特開2015-162904(P2015-162904A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-162904モジュール式信号調整装置システム並びに静電気放電保護回路及びその形成方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-162904(P2015-162904A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】モジュール式信号調整装置システム並びに静電気放電保護回路及びその形成方法。
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/04 20060101AFI20150811BHJP
   H01P 1/00 20060101ALI20150811BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   H01P5/04 605B
   H01P1/00 Z
   H01Q1/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-35215(P2015-35215)
(22)【出願日】2015年2月25日
(31)【優先権主張番号】61/945644
(32)【優先日】2014年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/317248
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケイウィーン・シー・ヤング
【テーマコード(参考)】
5J011
5J046
【Fターム(参考)】
5J011BA01
5J046AA14
5J046TA05
5J046TA10
(57)【要約】
【課題】周波数特性を維持しながら、ESD保護能力を向上させる。
【解決手段】同軸ケーブル110上に、同軸ケーブルの周波数特性を悪化させないように充分な距離(少なくとも約1ミリメータ)を空けて、少なくとも2つのスロット150及び160を形成する。グラウンド・シェル130と中心導体120の間に結合されたショットキー・ダイオードのようなESD保護デバイスを、各スロット内に設ける。ダイオードの容量で、スロットが原因のケーブル110のインダクタンスのピークを正確に相殺すると共に、スロットの空洞共振周波数が最高測定周波数よりも高くなるようにスロットの大きさを形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の中心導体と、該中心導体を覆う絶縁材と、該絶縁材を覆う導電性のグラウンド・シェルとを有する同軸ケーブルと、
回路コンポーネントを有し、上記同軸ケーブルを通して伝送される1つ以上の信号に所定信号調整効果を与えるよう最適化された大きさ及び電気特性を有する第1スロットと、
第1スロットから少なくとも40ミル離れて上記同軸ケーブルに形成される第2スロットと
を具えるモジュール式信号調整装置システム。
【請求項2】
導電性の中心導体と、該中心導体を覆う絶縁材と、該絶縁材を覆う導電性のグラウンド・シェルとを有する同軸ケーブルと、
互いに少なくとも40ミル離して上記同軸ケーブルに形成され、上記グラウンド・シェルの第1及び第2部分が露出し、上記中心導体の一部が露出する第1スロット及び第2スロットと、
上記第1スロットに形成される第1静電気放電保護回路コンポーネントと、
上記第2スロットに形成される第2静電気放電保護回路コンポーネントと
を具える静電気放電保護回路。
【請求項3】
同軸ケーブル内に、該同軸ケーブル内の導電性コアの一部に達して露出させるように第1スロットを形成する処理と、
上記同軸ケーブル内に、上記第1スロットから少なくとも40ミル離し、上記同軸ケーブル内の上記導電性コアの一部に達して露出させるように第2スロットを形成する処理と、
上記第1スロット内に第1静電気放電構造を形成する処理と、
上記第2スロット内に第2静電気放電構造を形成する処理と
を具える静電気放電保護回路形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気放電(ESD)保護に関し、特に周波数特性を維持しつつ、ESD保護デバイスを高周波数伝送ケーブル・システムに組み入れるためのESD保護回路、関連するシステム及びESD保護回路の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電気放電(ESD)の発生によって損傷しやすい回路やシステムには、ESD保護機能を設けることが重要である。例えば、試験装置と相対的に異なる電圧を有する被測定デバイス(DUT)にプローブを接触させると、試験装置が損傷することがある。この損傷は、電流の急激な流れ、即ち、高い電圧差による放電が原因である。ESDによる損傷を防止するため、多くの試験システムでは、何らかの形態のESD保護機能を有している。
【0003】
ESD保護形態の1つが、1対のショットキー・ダイオードを有するスロット付同軸ケーブル構造に見られる。図1は、そうしたデバイスの内部構造の概略を示している。半剛性同軸ケーブル110には、中心導体120と、絶縁材140で中心導体120から分離された電気導電性のグラウンド・シェル(外部導体)130とがある。一般に、絶縁材140は、テフロン(登録商標)から固形又は巻きテープのどちらかの形態で形成される。スロット(溝)150は、中心導体120の一部を露出するのに充分な深さで、ケーブル110中に形成される。そして、図2に示すように、1対のショットキー・ダイオード62及び64が、中心導体120及びグラウンド・シェル130の間に結合される。ショットキー・ダイオード62及び64は、ESD発生時に、どちらの極性であっても電流を分流し、これによって、システムのコンポーネント間の電圧不均衡を防止し、もって、これらコンポーネントを保護する。
【0004】
システムによっては、ESD発生時に、図2のショットキー・ダイオードで可能な分流よりも、もっと多くの電流を分流する必要がある。この問題を解決するために、スロット150の幅を広げてもっと多数のダイオードを収納し、これらダイオードの全てが、それらの安全レンジ内で動作するようにしたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−232896号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「コネクタ」の記事、特に「2.92mm/Kコネクタ」について、Wikipedia、[オンライン]、[2015年2月20日検索]、インターネット<http://ja.wikipedia.org/wiki/コネクタ>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、スロット(溝)150を広げると、試験システムの性能が低下、特に、試験帯域内での周波数に関する測定性能が低下する。即ち、試験システムは、ESDの保護が不十分になるか、又は、正確に測定できる最高周波数が制限されるか、どちらかの問題で苦しむことになる。
【0008】
本発明は、従来技術のこうした問題やその他の制約を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、大まかに言えば、ESD保護デバイスのような保護デバイスを半剛性高周波数伝送ケーブル・システムに組み入れる種々の技術に関する。具体的な実施形態には、中心導体、絶縁材及びグラウンド・シェルを有する同軸ケーブルに形成された少なくとも2つのスロットがある。第1スロット及び第2スロットは、互いに少なくとも40ミル(約1ミリメータ)離れて、同軸ケーブルに形成される。第1スロットは、第1ESD保護サブ回路を収容する一方で、第2スロットは、第2ESD保護サブ回路を収容する。もっと多数のスロットを設けて、より多数の保護サブ回路を収容することで、同軸ケーブルに結合されたシステムを充分に保護するようにしても良い。
【0010】
本願では、このデバイスを形成するための方法についても開示する。
【0011】
本発明をいくつかの観点から述べれば、本発明の概念1は、モジュール式信号調整装置システムであって、
導電性の中心導体と、該中心導体を覆う絶縁材と、該絶縁材を覆う導電性のグラウンド・シェルとを有する同軸ケーブルと、
回路コンポーネントを有し、上記同軸ケーブルを通して伝送される1つ以上の信号に所定信号調整効果を与えるよう最適化された大きさ及び電気特性を有する第1スロットと、
第1スロットから少なくとも40ミル(約1ミリメータ)離れて上記同軸ケーブルに形成される第2スロットと
を具えている。
【0012】
本発明の概念2は、上記概念1のモジュール式信号調整装置システムであって、上記第2スロットが、上記同軸ケーブルを通して伝送される1つ以上の上記信号に第2所定信号調整効果を与えるよう最適化されている。
【0013】
本発明の概念3は、上記概念2のモジュール式信号調整装置システムであって、上記第1スロットが第1タイプのコンポーネントを有し、上記第2スロットが第2タイプのコンポーネントを有している。
【0014】
本発明の概念4は、上記概念2のモジュール式信号調整装置システムであって、上記第1スロットが上記第2スロットから電気的に独立している。
【0015】
本発明の概念5は、上記概念2のモジュール式信号調整装置システムであって、このとき、上記第2スロットは、上記第1スロットを複製したものである。
【0016】
本発明の概念6は、上記概念5のモジュール式信号調整装置システムであって、上記第1及び第2スロットが同じコンポーネントを有している。
【0017】
本発明の概念7は、静電気放電(ESD)保護回路であって、
導電性の中心導体と、該中心導体を覆う絶縁材と、該絶縁材を覆う導電性のグラウンド・シェルとを有する同軸ケーブルと、
互いに少なくとも40ミル(約1ミリメータ)離して上記同軸ケーブルに形成され、上記グラウンド・シェルの第1及び第2部分が露出し、上記中心導体の一部が露出する第1スロット及び第2スロットと、
上記第1スロットに形成される第1ESD保護回路コンポーネントと、
上記第2スロットに形成される第2ESD保護回路コンポーネントと
を具えている。
【0018】
本発明の概念8は、上記概念7の静電気放電(ESD)保護回路であって、デバイス実装面を形成するために上記第1及び第2スロット内に付着(apply)させる材料を更に具えている。
【0019】
本発明の概念9は、上記概念8の静電気放電(ESD)保護回路であって、上記材料がニッケル金から構成される。
【0020】
本発明の概念10は、上記概念8の静電気放電(ESD)保護回路であって、上記材料は、めっき処理によって付着される。
【0021】
本発明の概念11は、上記概念7の静電気放電(ESD)保護回路であって、上記第1スロット及び上記第2スロットの周りに配置された導電性フィルムを更に有している。
【0022】
本発明の概念12は、上記概念7の静電気放電(ESD)保護回路であって、
上記第1ESD保護回路が
上記グラウンド・シェルに結合されたアノードと、上記中心導体に結合されたカソードを有する第1ショットキー・ダイオードと、
上記グラウンド・シェルに結合されたカソードと、上記中心導体に結合されたアノードを有する第2ショットキー・ダイオードと
を有している。
【0023】
本発明の概念13は、上記概念7の静電気放電(ESD)保護回路であって、
上記第1ESD保護回路が、
上記グラウンド・シェル及び上記中心導体間に結合された並列な複数ショットキー・ダイオードからなる第1セットと、
上記グラウンド・シェル及び上記中心導体間に結合された並列な複数ショットキー・ダイオードからなる第2セットと
を有している。
【0024】
本発明の概念14は、上記概念13の静電気放電(ESD)保護回路であって、このとき、上記ダイオードの第1セットが複数ダイオードの逆並列対であり、上記ダイオードの第2セットが複数ダイオードの逆並列対であることを特徴としている。
【0025】
本発明の概念15は、上記概念7の静電気放電(ESD)保護回路であって、このとき、上記同軸ケーブルが少なくとも半剛性である。
【0026】
本発明の概念16は、静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
同軸ケーブル内に、該同軸ケーブル内の導電性コア(中心導体)の一部に達して露出させるように第1スロットを形成する処理と、
上記同軸ケーブル内に、上記第1スロットから少なくとも40ミル(約1ミリメータ)離し、上記同軸ケーブル内の上記導電性コアの一部に達して露出させるように第2スロットを形成する処理と、
上記第1スロット内に第1ESD構造を形成する処理と、
上記第2スロット内に第2ESD構造を形成する処理と
を具えている。
【0027】
本発明の概念17は、上記概念16の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
少なくとも上記第1スロットを実質的に覆うように、上記同軸ケーブルの周りに導電性フィルムを付着させる処理を更に具えている。
【0028】
本発明の概念18は、上記概念17の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
上記第1スロットを形成する処理が、高速カッターで上記同軸ケーブルを切り出す処理を有している。
【0029】
本発明の概念19は、上記概念16の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
上記同軸ケーブル内に上記第1スロットを形成する処理が、約40〜60ミル(約1〜1.5ミリメータ)の幅のスロットを形成する処理を有している。
【0030】
本発明の概念20は、上記概念16の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
上記同軸ケーブル内に、上記第1スロットから少なくとも40ミル(約1ミリメータ)離して上記第2スロットを形成する処理が、上記第1スロットから少なくとも100ミル(約2.5ミリメータ)離して上記同軸ケーブル内に上記第2スロットを形成する処理を含んでいる。
【0031】
本発明の概念21は、上記概念16の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
上記導電性フィルムを付着させる処理が、ニッケル、金又は銅製の導電性フィルムを付着させる処理を含んでいる。
【0032】
本発明の概念22は、上記概念16の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、上記第1スロット内に上記第1ESD構造を形成する処理が、
上記同軸ケーブルの上記導電性コアと上記グラウンド・シェル間に第1ダイオードを挿入する処理と、
上記同軸ケーブルの上記導電性コアと上記グラウンド・シェル間に第2ダイオードを挿入する処理と
を有するサブ回路の形成処理を含んでいる。
【0033】
本発明の概念23は、上記概念16の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
上記第1スロットの形成が原因で生じる上記同軸ケーブルのインダクタンスのピークを、上記第1ESD構造が有する容量でキャンセルするように、上記第1スロットの大きさを選択し、
上記第2スロットの形成が原因で生じる上記同軸ケーブルのインダクタンスのピークを、上記第2ESD構造が有する容量でキャンセルするように、上記第2スロットの大きさを選択することを特徴としている。
【0034】
本発明の概念24は、上記概念16の静電気放電(ESD)保護回路を形成する方法であって、
上記第1スロット及び上記第2スロットの空洞共振周波数が、所望周波数よりも高くなるように上記第1スロット及び上記第2スロットの大きさが選択されることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ESD保護回路を含む従来のスロット付同軸ケーブルの例の斜視図である。
図2図2は、図1に示したケーブルにおける保護回路のブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態の例によるモジュール式ESD保護システムを含む同軸ケーブルの斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態の例によるESD保護システムのコンポーネントのブロック図である。
図5図5は、本発明の実施形態の例によるESD保護システムを含むスロット付同軸ケーブルを組み立てる方法の例のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態は、大まかに言えば、信号を調整するために、半剛性高周波数伝送ケーブル・システムに複数のデバイス又はコンポーネントを組み入れる技術に関する。以下の例の多くは、電流を分流するショットキー・ダイオードをスロット内に実装してESD保護機能を提供するESD実施形態を参照して説明されるが、ショットキー・ダイオードの代わりに別のコンポーネントをスロット内に実装して、異なる作用を提供するようにしても良い。例えば、ショットキー・ダイオードではなくて、抵抗器、バリスタ、可変容量ダイオード(varactor:バラクタ)、ダイオードのようなコンポーネントをスロット内に実装して、本発明の実施形態が接続される測定回路への作用を変化させるようにしても良い。この意味で、本発明の実施形態は、信号調整装置システムを対象にしており、このとき、1つ以上のスロットは、結合される測定システムに対して所定の作用を与えるように最適化される。最適化したスロットは、モジュール方式の構造(必要な個別のモジュールを組み合わせる方式)として、互いに電気的に独立するように充分な間隔を空けて、同じ構造のものを複数設ける(重複させる)ようにしても良い。
【0037】
図3に示すようなスロット付ケーブル構造は、大きなインピーダンスの乱れを生じさせることなく、ケーブルの中心導体(導電性コア)と直接接触する高容量性ESD電流分流ショットキー・ダイオードを導入するのに、インダクタンスと容量をキャンセルする処理を利用する。図3に示すように、半剛性ケーブル110には、中心導体120に達するケーブルの少なくとも半分程度に及ぶスロット150がある。他の実施形態では、スロット150が、中心導体120に達するがケーブルの半分よりは短い(例えば、3分の1など)か、又は、半分よりも長いとしても良い。これによって、例えば、ニッケル(Ni)バリアと厚い金(Au)めっきに続いて、ショットキー・ダイオードを、半剛性同軸ケーブル110の周囲に対してあまり障害となることなく、この「コプレーナ導波路(Coplanar Waveguide)」である実装面に直接接合できる。別の実施形態では、スロット内に、ニッケル金を付着させる、例えば、めっきすることで、ダイオード用の電気的実装面を設けるようにしても良い。他の接合方法としては、ESDデバイスを実装するのに導電性エポキシを用いても良い。
【0038】
スロット150が形成されると、このスロットの領域において、ケーブル110に非常に局所的なインダクタンスのピークが生じる。そこで、より良いESDのために、スロット内の擬似的なコプレーナ導波路(実装面)にショットキー・ダイオードを実装するときに、そのダイオードの容量で、スロットが原因のケーブル110のインダクタンスのピークを正確に相殺するように、スロット150の大きさを形成する。これによって、スロット150の形成が原因のケーブル110のインダクタンスのピークを補償し、ケーブルの信号伝達特性をなめらかに維持する。スロット150については、例えば、特許文献1に詳しい。
【0039】
図3に示すように、本発明の実施形態には、ケーブル110に形成された第2スロット160がある。第2スロット160は、図2の第1スロット150に示したのと同様なやり方で、もう1組のショットキー・ダイオードのような、追加のコンポーネントを収容できる。第2スロット160は、第1スロット150から40〜300ミル(約1〜7.6ミリメータ)離れており、好ましくは、少なくとも約60ミル(約1.5ミリメータ)離れているのが良い。このように間隔170を設けることで、これらスロットが測定回路において互いに干渉しないようにできる。スロットにショットキー・ダイオードを設ける実施形態では、これらスロット間の間隔として、少なくとも200ミル(約5ミリメータ)空けるのが好ましいこともあろう。逆に、もし第2スロット160が第1スロット150の直ぐ近くにあると、言い換えると、実際的には、第1スロット150を広げて、スロット160用の追加のコンポーネントまで収容してしまうと、ケーブル110の性能は低下する。この性能低下は、ケーブル110の広いスロットの共振(resonance)と電力損失(power dissipation:ワット損)が原因であることが調査によりわかった。このとき、空洞共振の基本振動モードは、スロット空洞の物理的な最大寸法に逆比例するので、スロットのサイズが大きいほど、ケーブルの性能には悪い方向に作用する。即ち、スロットが広いほどスロット共振周波数は低くなり、このために、試験システム中の測定帯域内に入るまで下がってきて、干渉する可能性がある。
【0040】
そこで、本発明の実施形態としては、モジュール式ケーブル・スロット構造がある。本発明の実施形態では、2つ以上のスロット150及び160が、ケーブル110に形成される。最初に、1つのスロットの大きさと特性が、そのスロット内に実装されるコンポーネントを収容するために最適化される。例えば、ESD保護ダイオードを有する第1スロットが最適化されるが、このとき、スロット空洞の空洞共振周波数は、ユーザが同軸ケーブル110で測定のために伝送したい信号の所望周波数、例えば、26〜50GHzを超えるものである。即ち、ユーザが同軸ケーブル110で伝送させたい被測定信号の周波数特性には影響を与えないように、それを超える高い空洞共振周波数となるようにスロットの大きさが選択される。ある実施形態では、最適化したスロットは、10〜60ミル(約0.25〜1.5ミリメータ)の幅があり、好ましくは、40〜60ミル(約1〜1.5ミリメータ)の幅がある。ある実施形態では、スロットは、直径約86ミル(約2.18ミリメータ)のケーブル110を、約43ミル(約1.09ミリメータ)の深さで切り出したものでも良い。他の大きさのケーブルでは、スロットの大きさと、スロット間の間隔は、それに応じて、適宜拡大又は縮小する。
【0041】
次に、第1スロットの大きさを最適化した後、1つのスロット内に収まる以上か、又は、1つのスロット内に収納して最適化できる以上の、もっと多数のコンポーネントをケーブル110に取り付けることが望ましい場合には、追加のスロットを形成しても良く、これらスロットは、互いにある間隔を空けて設けられる。例えば、もしショットキー・ダイオードのESD分流能力が低すぎて、充分なESD保護にはもっと多数のダイオードが必要な場合には、追加のショットキー・ダイオードを収容するために、第2スロットを形成しても良い。これによって、1つのスロットには、所望のESD保護における種々のレベルのものを収容することが可能になる。実施形態のなかには、3個、4個又はもっと多数のスロットを追加コンポーネントを収容するために用いても良く、このとき、各スロットは、互いに間隔を空けて設けられる。複数のスロットによって複数のショットキー・ダイオードを設けることで、ESD発生時の保護機能は強化される。これは、異なるスロット中のダイオードのそれぞれが互いに並列に機能し、これによって、EDS発生によって生じる全分流電流を分担できるからである。
【0042】
最適化した各スロットを、隣接する最も近いスロットから少なくとも40ミル(約1ミリメータ)以上離すことによって、複数のスロットを形成することで生じる悪影響が最小限になる。更に、複数のスロットを互いに干渉しない距離まで充分に離すことで、設計者は、異なるスロットそれぞれを個別に再度最適化することなく、追加のコンポーネントを追加できるモジュール式のコンポーネント実装システムを実現できる。
【0043】
図4は、試験装置210に結合された本発明の実施形態によるESDデバイス200のブロック図を示し、これは、試験装置210にESD保護機能を提供する。ESDデバイス200には、ハウジング220があり、これは、任意の適切な材料から形成できる。ある実施形態では、ハウジング220は、2つで1組(それぞれが半分を構成する)の空洞のあるアルミニウム製構造体(シェル)から形成される。ESDデバイスのコネクタ230は、ESDデバイスを試験装置210に結合する。より具体的には、コネクタ230は、2.92mmRFコネクタ(タイプKコネクタ:非特許文献1参照)のような高周波コネクタであり、これは、試験装置210のサンプリング・ヘッド212の嵌合コネクタ(mating connector)216に結合される。ESDデバイスの反対端側のコネクタ232は、ケーブルに結合され、これは、更に、例えば、プローブやDUT(被測定デバイス)などに接続される。
【0044】
ESDデバイス200内にはケーブル部240があって、これは、例えば、1〜2インチ(約2.54〜5センチメータ)の長さとしても良い。ケーブル部240にスロット250及び260が上述の如く形成され、ESD保護のためのショットキー・ダイオードが、これも上述の如く設けられる。スロットの数は、ESDデバイス200で必要とされるESD保護の量に基づいて選択できる。スロット250及び260は、ケーブル部240のスロットのないサブ区間242によって互いに離されている。スロット250及び260間の距離246は、上述のように、少なくとも40ミル(約1ミリメータ)としても良い。互いに間隔を設けた複数の追加スロットをケーブル部240に更に形成し、もっと多数のダイオードを収容するようにしても良い。
【0045】
図5は、本発明の実施形態の例によるESDデバイスを製造する方法の例500のフローチャートである。ステップ502では、2つ以上のスロットが離間した関係で半剛性同軸ケーブル内に形成される。スロットは、例えば、高速カッター又は極小径ダイヤモンド・ブレードを用いた標準的なフライス加工によって形成しても良い。いくつかの実施形態では、これらスロットは、少なくとも40ミル(約1ミリメータ)互いに離間させる。
【0046】
ステップ504では、オプションで、デバイス実装面を形成するための材料をスロット内に付着又は塗布等(apply)させる。上記材料は、例えば、金であり、デバイスを実装する方法は、ビーム・リード素子をサーマルソニック・ボンディングで行うか、又は、エポキシを利用して行っても良い。ステップ506では、保護デバイス(例えば、ESDダイオード)を、デバイス実装面に取り付ける。ステップ508では、金、銅又はニッケルのような導電性フィルムで、ケーブルの外面の周りを包み、導電性フィルムがスロット自身又はステップ504で付着させた材料の外向きの面をほぼ又は完全に覆うようにようにする。
【0047】
ステップ510では、スロットと導電性フィルムを覆うように、ハウジングをケーブルに取り付けるか、又は、ケーブルと結合させる。このハウジングは、単体であるか、又は、互いにかみ合うように形成された複数の部分から構成されるとしても良い。
【0048】
上述のように、本発明の実施形態としては、モジュール式信号調整装置システムがある。この信号調整システムには、同軸ケーブルがあり、これは、中心導体と、中心導体を覆う絶縁材と、絶縁材を覆うグラウンド・シェルとを有する。中心導体とグラウンド・シェルは、導電性である。同軸ケーブル内には、回路コンポーネントを有する第1スロットが形成される。第1スロットは、同軸ケーブルを通して伝わる1つ以上の信号に対して、所定の信号調整効果を与えるように、適切な大きさで形成され、最適化した電気特性を有する。この電気特性の最適化は、どのコンポーネントをスロット内に配置するかの選択する処理も含む。実施形態の中には、第1スロットから少なくとも40ミル(約1ミリメータ)離して同軸ケーブルに形成される第2スロットのあるものもある。
【0049】
第2スロットも、同軸ケーブルを通して伝わる1つ以上の信号に対して、所定の信号調整効果を与えるよう最適化される。例えば、第1所定信号調整効果を生成するように、1つ以上の第1コンポーネントが選択された第1スロットに配置され、第2所定信号調整効果を生成するように、1つ以上の第2コンポーネントが選択された第2スロットに配置される。こうしたコンポーネントとしては、例えば、抵抗器、バリスタ、可変容量ダイオード(varactor:バラクタ)、ダイオードなどがある。
【0050】
別の実施形態では、第1所定信号調整効果を生成するように、第1タイプのコンポーネントの1つ以上が選択された第1スロットに配置され、第2スロットは、第1スロットを複製しても良い。
【0051】
これら実施形態において、第1スロットは、第2スロットから電気的に独立なものにしても良い。
【0052】
図示した実施形態を参照しながら本発明の原理を説明してきたが、こうした原理から離れることなく、図示した実施形態の構成や詳細を変更したり、望ましい形態に組み合わせても良いことが理解できよう。先の説明では、特定の実施形態に絞って説明しているが、別の構成も考えられる。特に、「本発明の実施形態によると」といった表現を本願では用いているが、こうした言い回しは、大まかに言って実施形態として可能であることを述べているに過ぎず、特定の実施形態の構成に限定することを意味するものではない。本願で用いているように、こうした用語は、別の実施形態に組み合わせ可能な同じ又は異なる実施形態を言及していると考えても良い。
【0053】
従って、本願で説明した実施形態は、幅広く種々に組み合え可能であるとの観点から、詳細な説明や図面等は、単に説明の都合によるものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【符号の説明】
【0054】
110 半剛性ケーブル
120 中心導体
130 電気導電性グラウンド・シェル
140 絶縁材
150 第1スロット
160 第2スロット
170 スロット間の距離
200 ESDデバイス
210 試験装置
212 サンプリング・ヘッド
216 嵌合コネクタ
220 ハウジング
230 第1コネクタ
232 第2コネクタ
240 ケーブル部
242 スロット間の距離
250 第1スロット
260 第2スロット
図1
図2
図3
図4
図5