【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の問題点を解決すべく鋭意研究を進めた結果、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、遮光材等を含む黒色感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性樹脂として特定の構造を有する2種類を使用することにより、パターンの直線性、細線形成能を保持した上で、耐高温高湿性、耐光密着性にも優れるタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物が得られることを見出した。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
【0009】
(1)本発明は、(A)ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、及び(D)遮光材を含有するタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物であり、
固形分中(A)が20〜40質量%、(B)が5〜20質量%、(C)が(A)と(B)の合計量100質量部に対して2〜30質量部であり、さらに固形分中(D)が40〜60質量%であり、また、上記アルカリ可溶性樹脂(A)は、(A−1)ビスフェノールA骨格を有するアルカリ可溶性樹脂を50〜90質量%含有すると共に、(A−2)ビスフェノールフルオレン骨格を有するアルカリ可溶性樹脂を10〜50質量%含有し、(A−1)ビスフェノールA骨格を有するアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量Mwが2000〜50000の範囲であることを特徴とするタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物である。
【0010】
(2)本発明はまた、上記(1)のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物に、さらに、(E)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物又はエポキシ樹脂を組成物の固形分中0.5〜10質量%含有することを特徴とするタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物である。
【0011】
(3)本発明はまた、上記(1)または(2)の黒色感光性樹脂組成物をフォトリソグラフィー法によりパターニングした後、引き続き熱硬化させることにより得られる硬化物である。
【0012】
(4)本発明はまた、これら硬化物を有するタッチパネルである。
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物における(A)は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂であり、(A−1)ビスフェノールA骨格を有するアルカリ可溶性樹脂と、(A−2)ビスフェノールフルオレン骨格を有するアルカリ可溶性樹脂とを必須成分として含む。ビスフェノールA骨格を有するとは、ビスフェノールAから誘導された骨格に加え、ビスフェノールAのベンゼン環の一部にアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ハロゲンといった置換基(アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基の一部が、さらに、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ハロゲンで置換されたものを含む。以下、このような場合には、「置換されていてもよいアルキル基」等と記すものとする。)が結合した骨格、およびビスフェノールAのアルキル基の一部がハロゲンで置換された骨格を含む。ビスフェノールフルオレン骨格を有するとは、ビスフェノールフルオレンから誘導された骨格、およびビスフェノールフルオレンのベンゼン環の一部が、「置換されていてもよいアルキル基」、「置換されていてもよいシクロアルキル基」、「置換されていてもよいフェニル基」、ハロゲンといった置換基で置換された骨格を含む。
【0015】
(A)の原料となるビスフェノール類としては、(A−1)ビスフェノールA骨格を有するものとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。また、(A−2)ビスフェノールフルオレン骨格を有するものとしては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。また、その他のビスフェノール類を上記(A−1)及び(A−2)と併用することも可能であり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0016】
(A)のアルカリ可溶性樹脂を得るに当たっては、上記ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物を得る。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、下記一般式(I)のエポキシ化合物を得ることになる。この反応は、ビスフェノール類として、ビスフェノールA骨格を有するもの、ビスフェノールフルオレン骨格を有するもの、その他のビスフェノール類を使用する場合に共通であるので、以下は、骨格を限定せずビスフェノール類を原料とする反応経路を示す。
【化1】
一般式(I)の式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニル基又は直結合を表す。lは0〜10の整数である。好ましいR
1、R
2、R
3及びR
4は水素原子であり、好ましいAは、−C(CH
3)
2−若しくは−C(CF
3)
2−、又は9,9−フルオレニル基である。また、lは通常は複数の値が混在するため平均値0〜10(整数とは限らない)となるが、好ましいlの平均値は0〜3である。lの値が上限値を超えると、当該エポキシ化合物使用して合成したアルカリ可溶性樹脂を用いた黒色感光性樹脂組成物としたときに組成物の粘度が大きくなりすぎて塗工がうまく行かなくなったり、アルカリ可溶性を十分に付与できずアルカリ現像性が非常に悪くなったりする。
【0017】
次に、一般式(I)の化合物に対して、例えば不飽和基含有モノカルボン酸としてアクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの両方を反応させ、これにより得られたヒドロキシ基を有する反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させる。その際、(a)/(b)のモル比が0.01〜10となる範囲で反応させることが好ましい。そして、下記一般式(II)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物の構造を有するアルカリ可溶性樹脂を得る。
【化2】
〔式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、R
5は、水素原子又はメチル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニル基又は直結合を表し、Xは4価のカルボン酸残基を表し、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して水素原子又は−OC−Z−(COOH)
m(但し、Zは2価又は3価カルボン酸残基を表し、mは1〜2の数を表す)を表し、nは1〜20の整数を表す。〕
【0018】
このエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物(II)は、重合性不飽和基とカルボキシル基とを併せ持ち、尚且つ、ビスフェノールA骨格を有するものとビスフェノールフルオレン骨格を有するものとを必須成分として含有したアルカリ可溶性樹脂であり、優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与え、かつ耐高温高湿性、耐光密着性も良好なタッチパネル用黒色膜パターンが得られるものである。
【0019】
本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用される(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物や脂環式ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、芳香族ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の化合物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。また、脂環式ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の化合物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。更に、芳香族ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の化合物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。
【0020】
また、本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用される(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物、又は、芳香族多価カルボン酸又はその酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等があり、更には任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。また、脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等があり、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。更に、芳香族テトラカルボン酸やその酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸二無水物が挙げられ、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。
【0021】
本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に使用される(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物と(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、上述したように0.01〜10であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0となる範囲である。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると最適分子量が得られず、(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物において、アルカリ現像性、耐熱性、耐溶剤性、パターン形状等が劣化するので好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほどアルカリ溶解性が大となり、分子量が大となる傾向がある。
【0022】
また、本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物において、ビスフェノールA骨格を有する(A−1)は、重量平均分子量(Mw)が2000〜50000の範囲である必要があり、5000〜20000の範囲であることが好ましい。また、フルオレン骨格を有する(A−2)は、重量平均分子量(Mw)が2000〜50000の範囲であることが好ましく、2000〜7000の間であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が2000に満たないと(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物の現像時のパターンの密着性が維持できず、パターン剥がれが生じ、また、重量平均分子量(Mw)が50000を超えると現像残渣や未露光部の残膜が残り易くなる。更に、(A)は、その酸価が30〜200mgKOH/gの範囲であることが望ましい。この値が30mgKOH/gより小さいと(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物のアルカリ現像がうまくできないか、強アルカリ等の特殊な現像条件が必要となり、200mgKOH/gを超えると(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物へのアルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎ、剥離現像が起きるので、何れも好ましくない。
【0023】
本発明で利用される一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、上述の工程により、既知の方法、例えば特開平8-278629号公報や特開2008-9401号公報等に記載の方法により製造することができる。先ず、一般式(I)のエポキシ化合物に不飽和基含
有モノカルボン酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と等モルの不飽和基含有モノカルボン酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90〜120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法としては、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90〜130℃で加熱・攪拌して反応させるという方法がある。
【0024】
本発明のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物における(B)少なくとも1個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、当該少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは、光重合性基を3個以上有して不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋することができるものを用いることが好ましい。なお、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
【0025】
本発明のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物における(C)光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のo-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。この中でも、高感度の黒色感光性樹脂組成物を得られやすい観点から、o-アシルオキシム系化合物類を用いることが好ましい。また、これら光重合開始剤を2種類以上使用することもできる。なお、本発明でいう光重合開始剤とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0026】
本発明のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物における(D)遮光材としては、黒色有機顔料、混色有機顔料又は無機系顔料等を特に制限なく用いることができる。黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる少なくとも2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。無機系顔料としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、酸窒化チタン、チタン窒化物等を挙げることができる。これらの遮光材は、いずれか1種類単独でも2種以上を適宜選択して用いることもできるが、特にカーボンブラックが、遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との親和性が良好な点で好ましい。
【0027】
本発明のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物における(E)エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む重合体、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)メチルに代表される脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えばDIC社製商品名HP7200シリーズ)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えばダイセル社製商品名「EHPE3150」)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば日本曹達社製商品名「NISSO−PB・JP−100」)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等を挙げることができる。これら成分としてはエポキシ当量が100〜2000g/eqかつ数平均分子量が100〜10000の化合物であることが好ましい。さらに、1分子中にエポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物を用いることがより好ましい。なお、(E)は、1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の黒色感光性樹脂組成物においては、上記(A)〜(E)の他に溶剤を使用して粘度を調整することが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0029】
また、本発明の黒色感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、溶剤、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、消泡剤やレベリング剤としては、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。また、界面活性剤としてはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができ、カップリング剤としては3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤を挙げることができる。
【0030】
黒色感光性樹脂組成物中の(A)〜(D)の各成分の構成割合については、組成物の固形分(光硬化反応により固形分となるモノマー成分を含む)中において、(A)が20〜40質量%、(B)が5〜20質量%、(C)が(A)と(B)の合計量の100質量部に対して2〜30質量部であり、(D)が40〜60質量%である。そして、(A)のアルカリ可溶性樹脂において、(A−1)ビスフェノールA骨格を有するアルカリ可溶性樹脂が50〜90質量%であり、(A−2)ビスフェノールフルオレン骨格を有するアルカリ可溶性樹脂が10〜50質量%である。(A−1)が50質量%未満であると、塗膜の耐光密着性が十分に確保できず、一方、(A−2)が10%未満になると、パターン形成能が十分に得られず、特に10μm以下のパターン形成が良好にできなくなる。(E)を併用する場合は、(E)が組成物の固形分中0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0031】
本発明のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(D)または(A)〜(E)成分を主成分として含有する。感光性樹脂組成物においては、溶剤を除いた固形分(光硬化後に固形分となるモノマー成分を含む)中に、主成分が合計で70質量%以上、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上含むことがよい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物中60〜90質量%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明のタッチパネル用黒色膜は、本発明のタッチパネル用黒色感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成される。その製造工程としては、先ず、感光性樹脂組成物を基板表面に塗布し、次いで溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、このようにして得られた被膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、更に後乾燥としてポストベークを行う方法が挙げられる。ここで、感光性樹脂組成物を塗布する基板としては、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等が用いられる。
【0033】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法を採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60〜110℃の温度で1〜3分間行われる。
【0034】
プリベーク後に行われる露光は、露光機によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分の感光性樹脂組成物のみを感光させる。露光機及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、被膜中の感光性樹脂組成物を光硬化させる。
【0035】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分の感光性樹脂組成物を除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を0.03〜1重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜27℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細なパターンを精密に形成することができる。
【0036】
このようにして現像した後、200〜240℃の温度、20〜60分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた黒色膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明の硬化物は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。