【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(1)溶媒に、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子、マグネシウム源、及びフッ素源を添加撹拌して溶液を調製することにより、上記溶液中で、上記ポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆したフッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子を形成する工程1、及び(2)上記コアシェル粒子のコアである、上記ポリスチレン粒子を除去する工程2を含む中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法に関する。
1.中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法であって、
(1)溶媒に、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子、マグネシウム源、及びフッ素源を添加撹拌して溶液を調製することにより、前記溶液中で、前記ポリスチレン粒子をコアとし、前記ポリスチレン粒子を被覆したフッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子を形成する工程1、及び
(2)前記コアシェル粒子のコアである、前記ポリスチレン粒子を除去する工程2
を含む、中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
2.前記マグネシウム源は、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び酢酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項1に記載の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
3.前記マグネシウム源は、塩化マグネシウムである、上記項1に記載の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
4.前記フッ素源は、フッ化水素、及び化学式NR
4Fで示されるフッ化アンモニウム(式中、各Rは、それぞれ独立に、水素又は低級アルキル基を表す。)からなる群から選択される少なくとも一種である、上記項1〜3のいずれかに記載の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
5.前記フッ素源は、NH
4Fである、上記項4に記載の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
6.前記溶液中のマグネシウムイオンの濃度は、4.5〜8.0mmol/Lである、上記項1〜5のいずれかに記載の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
7.フッ素原子とマグネシウム原子のモル比F/Mgが、0.20〜0.40である、上記項1〜6のいずれかに記載の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
8.前記ポリスチレン粒子の平均粒子径は、80〜400nmである、上記項1〜7のいずれかに記載の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法。
【0012】
以下、本発明の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明の製造方法は、(1)溶媒に、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子、マグネシウム源、及びフッ素源を添加撹拌して溶液を調製することにより、上記溶液中で、上記ポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆したフッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子を形成する工程1、及び(2)上記コアシェル粒子のコアである、上記ポリスチレン粒子を除去する工程2を含む中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法である。
【0014】
上記製造方法では、工程1において、溶媒に、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子を添加してコアシェル粒子のコアとして用いている。ここで、フッ化マグネシウムの一次粒子、及びマグネシウムイオンは正のゼータ電位を有するため、これらが溶液中に存在すると、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子の表面に電気的に引き寄せられるので、ポリスチレン粒子の表面にフッ化マグネシウムの一次粒子が付着したり、フッ化マグネシウムが生成したりして、これらが成長することにより、ポリスチレン粒子をコアとし、フッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子を形成できる。当該コアシェル粒子から、ポリスチレン粒子を除去することにより、中空フッ化マグネシウム粒子を容易に製造することができる。
【0015】
また、本発明の製造方法によれば、工程1において溶液中に界面活性剤を必須成分として用いることなくコアシェル粒子を形成することができるので、シェルであるMgF
2中に界面活性剤の分子が実質的に存在しない構成とすることも可能である。この場合、工程2においてポリスチレン粒子を熱分解した際に、MgF
2中の界面活性剤が分解されることに起因する中空フッ化マグネシウム粒子の孔(欠損)の生成が抑制される。
【0016】
更に、本発明の製造方法は、ポリスチレン粒子の粒径を調整することにより、中空フッ化マグネシウム粒子の粒径を制御することができ、また、溶液中のマグネシウムイオン、及びフッ素イオンの濃度(モル比)を調整することにより、中空フッ化マグネシウム粒子の膜厚を制御することができるので、得られる中空フッ化マグネシウム粒子の粒径、及びフッ化マグネシウムの膜厚を低屈折材料として用いるのに適した範囲に制御することができる。
【0017】
1.工程1
工程1は、溶媒に、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子、マグネシウム源、及びフッ素源を添加撹拌して溶液を調製することにより、溶液中で、上記ポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆したフッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子を形成する工程である。
【0018】
<ポリスチレン粒子>
上記ポリスチレン粒子は、負のゼータ電位を有する。上記ポリスチレン粒子は、負のゼータ電位を有するものであれば特に限定されないが、アニオン性重合開始剤と、スチレンモノマーと、溶媒とを含む溶液中で、スチレンモノマーの重合反応を行う製造方法により製造され、粒子中に、界面活性剤の分子を実質的に含まないポリスチレン粒子が好適に用いられる。以下、このようなポリスチレン粒子について、例示的に説明する。
【0019】
(スチレンモノマー)
上記スチレンモノマーとしては、ポリスチレン粒子を製造することができれば特に限定されないが、アルキル(メタ)アクリレート等の疎水性モノマーに由来する構成単位、その他の共重合可能なモノマー構成単位を含んでいるものが好ましい。その好適例としてば、炭素数3〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートスチレン、2−メチルスチレン等が挙げられる。
【0020】
上記ポリスチレン粒子の製造に用いられる溶液中のスチレンモノマーの濃度は特に限定されないが、上記溶液100質量%に対して0.1〜15質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましく、0.4〜2質量%であることが更に好ましい。上記濃度に設定することにより、得られるポリスチレン粒子の平均粒子径、及び最終生成物である中空フッ化マグネシウム粒子の平均粒子径を80〜400nm程度に制御することができる。
【0021】
なお、本明細書において、ポリスチレン粒子の平均粒子径、及び中空フッ化マグネシウム粒子の平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡:S−5000、S−5200、日立製、20kVの条件)にて特定される値である。
【0022】
(アニオン性重合開始剤)
アニオンチオン性重合開始剤は、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子を得ることができれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。上記アニオン性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビス(イソブチロニトリルスルホン酸塩);4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。上記過硫酸カリウムとしては、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)が挙げられる。中でも、過硫酸塩が好ましく、過硫酸カリウムがより好ましく、KPSが更に好ましい。
【0023】
上記ポリスチレン粒子の製造に用いられる溶液中のアニオン性重合開始剤の濃度は特に限定されないが、上記溶液を100質量%として、0.4〜4.0質量%が好ましく、0.4〜2.0質量%がより好ましい。上記濃度に設定することにより、得られるポリスチレン粒子の平均粒子径、及び最終生成物である中空フッ化マグネシウム粒子の平均粒子径を80〜400nm程度、好ましくは80〜300nm程度に制御することができ、得られるポリスチレン粒子に、適度な負のゼータ電位を付与することができる。
【0024】
(溶媒)
上記ポリスチレン粒子の製造に用いられる溶媒としては、水が好ましい。また、上記溶媒としては、親水性溶媒、又は疎水性溶媒を用いることができる。親水性溶媒としては、アルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を用いることができる。中でも、エタノールが好ましい。
【0025】
疎水性溶媒としては、100℃で100g当たり約1g未満の水溶性を有する有機炭化水素系溶媒が挙げられる。このような疎水性溶媒としては、炭素数6〜10の直鎖状又は分岐状又は環状のアルカン、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンを用いることができる。
【0026】
上記溶媒として、水及び疎水性溶媒を混合して用いてもよい。疎水性溶媒/水の質量比は限定されないが、0.01〜2.0程度が好ましく、0.04〜1.0程度がより好ましい。特に溶媒がオクタンである場合には、上記質量比を0.05〜0.84に設定することが好ましい。
【0027】
溶媒として、上述の溶媒を用いることにより、最終生成物である中空フッ化マグネシウム粒子の外径を80〜400nm程度に制御し易い。
【0028】
(重合反応)
上記ポリスチレン粒子は、上記アニオン性重合開始剤と、上記スチレンモノマーと、上記溶媒とを含む溶液中で、スチレンモノマーの重合反応を行うことにより得られるものを用いることが好ましい。重合反応は、上記ポリスチレン粒子の製造に用いられる溶媒中に上記スチレンモノマーと、上記アニオン性重合開始剤とを添加して得られた溶液を、混合撹拌することにより行うことができる。
【0029】
上記ポリスチレン粒子の製造に用いられる溶液は、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。このような構成とすることで、粒子中に、界面活性剤の分子を実質的に含まないポリスチレン粒子を製造することができ、このようなポリスチレン粒子を用いることで、シェルを形成するフッ化マグネシウムが界面活性剤の分子を含まない構成とすることができ、最終生成物である中空フッ化マグネシウム粒子の孔の形成を抑制することができる。
【0030】
ここで、本明細書で言う界面活性剤とは、一分子内に親水基と疎水基とを有する化合物で、一般に界面活性剤として認識されている化合物を意味している。上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が該当する。また、界面活性剤を実質的に含まないとは、溶液に界面活性剤が積極的に添加されていないことを意味する。従って、上記ポリスチレン粒子の製造に用いられる溶液が不可避不純物として界面活性剤を含む場合を除外する意味ではない。更に、本明細書で言う、粒子中に、界面活性剤の分子を実質的に含まないポリスチレン粒子とは、上記界面活性剤が積極的に添加されていない溶液を用いて製造されたポリスチレン粒子を意味する。
【0031】
上記ポリスチレン粒子の製造に用いられる溶液の、重合反応の際の温度は特に限定されないが、40℃以上、上記溶媒の沸点以下であることが好ましく、また、50〜90℃であることがより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。上記反応温度が低過ぎると、反応速度が遅くなるおそれがあり、高過ぎると、溶媒が蒸発してしまい、重合反応を継続できなくなるおそれがある。上記溶液の重合反応の際の温度は、上述の範囲内で温度を高くするとポリスチレン粒子の平均粒子径を小さくすることができ、温度を低くすると、ポリスチレン粒子の平均粒子径を大きくすることができるので、上記溶液の重合反応の際の温度を調整することにより、得られるポリスチレン粒子の平均粒子径を制御することができ、これにより、最終生成物である中空フッ化マグネシウム粒子の平均粒子径を制御することが可能となる。
【0032】
上記重合反応の反応時間は特に限定されないが1〜720分であることが好ましく、10〜600分であることがより好ましい。上記反応時間が短過ぎると、反応が不十分となるおそれがある。
【0033】
上記ポリスチレン粒子のゼータ電位は、−60〜−40mVであることが好ましく、−55〜−45mVであることがより好ましい。上記ゼータ電位が低すぎると、正のゼータ電位を有するフッ化マグネシウムの一次粒子、及びマグネシウムイオンがポリスチレン粒子の周囲に凝集し難く、ポリスチレン粒子をコアとし、当該ポリスチレン粒子を被覆したフッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子を形成し難いおそれがある。なお、上記ゼータ電位は、Malvern社製のゼーターサイザーナノZを用いて、水溶媒中で濃度0.01wt%以下の条件により測定することができる。
【0034】
本発明の中空フッ化マグネシウム粒子の製造方法は、以上説明したポリスチレン粒子の製造方法により製造された、負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子を好適に用いることができる。
【0035】
<マグネシウム源>
上記工程1に用いられるマグネシウム源としては、溶液中でマグネシウムイオンを供給できるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。上記マグネシウム源としては、溶媒に可溶性のものが好ましく、例えば、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は酢酸マグネシウムが挙げられる。中でも、溶媒への可溶性に優れる点で、塩化マグネシウムが好ましい。これらのマグネシウム源は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
マグネシウム源は、溶液中でマグネシウムイオンを供給する。溶液中のマグネシウムイオンの濃度は、4.5〜8.0mmol/Lが好ましく、4.6〜7.5mmol/Lがより好ましい。
【0037】
<フッ素源>
上記工程1には、フッ素源が用いられる。フッ素源としては、上記マグネシウム源と反応してフッ化マグネシウムを生成することができれば特に限定されず、例えば、フッ化水素、又は、化学式NR
4Fで示されるフッ化アンモニウムが挙げられる。上記式中、各Rは、それぞれ独立に、水素又は低級アルキル基を表す。上記低級アルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。上記フッ素源としては、NH
4Fが好適に用いられる。
【0038】
上記フッ素源は、フッ素原子とマグネシウム原子のモル比F/Mgが、0.20〜0.40となるように溶液中に添加することが好ましい。上記モル比となるようにフッ素源を添加することで、整った形状の中空フッ化マグネシウム粒子を得ることができる。
【0039】
<溶媒>
上記工程1で用いられる溶媒としては、水を用いることが好ましい。水を用いることにより、安価で、且つ安全にコアシェル粒子を形成することができる。上記溶媒としては、また、疎水性溶媒を用いることができる。疎水性溶媒としては、100℃で100g当たり約1g未満の水溶性を有する有機炭化水素系溶媒が挙げられる。このような疎水性溶媒としては、炭素数6〜10の直鎖状又は分岐状又は環状のアルカン、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンを用いることができる。その中でもオクタンがより好ましい。
【0040】
上記溶媒として、水及び疎水性溶媒を混合して用いてもよい。疎水性溶媒/水の質量比は限定されないが、0.01〜2.0程度が好ましく、0.04〜1.0程度がより好ましい。特に溶媒がオクタンである場合には、上記質量比を0.05〜0.84に設定することにより、得られる中空フッ化マグネシウム粒子の平均粒子径を、80〜400nm程度に制御し易い。
【0041】
上記工程1では、上記溶媒に、上記負のゼータ電位を有するポリスチレン粒子、上記マグネシウム源、及び上記フッ素源を添加撹拌して溶液を調製することにより、上記溶液中で、上記ポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆したフッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子を形成することができる。
【0042】
上記溶液は、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。このような構成とすることで、シェルであるフッ化マグネシウム中に界面活性剤の分子が実質的に存在しない構成とすることができ、後述する工程2においてポリスチレン粒子を熱分解した際に、フッ化マグネシウム中の界面活性剤が分解されることに起因する中空フッ化マグネシウム粒子の孔(欠損)の生成を抑制することができる。
【0043】
ここで、本明細書において、上記工程1に用いられる溶液が界面活性剤を実質的に含まないとは、溶液に界面活性剤が積極的に添加されていないことを意味する。従って、上記溶液が不可避不純物として界面活性剤を含む場合を除外する意味ではない。
【0044】
上記工程1における溶液の温度は特に限定されないが、25℃以上、上記溶媒の沸点以下であることが好ましく、また、40〜75℃であることがより好ましい。上記温度が低過ぎると、反応速度が遅くなるおそれがあり、高過ぎると、中空フッ化マグネシウム粒子に孔(欠損)が生じて表面が平滑にならないおそれがあり、また、溶媒が蒸発してしまうおそれがある。
【0045】
上記工程1における撹拌時間は特に限定されないが1〜720分であることが好ましく、10〜600分であることがより好ましい。上記撹拌時間が短過ぎると、反応が不十分となるおそれがある。
【0046】
以上説明した工程1により、上記ポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆したフッ化マグネシウムをシェルとするコアシェル粒子が形成される。
【0047】
上記工程2は、工程1により得られたコアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を除去する工程である。上記コアシェル粒子の内部は、コアとしてポリスチレン粒子が充填されている状態であるので、これを除去することによりシェル内を中空とし、低屈折材料等の高機能性材料として使用し得る中空フッ化マグネシウム粒子を製造することができる。
【0048】
工程2において、ポリスチレン粒子を除去する方法としては、シェルであるフッ化マグネシウムを破壊しなければ特に限定されず、例えば、熱分解による除去、又は溶剤により溶解することによる除去が挙げられる。
【0049】
上記ポリスチレン粒子を熱分解により除去する方法における熱分解としては、特に限定されないが、例えば、焼成が挙げられる。焼成による場合、焼成温度が低すぎると中空フッ化マグネシウム粒子内にポリスチレン粒子および他の有機成分が残存するおそれがあり、また焼成温度が高すぎるとシェルであるフッ化マグネシウムが破壊されるおそれがある。このため、焼成によるポリスチレン粒子の除去方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、工程1により得られた溶液から、遠心分離機を用いて未反応物及び不純物を分離させ、コアシェル粒子を含んだ沈降溶液を得る。当該沈降溶液を乾燥させてコアシェル粒子を得る。得られたコアシェル粒子を坩堝に入れて電気炉内で5℃/minの条件で500℃まで昇温させ、続いて500℃で10分間保持して加熱処理することにより、ポリスチレン粒子を除去する方法が挙げられる。
【0050】
また、焼成によるポリスチレン粒子の除去方法としては、例えば、超音波霧化器、二流体ノズル等を用いて、工程1により調製した溶液を電気炉内に噴霧し、電気炉内で好ましくは350〜650℃、より好ましくは450〜650℃、更に好ましくは480〜650℃の高温度領域で焼成する方法が挙げられる。この方法によりポリスチレン粒子を除去するのに十分な時間をかけて焼成することによって、シェルであるフッ化マグネシウムを殆ど破壊することなく、コアシェル粒子からポリスチレン粒子を除去することができる。
【0051】
また、工程1により調製した溶液を電気炉内に噴霧して焼成することにより、ポリスチレン粒子の除去を行う場合には、電気炉の高温度領域の手前に、150〜250℃程度の温度範囲の低温度領域を設け、噴霧された溶液が当該低温度領域を通過してから、高温度領域に噴霧されるようにすることが好ましい。噴霧された溶液が低温度領域を通過することにより、溶液中の溶媒が徐々に蒸発するので、これにより噴霧液の液滴内での中空フッ化マグネシウム粒子の形成が促進される。上記低温度領域を設けない場合、中空フッ化マグネシウム粒子の形成が不十分となり、中空フッ化マグネシウム粒子の形状が、いびつになるおそれがある。
【0052】
上記ポリスチレン粒子を溶剤により溶解して除去する方法としては特に限定されないが、例えば、工程1で得られた溶液に、ポリスチレン粒子を溶解する溶剤を添加する方法が挙げられる。当該方法によりポリスチレン粒子を除去した場合、工程2の後に、溶液をろ過して中空フッ化マグネシウム粒子を採取し、加熱等により乾燥する工程を行うことにより、最終生成物である中空フッ化マグネシウム粒子を得てもよい。
【0053】
上記溶剤としては、ポリスチレン粒子を溶解できれば特に限定されないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。中でも、ポリスチレン粒子の溶解性に優れる点で、トルエンが好ましい。
【0054】
上記工程2を経て得られる中空フッ化マグネシウム粒子の粒子径は、80〜400nmであることが好ましい。