【課題】簡素な構成でレーザ共振器から半導体レーザ側へ漏れる発振漏れ光の強度を抑制することにより、半導体レーザの劣化を防止して安定した着火を実現できるレーザ点火装置を提供する。
前記光学素子が前記励起光の入射側又は出射側の少なくともいずれかに平面状の端面を具備し、前記励起光透過発振漏れ光反射膜を該平面状の端面、及び、又は、前記レーザ共振器の入射側の端面に形成せしめた請求項1に記載のレーザ点火装置(7、7a〜7g)
前記励起光源を複数設けると共に、前記光学素子が、それぞれの励起光源から発振された励起光をコリメートするシリンドリカルレンズ(20、20g、21、21f)と、複数の励起光源から発振され、コリメートされた複数の励起光を集束する集束レンズ(22、22e、23、23d)と、該集束レンズによって集束された励起光(LCND)をコリメートするコリメートレンズ(26、26a)と、該集束された励起光(LCND)を前記コリメートレンズに伝送する光ファイバ(25、25b、25d)とを含み、前記励起光透過発振漏れ光反射膜を、前記シリンドリカルレンズ、前記集束レンズ、前記コリメートレンズ、前記光ファイバのいずれかの少なくとも一の端面、及び、又は、前記レーザ共振器の入射側の端面に形成せしめた請求項1又は2に記載のレーザ点火装置(7、7a〜7g)
前記励起光透過発振漏れ光光反射膜は、前記光学素子又は前記レーザ共振器を構成する光学材料の屈折率より屈折率の小さい低屈折率膜と屈折率の大きい高屈折率膜とを交互に重ねた多層膜である請求項1ないし3に記載のレーザ点火装置(7、7a〜7g)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、レーザ点火装置において、複数の半導体レーザ装置を励起光源とすることで、出力エネルギを増加して、難着火性の内燃機関気の点火を図ろうとした場合に、戻り光による半導体レーザの破損を防止すべく従来のように光アイソレータを用いたのでは、以下の問題があることが判明した。
第1に、光アイソレータを構成する様々な光学部品を使用する必要があり、製造コストの増加を招くおそれがある。
【0006】
第2に、複数の半導体レーザから発振された励起光の光軸を調整して光アイソレータに導入する必要があり、光軸調整のための作業あるいは機構が必要となり、さらなるコストの増加を招くおそれがある。
レーザ点火装置においては、極めて大きなエネルギ密度のパルスレーザを集光させる必要があるため、複数の半導体レーザを組み合わせた半導体レーザモジュールを励起光源として用いることで、それぞれの半導体レーザの負荷を小さくすることが考えられる。
このような場合、複数の半導体レーザから発振された励起光を集光レンズによって集束させた場合には、位相の異なる複数の励起光が複数存在し、それぞれの光軸も異なっているため、光アイソレータを通過した複数の励起光の束が元の励起光の束と同じように再結合され、かつ、戻り光が光源側に出射される際には、複数の半導体レーザのいずれにも分離された常光と異常光のいずれもが半導体レーザに入光しないように調整するのは、極めて困難となるものと考えられる。
【0007】
第3に、光アイソレータを用いた場合、励起光が光アイソレータに入光する際の反射損失や、光アイソレータを構成する光学部品の透過損失により、レーザ媒質に照射される励起光強度が低下するおそれがある。
光アイソレータに限らず、光学部品を通過する際には不可避的に透過損失を生じるので、レーザ点火装置のエネルギ効率を上げるためにも、光学部品はできる限り少なくし、簡素な構成とするのが望ましい。
【0008】
第4に、光アイソレータでは、永久磁石を用いてファラデー回転子に強力な磁界を作用させてファラデー効果を発揮させるものであるため、その周辺に磁気を遮断する機構を設ける必要があり、レーザ点火装置の大型化を招くことにもなり、近年のレーザ点火装置の小型化に対する要求に応えられないおそれがある。
【0009】
第5に、従来、レーザ共振器の励起側端面からのレーザ発振光の漏れ光は殆ど無いとされていたが、レーザ点火に必要なメガワット以上のジャイアントパルス発生にかかるレーザとなると、励起側端面からの漏れ光が無視できない値となることが判明した。
例えば、マイクロチップレーザの励起端面は共振器全反射鏡を兼ねており、従来、高反射コーティングの透過率として、発振光に対しては、0.1%程度透過で十分とされていた。
【0010】
しかし、レーザ発振の共振器内部光電力が10MW以上になると、たとえ 高反射コーティングの透過率が0.1%としても、その端面から透過する漏れ光の光電力は10KWにも及ぶことになる。
一方で、このようなマイクロチップレーザの励起光の光電力は100W程度であり、仮にその励起光が100%戻ったとしても、発振光の漏れ光の光電力の1/100にしかならない。
【0011】
すなわち、従来、半導体レーザの問題とされていた励起光の反射による戻り光を何桁も上回る共振器から発振光の「漏れ光」が、励起光源に用いられている半導体レーザを直撃する虞がある。
発振漏れ光が半導体レーザに照射されるのは、数ナノ秒程度の極めて短い時間であるが、長期的な信頼性を損なうことが判明した。レーザ共振器側から戻る光について、半導体レーザに照射される時間は、励起反射光の方が発振漏れ光よりも桁違いに長く、エネルギ量としては、励起反射光の方が発振漏れ光よりも多いが、電力が小さいのでレーザダイオードにダメージは起こらず、電力が極めて高い発振漏れ光は、たとえ極短い時間であっても、レーザダイオードの破損を招くことになる。
なお、半導体レーザの破壊には、熱で起きるものや光強度(電力/面積)で起こるモードがあるが、本発明は、励起光源側に戻る光の内、発振漏れ光の電力が高くなったために起きる障害を解決するものである。
【0012】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、簡素な構成でレーザ共振器から半導体レーザへの漏れ光の強度を抑制することにより、半導体レーザの劣化を防止して安定した着火を実現できるレーザ点火装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のレーザ点火装置(7、7a〜7g)は、コヒーレントな励起光(L
PMP)を放射する励起光源(1)と、該励起光源(1)から放射された励起光を伝送する光学素子(2、2a〜2g)と、該光学素子を介して伝送された励起光の照射によりエネルギ密度の高い発振光(L
PLS)を発振するレーザ共振器(3、3a)と、該レーザ共振器から発振された前記発振光を集光する集光手段(6)とを具備し、内燃機関(8)の燃焼室(80)の内側に導入した混合気にエネルギ密度の高い発振光(L
FCS)を集光して点火を行うレーザ点火装置であって、前記励起光源と前記レーザ共振器との間に、波長の短い前記励起光は透過し、かつ、波長の長い前記発振光の一部であって、前記レーザ共振器から前記励起光源側に戻る発振漏れ光(L
LEAK)は反射する励起光透過発振漏れ光反射膜(5、5a〜5g)を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
前記レーザ共振器内で共振増幅されて発振された発振光の一部が、漏れ光として前記励起光源側に入射されても、前記励起光透過発振漏れ光反射膜によってレーザ共振器側に反射され、前記励起光源に到達するまでに極めて小さいエネルギとなるので、発振漏れ光による前記励起光源の損傷が抑制される。
また、前記励起光透過発振漏れ光反射膜は、前記光学素子の端面に極薄い多層膜として設けるため、従来の光アイソレータを配設する場合のように装置の大型化を招くことがない。
さらに、既存の前記光学素子に前記励起光透過発振漏れ光反射膜を形成するため、新たな光学素子の追加を必要とすることなく、透過エネルギの損失の増加を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、コヒーレントな励起光L
PMPを放射する励起光源1と、励起光源1から放射された励起光を伝送する光学素子2と、光学素子2を介して伝送された励起光L
PMPの照射によりエネルギ密度の高い発振光L
PLSを発振するレーザ共振器3と、レーザ共振器3から発振された発振光L
PLSを集光する集光手段6とを具備し、内燃機関8の燃焼室80の内側に導入した混合気にエネルギ密度の高い発振光L
FCSを集光して点火を行うレーザ点火装置7に関する。
図1A、
図1B、
図1Cを参照して、本発明の第1の実施形態におけるレーザ点火装置7の要部について説明する。なお、レーザ点火装置7の全体構成については
図6を参照して後述する。
【0017】
本実施形態における励起光源1は、半導体レーザからなる発光エミッタを有し、通電によりコヒーレントな励起光L
PMPを放射する。
本実施形態においては、励起光L
PMPとして、808nmのピーク波長λ
PMPを有する赤外線レーザを用いており、励起光L
PMPの照射によりレーザ共振器3からは、1064nmのピーク波長λ
PLSを有する発振光L
PLSが出射される例を示しているが励起光源1から放射される励起光L
PMPの波長λ
PMP及び発振光L
PLSの波長λ
PLSは、適宜選択可能である。
【0018】
励起光源1には、光学素子として、励起光L
PMPをコリメートするシリンドリカルレンズ20、21が設けられ、半導体レーザモジュール10を構成している。
シリンドリカルレンズ20、21には、光学ガラス、耐熱ガラス、石英ガラス、サファイアガラス等の公知の光学材料が用いられている。
また、複数の半導体レーザモジュール10を半導体レーザ固定台13に雛段状に並べて配設してある。
本実施形態においては、一列に8個の半導体レーザモジュール10を並べ、2列配設したものを示してあるが、半導体モジュール10の数を限定するものではない。
【0019】
複数の半導体レーザモジュール10から放射され、コリメートされた複数の励起光L
PMPは、光学素子として先端側に設けた、集束レンズ22、23によって集束される。
集束レンズ22、23は、光学ガラス、耐熱ガラス、石英ガラス、サファイアガラス等の公知の光学材料が用いられている。
集束レンズ22、23の表面を、公知の反射防止膜で覆っても良い。
集束レンズ22、23の入射側の端面は平面状に加工され、出射面は、非球面レンズとなっている。
【0020】
集束レンズ22、23によって束ねられた集束光L
CNDは、結合素子24を介して、光ファイバ25に結合される。
結合素子24には、結晶化ガラス等の公知の光学材料からなる光フェルールや、光ファイバ25の端部を保持する中空のスリーブ等を用いることができる。
光ファイバ25には、例えば、開口数0.22以下で、コア径がφ600μm以下に形成された公知の光ファイバを用いることができ、レーザ共振器3に照射される励起光L
PMPのビーム径がφ1200μmとなっている。
【0021】
光ファイバ25を介して伝送された集束光L
CNDは、コリメートレンズ26によって、平行光L
CMTとされレーザ共振器3に入射される。
コリメートレンズ26には、光学ガラス、耐熱ガラス、石英ガラス、サファイアガラス等の公知の光学材料が用いられている。
本実施形態におけるコリメートレンズ26の入射側の端面は平面状に加工され、出射面は、非球面レンズに加工され、複数の励起光L
PMPが集束された集束光L
CNDを平行光L
CMTに調光している。
【0022】
コリメートレンズ26の表面には、反射防止膜4が形成され、さらに、少なくとも、平面状に形成した入射側の端面に、本発明の要部である励起光透過発振漏れ光反射膜5が形成されている。
本実施形態における励起光透過発振漏れ光反射膜5は、高屈折率(n
H=2.16)のTa
2O
5からなる高屈折率膜50と、低屈折率(n
L=1.41)のSiO
2からなる低屈折率膜51とが交互に19層成膜されている。
【0023】
励起光透過発振漏れ光反射膜5は、波長の短い(例えば、λ
PMP=808nm)励起光L
PMPの99.8%を透過し、かつ、波長の長い(例えば、λ
LEAK=λ
PLS=1064nm)発振光L
PLSの漏れ光L
LEAKの99.6%を反射する。
さらに、コリメートレンズ26の出射面には透過膜4として、高屈折率(n
H=2.16)のTa
2O
5からなる高屈折率膜50と、低屈折率(n
L=1.41)のSiO
2からなる低屈折率膜51とが交互に4層成膜され、励起光L
PMP)99.8%が透過して、平行光L
CMTとして出射するようになっている。
【0024】
低屈折率膜51にはSiO
2、MgF
2から選択した誘電体、屈折率膜50にはTiO
2、Ta
2O
3から選択した誘電体を用いることができ、蒸着、イオンプレーティング等の公知の薄膜形成方法により多層膜を形成できる。
【0025】
コリメートレンズ26の先端側には、レーザ共振器3が配設されている。
レーザ共振器3には、公知の受動Qスイッチ式のレーザ共振器を用いることができる。
レーザ共振器3は、レーザ媒質30と、その入射側に設けた反射防止膜31と、全反射鏡32と、出射側に設けた可飽和吸収体33と、部分反射膜からなる出光鏡34とによって構成され、筒状のハウジング35内に収容されている。
レーザ媒質30は、YAG単結晶にNdをドーピングしたNd:YAG等の公知のレーザ媒質が用いられている。
【0026】
全反射鏡32は、波長の短い励起光L
PMPは透過し、波長の長い発振光L
PLSは全反射するように形成されている。
過飽和吸収体33は、YAG単結晶にCr
4+をドーピングしたCr:YAG等が用いられている。
レーザ共振器3は、共振器内に導入された励起光L
PMPによって、レーザ媒質30内のNdが励起され、1064nmの光を放射し、レーザ媒質30内に蓄積する。
【0027】
レーザ媒質30内のエネルギレベルが一定レベルに達すると出力鏡34から、発振光L
PLSが発振する。
このとき、背面側の全反射鏡32の入射面からは、不可避的に発振光L
PLSの強度の約0.4%が発振漏れ光L
LEAKとして、励起光源1側に伝播する。
【0028】
本実施形態においては、発振光L
PLSの0.4%の強度を有する発振漏れ光L
LEAKが、コリメートレンズ26の入射側の端面に到達したとき、その表面に形成された励起光透過発振漏れ光反射膜5によって、その99.8%が反射され、レーザ共振器3側に戻り、0.2%が励起光源側に透過し、出射側の端面でも発振漏れ光L
LEAKの0.2%が励起光源側に反射される。
レーザ共振器3の入射面と、本発明の要部である励起光透過発振漏れ光反射膜5との間で複数回(例えば、約3nsの間)反射と透過を繰り返す内に発振漏れ光L
LEAKは消滅する。
結果的に、発振光L
PLSの強度の0.4%が発振漏れ光L
LEAKとしてレーザ共振器3から励起光源側に漏れても、その内の99.6%が励起光透過発振漏れ光反射膜5によってカットされ、発振漏れ光L
LEAKの0.4%、即ち、発振光L
PLSの強度の0.0016%まで、励起光源1側に伝送される発振漏れ光L
LEAKの強度を抑制することができる。
これにより、励起光L
PMPの電力に比べて桁違いに大きな電力の発振光L
PLSの一部が漏れても、発振漏れ光L
LEAKの電力は、励起光L
PMPの反射光と同程度の電力にまで低減されるので、これが、励起光源1に到達しても半導体レーザの破損を招くことがない。
図1Cに具体例として、波長λ
PMPが808nmの励起光L
PMPを100Wの電力でレーザ共振器3に投入し、波長λ
PLSが1064nmの発振光L
PLSを10MWの電力で出射した場合の発振漏れ光透過率T
LEAKを算出した例を示しているが、本発明に係るレーザ点火装置において、発振光L
PLSの電力をこれに限るものではない。
【0029】
励起光透過発振漏れ光反射膜5について、スネルの法則、フレネルの公式、マックスウェル方程式を利用したシミュレーションによって、励起光L
PMPの透過率T
PMPを高くし、かつ、漏れ光L
LEAKの反射率R
LEAKを高くする高屈折率膜50の屈折率n
Hとその膜厚d
H及び低屈折率膜51の屈折率n
Lとその膜厚d
L並びに、励起光L
PMPの波長λ
PMP、発振光L
PLSの波長λ
PLS即ち発振漏れ光L
LEAKの波長λ
LEAKとの組み合わせを適宜算出することができる。
但し、計算上では、励起光L
PMPを100%透過し、発振漏れ光L
LEAKを100%反射する条件を求め得るが実際には、前記実施例に示したように、励起光L
PMPの透過率T
PMPは99.8%程度となり、発振漏れ光L
LEAKの反射率R
LEAKは、99.6%程度、即ち、発振漏れ光L
LEAKの透過率T
LEAKは0.4%程度となる。
【0030】
したがって、本発明のように、励起光透過発振漏れ光反射膜5をレーザ共振器3の全反射膜32と重畳的に設けることにより、レーザ共振器3から、発振光L
PLSの一部であって、発振光L
PLSの強度の0.4%程度漏れる発振漏れ光L
LEAKをレーザ共振器3側との間で往復させ、部分反射膜31から励起光源1側へ伝播する漏れ光L
LEAKの99.5%程度をカットし、発振漏れ光L
LEAKを発振光L
PLSの0.0016%程度とすることができるのである。
【0031】
ここで、
図2を参照して、本発明の発振漏れ光抑制効果についての行った検証方法について説明する。
上述の半導体レーザモジュール100とレーザ共振器3とを接続し励起光L
PMPを伝送する光ファイバ25の途中に1064nmの波長の光を全反射する膜をコーティングしたビームスプリッタ90を配置し、光ファイバ91を介してフォトディテクタ92によって発振漏れ光L
LEAKの強度を検出した。
【0032】
本発明に係る励起光透過発振漏れ光反射膜5を形成していない場合を比較例とし、コリメートレンズ26の平面部に励起光透過発振漏れ光反射膜5を形成した実施例1との比較によって、本発明の効果を検証した。
その結果、
図3Aに示すように、実施例1で検出された発振漏れ光L
LEAKの強度は、比較例で検出された1064nmの戻り光L
LEAKの強度の0.5%以下となっており、発振漏れ光L
LEAKの99.5%が励起光透過発振漏れ光反射膜5によって反射され、励起光源1への発振漏れ光L
LEAKが抑制できることが検証された。
【0033】
さらに、半導体レーザモジュール100に電流10.5A(光エネルギ81mJに相当)を
図3Bに示す条件で駆動し、実施例1と比較例とについて、耐久試験を行った。
その結果を
図3Cに示す。比較例においては、数時間程度で、半導体レーザモジュール100の出力が30%低下した。
一方、本発明の実施例1では、数十時間以上連続駆動しても、全く出力低下が見られなかった。
【0034】
耐久試験後の実施例1と比較例とに用いた半導体レーザモジュール100を確認したところ、
図4Aに示すように、本発明の実施例1では、いずれの発光エミッタも正常に作動したが、
図4Bに示すように、比較例では、特定位置の発光エミッタで損傷が確認された。
【0035】
図4Cに示すように、レーザ共振器3のエネルギ分布は、ガウス関数的な分布を示しつつ、二山のピークがあり、特定の範囲で高いエネルギ分布を示していることが判明した。
このエネルギ分布について横断面方向において特定のエネルギを超える範囲を半導体レーザモジュール100の発光エミッタの位置に投影させると、
図4Dに示すように、エネルギ密度が一定以上となる範囲と、発光エミッタの損傷しやすい位置とが一致していることが判明した。
このことから、本発明の励起光透過発振漏れ光反射膜5を戻り光L
LEAKのエネルギ密度の高い位置に限定的に設けても効果を発揮し得るものと考えられる。
【0036】
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、
図5F、
図5Gを参照して、本発明の他の実施形態について説明する。
以下の実施形態においては、前述の第1の実施形態と基本的な構成は同じで、本発明の要部である励起光透過発振漏れ光反射膜(5a〜5g)の配設位置のみを変化させたものである。
このため、前記実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、各実施形態における特徴的な部分にアルファベットa〜gの枝番を付したので、共通する部分についての説明を省略し、特徴的な部分のみを説明する。
また、第1の実施形態から第8の実施形態までのいずれか2つを適宜組み合わせて実施しても良い。
【0037】
第2の実施形態におけるレーザ点火装置7aでは、コリメートレンズ26aには励起光透過発振漏れ光反射膜5を設けず、レーザ共振器3aの入射側の端面に励起光透過発振漏れ光反射膜5aを設けてある。
このような構成においても、レーザ共振器3aから漏れる発振光L
PLSの強度の0.4%の発振漏れ光L
LEAKのさらに0.4%、即ち、発振光L
PLSの強度の0.0016%のみが励起光源側に伝播することになり、前記実施形態と同様の効果を発揮し得る。
【0038】
なお、前記第1の実施形態のようにコリメートレンズ26に励起光透過発振漏れ光反射膜5を設け、さらに、レーザ共振器3aの入射側の端面に重畳的に励起光透過発振漏れ光反射膜5aを設けても良い。
但し、励起光透過発振漏れ光反射膜5と励起光透過発振漏れ光反射膜5aとを重ねて設ければ、励起光源1に到達する発振漏れ光L
LEAKの強度はほとんど0に等しくなり、それ以上に重ねて励起光透過発振漏れ光反射膜5を設けても、却って励起光L
PMPの透過率T
PMPを低下させることになるので必要はない。
【0039】
第3の実施形態におけるレーザ点火装置7bでは、光ファイバ25bの出射面に励起光透過発振漏れ光反射膜5bを形成してある。
本実施形態においては、励起光透過発振漏れ光反射膜5bとレーザ共振器3との間で発振漏れ光L
LEAKが往復し、前記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0040】
第4の実施形態におけるレーザ点火装置7cでは、光ファイバ25cの入射側の端面に励起光透過発振漏れ光反射膜5cを形成してある。
本実施形態においては、励起光透過発振漏れ戻り光反射膜5cとレーザ共振器3との間で漏れ戻り光L
LEAKが往復し、前記実施形態と同様の効果を発揮する。
さらに、本実施形態及び以下に示す実施形態においては、光ファイバ25、25cには、共振器3から漏れた発振漏れ光L
LEAKが伝送されるので、
図2に示した発振漏れ光検出装置9を設けることによって、発振漏れ光L
LEAKの強度を検出し、その結果を、内燃機関における燃焼異常の検出等に利用することも可能となる。
【0041】
第5の実施形態におけるレーザ点火装置7dでは、コリメートレンズ23dの入射側の端面に励起光透過発振漏れ光反射膜5dを形成してある。
本実施形態においては、励起光透過発振漏れ光反射膜5dとレーザ共振器3との間で発振漏れ光L
LEAKが往復し、前記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0042】
第6の実施形態におけるレーザ点火装置7eでは、集束レンズ22eの入射側の端面に励起光透過発振漏れ光反射膜5eを形成してある。
本実施形態においては、励起光透過発振漏れ光反射膜5eとレーザ共振器3との間で発振漏れ光L
LEAKが往復し、前記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0043】
第7の実施形態におけるレーザ点火装置7fでは、コリメートレンズ21fの入射側の端面に励起光透過発振漏れ光反射膜5fを形成してある。
本実施形態においては、励起光透過発振漏れ光反射膜5fとレーザ共振器3との間で発振漏れ光L
LEAKが往復し、前記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0044】
第8の実施形態におけるレーザ点火装置7gでは、コリメートレンズ20gの入射側の端面に励起光透過発振漏れ光反射膜5gを形成してある。
本実施形態においては、励起光透過発振漏れ光光反射膜5gとレーザ共振器3との間で発振漏れ光L
LEAKが往復し、前記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0045】
図6を参照して、本発明のレーザ点火装置7、7a〜7gの全体概要について説明する 。レーザ点火装置7、7a〜7gは、内燃機関8の気筒毎に設けられ、エンジンヘッド81に固定した集光手段4と、上述の第1〜8の実施形態に示した、励起光源1、光学素子2(20〜26)、2a(20〜26a)〜2g(20g〜26)、レーザ共振器3、3aによって構成されている。
【0046】
集光手段4は、レーザ共振器3、3aから発振された発振光L
PLSを拡張して拡張光L
EXPを出光する発振光拡張レンズ40と、拡張光L
EXPを燃焼室80内の所定の集光点FPに集光する集光光L
FCSを出光する集光レンズ41と、集光レンズ41を燃焼室80の圧力、温度等から保護する保護ガラス42と、発振光拡張レンズ40、集光レンズ41、保護ガラス42をエンジンヘッド81に固定するためのハウジング43とによって構成されている。
レーザ共振器3、3aから発振された発振光L
PLSは集光手段4によって一旦、拡張された後、再度所定の集光点FPに集光されることで、エネルギ密度を極めて高くすることができ、燃焼室80内に導入された混合気の点火を行うことができる。
【0047】
本発明によれば、レーザ共振器3、3aと励起光透過発振漏れ戻り光反射膜5、5a〜5gとの間で、励起光源1への発振漏れ光L
LEAKの強度を極めて小さくできるので、励起光源1の発振漏れ光L
LEAKによる損傷を防止し、安定した着火を維持するレーザ点火装置7、7a〜7gを実現できる。