【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)ICTイノベーション創出型「極低消費電力テラヘルツ波無線通信に向けた集積回路基盤技術の研究開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】方向性結合器は、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、フォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯における光波、テラヘルツ波もしくはミリ波を、2次元フォトニック結晶スラブの面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、格子点の線欠陥により形成された第1の2次元フォトニック結晶導波路14
前記方向性結合部から前記第1ポート側の前記第1の2次元フォトニック結晶導波路と動作帯域を一致させるため、前記方向性結合部の分散曲線全体が高周波側に移動するように、前記第2の2次元フォトニック結晶導波路の幅を、前記格子点の線欠陥により形成される幅に比べて、狭めたことを特徴とする請求項4に記載の方向性結合器。
前記2次元フォトニック結晶スラブ内に前記格子点の線欠陥により形成され、前記第2の2次元フォトニック結晶導波路と交差して配置され、第3ポートを有する第3の2次元フォトニック結晶導波路を備え、
前記第1ポートと前記第2ポート間のバー状態と、前記第1ポートと前記第3ポート間のクロス状態の信号分離度を高くするために、前記方向性結合部から前記第2ポート側の前記第1の2次元フォトニック結晶導波路の幅を、前記格子点の線欠陥により形成される幅に比べて、狭めたことを特徴とする請求項5に記載の方向性結合器。
前記格子点は、正方格子、長方格子、面心長方格子、若しくは三角格子のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方向性結合器。
前記格子点および前記導波路間格子点は三角格子に配置され、かつ円孔で形成され、前記導波路間格子点の半径は、前記格子点の半径よりも小さく、かつ前記格子点の周期の0.23倍に等しいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方向性結合器。
前記格子点および前記導波路間格子点は三角格子に配置され、かつ円孔で形成され、前記第2の2次元フォトニック結晶導波路の幅を、前記格子点の周期の0.15倍狭めたことを特徴とする請求項5に記載の方向性結合器。
前記格子点および前記導波路間格子点は三角格子に配置され、かつ円孔で形成され、前記方向性結合部から前記第2ポート側の前記第1の2次元フォトニック結晶導波路の幅を前記格子点の周期の0.15倍狭めたことを特徴とする請求項6に記載の方向性結合器。
前記半導体材料は、シリコン(Si)、GaAs、InP、GaN、さらに、GaInAsP/InP系、InGaAs/GaAs系、GaAlAs/GaAs系若しくはGaInNAs/GaAs系、GaAlInAs/InP系、AlGaInP/GaAs系、GaInN/GaN系の内、いずれかを適用可能であることを特徴とする請求項15に記載の方向性結合器。
前記第1ポートは、前記第1の2次元フォトニック結晶導波路が延伸した前記フォトニック結晶スラブの端面に配置され、前記第1の2次元フォトニック結晶導波路が延伸した第1断熱的モード変換機構部を備えることを特徴とする請求項4に記載の方向性結合器。
前記第2ポートは、前記第1の2次元フォトニック結晶導波路が延伸した前記フォトニック結晶スラブの端面に配置され、前記第1の2次元フォトニック結晶導波路が延伸した第2断熱的モード変換機構部を備えることを特徴とする請求項4に記載の方向性結合器。
前記第3ポートは、前記第3の2次元フォトニック結晶導波路が延伸した前記フォトニック結晶スラブの端面に配置され、前記第3の2次元フォトニック結晶導波路が延伸した第3断熱的モード変換機構部を備えることを特徴とする請求項6に記載の方向性結合器。
前記断熱的モード変換機構部は、前記2次元フォトニック結晶スラブの平面視において、前記2次元フォトニック結晶スラブの前記端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備えることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の方向性結合器。
前記方向性結合器と前記入出力機構、前記方向性結合器と前記検出器および前記方向性結合器と前記送信器間は、前記2次元フォトニック結晶スラブの前記格子点の線欠陥により形成される導波路を介して結合されることを特徴とする請求項23に記載の合分波器デバイス。
前記検出器は、共鳴トンネルダイオードを搭載したテラヘルツ波受信器、あるいはショットキーバリアダイオードで構成されることを特徴とする請求項24に記載の合分波器デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
[第1の実施の形態]
実施の形態に係る方向性結合器20および合分波器デバイス30の模式的鳥瞰構成は、
図1に示すように表される。
【0018】
実施の形態に係る合分波器デバイス30は、
図1に示すように、方向性結合器20と、方向性結合器20と2次元フォトニック結晶導波路14を介して結合される入出力機構60と、方向性結合器20と2次元フォトニック結晶導波路14Rを介して結合される検出器18Rと、方向性結合器20と2次元フォトニック結晶導波路14Tを介して結合される送信器(光源)18Tとを備える。
【0019】
方向性結合器20は、例えば、格子点の2列間隔分離隔した2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2を備えるが、詳細構成は後述する(
図5)。
【0020】
入出力機構60は、自由空間からのカプラであって、例えば、1次元フォトニック結晶からなるグレーティングカプラで構成される。2次元フォトニック結晶を用いて構成することも可能である。
【0021】
検出器18Rは、例えば、共鳴トンネルダイオード(RTD:Resonant Tunneling Diode)などを搭載したテラヘルツ波受信器、あるいはショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)などで構成可能である。
【0022】
送信器(光源)18Tは、RTDなどを搭載したテラヘルツ波送信器、あるいは半導体レーザなどで構成可能である。ここで、半導体レーザの材料系としては、例えば、以下のものを適用可能である。すなわち、例えば、波長1.3μm〜1.5μmでは、GaInAsP/InP系、波長900nmの赤外光では、InGaAs/GaAs系、波長800nm〜900の赤外光/近赤外光では、GaAlAs/GaAs系若しくはGaInNAs/GaAs系、波長1.3μm〜1.67μmでは、GaAlInAs/InP系、波長0.65μmでは、AlGaInP/GaAs系、青色光では、GaInN/GaN系などを適用可能である。
【0023】
実施の形態に係る合分波器デバイス30は、光波若しくはテラヘルツ波、ミリ波を伝播可能である。
【0024】
実施の形態に係る方向性結合器20および合分波器デバイス30は、
図1に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯における光波、テラヘルツ波もしくはミリ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aとを備える。
【0025】
2次元フォトニック結晶導波路14・14
1・14
2・14R・14Tは、2次元フォトニック結晶スラブ12に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成される。
【0026】
(動作原理)
実施の形態に係る方向性結合器20において適用するフォトニック結晶方向性結合器の動作原理説明は、
図2に示すように表される。
【0027】
方向性結合器は、伝送路中で特定の方向に伝搬する信号を取り出すデバイスであり、共振器よりも緩やかな周波数選択性を有する。
【0028】
実施の形態に係る方向性結合器20の原理的な構成は、
図2に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯における光波、テラヘルツ波もしくはミリ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された第1の2次元フォトニック結晶導波路14
1と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に第1の2次元フォトニック結晶導波路14
1と離隔して平行に配置され、同様に格子点12Aの線欠陥により形成された第2の2次元フォトニック結晶導波路14
2とを備える。
【0029】
方向性結合器20は、原理的には、
図3に示すように、第1の2次元フォトニック結晶導波路14
1と第2の2次元フォトニック結晶導波路14
2からなる導波路を2本、隣接させることで偶モード(EVEN)、奇モード(ODD)を発生させ、偶モードと奇モード間の干渉効果を利用することで結合長L
Cを有する伝搬信号PWを2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2の延伸方向に伝搬可能である。ここで、結合長L
Cは、
図3に示すように、偶モード・奇モード間のモード変換に要する最少信号伝搬距離に相当する。単純設計では、結合長L
Cは、格子点12Aの周期aの100倍〜数100倍、動作波長の数10倍〜100倍程度になる。
【0030】
以上の原理的な構成に対して、以下に詳細に説明するように、実施の形態に係る方向性結合器20は、広い動作帯域を有すると共に、十分な信号分離度を確保可能でかつ小型化可能である。また、光波、テラヘルツ波もしくはミリ波を伝播可能である。
【0031】
(合分波器デバイス)
合分波器デバイスは、周波数(波長)によって光・電磁波の経路を切り替える信号処理機能を有する。実施の形態に係る方向性結合器においては、2次元フォトニック結晶を適用することで、小型化集積化可能である。
【0032】
実施の形態に係る方向性結合器20を適用した合分波器デバイス30であって、入力が1ポート、出力がnポートの構成例は、
図3(a)に示すように表され、入力がnポート、出力がnポートの構成例は、
図3(b)に示すように表される。
【0033】
図3(a)の構成例では、入力側が1ポートの場合が示されているが、
図3(b)に示すように、入力側が複数ポートの場合も構成可能である。また,各ポートの動作周波数がオーバーラップしている場合も構成可能である。
【0034】
以下の説明では、フォトニック結晶スラブの具体的な構造において、簡単のために入力1ポート・出力2ポートの構成例について主として説明するが、入出力ともに複数ポートとなる構成も可能である。
【0035】
(合分波器デバイスの設計手順)
実施の形態に係る方向性結合器20を適用した合分波器デバイス30の設計手順について、
図4(a)〜
図4(c)を用いて説明する。以下では簡単のため、入力1ポート、出力2ポートの例を表示するが 、多数ポートでも同様の設計が可能である。
【0036】
方向性結合器20に接続された入力1ポート(IP1)、出力2ポート(OP1・OP2)を有する構成例は、
図4(a)に示すように表される。方向性結合器20と入力ポートIP1間に入力用導波路14(I)を備え、方向性結合器20と出力ポートOP2間に出力用導波路14(02)を備える構成例は、
図4(b)に示すように表される。また、方向性結合器20と出力ポートOP1間に出力用導波路14(01)を備える構成例は、
図4(c)に示すように表される。
【0037】
手順(a):まず、
図4(a)に示すように、方向性結合器20に関して、きるだけ広帯域かつ小型動作が可能になるようにフォトニックバンド図を用いて設計する。これにより、方向性結合器20として、動作可能となる。
【0038】
手順(b):次に、入力用導波路14(I)・出力用導波路14(02)の帯域を方向性結合器20と一致させるように、方向性結合器20若しくは入力用導波路14(I)・出力用導波路14(02)を設計変更する。
【0039】
以上の手順(a)および手順(b)は、合分波器デバイス30として基本的には必要となる。
【0040】
手順(c):理想的にはある周波数において、片方のポートOP2のみへ出力される動作になるが、現実的には、別のポートOP1への出力成分も存在してしまう。別のポートOP1への余計な出力を抑え、分離度(主たるポートOP2への出力と別のポートOP1への出力の比)を向上させるために、主たるポートOP2以外の出力用導波路14(01)への信号伝播を遮断可能となるように、設計変更する。これにより、合分波器デバイス30の信号分離性能を一層向上させることができる。
【0041】
(方向性結合器の構成例)
実施の形態に係る方向性結合器20の模式的平面構成は、
図5に示すように表わされる。
【0042】
図5に示すように、円孔三角格子12Aを配置した2次元フォトニック結晶スラブ12のΓ−J方向に形成された1列線欠陥からなる2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2を、結合長L
C=4a(aは格子点12Aの周期:格子定数)で隣接させ、方向性結合器20を形成した。ただし,aは三角格子の格子定数であり、空気孔の半径rは0.30a、2次元フォトニック結晶スラブ12の厚さと屈折率はそれぞれ0.83aと3.4とした。
【0043】
実施の形態に係る方向性結合器20は、以下の構成を採用している。
(a)2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2部分で生じる偶モード・奇モードが結合しつつ、そのモード間隔が可能な限り広くなるように、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の離隔距離を2列間隔とする。ここで、2列に配置される導波路間孔(格子点)は、12Sで表される。
(b)偶モード・奇モードの伝搬定数ができるだけ広い周波数範囲にわたって一定となるように、導波路間孔の円孔の半径r’を、周期aの0.23倍とする。
(c)入力ポート(ポートP1)の2次元フォトニック結晶導波路14と動作帯域を一致させるため、方向性結合部50の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
2の導波路幅を0.15a狭める。ここで、2次元フォトニック結晶導波路14
2の導波路幅は、はじめ0.3a狭めると共に、下記の2次元フォトニック結晶導波路14
1の幅を0.15a狭める結果として、0.3a−0.15aとなり、0.15a狭められている。
(d)バー状態(ポートP1−P2)とクロス状態(ポートP1−P3)の分離度を向上させるため、方向性結合部50からポートP2に繋がる2次元フォトニック結晶導波路14
1の幅を0.15a狭め、クロス動作の周波数帯域において、ポートP2へのモードギャップを形成する。
【0044】
(方向性結合器の小型化および広帯域化)
波数方向の説明図は
図6(a)に示すように表わされ、規格化周波数と規格化波数との関係を表すフォトニックバンド図の計算例は
図6(b)に示すように表わされ、理想的なフォトニックバンド図は
図6(c)に示すように模式的に表わされる。また、
図6(c)において、曲線Aは偶モード、曲線Bは奇モードに対応している。
【0045】
図6(a)に示す矢印の波数方向における伝搬モードを計算すると、
図6(b)に示すように、偶モードと奇モードが生じる。この2つのモードの波数差Δkが結合長L
Cを決定している。広い周波数帯域で同じ値の波数差Δkを保持可能であれば広帯域化可能である。また、結合長L
Cは、波数差Δkの逆数で決まるため波数差Δkが大きいほど小型化できる。つまり、
図6(c)に示すように、理想的な形のバンド図を実現できれば、広帯域かつ結合長L
Cの短い小型な結合構造を実現可能である。
【0046】
実施の形態に係る方向性結合器20においては、波数差Δkを小さくして、周波数差Δfの広帯域にわたって一定に保持可能であるため、広帯域かつ小型化可能な光波、テラヘルツ波もしくはミリ波用の方向性結合器を実現可能である。
【0047】
実施の形態に係る方向性結合器のフォトニックバンド図において、偶モードと奇モードの2つの状態を形成する例は
図7(a)に示すように表わされ、一定の波数差を有する例は
図7(b)に示すように表わされ、結合が強すぎる例は
図7(c)に示すように表わされる。また、
図7(a)〜
図7(c)において、曲線Aは偶モード、曲線Bは奇モードに対応している。
【0048】
実施の形態に係る方向性結合器においては、導波路を2本、隣接させることで偶モード・奇モードを発生させ、偶モードと奇モード間の干渉効果を利用する。
【0049】
方向性結合には、
図7(a)に示すように、周波数fが同じで、波数kが異なる2つの状態(偶モード・奇モード)をつくる必要がある。
図7(a)に示すように、2つの動作点P
1・P
2は、同じ周波数f
pに対して、異なる規格化波数k1・k2を有している。
【0050】
2本の導波路モードの結合により、偶モードと奇モードが発生するが、モードの状態(周波数および波数)の分裂度は、2つの導波路の結合の強さに比例する。すなわち、分裂度は、
図6(b)に示すように、偶モード・奇モード間の波数差Δkおよび周波数差Δfに等しい。
【0051】
実施の形態に係る方向性結合器においては、2つの2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2の結合の強さが強いほど、分裂度は増加し、小型化および広帯域化可能である。これは、結合長L
Cが、波数差Δkの逆数(1/Δk)に比例するためである。
【0052】
また、
図7(b)に示すように、物理的な結合長L
Cは一定であり、結合長L
Cに対応する一定値の波数差Δkを周波数差Δfの広帯域で得ることができる。すなわち、フォトニックバンド図の分散曲線の傾きの逆数に比例する伝搬定数が偶モード・奇モードで一定であることが、広帯域化には必要である。
【0053】
ただし、結合が強すぎると、
図7(c)に示すように、周波数差ΔFが大きくなり、2つの状態の分裂が大きくなりすぎて単一周波数で2つの波数状態を取れなり、周波数f
pが同じで、波数kが異なる2つの状態(偶モード・奇モード)をつくる条件を満たせなくなる。すなわち、適度な結合の強さにする必要がある。
【0054】
これら周波数fと波数kの関係である分散関係はフォトニックバンド図で得られる。フォトニック結晶では,構造パラメータによって、分散関係を柔軟に調整でき、また、導波路への光閉じこめが強いため、導波モード間の結合を強くすることができる。
【0055】
(フォトニック結晶スラブの具体例)
2次元フォトニック結晶スラブ12は、2次元周期構造を有する誘電体板構造を備える。2次元フォトニック結晶スラブ12には、その設計により、電磁モードが存在できないフォトニックバンドギャップ(PBG:Photonic Band Gap)が現れる。さらに周期構造を乱すことで、PBG内に導波モードを導入し、波長サイズ以下の微小領域での低損失な導波路を実現することができる。
【0056】
ここで、PBGの帯域幅は、誘電体の屈折率に依存し、高屈折率材料が望ましい。
【0057】
実施の形態に係る方向性結合器20に適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12の材料は、半導体材料で形成されていても良い。
【0058】
実施の形態に係る方向性結合器は、光波、テラヘルツ波若しくはミリ波を伝播可能であることから、半導体材料としては、以下のものを適用可能である。すなわち、例えば、シリコン(Si)、GaAs、InP、GaN、さらに、GaInAsP/InP系、InGaAs/GaAs系、GaAlAs/GaAs系若しくはGaInNAs/GaAs系、GaAlInAs/InP系、AlGaInP/GaAs系、GaInN/GaN系などを適用可能である。特に、高抵抗Siは、テラヘルツ波帯で高い屈折率を有し、材料吸収が少ない。
【0059】
また、格子点12Aは、例えば、空気孔として形成しても良く、或いは屈折率の異なる半導体層で充填しても良い。例えば、GaAs層に対してAlGaAs層を充填して形成しても良い。
【0060】
また,格子点12A(孔)に関しては、空気の孔を空けるだけでなく、孔(の一部)を低屈折率(誘電率)の媒質で埋める構造も可能である。低屈折率(誘電率)の媒質としては、例えば、テフロン、フッ素樹脂、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、エポキシ樹脂、液晶、ポリウレタンなどのポリマー材料を適用可能である。さらに、低屈折率(誘電率)の媒質としては、例えば、SiO
2、SiN、SiON、アルミナ、サファイアなどの誘電体も適用可能である。さらに、低屈折率(誘電率)の媒質としては、エアロゲルなどの多孔質体も適用可能である。
【0061】
また、2次元フォトニック結晶スラブ12の材料としては、半導体に限らず、高屈折率の媒質ならば適用可能である。例えば、MgO(酸化マグネシウム)はテラヘルツ波帯での屈折率が約3.1と高い誘電体(絶縁体)になるため、2次元フォトニック結晶スラブ12に適用可能である。
【0062】
実施の形態に係る方向性結合器に適用可能なフォトニック結晶スラブの具体例の平面パターン構成は、
図8に示すように表わされる。
【0063】
実施の形態に係る方向性結合器に適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12は、例えば、シリコンで形成可能である。さらに、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯における光波、テラヘルツ波もしくはミリ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aは、例えば、
図8に示すように、円孔を備え、2次元三角格子に配置されている。格子点12Aの格子定数(周期)aに対して、格子点12Aの直径2rは、例えば、0.6aに等しい。すなわち、シリコンに,半径rが周期aの0.30倍の円孔2次元三角格子が周期的に形成されたフォトニック結晶スラブが基本構造である。基本の2次元フォトニック結晶導波路14は、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成される。例えば、周期構造の孔を一列分埋めることで形成可能である。また、例えば、0.3THz帯を想定すると、周期a=240μmである。
【0064】
また、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置される格子点12Aの格子定数aとPGB周波数との関係の電磁界シミュレーション結果によれば、格子定数aを小さくすることでPGB周波数帯を高周波に変化させることができる。例えば、格子定数a=80μmでは約0.9THzから約1.1THz、格子定数a=240μmでは約0.30THzから約0.38THz、格子定数a=720μmでは約0.10THzから約0.13THzにおいて、PGB周波数帯域が発現する。
【0065】
また、取り扱う周波数帯域もテラヘルツ波帯に限定されず、一般的な光波も含まれる。この場合、2次元フォトニック結晶スラブ12は、格子点12Aの格子定数aを微細化し、動作波長が、例えば、約1μm〜2μm帯で、格子定数aは、例えば、約250nm〜約500nmなどとすれば良い。また、格子点12Aの直径・深さは、例えば、約200nm・300nm程度である。これらの数値例は、2次元フォトニック結晶スラブ12を構成する材料系および波長などによって適宜変更可能である。例えば、GaAs/AlGaAs系材料を適用した2次元フォトニック結晶スラブ12においては、波長としては、約200nm〜約400nm程度である。
【0066】
(導波路間列数が異なる時の分散関係の変化)
次にモード間隔を縦に狭める方法を説明する。2本の2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の結合の強さを調整するために、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の孔の列数を変化させる。
【0067】
実施の形態に係る方向性結合器において、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間に1列の格子点12A(1)を有する1列間隔の例は、
図9(a)に示すように表わされ、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間に2列の格子点12A(2)を有する2列間隔の例は、
図9(b)に示すように表わされ、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間に3列の格子点12A(3)を有する3列間隔の例は、
図9(c)に示すように表わされる。また、
図9(a)・
図9(b)・
図9(c)に対応するフォトニックバンド図は、
図10(a)・
図10(b)・
図10(c)に示すように表わされる。曲線Aは偶モード、曲線Bは奇モードに対応する。
【0068】
図10(a)・
図10(b)・
図10(c)に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の間隔が狭いほど、導波路モードの結合が強くなる。その結果、モード間の分裂度が大きくなる。特に、2列間隔の方が3列間隔よりも広帯域化・小型化に適している。一方、1列間隔では結合が強すぎるため、単一周波数で2つの状態を取ることができず、方向性結合器として使用することが難しい。
【0069】
2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間に1列の格子点12A(1)を有する例においては、
図10(a)に示すように、モード結合を得ることができない。一方、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間に3列の格子点12A(3)を有する例においては、十分な帯域が取ることが難しい。2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間に2列の格子点12A(2)を有する例においては、モードの結合を実現できてかつ帯域が確保できる最適構造を得ることができる。
【0070】
2つの導波路を分離する孔の列数を変えた時の分散特性の変化は、線欠陥間の列数を増やすほど、モード間隔が縦に狭まることがわかる。このとき列数が1列の時は、モード間隔の開きが大きく結合しない。また3列にするとモード間隔は狭まるが、帯域が十分に確保できない。つまり列数は、モードの結合を実現できてかつ帯域が確保できる2列が最適である。
【0071】
(分散関係の導波路間孔の半径依存性:半径の調整)
実施の形態に係る方向性結合器20において、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間が2列間隔の場合の導波路間孔の半径r
’の説明図は、
図11(a)に示すように表わされ、導波路間孔の半径r
’をパラメータとするフォトニックバンド図は、
図11(b)に示すように表わされる。
【0072】
図11(a)および
図11(b)においては、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の間隔を2列の間隔とし、導波路間孔12Sの半径r
’が0.4a、0.3a、0,2aと変化させた例が示されている。曲線Aは偶モード、曲線Bは奇モードに対応する。
【0073】
実施の形態に係る方向性結合器20においては、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の導波路間孔の半径r
’を変化させることでも、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の結合の強さを変化させることができる。
【0074】
図11(b)内の矢印Rで示すように、空気孔(ホール)の半径r
’を大きくするほど、偶モードおよび奇モードの右端が上昇する。一方、
図11(b)に示すように、孔の半径r
’が小さくなるほど、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の屈折率差が小さくなるため、結合が強くなる。例えば、孔の半径r
’=0.2aの場合の方が0.3aの場合よりも結合が強い。ただし、この場合にも結合が強すぎると分散曲線が平行な周波数帯が減少するため、適度な大きさが存在する。ここで,孔の半径r
’を小さくする結果、周波数帯が全体的に低周波側へ移動する。
【0075】
(分散関係の導波路間孔の位置異存性:導波帯域の調整)
実施の形態に係る方向性結合器において、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間が2列間隔の場合の導波路幅シフト量sの説明図は、
図12(a)に示すように表わされ、導波路幅シフト量sをパラメータとするフォトニックバンド図は、
図12(b)に示すように表わされる。
【0076】
図12(a)および
図12(b)においては、フォトニック結晶スラブの格子点12Aの孔を、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の2列間隔の孔12S側に導波路幅シフト量sだけシフトさせることで、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の幅を狭めることができる。
【0077】
図12(a)および
図12(b)においては、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の間隔を2列の間隔とし、導波路幅シフト量sを0.00a、0.10a、0.15a、0.20aと変化させた例が示されている。曲線Aは偶モード、曲線Bは奇モードに対応する。
【0078】
図12(a)および
図12(b)に示す例では、方向性結合部50の導波路幅を調整する例が示されている。ここで、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の間隔が2列で、孔の半径r
’は調整していない。
【0079】
図12(b)内の矢印Sで示すように、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2の幅が狭くなる(導波路幅シフト量sが大きい)ほど、導波帯域が高周波に移動している様子がわかる。すなわち、
図12(b)内の矢印Sで示すように、導波路幅を変化させ、導波路幅を狭めるとモード全体が上昇する。2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aの孔全体を内側に狭めて、線欠陥の幅を狭くするほどモード全体が上昇する。
【0080】
実施の形態に係る方向性結合器20においては、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間の導波帯域は、導波路幅、フォトニック結晶スラブの孔径、周期、屈折率などを調整することによって、調整可能である。例えば、フォトニック結晶スラブ12を構成する半導体材料が、Ga
xIn
1-xAs
yP
1-yの場合には、その組成比x、yを変えることで屈折率を変えることができる。
【0081】
図11(b)および
図12(b)に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2の幅を狭くし、導波路間孔12Sの半径r
’を大きくし、周期aを小さくし、2次元フォトニック結晶スラブ12の材料の屈折率を小さくすることで、フォトニックバンド図の偶モードおよび奇モードは、高周波側へ移動する。
【0082】
逆に、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2の幅を広くし、導波路間孔12Sの半径r
’を小さくし、周期aを大きくし、2次元フォトニック結晶スラブ12の材料の屈折率を大きくすることで、フォトニックバンド図の偶モードおよび奇モードは、低周波側へ移動する。このため、方向性結合器20の動作帯域が元々の入力導波路の動作帯域と一致しないようになることがあるが、実施の形態に係る方向性結合器20においては、方向性結合部50もしくは方向性結合器20の入出力導波路の動作帯域を調整可能である。
【0083】
(得られたフォトニックバンド図の例)
実施の形態に係る方向性結合器20において、
図6・
図7・
図9・
図10・
図11・
図12において説明した結果にも基づいて得られたフォトニックバンド図の例は、
図13に示すように表される。
図13の結果は、
図5に示された構造の方向性結合部50におけるバンド計算結果である。すなわち、導波路間孔12Sは2列に配置されており、導波路間孔12Sの半径r
’は0.23aに等しく、導波路幅シフト量sは0.15aに等しい。
【0084】
図13に示すように、理論上の周波数差Δfの動作帯域は約12GHzであり、動作周波数fの約4%である。理論上の結合長L
Cの値は約4.2aであり、ほぼ動作波長に等しい。したがって、理想的なバンド構造に近いものが得られている。
【0085】
実施の形態に係る方向性結合器20において、結合長L
Cを確認したシミュレーション結果は、
図14に示すように表される。ここで、導波路間孔12Sは2列に配置されており、導波路間孔12Sの半径r
’は0.23aに等しく、導波路幅シフト量sは0.15aに等しい。
【0086】
図14に示すように、テラヘルツ波は、連続波光源から2次元フォトニック結晶導波路14に入射され、方向性結合器20の結合構造20Cにおいて、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間を偶モードおよび奇モードでモード変換しつつ伝播する。
【0087】
図14に示すように、周波数f=0.309THzにおけるシミュレーション結果より、2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2間を偶モードおよび奇モードでモード変換する周期(結合長L
C)は、周期aの4周期分に等しい。
【0088】
すなわち、4周期、8周期、12周期、16周期…毎に偶モード・奇モードが変換されており、約10GHzの帯域で結合長L
Cが4aと一定になることが確認され、
図13に示されたバンド計算結果と同様の結果が得られた。
【0089】
また、
図14に示すように、周波数fが0.309THzから0.313THz、0.316THzと増加するにつれて、結合長L
Cは、4aよりも大きくなる傾向がある。フォトニックバンド図の偶モードおよび奇モードが、高周波側へ移動するためである。
【0090】
(透過特性:シミュレーション結果)
実施の形態に係る方向性結合器において、透過特性のシミュレーション結果は、
図15に示すように表される。
図15において、1−2(bar)で示される曲線は、ポートP1・P2間を伝播するテラヘルツ波、1−3(cross)で示される曲線は、ポートP1・P3間を伝播するテラヘルツ波、2−3で示される曲線は、ポートP2・P3間を伝播するテヘルツ波の透過特性を示す。また、BBは、ポートP1・P2間を伝播するテラヘルツ波が良好な伝播特性を示す周波数範囲(bar band)を表す。CBは、ポートP1・P3間を伝播するテラヘルツ波が良好な伝播特性を示す周波数範囲(cross band)を表す。
【0091】
図15に示すように、透過特性のシミュレーション結果より、動作波長程度の結合長L
Cにおいて、従来よりも10倍以上高い2.3%の動作帯域と、30dB以上の信号分離比が実現可能であることがわかる。
【0092】
比較例に係る方向性結合器の構造例は、
図16(a)に示すように表され、実施の形態に係る方向性結合器の構造例は、
図16(b)に示すように表される。
図16(b)の拡大構成は、
図5と同一構成を有する。
【0093】
比較例に係る方向性結合器では、
図16(a)に示すように、単純設計により、導波路間孔は3列に配置されており、長さ170aのサイズが必要となる。これに対して、実施の形態に係る方向性結合器によれば、上述の設計指針を採用したことによって、長さ4aのサイズで動作可能となり、約1/40以下の微細化を実現可能である。さらに、実施の形態に係る方向性結合器によれば、広帯域動作および信号分離度の向上が可能である。
【0094】
(実験評価系)
実施の形態に係る方向性結合器の動作確認のための実験評価系の写真は、
図17(a)に示すように表され、実験に適用した方向性結合器20のサンプルの写真は、
図17(b)に示すように表され、
図17(a)に対応する実験評価系の模式的ブロック構成は、
図17(c)に示すように表される。
【0095】
方向性結合器20のサンプルの2次元フォトニック結晶スラブ12は厚さ約200μmのシリコン基板からなり、格子点12Aの周期aは、約240μmである。
【0096】
ポートP1・P2・P3には、
図17(b)に示すように、WR−3導波管などとの結合性を向上させるために、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置され、2次元フォトニック結晶導波路が延伸した構造からなる断熱的モード変換機構部を備える。断熱的モード変換機構部については、
図25の説明において詳述する。
【0097】
図17(b)および
図17(c)に示すように、マイクロ波発振器34および9逓倍器24を用いて0.28−0.38THzの連続波テラヘルツ波を発生させ、WR−3導波管28および断熱的モード変換機構部10
3を介して、ポートP3から方向性結合器20のフォトニック結晶導波路へ入射させる。
【0098】
さらに、
図17(b)および
図17(c)に示すように、方向性結合器20の別のポートP1からの出力をWR−3導波管26および断熱的モード変換機構部10
1を介してテラヘルツ波ミキサ22へ入力し、スペクトラムアナライザ32で解析する。
【0099】
導波管と断熱的モード変換機構部の接続を変えることで、ポートP1−ポートP2(バー状態)、ポートP1−ポートP3(クロス状態)、ポートP2−ポートP3に関しての透過率をそれぞれ測定する。
図17(a)〜
図17(c)には、ポートP1−ポートP3(クロス状態)の測定系の例が示されている。
【0100】
実施の形態に係る方向性結合器において、透過特性の実験結果は、
図18に示すように表される。
図18において、1−2(bar)で示される曲線は、ポートP1−ポートP2(バー状態)を伝播するテラヘルツ波、1−3(cross)で示される曲線は、ポートP1−ポートP3(クロス状態)を伝播するテラヘルツ波、2−3で示される曲線は、ポートP2−ポートP3を伝播するテヘルツ波の透過特性を示す。また、BBは、ポートP1−ポートP2(バー状態)を伝播するテラヘルツ波が良好な伝播特性を示す周波数帯域を表し、CBは、ポートP1−ポートP3(クロス状態)を伝播するテラヘルツ波が良好な伝播特性を示す周波数帯域を表す。
【0101】
図18に示す実験結果では、
図15に示す透過特性のシミュレーション結果と良好な一致が得られている。
【0102】
実験結果より、
図18に示すように、波長程度の結合長L
Cにおいて、ピーク透過率を基準にした−3dB帯域が、従来よりも10倍以上の動作周波数の約2.3%というクロス状態の動作帯域CBが得られた。また、クロス状態とバー状態との間で、30dB以上の信号分離比が可能であることがテラヘルツ波帯にて実証された。
【0103】
(並列接続構成)
さらなる広帯域化への方法として、方向性結合器の並列接続構成を採用しても良い。
【0104】
実施の形態に係る方向性結合器において、広帯域化のために並列接続する構成は、模式的に
図19に示すように表される。
図19においては、バー状態の2次元フォトニック結晶導波路14Aから分岐されたクロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14B1・14B2・14B3・…を備え、これらを統合化する2次元フォトニック結晶導波路14T上において、動作帯域の拡大された信号を伝播可能である。すなわち、クロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14B1・14B2・14B3・…には、それぞれ動作帯域B1・B2・B3・…を有する信号が伝播されており、2次元フォトニック結晶導波路14T上においては拡大された動作帯域B1∩B2∩B3∩…を有する信号が伝播される。
【0105】
また、実施の形態に係る方向性結合器において、並列接続による動作帯域の広帯域化の模式的説明図であって、互いに重複する動作帯域B3・B2・B1の模式図は、
図20(a)に示すように表され、広帯域化された動作帯域B3∩B2∩B1の模式図は、
図20(b)に示すように表される。
【0106】
図20(a)に示すように、動作帯域B3は、周波数f
b31・f
b32間の帯域を有し、動作帯域B2は、周波数f
b21・f
b22間の帯域を有し、動作帯域B1は、周波数f
b11・f
b12間の帯域を有する。したがって、拡大された動作帯域B1∩B2∩B3は、周波数f
b31・f
b12間の帯域を有する。
【0107】
動作周波数fはフォトニック結晶の周期a及び導波路幅で決定されるため、周期aもしくは導波路幅を変えた構造を並列接続することによって、さらなる広帯域化を図ることができる。
【0108】
実施の形態に係る方向性結合器において、広帯域化のために3段並列接続した構造の平面パターン構成は、
図21に示すように表される。
図21においては、方向性結合器20
1・20
2・20
3が並列接続されている。方向性結合器20
1・20
2・20
3を構成する2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aの周期はそれぞれa
1・a
2・a
3である。
【0109】
方向性結合器20
1・20
2・20
3においては、バー状態の2次元フォトニック結晶導波路14
11・14
12・14
13から分岐されたクロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14
31・14
32・14
33を介して、ポートP3
1・P3
2・P3
3より、それぞれ動作周波数f
1・動作帯域B
1、動作周波数f
2・動作帯域B
2、動作周波数f
3・動作帯域B
3を有する信号が得られる。方向性結合器20
1・20
2・20
3は、上記の実施の形態に係る方向性結合器20と同様に構成される。
【0110】
ここで、2次元フォトニック結晶導波路14
11・14
21はモード結合可能であり、2次元フォトニック結晶導波路14
11・14
21間には2列に配置された導波路間格子点が配置されている。偶モードと奇モードの伝播定数が広い周波数範囲にわたり一定となるように、導波路間格子点の孔の半径r
’は、例えば、0.23a
1に設定される。
【0111】
方向性結合部からポートP1側の2次元フォトニック結晶導波路14と動作帯域を一致させるため、方向性結合部の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
21の幅を格子点の線欠陥により形成される幅に比べて狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
21の幅を、周期a
1の0.15倍狭めている。
【0112】
また、ポートP1とポートP2間のバー状態と、ポートP1とポートP3
1間のクロス状態の信号分離度を高くするために、方向性結合部からポートP2側の2次元フォトニック結晶導波路14
11の幅を狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
11の幅を、周期a
1の0.15倍狭めている。
【0113】
同様に、2次元フォトニック結晶導波路14
12・14
22はモード結合可能であり、2次元フォトニック結晶導波路14
12・14
22間には2列に配置された導波路間格子点が配置されている。偶モードと奇モードの伝播定数が広い周波数範囲にわたり一定となるように、導波路間格子点の孔の半径r
’は、例えば、0.23a
2に設定される。
【0114】
方向性結合部からポートP1側の2次元フォトニック結晶導波路14
12と動作帯域を一致させるため、方向性結合部の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
22の幅を格子点の線欠陥により形成される幅に比べて狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
22の幅を、周期a
2の0.15倍狭めている。
【0115】
また、ポートP1とポートP2間のバー状態と、ポートP1とポートP3
2間のクロス状態の信号分離度を高くするために、方向性結合部からポートP2側の2次元フォトニック結晶導波路14
12の幅を狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
12の幅を、周期a
2の0.15倍狭めている。
【0116】
同様に、2次元フォトニック結晶導波路14
13・14
23はモード結合可能であり、2次元フォトニック結晶導波路14
13・14
23間には2列に配置された導波路間格子点が配置されている。偶モードと奇モードの伝播定数が広い周波数範囲にわたり一定となるように、導波路間格子点の孔の半径r
’は、例えば、0.23a
3に設定される。
【0117】
方向性結合部からポートP1側の2次元フォトニック結晶導波路14
13と動作帯域を一致させるため、方向性結合部の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
23の幅を格子点の線欠陥により形成される幅に比べて狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
23の幅を、周期a
3の0.3倍狭めている。
【0118】
また、ポートP1とポートP2間のバー状態と、ポートP1とポートP3
3間のクロス状態の信号分離度を高くするために、方向性結合部からポートP2側の2次元フォトニック結晶導波路14
13の幅を狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
13の幅を、格子点の周期a
3の0.15倍狭めている。
【0119】
並列接続された20
1・20
2・20
3において、動作周波数f
1、f
2、f
3と格子点の周期a
1、a
2、a
3との間には、以下の関係が成立する。すなわち、
f
2=(a
1/a
2)f
1、f
3=(a
2/a
3)f
2 (1)
B
2=(f
2/f
1)B
1、B
3=(f
3/f
2)B
2 (2)
さらに、多段に並列接続された方向性結合器においても、隣接する方向性結合器間において、(1)、(2)式と同様の関係が成立する。
【0120】
実施の形態に係る方向性結合器においては、上記のように、3段並列接続した方向性結合器20
1・20
2・20
3の構成によって、動作帯域Bと動作周波数fとの関係上動作帯域B
1・B
2・B
3がちょうど周波数特性上接続可能なように設定するか、それぞれ0%よりも大きく、100%よりも小さく重なるように設定することによって、並列化により動作帯域の拡大化可能である。
【0121】
(並列化構造の具体例)
実施の形態に係る方向性結合器において、方向性結合器20
1・20
2を2段並列化した構造の具体例の平面パターン構成は、
図22に示すように表される。
図22の構成においては、ポートP1・P2間のバー状態の2次元フォトニック結晶導波路14
11・14
12に対して、分岐されたクロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14
31・14
32を備える点は、上記の実施の形態と同様である。さらに、
図22の構成においては、ポートP3・P4間のバー構造の2次元フォトニック結晶導波路14
11(R)・14
12(R)に対して、分岐されたクロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14
31(R)・14
32(R)を備える。
【0122】
方向性結合器20
1・20
2を構成する2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aの周期はそれぞれa
1・a
2である。ここで、具体的な数値例として、a
1・a
2は、例えば、約240μm・約235μmである。また、方向性結合器20
1・20
2間の接合界面での反射の影響を低減化するため、例えば、
図22に示すように、境界線A
1・A
2で挟まれる遷移領域ΔAにおいて、周期を0.5μmずつ、段階的に変化させている。このような遷移領域ΔAを設けることによって、方向性結合器20
1・20
2の格子点の周期a
1と周期a
2界面での反射の影響を低減化可能である。
【0123】
方向性結合器20
1・20
2において、ポートP1・P2間のバー状態の2次元フォトニック結晶導波路14
11・14
12からクロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14
31・14
32が分岐され、ポートP3・P4間のバー状態の2次元フォトニック結晶導波路14
11(R)・14
12(R)からクロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14
31(R)・14
32(R)が分岐されている。クロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14
31・14
32は、中央部において、クロス状態の2次元フォトニック結晶導波路14
31(R)・14
32(R)に結合されており、
図22に示す構造は、上下折り返した構成を備える。
【0124】
ここで、2次元フォトニック結晶導波路14
11・14
21はモード結合可能であり、2次元フォトニック結晶導波路14
11・14
21間には2列に配置された導波路間格子点が配置されている。偶モードと奇モードの伝播定数が広い周波数範囲にわたり一定となるように、導波路間格子点の孔の半径r
’は、例えば、0.23a
1に設定されている。
【0125】
方向性結合部からポートP1側の2次元フォトニック結晶導波路14
11と動作帯域を一致させるため、方向性結合部の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
21の幅を格子点の線欠陥により形成される幅に比べて狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
21の幅を、周期a
1の0.15倍狭めている。
【0126】
また、バー状態とクロス状態の信号分離度を高くするために、方向性結合部から第2ポートP2側の2次元フォトニック結晶導波路14
11の幅を狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
11の幅を、周期a
1の0.15倍狭めている。
【0127】
同様に、2次元フォトニック結晶導波路14
12・14
22はモード結合可能であり、2次元フォトニック結晶導波路14
12・14
22間には2列に配置された導波路間格子点が配置されている。偶モードと奇モードの伝播定数が広い周波数範囲にわたり一定となるように、導波路間格子点の孔の半径r
’は、例えば、0.23a
2に設定されている。
【0128】
方向性結合部から第1ポートP1側の2次元フォトニック結晶導波路14
12と動作帯域を一致させるため、方向性結合部の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
22の幅を格子点の線欠陥により形成される幅に比べて狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
22の幅を、周期a
2の0.15倍狭めている。
【0129】
また、バー状態とクロス状態の信号分離度を高くするために、方向性結合部から第2ポートP2側の2次元フォトニック結晶導波路14
12の幅を狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
12の幅を、周期a
2の0.15倍狭めている。
【0130】
同様に、2次元フォトニック結晶導波路14
11(R)・14
21(R)はモード結合可能であり、2次元フォトニック結晶導波路14
11(R)・14
21(R)間には2列に配置された導波路間格子点が配置されている。偶モードと奇モードの伝播定数が広い周波数範囲にわたり一定となるように、導波路間格子点の孔の半径r
’は、例えば、0.23a
1に設定されている。
【0131】
方向性結合部からポートP3側の2次元フォトニック結晶導波路と動作帯域を一致させるため、方向性結合器部分の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
21(R)の幅を格子点の線欠陥により形成される幅に比べて狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
21(R)の幅を、周期a
1の0.15倍狭めている。
【0132】
また、バー状態とクロス状態の信号分離度を高くするために、方向性結合部からポートP4側の2次元フォトニック結晶導波路14
11(R)の幅を狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
11(R)の幅を、周期a
1の0.15倍狭めている。
【0133】
同様に、2次元フォトニック結晶導波路14
12(R)・14
22(R)はモード結合可能であり、2次元フォトニック結晶導波路14
12(R)・14
22(R)間には2列に配置された導波路間格子点が配置されている。偶モードと奇モードの伝播定数が広い周波数範囲にわたり一定となるように、導波路間格子点の孔の半径r
’は、例えば、0.23a
2に設定されている。
【0134】
方向性結合部からポートP3側の2次元フォトニック結晶導波路14
11(R)と動作帯域を一致させるため、方向性結合部の分散曲線全体が高周波側に移動するように、2次元フォトニック結晶導波路14
22(R)の幅を格子点の線欠陥により形成される幅に比べて狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
22(R)の幅を、周期a
2の0.15倍狭めている。
【0135】
また、バー状態とクロス状態の信号分離度を高くするために、方向性結合部からポートP4側の2次元フォトニック結晶導波路14
12(R)の幅を狭めている。例えば、2次元フォトニック結晶導波路14
12(R)の幅を、周期a
2の0.15倍狭めている。
【0136】
図22に対応した2段並列化構造を有する実施の形態に係る方向性結合器において、透過率T(dB)の周波数特性(透過スペクトル)のシミュレーション結果は、
図23に示すように表される。
【0137】
透過スペクトルのシミュレーション結果より、並列化により、−10dB帯域が約12GHzへ拡大されていることがわかる。
【0138】
また、周波数f=0.32THzの場合のポートP1→ポートP3(クロス)状態の電磁界分布のシミュレーション結果は、
図24(a)に示すように表され、周波数f=0.33THzの場合のポートP1→ポートP3(クロス)状態の電磁界分布のシミュレーション結果は、
図24(b)に示すように表され、周波数f=0.34THzの場合のポートP1→ポートP2(バー)状態の電磁界分布のシミュレーション結果は、
図24(c)に示すように表される。以上の電磁界分布から各周波数でのクロス状態・バー状態のとしての動作を確認した。
【0139】
周波数f=0.32THzの場合、
図24(a)に示すように、ポートP1→ポートP2(バー)状態の伝播モードに比較して、ポートP1→ポートP3(クロス)状態の伝播モードが顕著であることがわかる。
【0140】
周波数f=0.33THzの場合、
図24(b)に示すように表され、ポートP1→ポートP2(バー)状態の伝播モードに比較して、ポートP1→ポートP3(クロス)状態の伝播モードが顕著であることがわかる。とくに、周波数f=0.33THzの場合、方向性結合器20
2を介したポートP1→ポートP3(クロス)状態の伝播モードが顕著である。
【0141】
周波数f=0.34THzの場合、
図24(c)に示すように、ポートP1→ポートP3(クロス)状態の伝播モードに比較して、ポートP1→ポートp2(バー)状態の伝播モードが顕著であることがわかる。
【0142】
(他の構成例)
(変形例1)
実施の形態に係る方向性結合器の他の構成例であって、変形例1に係る方向性結合器20の構成例は、
図25(a)に示すように表される。ここで、右下の□はサンプル識別のためのマークであり、デバイスの構成要件とは無関係である。以下同様である。
【0143】
実施の形態の変形例1に係る方向性結合器20は、
図25(a)に示すように、ポートP1・ポートP2・ポートP3において、WR−3導波管などとの結合性を向上させるために、2次元フォトニック結晶スラブの端面に配置され、2次元フォトニック結晶導波路が延伸した断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3を備える。その他の構造は、実施の形態に係る方向性結合器と同様である。
【0144】
断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備えている。ここで、テーパー形状の側面は、傾斜面を有していても良い。また、テーパー形状の側面は、曲面を有していても良い。また、テーパー形状の側面は、段差面を有していても良い。
【0145】
また、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる円錐型形状を備えていても良い。
【0146】
また、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる四角錘形状を備えていても良い。
【0147】
また、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる楔型形状を備えていても良い。
【0148】
また、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる撥型形状を備えていても良い。
【0149】
また、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる階段型形状を備えていても良い。
【0150】
また、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、樹脂層により保護されていても良い。
【0151】
断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3は、導波管導波路内に挿入可能である。ここで、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジは、端面に接していても良い。また、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジは、端面から離隔していても良い。
【0152】
さらに、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3が配置される2次元フォトニック結晶スラブ12の端面は、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3の周辺部において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジとの間にギャップを備え、導波管フランジから離隔していても良い。ギャップが有る場合は、導波管フランジは、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔して配置されているため、テラヘルツ入力波の表面モードを抑制することができる。特に、表面モードを抑制するためには、ギャップ距離をW
Gとすると、ギャップ距離W
G>波長/3とすることが望ましい。
【0153】
詳細構造は省略されているが、
図25(a)に示す例では、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3が配置される2次元フォトニック結晶スラブ12の端面は、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3の周辺部において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジとの間にギャップを備えている。
【0154】
(変形例2)
実施の形態に係る方向性結合器の他の構成例であって、変形例2に係る方向性結合器20の構成例は、
図25(b)に示すように表される。
【0155】
変形例1に係る方向性結合器20では、
図25(a)に示すように、ポートP3へ直接出力させる構成例が示されている。一方、変形例2に係る方向性結合器20は、
図25(b)に示すように、曲げ導波路14(R)を備え、この曲げ導波路14(R)を介してポートP3へ出力可能である。その他の構造は、実施の形態に係る方向性結合器と同様である。
【0156】
(変形例3)
実施の形態に係る方向性結合器の他の構成例であって、変形例3に係る方向性結合器20の構成例は、
図25(c)に示すように表される。
【0157】
変形例1に係る方向性結合器20は、
図25(a)に示すように、ポートP1・P2・P3において、2次元フォトニック結晶導波路が延伸したテーパー構造からなる断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3を備えている。一方、変形例3に係る方向性結合器20は、
図25(c)に示すように、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3を備えていない。このように、ポートP1・P2・P3において、断熱的モード変換機構部10
1・10
2・10
3を特に備えていない構造も可能である。その他の構造は、実施の形態に係る方向性結合器と同様である。
【0158】
(変形例4)
実施の形態に係る方向性結合器の他の構成例であって、変形例4に係る方向性結合器20の構成例は、
図25(d)に示すように表される。
【0159】
変形例4に係る方向性結合器20は、
図25(d)に示すように、2つの方向性結合器20A・20Bと、4つのポートP1・P2・P3・P4を備えている。変形例4に係る方向性結合器20の構成例は、
図22に示す2段並列化構造を有する実施の形態に係る方向性結合器において、初段部分の方向性結合器20
1の構成と同様である。その他の構造は、実施の形態に係る方向性結合器と同様である。
【0160】
実施の形態の変形例1〜4に係る方向性結合器を適用した合分波器デバイス30においては、入出力として、端面へレンズで集光した光を入力する方式が可能である。或いは、
図1と同様に、フォトニック結晶で構成される入出力機構60を介して、自由空間から入出力する方式も可能である。ここで、入出力機構60をフォトニック結晶で構成する場合には、1次元の場合にはグレーティングカプラで構成可能である。また、2次元構造も可能である。さらに、
図1と同様に、入出力としては、光源や検出器を集積化する方式も構成可能である。
【0161】
(格子点の周期構造とバンド構造)
実施の形態に係る方向性結合器20および合分波器デバイス30に適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12において、格子点12Aの周期構造であって、正方格子・三角格子・長方格子・菱型格子(面心長方格子)の配置例は、
図26(a)・
図27(a)・
図28(a)・
図29(a)に示すように模式的に表され、対応する2次元フォトニック結晶スラブ12のバンド構造は、
図26(b)・
図27(b)・
図28(b)・
図29(b)に示すように表される。
【0162】
格子点12Aは、正方格子、長方格子、面心長方格子、若しくは三角格子のいずれかに配置されていても良い。
【0163】
また、格子点12Aは、正方格子若しくは長方格子に配置され、かつ2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造におけるΓ点、X点、若しくはM点における電磁波を2次元フォトニック結晶スラブ面内で共振可能である。
【0164】
また、格子点12Aは、面心長方格子若しくは三角格子に配置され、かつ2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造におけるΓ点、X点、若しくはJ点における電磁波を2次元フォトニック結晶スラブ面内で共振可能である。
【0165】
また、格子点12Aは、多角形、円形、楕円形若しくは長円形のいずれかの孔形状を備えていても良い。
【0166】
以上説明したように、本発明によれば、広帯域かつ高信号分離度を有し、小型化可能な光波もしくはテラヘルツ波、ミリ波用の方向性結合器、およびその方向性結合器を適用した合分波器デバイスを提供することができる。
【0167】
特に、本発明の方向性結合器は、小型化可能であることから、合分波以外にもフィルタ、スイッチ、パワーモニタ、パワーの分配など幅広い応用分野に適用可能である。
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0168】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。