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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-127119(P2015-127119A)
(43)【公開日】2015年7月9日
(54)【発明の名称】金属張積層体及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20150612BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20150612BHJP
【FI】
   B32B15/08 J
   H05K1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-273159(P2013-273159)
(22)【出願日】2013年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】重松 桜子
(72)【発明者】
【氏名】大野 真
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏男
【テーマコード(参考)】
4F100
5E338
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AK07A
4F100BA02
4F100DC11
4F100GB43
4F100HB40
4F100JN30
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB63
5E338DD12
5E338DD32
5E338DD33
5E338DD34
5E338EE31
5E338EE41
(57)【要約】
【課題】 絶縁樹脂層の視認性の評価を簡易に行うことが可能な金属張積層体及び回路基板を提供する。
【解決手段】 金属張積層体1は、絶縁樹脂層3と、この絶縁樹脂層3の片面に積層された金属層5とを備え、金属層5に、二次元的に分布するドットパターンDPを含む視認性評価部7が設けられている。ドットパターンDPは、金属層5と、金属層5に刻設された開口と、によって形成されていてもよく、あるいは、金属層5に印刷されていてもよい。ドットパターンDPは、白ドットまたは黒ドットの連続部分の長さ、大きさが単一ではなく、2次元的な分布を有していることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された金属層とを備えた金属張積層体であって、
前記金属層に、二次元的に分布するドットパターンを含む視認性評価部が設けられていることを特徴とする金属張積層体。
【請求項2】
前記ドットパターンが、前記金属層と、該金属層に刻設された開口と、によって形成されている請求項1に記載の金属張積層体。
【請求項3】
前記ドットパターンが、前記金属層に印刷されている請求項1に記載の金属張積層体。
【請求項4】
前記ドットパターンは、空間周波数が不均一に形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の金属張積層体。
【請求項5】
前記ドットパターンが、二次元コードと同等以上の空間周波数を有するものである請求項4に記載の金属張積層体。
【請求項6】
前記視認性評価部が、前記金属層を配線加工する工程で位置決めを行うためのアライメント機能を有している請求項1から5のいずれか1項に記載の金属張積層体。
【請求項7】
絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された金属層をパターン形成してなる配線部と
前記金属層をパターン形成してなり、二次元的に分布するドットパターンを含む視認性評価部と、
を備えている回路基板。
【請求項8】
前記ドットパターンが、前記金属層と、該金属層に刻設された開口と、によって形成されている請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
前記ドットパターンは、空間周波数が不均一に形成されている請求項7又は8に記載の回路基板。
【請求項10】
前記ドットパターンが、二次元コードと同等以上の空間周波数を有するものである請求項9に記載の回路基板。
【請求項11】
前記視認性評価部が、前記配線部の位置決めを行うためのアライメント機能を有している請求項7から10のいずれか1項に記載の回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張積層体及びこれを配線加工してなる回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、携帯電話等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
【0003】
FPCの多くは、金属箔と絶縁樹脂層とを積層した金属張積層体の金属箔に回路を形成することで製造される。金属張積層体に対するフォトリソグラフィ工程や、金属張積層体を使用するFPC実装の過程では、金属張積層体に設けられたアライメントマークを基準に接合、切断、露光、エッチング等のさまざまな加工が行われる。これらの工程での加工精度を維持するためには、金属張積層体の絶縁樹脂層を介してアライメントマークを正確に認識することが重要となる。
【0004】
しかし、金属張積層体の絶縁樹脂層の光透過率が小さい場合や、散乱、屈折などが大きい場合、さらに絶縁樹脂層の厚みが不均一で歪が存在する場合などには、絶縁樹脂層の視認性が大幅に低下する。その結果、アライメントマークを正確に認識できず、加工精度の低下を招くおそれがある。このようなことから、出願人は、金属張積層体の絶縁樹脂層などを試料として、その視認性を評価する手法を開発し、先に提案した(特願2013−200417)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、絶縁樹脂層の視認性の評価を簡易に行うことが可能な金属張積層体及び回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属張積層体は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された金属層とを備えたものである。この金属張積層体は、前記金属層に、二次元的に分布するドットパターンを含む視認性評価部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の金属張積層体は、前記ドットパターンが、前記金属層と、該金属層に刻設された開口と、によって形成されていてもよいし、あるいは、前記ドットパターンが、前記金属層に印刷されていてもよい。
【0008】
本発明の金属張積層体において、前記ドットパターンは、空間周波数が不均一に形成されていてもよい。この場合、前記ドットパターンが、二次元コードと同等以上の空間周波数を有するものであってもよい。
【0009】
本発明の金属張積層体は、前記視認性評価部が、前記金属層を配線加工する工程で位置決めを行うためのアライメント機能を有していてもよい。
【0010】
本発明の回路基板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された金属層をパターン形成してなる配線部と、前記金属層をパターン形成してなり、二次元的に分布するドットパターンを含む視認性評価部と、を備えている。
【0011】
本発明の回路基板は、前記ドットパターンが、前記金属層と、該金属層に刻設された開口と、によって形成されていてもよい。
【0012】
本発明の回路基板において、前記ドットパターンは、空間周波数が不均一に形成されていてもよい。この場合、前記ドットパターンが、二次元コードと同等以上の空間周波数を有するものであってもよい。
【0013】
本発明の回路基板は、前記視認性評価部が、前記配線部の位置決めを行うためのアライメント機能を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属張積層体又は回路基板によれば、二次元的に分布するドットパターンを有するので、絶縁樹脂層の視認性を、客観的に、かつ簡易、迅速に評価できる。本発明の金属張積層体又は回路基板を用いることにより、配線形成工程や実装工程での位置合わせの精度を高めることができるため、信頼性の高い電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係る金属張積層体の一部分を示す平面図である。
図2】2/4変調コードを利用したドットパターンの好ましい例を拡大して示す説明図である。
図3】QRコード(登録商標)を利用したドットパターンの好ましい例を拡大して示す説明図である。
図4A】視認性評価部をアライメントマークとして利用する場合の形態例を示す図面である。
図4B】基材側のアライメントマークの一例を示す図面である。
図4C】視認性評価部をアライメントマークとして利用して位置合わせをする状態を説明する図面である。
図5】本発明の一実施の形態にかかるフレキシブル回路基板(FPC)の一部分を示す平面図である。
図6】視認性評価部をアライメントマークとして利用するFPCの形態例を示す図面である。
図7】視認性評価方法の原理を簡略化して示す図面である。
図8】出力画像であるドットパターン像の一部分を拡大して示す図面である。
図9】各ドットの輝度に基づいて作成したヒストグラムを示す図面である。
図10】視認性の評価に使用する視認性評価装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
[金属張積層体]
図1は、本発明の一実施の形態に係る金属張積層体の一部分を示す平面図である。本実施の形態の金属張積層体1は、絶縁樹脂層3と、この絶縁樹脂層3の少なくとも片側の面に積層された金属層5とを備えている。金属張積層体1の金属層5には、二次元的に分布するドットパターンDPを含む視認性評価部7が設けられている。ここで、「視認性」とは、評価対象である絶縁樹脂層を介してその反対側に配置された模様(例えばアライメントマーク)をどの程度正確に認識できるかを示す尺度を意味する。図1では、紙面の手前側が絶縁樹脂層3であり、紙面の奥側が金属層5である。金属張積層体1は、例えばFPCへ加工しやすいように、幅数百mm程度の長尺なシート状とされ、通常、ロール状に巻き取られている。金属張積層体1は、視認性評価専用のサンプルであってもよい。金属張積層体1の好ましい具体例としては、金属層5としての銅箔層と、絶縁樹脂層3としてのポリイミド層とを積層した銅張積層体(CCL)を挙げることができる。
【0018】
<絶縁樹脂層>
本実施の形態の金属張積層体1において、絶縁樹脂層3の材質としては、特に制限はないが、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン66、トリアセチルセルロース、トリアセテート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルフオン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリレート(各種アクリル樹脂)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリフェニレンメタクリレート、ポリジアルフタレート、ポリビニルナフタレン、ポリビニルカルバゾール、各種エポキシ樹脂などを例示できる。なお、後述する回路基板における絶縁樹脂層の材質も同様である。
【0019】
<金属層>
本実施の形態の金属張積層体1における金属層5の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。なお、後述する回路基板における配線層の材質も金属層5と同様である。
【0020】
<視認性評価部>
本実施の形態の金属張積層体1は、金属層5に、二次元的に分布するドットパターンDPを含む視認性評価部7が設けられている。図1では、透明な絶縁樹脂層3を透過して、その奥の金属層5に形成されたドットパターンDPを視認している状態を示している。
【0021】
ドットパターンDPは、金属層5と、金属層5に刻設された開口と、によって形成されていてもよい。この場合、金属層5に対し、フォトリソグラフィ技術を利用してエッチングを行い、所定のパターンの開口を形成することによって、ドットパターンDPを形成できる。
【0022】
また、ドットパターンDPは、金属層5に印刷されていてもよい。この場合、金属層5の絶縁樹脂層3と接する側の面に、例えばインクジェット印刷法、スクリーン印刷法などの任意の手法で所定のドットパターンDPを形成することができる。
【0023】
図2及び図3は、視認性評価部7を構成するドットパターンDPの好ましい例を拡大して示す説明図である。図2及び図3に例示したドットパターンDPは、白黒ドットが任意のドット数(m×n;ここで、m、nは正の整数を意味する)で二次元的に分布する模様である。図2及び図3では、金属張積層体1において、金属層5をエッチングして形成された開口部分を白色で示し、金属層5が残存している部分を黒色で示している。ここで、白ドット(開口部分)と黒ドット(残存部分)の比率は任意であり、例えば白ドット:黒ドットが1:5〜5:1の範囲内となるように配分することができる。
【0024】
視認性評価部7のドットパターンDPは、白ドットまたは黒ドットの連続部分の長さ、大きさが単一ではなく、2次元的な分布を有していることが好ましい。つまり、ドットパターンDPは、空間周波数が単一ではなく、複数の空間周波数が混在し、空間周波数が不均一なパターンであることが好ましい。このようなドットパターンDPは、白ドットと黒ドットを2次元的にランダムに配置することで実現できる。ドットパターンDPとして、任意のデジタル情報を記録した2次元コードと同様の模様を利用してもよい。2次元コードとしては、例えば、QRコード(登録商標)、CPコード、2/4変調コード、3/16変調コード、5/9変調コードなど挙げることができる。つまり、本実施の形態で視認性評価部7に使用するドットパターンDPは、二次元コードと同等以上の空間周波数を有することが好ましい。
【0025】
図2は、2/4変調コードを利用した66×66ドットから成る二次元バーコード様のドットパターンDPを示している。また、図3は、QRコード(登録商標)を利用した33×33ドットから成る二次元バーコード様のドットパターンDPを示している。図2図3において、1ドットは、1辺の長さが例えば0.15mmの大きさの正四角形とすることができる。
【0026】
なお、視認性評価部7におけるドットパターンDP全体の形状、ドット数、各ドットの大きさ、各ドットの形状などは、特に限定されるものではなく、適宜設定できる。また、視認性評価部7における各ドットの大きさは、均一でなくてもよい。また、視認性評価部7のドットパターンDPとしては、空間周波数が複雑に変化する画像、例えば動植物、風景などを微細なドットによって表現したものを使用してもよい。さらに、視認性評価部7としては、白黒の2値に限らず、例えばRGBの三原色による印刷パターンであってもよい。
【0027】
また、視認性評価部7は、金属層5を配線加工する工程で位置決めを行うためのアライメントマークとしての機能を有していてもよい。図4Aは、視認性評価部7をアライメントマークとして利用する場合の形態例を示している。この例では、金属張積層体1に形成された視認性評価部7は平面視凸形状をなしており、この凸形状の一部分もしくは全体(図4Aでは一部分)に二次元的に分布するドットパターンDPが形成されている。この場合、凸形状の視認性評価部7の全体がアライメントマークとして機能する。なお、図4Aでは、紙面の手前側が金属張積層体1の金属層5であり、紙面の奥側が絶縁樹脂層3である。従って、視認性評価部7は、金属層5が凸形状の輪郭でエッチング除去された領域であり、その領域の中にドットパターンDPをなすように金属層5が部分的に残存している。
【0028】
一方、図4Bに示すように、金属張積層体1の加工を行うガラス板などの基材10には、位置合わせの目印となる平面視凹形状のアライメントマーク11が描かれている。従って、図4Cに示すように、金属張積層体1の視認性評価部7の凸形状と基材10のアライメントマーク11の凹形状とが嵌り合うように、上下に位置合わせをすることによって、基材10上における金属張積層体1の位置決めを行うことができる。基材10上に金属張積層体1を正確に位置決めして配置することによって、配線形成工程における金属層5のエッチングを高精度に行うことができる。
【0029】
[回路基板]
本実施の形態の回路基板は、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された金属層をパターン形成してなる配線部と、金属層をパターン形成してなり、二次元的に分布するドットパターンDPを含む視認性評価部7と、を備えている。図5は、本発明の一実施の形態にかかるフレキシブル回路基板(FPC)20の一部分を示す平面図である。このFPC20は、絶縁樹脂層21と、この絶縁樹脂層21の片面にパターン形成された複数の配線23を含む配線部25と、二次元的に分布するドットパターンDPを含む視認性評価部7と、を備えている。図5では、紙面の手前側に複数の配線23が形成されており、紙面の奥側が絶縁樹脂層21である。FPC20は、長辺の長さが例えば数十〜数百mmの長方形に形成されている。このFPC20は、例えば図1の金属張積層体1を配線に加工することによって形成できる。
【0030】
視認性評価部7のドットパターンDPは、配線23を形成する領域以外の部分の金属層をパターン形成することによって形成されている。すなわち、FPC20において、視認性評価部7のドットパターンDPは、金属層と、金属層に刻設された開口と、によって形成されていている。この場合、金属層に対し、フォトリソグラフィ技術を利用してエッチングし、所定のパターンの開口を形成することによって、ドットパターンDPを形成できる。ドットパターンDPの形成は、配線の形成と同時に行うことができる。FPC20における視認性評価部7の構成は、図1に示した金属張積層体1における視認性評価部7と同様である。
【0031】
本実施の形態のFPC20を作成する方法は問われない。例えば、絶縁樹脂層21と金属層で構成される金属張積層体(図1参照)を用意し、例えばフォトリソグラフィ技術を利用して金属層を所定形状にエッチングすることによってパターン形成し、配線23を形成するとともに、視認性評価部7のドットパターンDPを形成することができる。視認性評価部7は、配線形成領域以外の領域において、任意の位置に形成することができる。
【0032】
また、本実施の形態のFPC20において、視認性評価部7は、FPC20の実装工程における配線23の位置決めを行うためのアライメントマークとしての機能を有していてもよい。図6は、視認性評価部7をアライメントマークとして利用する場合の形態例を示している。図6において、視認性評価部7の凸形状は、金属層5がエッチングされずに残存した領域であり、その領域の中で金属層5が部分的に除去されてドットパターンDPをなすように複数の開口が形成されている。このように、視認性評価部7をアライメントマークとして機能させることによって、FPC20を実装する際の配線23の接続を正確に行うことが可能になり、FPC20を用いる電子機器の信頼性を高めることができる。
【0033】
[視認性の評価方法]
次に、図7図9を参照しながら、本実施の形態の金属張積層体1又はFPC20における絶縁樹脂層3又は21の視認性を評価する方法について説明する。この視認性の評価方法は、以下の工程A〜工程Cを含むことができる。なお、視認性評価部7を利用して視認性を評価する方法は、以下に例示する手法に限るものではない。
【0034】
工程A)
試料である視認性評価部7の絶縁樹脂層3又は21を介して、撮像装置によってドットパターンDPを撮影し、撮影されたドットパターン像DPIを出力画像として生成させる工程:
図7は、視認性評価方法の原理を簡略化して示している。この視認性の評価方法では、入力画像であるドットパターンDPと撮像装置との間に、試料として、視認性評価部7の絶縁樹脂層3又は21を介在させた状態でドットパターンDPの撮影を行う。
【0035】
視認性評価部7の絶縁樹脂層3又は21を介して撮影されたドットパターン像DPIは、絶縁樹脂層3又は21の存在によって、入力画像である元のドットパターンDPとは異なるものとなる。この相違を、工程B以降で輝度を元に数値化し、絶縁樹脂層3又は21の視認性を評価する。絶縁樹脂層3又は21を介さずに撮影を行った場合(リファレンス)や、絶縁樹脂層3又は21の光線透過率が100%で、屈折や散乱が全く生じない場合には、理論上、出力画像であるドットパターン像DPIは、元のドットパターンDPとほぼ一致する。なお、出力画像であるドットパターン像DPIには、画像処理として、例えばマーカー検出、傾き補正、トリミングなどを施すことができる。
【0036】
工程B)
出力画像を入力画像である元のドットパターンDPと同じドット数に分割するとともに、各ドットを2以上の種類に分類し、分類された各種類のドット毎に輝度を数値化して度数分布を求め、種類毎に輝度の平均値及び標準偏差を演算する工程:
図8は、出力画像であるドットパターン像DPIの一部分を拡大して示している。出力画像は、入力画像と同じドット数(m×nドット)に分割される。そして、すべてのドットについて、入力画像のドットを基に2以上の種類に分類する。本実施の形態では、出力画像の各ドットを、入力画像のドットを基に、黒ドット又は白ドットの2種類に分類している。そして、分類された各種類のドット毎に輝度を数値化して度数分布を求める。
【0037】
図9は、各ドットの輝度に基づいて作成したヒストグラムを示している。この例では、黒ドットを「0」、白ドットを「1」とし、輝度の信号レベル(図9の横軸)を256スケールに区分してヒストグラムを作成している。このヒストグラムに基づき、黒ドットの分布と、白ドットの分布のそれぞれについて、輝度の平均値μ,μと標準偏差σ,σが算出される。
【0038】
工程C)
輝度の平均値及び標準偏差から、下式(1)に基づき、信号ノイズ比(SNR値)を算出する工程:
【0039】
【数1】
[式中、μは黒ドットの輝度の平均値、μは白ドットの輝度の平均値、σは黒ドットの輝度の標準偏差、σは白ドットの輝度の標準偏差を意味する。]
【0040】
図9において、白ドットの輝度の平均値μと黒ドットの輝度の平均値μとの差分は信号強度Sを示している。また、白ドットの輝度の標準偏差σと黒ドットの輝度の標準偏差σとの差分は、ノイズ強度Nを示している。そして、上記式(1)より、信号ノイズ比(SNR値)を算出することによって、金属張積層体1又は回路基板の絶縁樹脂層3又は21の視認性を客観的な数値データとして評価することができる。また、算出されたSNR値を、例えば絶縁樹脂層3又は21を介さずにドットパターンDPを撮影し、工程B、Cと同様の処理を行って得られるリファレンスのSNR値と比較することによって評価してもよい。
【0041】
[視認性評価装置]
図10は、上記方法で視認性の評価を行うための視認性評価装置の概略構成図である。ここでは、試料として、二次元的なドットパターンDPが形成された金属張積層体1を用いる場合を例に挙げて、視認性評価装置100の構成と機能について説明する。
【0042】
視認性評価装置100は、金属張積層体1の視認性評価部7に向けて光を照射する光源103と、金属張積層体1に形成された入力画像であるドットパターンDPを撮像する撮像装置105とを備えている。
【0043】
金属張積層体1は、絶縁樹脂層3と金属層5を備えている。金属張積層体1としては、金属層5に、ドットパターンDPに対応する開口を形成したもの、あるいは、ドットパターンDPを印刷したものなどを使用することができる。金属層5にドットパターンDPに対応する開口を形成する場合は、必要に応じて、金属層5の裏面側に、黒色又は白色の板材や紙などを貼り合わせてもよい。本実施の形態では、金属張積層体1の絶縁樹脂層3が、視認性評価の対象である試料となる。金属張積層体1は、試料である絶縁樹脂層3が撮像装置105に対向するように配置される。
【0044】
光源103は、一つないし複数個を配備することができる。光源103は、金属張積層体1の裏面側(金属層5側)、又は表面側(絶縁樹脂層3側)へ向けて光を照射する。
【0045】
撮像装置105は、例えばCCDやCMOSイメージセンサなどの撮像素子(図示省略)を備えている。
【0046】
また、金属張積層体1と撮像装置105との間には、レンズ107を配備することができる。レンズ107は、撮像装置105の撮像素子(図示省略)に結像させるためのレンズである。
【0047】
また、視認性評価装置100は、画像処理及び演算処理を行う制御部110を備えている。視認性評価装置100の各構成部は、制御部110に接続されて制御される構成となっている。制御部110は、CPUを備えたコントローラ111と、ユーザーインターフェース112と、記憶部113とを備えている。コントローラ111は、コンピュータ機能を有しており、視認性評価装置100において、各構成部を統括して制御するとともに、撮像装置105で生成される出力画像であるドットパターン像DPIについて、画像処理や演算処理を行う。ユーザーインターフェース112は、管理者が視認性評価装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、出力画像や演算結果を可視化して表示するディスプレイ等から構成される。記憶部113には、視認性評価装置100で実行される処理をコントローラ110の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が保存されている。ユーザーインターフェース112および記憶部113は、コントローラ111に接続されている。
【0048】
以上の構成を有する視認性評価装置100では、光源103から金属張積層体1の視認性評価部7へ光を照射しながら、視認性評価部7の金属層5に形成された二次元のドットパターンDPを、絶縁樹脂層3を介して撮像装置105によって撮像する。
【0049】
撮像装置105によって撮像された出力画像としてのドットパターン像DPIに対し、制御部110において、上記工程B及び工程Cの処理が行われ、信号ノイズ比(SNR値)を算出することによって、試料(金属張積層体1の絶縁樹脂層3)の視認性を客観的な数値データとして評価することができる。また、算出されたSNR値を、視認性評価装置100において金属張積層体1の絶縁樹脂層3を介さずにドットパターンDPを撮影し、工程B、Cの処理を行ったリファレンスのSNR値と比較することによって、試料である絶縁樹脂層3の視認性を評価してもよい。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、金属張積層体1及びFPC20として、絶縁樹脂層3又は21の片側に金属層5又は配線23を有する場合を例示したが、絶縁樹脂層3又は21の両側に金属層又は配線を有する両面金属張積層体又は両面回路基板であってもよい。この場合、視認性評価部7へ光線を入射できるように、視認性評価部7とは反対側の面の金属層を除去しておけばよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、視認性評価装置100を使用する視認性評価方法を例示したが、視認性評価を行うための方法及び装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1…金属張積層体、3…絶縁樹脂層、5…金属層、7…視認性評価部、20…フレキシブル回路基板(FPC)、21…絶縁樹脂層、23…配線、25…配線部、DP…ドットパターン、DPI…ドットパターン像、100…視認性評価装置、110…制御部、111…コントローラ、112…ユーザーインターフェース、113…記憶部
図1
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図9
図10
図2
図3
図7
図8