【解決手段】Al―Mg合金により構成されるAl層22及び23と、Cu21により構成され、Al層22及び23よりも熱伝導率が大きいCu層21とが接合されたクラッド材からなり、好ましくは、Al層22及び23は、0.2%耐力が200MPa以上のAl合金から構成され、Al層22及び23の厚みが、Al層21及び23とCu層21との合計の厚みの60%以上であるシャーシ2。
AlまたはAl合金により構成されるAl層と、CuまたはCu合金により構成され、前記Al層よりも熱伝導率が大きいCu層とが接合されたクラッド材からなる、シャーシ。
前記Al層は、前記Cu層の一方表面において前記Cu層に接合され、AlまたはAl合金により構成される第1Al層と、前記Cu層の他方表面において前記Cu層に接合され、AlまたはAl合金により構成される第2Al層とを含み、
前記クラッド材は、前記第1Al層と前記Cu層と前記第2Al層とがこの順に積層された3層構造を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシャーシ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の携帯電話端末の筐体部では、筐体部の軽量化は図ることができる一方、Alの熱伝導性が十分ではないことに起因して、放熱シートを介して熱源から筐体部のアルミニウム部品に伝導された熱がアルミニウム部品全体に十分に伝導されないため、筐体部において十分に放熱を行うことができないという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、軽量化を図りつつ、十分に放熱を行うことが可能なシャーシおよびそのシャーシを備える携帯機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面によるシャーシは、AlまたはAl合金により構成されるAl層と、CuまたはCu合金により構成され、Al層よりも熱伝導率が大きいCu層とが接合されたクラッド材からなる。
【0010】
本発明の第1の局面によるシャーシは、上記のように、Al層とAl層よりも熱伝導率が大きいCu層とが接合されたクラッド材からなることによって、Al層よりも熱伝導率が大きいCu層により、シャーシがAl層のみからなる場合と比べて、シャーシの熱伝導性を向上させることができる。これにより、シャーシの全体に熱を迅速に伝えることができるので、シャーシにおいて十分に放熱を行うことができる。また、比重の小さなAl層を用いることによって、シャーシがCu層のみからなる場合と比べて、シャーシを軽量化することができる。さらに、シャーシがAl層とCu層とが接合されたクラッド材からなることによって、Al層とCu層とが直接的に接合されているので、Al板材とCu板材とが接着剤を介して間接的に接合されている場合と比べて、Al層とCu層との界面においても熱伝導を効率よく行うことができる。これによっても、シャーシの全体に熱を迅速に伝えることができるので、シャーシにおいて十分に放熱を行うことができる。
【0011】
なお、本発明でいう「シャーシ」とは、ある程度の放熱性能と機械的強度とが必要とされる用途の筐体、ケース、枠体、外枠などをいう。たとえば、画像を表示するための表示部を固定するシャーシや、携帯機器の基板に実装された集積回路を保護するためのシャーシなど、携帯機器における電子部品を保護するためのシャーシが含まれる。さらに、携帯機器の枠体(フレーム)の機能を有するシャーシ、電気的な接続のためのリードの機能を有するシャーシ、および、電磁気を遮断するためのシャーシなども含まれる。
【0012】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、Al層は、0.2%耐力が200MPa以上のAl合金から構成されている。このように構成すれば、Al層の機械的強度が大きくなるので、シャーシの機械的強度を十分に確保することができる。よって、軽量化および高い放熱性能に加えて、機械的強度も高いシャーシを得ることができる。
【0013】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、Al層の厚みは、Al層とCu層との合計の厚みの60%以上である。このように構成すれば、比重の小さなAl層の割合を大きくすることができるので、シャーシの軽量化をより図ることができる。
【0014】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、Cu層の厚みは、Al層とCu層との合計の厚みの40%よりも大きい。このように構成すれば、Al層よりも熱伝導率が大きいCu層の割合を大きくすることができるので、シャーシの放熱性能をより高めることができる。
【0015】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、Cu層は、Cuにより構成されている。このように構成すれば、Cu合金よりも熱伝導率が高いCuからなるCu層によりシャーシの放熱性能をより高めることができる。
【0016】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、Al層は、Cu層の一方表面においてCu層に接合され、AlまたはAl合金により構成される第1Al層と、Cu層の他方表面においてCu層に接合され、AlまたはAl合金により構成される第2Al層とを含み、クラッド材は、第1Al層とCu層と第2Al層とがこの順に積層された3層構造を有する。このように第1Al層および第2Al層によりCu層を両側から挟み込んだ3層構造を有するクラッド材であれば、Al層とCu層との延性の違いに起因してシャーシが反るのを抑制することができる。加えて、クラッド材が第1Al層および第2Al層によりCu層を挟み込む3層構造を有することにより、耐食性の劣るCu層の表面が外部に露出するのを抑制することができるので、シャーシの耐食性を向上させることができる。
【0017】
上記第1Al層とCu層と第2Al層との3層構造を有するクラッド材からなる構成において、好ましくは、第2Al層の厚みの平均値は、第1Al層の厚みの平均値の95%以上105%以下である。このように構成すれば、シャーシを厚み方向において略対称な構造にすることができる。つまり、第1Al層と第2Al層とを同種(Al系)の金属材料から構成し、かつ、±5%以内の略等しい厚みにすることができるので、第1Al層と第2Al層との板厚の違いに起因する反りを抑制することができる。よって、シャーシが反るのをより抑制することができる。
【0018】
上記第1Al層とCu層と第2Al層との3層構造を有するクラッド材からなる構成において、好ましくは、第1Al層と第2Al層とは、同一の組成を有するAl合金から構成されている。このように構成すれば、Cu層の両側での延性を略同一にすることができるので、シャーシが反るのをより抑制することができる。さらに、第2Al層の厚みの平均値を第1Al層の厚みの平均値の95%以上105%以下にした場合には、第1Al層と第2Al層とを同一の組成を有するAl合金から構成し、かつ、±5%以内の略等しい厚みにすることができるので、シャーシの表裏の区別を行う必要がなくなるとともに、シャーシの製造過程などでの取扱いをさらに容易にすることができる。
【0019】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、Al層は、Al−Mg合金から構成されている。このように構成すれば、Alよりも比重が小さいMgを含み、かつ、Alよりも機械的強度が高いAl―Mg合金を用いることによって、高放熱化に加えて、軽量化および機械的強度をより図ったシャーシを得ることができる。
【0020】
また、本発明のシャーシは、放熱を伴う電子部品を内蔵する携帯機器のシャーシとして用いることができる。軽量化が要求される携帯機器に対し、上述した本発明の軽量化できるシャーシを適用することにより、シャーシを軽量化した分、携帯機器を軽量化することができる。また、発熱しやすい電子部品からの熱を本発明のシャーシを通じて効率よく放熱を行うことができるため、電子部品への蓄熱が抑制され、蓄熱に起因する電子部品の誤作動を抑制することができる。また、シャーシに放熱を伴う電子部品が接触している場合には、電子部品からの熱をさらに効率よく放熱を行うことができる。なお、「電子部品」には、ディスプレイや集積回路(IC)などの電力を利用する部品だけでなく、電池などの電力を供給する部品も含まれる。
【0021】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、シャーシの表面の少なくとも一部分に対して、SnまたはSn合金によるSnメッキ層が形成されている。このように構成すれば、Snメッキ層を有さないシャーシを支持部などに半田付けした場合には、半田に含まれるSnが異常成長(ウィスカー)してしまうことがあるため、シャーシの表面の少なくとも半田付けに関与する一部分にSnメッキ層を形成しておくことにより、Snの異常成長を抑制することができる。
【0022】
上記第1の局面によるシャーシにおいて、好ましくは、シャーシの表面の少なくとも一部分に対して、NiまたはNi合金によるNi層が形成されている。このように構成すれば、シャーシに電気回路を接触させる場合には、シャーシのNi層に電気回路を接触させることにより、シャーシと電気回路との接触部分における電気抵抗(接触抵抗)が大きくなるのを抑制することができるので、シャーシを電気回路の接地(アース)をとるための電流回路としても用いることができる。また、Ni層は耐食性が高いので、シャーシの耐食性をより向上させることができる。
【0023】
本発明の第2の局面による携帯機器は、放熱を伴う電子部品と、AlまたはAl合金により構成されるAl層と、CuまたはCu合金により構成され、Al層よりも熱伝導率が大きいCu層とが接合されたクラッド材からなり、電子部品からの熱を放出するシャーシとを備える。
【0024】
本発明の第2の局面による携帯機器は、上記のように、Al層とAl層よりも熱伝導率が大きいCu層とが接合されたクラッド材からなるシャーシを備えることによって、Al層よりも熱伝導率が大きいCu層により、シャーシがAl層のみからなる場合と比べて、シャーシの熱伝導性を向上させることができる。これにより、シャーシの全体に熱を迅速に伝えることができるので、シャーシにおいて十分に放熱を行うことができる。また、比重の小さなAl層を用いることによって、シャーシがCu層のみからなる場合と比べて、シャーシを軽量化することができる。さらに、シャーシがAl層とCu層とが接合されたクラッド材からなることによって、Al層とCu層とが直接的に接合されているので、Al板材とCu板材とが接着剤を介して間接的に接合されている場合と比べて、Al層とCu層との界面においても熱伝導を効率よく行うことができる。これによっても、シャーシの全体に熱を迅速に伝えることができるので、シャーシにおいて十分に放熱を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記のように、軽量化を図りつつ、十分に放熱を行うことが可能なシャーシおよびそのシャーシを備える携帯機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施形態による携帯機器100の内部構成を説明する。
【0029】
本実施形態による携帯機器100では、
図1および
図2に示すように、上方(Z1側)から順に、ディスプレイ1と、シャーシ2と、基板3と、電池4とがこの順に配置されている。なお、ディスプレイ1、シャーシ2および基板3は、平面的に見て、長手方向に約100mmの長さL1を有するとともに、短手方向に約50mmの長さL2を有する略長方形形状に形成されている。また、電池4は、平面的に見て、基板3よりも小さな略長方形形状に形成されている。
【0030】
ディスプレイ1は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどからなり、Z1側の上面に画像を表示する機能を有している。このディスプレイ1のZ2側の下面は、シャーシ2のZ1側の上面に当接(接触)している。つまり、ディスプレイ1はシャーシ2の近傍に配置されている。なお、ディスプレイ1は、画像を表示する際に発熱し、ディスプレイ1において発生した熱は、主にシャーシ2を介して外部に放出されるように構成されている。また、ディスプレイ1は、本発明の「電子部品」の一例である。
【0031】
シャーシ2は、Z方向におおよそ0.2mmの厚みt1を有する略長方形形状の板材からなる。このシャーシ2は、ディスプレイ1を外部からの衝撃から保護する機能と、ディスプレイ1およびCPU31からの熱を外部に放出する機能とを有している。電池4は、ディスプレイ1や基板3などに電力を供給する機能を有している。
【0032】
また、基板3のZ1側の上面には、携帯機器100を制御するためのプログラムなどが実行されるCPU31が設けられている。このCPU31のZ1側の上面は、シャーシ2のZ2側の下面に当接(接触)している。つまり、CPU31はシャーシ2の近傍に配置されている。なお、CPU31は、携帯機器100の全体を制御するためのプログラムなどが実行されることにより発熱し、CPU31において発生した熱は、主にシャーシ2を介して外部に放出されるように構成されている。なお、CPU31は、本発明の「電子部品」の一例である。
【0033】
ここで、本実施形態では、
図3に示すように、シャーシ2は、Cuから構成されるCu層21と、Cu層21のZ1側の表面21aに接合され、Al−Mg合金により構成されるAl層22と、Cu層21のZ2側の表面21bに接合され、Al−Mg合金により構成されるAl層23とを含む3層構造(Al層/Cu層/Al層)のクラッド材から構成されている。つまり、シャーシ2は、Al層22、Cu層21およびAl層23がこの順に積層された3層構造(Al層/Cu層/Al層)のクラッド材から構成されている。また、Cu層21、Al層22および23は、圧延接合されることにより互いに強固に接合されている。なお、Al層22および23は、それぞれ、本発明の「第1Al層」および「第2Al層」の一例である。また、表面21aおよび21bは、それぞれ、本発明の「一方表面」および「他方表面」の一例である。
【0034】
Cu層21は、無酸素銅、タフピッチ銅およびリン脱酸銅などの純度99.9%以上のCuにより形成されている。また、Al層22および23は、Al−Mg合金のうちのA5052(JIS規格)またはGM55(株式会社UACJ製)から構成されている。また、Al層22とAl層23とは、同一の組成のAl−Mg合金により構成されている。
【0035】
また、Cu層21を構成するCuは、約390W/(m×K)の熱伝導率と約8.9の比重とを有している。一方、Al層22および23を構成するAl−Mg合金のうち、A5052は、約138W/(m×K)の熱伝導率と約2.7の比重とを有しており、GM55は、約117W/(m×K)の熱伝導率と約2.7の比重とを有している。つまり、Cu層21は、Al層22および23よりも高い熱伝導率を有する一方、大きな比重を有している。
【0036】
また、Cu層21を構成するCuは、約210MPaの0.2%耐力を有している。一方、Al層22および23を構成するAl−Mg合金のうち、A5052は約270MPaの0.2%耐力を有しており、GM55は約310MPaの0.2%耐力を有している。つまり、Al層22および23の0.2%耐力は、おおよそ200MPa以上になるように構成されている。なお、シャーシ2をおおよそ0.2mmに薄厚化しつつ機械的強度を確保するためには、3層構造のクラッド材の0.2%耐力は大きいほうが好ましい。
【0037】
また、Cu層21、Al層22およびAl層23は、それぞれZ方向に厚みt2、t3およびt4を有している。ここで、Al層22の厚みt3とAl層23の厚みt4とは略同等である。具体的には、Al層23の厚みt4の平均値が、Al層22の厚みt3の平均値の95%以上105%以下になるように構成されている。ここで、Cu層21、Al層22およびAl層23の各々の界面は、平坦面状ではなく、波打つように形成される場合がある。このような場合においては、Al層23の厚みt4の平均値が、Al層22の厚みt3の平均値の95%以上105%以下である場合には、実際の製造においては、Al層22の厚みt3とAl層23の厚みt4とが略同等であるとみなして取り扱っても支障がない。
【0038】
また、本実施形態では、シャーシ2の軽量化または高い放熱性能のうち、シャーシ2の高い放熱性能を重視する場合には、Cu層21、Al層22およびAl層23の合計の厚み(シャーシ2の厚み)t1(=t2+t3+t4)に対するCu層21の厚みt2は、40%よりも大きい方が好ましい。また、シャーシ2の軽量化を重視する場合には、シャーシ2の厚みt1に対するAl層22および23の合計の厚み(=t3+t4)は、60%以上であることが好ましい。つまり、シャーシ2の厚みt1に対するAl層22の厚みt3およびAl層23の厚みt4は、共に30%以上であることが好ましい。
【0039】
また、シャーシ2の軽量化を重視する場合には、シャーシ2の比重はおおよそ5以下であるのが好ましい。
【0040】
また、本実施形態では、シャーシ2の表面には何も配置されていない。つまり、シャーシ2の表面には放熱のためのグラファイトシートは配置されていない。これにより、グラファイトシートを接着する際に、シートとシャーシ2との間に気泡が侵入することに起因して熱伝導性が低下することを抑制することができるとともに、薄厚のグラファイトシートを接着する工程を削減することが可能である。
【0041】
次に、
図1、
図3および
図4を参照して、本発明の一実施形態によるシャーシ2の製造プロセスを説明する。
【0042】
まず、
図4に示すように、Cuにより構成されたCu板材121と、A5052またはGM55のいずれか一方のAl−Mg合金により構成されたAl板材122およびAl板材123とを準備する。この際、Al板材122の厚みとAl板材123の厚みとを略同等にするとともに、Cu板材121の厚み、Al板材122の厚みおよびAl板材123の厚みを、作成するシャーシ2の性質(軽量化および高い放熱性能)に合わせて調節する。具体的には、シャーシ2において高い放熱性能を重視する場合には、Cu板材121の厚みを、Cu板材121、Al板材122および123の合計の厚みの40%よりも大きくする。また、シャーシ2において軽量化を重視する場合には、Al板材122の厚みおよびAl板材123の厚みを、各々、Cu板材121、Al板材122およびAl板材123の合計の厚みの30%以上にする。
【0043】
そして、Al板材122とAl板材123との間にCu板材121を配置した状態で、ローラ105を用いて、約60%の圧下率で連続的に圧延接合を行う。これにより、約0.4mmの厚みを有するとともに、Al層22、Cu層21およびAl層23がこの順に積層されたクラッド材102が連続的に形成される。
【0044】
その後、約500℃の還元雰囲気下で約1分間、クラッド材102を拡散焼鈍させる。そして、クラッド材102を約0.24mmになるまで連続的に圧延を行う。そして、約500℃の還元雰囲気下で約1分間、クラッド材102を再度拡散焼鈍させた後に、所定の圧下率で連続的に圧延を行う。これにより、おおよそ0.2mmの厚みt1(
図3参照)を有するクラッド材102が連続的に形成される。この際、Cu層21の表面21aおよび21b上に、同一の組成を有するAl−Mg合金から構成され、厚みが略同等のAl層22および23をそれぞれ接合することによって、クラッド材102が反るのが抑制される。
【0045】
その後、
図1に示すように、長手方向に約100mmの長さL1を有するとともに、短手方向に約50mmの長さL2を有する略長方形形状にクラッド材102(
図4参照)を打ち抜くことによって、シャーシ2が製造される。なお、シャーシ2は、プレス加工などにより所定の形状に加工される。
【0046】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、シャーシ2を、Al層22および23よりも高い熱伝導率を有するCu層21と、Al−Mg合金により構成されるAl層22と、Al−Mg合金により構成されるAl層23とが接合された3層構造(Al/Cu/Al)のクラッド材から構成する。これにより、Al層22および23よりも熱伝導率が大きいCu層21により、シャーシ2がAl層のみからなる場合と比べて、シャーシ2の熱伝導性を向上させることができる。これにより、シャーシ2の全体に熱を迅速に伝えることができるので、シャーシ2において十分に放熱を行うことができる。また、比重の小さなAl層22および23を用いることによって、シャーシ2がCu層21のみからなる場合と比べて、シャーシ2を軽量化することができる。さらに、シャーシ2がCu層21とAl層22とAl層23とが接合されたクラッド材からなることによって、Al層22および23とCu層21とが直接的に接合されているので、Al板材とCu板材とが接着剤を介して間接的に接合されている場合と比べて、Al層22および23とCu層21との界面においても熱伝導を効率よく行うことができる。これによっても、シャーシ2の全体に熱を迅速に伝えることができるので、シャーシ2において十分に放熱を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、Al層22および23を0.2%耐力が200MPa以上のAl―Mg合金から構成することによって、Al層22および23の機械的強度が大きくなるので、シャーシ2の機械的強度を十分に確保することができる。よって、軽量化および高い放熱性能に加えて、機械的強度も高いシャーシ2を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態では、シャーシ2の軽量化を重視する場合には、Cu層21、Al層22およびAl層23の合計の厚み(シャーシ2の厚み)t1に対するAl層22および23の合計の厚み(=t3+t4)を60%以上にすることによって、比重の小さなAl層22および23の割合を十分に大きくすることができるので、シャーシ2の軽量化をより図ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、シャーシ2の高い放熱性能を重視する場合には、Cu層21、Al層22およびAl層23の合計の厚み(シャーシ2の厚み)t1に対するCu層21の厚みt2を40%よりも大きくすることによって、Al層22および23よりも熱伝導率が大きいCu層21の割合を十分に大きくすることができるので、シャーシ2の放熱性能をより高めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、シャーシ2のCu層21をCuから構成することによって、一般的にCuはCu合金よりも熱伝導率が高いCuからなるCu層21によりシャーシ2の放熱性能をより高めることができる。
【0052】
また、本実施形態では、シャーシ2を、Cuから構成されるCu層21と、Cu層21のZ1側の表面21aに接合され、Al−Mg合金により構成されるAl層22と、Cu層21のZ2側の表面21bに接合され、Al−Mg合金により構成されるAl層23とを含む3層構造(Al層/Cu層/Al層)のクラッド材から構成する。これにより、クラッド材がAl層22およびAl層23によりCu層21を両側から挟み込んだ3層構造を有することによって、Al層22および23とCu層21との延性の違いに起因してシャーシ2が反るのを抑制することができる。また、クラッド材がAl層22およびAl層23によりCu層21を両側から挟み込んだ3層構造を有することによって、耐食性の劣るCu層21の表面21aおよび21bが外部に露出するのを抑制することができるので、シャーシ2の耐食性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、同一の組成(A5052またはGM55)により形成されたAl層22とAl層23とにおいて、厚み(t3およびt4)を略同等にする。つまり、Al層23の厚みt4の平均値をAl層22の厚みt3の平均値の95%以上105%以下にする。これにより、シャーシ2を厚み方向(Z方向)において略対称な構造にすることができる。つまり、Al層22とAl層23とを同一の組成を有するAl―Mg合金から構成し、かつ、±5%以内の略等しい厚みにすることができるので、シャーシ2の表裏の区別を行う必要がなくなるとともに、シャーシ2の製造過程などでの取扱いをさらに容易にすることができる。また、厚み(t3およびt4)を略同等にすることにより、Al層22とAl層23との板厚の違いに起因する反りを抑制することができるので、シャーシ2が反るのをより抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、Al層22および23を、Alよりも比重が小さいMgを含み、かつ、Alよりも機械的強度が高いA5052またはGM55のAl−Mg合金により構成することにより、高放熱化に加えて、軽量化および機械的強度をより図ったシャーシ2を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、
図1に示すように、ディスプレイ1やCPU31を高い放熱性能を有するシャーシ2の近傍に配置することによって、ディスプレイ1やCPU31からの熱を、シャーシ2から効果的に放熱を行うことができる。さらに、ディスプレイ1やCPU31を高い放熱性能を有するシャーシ2に当接させることによって、ディスプレイ1やCPU31からの熱を、シャーシ2からより効果的に放熱を行うことができる。これにより、ディスプレイ1やCPU31に熱が蓄積されることを抑制することができるので、熱に起因してディスプレイ1やCPU31が誤作動することを抑制することができる。
【0056】
(実施例)
次に、
図2、
図3、
図5〜
図8を参照して、本発明の効果を確認するために行った放熱性能の測定と機械的強度の測定とについて説明する。なお、特段の記載がない限り、「厚み」や「板厚」は平均値を意図する。
【0057】
本実施例では、
図3に示す上記実施形態のシャーシ2を用いた。具体的には、実施例1〜4として、Cuにより構成されたCu層21と、Al−Mg合金のうち、A5052により構成されたAl層22および23とを備え、Al層22、Cu層21およびAl層23がこの順に積層されたクラッド材を準備した。この際、実施例1〜4において、平板状のクラッド材(シャーシ2)の厚みt1(=t2+t3+t4、総板厚)を0.2mmにするとともに、Al層22の厚みt3とAl層23の厚みt4とを同一にした。そして、平板状のクラッド材を、
図5に示すように、長手方向(X方向)に100mmの長さL1を有するとともに、短手方向(Y方向)に50mmの長さL2を有する略長方形形状に成形することによって、実施例1〜4のシャーシ2を作製した。
【0058】
ここで、
図6に示すように、実施例1〜4では、シャーシ2を構成するAl層22とCu層21とAl層23との厚みの比率(t3:t2:t4)を、各々、1:2:1、1:1:1、2:1:2、および、4.5:1:4.5にした。つまり、シャーシ2の厚みt1に対するCu層21の厚みt2の比率(Cu比率)を、それぞれ、50%、33%、20%および10%にした。また、シャーシ2の厚みt1に対するAl層22とAl層23との合計の厚み(=t3+t4)の比率(Al比率)を、それぞれ、50%、67%、80%および90%にした。
【0059】
また、比較例1として、0.2mmの厚みを有するCu単体から構成される平板状の板材を用いた。また、比較例2として、0.2mmの厚みを有するA5052単体から構成される平板状の板材を用いた。なお、比較例1および2の板材も、実施例1〜4のシャーシ2と同様に、長手方向に100mmの長さL1、短手方向に50mmの長さL2を有する略長方形形状に成形した。
【0060】
また、比較例1および2(CuおよびA5052)における比重および熱伝導率を用いて、Cu層21とAl層22とAl層23との厚みの比率から、実施例1〜4のシャーシ2の比重および熱伝導率をそれぞれ求めた。
【0061】
(放熱性能)
放熱性能の評価においては、実施例1〜4のシャーシ2と、比較例1および2の板材とについて、その表面上に発熱源を配置した場合の温度分布を観察した。具体的には、
図5に示すように、本実施形態の発熱源であるCPU31(
図2参照)に対応するヒータ31aを、シャーシ2および板材のZ2側の下面上に張り付けた。このヒータ31aは、X方向およびY方向に10mmの長さL3を有している。
【0062】
そして、ヒータ31aに1Wの電力を供給することによってヒータ31aを加熱した。そして、5分後のシャーシ2および板材の温度分布を、赤外線サーモグラフィ装置を用いて上方(Z1側)から観察した。そして、シャーシ2および板材のうち、最も温度が高くなった箇所の温度を測定し、その測定値を最高温度とした。
【0063】
図6および
図7に示す放熱性能の結果としては、実施例1〜4のシャーシ2では、Cu比率が大きくなる(Al比率が小さくなる)にしたがって、最高温度は低くなった。これは、熱伝導率が高いCu(390W/(m×K))の割合が増加したことによって、シャーシ2の放熱性能が向上した結果、最高温度が低くなったと考えられる。
【0064】
特に、Cu比率が40%よりも大きい実施例1(50%)では、最高温度が43.8℃となり、44℃よりも低くなった。これにより、実施例1のシャーシ2は、放熱性能を効果的に高めることが可能であることが確認できた。また、
図7に示すグラフから、Cu比率が40%よりも大きい場合には最高温度を44.5℃以下にすることができ、放熱性能を十分に高めることが可能であることが確認できた。
【0065】
また、実施例1〜4のシャーシ2では、Cu比率が大きくなる(Al比率が小さくなる)にしたがって、熱伝導率が大きくなった。このことからも、Cu比率を大きくすることによって、放熱性能を十分に高めることが可能であることが確認できた。
【0066】
(比重)
図6および
図8に示す比重から、実施例1〜4のシャーシ2では、Cu比率が小さくなる(Al比率が大きくなる)にしたがって、比重が小さくなった。特に、Cu比率が40%以下の実施例2(33%)、3(20%)および4(10%)では、比重が5よりも小さくなることが確認された。これにより、実施例2〜4のシャーシ2は、軽量化を効果的に図ることが可能であることが確認できた。また、
図8に示すグラフから、Cu比率が40%以下(Al比率が60%以上)の場合には比重を5以下にすることができ、軽量化を十分に図ることが可能であることが確認できた。
【0067】
(機械的強度)
また、機械的強度の評価のために、実施例1〜4のシャーシ2と比較例1および2の板材とについて、応力ひずみ線図を測定して、0.2%の永久ひずみが生じる際の応力(0.2%耐力)を求めた。
【0068】
図6に示す結果としては、実施例1〜4のシャーシ2では、Cu比率が小さくなる(Al比率が大きくなる)にしたがって、0.2%耐力が大きくなった。これは、Al層22および23を構成するA5052の方が、Cu層21を構成するCuよりも0.2%耐力が大きいからであると考えられる。なお、シャーシ2を0.1mm以上0.3mm以下に薄厚化する場合には、シャーシ2の0.2%耐力が200MPa以上であることがシャーシとしての十分な機械的強度を確保するために好ましい。このことから、実施例1〜4のシャーシ2は0.1mm以上0.3mm以下に薄厚化されたとしても、十分な機械的強度を確保していると考えられる。
【0069】
上記放熱性能、比重および機械的強度の評価から、Cu比率が大きくなるにしたがって、放熱性能が向上する一方、比重は大きくなることが判明した。また、Cuから構成されるCu層と200MPa以上のAl−Mg合金(A5052)から構成される一対のAl層とを用いることによって、機械的強度を200MPa以上にすることができることが判明した。その中で、高い放熱性能を重視する場合には、Cu比率を40%よりも大きくすることによって、シャーシの放熱性能を十分に高めることができ、軽量化を重視する場合には、Al比率を60%以上にすることによって、シャーシの軽量化を十分に図ることが可能であることが判明した。さらに、Cu比率が40%(Al比率が60%)またはその近傍の比率であるシャーシが、高い放熱性能、低い比重、および、高い機械的強度のいずれも十分に満たすことが可能であると考えられる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、シャーシ2をAl層22、Cu層21およびAl層23がこの順で積層された3層構造のクラッド材(Al層/Cu層/Al層)から構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図9に示す上記実施形態の第1変形例のように、シャーシ202を、Cuから構成されるCu層221と、Cu層221のZ1側の表面221aに接合され、Al−Mg合金により構成されるAl層222とを含む2層構造(Al層/Cu層)のクラッド材から構成してもよい。この場合、多くの熱が発生する側(たとえばCPU側)に熱伝導率の高いCu層221を配置する方が好ましい。また、シャーシ202の高い放熱性能を重視する場合には、Cu層221およびAl層222の合計の厚み(シャーシ202の厚み)t1(=t2+t3)に対するCu層221の厚みt2は、40%よりも大きい方が好ましい。また、シャーシ202の軽量化を重視する場合には、シャーシ202の厚みt1に対するAl層222の厚みt3は、60%以上であることが好ましい。また、シャーシは、4層構造以上のクラッド材であってもよい。この際、クラッド材はAl層とCu層とから主に構成されるクラッド材であるのがよい。
【0072】
また、上記実施形態では、電池4を基板3のZ2側の下面側に配置する例を
図1に示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図10に示す上記実施形態の第2変形例の携帯機器300のように、基板303と短手方向(Y方向)で隣り合うように電池304を配置するとともに、CPU31と電池304とが共にシャーシ2に当接するように構成してもよい。これにより、ディスプレイ1やCPU31からの熱だけでなく、電池304からの熱もシャーシ2から効率よく放出することが可能である。なお、電池304は、本発明の「電子部品」の一例である。
【0073】
また、上記実施形態では、CPU31のZ1側の上面をシャーシ2のZ2側の下面に当接させる例を
図1に示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、CPUをシャーシに当接させなくてもよい。たとえば、
図11に示す上記実施形態の第3変形例のように、基板403の上面(Z1側の面)に、半田432を用いてCPU31を取り囲む枠状の支持部433を接合する。そして、3層構造のクラッド材からなる蓋状のシャーシ402の下面(Z2側の面)が支持部433の上面に当接するように、シャーシ402を支持部433に固定してもよい。これにより、高い放熱性能を有するシャーシ402がCPU31の近傍に配置されるので、発熱しやすいCPU31からの熱をシャーシ402から効果的に放熱しつつ、基板403が設けられる携帯端末(図示せず)を軽量化することが可能である。
【0074】
この場合、
図11に示すように、シャーシ402の表面にSnメッキ層402aを形成することが好ましい。また、支持部433の表面にSnメッキ層433aを形成することが好ましい。支持部433に対するシャーシ402の取り付けは、機械的にねじやカシメによることも可能ではあるものの、微小部品の取り付けでは図示しない半田付けによることが多い。Snメッキ層を有さないシャーシを支持部などに半田付けした場合には、半田に含まれるSnが異常成長(ウィスカー)してしまうことがある。したがって、シャーシ402の少なくとも半田付けに関与する部分に対し、Snメッキ層402aを形成しておくことが好ましい。このSnメッキ層402aは、シャーシ402の形状にする前のクラッド材の表面に対して形成してもよいし、シャーシ402の形状にした後にシャーシ402の表面に対して形成してもよい。なお、生産性やメッキ形成に要する治工具などを考慮すれば、シャーシ402の形状にした後に、シャーシ402の表裏面(両面)の略全面にSnメッキ層402aを形成することが好ましい。なお、Snメッキとしては、SnまたはSn合金からなるものが適用でき、純度99%以上のSnからなるものはより好ましい。
【0075】
また、上記実施形態では、シャーシ2をディスプレイ1を備える携帯機器100に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シャーシをディスプレイを有さない携帯可能なルータなどに設けてもよい。この場合、ルータの電池やCPUからの熱をシャーシによって効率よく放出することが可能である。また、シャーシを据え置き型の小型機器に用いてもよい。さらに、シャーシをSSD(Solid State Drive)の筐体として用いてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、シャーシ2の厚みt1をおおよそ0.2mmにした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シャーシの厚みは、0.2mmよりも小さくてもよいし、0.2mmより大きくてもよい。なお、シャーシの厚みはおおよそ0.1mm以上である方がシャーシとしての十分な機械的強度を確保することができるので好ましい。また、シャーシの厚みはおおよそ1.0mm以下である方が、厚みが大きすぎることに起因してシャーシが用いられる機器が大型化するのを抑制することができるので好ましい。なお、携帯機器のような小型化が非常に重視される場合と比べて、小型化が比較的重視されないSSDに用いられるシャーシでは、シャーシの厚みをおおよそ0.6mm以上1.0mm以下にしてもよい。この場合、0.2%耐力が比較的小さなAl(A1000系)を本発明のAl層を構成する金属材料として用いたとしても、シャーシの厚みが大きいため、機械的強度を十分に確保することが可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、発熱しやすい電子部品としてディスプレイ1およびCPU31を用いる例を示し、上記第2変形例では、発熱しやすい電子部品としてディスプレイ1、CPU31および電池304を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱しやすい電子部品として、たとえば、電源回路などの電子部品を用いてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、3層のクラッド材から構成されたシャーシ2を1つ用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像を表示するための表示部を固定するためのシャーシや、基板に実装された集積回路を保護するためのシャーシなどにクラッド材からなるシャーシ用部材を複数用いて、携帯機器を構成することもできる。
【0079】
また、上記実施形態では、Al層22(第1Al層)とAl層23(第2Al層)とを、共に同一のAl−Mg合金により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1Al層および第2Al層を、異なるAlまたはAl合金から構成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、Al層22(第1Al層)とAl層23(第2Al層)とを、共にA5052またはGM55により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1Al層および第2Al層を、A5052およびGM55以外のAlまたはAl合金により構成してもよい。例えば、第1Al層および第2Al層を、Al−Mg合金(A5000系)や、A6061などのAl−Mg−Si合金(A6000系)、A2219などのAl−Cu合金(A2000系)により構成する方が、板材作製時の適切な処理(硬質化処理など)により0.2%耐力を約200MPa以上にすることができるので、シャーシとしての機械的強度を確保するためには好ましい。また、使用環境などにより機械的強度があまり要求されない場合には、第1Al層および第2Al層を、0.2%耐力が約200MPaよりも小さなAl(A1000系)やAl合金から構成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、Cu層21が純度99.9%以上のCuにより形成された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、Cu層を、Cu−2.30Fe−0.10Zn―0.03PからなるC19400(CDA規格)などのCuの純度が約97%以上のCu合金により形成してもよい。これらのCu合金は、上記Cuよりも機械的強度が高いため、シャーシの機械的強度をより向上させることが可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、シャーシ2の表面に何も配置しない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シャーシの表面上に熱伝導のためのCu箔層を形成してもよいし、シャーシの表面上にディスプレイを接着するための熱伝導性接着シートや、電熱のためのグラファイトシートなどのシートを配置してもよい。このような構成を有するシャーシであれば、高い放熱性能を有する薄肉のシャーシとして、市場での有用性がさらに高まると考えられる。また、上記シートは、シャーシの表面のうち、少なくとも携帯機器の電子部品と接触する位置に形成されていればよい。また、
図12に示す上記実施形態の第4変形例のように、シャーシ2の表面(上下両面)にNi層502bを形成してもよい。なお、このNi層502bは、メッキにより形成されてもよいし、クラッド材としてシャーシ2と一体的に形成してもよい。これにより、シャーシ2と図示しない電気回路との接触部分における電気抵抗(接触抵抗)が大きくなるのを抑制することが可能であるので、シャーシ2を電気回路の接地(アース)をとるための電流回路としても用いることが可能である。さらに、Ni層502bにより、シャーシ2の耐食性を向上させることも可能である。なお、Ni層502bを構成する金属材料としては、Ni、または、Ni−P合金などのNi合金からなるものが適用することが可能である。また、Ni層502bは、シャーシ2の表面のうち、少なくとも携帯機器の電子部品と接触する位置に形成されていればよく、上下両面のいずれか一方にのみ設けてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、CPU31のZ1側の上面がシャーシ2のZ2側の下面に当接する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、CPUとシャーシとは熱伝導性の接着剤を介して接着されていてもよいし、他の部材を介してCPUとシャーシとが配置されていてもよい。