【解決手段】本発明は、リン系化合物と、環状オレフィン系樹脂とを含む、波長450nm以下のレーザー光学系で使用されるレンズ用組成物を提供する。前記リン系化合物は、縮合リン酸エステル、ヒンダードヒドロキシフェニル基を有する3価のリン化合物、及び1分子中にリン原子を1個含む5価のリン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
前記リン系化合物は、縮合リン酸エステル、ヒンダードヒドロキシフェニル基を有する3価のリン化合物、及び1分子中にリン原子を1個含む5価のリン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のレンズ用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
[レンズ用組成物]
本発明のレンズ用組成物(以下、本発明のレンズ用組成物を「本発明の組成物」ともいう。)は、リン系化合物と、環状オレフィン系樹脂とを含む。本発明者らによる検討の結果、環状オレフィン系樹脂とともにリン系化合物を含む組成物から得られたレンズは、波長450nm以下という短波長のレーザー光学系で使用しても、耐光性の低下が抑制される点が見出された。そのメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、環状オレフィン系樹脂を含むレンズへの光照射によって生じる耐光性の低下は、環状オレフィン系樹脂中に含まれる極微量の残存金属(残渣触媒等)によって、レンズの光劣化が促進されることが一因であると考えられるところ、本発明の組成物から得られるレンズにおいては、残存金属にリン系化合物が配位し、残存金属によって生じ得る光劣化の促進が抑制されているため、レンズの耐光性の低下が抑制されるものと考えられる。
【0019】
本発明において「レンズの耐光性の低下が抑制される」とは、本発明の組成物から得られるレンズについて、実施例において示した湿熱環境下における可視光照射試験を行った場合に、試験後であってもレンズに曇り又は白点が目視観察でほぼ認められないことを指す。なお、レンズの曇りとは、レンズ表面が白く濁る現象一般を指すが、顕微鏡を用いた目視観察においては、曇りは、白点の集合体として見える場合がある。
【0020】
(リン系化合物)
本発明におけるリン系化合物は、その構造にリン原子を含むものであれば特に限定されず、縮合リン酸エステル、ヒンダードヒドロキシフェニル基を有する3価のリン化合物、及び1分子中にリン原子を1個含む5価のリン化合物からなる群より選択される少なくとも1種等が挙げられる。以下、これらの各リン系化合物について説明するが、これらのリン系化合物のなかでも、高耐熱性、低揮発性、環状オレフィン系樹脂との良好な相溶性を有する等の観点から、本発明におけるリン系化合物は、縮合リン酸エステルが好ましい。
【0021】
〔縮合リン酸エステル〕
本発明における縮合リン酸エステルは、特に限定されないが、芳香族環を有する縮合リン酸エステル等が挙げられる。縮合リン酸エステルは、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
例えば、本発明における好ましい縮合リン酸エステルの構造としては下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
4〜R
6は、それぞれ独立に、炭素数6〜20のアリール基を表し、R
3は炭素数6〜25のアリーレン基を表し、nは0〜3の整数を示す。)
【0023】
一般式(I)中、R
1、R
2、R
4〜R
6で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレン基等が挙げられる。アリール基は、置換基としてメチル基、エチル基等のアルキル基を有していてもよい。R
3で示されるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ビスフェノール残基等が挙げられる。
【0024】
一般式(I)で表される化合物としては公知のものを使用できる。例えば、1,3フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3フェニレンビス(ジ−4メチルフェニルホスフェート)、1,3フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)、1,4フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,4フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)、4,4’ビフェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’ビフェニレンビス(ジ−2、6キシレニルホスフェート);これらのホスフェート類に対応するハイドロキノンホスフェート類、ビフェノールホスフェート類及びビフェノール−Aホスフェート類等が挙げられる。これらの化合物は1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。
【0025】
一般式(I)で表される化合物のうち、環状オレフィン系樹脂の有する透明性及び耐熱性を特に有効に維持でき、かつ工業的に広く用いられている点で、下記一般式(II)で表される化合物(1,3フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)、別名レゾルシノールビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート))が特に好ましい。
【化6】
【0026】
〔ヒンダードヒドロキシフェニル基を有する3価のリン化合物〕
本発明におけるヒンダードヒドロキシフェニル基を有する3価のリン化合物(以下、単に「3価のリン化合物」ともいう。)は、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
例えば、本発明における好ましい3価のリン化合物としては、下記一般式(III)で表される亜リン酸エステル類が挙げられる。
【化7】
【0028】
上記一般式(III)において、R
a1、R
a2、R
a4、及びR
a5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、又はフェニル基を表す。R
a1、R
a2、及びR
a4は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましく、R
a5は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましい。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0029】
なかでも、R
a1及びR
a4は、それぞれ独立にt−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基、又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。R
a2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、とりわけメチル基、t−ブチル基、又はt−ペンチル基であることが好ましい。R
a5は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
【0030】
上記一般式(III)において、R
a3は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記と同様のアルキル基が挙げられる。R
a3は、好ましくは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、とりわけ水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0031】
上記一般式(III)において、Xは、単結合、硫黄原子、又は−CHR
a6−基(R
a6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。)を表す。ここで、R
a6で示される炭素数1〜8のアルキル及び炭素数5〜8のシクロアルキルとしては、それぞれ前記と同様のアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。Xは、単結合又は−CHR
a60−基(R
a60は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、又はt−ブチル基を示す。)であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(III)において、Aは、炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR
a7−基(R
a7は単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側に結合していることを示す。)を表す。ここで、炭素数2〜8のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、プロピレン基が好ましく用いられる。また、*−COR
a7−基において、*は、カルボニル基がホスファイトの酸素と結合していることを示す。R
a7で示される炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられる。R
a7としては、単結合、エチレン基等が好ましく用いられる。
【0033】
上記一般式(III)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記と同様のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、アルキル部分が前記炭素数1〜8のアルキル基と同様のアルキル基であるアルコキシ基が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、アラルキル部分が前記炭素数7〜12のアラルキル基と同様のアラルキル基であるアラルキルオキシ基が挙げられる。
【0034】
上記一般式(III)で表される亜リン酸エステル類の具体例としては、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジエチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[2,2−ジメチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられ、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンが好ましい。また、上記一般式(III)で表される亜リン酸エステル類の市販品としては、例えば、SUMILIZER(登録商標) GPが挙げられる。
【0035】
上記一般式(III)で表される亜リン酸エステル類は、公知の方法により製造することができる。
【0036】
〔1分子中にリン原子を1個含む5価のリン化合物〕
本発明における5価のリン化合物は、1分子中にリン原子を1個含む限り、特に限定されず、下記式(IV)で表されるリン酸エステル及びホスフィンオキシドからなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
【化8】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又はアリール基を表す。Xは単結合又は酸素原子を表す。)
【0037】
5価リン化合物のリン酸エステル類としては、公知のものを使用できる。例えば、脂肪族リン酸エステル(トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリプロピルリン酸、トリイソプロピルリン酸、トリブチルリン酸、トリイソブチルリン酸、トリシクロヘキシルリン酸等のトリアルキルリン酸エステル類);前記トリアルキルリン酸エステル類に対応するジアルキルリン酸エステル及びモノアルキルリン酸エステル、芳香族リン酸エステル(トリフェニルリン酸、トリクレジルリン酸、トリキシリルリン酸、ジフェニルクレジルリン酸、トリ(イソプロピルフェニル)リン酸、ジフェニルエチルクレジルリン酸等のトリフェニルリン酸エステル類)、脂肪族−芳香族リン酸エステル(メチルジフェニルリン酸、フェニルジエチルリン酸等)が挙げられる。
【0038】
5価リン化合物のホスフィンオキシド類としては、公知のものを使用できる。例えば、脂肪族ホスフィンオキシド(トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリプロピルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド)、トリフェニルホスフィンオキシド等の芳香族ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0039】
上記のなかでも、本発明における好ましい5価のリン化合物としては、下記式(a−1)、(a−2)及び(a−3)で表される、トリフェニルリン酸、トリ(パラクレジル)リン酸及びトリシクロヘキシルホスフィンオキシドが挙げられる。これらは1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【化9】
【化10】
【化11】
【0040】
本発明の組成物中に含まれるリン系化合物の量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上2.0質量部以下であってもよい。リン系化合物の量が環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上、好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部超であると、環状オレフィン系樹脂の透明性が損なわれにくく、耐光性に優れたレンズを得やすい。リン系化合物の量が環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、2.0質量部以下、好ましくは1.8質量部以下であると、環状オレフィン系樹脂の透明性及び耐熱性が損なわれにくい。
【0041】
(環状オレフィン系樹脂)
本発明における環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む重合体又は共重合体であれば、特に限定されない。例えば、環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物等を挙げることができる。環状オレフィン系樹脂は、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0042】
また、環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む上記重合体又は上記共重合体において、さらに極性基を有する不飽和化合物がグラフト及び/又は共重合したものも挙げられる。
【0043】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等を挙げることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0044】
また、本発明において環状オレフィン系樹脂として用いられる上記共重合体としては、市販の樹脂を用いることも可能である。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(TOPAS Advanced Polymers社製)、アペル(登録商標)(三井化学社製)、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)等を挙げることができる。
【0045】
環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体として、特に好ましい例としては、〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィンに由来する構造単位と、〔2〕下記一般式(b)で示される環状オレフィンに由来する構造単位と、を含む共重合体を挙げることができる。
【化12】
(式中、R
1〜R
12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
R
9とR
10、R
11とR
12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
R
9又はR
10と、R
11又はR
12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R
5〜R
8は、それぞれの繰り返し単位のなかで、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0046】
〔〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン〕
炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィンは、1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。これらのなかでは、エチレンの単独使用が最も好ましい。
【0047】
〔〔2〕一般式(b)で示される環状オレフィン〕
一般式(b)で示される環状オレフィンについて説明する。一般式(b)におけるR
1〜R
12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。一般式(b)で示される環状オレフィンの具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0048】
これらの環状オレフィンは、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでは、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが好ましい。
【0049】
〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィンと〔2〕一般式(b)で表される環状オレフィンとの重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0050】
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
【0051】
また、得られた環状オレフィン系樹脂の水素添加方法も特に限定されず、従来公知の方法を適用可能である。
【0052】
なお、環状オレフィン系樹脂は、上記の〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、〔2〕一般式(b)で示される環状オレフィン成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有してもよい。任意に共重合されていてもよい不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体等を挙げることができる。炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0053】
上記のようにして製造された環状オレフィン系樹脂は、JIS K7210に準拠する方法で、270℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトインデックスが10g/10min以上100g/10min以下であることが好ましい。環状オレフィン系樹脂のメルトインデックスが10g/10min未満であると、流動性が損なわれてしまう場合がある。また、環状オレフィン系樹脂のメルトインデックスが100g/10minより高くなると、環状オレフィン系樹脂自体の機械強度が低下し、光学レンズ用途には不適となる場合がある。
【0054】
本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに公知の添加剤(酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外光吸収剤、難燃剤、硫黄系安定剤、金属抽出剤等)が添加されていてもよい。また、本発明の組成物には、エラストマーが添加されていてもよい。本発明の組成物がエラストマーを含むと、得られる成形体の靭性等が向上しやすい。エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル酸エステル系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリオルガノシロキサン系エラストマー、エラストマー水素添加物、これらエラストマーの2種以上を共重合及び/又はグラフト重合させて得られるエラストマーが挙げられる。これらのエラストマーのうち、本発明の組成物から得られる成形体のクラックの発生を効果的に抑制できる観点から、特にスチレン系エラストマーが好ましい。組成物中の添加剤やエラストマーの種類や量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
【0055】
スチレン系エラストマーは、芳香族ビニル系重合体ブロック(ハードセグメント)とゴムブロック(ソフトセグメント)とを有する。芳香族ビニル系重合体ブロックが物理架橋を形成して橋かけ点となり、ゴムブロックが弾性を付与する。スチレン系エラストマーが環状オレフィン系樹脂中に分散することで、樹脂成形体に高い靭性を付与することができ、樹脂成形体が湿熱環境に曝されたときに、樹脂成形体の内部にクラックが発生することをより効果的に抑えることができる。
【0056】
芳香族ビニル系重合体ブロックを形成する芳香族ビニル系化合物(単量体)の例としては、スチレン;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン等の核アルキル置換スチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−4−クロロスチレン等の核ハロゲン化スチレン等が挙げられる。
【0057】
また、スチレン系エラストマー中の、芳香族ビニル系重合体ブロックに由来する繰り返し単位の含有量を多くすると、樹脂成形体を湿熱処理したときに樹脂成形体の内部にクラックが入りやすくなる。一方、上記含有量が少なすぎるとスチレン系エラストマーの、マトリクスである環状オレフィン系樹脂への相溶性が悪く、スチレン系エラストマーの分散径が大きくなり、成形体の透明性が損なわれるという点で問題がある。従って、上記問題とクラックの程度とを考慮しながら、芳香族ビニル系重合体ブロックに由来する繰り返し単位の含有量を調整する。樹脂成形体を湿熱処理したときに、クラックが発生しにくくするためには、上記含有量(スチレン系エラストマー中の、芳香族ビニル系重合体ブロックに由来する繰り返し単位の含有量)は10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以上80質量%以下である。
【0058】
また、スチレン系エラストマー中の、芳香族ビニル系重合体ブロックに由来する繰り返し単位の含有量を調整することで、スチレン系エラストマーの屈折率を調整することができる。従って、本発明の組成物を用いて、高い透明性が要求される樹脂成形体を成形する場合には、スチレン系エラストマー中の、芳香族ビニル系重合体ブロックに由来する繰り返し単位の含有量を調整して、スチレン系エラストマーの屈折率と上記環状オレフィン系樹脂の屈折率とを近づけることが好ましい。
【0059】
特に、芳香族ビニル系化合物としてスチレンを用いれば、スチレン系エラストマーの屈折率を、環状オレフィン系樹脂の屈折率に近づけやすいため好ましい。また、スチレン系エラストマーにおけるスチレンに由来する繰り返し単位の含有量を、50質量%以上90質量%以下に調整すれば、スチレン系エラストマーの屈折率を、環状オレフィン系樹脂の屈折率に近づけやすい。
【0060】
ゴムブロックを形成する化合物(単量体)の例としては、α−オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−C
2−12オレフィン等)、ジエン系単量体(ブタジエン、イソプレン等)等が挙げられる。ゴムブロックは、複数の単量体から形成されていてもよい。
【0061】
スチレン系エラストマー中の、ゴムブロックを形成する化合物に由来する繰り返し単位の含有量を多くすると、樹脂成形体を湿熱処理したときに樹脂成形体の内部にクラックが入りにくくなる。一方、上記含有量が多すぎるとスチレン系エラストマーの、マトリクスである環状オレフィン系樹脂への相溶性が悪く、スチレン形エラストマーの分散径が大きくなり、成形体の透明性が損なわれるという点で問題がある。従って、上記問題とクラックの程度とを考慮しながら、上記化合物に由来する繰り返し単位の含有量を調整する。上記含有量(スチレン系エラストマー中の、ゴムブロックを形成する化合物に由来する繰り返し単位の含有量)は10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以上70質量%以下である。
【0062】
具体的なスチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体(H−SBR)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、水素添加スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)が挙げられる。
【0063】
上記のなかでも、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)、水素添加スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEEPS)を使用することが好ましい。これらのエラストマーを使用すれば、本発明の組成物を成形してなる樹脂成形体は、湿熱環境下で使用されても内部にクラックが発生しにくく、非常に透明性が高くなる。
【0064】
特に、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEEPS)を使用すれば、湿熱環境下で使用されても樹脂成形体の内部にクラックが非常に発生しにくく、湿熱処理後の樹脂成形体の内部をレーザー顕微鏡で観察してもクラックの存在が確認されない場合がある。
【0065】
スチレン系エラストマーは、JIS K7210に準拠する方法で、270℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトインデックスが、0.05g/10min以上100g/10min以下であることが好ましい。スチレン系エラストマーのメルトインデックスが40g/10min以上100g/10min以下の範囲にあれば、環状オレフィン系樹脂中にスチレン系エラストマーを微分散させることができるとともに、組成物の流動性が高いことから薄肉成形体等であっても容易に成形できる。環状オレフィン系樹脂中にスチレン系エラストマーが微分散すると、環状オレフィン系樹脂の屈折率とスチレン系エラストマーの屈折率との間に小さな差があったとしても、この屈折率差が樹脂成形体の透明性に悪影響をほとんど与えない。特に、スチレン系エラストマーとしてSEBS、SEPS、及び/又はSEEPSを使用すれば、スチレン系エラストマーの屈折率が環状オレフィン系樹脂の屈折率に近づくように、スチレン系エラストマー中のスチレンの含有量を調整するとともに、上記メルトインデックスを上記の範囲に調整しやすい。最も調整しやすいのは、スチレン系エラストマーとして、SEBS及び/又はSEEPSを使用する場合である。
【0066】
このように、環状オレフィン系樹脂のメルトインデックスとスチレン系エラストマーのメルトインデックスとを調整したり、環状オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーとの間の相溶性を調整したり、環状オレフィン系樹脂の屈折率とスチレン系エラストマーの屈折率とを調整したりすることで、成形体を湿熱処理しても成形体の内部にクラックが発生しにくくなる。
【0067】
本発明の組成物中のエラストマーの含有量は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部未満であることが好ましい。エラストマーの含有量が0.5質量部以上であれば、樹脂成形体を湿熱環境下に曝したときの、クラックが発生しにくい効果が充分高いため好ましい。上記含有量が5質量部未満であれば、エラストマーの使用による樹脂成形体の透明性の低下がほとんどないため好ましい。本発明の組成物中のエラストマーの含有量は、より好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上1.3質量部以下である。
【0068】
[レンズ用組成物の製造方法]
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用できる。例えば、環状オレフィン系樹脂、リン系化合物、あるいはさらに、必要に応じ配合される樹脂等を、一括で、又は逐次に溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練する方法としては、例えば、樹脂組成物をブレンドした後、一軸若しくは二軸のスクリュー押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダー等で溶融混練する方法等が挙げられる。溶融混練における温度については、環状オレフィン系樹脂、リン系化合物、及び、必要に応じ配合される樹脂等が溶融していれば特に限定はないが、通常160℃〜350℃、好ましくは180℃〜320℃の温度範囲で実施するのが一般的である。
【0069】
例えば、本発明の組成物を構成する成分を一度に混合して本発明の組成物を調製してもよい。あるいは、リン系化合物と、環状オレフィン系樹脂とを含むマスターバッチを、環状オレフィン系樹脂等を含むベース樹脂と混合して本発明の組成物を調製してもよい。マスターバッチを使用して本発明の組成物を調製すると、耐熱性が高く、黄変の抑制された組成物が得られる点で好ましい。
【0070】
[本発明の組成物から得られるレンズ]
本発明の組成物を公知の方法(射出成形法等)で成形することにより、本発明の組成物からなるレンズを得ることができる。該レンズは、波長450nm以下の短波長のレーザー光学系で使用されるレンズとして好適に使用できる。波長450nm以下のレーザー光学系で使用されるレンズとしては、レーザー光波長405nmを標準とする、ブルーレイディスクやHD−DVDのピックアップレンズ等が挙げられる。
【0071】
本発明の組成物から得られるレンズを使用するレーザー光学系の波長の下限は、特に限定されないが、230nm以上であってもよい。
【0072】
レーザー光学系におけるレーザー光の発振形態は特に限定されず、例えば、連続波レーザー、パルスレーザー等が挙げられる。レーザー光の励起源は特に限定されず、例えば、短波長LED等が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1〜11及び比較例1]
環状オレフィン系樹脂として、商品名:TOPAS(登録商標)5013L−10(TOPAS Advanced Polymers社製、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)70g/10min、Tg134℃)を用いた。環状オレフィン系樹脂と、各種リン系化合物と、エラストマーと、を表1記載の割合で使用し、これらを、二軸押出機(日本製鋼所製、商品名:TEX30)を用いて、シリンダー温度260℃にて溶融混練し、ペレット化を実施して、実施例1〜11の組成物を得た。
【0075】
次いで、得られたペレットを用いて、射出成形機(住友重機械社製、商品名:SE75D)にて、シリンダー温度270℃、金型温度115℃の条件にて、70mm×70mm×2mmの平板を成形することにより試験片を得、下記の試験に供した。なお、比較例1においては、実施例1〜11と同条件で環状オレフィン系樹脂のみを射出成形し、試験片を得た。
【0076】
環状オレフィン系樹脂のメルトインデックスはJIS K7210に準拠して270℃、荷重2.16kgにおいて測定した。また、環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)はDSC法(JIS K 7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0077】
なお、表1中、「リンの価数」とは、各種リン系化合物中のリン原子の価数を指す。「組成」の列において、カッコ内の数字は、使用した各成分の添加量(単位:質量部)を指す。
【0078】
表1中、使用した各成分の詳細は下記の通りである。
IRGAFOS(登録商標) 168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、BASF社製
SUMILIZER(登録商標) GP:2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学株式会社製
SANKO−EPOCLEAN:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシド、三光株式会社製
トリシクロヘキシルホスフィンオキシド:和光純薬工業株式会社製
トリフェニルリン酸:大八化学工業株式会社製
トリ(パラクレジル)リン酸:東京化成工業株式会社製
PX−200:1,3フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)、大八化学工業株式会社製
エラストマー1:セプトン2104(株式会社クラレ社製、スチレン含有量65質量%、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)1.2g/10min)
エラストマー2:セプトン8007L(株式会社クラレ社製、スチレン含有量30質量%、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)3.1g/10min)
エラストマー3:ハイブラーKL7350(株式会社クラレ社製、スチレン含有量50質量%、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)40.9g/10min)
環状オレフィン系樹脂:TOPAS(登録商標)5013L−10(ノルボルネンとエチレンとの共重合体である環状オレフィン系樹脂、TOPAS Advanced Polymers社製、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)70g/10min、Tg134℃)
【0079】
[LED試験(湿熱環境下における可視光照射試験)]
各試験片について、反ゲート側の末端部から40mmまでの箇所を切り出し、40mm×70mm×2mmのLED試験用試験片を得た。反ゲート側の末端部(ゲート側から70mm)の中心部分に白色LED(光束20lm)を有するガイドプレートを装着した。次いで、白色LEDを光源とする光(成分として、405nmの光を含む)を各LED試験用試験片に直接照射し、かつ、60℃×90%湿度の条件で湿熱恒温槽に1週間暴露させた後、LEDを消灯し、かつ、70℃にて恒温槽内の水蒸気を除去した後にLED試験用試験片を回収した。実施例1から7及び比較例1に関しては、LED試験後の各LED試験用試験片にハロゲン球(12V100W HAL−L、OLYMPUS社製)を光源とする光を照射して各試験片の曇りを目視により観察し、実施例8から11に関しては、倍率200倍の顕微鏡を使用し、ハロゲン球(12V100W HAL−L、OLYMPUS社製)を光源とする光を照射して試験片の白点を目視により観察し、下記の判定基準に従って判定した。その結果を表1に示す。
(判定基準)
(判定基準)
○:試験片のLED照射部に曇り又は白点が発生しなかった。
×:試験片のLED照射部に曇り又は白点が発生した。
【0080】
[黄変性]
各試験片について、耐熱性試験(110℃、1000時間)を行った。耐熱性試験前後の各試験片の黄色度(DIN6167)を、YKB−Gardnar GmbH製色差計color−sphereを使用して測定した。耐熱性試験後の各試験片の黄色度から、耐熱性試験前の各試験片の黄色度を引いた値ΔYIを計算し、その結果を表1に示す。
【0081】
[ガラス転移点(Tg)]
実施例及び比較例の組成物のガラス転移点(Tg)を、DSC法(JIS K 7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
[耐湿熱性]
各試験片について、温度85℃、湿度85%環境中で16時間暴露した後、試験片の内部を、レーザー顕微鏡を用いて倍率200倍でクラック発生の有無を目視で観察し、下記の判断基準に従って判定した。その結果を表1に示す。
(判断基準)
○:クラックが発生しなかった。
×:クラックが発生した。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示される通り、本発明の組成物から得られた試験片は、LED試験後においても曇りが抑制されているので透明性が高く、耐光性に優れることがわかる。また、3価のリン化合物よりも5価のリン化合物を用いた場合に、耐黄変性が良好であることがわかる。さらに、本発明の組成物は、Tgが130℃超であり、耐熱性に優れることがわかる。
【0085】
[実施例12〜14、比較例2]
リン系化合物の種類及び割合を表2記載の通りに設定し、実施例1〜11と同様にして、実施例12〜14の組成物を調製し、実施例12〜14の試験片を得た。なお、比較例2においては、リン系化合物を含まない点以外は、実施例12〜14と同条件で組成物を射出成形し、試験片を得た。なお、表2中、「リンの価数」とは、各種リン系化合物中のリン原子の価数を指す。「組成」の列において、カッコ内の数字は、使用した各成分の添加量(単位:質量部)を指す。
【0086】
[レーザー光試験(湿熱環境下におけるレーザー光照射試験)]
各試験片に対して、70℃×7Wh/mm
2の条件で、波長405nmのレーザー光を照射した。倍率200倍の顕微鏡を使用して各試験片の白点を目視により観察し、下記の判定基準に従って判定した。その結果を表2に示す。
(判定基準)
○:白点のサイズが相対的に小さく、白点が試験片のごく一部にのみ観察された。
△:白点のサイズが相対的に大きく、白点が試験片の一部にのみ観察された。
×:白点のサイズが相対的に大きく、白点が試験片の全体に観察された。
【0087】
【表2】
【0088】
表2に示される通り、本発明の組成物から得られた試験片は、レーザー光試験後においても白点が抑制されているので透明性が高く、耐光性に優れることがわかる。
【0089】
なお、表1及び表2に示すように、リン系化合物を有さない組成物(すなわち、比較例1及び2)においては、LED照射又はレーザー光照射した場合、曇り及び/又は白点が発生した。このことから、組成物中のリン系化合物が、環状オレフィン系樹脂の曇り及び/又は白点発生を抑制したことがわかる。以上から、本発明の組成物を用いることにより、短波長のレーザー光学系で使用しても耐光性が損なわれにくいレンズが得られることがわかる。