【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願、平成25年度経済産業省「未来開拓研究プロジェクト/産業技術研究開発(革新的触媒による化学品製造プロセス技術開発プロジェクトのうち有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発)(国庫債務負担行為に係るもの)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【課題】アルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応に使用する触媒を改良し、有機シラン化合物を効率良く、安価に製造することができる製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類とを触媒存在下で反応させる有機シラン化合物の製造方法において、表面に溶媒が配位した鉄含有ナノ粒子を触媒として用いることにより、有機シラン化合物を効率良く、安価に製造することができる。
前記溶媒が、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジクロロエタン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN−メチルピロリドン(NMP)からなる群より選択される少なくとも1種を含むものである、請求項1又は2に記載の有機シラン化合物の製造方法。
前記溶媒が、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジクロロエタン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN−メチルピロリドン(NMP)からなる群より選択される少なくとも1種を含むものである、請求項6に記載の有機シラン化合物の合成用触媒組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の有機シラン化合物の製造方法及び有機シラン化合物合成用触媒組成物の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0012】
<有機シラン化合物の製造方法>
本発明の一態様である有機シラン化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、「アルケン類及び/又はアルキン類」と「ヒドロシラン類」とを触媒存在下で反応させる方法であるが、触媒が表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子であることを特徴とする。
前述のようにアルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応は、触媒として白金等の貴金属が用いられたり、特殊な配位子を含む錯体が用いられたりしていたため、コストの観点から改善の余地があった。本発明者らは、優れた活性を示し、簡便かつ安価に調製することができる触媒材料を求め鋭意検討を重ねた結果、表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子がヒドロシリル化反応の触媒として好適であり、これを用いることによって有機シラン化合物を効率良く、安価に製造することができることを見出したのである。
表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子は、有機シラン化合物の製造に使用した後、回収して触媒として再利用することができる利点がある。例えば、鉄錯体を触媒として用いた場合、高い触媒活性が得られるものの、一般的に錯体触媒は反応終了後に失活してしまったり、分解してしまうため、再利用が困難となる。特に鉄元素含有ナノ粒子は、表面が溶媒に保護されているため、劣化しにくく、触媒活性を維持し易いと考えられる。また
、鉄元素は、原子番号の比較的小さい遷移金属で、イオン半径が小さいため、触媒反応において反応基質が中心金属の近くで作用し、高い触媒活性が得られるものと考えられる。
なお、「鉄元素含有ナノ粒子」とは、粒子径(累積中位径(Median径))が0.5〜100nmの範囲にあり、鉄元素を構成元素として含む粒子を意味するものとする。従って、鉄元素を含むものであれば具体的な組成は特に限定されず、金属鉄粒子のほか、鉄とその他の金属との合金粒子、金属鉄粒子に酸素原子や炭素原子等のその他の原子がドープされている粒子、或いは酸化鉄、窒化鉄、炭化鉄等の鉄元素を含む無機化合物粒子等も含まれることを意味する。
また、「表面に溶媒が配位した」とは、鉄元素含有ナノ粒子の表面に溶媒分子が配位していることを意味する。なお、鉄元素含有ナノ粒子に配位する「溶媒」は、具体的な種類は限定されず、置換可能であるため、目的の反応に合わせて適宜選択することができる。また、「溶媒」が鉄元素含有ナノ粒子に配位しているか否かについては、分散剤等による表面処理を施すことなく、「溶媒」に安定的に分散するか否かで判断することができる。即ち、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を配位させた鉄元素含有ナノ粒子は、DMFと親和性のある「溶媒」に安定的に分散させることができる。
また、「アルケン類」とは炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有する有機化合物を、「アルキン類」とは炭素−炭素三重結合を少なくとも1つ有する有機化合物を、「ヒドロシラン類」とはケイ素−水素結合(Si−H)を少なくとも1つ有する化合物を、「有機シラン化合物」とは炭素−ケイ素結合(C−Si)を少なくとも1つ有する有機化合物を意味するものとする。従って、「アルケン類及び/又はアルキン類」と「ヒドロシラン類」の反応として、例えば下記の反応式で示されるような反応が挙げられる(「アルケン類」が「1−デセン」であり、「ヒドロシラン類」がフェニルシランである。)。
【化2】
【0013】
(有機シラン化合物)
本発明の製造方法における有機シラン化合物は、前述のように炭素−ケイ素結合(C−Si)を少なくとも1つ有する有機化合物であれば、具体的な構造は特に限定されず、幅広い有機シラン化合物に適用することができる。
具体的には、下記式(A)、(A’)、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B’−1)、(B’−2)、又は(B’−3)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
(式(A)、(A’)、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B’−1)、(B’−2)、及び(B’−3)中、R
1〜R
4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、R
5はそれぞれ独立
に水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1〜50のポリシロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
1〜R
4の2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
即ち、上記式(A)及び(A’)で表される化合物は、アルケン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物であり、上記式(B−1)〜(B−3)及び(B’−1)〜(B’〜3)で表される化合物は、アルキン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物である。また、SiR
53基が付加する位置は特に限定されず、さらにアルキン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物は、Z体、E体、Z体とE体の混合物の何れであってもよいことを意味する。
【0014】
R
1〜R
4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい」とは、クロロ基(−Cl)、フルオロ基(−F)、アミノ基(−NH
2)、ニト
ロ基(−NO
2)、エポキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、カルボニル基(−C(=O
)−)、tert−ブチルジメチルシリル基(−SiBuMe
2)、アジ基(−N
3)等の窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)等の窒
素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。従って、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい」としては、例えば−CH
2−CH
2−OHのようなヒドロキシル基を含む炭素数2の炭化水素基、−CH
2−O−CH
3のようなエーテル基を炭素骨格の内部に含む炭素数2の炭化水素基、及び−O−CH
2−CH
3のようなエーテル基を炭素骨格の末端に含む炭素数2の炭化水素基等が含まれる。
R
1〜R
4が炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは19以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。なお、R
1〜R
4の2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよいが、例えばR
1とR
2が連結してシクロヘプタン構造、シクロヘプテン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘキセン構造等を形成していることが挙げられる。
R
1〜R
4が炭化水素基である場合の炭化水素基に含まれる官能基は、クロロ基(−Cl)、フルオロ基(−F)、アミノ基(−NH
2)、ニトロ基(−NO
2)、エポキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、カルボニル基(−C(=O)−)、tert−ブチルジメチルシリル基(−SiBuMe
2)、アジ基(−N
3)等が挙げられる。
また、R
1〜R
4が炭化水素基である場合、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
具体的なR
1〜R
4としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、メチルへキシル基、メチルヘプチル基、ジメチルプロピル基、ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルへキシル基、ジメチルヘプチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルへキシル基、フェニルヘプチル基等が挙げられる。
【0015】
R
5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1〜50のポリ
シロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい」については、R
1〜R
4と同義である。
R
5が炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、
さらに好ましくは4以上であり、好ましくは19以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。
R
5がポリシロキシ基である場合のケイ素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3
以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは48以下、より好ましくは46以下、さらに好ましくは45以下である。
また、R
5が炭化水素基である場合、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、
環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
具体的なR
5としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メ
チル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、ポリメチルシロキシ基等が挙げられる。この中でも、水素原子が好ましい。
R
5はそれぞれ独立に水素原子等を表しているが、2つのR
3が水素原子であることが特に好ましい。水素原子が2つ以上であると、より収率良く有機ケイ素化合物を製造することができる。
【0016】
(アルケン類・アルキン類)
本発明の製造方法は、アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類とを触媒存在下で反応させる方法であるが、アルケン類及び/又はアルキン類の種類は特に限定されず、製造目的である有機シラン化合物に基づいて適宜選択されるべきである。
基本的に製造目的である有機シラン化合物と共通する構造を有するアルケン類やアルキン類を選択すべきであり、例えば式(A)、(A’)、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B’−1)、(B’−2)、又は(B’−3)で表される化合物を製造目的とする場合、アルケン類としては下記式(a)で表される化合物が、アルキン類としては(b)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
(式(a)及び(b)中、R
1〜R
4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R
1〜R
4の2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
具体的なアルケン類としては、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6,6−ジメチル−1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン、シクロヘキセン等が挙げられる。
また、具体的なアルキン類としては、ジフェニルアセチレン、1−フェニル−1−プロピン、4−オクチン、フェニルアセチレン等が挙げられる。
【0017】
(ヒドロシラン類)
本発明の製造方法は、アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類とを触媒存在下で反応させる方法であるが、ヒドロシラン類の種類は特に限定されず、製造目的である有機シラン化合物に基づいて適宜選択されるべきである。
基本的に製造目的である有機シラン化合物と共通する構造を有するヒドロシラン類を選択すべきであり、例えば式(A)、(A’)、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B’−1)、(B’−2)、又は(B’−3)で表される化合物を製造目的とする場合、ヒドロシラン類としては下記式(X)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
(式(X)中、R
5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、ケイ素数1
〜50のポリシロキシ基、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
具体的なヒドロシラン類としては、フェニルシラン、ジフェニルシラン、メチルフェニルシラン、ジメチルフェニルシラン、トリエトキシシラン、トリエチルシラン、ジエトキシメチルシラン等が挙げられる。
【0018】
本発明の製造方法におけるアルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類の使用量は、目的に応じて適宜することができるが、ヒドロシラン類の使用量は、アルケン類及び/又はアルキン類の使用量に対して、物質量([mol])で通常1倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、通常50倍以下、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下である。上記範囲内であると、有機シラン化合物をより収率良く製造することができる。
【0019】
(触媒)
本発明の製造方法は、触媒が表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子であることを特徴とする方法であるが、表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子は、前述した鉄元素含有ナノ粒子に該当するものであれば、溶媒の具体的な種類、鉄元素含有ナノ粒子の組成、物性等は特に限定されない。
鉄元素含有ナノ粒子に配位する溶媒は、前述のように目的の反応に合わせて適宜選択することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
なお、鉄元素含有ナノ粒子に配位する溶媒は、適宜置換することができる。例えばDMFが配位した金属鉄ナノ粒子のDMF分散液からロータリーエバポレーター等を用いてDMFを留去し、金属鉄ナノ粒子を固形物として得る。そして、固形物をTHF等のその他の溶媒に接触させ、撹拌等を行ってなじませることにより、THFが配位した金属鉄ナノ粒子を得ることができる。また、接触させる溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を混合した混合溶媒であってもよい。具体的な組み合わせとしては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)と1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とN−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とトルエン等が挙げられるが、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)と1,4−ジオキサンの混合溶媒であることが特に好ましい。
鉄元素含有ナノ粒子は、前述のように鉄元素を構成元素として含むものであれば具体的な組成は特に限定されないが、鉄元素のほかに酸素元素を含むことが好ましく、酸素原子がドープされている金属鉄粒子若しくは鉄合金粒子、又は酸化鉄粒子がより好ましく、α−Fe
2O
3粒子であることが特に好ましい。
鉄元素含有ナノ粒子の粒子径(累積中位径(Median径))は、前述のように1〜100nmの範囲であれば特に限定されないが、好ましくは1.5nm以上、より好ましくは2.0nm以上、さらに好ましくは3.0nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。なお、累積中位径(Median径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定することができる。
【0020】
表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子の調製方法は、特に限定されないが、鉄元素を含んだ前駆体を極性溶媒中で加熱還流する方法が挙げられる。
以下、鉄元素を含んだ前駆体を極性溶媒中で加熱還流する方法における条件等の詳細を説明する。
鉄元素を含んだ前駆体の種類は、特に限定されないが、塩化鉄(III)(FeCl
3
)、臭化鉄(III)(FeBr
3)、酢酸鉄(II)(Fe(CH
3CO
2)
2)、クエン酸鉄(III)(FeC
6H
5O
7)、硫酸アンモニウム鉄(III)(FeNH
4(SO
4
)
2)、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(CH
3COCHCOCH
3)
3)等が挙げられる。この中でも、鉄(III)アセチルアセトナートが特に好ましい。鉄(III
)アセチルアセトナートを使用することによって、触媒活性に優れる鉄元素含有ナノ粒子を調製し易くなる。
極性溶媒の種類は、特に限定されないが、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。この中でも、N,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。N,N−ジメチルホルムアミドを使用することによって、触媒活性に優れる鉄元素含有ナノ粒子を調製し易くなる。
設定する温度条件は、使用する極性溶媒によって選択されるべきであり、特に限定されない。
還流は、撹拌子等を使用して撹拌しながら行うことが好ましい。撹拌子の回転数は、通常500rpm以上、好ましくは800rpm以上、より好ましくは1000rpm以上であり、通常2000rpm以下、好ましくは1800rpm以下、より好ましくは1700rpm以下である。上記範囲内であると触媒活性に優れる鉄元素含有ナノ粒子を調製し易くなる。
還流時間は、通常1時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上であり、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは10時間以下である。上記範囲内であると触媒活性に優れる鉄元素含有ナノ粒子を調製し易くなる。
還流は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行っても、或いは空気雰囲気下で行ってもよい。酸素原子がドープされている金属鉄粒子又は鉄合金粒子、酸化鉄粒子等を調製する観点から、空気雰囲気下で行うことが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法における触媒(表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子)の使用量は、目的に応じて適宜選択することができるが、アルケン類及び/又はアルキン類の使用量に対して、物質量([mol])で通常0.5倍以下、好ましくは0.1倍以下、より好ましくは0.01倍以下であり、通常0.0001倍以上、好ましくは0.005倍以上、より好ましくは0.001倍以上である。上記範囲内であると、有機シラン化合物をより収率良く製造することができる。
なお、触媒は固形物として反応容器に投入してもよいが、溶媒に分散させた分散液として反応容器に投入してもよい。分散液として保存、使用することによって、触媒の劣化を抑制したり、操作を簡略化したりすることができる。
【0022】
本発明の製造方法における溶媒の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。また、溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を混合した混合溶媒であってもよい。具体的な組み合わせとしては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)と1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とN−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とトルエン等が挙げられるが、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)と1,4−ジオキサンの混合溶媒であることが特に好ましい。
【0023】
(反応条件)
本発明の製造方法は、アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類とを触媒存在下で反応させる方法であるが、反応温度、反応時間等の反応条件は特に限定されない。
反応温度は、通常25℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは110℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である
。上記範囲内であれば、有機シラン化合物をより収率良く製造することができる。
反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、より好ましくは10時間以上であり、通常60時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
反応は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
【0024】
<有機シラン化合物の合成用触媒組成物>
表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子を触媒として利用することにより、アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類の反応によって、有機シラン化合物を製造することができることを前述したが、表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子を含み、有機シラン化合物を合成する触媒組成物も本発明の一態様である(以下、「本発明の触媒組成物」と略す場合がある。)。なお、本発明の触媒組成物は、有機シラン化合物を合成するためのものであれば、原料や反応条件等は特に限定されないが、アルケン類及び/又はアルキン類とヒドロシラン類から有機シラン化合物を合成するためのものであることが好ましい。
【0025】
本発明の触媒組成物は、前述の表面に溶媒が配位した鉄元素含有ナノ粒子を含むものであればその他には特に限定されないが、溶媒を含むものであることが好ましく、溶媒に分散した分散液の状態にあるものが好ましい。具体的な溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0027】
[表面に溶媒が配位した酸化鉄ナノ粒子の調製]
(実施例1:DMF配位酸化鉄ナノ粒子分散液1の調製)
ジムロート冷却器を連結した100mLの三口フラスコに、空気雰囲気下で15mLの脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れ、140℃に加熱したオイルバスに浸漬して、空気雰囲気下、撹拌子を1300rpmで回転させながら還流条件で10分程度予備加熱を行った。その後、空気雰囲気下で0.1モル濃度(0.1M)の鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(CH
3COCHCOCH
3)
3)水溶液150μlをマイ
クロシリンジを使って加え、撹拌しながら140℃で8時間加熱還流を行った。なお、反応溶液は時間が経つごとに淡黄色が濃くなった。8時間後、室温まで冷却して、分散液1を得た。得られた分散液1の写真を
図1に示す。
【0028】
分散液1に波長350nmのUV照射を行ったところ、
図2に示すように発光(蛍光)することが確認できた。また、分散液1を専用容器に充填して、日本分光社製蛍光分光光度計にて蛍光スペクトル(励起波長:350nm、0.1mM)を測定したところ、
図3に示すスペクトル結果が得られた。
【0029】
さらに、分散液1からロータリーエバポレーターを用いてDMFを留去し(条件:10hPa、40℃)、十分に乾燥させた後、固形物を高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)によって観察した(エネルギー分散型X線分析(EDS)による粒子の元素分析、制
限視野電子回折(SAED)による結晶構造解析(電子線の入射方向:[0001]方向)も行った。)。結果を
図4(a)、(b)、(c)に示す。
これらの結果から、粒子径が数nmでDMFが配位したコランダム型のα−Fe
2O
3粒子が形成していることが確認できる(格子定数:a=b≒5.04[Å]、c≒13.77[Å])。なお、このDMF配位酸化鉄ナノ粒子の溶媒への可溶性を確認したところ、DMFとN−メチルピロリドン(NMP)には容易に溶解(分散)する一方、テトラヒドロフラン(THF)には難溶であることを確認した。
【0030】
(実施例2:THF配位酸化鉄ナノ粒子分散液2の調製)
実施例1で得られたDMFを留去したDMF配位酸化鉄ナノ粒子と、分散液1と同量のTHF(超脱水)をナス型フラスコに入れ、超音波洗浄機を用いて、壁面に付着した粒子を十分に落とし、分散液2を調製した。得られた分散液2の写真を
図5に示す。THFに容易に溶解(分散)することから、DMFがTHFに置換された、THF配位酸化鉄ナノ粒子が形成しているものと考えられる。
【0031】
(実施例3:DMF配位鉄ナノ粒子分散液3の調製)
ジムロート冷却器を連結した100mLの三口フラスコに、空気雰囲気下で15mLの脱水DMFを入れ、140℃に加熱したオイルバスに浸漬して、空気雰囲気下、撹拌子を1300rpmで回転させながら還流条件で10分程度予備加熱を行った。その後、空気雰囲気下で0.1モル濃度(0.1M)の塩化鉄(III)(FeCl
3)水溶液15μ
lをマイクロシリンジを使って加え、撹拌しながら140℃で8時間加熱還流を行った。その後、室温まで冷却して、DMF配位鉄ナノ粒子分散液3を調製した。なお、反応溶液は、時間が経つごとに淡黄色が濃くなった。8時間後、室温まで冷却して、分散液3を得た。
【0032】
実施例1と同様に、分散液2は発光(蛍光)の確認(
図6参照)、蛍光スペクトル測定(
図7参照)を行い、さらに乾燥させた固形物を高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)によって観察した(
図8参照)。これらの結果から、実施例1と同様に、DMF配位酸化鉄ナノ粒子が形成していることが確認できる。
【0033】
[有機シラン化合物の製造1(アルケン類とヒドロシラン類の反応)]
<溶媒の検討>
(実施例4)
撹拌子を入れ、セプタムを取り付けて密閉したシュレンク管の管内をアルゴンで置換し、シリンジを使って1−デセン(112.2mg、1.0mmol)、フェニルシラン(108.2mg、1.0mmol)、及び実施例2で調製した分散液2(THF配位酸化鉄ナノ粒子が分散したTHF溶液(酸化鉄ナノ粒子濃度:10
-1mol%、THFの量:1.0mL))をシュレンク管に投入した。次にアルゴンを入れた風船が取り付けられた二方コックを、アルゴンを流しながらシュレンク管に接続した。
シュレンク管を温度60℃に設定したオイルバスに浸し、撹拌しながら24時間反応させた。
反応終了後、二方コックを閉じ、シュレンク管をオイルバスから引き揚げた。次にパスツールピペットを用いて、内部基準物質であるトリデカンを入れ、酢酸エチル(10mL)で希釈し、ガスクロマトグラフィーを用いた内部基準法によって、原料、生成物等を定量した。結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)
THFを1,4−ジオキサン(1,4−Dioxane、試薬特級)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液4(1,4−ジオキサン配位酸化鉄ナノ粒子が分散した1,4−ジオキサン溶液)を調製した。
次に分散液2を分散液4に置き換え、オイルバスの温度を80℃(反応温度)に設定した以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表1に示す。
【0035】
(実施例6)
オイルバスの温度を100℃(反応温度)に設定した以外は、実施例5と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表1に示す。
【0036】
(実施例7)
THFを1,2−ジクロロエタン(1,2−Dichloroethane)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液5(1,2−ジクロロエタン配位酸化鉄ナノ粒子が分散した1,2−ジクロロエタン溶液)を調製した。
次に分散液2を分散液5に置き換え、オイルバスの温度を80℃(反応温度)に設定した以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表1に示す。
【0037】
(実施例8)
THFをトルエン(Toluene)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液6(トルエン配位酸化鉄ナノ粒子が分散したトルエン溶液)を調製した。
次に分散液2を分散液6に置き換え、オイルバスの温度を110℃(反応温度)に設定した以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表1に示す。
【0038】
【化6】
【0039】
【表1】
【0040】
<ヒドロシラン類の使用量の検討>
(実施例9)
投入するフェニルシランの量を162.3mg(1.5mmol)とした以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表2に示す。
【0041】
(実施例10)
投入するフェニルシランの量を216.4mg(2.0mmol)とした以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表2に示す。
【0042】
(実施例11)
投入するフェニルシランの量を270.5mg(2.5mmol)とした以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表2に示す。
【0043】
(実施例12)
投入するフェニルシランの量を324.6mg(3.0mmol)とした以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表2に示す。
【0044】
(実施例13)
投入するフェニルシランの量を378.7mg(3.5mmol)とした以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表2に示す。
【0045】
(実施例14)
投入するフェニルシランの量を432.8mg(4.0mmol)とした以外は、実施例4と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表2に示す。
【0046】
【化7】
【0047】
【表2】
【0048】
<アルカン類の種類の検討>
(実施例15)
1−デセンを1−オクテン336.6mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例12と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表3に示す。
【0049】
(実施例16)
1−デセンを4−フェニル−1−ブテン396.6mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例12と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表3に示す。
【0050】
(実施例17)
1−デセンを6,6−ジメチル−1−ヘプテン378.3mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例12と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表3に示す。
【0051】
(実施例18)
1−デセンを4,4−ジメチル−1−ヘキセン336.6mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例12と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表3に示す。
【0052】
【化8】
【0053】
【表3】
【0054】
<ヒドロシラン類の種類の検討>
(実施例19)
フェニルシランをジフェニルシラン552.9mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例12と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を
表4に示す。
【0055】
【化9】
【0056】
【表4】
【0057】
(実施例20)
フェニルシランをジフェニルシラン552.9mg(3.0mmol)に置き換え、オイルバスの温度を100℃(反応温度)に設定した以外は、実施例5と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表5に示す。
【0058】
(実施例21)
ジフェニルシランをメチルフェニルシラン366.7mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例20と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表5に示す。
【0059】
(実施例22)
ジフェニルシランをジメチルフェニルシラン408.8mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例20と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表5に示す。
【0060】
(実施例23)
ジフェニルシランをトリエトキシシラン492.9mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例20と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表5に示す。
【0061】
(実施例24)
ジフェニルシランをトリエチルシラン348.9mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例20と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表5に示す。
【0062】
(実施例25)
ジフェニルシランをジエトキシメチルシラン402.8mg(3.0mmol)に置き換えた以外は、実施例20と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表5に示す。
【0063】
【化10】
【0064】
【表5】
【0065】
[有機シラン化合物の製造2(アルキン類とヒドロシラン類の反応)]
<溶媒の検討>
(実施例26)
THFを1,4−ジオキサン(1,4−Dioxane、試薬特級)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液7(1,4−ジオキサン配位酸化鉄ナノ粒子が分散した1,4−ジオキサン溶液)を調製した。
次に撹拌子を入れ、セプタムを取り付けて密閉したシュレンク管の管内をアルゴンで置換し、シリンジを使ってジフェニルアセチレン(178.2mg、1.0mmol)、フェニルシラン(108.2mg、1.0mmol)、及び分散液7(1,4−ジオキサン配位酸化鉄ナノ粒子が分散した1,4−ジオキサン溶液(酸化鉄ナノ粒子濃度:10
-1mol%、THFの量:1.0mL))をシュレンク管に投入した。次にアルゴンを入れた風船が取り付けられた二方コックを、アルゴンを流しながらシュレンク管に接続した。
シュレンク管を温度100℃に設定したオイルバスに浸し、撹拌しながら24時間反応させた。
反応終了後、二方コックを閉じ、シュレンク管をオイルバスから引き揚げた。次にパスツールピペットを用いて、内部基準物質であるトリデカンを入れ、酢酸エチル(10mL)で希釈し、ガスクロマトグラフィーを用いた内部基準法によって、原料、生成物等を定量した。結果を表6に示す。
【0066】
(実施例27)
1,4−ジオキサンをジグライム(Diglyme、一級)に置き換えた以外は、実施例25と同様の操作によって、分散液8(ジグライム配位酸化鉄ナノ粒子が分散したジグライム溶液)を調製した。
次に分散液7を分散液8に置き換え、オイルバスの温度を120℃(反応温度)に設定した以外は、実施例26と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表6に示す。
【0067】
【化11】
【0068】
【表6】
【0069】
<シラン類の種類の検討>
(実施例28)
1,4−ジオキサンをDMF/1,4−Dioxaneの混合溶媒(0.5/2.0mL)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液9(溶媒配位酸化鉄ナノ粒子が分散した溶液)を調製した。
次に分散液7を分散液9に置き換え、投入するジフェニルアセチレンの量を89.1mg、フェニルシランの量を54.1mgとし、オイルバスの温度を120℃(反応温度)に設定して、16時間反応させた以外は、実施例26と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表7に示す。
【0070】
(実施例29)
フェニルシランをトリエトキシシラン164.3mg(1.0mmol)に置き換えた以外は、実施例28と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表7に示す。
【0071】
(実施例30)
フェニルシランをポリ(メチルヒドリドシラン)(PMHS)1.9g(1.0mmol,Mn=1900)に置き換えた以外は、実施例28と同様の操作によって原料を反応
させた。原料、生成物等の定量結果を表7に示す。
【0072】
(実施例31)
フェニルシランをジフェニルシラン184.3g(1.0mmol)に置き換えた以外は、実施例28と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表7に示す。
【0073】
(実施例32)
フェニルシランをフェニルジメチルシラン136.3g(1.0mmol)に置き換えた以外は、実施例28と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表7に示す。
【0074】
(実施例33)
フェニルシランをトリエチルシラン116.3g(1.0mmol)に置き換えた以外は、実施例28と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表7に示す。
【0075】
【化12】
【0076】
【表7】
【0077】
<混合溶媒の検討>
(実施例34)
投入するフェニルシランの量を108.2mg(2.0mmol)とした以外は、実施例28と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表8に示す。
【0078】
(実施例35)
THFをDMF/1,4−Dioxaneの混合溶媒(1.0/1.0mL)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液10(溶媒配位酸化鉄ナノ粒子が分散した溶液)を調製した。
次に分散液9を分散液10に置き換えた以外は、実施例34と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表8に示す。
【0079】
(実施例36)
THFをDMFに置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液11(DMF配位酸化鉄ナノ粒子が分散したDMF溶液)を調製した。
次に分散液9を分散液11に置き換えた以外は、実施例34と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表8に示す。
【0080】
(実施例37)
THFをDMF/ジメチルアセトアミド(DMA)の混合溶媒(1.0/1.0mL)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液12(溶媒配位酸化鉄ナノ粒子が分散した溶液)を調製した。
次に分散液9を分散液12に置き換えた以外は、実施例34と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表8に示す。
【0081】
(実施例38)
THFをDMF/NMPの混合溶媒(1.0/1.0mL)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液13(溶媒配位酸化鉄ナノ粒子が分散した溶液)を調製した。
次に分散液9を分散液13に置き換えた以外は、実施例34と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表8に示す。
【0082】
(実施例39)
THFをDMF/Tolueneの混合溶媒(1.0/1.0mL)に置き換えた以外は、実施例2と同様の操作によって、分散液14(溶媒配位酸化鉄ナノ粒子が分散した溶液)を調製した。
次に分散液9を分散液14に置き換えた以外は、実施例34と同様の操作によって原料を反応させた。原料、生成物等の定量結果を表8に示す。
【0083】
【化13】
【0084】
【表8】