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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-166071(P2015-166071A)
(43)【公開日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】揮発性成分含有物質の処理システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20150828BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20150828BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20150828BHJP
   F23G 5/027 20060101ALI20150828BHJP
【FI】
   B09B3/00 303L
   C02F11/00 GZAB
   B29B17/00
   B09B3/00 303E
   B09B3/00 303Z
   F23G5/027 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-41568(P2014-41568)
(22)【出願日】2014年3月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】目次 康格
(72)【発明者】
【氏名】古屋 一寿
(72)【発明者】
【氏名】門野 壮
【テーマコード(参考)】
3K161
4D004
4D059
4F401
【Fターム(参考)】
3K161AA11
3K161BA03
3K161BA04
3K161BA08
3K161CA03
3K161DA33
3K161EA36
3K161FA22
3K161FA26
3K161FA37
3K161FA66
3K161GA02
3K161HC02
3K161HC18
3K161JA31
3K161LA03
3K161LA17
3K161LA71
4D004AA02
4D004AA07
4D004AA37
4D004AB03
4D004AC04
4D004BA06
4D004CA15
4D004CA22
4D004CA50
4D004CB09
4D004CB21
4D004CB32
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA06
4D004DA10
4D059AA12
4D059BD12
4D059BD22
4D059BJ00
4D059CA14
4D059CC10
4D059EA06
4D059EA20
4D059EB06
4F401AA27
4F401BA06
4F401CA91
4F401CB02
4F401CB09
4F401CB16
4F401DA06
4F401DA08
4F401FA01X
4F401FA01Y
4F401FA20X
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】長時間の運転により低下した揮発性成分の揮発率を回復させることができる揮発性成分含有物質の処理システムを提供する。
【解決手段】本発明の揮発性成分含有物質の処理システム1は、揮発性成分含有物質を撹拌する撹拌手段および揮発性成分含有物質を加熱する加熱手段を有する加熱装置10と、加熱装置10に洗浄用媒体を供給する洗浄用媒体供給装置20と、加熱装置10から排出された洗浄用媒体を、加熱装置10の中に残存していた揮発性成分含有物質から分離して回収する洗浄用媒体回収装置30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性成分含有物質を撹拌する撹拌手段および前記揮発性成分含有物質を加熱する加熱手段を有する加熱装置と、
前記加熱装置に洗浄用媒体を供給する洗浄用媒体供給装置と、
前記加熱装置から排出された前記洗浄用媒体を、前記加熱装置の中に残存していた前記揮発性成分含有物質から分離して回収する洗浄用媒体回収装置とを備えた、揮発性成分含有物質の処理システム。
【請求項2】
前記洗浄用媒体の真密度は、前記揮発性成分含有物質のかさ密度よりも高い、請求項1に記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
【請求項3】
前記洗浄用媒体の材質は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ムライト、窒化ケイ素、石灰、炭化ケイ素、サイアロン、タングステンカーバイト、銅の合金、ニッケルの合金および鉄の合金からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
【請求項4】
前記洗浄用媒体の平均径は、1〜100mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
【請求項5】
前記加熱装置により加熱される前の前記揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度および前記加熱装置により加熱された後の前記揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度を測定する揮発性成分分析装置と、前記揮発性成分含有物質の前記加熱装置への供給および前記洗浄用媒体の前記加熱装置への供給の間で前記加熱装置への供給を切り換える切換装置とをさらに備え、
前記切換装置は、前記揮発性成分分析装置により測定された、前記加熱装置により加熱される前の前記揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度と前記加熱装置により加熱された後の前記揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度とから算出した揮発性成分揮発率に基づいて、前記揮発性成分含有物質の前記加熱装置への供給を止め、前記洗浄用媒体の前記加熱装置への供給を開始する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性成分含有物質から揮発性成分を除去する、揮発性成分含有物質の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セメント製造では、水銀などの揮発性成分を微量に含有する天然および廃棄物系の原燃料を使用しているため、セメントの焼成工程で使用されるセメントキルンから排出されるセメントキルン排ガスには揮発性成分が含まれている。このような揮発性成分は環境に悪影響を及ぼすため、セメントキルン排ガスから揮発性成分を除去して回収する必要がある。しかし、セメントキルン排ガスに低濃度で含まれている揮発性成分を、大量に発生するセメントキルン排ガスから除去することは難しい。このため、従来から、セメントキルン排ガスから揮発性成分を除去する様々な装置が提案されてきた(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の揮発性物質の除去装置では、円筒の中心軸が水平面に対して傾斜しており、円筒の中心軸を中心に回転可能であり、加熱手段により加熱できる、円筒形状の本体部に、集塵機によりセメントキルン排ガスから分離した集塵ダストを導入し、本体部の回転により集塵ダストを撹拌させながら加熱することにより集塵ダスト中の揮発性物質を揮発させ、回収している。また、特許文献2に記載の揮発性物質の除去装置では、内部に回転翼を有し、加熱手段によって加熱できる本体部に、集塵機によりセメントキルン排ガスから分離した集塵ダストを導入し、回転翼の回転により集塵ダストを撹拌しながら加熱することにより集塵ダスト中の揮発性物質を揮発させている。このように、集塵ダストを撹拌しながら加熱することにより、集塵ダストから揮発性物質を効率よく除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−173116号公報
【特許文献2】特開2013−208536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、揮発性物質の除去装置の本体部で集塵ダストを撹拌している間に、集塵ダストが本体部の内壁などに付着してしまう場合がある。集塵ダストが本体部の内壁などに付着すると、集塵ダストが十分に撹拌されることがなくなったり、加熱されている集塵ダストの温度が低下したりする場合がある。このような場合、集塵ダストにおける揮発性物質の揮発量が少なくなり、集塵ダストにおける揮発性物質の揮発率が低下してしまう。そこで、本発明は、長時間の運転により低下した揮発性物質の揮発率を回復させることができる揮発性成分含有物質の処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、加熱装置への揮発性成分含有物質の供給を止めた後、洗浄用媒体を加熱装置に供給して、加熱装置内で洗浄用媒体を撹拌することにより、揮発性成分の揮発率を回復できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]揮発性成分含有物質を撹拌する撹拌手段および揮発性成分含有物質を加熱する加熱手段を有する加熱装置と、加熱装置に洗浄用媒体を供給する洗浄用媒体供給装置と、加熱装置から排出された洗浄用媒体を、加熱装置の中に残存していた揮発性成分含有物質から分離して回収する洗浄用媒体回収装置とを備えた、揮発性成分含有物質の処理システム。
[2]洗浄用媒体の真密度は、揮発性成分含有物質のかさ密度よりも高い、上記[1]に記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
[3]洗浄用媒体の材質は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ムライト、窒化ケイ素、石灰、炭化ケイ素、サイアロン、タングステンカーバイト、銅の合金、ニッケルの合金および鉄の合金からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[2]に記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
[4]洗浄用媒体の平均径は、1〜100mmである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
[5]加熱装置により加熱される前の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度および加熱装置により加熱された後の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度を測定する揮発性成分分析装置と、揮発性成分含有物質の加熱装置への供給および洗浄用媒体の加熱装置への供給の間で加熱装置への供給を切り換える切換装置とをさらに備え、切換装置は、揮発性成分分析装置により測定された、加熱装置により加熱される前の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度と加熱装置により加熱された後の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度とから算出した揮発性成分揮発率に基づいて、揮発性成分含有物質の加熱装置への供給を止め、洗浄用媒体の加熱装置への供給を開始する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の揮発性成分含有物質の処理システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長時間の運転により低下した揮発性成分の揮発率を回復させることができる揮発性成分含有物質の処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態における、揮発性成分含有物質の処理システムを示す概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における揮発性成分含有物質の処理システムの加熱装置の一例を説明するための図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における揮発性成分含有物質の処理システムの加熱装置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[揮発性成分含有物質の処理システム]
本発明の一実施形態における揮発性成分含有物質の処理システムは、後述の洗浄用媒体を使用して後述の加熱装置の内部に付着した揮発性成分含有物質を除去することにより、長時間の運転により低下した揮発性成分含有物質からの揮発性成分の揮発率を回復させることができる。以下、図1を参照して、本発明の一実施形態における揮発性成分含有物質の処理システムを説明する。図1は、本発明の一実施形態における揮発性成分含有物質の処理システムを示す概略図である。図1の符号Dは揮発性成分含有物質を示し、符号Mは洗浄用媒体を示し、Vは揮発性成分を示す。
【0010】
揮発性成分含有物質の処理システム1は加熱装置10と洗浄用媒体供給装置20と洗浄用媒体回収装置30とを備える。所望により、処理システム1は揮発性成分分析装置40と切換装置50とをさらに備えてもよい。なお、本発明の一実施形態の揮発性成分含有物質の処理システムは、本発明の揮発性成分含有物質の処理システムの一例であり、本発明の揮発性成分含有物質の処理システムは、本発明の一実施形態の揮発性成分含有物質の処理システムに限定されない。
【0011】
(加熱装置)
通常運転のとき、加熱装置10には揮発性成分含有物質が供給され、加熱装置10を洗浄するとき、加熱装置10には洗浄用媒体が供給される。まず、通常運転のときの加熱装置10を説明する。
【0012】
加熱装置10は、揮発性成分含有物質を撹拌する撹拌手段および揮発性成分含有物質を加熱する加熱手段を有し、揮発性成分含有物質を撹拌しながら加熱する。たとえば、セメントキルンから排出された排ガスに含まれるダストを集塵する集塵装置Kなどから揮発性成分含有物質が加熱装置10に供給される。揮発性成分含有物質は揮発性成分を含有する粉粒体である。揮発性成分含有物質の粒子径は、たとえば0.1μm〜20mmである。揮発性成分含有物質には、たとえば、揮発性成分を含有する廃棄物(焼却灰、各種の汚泥および廃プラスチックなど)、セメント製造用の固体原料および燃料、ならびにセメント製造設備の排ガス処理系統(たとえば、キルン排ガス系統に設置されている予熱器、沈降室、スタビライザー、ミル、ドライヤーおよび集塵機など)で捕集されるダスト(たとえば、セメント原料として利用されるもの)などが挙げられる。揮発性成分には、たとえば、水銀およびタリウムなどの重金属、およびこれらの重金属を有する塩化物などが挙げられる。
【0013】
図2を参照して加熱装置10を詳細に説明する。図2に、本発明の一実施形態における、揮発性成分含有物質の処理システム1の加熱装置10の一例を示す。図2(a)は、加熱装置10の一例の外観を示す図であり、図2(b)は、加熱装置10の一例の内部を示す図である。図2の符号Dは揮発性成分含有物質を示し、符号Vは揮発性成分を示す。なお、図2に示す加熱装置10はあくまでも一例であり、本発明の揮発性成分含有物質の処理システムの加熱装置は、揮発性成分含有物質を攪拌しながら加熱することができれば、図2に示す加熱装置10に限定されない。
【0014】
図2に示す加熱装置10は、揮発性成分含有物質導入部11、本体部12、揮発性成分含有物質排出部13、加熱ヒーター14、揮発性成分排出部15および本体部回転装置16を備える。揮発性成分含有物質導入部11は、集塵装置Kなどから供給された揮発性成分含有物質を、後述の本体部12の中に導入するための導入口である。本体部12は、円筒の形状を有し、円筒の中心軸が水平面に対して傾斜している。本体部12の長手方向の中心付近に、本体部12の外周に沿って加熱ヒーター14が配置されている。加熱ヒーター14は発熱体を有し、発熱体から発する熱により揮発性成分含有物質を加熱する。揮発性成分含有物質排出部13は、揮発性成分が揮発した揮発性成分含有物質を本体部12から排出するための排出口である。揮発性成分排出部15は、揮発性成分含有物質から揮発した揮発性成分を本体部12から排出するための排出口である。揮発性成分排出部15は、本体部12の円筒の中心軸に配置されている。揮発性成分排出部15の先端側には、揮発性成分が通過するための細かい穴が形成されており、揮発性成分排出部15は中空になっている。本体部回転装置16は、本体部12の外周に沿って設けられたギア17と係合して、本体部12を、円筒の中心軸を中心に回転させる。
【0015】
上述したように本体部12は傾斜しており、さらに回転しているので、揮発性成分含有物質導入部11から本体部12に導入された揮発性成分含有物質は、揮発性成分含有物質導入部11側から揮発性成分含有物質排出部13側へ、徐々に移動する。また、本体部12の回転により、揮発性成分含有物質は撹拌される。
【0016】
揮発性成分含有物質が、加熱ヒーター14が配置されている領域に移動すると、加熱ヒーター14が発生する熱により、揮発性成分含有物質中の揮発性成分は揮発する。また、本体部12の回転により、揮発性成分含有物質は撹拌されるので、揮発性成分の揮発が促進される。揮発性成分含有物質は撹拌されながら加熱されているので、揮発性成分含有物質中の揮発性成分は効率よく揮発する。
【0017】
加熱ヒーター14により揮発性成分が揮発した揮発性成分含有物質は、揮発性成分含有物質排出部13に移動し、加熱装置10から排出される。また、揮発性成分含有物質から揮発した揮発性成分は、揮発性成分排出部15の先端側の細かい穴を通過して、揮発性成分排出部15の内部を通って、加熱装置10から排出される。
【0018】
揮発性成分含有物質は本体部12の回転により撹拌されるので、加熱装置10の撹拌手段は、本体部12および本体部回転装置16に相当する。また、揮発性成分含有物質は、加熱ヒーター14により加熱されるので、加熱装置10の加熱手段は加熱ヒーター14に相当する。
【0019】
なお、以上の加熱装置10は、揮発性成分含有物質を収納している本体部12の回転により揮発性成分含有物質を撹拌したが、揮発性成分含有物質を撹拌できれば、加熱装置10の撹拌手段は本体部12の回転に限定されない。たとえば、本体部12の中に設けた、回転翼などの撹拌子を回転させることによって、または振動板などの撹拌子を振動させることによって揮発性成分含有物質を撹拌してもよい。
【0020】
揮発性成分が水銀である場合、加熱装置10により揮発性成分含有物質を加熱するときの本体部12の内部温度は、好ましくは250〜600℃であり、より好ましくは300〜450℃である。本体部12の内部温度を250〜600℃にすることにより、揮発性成分含有物質から揮発性成分を効率的に揮発させることができる。
【0021】
図1に示すように、加熱装置10から排出された揮発性成分は不図示の揮発性成分回収装置Cに移送される。揮発性成分回収装置Cは、揮発性成分含有物質から揮発した揮発性成分を回収する装置であり、たとえば、活性炭などの吸着剤に揮発性成分を吸着させて揮発性成分を回収する。また、揮発性成分回収装置Cは、揮発性成分を含有する加熱装置10の排気を該揮発性成分の飽和温度以下に冷却し、揮発性成分を凝縮して回収してもよい。加熱装置10から排出された揮発性成分含有物質は、たとえばセメント原料Lとして使用される。
【0022】
揮発性成分含有物質を加熱装置10に供給し続けると、本体部12の内部などに揮発性成分含有物質が付着する。このため、加熱装置10を洗浄して本体部12の内部などに付着した揮発性成分含有物質を除去する必要がある。加熱装置10の洗浄については、後述の洗浄用媒体供給装置20の説明と一緒に説明する。
【0023】
(洗浄用媒体供給装置)
洗浄用媒体供給装置20は、加熱装置10を洗浄するとき加熱装置10に洗浄用媒体を供給する。洗浄用媒体供給装置20は、好ましくは、加熱装置10への揮発性成分含有物質の供給を止めた後、加熱装置10に洗浄用媒体を供給する。加熱装置10への揮発性成分含有物質の供給を止めることにより、加熱装置10の内壁などに付着した揮発性成分含有物質を、より効率的に除去することができる。
【0024】
加熱装置10に供給された洗浄用媒体は、加熱装置10の撹拌手段を利用して、加熱装置10の内壁などに付着した揮発性成分含有物質を除去する。これにより、長時間の運転により低下していた揮発性成分含有物質からの揮発性成分の揮発率を回復させることができる。上述の加熱装置10の一例を例に挙げて、図3を参照して、洗浄用媒体が加熱装置10の内壁などに付着した揮発性成分含有物質を除去する原理を説明する。図3は、本発明の一実施形態における揮発性成分含有物質の処理システムの加熱装置の一例を説明するための図である。図3の符号Mは洗浄用媒体を示す。
【0025】
揮発性成分含有物質導入部11から本体部12に導入された洗浄用媒体は、揮発性成分含有物質導入部11側から揮発性成分含有物質排出部13側へ、徐々に移動する。また、本体部12の回転、すなわち加熱装置10の撹拌手段により、洗浄用媒体は撹拌される。この撹拌により、洗浄用媒体は、本体部12の内壁と衝突したり、擦れたりする。これにより、本体部12の内壁に付着した揮発性成分含有物質の固まりが削れたり、本体部12の内壁から剥離したりする。そして、本体部12の内壁から除去された揮発性成分含有物質と洗浄用媒体とは、揮発性成分含有物質排出部13から加熱装置10の外へ排出される。
【0026】
なお、加熱装置の撹拌手段が回転翼などの撹拌子の回転によるものである場合、洗浄用媒体は撹拌子により本体部の内部を移動し、この移動により、洗浄用媒体は、本体部の内壁と衝突したり、擦れたりする。そして、本体部の内壁に付着した揮発性成分含有物質の固まりが削れたり、本体部の内壁から剥離したりする。また、加熱装置の撹拌手段が振動板などの撹拌子の振動によるものである場合、洗浄用媒体は撹拌子により本体部の内部で振動し、この振動により、洗浄用媒体は、本体部の内壁と衝突したり、擦れたりする。そして、本体部の内壁に付着した揮発性成分含有物質の固まりが削れたり、本体部の内壁から剥離したりする。
【0027】
洗浄用媒体は固体の媒体である。洗浄用媒体は、本体部の内壁などと衝突したり、擦れたりすることにより、内壁などに付着した揮発性成分含有物質を除去するので、洗浄用媒体の真密度は高いことが好ましい。具体的には、洗浄用媒体の真密度は、好ましくは、揮発性成分含有物質のかさ密度よりも高い。なお、揮発性成分含有物質のかさ密度は、たとえば、JIS R 1628の「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に準拠して測定することができる。
【0028】
好ましい洗浄用媒体の材質は、たとえば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ムライト、窒化ケイ素、石灰、炭化ケイ素、サイアロン、タングステンカーバイト、銅の合金、ニッケルの合金ならびに鉄の合金からなる群から選択される少なくとも1種である。銅の合金には、たとえば真鍮、アルミニウム青銅、クロム銅およびベリリウム銅など、ニッケルの合金には、たとえばモネル、ハステロイおよびインコネルなど、鉄の合金には、たとえばクロム鋼およびステンレスなどがある。また、洗浄用媒体の形状は、内壁などの付着した揮発性成分含有物質を除去できる形状であれば、とくに限定されない。たとえば、洗浄用媒体の形状には、球形、直方体、立方体および俵型などが挙げられる。洗浄用媒体の平均径は、好ましくは1〜100mmであり、より好ましくは1〜20mmである。洗浄用媒体の平均径が1〜100mmであると、本体部の内壁などから効率よく揮発性成分含有物質を除去することができる。なお、洗浄用媒体の平均径とは、洗浄用媒体が球形の場合は、洗浄用媒体の直径の平均値であり、洗浄用媒体が球形以外の形状の場合は、洗浄用媒体に外接する球形の直径、すなわち、洗浄用媒体の一番長いところの平均値である。洗浄用媒体の平均径は、たとえば、ふるい分け法により測定した粒径分布に基づいて算出することができる。
【0029】
洗浄用媒体供給装置20には、後述の洗浄用媒体回収装置30によって回収された洗浄用媒体を供給してもよい。また、不図示の洗浄用媒体供給ラインSから未使用の、または洗浄された洗浄用媒体を供給してもよい。
【0030】
(洗浄用媒体回収装置)
上述したように、洗浄用媒体は、加熱装置10の中に残存していた揮発性成分含有物質と一緒に排出される。このため、洗浄用媒体は、加熱装置10の中に残存していた揮発性成分含有物質と混合している。洗浄用媒体回収装置30は、加熱装置10から排出された洗浄用媒体を、加熱装置10の中に残存していた揮発性成分含有物質から分離して回収する。洗浄用媒体回収装置30は、揮発性成分含有物質と混合している洗浄用媒体を揮発性成分含有物質から分離して回収することができれば、とくに限定されない。たとえば、揮発性成分含有物質は通過できるが洗浄用媒体は通過できないような穴径の開口部を有する振動ふるいに、揮発性成分含有物質および洗浄用媒体の混合物を通過させることにより、揮発性成分含有物質と混合している洗浄用媒体を揮発性成分含有物質から分離して回収してもよい。所望により、回収された洗浄用媒体は、洗浄用媒体供給装置20に移送され、加熱装置10に再び供給されてもよい。また、洗浄用媒体回収装置30によって回収された洗浄用媒体は、洗浄用媒体をきれいに洗浄する工程へ移るようにしてもよい。
【0031】
(揮発性成分分析装置)
揮発性成分分析装置40は、加熱装置10により加熱される前の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度および加熱装置10により加熱された後の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度を測定する。揮発性成分分析装置40は、揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度を測定できるものであれば、とくに限定されない。たとえば、揮発性成分分析装置40は、原子吸光法で揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度を測定してもよい。
【0032】
揮発性成分分析装置40により測定された、加熱装置10により加熱される前の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度と加熱装置10により加熱された後の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度とから算出した揮発性成分揮発率に基づいて、加熱装置10の加熱温度を制御してもよい。揮発性成分揮発率は、加熱装置10により加熱される前の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度をA(mg/kg)とし、加熱装置10により加熱された後の揮発性成分含有物質中の揮発性成分の濃度をB(mg/kg)とした場合、(A−B)/A×100の式から算出される。具体的には、揮発性成分揮発率が所定範囲内になるように、加熱装置10の加熱温度を制御する。たとえば、揮発性成分揮発率が所定範囲よりも小さくなった場合、加熱装置10の加熱温度を上昇させ、揮発性成分の揮発を促進させる。また、揮発性成分揮発率が所定範囲よりも大きくなった場合、加熱装置10の加熱温度を低下させ、揮発性成分の揮発を抑制させる。この場合、揮発性成分含有物質の処理システムは、加熱装置10の加熱温度を制御する加熱温度制御装置を備える。さらに、加熱装置10の加熱温度が所定範囲を超えた場合に、洗浄用媒体の加熱装置10への供給を開始し、加熱装置10の内部に残存している揮発性成分含有物質を除去してもよい。これにより加熱装置10の加熱温度の過度な上昇を抑えることができ、加熱に要するエネルギーを節約できる。
【0033】
(切換装置)
切換装置50は、揮発性成分含有物質の加熱装置10への供給および洗浄用媒体の加熱装置10への供給の間で加熱装置10への供給を切り換える。たとえば、切換装置50は、上記揮発性成分揮発率に基づいて、揮発性成分含有物質の加熱装置10への供給を止め、洗浄用媒体の加熱装置10への供給を開始するようにしてもよい。この場合、揮発性成分揮発率が、所定の基準よりも低くなった場合、揮発性成分含有物質の加熱装置10への供給を止めて、洗浄用媒体の加熱装置10への供給を開始し、加熱装置10の内部に残存している揮発性成分含有物質を除去してもよい。そして、洗浄用媒体の供給を所定時間続けた後、洗浄用媒体の加熱装置10への供給を止め、揮発性成分含有物質を加熱装置10に再び供給してもよい。
【0034】
なお、上述したように、洗浄用媒体供給装置20は、加熱装置10への揮発性成分含有物質の供給を止めてから、加熱装置10に洗浄用媒体を供給することが好ましいが、加熱装置10の内壁などに付着した揮発性成分含有物質を除去することができれば、加熱装置10への揮発性成分含有物質の供給をそのまま続けて、または加熱装置10への揮発性成分含有物質の供給を減らして、加熱装置10に洗浄用媒体を供給してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
【0036】
集塵装置によってセメントキルン排ガスから除去された、水銀を含む集塵ダストを用いて、図1に示す揮発性成分含有物質の処理システムを使用して、集塵ダストの処理を実施した。加熱装置における集塵ダストの処理量は10kg/時間であった。また、加熱装置の設定温度は450℃であった。そして、水銀分析装置(日本インスツルメンツ社製、型番:MA−2000)を使用して、集塵ダストの処理を開始してから1時間後、5時間後、10時間後、25時間後および50時間後における、加熱装置により加熱される前の集塵ダストの水銀濃度(A)(mg/kg)と、加熱装置により加熱された後の集塵ダストの水銀濃度(B)(mg/kg)とを測定した。そして、下記の式により水銀揮発率を算出した。
水銀揮発率(%)=(A−B)/A×100
【0037】
これらの結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0038】
次に、集塵ダストの加熱装置への供給を止めて、洗浄用媒体を加熱装置に供給した。洗浄用媒体には、(株)比良セラミックス製のφ2mmのアルミナボールを使用した。20kgの洗浄用媒体を使用して、洗浄用媒体を加熱装置に60分間供給した。そして、洗浄用媒体の加熱装置への供給を止めて、再び集塵ダストの加熱装置への供給を開始した。集塵ダストの処理を再開してから1時間後および5時間後における、加熱装置により加熱される前の集塵ダストの水銀濃度(A)(mg/kg)と、加熱装置により加熱された後の集塵ダストの水銀濃度(B)(mg/kg)とを測定し、水銀揮発率を算出した。
【0039】
これらの結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0040】
以上の結果から、加熱装置に洗浄用媒体を供給することによって、揮発性成分含有物質の処理システムの長期運転により低下していた水銀揮発率を、運転開始のときの水銀揮発率まで回復できた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の揮発性成分含有物質の処理システムは、廃棄物を原料として利用するセメント製造設備に有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 揮発性成分含有物質の処理システム
10 加熱装置
20 洗浄用媒体供給装置
30 洗浄用媒体回収装置
40 揮発性成分分析装置
50 切換装置
C 揮発性成分回収装置
D 揮発性成分含有物質
K 集塵装置
L セメント原料
M 洗浄用媒体
S 洗浄用媒体供給ライン
V 揮発性成分
図1
図2
図3