【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度経済産業省令「戦略的基盤技術高度化支援事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】インク7を所定の印刷パターンで版胴10に塗布し、版胴10に塗布されたインク7を中間転写体20に転写する。そして、中間転写体20を反転装置22で反転させ、中間転写体20の面のうちインク7が転写された面の端に円柱状の被印刷体5を載置した後、被印刷体5に印刷板32を被せる。そして、印刷板32を押圧させながら、被印刷体5が回転する向きにスライドさせる。すると、中間転写体20が被印刷体5に線接触しながら、中間転写体20のインク7が被印刷体5に転写され、精細な印刷が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来オフセット印刷機においては、いわゆる中間転写体として、基体よりも大型のオフセットドラムを用いているため、被印刷体の表面にうねりや起伏がある場合、あるいは被印刷体が平面や円柱状でない場合には、中間転写体(オフセットドラム)の導電性ペーストが塗布された面が、うねりや起伏の底の部分あるいは被印刷体の表面に十分に接触しないという現象が発生する。そして、その結果、中間転写体が接触していない部分に導電性ペーストが十分に塗布されず、不十分な印刷(配線パターン)となってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、印刷面にうねりや起伏があったり、被印刷体が平面や円柱状でない場合であったりしても高い品質の印刷が可能な印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0008】
上記「発明が解決しようとする課題」において述べた問題を解決するためになされた発明は、印刷面形成工程及び印刷工程により印刷を行うことを特徴とする印刷方法である。
印刷面形成工程は、機能性材料(7)を、板状の中間転写体(20)に塗布することにより所定の印刷面を形成する工程であり、印刷工程は、中間転写体(20)の面のうち、印刷面形成工程で機能性材料(7)を塗布した面を被印刷体(5)に線接触させつつ、中間転写体(20)から被印刷体(5)に機能性材料(7)を転写することにより印刷を行う工程である。
【0009】
このような印刷方法によれば、被印刷体(5)の印刷面にうねりや起伏がある場合、あるいは被印刷体(7)が平面や円柱状でない場合でも高い品質の印刷が可能である。
つまり、機能性材料(7)を用いて、印刷面形成工程により中間転写体(20)に所定の印刷面を形成した後、機能性材料(7)を被印刷体(5)に印刷する際、中間転写体(20)の機能性材料(7)が転写されている面が被印刷体(5)に線接触するようになっている。
【0010】
したがって、被印刷体(5)にうねりや起伏がある場合や被印刷体(5)が平面や円柱状でない場合(例えば円錐形状)であっても中間転写体(20)が被印刷体(5)に線接触して機能性材料(7)を被印刷体(5)に印刷していくので、被印刷体(5)のうねりや起伏の底の部分あるいは被印刷体(5)が平面や円柱状でない場合であっても、その表面に機能性材料(7)が印刷される。つまり、被印刷体(5)の印刷面にうねりや起伏がある場合、あるいは被印刷体(5)が平面や円柱状でない場合であっても高い品質の印刷が可能となる。
【0011】
なお、ここで「円柱状」とは、被印刷体(3)の中心軸に垂直な断面の円周部分が円形あることを意味しており、内部が中空の円筒形状であってもよい。
また、「所定の印刷面」とは、被印刷体(5)に印刷される印刷パターンを得るための文字や画像あるいは電子回路の配線パターン(配線部分と絶縁部分のパターン)などを意味している。
【0012】
ここで、印刷面形成工程において、中間転写体(20)に所定の印刷面を形成するには種々の方法が考えられるが、請求項2に記載のように、機能性材料(7)を中間転写体(20)に噴射する噴射手段(40)により所定の印刷面を形成するようにするとよい。
【0013】
このようにすると、機能性材料(7)を例えば液状にし、噴射手段(40)によって液滴噴射することで、中間転写体(20)に容易に所定の印刷面を形成することができる。
また、請求項3に記載のように、印刷面形成工程を、機能性材料(7)を、版胴(10)に塗布することにより、版胴(10)に所定の印刷面を形成する塗布工程と、塗布工程で前記版胴(10)に塗布した機能性材料(7)を板状の中間転写体(20)に転写する転写工程と、からなるようにしても、中間転写体(20)に容易に所定の印刷面を形成することができる。
【0014】
また、請求項4に記載のように、中間転写体(20)をPDMS製にすると、中間転写体(20)の表面の濡れ性が低くなり(つまり、撥水性や撥油性が高くなり)、画像パターンでない部分の表面に機能性材料(7)が残り難くなる。したがって、いわゆるエッジが立った精細な印刷が可能となる。
【0015】
ところで、機能性材料(7)としては、紙に印刷するためのインクなど種々のものが考えられるが、請求項5に記載のように、導電性ペーストであると、被印刷体(5)の表面に、電子回路などで必要とされる電気的に導電性を有する印刷パターンを印刷することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
(印刷機1の構成)
図1は、本発明が適用された印刷機1の概略の構成及び印刷の原理を示す図であり、印刷機1は、
図1に示すように、版胴10、機能性材料塗布ローラ12(以下、塗布ローラ12と呼ぶ)、中間転写体20、印刷部30を備えている。
【0018】
版胴10は、機能性材料7を印刷する形態(いわゆる印刷パターン)に塗布するための部品であり、アルミニウムなどの金属を円柱状に形成したものである。
塗布ローラ12は、機能性材料7を塗布するための部品であり、
図1に示すように、円柱状のローラであり、ローラを回転させることによってローラ表面の機能性材料7が印刷パターンとなるように、版胴10に塗布していく。
【0019】
中間転写体20は、版胴10に塗布された機能性材料7を転写するためのものであり、PDMS(Poly DiMethyl Siroxaneの略)を平板状に形成したものである。
【0020】
また、中間転写体20は、版胴10から機能性材料7を転写した後、転写面を反転させる(
図1では、機能性材料7の転写面を下面から上面に反転させる)反転装置22を有している。
【0021】
印刷部30は、中間転写体20の面のうち機能性材料7が転写された面を被印刷体5に線接触させ、中間転写体20表面の機能性材料7を被印刷体5に転写することにより印刷を行う部分であり、印刷板32及び図示しない移動機構を備えている。
【0022】
印刷板32は、PDMSの板材を平板状に形成したものであり、中間転写体20の上側に平行に配置されている。また、図示しない移動機構は、印刷板32を、被印刷体5に押圧させながら中間転写体20と平行に移動させる機構である。
【0023】
そして、円柱状や円錐形状の被印刷体5を中間転写体20の平面の端に配置し、印刷板32の平面の端が被印刷体5に接触するように、つまり、被印刷体5を中間転写体20と印刷板32で挟むようにする。
【0024】
その状態で、中間転写体20を固定し、印刷板32を被印刷体5に押し付けつつ、被印刷体5が回転するように中間転写体20と平行に移動させることにより、中間転写体20上の機能性材料7を被印刷体5に印刷できるようになっている。
【0025】
なお、「機能性材料」とは、紙などに文字や画像を印刷するためのインクや電子回路を形成するための導電性ペーストや絶縁ペーストあるいは酸化物半導体ペーストなど何らかの機能を有する材料を示している。
(印刷機1による印刷)
次に、
図2に基づき、印刷機1による印刷方法について説明する。
図2は、印刷機1による印刷方法の説明図である。なお、本実施形態では、機能性材料7としてインク7を用いる。
【0026】
図2(a)に示すように、塗布ローラ12の表面に所定の印刷パターンのインク7を塗布し、塗布ローラ12を版胴10に押し付けながら回転させることにより、所定の印刷パターンのインク7を版胴10に塗布する。
【0027】
その後、
図2(b)に示すように、版胴10を中間転写体20に押し付けて回転移動させることにより、版胴10から中間転写体20に所定のパターンのインク7を転写する。
さらに、
図2(c)に示すように、中間転写体20を反転装置22により反転させた後、中間転写体20のインク7を転写した平面の端(
図2(c)中右端)に被印刷体5を載置し、載置した被印刷体5を印刷板32の平面の端(
図2(c)中左端)で押さえる。
【0028】
そして、図示しない移動機構により、印刷板32で被印刷体5を押し下げつつ印刷板32を中間転写体20と平行に、中間転写体20と重なる向き(
図2中左向き)に移動させる。すると、中間転写体20の表面と被印刷体5とが線接触し、線接触した部分でインク7が中間転写体20から被印刷体5に転写され、印刷が行われる。
(印刷機1の特徴)
以上のような印刷機1及び印刷機1による印刷方法では、版胴10から中間転写体20にインク7を転写した後、インク7を被印刷体5に印刷する際、中間転写体20のインク7が転写されている面が被印刷体5に線接触する。
【0029】
したがって、被印刷体5にうねりや起伏あるいは、被印刷体5が平面や円柱状でなく円錐形状であっても中間転写体20が被印刷体5に線接触してインク7を被印刷体5に印刷していく。
【0030】
したがって、被印刷体5のうねりや起伏の底の部分、あるいは被印刷体5が平面や円柱状でない場合であっても、その表面に被印刷体5に機能性材料7が印刷される。つまり、被印刷体5の印刷面にうねりや起伏がある場合、あるいは被印刷体5が平面や円柱状でない場合であっても高い品質の印刷が可能となる。
【0031】
具体的に円筒状の被印刷体5に印刷を行った結果を
図3に示す。
図3(a)に示すように、PDMS製の平板状の中間転写体20に、インク7で蛇の目状の印刷パターンを形成し、その上に円筒状の被印刷体5を載せ、その上にPDMS製の平板状の印刷板32を被せる。
【0032】
そして、
図3(b)及び
図3(c)に示すように印刷板32を被印刷体5が回転する向きにスライドさせると、
図3(d)に示すように、蛇の目のパターンのインク7が中間転写体20から被印刷体5に印刷されることが分かる。
【0033】
また、
図4に示すように、被印刷体5が接着剤のボトルのように円錐形状のものであっても、被印刷体5が円筒状の場合(
図3参照)と同様に印刷ができることが分かる。
さらに、被印刷体5の表面に粘着性がある場合であっても、中間転写体20がPDMS製であれば、中間転写体20から被印刷体5に印刷を行う際、被印刷体5からインク7がPDMS製の印刷板32にインク7が再転写されることがなく、高品質・高精度の印刷を行うことができる。
【0034】
つまり、PDMS製の中間転写体20にインク7のような液状やゲル状の機能性材料が塗布されると、PDMSがインク7の液体成分を吸収し、インク7が乾燥状態となる。すると、中間転写体20に対するインク7の離型性が向上するため中間転写体20から被印刷体5にはインク7が容易に転写される。
【0035】
そして、被印刷体5に転写されたインク7は、乾燥状態であるので、印刷板32がPDMS性であっても、印刷板32には転写しない。つまり、被印刷体5のインク7が印刷板32に再転写することがないので、印刷パターンの印刷の質や精度が低下することがない。
[第2実施形態]
次に、
図5に基づき、第2実施形態の印刷機2について説明する。
図5は、第2実施形態における印刷機2の概略の構成を示す図である。なお、第2実施形態における印刷機2では、被印刷体5として、紙やプリント基板あるいはフレックス基板など表面が平らな平板状のものを想定しているが、表面が波状の平板や表面が曲面の被印刷体5、例えば、円柱状などのものであってもよい。
【0036】
第2実施形態における印刷機2は、
図5に示すように、第1実施形態における印刷機1と同様に、塗布ローラ12から版胴10に、所定の印刷パターンでインク7を塗布し、その後、版胴10からインク7を中間転写体20に転写する。そして、中間転写体20を反転装置22で反転させるようになっている。
【0037】
第1実施形態における印刷機1では、印刷部30が印刷板32と移動機構(図示せず)を備えていたが、第2実施形態における印刷機2では、印刷部30は、印刷ローラ34、保護板36及び印刷ローラ移動機構(図示せず)を備えている。
【0038】
印刷ローラ34は、保護板36を介して被印刷体5を押圧しつつ回転移動するローラであり、保護板36は、中間転写体20に載置された被印刷体5を保護するための、樹脂などの硬度の低い(柔らかい)板である。また、印刷ローラ移動機構は、印刷ローラ34を保護板36に押圧しつつ中間転写体20と平行に移動させる機構である。
【0039】
印刷する際には、中間転写体20の面のうち、インク7を転写した面に被印刷体5を載置し、さらに、その被印刷体5の上に保護板36を載置する。そして、保護板36の一端から他端までを円柱状の印刷ローラ34で押圧しつつ移動させるようになっている。
【0040】
このように、中間転写体20を被印刷体5に接触させ、被印刷体5の背面から印刷ローラ34で、被印刷体5を中間転写体20に押しつけることによって、被印刷体5と中間転写体20とが、一端から他端まで順次線接触することになり、実施形態1における印刷機1と同様に印刷を行うことができる。
[第3実施形態]
次に、
図6に基づき、第3実施形態の印刷機3について説明する。
図6は、第3実施形態における印刷機3の概略の構成を示す図である。
【0041】
第3実施形態における印刷機3では、中間転写体20に、液体のインク7をインクジェット装置40により噴射して所定の印刷面を形成するようになっている。中間転写体20の印刷面を形成した後は、第1実施形態の印刷機1あるいは第2実施形態の印刷機2と同様にして、中間転写体20から被印刷体5に印刷を行う。
【0042】
ここで、インクジェット装置40は、
図6に示すように、ヘッド42、インクボトル44、インク供給ライン46及び図示しない駆動部を備えている。
ヘッド42は、中間転写体20側に取り付けられた3つのノズル42a,42b,42cからそれぞれ、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色のインクが液滴状に噴射されるようになっている(
図6中ノズル上方の黒丸に噴射イメージを示す)。
【0043】
また、ヘッド42は、駆動装置(図示せず)により平板状の中間転写体20の面全体を走査できるようになっており、ヘッド42を走査させつつ、ノズル42a,42b,42cから3色のインクを噴射することにより、中間転写体20に印刷面を形成する。
【0044】
インクボトル44は、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色のインクがそれぞれ充填されたインクボトル44a,44b,44cからなっている。また、インクボトル44(44a,44b,44c)とヘッド42の間は、樹脂製のチューブであるインク供給ライン46(イエローインク用46a、マゼンタインク用46b、シアンインク用46c)で結合されており、各インクボトル44a,44b,44cから各色のインクがヘッド42に供給されるようになっている。
【0045】
また図示しない駆動装置は、いわゆるX−Yプリンタ(X−Yプロッタ)のように、平板状の中間転写体20の平面のXーY方向にヘッド42を移動させる公知の機構であるため、その説明を省略する。
【0046】
このように、中間転写体20に対して直接インク7を噴射することによって中間転写体20に印刷面を形成し、その後、第1実施形態の印刷機1や第2実施形態の印刷機2のように、中間転写体20の印刷面を押しつけて被印刷体5に印刷を行うようにしても、第1実施形態の印刷機1や第2実施形態の印刷機2と同様に印刷を行うことができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
(1)上記第1及び第2実施形態では、版胴10の材料をアルミニウムなどの金属としていたがFRP樹脂などの樹脂材料を用いてもよい。
(2)上記第1及び第2実施形態では、版胴10を円柱状としていたが、印刷の種類(平圧式印刷や円圧式印刷)によっては、平板や湾曲材であってもよい。
(3)上記第1及び第2実施形態では、円柱状の版胴10を用いた、いわゆるオフセット印刷(平版印刷)によって中間転写体20に印刷面を形成していたが、グラビア印刷などの凹版印刷、活版印刷やフレキソ印刷などの凸版印刷、スクリーン印刷などの孔版印刷、パッド印刷あるいは人の手書きによって中間転写体20に印刷面を形成してもよい。
【0047】
なお、凹版印刷、凸版印刷、孔版印刷及びパッド印刷などの印刷方法や印刷機は、その方法や構造等が公知であるため、説明を省略する。
(4)上記第1〜第3実施形態では、中間転写体20をPDMSで形成していたが、機能性材料7の種類によっては、シリコーン系の樹脂やアルミニウムなどの金属あるいは、FRP(Fiber Reinforced Plasticsの略)をドラム状に形成したものにシリコーンを積層したり、ドラム状のFRPにウレタン系樹脂を積層したり、表面をフッ素などでコーティングしたりしたものであってもよい。
(5)上記第1〜第3実施形態では、印刷のためにインク7を用いたが、インク7の代わりに、電子回路を形成するための導電性ペーストや絶縁ペーストなどの機能性材料を用いてもよい。
(6)上記第1〜第3実施形態では、反転装置22を用いて中間転写体20を反転させていたが、手動で反転させるようにしてもよい。
(7)第2実施形態では、円柱状の印刷ローラ34を用いたが、中間転写体20を被印刷体5に線接触させることができればよく、例えばブレード状のものであってもよい。
(8)第2実施形態では、被印刷体5を保護板36で覆って保護しつつ印刷ローラ34で押圧することによって印刷を行っていたが、被印刷体5の種類によっては(保護が不要であれば)、保護板36を用いないで、被印刷体5を印刷ローラ34で直接押圧するようにしてもよい。
(9)上記第3実施形態では、液体のインク7を用いて印刷を行ったが、インクジェット方式で噴射できるような液体状のものであれば、電子回路を形成するための導電性材料や絶縁材料などの機能性材料を用いてもよい。