【解決手段】この測定装置は、光源と、平面鏡または基準器として形成された少なくとも1つの光学機能素子と、検出装置とを含む。少なくとも2つの部分光線束が生成され、これらの部分光線束のうちの少なくとも1つの部分光線束が少なくとも3回機能素子に衝突し、次いで部分光線束が干渉により重ね合わされた状態で検出装置の方向に伝搬し、検出装置を介して、重ね合わされた部分光線束から少なくとも1つの位相変調された測定信号が生成可能である。部分光線束が、光学機能素子との衝突の間に少なくとも2つの結像素子を通過し、結像素子の結像倍率は、光学機能素子が目標状態に対して傾斜している場合に、干渉する部分光線束の位置および方向のずれが生じないように構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図9a〜
図16に基づいて本発明による測定装置の個々の変化態様もしくは実施例を詳細に説明する前に、まず本発明の基本的な理論的側面を解説する。ここでまず、干渉計として形成された測定装置について検討し、次に基準器を備える干渉式位置測定装置として形成された測定装置について検討する。
【0036】
干渉計
冒頭で検討した平面鏡干渉計では、通常は測定用アームに少なくとも1つの逆反射体が設けられている。逆反射体は、例えば、コーナーキューブ・ミラー、コーナーキューブ・プリズム、またはレンズと、レンズの焦点面に配置されたミラーとの組合せなどとして、種々異なる形式で干渉計内に形成されていてもよい。これら全ての逆反射体の変化態様は、逆反射体に入射する光線束の逆平行の反射をもたらす。レンズおよびミラーを備える逆反射体の変化態様から、逆反射体は基本的に結像倍率m=−1を備え、対物面および結像面がそれぞれ無限遠に位置する光学結像素子とみなすことができることは自明である。対物面および結像面が無限遠に位置することにより、コリメートされた光線束が再びコリメートされた光線束に移行される。したがって、
図2に示すように、従来技術によれば、干渉計または平面鏡干渉計における光線分割により生じた部分光線束の光路を概略的に説明することができる。
図2には、適宜な分割により生じた測定用光線束Mの光路が示されている。測定用光線束Mは、干渉計の測定用アームにおいて、測定用反射器もしくは平面鏡Pの形態の光学機能素子に入射し、これにより反射され、距離Dを介して、結像倍率m=−1を備える結像素子AEに伝搬し、再び平面鏡Pに入射し、再び反射された後に、最初に入射した測定用光線束Mに対して逆平行に伝搬する。
【0037】
本発明の範囲では、
図3の概略的な光路図にしたがって適宜に構成された測定装置の実施形態において、測定用アーム内を伝搬する測定用光線束Mが機能素子10もしくは平面鏡で少なくとも3回反射される。連続する反射の間に、結像倍率m
nを有する結像素子11.n(n=1,2,...N)はそれぞれ測定用光線束Mによって通過され、結像素子は、測定用光線束Mをそれぞれ機能素子10に戻すように偏向する。したがって、機能素子10との衝突が全部で3回の場合には、機能素子10との衝突の間に通過されるN=2の結像素子11.1,11.2が設けられる;すなわち、機能素子10との1回目の衝突と2回目の衝突との間に第1結像素子11.1が通過され、機能素子10との2回目の衝突と3回目の衝突との間に第2結像素子11.2が通過される。
【0038】
使用される結像素子11.nの光学結像倍率m
nの計算もしくは決定は、光線追跡法によって行うことができ、この場合、機能素子10の平面鏡の傾斜軸線に対して垂直方向の2次元(x,z)に制限することができる。測定用光線束の光路のそれぞれの部分は、これに応じて単純化された光線ベクトル
【数1c】
によって記述される:
【数2】
ここで、x:=光線位置、
Kx:kベクトルのx要素である。
【0039】
【数2a】
として表される入射する測定用光線束Mは、傾斜した平面鏡もしくは機能素子10で屈折され(k
0=2π/λ)、生じた測定用光線束Mは:
【数3】
として表すことができる。
【0040】
次いで測定用光線束Mは距離Dを介して第1結像素子11.1に伝搬し、これは、行列乗算:
【数4】
によって記述される。
【0041】
結像素子11.1は同様に行列乗算:
【数5】
によって記述されるが、この場合、光線位置のための結像倍率m
1とkx成分のための結像倍率とは互いに逆数であることに注意されたい。
【0042】
次いで測定用光線束Mは再び機能素子10に戻るように伝搬する。
【数6】
【0043】
図3に示すように機能素子10における全部でN+1回行われる反射を伴うさらなる光路は、数3式〜数6式に類似したさらなる変換:
【数7】
によって記述され、したがって数3式〜数6式(それぞれ結像倍率mnが異なる)は全部でN回使用される。
【0044】
機能素子10における(N+1)回目の反射後に、光線ベクトル
【数7a】
は
【数7b】
に対して逆平行であり、同じ位置すなわち変位されていない位置で入射することが望ましい。したがって:
【数8】
が成り立つ必要がある。
【0045】
機能素子10における反射が3回行われ、N=2の結像素子11.1,11.2が設けられている場合には:
【数9】
が成り立つ。
【0046】
数(9)式の唯一の実数解は、2つの結像素子11.1,11.2の次の結像倍率m
1,m
2の値:
【数10】
について成り立つ。
【0047】
対応した光路が
図5に示されている。角度αだけ傾斜した機能素子10は、入射する測定用光線束Mを角度2αだけ屈折させる。この角度は、結像倍率m
1=−2を有する結像素子11.1によって結像される。これにより横方向の光線変位hは変位−2hをもたらし、これに応じて入射する光線角度2αは出射する光線角度αをもたらす。したがって、出射する測定用光線束Mは平面鏡もしくは機能素子10に対して垂直方向に伝搬し、これにより自身に反射される。測定用光線束Mは、結像倍率m
2=−1/2を有する結像素子11.2によって結像され、これは、反対方向に通過される結像素子11.1に相当する。したがって、機能素子10において再び反射された後に、測定用光線束Mは、入射する測定用光線束Mに対して逆平行に、光線変位なしに再び出射する。すなわち、構成素子10の傾斜にも関わらず、本発明により測定用光線束Mの方向ずれも位置ずれも生じない。
【0048】
以下には、例としてさらにN=3の結像素子11.1,11.2,11.3、および機能素子10の平面鏡における測定用光線束Mの反射が4回の場合を考察する。この場合、結像素子11.1,11.2,11.3の可能な結像倍率m
1,m
2,m
3の解、すなわち、干渉する部分光線束もしくは測定用および参照用光線束の位置ずれも方向ずれも生じないm
1,m
2,m
3の組合せは無限に多数存在する。
【0049】
m
2,m
3の解がm
1の関数として
図4にm
1=−5…+5の範囲で示されている。結像素子の好ましい結像倍率m
nは、m
n=−3…−1/3またはm
n=+1/3…+3の範囲である。これらの範囲外では、測定用光線束Mの光線断面は過度に大きくなるか、または過度に小さくなる。これらの範囲では、結像倍率m
nについて以下の条件:
【数11】
が成り立つ。
【0050】
一般に、N=3の結像素子の場合、およびN>3の結像素子の場合に可能な解は、結像素子の正および負の両方の結像倍率m
nが生じることにより、簡略化して記述することができる;換言すれば、正の結像倍率を有する結像素子および負の結像倍率を有する結像素子の両方が設けられている。
【0051】
N=3の結像倍率m
nについてこれらの解のうちいずれか一つのみが対称的である。すなわち、この解は、条件m
1=m
3を満たす。この対称解は:
【数12】
である。
【0052】
この解は、
図6に概略的に示されている。測定用光線束Mは、角度αだけ傾斜している機能素子10における1回目の反射時に2αだけ屈折される。結像倍率m
1=−1を有する第1結像素子11.1による結像は、測定用光線束Mの逆反射を意味し、したがって光線角度は再び2αとなる。機能素子10における2回目の反射は、入射する測定用光線束Mに対して光線方向が逆平行の測定用光線束Mをもたらすが、しかしながら、この測定用光線束Mは、傾斜角αに従属して光線位置が変位されている。結像倍率m
2=+1を有する第2結像素子11.2は、例えばミラーとして形成されており、光線位置を保持しつつ測定用光線束Mを反射する。したがって、測定用光線束Mは同じ光路をたどり、機能素子10で3回目に反射され、結像倍率m
3=m
1=−1(逆反射)を有する第3結像素子11.2を通過し、さらに機能素子10で4回目の反射された後に、位置および方向のずれなしに再び出射する。
【0053】
N>3の場合、他の対称解を見つけることができる:
N=3,5,7,…:
n=1,2,…(N−1)/2,(N−1)/2+2,(N−1)/+3,…N,の場合、m
n=−1
n=(N−1)/2+1の場合、m
n=+1
N=3,6,9,…:
n=1,3,4,6,7,9,…N,の場合m
n=−1
n=2,5,8,…N−1の場合m
n=+1
【0054】
結像素子11.nは、この場合、傾斜していない機能素子10に対して平行な光線変位Δxが小さい場合の特性によってのみ特徴づけられる。結像倍率mの場合、出射する測定用光線束Mはこの平面でΔx’=m・Δxだけ変位する。したがって、kベクトルのx要素の特性もこの平面において決定されている:入射する測定用光線束Mの変位がΔkxの場合、出射する測定用光線束MはΔkx’=Δkx/mだけ変位される。この場合、出射する測定用光線束Mが結像素子によって付加的に一定不変の光線変位または光線屈折を受けるどうかは重要ではない。このことは、結像素子は、屈折させる光学素子、または光線を変位する光学素子と組み合わせることもできることを意味する。測定用光線束が実質的に垂直方向に入射する平面鏡干渉計においては、光線変位は、光線距離を分離し、意図される光路のみを許可するための強制的な前提条件である。このような光線変位なしには、測定用光線束Mは同じ光線位置で再び平面鏡もしくは機能素子10に入射し、先行して平面鏡もしくは機能素子10に入射した測定用光線束Mと区別することができない。したがって、平面鏡もしくは機能素子10におけるさらなる反射も不可避的に生じてしまう。光線変位なしには、ファブリー・ペロー干渉計が生じてしまう。ファブリー・ペロー干渉計は、既知のように平面鏡もしくは機能素子10の位置に従属した正弦状の信号経過を示さず、したがって増分式の測定器のように補間することができない。それゆえ、光線変位は必要不可欠である。したがって、本発明によるすべての結像素子は、入射する光線束と出射する光線束との間に光線変位をもたらす。好ましくは、光線横断面は、測定用光線束Mの光線横断面よりも大きく、これにより、光線束の完全な分離が保障される。光線変位方向は、基本的に任意に選択することができる。この自由度は、例えば、平面鏡もしくは機能素子10に対する測定用光線束Mの入射位置を最適化するために利用することができる。
【0055】
基本的には、所定の結像倍率mにおいて種々異なる光学素子を結像素子として使用することができる。以下の一覧では、本発明による測定装置で使用することのできる所定の結像倍率mを有する光線を屈折させない適宜な結像素子の例が挙げられている;これらの結像素子は、個々に
図7a〜
図7eに詳細に示されている。
【0056】
結像倍率 結像素子
m=+1 ミラー
格子‐ミラー‐格子
光線変位反射プリズム
放物面鏡
m=−1 コーナーキューブ・プリズム
コーナーキューブ・ミラー
レンズ‐ミラー‐レンズ
(焦点距離が等しい屈折または回折レンズ)
キャッツアイ
m≠+1およびm≠−1 レンズ‐ミラー‐レンズ
(焦点距離が等しくない屈折または回折レンズ)
焦点距離が等しくない、共通の焦点を有する放物面鏡の2つの分割部分
【0057】
図7aは、上記「格子‐ミラー‐格子」の変化態様による結像倍率m=+1を有する結像素子を示し、この場合に一方の2つの格子11
G1,11
G2および他方のミラー11
Sは、透明な平板11
PPの向かい合った側に配置されている。
【0058】
図7bには、結像倍率m=+1を有する結像素子が示されている。この結像素子は、3つのプリズム面全てにおいて順次に反射が生じる反射プリズム11
RPからなる。このような反射プリズムは、以下では光線変位反射プリズムとも呼ぶ。
【0059】
図7cは、放物面鏡11
PSとして形成された、結像倍率m=+1を有する結像素子を示す。
【0060】
図7dは、表に挙げた、2つのレンズ11
L1,11
L2とミラー11
Sとを備える「レンズ‐ミラー‐レンズ」の変化態様による結像倍率m=−1を有する結像素子を示す。
【0061】
図7eには、結像倍率m=−2を有する結像素子が示されている。この結像素子は、第1回折レンズ11
L,inと、ミラー11
Sと、さらなる第2回折レンズ11
L,outとからなり、2つの回折レンズ11
L,in,11
L,out、およびミラー11
Sは、
図7aの変化態様と同様に、透明な平板11
PPの向かい合った側に配置されている。
【0062】
この場合、2つのレンズ11
L,in,11
L,outは異なる焦点距離を備え、したがって、第1レンズ11
L,inに入射するコリメートされた部分光線束は、第2レンズ11
L,outを通過した後に再びコリメートされ、さらに伝搬する。
【0063】
入射する測定用光線束Mは、この結像素子においては、第1回折レンズ11
L,inによって位置(x
F,z
F)の焦点に合わされ、この焦点は同時に第2回折レンズ11
L,outの焦点でもある。f
inとf
outとが屈折率n
Gを有するガラスからなる2つの回折レンズ11
L,in,11
L,outの焦点距離を示す場合、出射する測定用光線束Mのコリメーションについて:
【数13】
が成り立つ。
【0064】
この結像素子の結像縮尺は:
【数14】
によって得られる。
【0065】
さらに、所定の光線変位Δx
sが、x
Fの適宜な選択によって生じる:
【数15】
【0066】
光線変位Δx
sおよび結像縮尺のための所定の値について:
【数16】
【数17】
【数18】
が成り立つ。
【0067】
2つの回折レンズ11
L,in,11
L,outについて適宜な位相関数が:
【数19】
【数20】
により得られる。
【0068】
この場合、数(18)式と同様にy方向の焦点の変位y
F
【数21】
をもたらすy方向の光線変位Δysが仮定された。
【0069】
このような結像素子は、m≠−1およびm≠+1の場合にはレンズを用いてのみ実施することができる。コーナーキューブ・プリズムに比べて、レンズは、測定用光線束Mがファセットエッジによって損なわれず、したがって波面が妨害されずに保持されるという利点をもたらす。しかしながら、基本的には、同様にコーナーキューブ・プリズムまたはコーナーキューブ・ミラーを結像素子として使用することもできる。m=+1の場合は、レンズなしの単純なミラー反射に相当する(f
in,f
out→∞およびφ
in,φ
in→定数)。レンズを有する結像素子の場合、当然ながら回折レンズの他に屈折レンズ、特に非球面レンズを使用することもできる。
【0070】
基準器を備える干渉式位置測定装置
分割された部分光線束の方向および位置のずれの防止は、基準器を備える干渉式位置測定装置として形成された測定装置においても有利である;これについては以下に
図8に基づいて詳述する。このような位置測定装置では、2つの部分光線束が適宜な光線分割によって生成される。これらの部分光線束は、以下では部分光線束Aおよび部分光線束Bと呼ぶ。部分光線束A,Bは、分割された後に異なる光線距離を通過し、最終的に干渉させられる。この場合、2つの部分光線束A,Bは、ここでは光学機能素子20として機能する基準器によってガイドされる。基準器の状態もしくは位置を決定しておくことが望ましい。この場合、一般に基準器は測定方向に周期的な格子からなっている。
【0071】
基準器平面の任意の軸線を中心として基準器が傾斜している場合に、2つの場合が区別される。透光基準器では、透過された部分光線束A,Bの傾斜に基づいた屈折は一般に小さく、無視することができる。これに対して入射光基準器は適宜に傾斜され、したがって、部分光線束A,Bの屈折は著しく大きくなる。当然ながら、2つの部分光線束A,Bは通常の対称的な光路ではほぼ同様に屈折され、したがって、重ね合わされた場合、部分光線束A,Bの共通の位置および方向変位のみが生じ、部分光線束A,Bの互いの位置および方向のずれは生じない。基準器平面に対して垂直方向の軸線を中心として基準器が傾斜した場合、すなわち、いわゆる「モアレ傾斜」が生じた場合には、部分光線束A,Bの反対方向の位置‐および方向変位が生じる。これまでに既知の逆反射体なしの干渉式位置測定装置では、これにより部分光線束A,Bの位置および方向のずれがもたらされる。これまでに既知の逆反射体を備える干渉式位置測定装置では、方向のずれは防止することができ、部分光線束A,Bの位置のずれのみが生じる。
【0072】
部分光線束A,Bの位置および方向のずれの両方を同時に防止するためには、本発明によれば、これらの測定装置にも適切に形成された結像素子が挿入され、光学機能素子とのそれぞれの衝突の間に通過される。干渉式位置測定装置の場合には、基準器における部分光線束A,Bの個々の回折は機能素子との衝突である。これは、
図8の機能素子20もしくは基準器に対して平行なxy平面に概略的に示されている;機能素子20に垂直方向に入射する光線束B
inが機能素子20もしくは基準器において1回目に+1および−1の回折オーダに回折もしくは分割される。この光線分割により生じた部分光線束A,Bは、結像倍率m
A1もしくはm
B1を有する第1結像素子12.1
Aもしくは12.1
Bにそれぞれ伝搬し、機能素子20に再び戻り、次いで再びそれぞれ同じ+1もしくは−1の回折オーダに回折される。さらなる光路では、n=2…Nであり、結像倍率m
Anもしくはm
Bnを有するN個の他の結像素子12.n
Aもしくは12.n
Bがそれぞれ順次に通過され、その間にそれぞれ同じ+1もしくは−1の回折オーダでそれぞれ新たな回折が機能素子20において起こる。機能素子20における(N+1)回目の回折後には、両方の部分光線束A,Bは光線束B
outに対して共線的に重ね合わされ、機能素子20に対して垂直方向に出射する。後方に配置された図示しない検出装置によって、干渉する対の部分光線束A,Bから、位相変調された測定信号もしくは位置に依存した走査信号が生成される。
【0073】
図8では、それぞれ基準器もしくは機能素子20における回折により両方の部分光線束A,Bの分割および重なり合いが起こる。すなわち、基準器の形態の機能素子20はここでは同時に分割素子および結合素子として機能する。しかしながら、代替的には同様にこれらの機能は、概略的に示した走査ユニット30の個々の分割素子および/または個々の結合素子を介して引き受けることもできる。有利には、このために適宜な走査格子が使用される。
【0074】
使用される結像素子12.n
Aもしくは12.n
Bの最適な結像縮尺の計算は、ここでも光線追跡法によって行うことができる。この場合、m
An=m
Bn=m
nの対称解が有利である。基準器として形成された機能素子を備える干渉式位置測定装置の場合には、基準器もしくは機能素子20の目盛方向xに対して平行で、機能素子20に対して垂直方向の次元x,zに制限することができる。なぜなら、モアレ傾斜は線形近似で機能素子20の目盛方向xの光線移動のみをもたらすからである。位置測定装置の測定方向は、この座標系では、機能素子20の目盛方向xに対して垂直方向に配向されたy軸線に沿って延在する。
【0075】
部分光線束A,Bのそれぞれの光路区分は、ここでも上記数(2)式にしたがって、適宜に簡略化された光線ベクトル
【数21a】
によって記述され、第1成分xは光線位置の変位のみを記述し、第2成分kxは基準器もしくは機能素子20のモアレ傾斜αに基づくx方向のkベクトルの変化のみを記述する。数(3)式の代わりに本実施例では線形近似で:
【数22】
が生じる。
【0076】
この場合、k
Gにより機能素子20の基準器の格子ベクトルk
G=2π/d
Mが示され、d
Mにより基準器の格子周期d
Mが表される。光線ベクトル
【数22a】
もしくは
【数22b】
は、機能素子20において入射もしくは出射する部分光線束Aを記述し;同様に光線ベクトル
【数22c】
もしくは
【数22d】
は部分光線束Bの対応した光路区分を記述する。
【0077】
機能素子20によって部分光線束A,Bの分割が行われた場合には、
【数22e】
が成り立つ。走査ユニット30の機能素子20と結像素子12.n
Aもしくは12.n
Bとの間でz方向に測定される走査距離Dにわたる伝搬は、kベクトルのx成分に従属する光線位置の変位Δx:
【数23】
をもたらす。
【0078】
この場合、角度βは、機能素子20の傾斜なしに位置測定装置の公称初期設定で提供されている光学軸線zに対する部分光線束A,Bの光線傾斜を表す。
【0079】
したがって、上記数(4)式に類似して、γ=AもしくはBの場合に:
【数24】
が生じる。
【0080】
数(5)式および数(6)式は対応して:
【数25】
【数26】
に置き換える必要がある。
【0081】
当然ながら光線傾斜β
nは、機能素子20と走査ユニット30との間のそれぞれの伝搬について異なっていてもよい。
【0082】
図8に示した別の光路は、数(22)式および数(24)式〜数(26)式に類似した他の変換によって適宜に記述され、数(22)式および数(24)式〜数(26)式は、それぞれ変更された結像倍率m
nにより全部でN−1回使用される:
【数27】
【0083】
この場合、プラス記号はγ=Aについて、−記号はγ=Bについてあてはまる。
【0084】
機能素子20の基準器におけるN回目の回折後に、光線ベクトル
【数27a】
および
【数27b】
は等しいことが望ましい。したがって、上記数(8)式に類似して:
【数28】
が成り立つ。
【0085】
N=2の場合(機能素子20における3回の回折、2つの結像素子)、数(9)式に類似して数(28)式により、適宜な位置測定装置について次の条件:
【数29】
が生じる。
【0086】
これは、m
1について次の条件(解m
1=−1,m
2=0は除外する必要がある):
【数30】
をもたらす。
【0087】
この3次の多項方程式を分析的に解くことができ、解くための詳細についてはここではさらに説明しない。解は、一般に角度β
nに従属している。それぞれの部分光線束AもしくはBについて付加的に、機能素子20における2回目の回折に対して対称的なそれぞれ1つの光路が必要となる場合、付加的な条件:
【数31】
が得られる。
【0088】
これらの条件によって、数(30)式は特に次の解:
【数32】
をもたらす。
【0089】
この数式は数(10)式と一致し、角度β
nに従属しない。
【0090】
N=3の場合(機能素子20の基準器における4回の回折、3つの結像素子)、数(27)式から無限に多くの解が生じる。付加的に以下の対称条件:
【数33】
が必要となる場合、特に数(12)式に等しい解:
【数34】
が得られる。
【0091】
モアレ傾斜では線形近似で機能素子20の基準器の目盛方向xにしか光線変位および光線傾斜が生じないので、結像素子12.1,12.2,…12.nがこの目盛方向xにのみ、すなわち、位置測定装置の測定方向yに対して垂直方向にのみ、上記所定の本発明による結像倍率m
nxを有していれば十分である。測定方向yに、同じ、または異なる結像倍率m
nyを使用してもよい。特に、測定方向yに結像倍率m
ny=±1のみを用いる方が有利なことも多い。すなわち、結像素子として、屋根型プリズム(屋根エッジ方向にm=1、これに対して横方向にm=−1)、シリンダレンズとミラーとシリンダレンズの組合せ(シリンダレンズmの屈折方向に任意、これに対して横方向にm=+1)、または非点収差レンズとミラーと非点収差レンズの組合せ(両方向にそれぞれ任意の結像倍率)を用いることができる。数(19)式および数(20)式は、シリンダレンズの場合には適宜に変更する必要がある。シリンダレンズの屈折方向がx方向に延在していることが望ましい場合:
【数35】
【数36】
が成り立つ。
【0092】
非点収差レンズの場合、良好な近似で次の数式:
【数37】
【数38】
を選択することができ、f
in,xおよびf
out,xはx方向の焦点距離であり、f
in,yおよびf
out,yはy方向の焦点距離である。x方向およびy方向の焦点距離の独立した選択により、数(13)式〜数(18)式および数(21)式によって2つの方向xおよびyについて結像倍率m
xおよびm
yを個別に決定することができる。
【実施例1】
【0093】
平面鏡干渉計として形成されたN=2の結像素子を備える本発明による測定装置の第1実施例が、
図9a〜
図9c、ならびに
図10a,10bに概略的に示されている。この場合、
図10aは、
図9aの平面AA′による断面図を示し、
図10bは、
図9aの平面BB′による断面図を示す。
【0094】
この測定装置によって、平面鏡として形成された光学機能素子110と、測定装置の図示の他の構成部材と距離が測定方向zに沿って測定可能である。
【0095】
レーザとして形成された光源(図示しない)によって放出され、線形に偏光された光線束Sは、図面にzにより示した方向に沿って分割素子100まで伝搬する。分割素子100は、適宜なビームスプリッタ層を備える偏光ビームスプリッタとして形成されている。光源の偏光方向は図示のx方向に対して45°に配向されている。分割素子100によって、この場合、入射する光線束Sが2つの部分光線束、すなわち、測定用光線束Mおよび参照用光線束Rに分割される。
【0096】
測定用光線束Mは、図示のz方向に沿ってλ/4板115.1を介して、z方向に沿って位置を測定したい平面鏡の形態の光学機能素子110までさらに伝搬し、機能素子110には測定用光線束Mが垂直方向に入射する。平面鏡との1回目の衝突後に、次いで測定用光線束Mは、2回目にλ/4板115.1を通過し、90°だけ回転された偏光方向を示す。分割素子100もしくは偏光ビームスプリッタは、次いで測定用光線束Mをx方向に屈折させ、結像倍率m
1=−2を有する第1結像素子111.1の方向に伝搬する。第1結像素子111.1は、同時に測定用光線束Mをz方向に向ける。続いて測定用光線束Mは、再び分割素子100の偏光ビームスプリッタに入射し、機能素子110もしくは平面鏡の方向に反射される。λ/4板115.1を再び通過し、平面鏡または機能素子110において2回目に反射され、もう一度λ/4板115.1を通過した後に、測定用光線束Mの偏光は再び回転して戻され、測定用光線束Mは、さらなる屈折なしに分割素子100の偏光ビームスプリッタを通過する。次いで測定用光線束Mは、結像倍率m
2=−1/2を有する第2結像素子111.2を通過し、さらに結像され、y方向に向けられる。次いで測定用光線束Mは分割素子100の偏光ビームスプリッタを介して再びλ/4板115.1および光学機能素子110もしくは平面鏡に伝搬する。平面鏡において3回目に反射され、λ/4板115.1をさらに通過した後に、測定用光線束Mは分割素子100の偏光ビームスプリッタによって屈折され、検出装置(図示しない)に伝搬する。
【0097】
参照用光線束Rは、+x方向に偏光ビームスプリッタもしくは分割素子100から出射し、λ/4板115.2を介して、コーナーキューブ・プリズムとして形成された逆反射素子116に入射する。この場合、コーナーキューブ・プリズムは、参照用光線束Rがエッジに入射しないように調整もしくは配置されている。逆反射素子116によって、逆反射素子116に入射する参照用光線束Rが分割素子100の方向に反射される;この場合、続いて測定用光線束Mと参照用光線束Rとの間に光線変位が生じないように、逆反射素子116は、参照用光線束Rをyおよびz方向に向ける。λ/4板115.2をさらに通過した後に参照用光線束Rは90°だけ回転された偏光を備え、したがって、続いて屈折させられることなしに分割素子100の偏光ビームスプリッタを通過し、次いで測定用光線束Mと共線的に重ね合わされる。重ね合わされた光線束は互いに垂直方向に偏光され、次いで検出装置(図示しない)の方へ伝搬する。検出装置では、既知のように、例えば120°だけ位相をずらされた3つの信号の形態で、位相変調された測定信号が生成され、これらの信号から位置値が導かれる。
【0098】
平面鏡干渉計として形成された測定装置の本発明による構成により、機能素子110として機能する平面鏡の傾斜が制限されている場合に、信号生成のために使用される2つの部分光線束、すなわち測定光線束Mと参照用光線総Rとの間に位置および/または方向のずれが生じないことが確保されている。これにより、平面鏡のために適宜な大きさの傾斜許容差を許可することができる。最適な構成では、光線横断面が等しい場合の傾斜許容差は、従来の平面鏡干渉計の場合よりも10倍大きくてもよい。
【0099】
このことは、本実施例では、本発明にしたがって上記結像倍率m
1=−2,m
2=−1/2を備える測定用光線束Mの光路に適宜な結像素子111.1,111.2を使用することにより保障される。これらの結像素子は、図面に示すようにレンズ‐ミラー‐レンズ系として形成されており、これについては、例えば
図7eについて例示的に説明した。
【0100】
本発明による測定装置の第1実施例は、当然ながら本発明の範囲で変更することができる。
【0101】
したがって、例えば、コーナーキューブ・プリズムとして形成された逆反射素子の代わりに、参照用光線束を反射するために、逆反射素子として結像倍率m
Ref=−1を有する光学結像素子を設けることも可能である;このためには、例えば、上記表に結像倍率m=−1について述べた結像素子が適している。
【0102】
さらに、2つの横断する方向y,zもしくはx,yに広範囲で結像素子111.1,111.2の光線変位を選択することもできる。
【実施例2】
【0103】
図11には、本発明による測定装置の第2実施例がヘテロダイン方式の平面鏡干渉計として形成されている。光学機能素子210における測定用光線束Mの3回の反射が行われ、3回行われる反射の間に通過されるN=2の結像素子211.1,211.2が設けられている。
【0104】
光源220、例えばレーザが、周波数f
Mおよびf
Refを有する2つの光線束を供給する;これらの周波数をずらされた光線束は、本実施例では測定用光線束Mおよび参照用光線束Rとして機能する。これにより、光源から放出される光線束は、光源とは別個の分割素子を介して分割されず、2つの部分光線束、すなわち、測定用光線束Mおよび参照用光線束Rの生成は、この場合、適宜に形成された光源によって引き受けられる。測定用光線束Mおよび参照用光線束Rの周波数の差周波数Δf=f
M−f
Refは、適宜に変調された光学信号が高速フォトディテクタにより検出可能となるように選択される。周波数f
Mを有する測定用光線束Mは、例えば、周波数安定化ファイバレーザまたはHeNeレーザによって生成することができ、一部が分割され、音響工学変調器(AOM)によって周波数Δfだけ周波数をずらされる。この部分は、周波数f
Refを有する参照用光線束Rを供給する。
【0105】
両方の部分光線束M,Rは、偏光されたシングルモード‐ファイバとして形成された光ファイバ230.1,230.2を介して個別に平面鏡干渉計に伝搬される。平面鏡干渉計において、部分光線束はそれぞれコリメーション光学系221.1,221.2を介してコリメートされ、互いに垂直になるように偏光が整列される。部分光線束M,Rの一部は、それぞれ部分透過型ミラー224.1,224.2によって分割され、光線結合素子222によって重ね合わされ、偏向器223.1を通過した後に干渉することができる。重ね合された光線束は、結合レンズ225.1によってシングルモード‐ファイバとして形成された光ファイバ225に結合され、検出器226に供給され、検出器226は、周波数Δfによって変調された適宜な参照用信号S
Refを発生する。参照用信号S
Refの位相は、参照用位相φ
Refとして用いられる。
【0106】
周波数f
Mを有する測定用光線束Mは、第1実施例と比較可能に、本発明による測定装置の種々異なる光学素子を次のように通過する:
【0107】
偏光光学ビームスプリッタとして形成された分割素子200;λ/4板215.1;平面鏡として形成された機能素子210;λ/4板215.1;結像素子211.1,結像倍率m
1=−2;分割素子200;λ/4板215.1;機能素子210;λ/4板215.1;分割素子200;結像素子211.2,結像倍率m
2=−1/2;分割素子200;λ/4板215.1;機能素子210;λ/4板215.1;分割素子200。
【0108】
次いで、測定用光線束Mは偏光器223.2に入射する。
【0109】
参照用光線束Rは分割素子200を通過し、この場合に機能素子210により3回目に反射された後に共線的に測定用光線束Mに重ね合わされ、同様に偏光器223.2に到達し、偏光器は両方の光線束を干渉させる。重ね合わされた光線束は、本発明による措置により、機能素子210もしくは平面鏡が傾斜した場合にも位置および方向を変えないので、結合レンズ225.2を介して、シングルモード・ファイバとして形成された別の光ファイバ227に結合することができる。光ファイバ227は、重ね合わされた光線束を検出器228に伝送する。生成された信号S
Mは、差周波数Δfによって変調され、位相φ
Mが規定された信号を供給する。位相差φ
M−φ
Refは、既知のようにz方向に沿って移動する機能素子210の位置をもたらす。重ね合された光線束がシングルモード‐ファイバとして形成された光ファイバ227により伝送されることにより、まさに一定不変の作動時間が保障される。作動時間は、電気式伝送またはマルチモード‐ファイバによる光学式伝送とは反対にまさに一定不変であり、伝送ケーブルの湾曲に左右されない。
【0110】
この実施例では、全ての光線束は、図平面と一致する共通のxz平面を通過する。機能素子210もしくは平面鏡に垂直方向に入射する測定用光線束Mは、1本の線上に位置する。これにより、y方向、すなわち図平面に対して垂直方向の機能素子210もしくは平面鏡の長さは、適宜に小さく選択することができる。
【0111】
分割素子200は、第1実施例においてもこの第2実施例においても、平面鏡もしくは機能素子210によって反射された光線束を、共線的に平面鏡に伝搬する光線束から分離する役割を果たす。第1実施例では、さらに分割素子は、光源から放出される光線束を測定用光線束と参照用光線束とに分割する役割を果たす。既に述べたように、第2実施例では異なる周波数を有する測定用光線束および参照用光線束の生成は、適宜に形成された光源によって行われる。したがって、分割素子は、両方の実施例において、測定用光線束および参照用光線束を再び重ね合わせる機能を有している。代替的には、当然ながらこれら全ての機能を複数の分割素子に分配することもできる。すなわち、単一の分割素子のみが設けられていることは強制的ではない。
【実施例3】
【0112】
図12には、平面鏡干渉器として形成された本発明による測定装置の第3実施例が概略的に示されている。この変化態様では、機能素子310または平面鏡およびN=3の結像素子において測定用光線束Mの4回の反射が行われる。この場合、第1および第3結像素子は単一の結像素子311.1に組み込まれた状態で形成されており、この結像素子311.1とは別個の第2結像素子311.2が設けられている。結像素子311.1に組み込まれた2つの結像素子は、結像倍率m
1=m
3=−1を有し、入射する測定用光線束Mに対してコーナーキューブ・プリズムのように作用し;別の第2結像素子311.2は結像倍数m
2=+1を有し、入射する測定用光線束に対して、
図7aに示した格子‐ミラー‐格子の組合せ、または
図7bに示した光線変位反射プリズムのように作用する。
【0113】
この実施例では、光路は、互いに重なる2つのxz平面を通過する。異なる平面における光路は、
図12にそれぞれ異なる斜線で示されている。より分かりやすく示すために光線がわずかにずらして示されている。実際には、これらの光路は互いに正確に重なり合う。
【0114】
例えば、レーザとして形成された光源320から放出された光線束Sは、上記光路平面のシングルモード‐ファイバ330を介して平面鏡干渉計に供給され、コリメーション光学系321によってコリメートされる。この光線束Sの偏光方向は、偏光ビームスプリッタとして形成された分割素子300の両方の軸線に対して45°未満である。さらに光線束Sは、測定用光線束Mと参照用光線束Rとに分割される。次いで測定用光線束Mはλ/4板315.1を介して機能素子310もしくは平面鏡に伝搬し、反射され、さらにλ/4板315.1を通過した後に分割素子300によって結像素子311.1の方向に屈折させられる。結像素子311.1は、コーナーキューブ・プリズムとして形成されており;コーナーキューブ・プリズムに組み込まれた第1結像素子は、測定用光線束Mの結像、および下方の光路平面への測定用光線束の変位をもたらす。この光路平面では、測定用光線束Mは再び分割素子300もしくは偏光ビームスプリッタによって屈折させられ、λ/4板315.1を介して2回目に機能素子310の平面鏡に入射する。再び反射され、λ/4板315.1をさらに通過した後に、測定用光線束Mは、分割素子300で屈折させられることなしに、この実施例では
図7bに示した反射プリズムとして形成された結像素子311.2に到達する。結像素子311.2は、結像倍率m
2=+1による結像と並んで、上方の光路平面への測定用光線束Mの変位をもたらす。測定用光線束Mは、次に分割素子300を通過し、再び屈折させられることなしにλ/4板315.1を介して3回目に機能素子310の平面鏡に入射する。λ/4板315.1を介して、測定用光線束Mは3回目の反射後に分割素子300に戻り、分割素子300は、測定用光線束Mを結像素子311.1の別の結像素子の方へ屈折させる。この結像素子は、測定用光線束Mを再び下方の光路平面に変位する。測定用光線束Mは結像素子300で再び屈折させられ、λ/4板315.1を介して4回目に機能素子310または平面鏡に伝搬する。4回目に反射され、λ/4板315.1をさらに通過した後に、最後に測定用光線束Mは屈折させられることなしに分割素子300を通過する。
【0115】
分割素子300における光線束Sの分割後に生じた参照用光線束Rは、参照用逆反射体316を介して下方の光路平面に変位され、機能素子310における4回目の反射後に分割素子300の偏光ビームスプリッタにより共線的に測定用光線束Mに重ね合わされる。この場合、測定用光線束Mと参照用光線束Rとは互いに垂直方向に偏光されている。重ね合わされた光線束は、格子329によって0次,+1次および−1次の回折オーダに分割され、レンズ331によって検出装置の対応した検出器328.1,328.2,328.3に焦点を合わされる。これらの検出器の前方に位置する偏光器323.1,323.2,323.3は、既知のように、位相変調された測定信号S
0,S
123およびS
−120の間でそれぞれ120°の位相変位の調節を可能にする。
【0116】
結像素子311.1,311.2により本発明による測定装置のこの実施例においても、機能素子310の傾斜が、重ね合わされた測定用光線束Mと参照用光線束Rとの間の位置のずれも、方向ずれももたらさないことが確保されている。
【実施例4】
【0117】
本発明による測定装置の第4実施例が
図13および
図14に概略的に示されている。この測定装置は、基準器を備える干渉式位置測定装置として形成されている。この実施例では、基準器は、信号生成のために使用される部分光線束A,Bによって3回衝突される光学機能素子410として機能し、それぞれ部分光線束A,Bの回折が生じる。基準器における衝突の間には部分光線束A,BによってそれぞれN=2の結像素子が通過される。
【0118】
この場合、機能素子410もしくは基準器は、測定方向yに沿って測定装置の図示の他の構成部材に対して可動である。本発明による測定装置によって、測定方向yに沿って機能素子410の相対位置に関する走査信号が決定される。
【0119】
図13の左側には、入射する光線束Sの光路と、分割後に機能素子410との2回目の衝突までの部分光線束A,Bの光路を示し、
図13の右側には、機能素子410との2回目の衝突から機能素子410と3回目に衝突し、部分光線束A,Bが再結合されるまでの部分光線束A,Bの光路が示されている。
図14には、走査光路を他の方向から見た図が示されている。
【0120】
この場合、機能素子410における光線束Sの分割後に部分光線束Aによって通過される第1結像素子は、図面から分かるように、透明な平板413の上面および下面に配置された第1回折レンズ412.A
L1,第1ミラー412.A
R1、および第2回折レンズ412.A
L2を含む。第3回折レンズ412.A
L3、第2ミラー412.A
R2、および第4回折レンズ412.A
L4は、機能素子410との2回目のおよび3回目の衝突の間に部分光線束Aによって通過される第2結像素子を形成している。これと同様に、部分光線束Bの2つの対応した結像素子は、平板413の上面および下面に配置された第1回折レンズ412.B
L1と第1ミラー412.B
R1と第2回折レンズ412.B
L2とからなっているか、または第3回折レンズ412.B
L3と第2ミラー412.B
R2と第4回折レンズ412.B
L4とからなっている。
【0121】
部分光線束A,Bによってまず通過される第1結像素子の結像倍率は、機能素子410もしくは基準器の目盛方向xにm
1x=−2、測定方向yにm
1y=+1であり;第2結像素子の結像倍率は、目盛方向xにm
2x=−1/2、測定方向yにm
2y=+1である。
【0122】
図示しない光源、例えばレーザによって放出された光線束Sは、機能素子410もしくは基準器において+1次および−1次の回折オーダに分割される。+1次の回折オーダは、次いで部分光線束Aとして第1結像素子を通って伝搬し、2回目に+1次の回折オーダで機能素子410において回折され、さらに第2結像素子を通過する。機能素子410における+1次の回折オーダの3回目の回折は、部分光線束Aを再び光軸zに沿うように屈折させる。
【0123】
xz平面に対して対称的な部分光線束Bの光路が、対応した第1および第2結像素子によって決定され;この場合に、機能素子410における−1次の回折オーダで部分光線束Bの回折が3回生じる。
【0124】
両方の部分光線束AおよびBは、機能素子410における3回目の回折時に光線変位なしに共線的に重ね合わされ、検出装置(図示しない)に入射し、検出装置は、位相変調された適宜な測定信号を供給する。部分光線束AおよびBの光路に配置され、部分光線束AおよびBを互いに直交方向に偏光させるために用いられる偏光器およびλ/4板またはλ/2板などの偏光素子は、見やすくするために同様に図面に示されていない。
【0125】
この干渉式位置測定装置の特別な利点は、z方向の軸線を中心としたモアレ傾斜時に両方の部分光線束A,Bの互いの位置および方向のずれが生じることがなく、したがって、モアレ傾斜許容差が著しく大きいことである。
【実施例5】
【0126】
図15および
図16には、上記実施例の説明と同様に、基準器を備える干渉式位置測定装置として形成された本発明による測定装置の第5実施例が再び示されている。光学機能素子510、すなわち、使用される基準器は、信号生成のために用いられる部分光線束A,Bによって4回衝突もしくは回折される。基準器との衝突の間には、部分光線束A,BによってそれぞれN=3の結像素子が通過される。
【0127】
部分光線束A,Bによって通過される第1および第3結像素子512として、結像倍率m
1=m
3=−1を有するコーナーキューブ・プリズムが設けられている。部分光線束Aが通過する第2結像素子は、透明な平板513の上面および下面に配置された格子512.A
G1、ミラー512.A
R、および格子512.A
G2の組合せからなる。これと同様に、部分光線束Bが通過する第2結像素子は、透明な平板513の上面および下面に配置された格子512.B
G1、ミラー512.B
R、および格子512.B
G2の組合せからなる。これらの第2結像素子の結像倍率は、m
2=+1にしたがって選択されている。
【0128】
xz平面に入射する傾斜した光線束は、分割格子G
1として形成された分割素子500によって格子定数d
1を有する平板513の上面で−1次の回折オーダ(部分光線束A)および+1次の回折オーダ(部分光線束B)に分割される。部分光線束Aは機能素子510、すなわち基準器に伝搬する。基準器は格子定数d
MG=1/2d
1を有し、入射する部分光線束を+1次の回折オーダに1回目に回折する。次いで部分光線束Aは、コーナーキューブ・プリズムの第1結像素子512を通過し、これにより逆反射され、x方向に光線変位される。続いて部分光線束Aは2回目に機能素子510において+1次の回折オーダに屈折させられ、続いて第2結像素子を通過し、これにより結像され、x方向に変位させられる。部分光線束Aは、機能素子510または基準器に再び伝搬され、3回目に+1次の回折オーダに回折される。コーナーキューブ・プリズムの第3結像素子512によりさらに逆反射され、x方向に光線変位され、機能素子において4回目に+1次の回折オーダに回折された後に、部分光線束Aは、平板513の上面に結合格子として形成された結合素子530に最後に到達する。
【0129】
xz平面に対して対称的な部分光線束Bの光路は、対応した3つの結像素子を同様に通過し、機能素子510との4回目の衝突後に結合素子530の同じ位置に入射する。適宜な結合格子は格子定数d
4=d
1を有し、両方の部分光線束A,Bを共線的に重ね、干渉させる。結合素子530の結合格子における位相深さ、およびブリッジ対周期比を適宜に選択することにより、3つの回折オーダが生じ、これらの回折オーダは、後方に配置された検出装置の検出器528.1,528.2,528.3によって検出され、互いに120°だけ位相をずらされた測定信号S
−120,S
0およびS
+120を供給する。
【0130】
他の実施形態
具体的に説明した実施例の他に、本発明の範囲内で当然ながらさらに他の構成可能性が存在する。
【0131】
それぞれ平面鏡干渉計として形成された本発明による測定装置の上述した最初の3つの実施例では、機能素子または平面鏡との3回以上の衝突、および本発明による結像倍率の選択により、出射した測定用光線束の位置および方向が安定的に、すなわち、測定用アームにおいて場合によって生じる平面鏡の傾斜とは無関係に保持される。差動式平面鏡干渉計では、本発明による措置を参照用光線束の光路にも用いることができる。このようにして、参照用アームにおいて機能素子もしくは平面鏡が傾斜した場合にも、参照用光線束の位置および方向を安定的に保持することができる。
【0132】
本発明による測定装置の第2実施例に関して説明したように、光ファイバ、特にシングルモード・ファイバを介して、重ね合わされた部分光線束が別個の検出器へ伝搬され、基準器を備える干渉式位置測定装置として形成された本発明による測定装置においてもこのようなこのような部分光線束の伝搬を行うことができる。すなわち、この場合にも、走査ユニットによって、光ファイバ、特にシングルモード・ファイバを介して、後方に配置された検出装置へ、重ね合わされた部分光線束を適宜に伝搬することができる。この場合、重ね合わされた部分光線束の位置および方向が目盛方向xおよび測定方向yに安定的に保持されることが前提となる。重ね合わされた部分光線束は、伝送‐基準器を備える本発明による位置測定値では線形近似で付与されているが、反射‐基準器を使用した場合には、上記解法にしたがって測定方向の結像倍率も付加的に選択する必要がある。位置および方向のずれが抑制されていることの他に、重ね合わされた部分光線束の位置および方向は場合によって生じる基準器の傾斜とは無関係である。