特開2015-12848(P2015-12848A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-12848(P2015-12848A)
(43)【公開日】2015年1月22日
(54)【発明の名称】コーティング用チョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20060101AFI20141219BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20141219BHJP
   A21D 15/08 20060101ALI20141219BHJP
【FI】
   A23G1/00
   A21D15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-142476(P2013-142476)
(22)【出願日】2013年7月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春成 麻未
(72)【発明者】
【氏名】天辻 航一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 るり
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勉
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB02
4B014GE02
4B014GG06
4B014GG14
4B014GL06
4B032DE06
4B032DK70
4B032DL20
(57)【要約】
【課題】
食品を均一にコーティングすることができ、コーティングする食品のコーティングを望まない部分に垂れにくく、艶が良好であるコーティング用チョコレートを提供することである。
【解決手段】
乳化剤A(ベヘン酸含量65質量%以上のポリグリセリン脂肪酸エステル)を含有し、かつ、乳化剤B(パルミチン酸含量70質量%以上のショ糖脂肪酸エステル及び/又はエルカ酸含量80質量%以上のショ糖脂肪酸エステル)及び/又は乳化剤C(パルミチン酸含量20〜40質量%、ステアリン酸含量20〜40質量%、オレイン酸含量30〜50質量%のショ糖脂肪酸エステル、パルミチン酸含量30〜50質量%、オレイン酸含量40〜60質量%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン縮合リシノール酸エステル)を含有するコーティングチョコレートであって、乳化剤Aの含量が0.01〜1質量%、乳化剤Bの含量が0.01〜1質量%、乳化剤Cの含量が0.01〜0.5質量%であるコーティング用チョコレート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記乳化剤Aを含有し、かつ、下記乳化剤B及び/又は下記乳化剤Cを含有するコーティングチョコレートであって、下記乳化剤Aの含量が0.01〜1質量%、下記乳化剤Bの含量が0.01〜1質量%、下記乳化剤Cの含量が0.01〜0.5質量%であるコーティング用チョコレート。
乳化剤A:構成脂肪酸中のベヘン酸含量が65質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤B:構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が70質量%以上であるショ糖脂肪酸エステル及び構成脂肪酸中のエルカ酸含量が80質量%以上であるショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種
乳化剤C:構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が20〜40質量%、ステアリン酸含量が20〜40質量%、オレイン酸含量が30〜50質量%であるショ糖脂肪酸エステル、構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が30〜50質量%、オレイン酸含量が40〜60質量%であるポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上
【請求項2】
請求項1に記載のコーティング用チョコレートでコーティングされた食品。
【請求項3】
前記食品がベーカリー製品である請求項2に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用チョコレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、チョコレートのみからなる製品以外に、チョコレートと他の食品とを組み合わせた製品にも利用されている。チョコレートと他の食品とを組み合わせた製品のうち、チョコレートがコーティングされたドーナツ、パン、ケーキ、シュー、エクレア、ビスケット等のベーカリー製品、菓子は、非常に人気のある製品であり、需要が高く、広く市場に流通している。
【0003】
ベーカリー製品、菓子等の食品のコーティング用途に使用されるチョコレートは、コーティングして固化した後、購買意欲、喫食意欲を高めるために艶を有することが必要である。コーティングして固化した後の艶が良好であるコーティング用途のチョコレートとしては、例えば、特許文献1〜5のチョコレートが提案されている。
【0004】
また、食品をチョコレートでコーティングする場合、食品の全部分ではなく、食品の一部分をコーティングすることがある。このような場合、コーティングする食品のコーティングを望まない部分(チョコレートをコーティングしない部分)にチョコレートが垂れることがある。コーティングする食品のコーティングを望まない部分にチョコレートが垂れると、製品の外観が悪くなる。製品の外観は、購買意欲、喫食意欲に影響するため、商品価値の決める上で重要な要素の1つである。例えば、上半分のみをチョコレートでコーティングしたドーナツにおいて、コーティングした後にチョコレートがドーナツの下半分の部分に垂れると、製品の見た目が悪くなり、商品価値が低下する。従って、食品の一部分をチョコレートでコーティングする場合は、コーティングする食品のコーティングを望まない部分にチョコレートが垂れにくいことが必要である。
【0005】
食品の一部分をチョコレートでコーティングする場合において、コーティングする食品のコーティングを望まない部分にチョコレートが垂れにくくする方法としては、チョコレートの粘度を高くすることが考えられる。確かに、粘度の高いチョコレートを使用すると、コーティングする食品のコーティングを望まない部分にチョコレートが垂れにくくなる。しかし、粘度の高いチョコレートを使用した場合、食品にコーティングされるチョコレートの量にバラツキが生じるため、チョコレートが均一にコーティングされないという問題があった。
従って、食品の一部分をチョコレートでコーティングする場合において、食品にチョコレートを均一にコーティングすること及び食品のコーティングを望まない部分にチョコレートが垂れにくくすることを両立させるということは、非常に難しい課題であった。実際に、前記した特許文献1〜5のコーティング用チョコレートは、艶が良好でであっても、このような課題を解決するようなものではなかった。
【0006】
以上のような背景から、食品を均一にコーティングすることができ、食品のコーティングを望まない部分に垂れにくく、艶が良好であるコーティング用チョコレートの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−133693号公報
【特許文献2】特開平10−108624号公報
【特許文献3】特開2008−113570号公報
【特許文献4】特開2009−17821号公報
【特許文献5】国際公開第2009/57451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、食品を均一にコーティングすることができ、コーティングする食品のコーティングを望まない部分に垂れにくく、艶が良好であるコーティング用チョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、チョコレートに特定の乳化剤を特定量配合すると、食品を均一にコーティングすることができ、コーティングする食品のコーティングを望まない部分に垂れにくく、艶が良好であるコーティング用チョコレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記乳化剤Aを含有し、かつ、下記乳化剤B及び/又は下記乳化剤Cを含有するコーティングチョコレートであって、下記乳化剤Aの含量が0.01〜1質量%、下記乳化剤Bの含量が0.01〜1質量%、下記乳化剤Cの含量が0.01〜0.5質量%であるコーティング用チョコレートである。
乳化剤A:構成脂肪酸中のベヘン酸含量が65質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤B:構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が70質量%以上であるショ糖脂肪酸エステル及び構成脂肪酸中のエルカ酸含量が80質量%以上であるショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種
乳化剤C:構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が20〜40質量%、ステアリン酸含量が20〜40質量%、オレイン酸含量が30〜50質量%であるショ糖脂肪酸エステル、構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が30〜50質量%、オレイン酸含量が40〜60質量%であるポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上
本発明の第2の発明は、第1の発明に記載のコーティング用チョコレートでコーティングされた食品である。
本発明の第3の発明は、前記食品がベーカリー製品である第2の発明に記載の食品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、食品を均一にコーティングすることができ、コーティングする食品のコーティングを望まない部分に垂れにくく、艶が良好であるコーティング用チョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、下記乳化剤Aを含有し、かつ、下記乳化剤B及び/又は下記乳化剤Cを含有するコーティングチョコレートであって、下記乳化剤Aの含量が0.01〜1質量%、下記乳化剤Bの含量が0.01〜1質量%、下記乳化剤Cの含量が0.01〜0.5質量%であることを特徴とする。
乳化剤A:構成脂肪酸中のベヘン酸含量が65質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤B:構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が70質量%以上であるショ糖脂肪酸エステル及び構成脂肪酸中のエルカ酸含量が80質量%以上であるショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種
乳化剤C:構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が20〜40質量%、ステアリン酸含量が20〜40質量%、オレイン酸含量が30〜50質量%であるショ糖脂肪酸エステル、構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が30〜50質量%、オレイン酸含量が40〜60質量%であるポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上
【0013】
本発明においてチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造されたもののことである。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートも含むものである。
【0014】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、乳化剤Aを含有する。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートに配合する乳化剤Aは、構成脂肪酸中のベヘン酸(炭素数22の直鎖飽和脂肪酸)含量が65質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルである。乳化剤Aであるポリグリセリン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸中のベヘン酸含量が65質量%以上であり、好ましくは68質量%以上であり、より好ましくは70〜85質量%である。また、乳化剤Aであるポリグリセリン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸中のエルカ酸(炭素数22の1価の直鎖不飽和脂肪酸)含量が好ましくは3〜15質量%であり、より好ましくは5〜13質量%であり、更に好ましくは5〜10質量%である。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、乳化剤Aの含量が0.01〜1質量%であり、好ましくは0.05〜0.8質量%であり、より好ましくは0.2〜0.7質量%である。
乳化剤Aの構成脂肪酸の組成、含量が前記範囲にあると、チョコレートは、食品を均一にコーティングすることができ、コーティングする食品のコーティングを望まない部分に垂れにくくなる。
【0015】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、乳化剤B及び/又は乳化剤Cを含有する。
【0016】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートに配合する乳化剤Bは、構成脂肪酸中のパルミチン酸(炭素数16の直鎖飽和脂肪酸)含量が70質量%以上であるショ糖脂肪酸エステル及び構成脂肪酸中のエルカ酸含量が80質量%以上であるショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上である。乳化剤Bの1つである構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が70質量%以上であるショ糖脂肪酸エステルは、パルミチン酸含量が好ましくは73質量%以上であり、より好ましくは75〜85質量%である。乳化剤Bの1つである構成脂肪酸中のエルカ酸含量が80質量%以上であるショ糖脂肪酸エステルは、エルカ酸含量が好ましくは83質量%以上であり、より好ましくは85〜95質量%である。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、乳化剤Bの含量が0.01〜1質量%であり、好ましくは0.05〜0.8質量%であり、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。乳化剤Bの構成脂肪酸の組成、含量が前記範囲にあると、チョコレートは、艶が良好になる。
【0017】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートに配合する乳化剤Cは、構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が20〜40質量%、ステアリン酸(炭素数18の直鎖飽和脂肪酸)含量が20〜40質量%、オレイン酸(炭素数18の1価の直鎖不飽和脂肪酸)含量が30〜50質量%であるショ糖脂肪酸エステル、構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が30〜50質量%、オレイン酸含量が40〜60質量%であるポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上である。乳化剤Cの1つである構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が20〜40質量%、ステアリン酸含量が20〜40質量%、オレイン酸含量が30〜50質量%であるショ糖脂肪酸エステルは、パルミチン酸含量が好ましくは23〜37質量%、より好ましくは25〜35質量%であり、ステアリン酸含量が好ましくは23〜37質量%、より好ましくは25〜35質量%であり、オレイン酸含量が好ましくは33〜47質量%、より好ましくは35〜45質量%である。乳化剤Cの1つである構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が30〜50質量%、オレイン酸含量が40〜60質量%であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、パルミチン酸含量が好ましくは33〜47質量%、より好ましくは35〜45質量%であり、オレイン酸含量が好ましくは43〜57質量%、より好ましくは45〜55質量%である。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、乳化剤Cの含量が0.01〜0.5質量%であり、好ましくは0.01〜0.3質量%であり、より好ましくは0.02〜0.2質量%である。乳化剤Cの構成脂肪酸の組成、含量が前記範囲にあると、チョコレートは、艶が良好になる。
【0018】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、前記乳化剤A、乳化剤B、乳化剤C以外のその他の乳化剤を使用することもできる。その他の乳化剤としては、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン等のレシチン類等が挙げられる。
【0019】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、好ましくは油脂を含有する。油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等を使用することができる。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、好ましくはラウリン系油脂を含有する。本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、油脂中のラウリン系油脂含量が好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85〜95質量%である。本発明においてラウリン系油脂とは、構成脂肪酸中のラウリン酸(炭素数12の直鎖飽和脂肪酸)含量が30質量%以上である油脂のことである。ラウリン系油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム核油やこれらの混合油、加工油脂等が挙げられる。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、油脂含量が好ましくは25〜60質量%、より好ましくは30〜55質量%、更に好ましくは35〜50質量%である。なお、本発明において油脂は、配合する油脂以外に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)由来の油脂(ココアバター、乳脂等)も含むものである。
【0020】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、好ましくは糖類を含有する。糖類としては、例えば、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、デキストリン等を使用することができる。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、糖類含量が好ましくは30〜65質量%であり、より好ましくは35〜60質量%であり、更に好ましくは38〜55質量%である。
【0021】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、乳化剤、油脂、糖類以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0022】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、水分含量が好ましくは3質量%以下である。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、好ましくはノンテンパリング型チョコレートである。
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、好ましくは冷蔵又は室温で保存する食品のコーティングに使用される。
【0023】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、従来公知の方法により製造することができる。本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖類、乳製品、乳化剤(前記乳化剤A、乳化剤B、乳化剤C等)等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。
【0024】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、好ましくはノンテンパリング型チョコレートである。
【0025】
本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、食品を均一にコーティングすることができて、しかも食品のコーティングを望まない部分に垂れにくいものである。このため、本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、食品の一部分をコーティングする用途に適している。また、本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートは、艶が良好なものである。
【0026】
本発明の実施の形態に係る食品は、本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートでコーティングされたことを特徴としている。
本発明の実施の形態に係る食品としては、例えば、ドーナツ、食パン、コッペパン、フルーツブレッド、バターロール、フランスパン、ロールパン、菓子パン、スイートドウ、乾パン、マフィン、ベーグル、クロワッサン、デニッシュペーストリー等のベーカリー製品、カステラ、ワッフル、ボーロ、八つ橋、せんべい、かりんとう、スポンジケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ、バウムクーヘン、フルーツケーキ、マドレーヌ、シュー、エクレア、ミルフィーユ、パイ、タルト、マカロン、ビスケット、クッキー、クラッカー、蒸しパン、プレッツェル、ウエハース、スナック菓子、クレープ、スフレ等の菓子、バナナ、りんご、イチゴ等の果物等が挙げられる。本発明の実施の形態に係る食品は、好ましくはベーカリー製品であり、より好ましくはドーナツである。
【0027】
本発明の実施の形態に係る食品は、チョコレートが均一にコーティングされていて、しかもコーティングを望まない部分へのチョコレートの垂れが少ないものである。また、本発明の実施の形態に係る食品は、コーティングされたチョコレートが艶を有するものである。このため、本発明の実施の形態に係る食品は、外観(見た目)が良く、商品価値の高いものである。
【0028】
本発明の実施の形態に係る食品は、従来公知の方法によって、本発明の実施の形態に係るコーティング用チョコレートを、食品にコーティングすることで製造することができる。
【実施例】
【0029】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
乳化剤、油脂は以下のものを使用した。
乳化剤A−1(ポリグリセリン脂肪酸エステル:ベヘン酸含量77.0質量%、エルカ酸含量8.9質量%)
乳化剤A−2(ポリグリセリン脂肪酸エステル:ベヘン酸含量74.8質量%、エルカ酸含量0質量%)
乳化剤a−1(ポリグリセリン脂肪酸エステル:ベヘン酸含量14.6量%)
乳化剤a−2(ポリグリセリン脂肪酸エステル:ステアリン酸含量99.1質量%、ベヘン酸含量0質量%)
乳化剤a−3(ポリグリセリン脂肪酸エステル:パルミチン酸含量57.8質量%、ベヘン酸含量0質量%)
乳化剤B−1(ショ糖脂肪酸エステル:パルミチン酸含量80.0質量%)
乳化剤B−2(ショ糖脂肪酸エステル:エルカ酸含量90.0質量%)
乳化剤C−1(ショ糖脂肪酸エステル:パルミチン酸含量30.0質量%、ステアリン酸含量30.0質量%、オレイン酸含量40.0質量%)
乳化剤C−2(ポリグリセリン脂肪酸エステル:パルミチン酸含量40.9質量%、オレイン酸含量49.0質量%、ベヘン酸含量0質量%)
乳化剤C−3(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル)
乳化剤b−1(ショ糖脂肪酸エステル:ステアリン酸含量70.0質量%)
乳化剤c−1(ポリグリセリン脂肪酸エステル:パルミチン酸含量20.9質量%、オレイン酸含量0質量%、ベヘン酸含量0質量%)
油脂a(ヤシ油:ラウリン酸含量47.4質量%)
油脂b(パーム核硬化油:ラウリン酸含量45.8質量%)
【0031】
〔チョコレートの製造〕
表1〜表3の配合で常法(混合、微粒化、精練、冷却)によりチョコレート(ノンテンパリング型チョコレート)を製造した。また、製造した全てのチョコレートは、油脂含量が39.5質量%(油脂中のラウリン系油脂含量は90.1質量%)、糖類含量が47.5質量%、水分含量が3質量%以下であった。
【0032】
〔チョコレートの評価〕
ボウルに各チョコレートを60℃で融解させた後、各チョコレートを50℃に調温した。ボウルに入った各チョコレートにドーナツの片側半分のみを浸けて、ドーナツの片側半分をチョコレートでコーティングした。コーティングしたチョコレートが上面になるようにドーナツを机の上に置き、室温でチョコレートが固化するまで放置した。チョコレートが固化した後、コーティングの均一性、チョコレートのドーナツの下側半分(コーティングを望まない部分)への垂れ、チョコレートの艶を目視にて確認し、以下の基準に従い評価した。各評価は、○又は□である場合を良好と判断した。評価結果を表1〜表3に示す。
【0033】
<コーティングの均一性の評価基準>
○:均一である
△:やや不均一である
×:不均一である
<垂れの評価基準>
○:垂れなし
□:ほとんど垂れなし
△:やや垂れがある
×:垂れがある
<艶の評価基準>
○:非常に艶がある
□:艶がある
△:やや艶がある
×:艶がない
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
表1〜表3から分かるように、実施例のチョコレートは、全ての評価項目が良好だった。
一方、表1、表3から分かるように、比較例のチョコレートは、全ての評価項目が良好であるものはなかった。