【実施例】
【0033】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0034】
実施例1.ウルトラファインバブル溶液の閉経後骨粗鬆症に対する治療効果の解析
卵巣を摘出して強制的に骨粗鬆症にしたマウスにウルトラファインバブル溶液を投与し、骨量を計測した。具体的には次のように行った。
【0035】
<1-1.被検マウスの作成>
8週齢雌性C57Bl/6マウス(オリエンタル酵母工業株式会社)を麻酔下で腹臥位にした。最終肋骨部から2cm程度尾側の部位(手術部位)を、バリカンを用いて皮膚を傷つけないように悌毛した。剃毛部分をガーゼでふき取り、70%アルコールで消毒した。手術部位を、正中から5mm程度外側より横方向に皮膚を1cm程度切開して、皮下組織を剥離した。さらに、腹腔内臓器を損傷しないように腹膜を1cm程度切開して、卵巣を確認した。卵巣摘出群(OVX群)は、卵巣を外部に引き出して卵管と血管を縫合糸にて結紮し、卵巣をメスで切除した。卵巣の取り残しがないことを確認して切除端を70%アルコールで消毒し、腹腔内に完納した。対側の卵巣も同様に摘出した。卵巣摘出擬似手術群(Sham群)は卵巣を外部に引き出し確認した後、再度腹腔内に完納した。腹膜、皮膚を1-2針縫合した。縫合部を70%アルコールで消毒した。
【0036】
<1-2.ウルトラファインバブル溶液の調製>
ナノバブル生成装置((株)Ligaric製、商標名:BUVITAS)を用いて、気液混合せん断方式により、バブル中の気体が酸素であるウルトラファインバブル含有生理食塩水を製造した(酸素ウルトラファインバブル含有生理食塩水)。同様に、窒素ウルトラファインバブル含有生理食塩水も製造した。これらのウルトラファインバブル含有生理食塩水は、ウルトラファインバブルの最頻粒子径が105 nmであり、ウルトラファインバブル濃度が3.43×10
8/mLであった。
【0037】
<1-3.ウルトラファインバブル溶液の投与>
卵巣摘出群(OVX群)及び卵巣摘出擬似手術群(Sham群)に対して、生理食塩水、酸素ウルトラファインバブル含有生理食塩水、又は窒素ウルトラファインバブル含有生理食塩水を、術後2日から週3回(2日間隔で)腹腔内投与(200μl/mouse/回)した。この間、マウス用通常餌(オリエンタル酵母工業(株)製)と水は自由摂取させ、恒温恒湿に保たれた飼育室にて飼育した。術後42日目に各群のマウスを麻酔下で屠殺した。
【0038】
<1-4.骨量の計測>
各群のマウスの両脚の大腿骨を摘出し、10%ホルマリンを用いて固定した。固定された大腿骨を、X線マイクロCT装置 (R_mCT, Rigaku, Tokyo,Japan)を用いて撮影した。撮影条件は、画素数:512pixel×512pixel×512slice、画素サイズ:10μm、管電圧:90kV, 管電流:200μAとした。大腿骨計測部位は、成長軟骨部位を除した、大腿骨遠位骨端部の成長板軟骨から近位方向へ0.5mmから1.2mmの第二次海綿骨領域とした。この計測部位について、骨量解析ソフト (TRI/3D-BON, Ratoc System Engineering CO., LTD, Tokyo, Japan)を用いて海綿骨量体積率 (BV/TV)を計測した。
【0039】
<1-5.結果>
各マウスの計測結果を下記表1に示す。表1中、「OVX」は卵巣摘出群を示し、「sham」は卵巣摘出擬似手術群を示し、「生食」は生理食塩水投与群を示し、「酸素UFB」は酸素ウルトラファインバブル含有生理食塩水投与群を示し、「窒素UFB」は窒素ウルトラファインバブル含有生理食塩水投与群を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1の結果を箱髭図に表したものを
図1に示す。各群の表記は表1と対応する。
図1中、カラムから上方に伸びた髭の先端は90パーセンタイル値を示し、カラムの上端は75パーセンタイル値を示し、カラム中の横線は50パーセンタイル値(中央値)を示し、カラムの下端は25パーセンタイル値を示し、カラムから下方に伸びた髭の先端は10パーセンタイル値を示す。
【0042】
sham生食とOVX生食との比較より、卵巣摘出により骨量が大幅に減少していることが確認できた(Mann-Whitney U-test/P<0.01)。そして、OVX生食と、OVX酸素UFB又はOVX窒素UFBとの比較より、ウルトラファインバブル溶液の投与により、卵巣摘出により減少していた骨量が増加することが示された(Mann-Whitney U-test/P<0.05)。この増加現象は、酸素UFB群及び窒素UFB群のいずれにおいても起こっていたことから、バブル中の気体の種類に関係なく起こることが示唆された。以上より、ウルトラファインバブル溶液が閉経後骨粗鬆症に対して治療効果を有することが示された。
【0043】
一方、sham生食と、sham酸素UFB又はsham窒素UFBとを比較しても、これらの間に有意な骨量の違いは認められなかった。このことから、ウルトラファインバブル溶液は、骨粗鬆症の発症前に投与しても、骨量に対して影響を与えないことが示唆された。
【0044】
実施例2.ウルトラファインバブル溶液のステロイド性骨粗鬆症に対する治療効果の解析
ステロイドを投与して強制的に骨粗鬆症にしたマウスにウルトラファインバブル溶液を投与し、骨量及び破骨細胞数を計測した。具体的には次のように行った。
【0045】
<2-1.被検マウスの作成>
6ヶ月齢雌性C57Bl/6マウスの項部皮下に、定法に従って、動物実験用プレドニゾロンペレット5 mgを埋没させた(ステロイド群)。一方で、Sham群として、プレドニゾロンペレットを埋没させない以外はステロイド投与群と同様の処置を施した群を作成した。
【0046】
<2-2.ウルトラファインバブル溶液>
実施例1の1-2で調製した酸素ウルトラファインバブル含有生理食塩水を、以下の実験でウルトラファインバブル溶液として用いた。
【0047】
<2-3.ウルトラファインバブル溶液の投与>
ステロイド投与群(ステロイド群)及び非ステロイド投与群(Sham群)に対して、生理食塩水又はウルトラファインバブル溶液を、投与翌日から週3回(2日間隔で)腹腔内投与(200μl/mouse/回)した。この間、餌と水は自由摂取させ、恒温恒湿に保たれた飼育室にて飼育した。8週間後に、各群のマウスを麻酔下で屠殺した。
【0048】
<2-4.骨量の計測>
実施例1の1-4と同様方法に従って、海綿骨量体積率 (BV/TV)、及び皮質骨量体積率 (Cv/Av)を計測した。
【0049】
<2-5.大腿骨の破骨細胞数の計測>
定法に従って大腿骨をTRAP染色し、破骨細胞数(/mm
2)を計測した。
【0050】
<2-6.結果>
海綿骨量体積率(BV/TV)の計測結果を
図2に、皮質骨量体積率 (Cv/Av)の計測結果を
図3に、破骨細胞数(/mm
2)の計測結果を
図4に示す。
図2〜4中、「ステロイド」はステロイド投与群を示し、「sham」は非ステロイド投与群を示し、「生食」は生理食塩水投与群を示し、「UFB」はウルトラファインバブル溶液投与群を示す。また、
図2及び3中、カラムから上方に伸びた髭の先端は90パーセンタイル値を示し、カラムの上端は75パーセンタイル値を示し、カラム中の横線は50パーセンタイル値(中央値)を示し、カラムの下端は25パーセンタイル値を示し、カラムから下方に伸びた髭の先端は10パーセンタイル値を示す。
【0051】
図2及び3中、sham+生食とステロイド+生食との比較より、ステロイド投与により骨量が減少していることが確認できた(Mann-Whitney U-test/P=0.003(
図2)、P=0.02(
図3))。そして、ステロイド+生食と、ステロイド+UFBとの比較より、ウルトラファインバブル溶液の投与により、ステロイド投与により減少していた骨量が増加することが示された(Mann-Whitney U-test/P=0.003(
図2)、P=0.027(
図3))。以上より、ウルトラファインバブル溶液がステロイド性骨粗鬆症に対して治療効果を有することが示された。
【0052】
図4中、sham+生食とステロイド+生食との比較より、ステロイド投与により破骨細胞数が大幅に増加していることが確認できた(Mann-Whitney U-test/P<0.05)。そして、ステロイド+生食と、ステロイド+UFBとの比較より、ウルトラファインバブル溶液の投与により、ステロイド投与により増加していた破骨細胞数が減少することが示された(Mann-Whitney U-test/P<0.05)。
【0053】
実施例3.ウルトラファインバブル溶液の破骨細胞分化
マウス脾臓細胞細胞を、10 ng/mlのM-CSF及び50 ng/mlのRANKL存在下で、48 ウェルプレート(TRAP染色用)、12ウェルプレート(RNA用)(1×10
5 個/ml、500 μl/ウェル(TRAP用)、1000_μl/ウェル(RNA用))中で培養した。培養液は、溶媒として、水のみ(0%)、水とウルトラファインバブル溶液半量ずつ混合した液(50%)、又はウルトラファインバブル溶液(100%)を用いて調製した。培養開始から5日後、ウェル中の細胞を定法に従ってTRAP染色し、破骨細胞数(/ウェル)を計測した。結果を
図5に示す。
【0054】
図5より、ウルトラファインバブル溶液により破骨細胞の分化が抑制されることが示された。