込み機構20の3つの荷重センサ28A〜28Cも、シーケンス制御部73に接続されている。シーケンス制御部73は、3つの荷重センサ28A〜28Cと抵抗測定器74の各出力信号を入力し、設定制御部61によって設定された内容に従って、折り曲げ制御部71と挟み込み制御部72とを制御して、フレキシブル回路基板の耐折り曲げ性の試験を行う際の試験装置1の一連の動作を制御する。
【0055】
動作設定部60の設定制御部61と動作制御部70は、例えば1つのマイクロコンピュータ30によって実現される。この場合、設定制御部61、折り曲げ制御部71、挟み込み制御部72およびシーケンス制御部73は、物理的に別個の要素ではなく、ソフトウェアによって実現される。
図3および
図4に示した制御装置5は、マイクロコンピュータ30と抵抗測定器74とを含んでいる。
【0056】
次に、
図7ないし
図9を参照して、試験装置1の試験対象のフレキシブル回路基板40の構成の一例について詳しく説明する。このフレキシブル回路基板40は、試験用に作製されたものである。
図7は、試験対象のフレキシブル回路基板40の平面図である。
図8は、
図7に示したフレキシブル回路基板40の配線部を拡大して示す平面図である。
図9は、
図7に示したフレキシブル回路基板40の一部を示す断面図である。
【0057】
図7は、
図2および
図5と同様に、長手方向がY方向に向くようにステージ21の上面21a上に載置された状態のフレキシブル回路基板40を示している。このフレキシブル回路基板40は、前述の幅広部40Aと細幅部40Bを含んでいる。また、フレキシブル回路基板40は、パターン化された導体よりなる配線部42と、配線部42を保持する保持部43とを備えている。
【0058】
図8に示した例では、配線部42は、試料の長手方向(Y方向)に延びる複数の直線状部分51と、パターン化された導体の全体がミアンダ形状となるように、隣接する2つの直線状部分の端部同士を連結する複数の連結部分52とを有している。
【0059】
図9は、Y方向に垂直な断面を示している。この断面において、複数の直線状部分51は、X方向に並んでいる。X方向についての直線状部分51の幅を線幅LWと定義し、隣接する2つの直線状部分51の間隔を線間幅SWと定義する。線幅LWと線間幅SWは、いずれも、例えば10〜1000μmの範囲内であり、汎用的には50〜500μmの範囲内である。
【0060】
図9に示したように、保持部43は、例えば、ベース層53と、このベース層53の上面上に順に積層された接着層54およびカバー層55を含んでいる。配線部42は、ベース層53の上面上に配置され、接着層54によって覆われている。ベース層53、接着層54およびカバー層55は、いずれも、絶縁材料よりなり、柔軟性を有している。ベース層53およびカバー層55の材料としては、例えば絶縁性樹脂が用いられ、その中でも柔軟性および耐熱性が良好なポリイミド樹脂または液晶ポリマーを用いることが好ましい。接着層54の材料としては、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等の合成系接着剤が用いられる。配線部42の材料としては、銅等の金属が用いられる。
【0061】
ベース層53の厚みは、例えば5〜100μmの範囲内であり、好ましくは9〜50μmの範囲内である。配線部42の厚みは、例えば2〜50μmの範囲内であり、好ましくは9〜35μmの範囲内である。ベース層53とカバー層55との間における接着層54の厚みは、配線部42の厚み以上である。カバー層55の厚みは、例えば3〜100μmの範囲内であり、好ましくは10〜75μmの範囲内である。
【0062】
なお、フレキシブル回路基板40は、カバー層55を備えていなくてもよい。この場合には、接着層54の代わりに、絶縁材料よりなり、柔軟性を有する絶縁層を設けてもよい。
【0063】
図7および
図8に示したように、X方向の両端に位置する2つの直線部分51は、他の直線部分51よりもY方向に長く延びている。フレキシブル回路基板40は、この2つの直線部分51の端部に電気的に接続された端子44,45を備えている。フレキシブル回路基板40は、端子44,45が絶縁部212の上に位置するように、ステージ21の上面21a上に載置される。抵抗測定器74は、端子44,45に接続されて、配線部42の抵抗値を測定する。
【0064】
また、
図7に示したように、フレキシブル回路基板40は、配線部42のX方向の両側に配置された導体層46,47を備えている。この導体層46,47は、配線部42と同じ材料によって形成され、ベース層53の上に配置されている。導体層46,47は、試験用に作製されたフレキシブル回路基板40の剛性等の性質が、電子機器に実際に使用されるフレキシブル回路基板に近いものとなるように設けられている。
【0065】
試験の際には、フレキシブル回路基板40は、
図7において記号A−Aを付した一点鎖線で示す位置を中心として、ベース層53が外側になるように折り曲げられる。具体的には、フレキシブル回路基板40のうち、一点鎖線よりも下側の大部分がステージ21の上面21a上に載置され、上端の近傍部分が折り曲げ機構10によって回転させられることによって、フレキシブル回路基板40が折り曲げられる。
【0066】
次に、本実施の形態におけるフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性試験方法(以下、単に、試験方法と記す。)について説明する。本実施の形態における試験方法は、折り曲げられるフレキシブル回路基板40の耐折り曲げ性の試験を行う方法である。この試験方法は、折り曲げ手順と展開手順との組み合わせを基本手順とし、折り曲げ手順の後で行われる第1の挟み込み手順と展開手順の後で行われる第2の挟み込み手順とを追加可能な手順とし、基本手順と追加した手順とを組み合わせた一連の手順を繰り返し実行する。折り曲げ手順では、ステージ21に載置されたフレキシブル回路基板40を折り曲げる。展開手順では、折り曲げられたフレキシブル回路基板40を展開する。第1の挟み込み手順では、折り曲げられたフレキシブル回路基板40の折り曲げ部を、ステージ21と接触子22によって挟み込む。第2の挟み込み手順では、フレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部であった部分を、ステージ21と接触子22によって挟み込む。
【0067】
動作設定部60は、上記試験方法における、折り曲げ機構10の動作と挟み込み機構20の動作とを組み合わせた一連の試験動作の内容を設定することが可能である。すなわち、動作設定部60は、折り曲げ動作と展開動作との組み合わせを、繰り返し実行される基本動作とし、折り曲げ動作の後で行われる第1の挟み込み動作と展開動作の後で行われる第2の挟み込み動作を追加可能な動作とし、第1の挟み込み動作の追加の有無と、第2の挟み込み動作の追加の有無とを設定することが可能である。動作設定部60は、更に、基本動作の繰り返し回数の上限値を設定することが可能である。
【0068】
折り曲げ動作では、ステージ21に載置されたフレキシブル回路基板40を、折り曲げ機構10によって折り曲げる。展開動作では、折り曲げられたフレキシブル回路基板40を、折り曲げ機構10によって展開する。第1の挟み込み動作では、折り曲げられたフレキシブル回路基板40の折り曲げ部を、ステージ21と接触子22によって挟み込む。第2の挟み込み動作では、フレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部であった部分を、ステージ21と接触子22によって挟み込む。動作制御部70は、上記試験方法が実行されるように、動作設定部60によって設定された内容に従って、折り曲げ機構10と挟み込み機構20を制御する。
【0069】
以下、
図10ないし
図18を参照して、本実施の形態における試験方法と試験装置1の動作について詳しく説明する。
図10は、本実施の形態における試験方法を示すフローチャートである。
図11は、本実施の形態における動作設定手順を示すフローチャートである。
図12は、設定入力部62の表示画面の第1の状態を示す説明図である。
図13は、設定入力部62の表示画面の第2の状態を示す説明図である。
図14ないし
図18は、本実施の形態における試験方法における一連の手順を示す説明図である。
【0070】
本実施の形態における試験方法では、まず、
図10におけるステップS101において、
図6に示した動作設定部60の設定入力部62またはパーソナルコンピュータ63によって、試験を行う際の各種の設定情報を入力し、一連の試験動作の内容を設定する。ステップS101の手順を、特に、動作設定手順と言う。
【0071】
以下、
図11ないし
図13を参照して、動作設定手順について詳しく説明する。ここでは、設定入力部62は、入力装置と表示装置とを兼ねたタッチパネルであるものとする。以下、設定入力部62をタッチパネル62と記す。動作設定手順は、試験装置1の使用者の指示によって開始する。
図12には、動作設定手順を開始する前のタッチパネル62の表示画面の状態である第1の状態の一例を示している。この表示画面において、「設定」と記載されたボタン81が、動作設定手順の開始を指示するためのボタンである。
【0072】
動作設定手順では、まず、
図11におけるステップS201において、設定制御部61の設定情報記憶部61Bを、入力された設定情報を受け取り、その設定情報を記憶できる状態にする。以下、この状態を入力待機状態と言う。入力待機状態では、設定制御部61のユーザーインタフェース制御部61Aは、タッチパネル62を制御して、タッチパネル62の表示画面を入力待機状態に変更する。これにより、タッチパネル62を用いて、各種の設定情報を入力することが可能になる。
図13には、タッチパネル62の表示画面の入力待機状態である第2の状態の一例を示している。この表示画面には、各種の設定情報を入力することができる複数の入力欄91が表示されている。例えば、複数の入力欄91のうちの1つをタッチすると、タッチパネル62に、数値を入力するためのソフトウェアキーボードが表示される。そして、このソフトウェアキーボードを用いることによって、その入力欄91に対応する設定情報を入力することができる。
【0073】
ここで、
図13を参照して、タッチパネル62を用いて入力できる設定情報について説明する。「設定回数」の入力欄91には、試験において実行する基本動作の繰り返し回数の上限値を入力することができる。「設定荷重」の入力欄91には、第1および第2の挟み込み動作において接触子22がフレキシブル回路基板40に接触するときの、フレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさを入力することができる。「設定距離」の入力欄91には、第1および第2の挟み込み動作において接触子22がフレキシブル回路基板40に接触するときの、ステージ21と接触子22の間隔を入力することができる。「折曲角度」の入力欄91には、折り曲げ動作における支持部12を回転させる角度を入力することができる。「閉時サイクル」の入力欄91には、第1の挟み込み動作において行われる、折り曲げ部における接触子22の接触位置の往復移動の回数を入力することができる。「開時サイクル」の入力欄91には、第2の挟み込み動作において行われる、フレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部であった部分における接触子22の接触位置の往復移動の回数を入力することができる。接触子22の接触位置の往復移動については、後で説明する。
【0074】
なお、フレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさとステージ21と接触子22の間隔のうちの一方を設定してもよいし、両方を設定してもよい。両方を設定した場合、一方の設定が優先されるようにしてもよい。
【0075】
また、「閉時サイクル」の入力欄91に0を入力すると、追加可能な動作である第1の挟み込み動作が追加されず、「閉時サイクル」の入力欄91に1以上の数値を入力すると、追加可能な動作である第1の挟み込み動作が追加される。このようにして、第1の挟み込み動作の追加の有無を設定することができる。同様に、「開時サイクル」の入力欄91に0を入力すると、追加可能な動作である第2の挟み込み動作が追加されず、「開時サイクル」の入力欄91に1以上の数値を入力すると、追加可能な動作である第2の挟み込み動作が追加される。このようにして、第2の挟み込み動作の追加の有無を設定することができる。
【0076】
また、入力待機状態では、ユーザーインタフェース制御部61Aは、設定情報記憶部61Bを、パーソナルコンピュータ63から入力された設定情報を受け取ることが可能な状態にする。これにより、パーソナルコンピュータ63を用いて、各種の設定情報を入力することが可能になる。なお、パーソナルコンピュータ63を用いることにより、
図13に示したタッチパネル62を用いて入力できる設定情報以外の設定情報を入力することができる。このような設定情報の1つには、試験中に、配線部42が断線したと判断するときの配線部42の抵抗値の設定値(以下、抵抗設定値と記す。)がある。
【0077】
次に、ステップS202において、設定情報記憶部61Bが、試験装置1の使用者が入力した設定情報を記憶する。次に、ステップS203において、設定情報記憶部61Bに記憶された設定値に基づいて、設定制御部61において、一連の試験動作の内容が設定される。この内容には、基本動作の繰り返し回数の上限値と、第1の挟み込み動作の追加の有無と、第2の挟み込み動作の追加の有無が含まれる。
【0078】
次に、ステップS204において、設定制御部61は、設定した一連の試験動作の内容を確定するかどうか判断する。具体的には、試験装置1の使用者が、設定した一連の試験動作の内容を確定させる指示を出していないときには、設定制御部61は、設定した一連の試験動作の内容を確定せずに(ステップS204におけるN)、ステップS202からステップS204を再度実行する。試験装置1の使用者が、設定した一連の試験動作を確定させる指示を出したときには、設定制御部61は、設定した一連の試験動作の内容を確定し(ステップS204におけるY)、動作設定手順を終了する。
図13に示したタッチパネル62の場合、「確定」と記載されたボタン92が、設定した一連の試験動作の内容の確定を指示するためのボタンである。このボタン92をタッチすることにより、タッチパネル62の表示画面は、
図13に示した第2の状態から
図12に示した第1の状態に戻る。なお、
図13において「戻る」と記載されたボタン93をタッチすると、設定した一連の試験動作の内容を確定せずに、タッチパネル62の表示画面は、
図13に示した第2の状態から
図12に示した第1の状態に戻る。
【0079】
以上の動作設定手順(ステップS101)が終了したら、
図10におけるステップS102において、ステージ21上にフレキシブル回路基板40を載置していない状態で、Z方向のゼロ点の設定を行う。なお、試験装置1の初期状態では、接触子22は、予め設定された距離だけステージ21の上面21aから離れた初期位置にある。ゼロ点の設定の動作は、試験装置1の使用者が、タッチパネル62によってゼロ点の設定を指示し、この指示がシーケンス制御部73に対して与えられることによって開始する。
図12に示したタッチパネル62の場合、「原点」と記載されたボタン82が、ゼロ点の設定を指示するためのボタンである。
【0080】
以下、接触子22A、駆動装置27Aおよび荷重センサ28Aを例にとって、ゼロ点の設定の動作について説明する。この動作では、まず、挟み込み制御部72が駆動装置27Aを制御して、接触子22Aを所定の速度で下降させると共に、荷重センサ28Aの出力信号をシーケンス制御部73が監視する。接触子22Aがステージ21の上面21aに接触すると、荷重センサ28Aによって検出されるZ方向の荷重が急激に増加する。これにより、シーケンス制御部73は、接触子22Aがステージ21の上面21aに接触した時点、すなわちステージ21と接触子22Aの間隔がゼロになった時点における接触子22AのZ方向の位置を認識し、この接触子22Aの位置をゼロ点として設定する。これ以降、接触子22Aが任意の位置にあるときのステージ21と接触子22Aの間隔は、ゼロ点を基準とした接触子22Aの位置として求められる。なお、接触子22Aの位置は、例えば、駆動装置27Aを構成するステッピングモータに対する制御信号から、挟み込み制御部72が認識することができる。ゼロ点の設定後、接触子22Aは初期位置に戻される。接触子22Aが下降する際の接触子22Aの移動速度は、動作設定手順(ステップS101)において設定することができる。この移動速度は、ステージ21の近傍では、例えば1〜10mm/秒の範囲内であり、ステージ21から離れた位置では、例えば1〜50mm/秒の範囲内である。
【0081】
上記の接触子22A、駆動装置27Aおよび荷重センサ28Aについての説明は、接触子22B,22C、駆動装置27B,27Cおよび荷重センサ28B,28Cにも当てはまる。ゼロ点の設定の動作では、駆動装置27A〜27Cを同時に制御して、接触子22A〜22Cのゼロ点の位置を同時に設定してもよいし、駆動装置27A〜27Cを1つずつ制御して、接触子22A〜22Cのゼロ点の位置を1つずつ設定してもよい。なお、試験装置1が試験するフレキシブル回路基板40の数が1つまたは2つの場合、使用しない接触子22については、ゼロ点の位置を設定しなくてもよい。
【0082】
次に、ステップS103において、試験対象のフレキシブル回路基板40(
図10では、試料と記す。)を取り付ける。具体的には、フレキシブル回路基板40をステージ21の上面21a上に載置し、フレキシブル回路基板40の被固定部を、固定部11を用いて上面21a上に固定し、フレキシブル回路基板40の被支持部を、折り曲げ機構10の支持部12における基板取り付け部12Cに固定する。また、抵抗測定器74を、端子44,45に接続する。
図14は、ステップS103におけるステージ21、支持部12およびフレキシブル回路基板40の状態を簡単に表している。なお、3つのフレキシブル回路基板40の試験を同時に行う場合には、3つのフレキシブル回路基板40を上述のように取り付ける。
【0083】
次に、試験装置1の使用者が、タッチパネル62によって試験開始を指示し、この指示がシーケンス制御部73に対して与えられることによって、実際の試験が開始する。
図12に示したタッチパネル62の場合、「開始」と記載されたボタン83が、試験開始を指示するためのボタンである。試験が開始されると、常時あるいは所定の時間間隔(例えば0.5秒間隔)をおいて、抵抗測定器74が配線部42の抵抗値を測定し、シーケンス制御部73は、この抵抗測定器74の出力信号、すなわち配線部42の抵抗値を監視する。また、
図12に示したタッチパネル62の場合、試験が開始されると、基本動作の繰り返し回数、荷重センサ28A〜28Cによって検出される荷重の大きさ、ステージ21と接触子21の間隔が、それぞれ、タッチパネル62における「動作回数」、「荷重」、「距離」の欄に表示される。
【0084】
試験では、ステップS104において、折り曲げ制御部71が回転装置13を制御することによって、折り曲げ機構10によって、フレキシブル回路基板40を折り曲げる。
図15は、ステップS104におけるステージ21、支持部12、フレキシブル回路基板40および接触子22の状態を簡単に表している。
図15において、符号40Cは、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部を示し、符号28は、荷重センサ28A〜28Cのうちの任意の荷重センサを示している。ステップS104は、前記折り曲げ手順および折り曲げ動作に対応する。
【0085】
なお、前述のように、動作設定手順(ステップS101)において、折り曲げ動作における支持部12を回転させる角度を設定することが可能である。この角度は、例えば140〜180度の範囲内で設定することが可能である。
【0086】
次に、ステップS105において、接触子22を下降させて、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cに接触させる。このようにして、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cを、ステージ21と接触子22によって挟み込む。
図16は、ステップS105におけるステージ21、支持部12、フレキシブル回路基板40および接触子22の状態を簡単に表している。なお、試験装置1が試験するフレキシブル回路基板40の数が3つの場合には、挟み込み制御部72は、駆動装置27A〜27Cを制御することによって、接触子22A〜22Cを同時に下降させる。ステップS105は、前記第1の挟み込み手順および第1の挟み込み動作に対応する。
【0087】
前述のように、動作設定手順(ステップS101)では、接触子22がフレキシブル回路基板40に接触するときの、フレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさとステージ21と接触子22の間隔を設定することができる。フレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさを設定した場合には、予め設定された値になるように、折り曲げ部40Cに、接触子22を押し付ける。フレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさは、例えば100g〜10kgの範囲内で設定することが可能である。
【0088】
また、ステージ21と接触子22の間隔を設定した場合には、
図16に示したステージ21と接触子22との間隔Gは、予め設定された値に調整される。なお、フレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさとステージ21と接触子22の間隔の両方を設定した場合には、一方の設定、例えばステージ21と接触子22の間隔の設定が優先されるようにしてもよい。
【0089】
ここで、接触子22が、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cの一部にのみ接触する大きさを有している場合におけるステップS105について、更に説明する。この場合、ステップS105では、折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置を変化させる。
【0090】
以下、この動作を具体的に説明する。ここでは、フレキシブル回路基板40が、
図7に示したように配線部42と導体層46,47とを備えているものとする。また、フレキシブル回路基板40は、
図7において記号A−Aを付した一点鎖線で示す位置を中心として、一点鎖線よりも上側の部分が回転させられることによって折り曲げられる。折り曲げられたフレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cは、一点鎖線で示す位置およびその近傍の部分である。この折り曲げ部40Cには、配線部42を横断する部分と、導体層46を横断する部分と、導体層47を横断する部分とが含まれる。
【0091】
接触子22は、最初に、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cのうち、導体層46を横断する部分に接触する。その後、挟み込み制御部72が駆動装置24を制御して、ステージ21およびフレキシブル回路基板40をX方向に移動させる。これにより、折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置は、導体層46を横断する部分から、配線部42を横断する部分を経由して、導体層47を横断する部分まで変化する。この動作の後、挟み込み制御部72が駆動装置24を制御して、ステージ21およびフレキシブル回路基板40を逆方向に移動させて、折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置を、更に、導体層47を横断する部分から、配線部42を横断する部分を経由して、導体層46を横断する部分まで変化させてもよい。また、このような折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置の往復移動を複数回行ってもよい。
【0092】
動作設定手順(ステップS101)では、往復移動の回数を設定可能である。
図13に示したタッチパネル62の場合、「閉時サイクル」の入力欄に、往復移動の回数を入力することができる。また、動作設定手順(ステップS101)では、X方向についての駆動装置24の移動距離と、X方向についての駆動装置24の移動速度を設定できるようにしてもよい。X方向についての駆動装置24の移動距離は、例えば0〜30mmの範囲内である。移動距離が0mmの場合には、折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置は変化しない。X方向についての駆動装置24の移動速度は、例えば10〜100mm/秒の範囲内である。
【0093】
また、往復移動の両端において、所定の時間だけステージ21およびフレキシブル回路基板40を静止させてもよい。また、このときの静止時間を動作設定手順(ステップS101)で設定できるようにしてもよい。この静止時間は、例えば0〜10秒の範囲内である。静止時間が0秒の場合には、往復移動の両端において、ステージ21およびフレキシブル回路基板40は、静止せずに、移動方向が反転する。
【0094】
次に、ステップS106において、接触子22を上昇させて、接触子22を初期位置に復帰させる。なお、試験装置1が試験するフレキシブル回路基板40の数が3つの場合には、挟み込み制御部72は、駆動装置27A〜27Cを制御することによって、接触子22A〜22Cを同時に上昇させる。ステップS106の手順を、特に、第1の復帰手順という。また、ステップS106における動作を、特に、第1の復帰動作と言う。
【0095】
次に、ステップS107において、折り曲げ制御部71が回転装置13を制御することによって、折り曲げ機構10によって、折り曲げられたフレキシブル回路基板40を展開する。
図17は、ステップS106におけるステージ21、支持部12、フレキシブル回路基板40および接触子22の状態を簡単に表している。ステップS107は、前記展開手順および展開動作に対応する。
【0096】
次に、ステップS108において、接触子22を下降させて、フレキシブル回路基板40うち展開前に折り曲げ部40Cであった部分に、接触子22を接触させる。このようにして、フレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部40Cであった部分を、ステージ21と接触子22によって挟み込む。
図18は、ステップS108におけるステージ21、支持部12、フレキシブル回路基板40および接触子22の状態を簡単に表している。なお、試験装置1が試験するフレキシブル回路基板40の数が3つの場合には、挟み込み制御部72は、駆動装置27A〜27Cを制御することによって、接触子22A〜22Cを同時に下降させる。ステップS108は、前記第2の挟み込み手順および第2の挟み込み動作に対応する。
【0097】
なお、ステップS105におけるフレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさとステージ21と接触子22の間隔についての説明は、ステップS108にも当てはまる。また、接触子22が、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cの一部にのみ接触する大きさを有している場合におけるステップS108の動作は、ステップS105と同様である。動作設定手順(ステップS101)では、フレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部40Cであった部分における接触子22の接触位置の往復移動の回数を設定可能である。
図13に示したタッチパネル62の場合、「開時サイクル」の入力欄に、往復移動の回数を入力することができる。
【0098】
ステップS105で、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cを、ステージ21と接触子22によって挟み込んだ後では、ステップS107で、フレキシブル回路基板40を展開しても、フレキシブル回路基板40は、折り曲げられる前の平坦な状態に戻らない可能性がある。その場合でも、ステップS108を実行することによって、ステップS108を実行しない場合に比べて、展開後のフレキシブル回路基板40を、折り曲げられる前の平坦な状態により近い状態に戻すことが可能になる。
【0099】
次に、ステップS109において、ステップS106と同様に、接触子22を上昇させて、接触子22を初期位置に復帰させる。なお、試験装置1が試験するフレキシブル回路基板40の数が3つの場合には、挟み込み制御部72は、駆動装置27A〜27Cを制御することによって、接触子22A〜22Cを同時に上昇させる。ステップS109の手順を、特に、第2の復帰手順という。また、ステップS106における動作を、特に、第2の復帰動作と言う。
【0100】
次に、ステップS110において、シーケンス制御部73は、試験の終了条件に到達したかどうかを判断する。試験装置1が試験するフレキシブル回路基板40が1つである場合には、試験の終了条件は、その1つのフレキシブル回路基板40の配線部42の抵抗値が抵抗設定値に達するか、基本動作の繰り返し回数が上限値に達することである。シーケンス制御部73は、配線部42の抵抗値が抵抗設定値に達するまでの基本動作の繰り返しの回数(以下、回数測定値と言う。)を記憶する。
【0101】
試験装置1が試験するフレキシブル回路基板40が複数である場合には、試験の終了条件は、複数のフレキシブル回路基板40のうちの所定数のフレキシブル回路基板40の配線部42の抵抗値が抵抗設定値に達するか、基本動作の繰り返し回数が上限値に達することである。上記の所定数は、動作設定手順(ステップS101)で設定できるようにしてもよい。上記の所定数を0に設定した場合には、基本動作の繰り返し回数が上限値に達することが、試験の終了条件となる。シーケンス制御部73は、フレキシブル回路基板40毎に回数測定値を記憶する。
【0102】
ステップS110において、試験の終了条件に到達していない場合(N)は、ステップS104に戻り、ステップS104からステップS110を再度実行する。ステップS110において、試験の終了条件に到達した場合(Y)は、ステップS111で、試験の結果を出力して、試験を終了する。試験の結果は、シーケンス制御部73が記憶しているフレキシブル回路基板40毎の回数測定値を含む。この回数測定値は、フレキシブル回路基板40の耐折り曲げ性の指標となる。すなわち、この回数測定値が大きいほど、フレキシブル回路基板40の耐折り曲げ性が高いと言える。
【0103】
また、前述のように、動作設定手順(ステップS101)では、第1の挟み込み動作(ステップS105)の追加の有無と、第2の挟み込み動作(ステップS108)の追加の有無を設定することができる。ここまでは、第1および第2の挟み込み動作を追加した場合の例について説明してきた。第1の挟み込み動作を追加しないように設定した場合には、折り曲げ動作(ステップS104)の次に、展開動作(ステップS107)に進む。第2の挟み込み動作を追加しないように設定した場合には、展開動作(ステップS107)の次に、ステップS110に進む。
【0104】
以上説明したように、本実施の形態では、動作設定部60は、繰り返し実行される基本動作に対する第1の挟み込み動作の追加の有無と第2の挟み込み動作の追加の有無とを設定可能である。動作設定部60は、更に、基本動作の繰り返し回数の上限値を設定可能である。これらのことから、本実施の形態よれば、基本動作(折り曲げ動作および展開動作)と第1および第2の挟み込み動作の組み合わせを変えた複数の態様の試験を行うことが可能である。
【0105】
また、本実施の形態では、動作設定部60は、更に、第1および第2の挟み込み動作時においてフレキシブル回路基板40に印加する荷重の大きさや、第1および第2の挟み込み動作時におけるステージ21と接触子22の間隔を設定することが可能である。また、動作設定部60は、更に、第1の挟み込み動作における折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置の往復移動の回数や、第2の挟み込み動作におけるフレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部40Cであった部分における接触子22の接触位置の往復移動の回数を設定可能である。このように、本実施の形態によれば、接触子22がフレキシブル回路基板40に接触するときの条件を変えた複数の態様の試験を行うことが可能である。
【0106】
基本動作と第1および第2の挟み込み動作の組み合わせや、接触子22がフレキシブル回路基板40に接触するときの条件は、例えば、フレキシブル回路基板40の形状、剛性、用途等に応じて変更することができる。このように、本実施の形態によれば、二つ折りに折り曲げて使用され得るフレキシブル回路基板の耐折り曲げ性の試験を、多様な態様で行うことが可能になる。
【0107】
また、本実施の形態では、複数のフレキシブル回路基板に対して同時に試験を行うことが可能である。これにより、本実施の形態によれば、短時間でより多くのフレキシブル回路基板40の試験を行うことが可能になる。
【0108】
[第2の実施の形態]
次に、
図19を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図19は、本実施の形態に係る試験装置のステージと作動片を示す平面図である。本実施の形態では、挟み込み機構20は、第1の実施の形態におけるステージ21の代わりに、2つのステージ210A,210Bを有している。ステージ210A,210Bは、X方向に並ぶように配置され、プレート23に取り付けられている。ステージ210A,210Bの構成は、そのX方向の長さがステージ21のX方向の長さよりも小さい点を除いて、ステージ21と同じである。ステージ210A,210Bは、それぞれ、1つのフレキシブル回路基板40を載置することができる大きさを有している。
図19では、ステージ210A,210Bのそれぞれの上面を、符号210Aa,210Baを付して表している。ステージ210Aの上面210Aaとステージ210Bの上面210Baには、固定部11が1つずつ配置されている。
【0109】
また、本実施の形態では、折り曲げ機構10は、第1の実施の形態における支持部12の代わりに、支持部120を備えている。支持部120は、4つの脚部121A,121B,121C,121Dと、2つの基板取り付け部122A,122Bと、2つの連結部123A,123Bとを有している。4つの脚部121A,121B,121C,121Dは、X方向に並ぶように配置されている。また、2つの脚部121A,121Bは、ステージ210AのX方向の外側に配置されている。2つの脚部121C,121Dは、ステージ210BのX方向の外側に配置されている。
【0110】
2つの連結部123A,123Bは、所定の中心軸C上に、X方向に並ぶように配置されている。連結部123Aは、2つの脚部121B,121Cの一端の近傍部分同士を連結している。連結部123Bの一端は、脚部121Dの一端の近傍部分に連結されている。連結部123Bの他端の近傍部分は、回転支持部14Bによって回転可能に支持されている。
【0111】
脚部121Aの一端の近傍部分は、回転支持部14Aによって回転可能に支持されている。回転装置13の連結機構13Bの図示しない軸部の一端部は、脚部121Aに連結されている。基板取り付け部122Aは、2つの脚部121A,121Bの他端の近傍部分同士を連結している。基板取り付け部122Bは、2つの脚部121C,121Dの他端の近傍部分同士を連結している。
図19に示したように、基板取り付け部122A,122Bは、それぞれ、X方向に長い形状を有している。基板取り付け部122A,122Bは、それぞれ、1つのフレキシブル回路基板40を支持することができる大きさを有している。
【0112】
回転装置13は、所定の中心軸Cを中心として2つの固定部11に対して支持部120を回転させる。支持部120は、ほぼ180度回転可能である。2つの脚部121A,121Bは、支持部120が回転した際に、ステージ210Aに接触しないように配置されている。同様に、2つの脚部121C,121Dは、支持部120が回転した際に、ステージ210Bに接触しないように配置されている。
【0113】
図19には、2つのフレキシブル回路基板40が示されている。フレキシブル回路基板40の形状は、第1の実施の形態と同じである。2つのフレキシブル回路基板40の一方は、長手方向がY方向に向くようにステージ210Aの上面210Aa上に載置され、その幅広部40Aの一部は、上面210Aa上に固定され、その細幅部40Bの一部は、基板取り付け部122Aに固定されている。2つのフレキシブル回路基板40の他方は、長手方向がY方向に向くようにステージ210Bの上面210Ba上に載置され、その幅広部40Aの一部は、上面210Ba上に固定され、その細幅部40Bの一部は、基板取り付け部122Bに固定されている。この場合、支持部120を回転させると、基板取り付け部122Aに固定された細幅部40Bの一部と基板取り付け部122Bに固定された細幅部40Bの一部が回転する。これにより、2つのフレキシブル回路基板40が折り曲げられる。
【0114】
図示しないが、本実施の形態では、2組の接触子、接触子支持部、駆動装置および荷重センサが設けられている。
【0115】
次に、本実施の形態に係る試験装置1の動作について説明する。本実施の形態では、1回目の折り曲げ動作(
図10におけるステップS104、
図15)および1回目の第1の挟み込み動作(
図10におけるステップS105、
図16)までは、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、次に、接触子22(
図16参照)をわずかに上昇させる。以下、この動作を第1の接触子回避動作と言う。
【0116】
次に、挟み込み制御部72(
図6参照)が駆動装置24を制御して、ステージ210A,210Bおよび2つのフレキシブル回路基板40をX方向、特に
図19における左方向に移動させて、支持部120の連結部123A,123Bを、接触子22の下に移動させる。以下、この動作をステージ回避動作と言う。次に、展開動作(
図10におけるステップS107、
図17)を実行する。第1の接触子回避動作では、ステージ回避動作および展開動作において、接触子22が、支持部120の脚部121B,121Dおよび連結部123A,123Bに接触しないような高さまで、接触子22を上昇させる。
【0117】
次に、挟み込み制御部72が駆動装置24を制御して、ステージ210A,210Bおよび2つのフレキシブル回路基板40をX方向、特に
図19における右方向に移動させて、ステージ210A,210Bを、ステージ回避動作を実行する前の元の位置に復帰させる。以下、この動作をステージ復帰動作と言う。次に、第2の挟み込み動作(
図10におけるステップS108、
図18)を実行する。
【0118】
次に、接触子22をわずかに上昇させる。以下、この動作を、第2の接触子回避動作と言う。第2の接触子回避動作では、接触子22を、第1の接触子回避動作と同じ高さの位置まで上昇させる。次に、
図10におけるステップ110を実行する。試験の終了条件に到達していない場合には、次に、ステージ回避動作を実行する。次に、2回目の折り曲げ動作を実行する。以下、試験の終了条件に到達するまで、これらの動作を繰り返し実行する。
【0119】
本実施の形態では、第1の実施の形態における第1および第2の復帰動作に比べて、第1および第2の接触子回避動作において接触子22が上昇する距離を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、試験時間を短縮することが可能になる。
【0120】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0121】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、接触子22は、フレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cの全体に接触する大きさを有していてもよい。この場合には、ステップS105において、折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置を変化させる動作と、ステップS108において、フレキシブル回路基板40のうち展開前に折り曲げ部40Cであった部分における接触子22の接触位置を変化させる動作は不要になる。
【0122】
また、接触子22がフレキシブル回路基板40の折り曲げ部40Cの一部にのみ接触する大きさを有している場合、フレキシブル回路基板40を移動させずに、接触子22を移動させて、折り曲げ部40Cにおける接触子22の接触位置を変化させてもよい。