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特開2015-176909基板吸着離脱機構、基板搬送装置及び真空装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-176909(P2015-176909A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】基板吸着離脱機構、基板搬送装置及び真空装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20150908BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-50497(P2014-50497)
(22)【出願日】2014年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(72)【発明者】
【氏名】前平 謙
(72)【発明者】
【氏名】嶽 良太
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA10
5F131AA23
5F131AA32
5F131BA19
5F131CA05
5F131CA09
5F131DA02
5F131DA33
5F131EA03
5F131EA14
5F131EA23
5F131EB46
5F131EB56
5F131EB58
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】

【課題】基板を粘着力によって保持する真空装置等において、基板を離脱させる際に基板に対する局所的な応力集中による基板の破損を防止するとともに、基板を離脱させる際に生ずる静電気によって基板上のデバイス部分に対する悪影響を防止する技術を提供する。
【解決手段】本発明の基板吸着離脱機構は、基板20を吸着する吸着面5aを一方側の面に有し、弾性材料からなる粘着性のシート状の吸着離脱部材3と、吸着離脱部材3の他方側の面の周縁部を固定して支持する支持部4と、支持部4の内側に配置され、吸着離脱部材3の他方側の面の被押圧面3bに対して接触又は離間可能な押圧面5aを有する押圧部5と、押圧部5を吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して接触又は離間する方向に移動させるための駆動機構6とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着する吸着面を一方側の面に有し、弾性材料からなる粘着性のシート状の吸着離脱部材と、
前記吸着離脱部材の他方側の面の周縁部を固定して支持する支持部と、
前記支持部の内側に配置され、当該吸着離脱部材の他方側の面の被押圧面に対して接触又は離間可能な押圧面を有する押圧部と、
前記押圧部を前記吸着離脱部材の被押圧面に対して接触又は離間する方向に移動させるための駆動機構とを備えた基板吸着離脱機構。
【請求項2】
前記吸着離脱部材の吸着面の前記基板に対する粘着力が、前記吸着離脱部材の被押圧面の前記押圧部の押圧面に対する粘着力より大きくなるように構成されている請求項1記載の基板吸着離脱機構。
【請求項3】
前記吸着離脱部材の吸着面の表面粗さが、前記吸着離脱部材の被押圧面の表面粗さより小さくなるように構成されている請求項2記載の基板吸着離脱機構。
【請求項4】
前記押圧部は、前記押圧面が、前記吸着離脱部材の被押圧面に対して平行となる位置と、前記吸着離脱部材の被押圧面に対して非平行となる位置との間で移動可能に構成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の基板吸着離脱機構。
【請求項5】
基板を台座面上に配置して搬送する搬送台と、
前記搬送台に設けられ、請求項1乃至4のいずれか1項記載の基板吸着離脱機構とを有し、
前記押圧部の押圧面が前記搬送台の台座面に対して面一の位置となるように構成されている基板搬送装置。
【請求項6】
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、請求項1乃至4のいずれか1項記載の基板吸着離脱機構とを有する真空装置。
【請求項7】
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、請求項5記載の基板搬送装置とを有する真空装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造工程、液晶ディスプレイ製造工程、プラズマディスプレイ製造工程等において、基板を搬送する際に粘着力によって基板を吸着し且つ離脱する技術に関する。
特に、例えばガラス基板等の非磁性体基板や、ガラスエポキシ樹脂等の実装基板用の絶縁性樹脂基板及び金属層の積層基板を搬送する際に粘着力によって基板を吸着し且つ離脱する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、例えば真空槽内において基板を粘着力によって保持部に吸着して種々の処理を行うものが知られている。
例えば、リング状の粘着面によって基板を吸着保持する一方で、基板を粘着面から剥離する際に、膜を変形させて基板に対して押しつけるものや、剛体部を基板に対して押し付けるものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、可撓性ゴムからなる粘着パッドを基板に押し付けて基板を保持する一方で、粘着パッドを加圧膨張させて基板から剥離するものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
しかし、このような従来技術では、基板を粘着面から剥離させる際に基板に対する局所的な応力集中によって基板の破損が生ずるという問題がある。
また、基板を粘着面から剥離させる際に発生する静電気によって、基板上のデバイス部分に対して悪影響を及ぼすという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3882004号公報
【特許文献2】特許第3917651号公報
【特許文献3】特開2012−204709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、基板を粘着力によって保持する真空装置等において、基板を離脱させる際に基板に対する局所的な応力集中による基板の破損を防止するとともに、基板を離脱させる際に生ずる静電気によって基板上のデバイス部分に対する悪影響を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明は、基板を吸着する吸着面を一方側の面に有し、弾性材料からなる粘着性のシート状の吸着離脱部材と、前記吸着離脱部材の他方側の面の周縁部を固定して支持する支持部と、前記支持部の内側に配置され、当該吸着離脱部材の他方側の面の被押圧面に対して接触又は離間可能な押圧面を有する押圧部と、前記押圧部を前記吸着離脱部材の被押圧面に対して接触又は離間する方向に移動させるための駆動機構とを備えた基板吸着離脱機構である。
本発明では、前記吸着離脱部材の吸着面の前記基板に対する粘着力が、前記吸着離脱部材の被押圧面の前記押圧部の押圧面に対する粘着力より大きくなるように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記吸着離脱部材の吸着面の表面粗さが、前記吸着離脱部材の被押圧面の表面粗さより小さくなるように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記押圧部は、前記押圧面が、前記吸着離脱部材の被押圧面に対して平行となる位置と、前記吸着離脱部材の被押圧面に対して非平行となる位置との間で移動可能に構成されている場合にも効果的である。
一方、本発明は、基板を台座面上に配置して搬送する搬送台と、前記搬送台に設けられ、上述したいずれかの基板吸着離脱機構とを有し、前記押圧部の押圧面が前記搬送台の台座面に対して面一の位置となるように構成されている基板搬送装置である。
また、本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置され、上述したいずれかの基板吸着離脱機構とを有する真空装置である。
また、本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置され、上述した基板搬送装置とを有する真空装置である。
【発明の効果】
【0007】
以上述べた本発明によれば、駆動機構を動作させて押圧部の押圧面を吸着離脱部材の被押圧面から剥離させた後、吸着離脱部材の吸着面に吸着された基板を吸着離脱部材から離脱させる際、吸着離脱部材の吸着面から基板の裏側面に対して与えられる剪断力は、基板の裏側面に吸着させた平面状の吸着面を基板の裏側面に対して直交する方向に剥離する従来技術と比べて非常に小さいことから、基板を基板吸着離脱機構から離脱させる際に吸着離脱部材から基板に対する局所的な応力集中は発生せず、その結果、基板の破損を防止することができる。
また、これにより、基板を基板吸着離脱機構から離脱させる際の摩擦力も従来技術と比べて非常に小さく静電気が殆ど発生しないことから、基板上のデバイス部分に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0008】
本発明において、吸着離脱部材の吸着面の基板に対する粘着力が、吸着離脱部材の被押圧面の押圧部の押圧面に対する粘着力より大きくなるように構成されている場合には、基板を吸着離脱部材の吸着面に吸着させた状態で、吸着離脱部材の被押圧面から押圧部の押圧面をより円滑に剥離させることができる。
【0009】
この場合、吸着離脱部材の吸着面の基板の裏側面に対する粘着力が、吸着離脱部材の被押圧面の押圧部の押圧面に対する粘着力より大きくなるようにするためには、例えば吸着離脱部材の吸着面の表面粗さ(例えば、平均表面粗さRa)が、吸着離脱部材の被押圧面の表面粗さより小さくなるように構成することにより容易に行うことができる。
【0010】
本発明において、押圧部の押圧面が、吸着離脱部材の被押圧面に対して平行となる位置と、吸着離脱部材の被押圧面に対して非平行となる位置との間で移動可能に構成されている場合には、基板を吸着離脱部材の吸着面に吸着させるとともに吸着離脱部材の被押圧面に対して平行にして押圧部の押圧面を吸着離脱部材の被押圧面に吸着させた状態で、押圧部の押圧面を吸着離脱部材の被押圧面に対して非平行となる位置に移動させることにより、押圧部の押圧面が、吸着離脱部材の被押圧面に対して一方の周縁部から他方の周縁部に向って徐々に剥離するため、この場合の剥離に要する力は、押圧面を吸着離脱部材の被押圧面に対して平行に保持した状態で剥離する場合と比較して非常に小さく、その結果、吸着離脱部材の被押圧面から押圧部の押圧面をより円滑に剥離させることができる。
【0011】
以上述べたように本発明によれば、大型基板を含む基板を基板吸着離脱機構から離脱させる際に、基板の破損を防止することができるとともに、基板上のデバイス部分に対して悪影響を及ぼすことがない真空装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る基板吸着離脱機構の実施の形態の内部構成を示す部分断面図
図2】(a)(b):本実施の形態における基板吸着動作を示す説明図
図3】(a)(b):本実施の形態における基板離脱動作を示す説明図
図4】(a)(b):本実施の形態における基板離脱動作を示す説明図
図5】(a):本発明に係る基板搬送装置の実施の形態を示す全体構成を示す斜視図、(b):同実施の形態の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る基板吸着離脱機構の実施の形態の内部構成を示す部分断面図である。
図1に示すように、本実施の形態の基板吸着離脱機構1は、例えば真空槽2内で用いられるもので、基板20を吸着するための吸着離脱部材3を有している。
【0014】
吸着離脱部材3は、粘着性を有する弾性材料(例えばシリコーンゴム)からなる同一の厚さのシート状の部材によって構成されている。
本明細書における「粘着性」は、当該粘着性を有する物質が基板等の部材の表面に接触した場合に、当該粘着性を有する物質と、当該基板等の部材の表面との間における分子間力によって生ずるものをいう。
【0015】
吸着離脱部材3は、例えば円板形状に形成されるもので、基板20を吸着する吸着面3aを一方側の面に有している。
基板吸着離脱機構1は、例えば吸着離脱部材3と同等の外径を有する円筒形状の支持部4を有し、この支持部4の一方の端部に上述した吸着離脱部材3の縁部が固定されて支持されるようになっている。
【0016】
この場合、吸着離脱部材3としては、支持部4に固定された状態において自重によって撓まないように、その材料、大きさ、形状、厚さ等を設定することが好ましい。
また、吸着離脱部材3の内部に導電性のフィラーを含有させることもできる。吸着離脱部材3の内部に導電性のフィラーを含有させることにより、放電時における放電効率を向上させることができる。
【0017】
支持部4の内側には、押圧部5が設けられている。
この押圧部5は、例えば支持部4の内径より小さい外径を有する円柱形状に形成され、その一方の面である押圧面5aを上述した吸着離脱部材3の他方側の面である被押圧面3bに対向するように配置されている。
【0018】
押圧部5の内部には、プロセス中における温度を制御するための冷却機構及び加熱機構(図示せず)を設けることもできる。
冷却機構としては、例えば水等の冷媒を循環させる構成のものを用いることができる。加熱機構としては、例えば抵抗加熱方式のヒータを用いることができる。
【0019】
押圧部5には、駆動機構6によって駆動される例えば棒状の駆動部材7が連結されている。
そして、駆動機構6によって駆動部材7を直線的に例えば鉛直方向に移動させることにより押圧部5が吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して接触又は離間するように構成されている。
【0020】
駆動部材7の例えば押圧部5との連結部分の近傍には、傾斜機構部7aが設けられている。
この傾斜機構部7aは、駆動部材7の移動方向に対して所定角度例えば鋭角に傾斜することによって、吸着離脱部材3の被押圧面3bに対する押圧部5の押圧面5aの角度を、平行である0度から非平行である例えば5度程度に設定する機能を有している。
なお、本実施の形態の場合、駆動部材7は、例えば真空槽2の外部に設けられた交流電源8に接続されている。
【0021】
本発明の場合、特に限定されることはないが、後述するように基板20の裏側面を吸着離脱部材3の吸着面3aに吸着させた状態で、吸着離脱部材3の被押圧面3bから押圧部5の押圧面5aをより円滑に剥離させる観点からは、吸着離脱部材3の吸着面3aの基板20の裏側面に対する粘着力が、吸着離脱部材3の被押圧面3bの押圧部5の押圧面5aに対する粘着力より大きくなるように構成することが好ましい。
【0022】
この場合、吸着離脱部材3の吸着面3aの基板20の裏側面に対する粘着力が、吸着離脱部材3の被押圧面3bの押圧部5の押圧面5aに対する粘着力より大きくなるようにするためには、例えば吸着離脱部材3の吸着面3aの表面粗さ(例えば、平均表面粗さRa)が、吸着離脱部材3の被押圧面3bの表面粗さより小さくなるように構成することにより容易に行うことができる。
【0023】
なお、基板吸着離脱機構1の上下関係を反転しても、基板20が吸着離脱部材3から離脱することがないように、基板20の裏側面と各吸着離脱部材3の吸着面3aとの間の粘着力を設定することが好ましい。
【0024】
図2(a)(b)は、本実施の形態における基板吸着動作を示す説明図である。
本実施の形態において、基板20を吸着して真空処理(例えばエッチング処理)を行う場合には、図示しない搬送ロボットを用いて例えば上述した真空槽2(ここでは図示せず)内に基板20を搬入し、図2(a)に示すように、昇降ピン10によって基板20の裏側面を支持して基板吸着離脱機構1の上方に配置する。
【0025】
そして、図2(b)に示すように、昇降ピン10を下降させ、各昇降ピン10の上端部を吸着離脱部材3の吸着面3aより下方の位置に配置する。これにより、基板20が吸着離脱部材3の吸着面3a上に載置される。
この動作と並行して駆動機構6を駆動することによって押圧部5を上昇させ、その押圧面5aを吸着離脱部材3の被押圧面3bに押圧して密着させる。
【0026】
その結果、基板20の自重によって吸着離脱部材3が弾性変形して押しつぶされ、その反力によって基板20の裏側面が吸着離脱部材3の吸着面3aに粘着保持される。この状態においては、押圧部5の押圧面5aの角度は吸着離脱部材3の被押圧面3bの角度と平行になっている。
【0027】
この場合、押圧部5を予め上昇させ、押圧面5aを吸着離脱部材3の被押圧面3bに押圧することにより吸着離脱部材3を変形させ、吸着面3aが若干基板20側に凸状となるようにすることもできる。
このように動作させることにより、基板20の裏側面を一層確実に吸着離脱部材3の吸着面3aに粘着保持させることができる。
【0028】
また、例えば基板吸着離脱機構1の下方から真空排気を行うことにより、基板20に対して下方側の力を作用させ、吸着離脱部材3の吸着面3aに対して基板20の裏側面を押し付けることもできる。
このような動作を行うことにより、基板20の裏側面を一層確実に吸着離脱部材3の吸着面3aに粘着保持させることができる。
【0029】
そして、この状態で、真空槽2内に放電用ガスを導入するとともに、上述した交流電源8(ここでは図示せず)から所定の交流電圧を印加することにより、基板20の表側面に対してエッチング処理を行う。
【0030】
本実施の形態では、押圧部5の押圧面5aが吸着離脱部材3の被押圧面3bに密着していることから、エッチング処理の際に、上述した吸着離脱部材3の冷却機構を動作させることにより、吸着離脱部材3を介して円滑に熱を逃がして基板20の冷却及び温度制御を行うことができる。
また、逆に、上述した吸着離脱部材3の加熱機構を動作させることにより、吸着離脱部材3を介して円滑に加熱を行い基板20の加熱及び温度制御を行うことができる。
【0031】
図3(a)(b)及び図4(a)(b)は、本実施の形態における基板離脱動作を示す説明図である。
本実施の形態において、基板吸着離脱機構1から基板20の離脱を行う場合には、傾斜機構部7aを動作させて押圧部5の押圧面5aの角度を吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して所定角度傾斜させるとともに、駆動機構6を動作させて押圧部5を若干下降させる。
【0032】
これにより、図3(a)に示すように、押圧部5の押圧面5aが吸着離脱部材3の被押圧面3bから剥離する。
この場合、押圧部5の押圧面5aは、吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して一方の周縁部から他方の周縁部に向って徐々に剥離することから、剥離に要する力は、押圧面5aを吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して平行に保持した状態で剥離する場合と比較して非常に小さく、吸着離脱部材3の被押圧面3bから押圧部5の押圧面5aをより円滑に剥離させることができる。
【0033】
その後、昇降ピン10を上昇させることにより基板20を上昇させ、吸着離脱部材3の吸着面3aから基板20を剥離する。
本実施の形態の場合、吸着離脱部材3が弾性変形可能な材料からなり、吸着離脱部材3の周縁部が支持部4に固定されているため、図3(b)に示すように、吸着離脱部材3の吸着面3aの周縁部3cと基板20の裏側面とが剥離する一方で、基板20の上昇により基板20の裏側面に吸着された吸着離脱部材3の中央部分が基板20側に凸状となるように弾性変形する。
【0034】
その後、図4(a)に示すように、基板20の上昇に伴い吸着離脱部材3の吸着面3aの中央部分に向って基板20の裏側面との剥離が進行し、基板20の裏側面と吸着離脱部材3の吸着面3aとの吸着面積が徐々に小さくなり、最終的には基板20の裏側面の全面が吸着離脱部材3の吸着面3aから剥離する。
【0035】
この基板剥離の際に吸着離脱部材3の吸着面3aから基板20の裏側面に対して与えられる剪断力は、基板20の裏側面に吸着させた平面状の吸着面3aを基板20の裏側面に対して直交する方向に剥離する場合と比べて非常に小さい。
【0036】
そして、基板20の裏側面が吸着離脱部材3の吸着面3aから完全に剥離した後は、図4(b)に示すように、吸着離脱部材3の弾性力によって吸着離脱部材3が元の平面シート形状に戻る。
【0037】
以上述べた本実施の形態によれば、吸着離脱部材3の吸着面3aに吸着された基板20を吸着離脱部材3から離脱させる際、吸着離脱部材3の吸着面3aから基板20の裏側面に対して与えられる剪断力は、基板20の裏側面に吸着させた平面状の吸着面3aを基板20の裏側面に対して直交する方向に剥離する従来技術と比べて非常に小さいことから、基板20を基板吸着離脱機構1から離脱させる際に吸着離脱部材3から基板20に対する局所的な応力集中は発生せず、その結果、基板20の破損を防止することができる。
【0038】
また、これにより、基板20を基板吸着離脱機構1から離脱させる際の摩擦力も従来技術と比べて非常に小さく静電気が殆ど発生しないことから、基板20上のデバイス部分に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0039】
さらに、本実施の形態では、押圧部5の押圧面5aが、吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して平行となる位置と、吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して非平行となる位置との間で移動可能に構成されていることから、基板20を吸着離脱部材3の吸着面3aに吸着させるとともに吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して平行にして押圧部5の押圧面5aを吸着離脱部材3の被押圧面3bに吸着させた状態で、押圧部5の押圧面5aを吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して非平行となる位置に移動させることにより、押圧部5の押圧面5aが、吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して一方の周縁部から他方の周縁部に向って徐々に剥離するため、この場合の剥離に要する力は、押圧面5aを吸着離脱部材3の被押圧面3bに対して平行に保持した状態で剥離する場合と比較して非常に小さく、その結果、吸着離脱部材3の被押圧面3bから押圧部5の押圧面5aをより円滑に剥離させることができる。
【0040】
図5(a)(b)は、本発明に係る基板搬送装置の実施の形態を示すもので、図5(a)は、全体構成を示す斜視図、図5(b)は、要部断面図である。
以下、上記実施の形態と対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図5(a)(b)に示すように、本実施の形態の基板搬送装置15は、大型基板30を搬送するためのもので、搬送台40に上述した基板吸着離脱機構1を複数有するものである。
【0041】
本実施の形態の搬送台40は、大型基板30の形状と対応するように形成された例えば矩形板状に形成され、その表面に形成された平面状の台座面41上に大型基板30を載置支持するように構成されている。
ここで、台座面41は、所定の平面度を保持した加工が施されており、例えばガラスからなる大型基板30を面方向に関して撓みのない状態で載置支持できるように構成されている。
【0042】
搬送台40には、上述した基板吸着離脱機構1の外径より若干大きな孔部からなる複数の収容部40aが設けられ、各収容部40a内に基板吸着離脱機構1が収容されている(図5(b)参照)。
ここで、各基板吸着離脱機構1は、吸着離脱部材3の吸着面3aが搬送台40の台座面41と面一となるように配置されている。
【0043】
そして、搬送台40の周囲に設けられた昇降ピン10によって大型基板30を昇降するように構成されている。
本実施の形態においては、昇降ピン10を下降させることにより、大型基板30が搬送台40の台座面41上に載置されるとともに、各基板吸着離脱機構1の吸着離脱部材3の吸着面3aと接触する。
【0044】
この場合、押圧部5を予め上昇させて押圧面5aを吸着離脱部材3の被押圧面3bに押圧することにより吸着離脱部材3を上方側に若干変形させ、その吸着面3aを搬送台40の台座面41の高さ位置より突き出るようにすることもできる。
このように動作させることにより、大型基板30の裏側面を一層確実に各基板吸着離脱機構1の吸着離脱部材3の吸着面3aに粘着保持させることができる。
なお、大型基板30を各基板吸着離脱機構1の吸着離脱部材3の吸着面3aから剥離する動作については、上記実施の形態の場合と同一の動作であり、その説明を省略する。
【0045】
このような構成を有する本実施の形態によれば、上記実施の形態と同様に、大型基板30を複数の基板吸着離脱機構1から離脱させる際に吸着離脱部材3から大型基板30に対する局所的な応力集中は発生せず、その結果、大型基板30の破損を防止することができる。
【0046】
また、これにより、大型基板30を各基板吸着離脱機構1から離脱させる際の摩擦力も従来技術と比べて非常に小さく静電気が殆ど発生しないことから、大型基板30上のデバイス部分に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0047】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施の形態では、吸着離脱部材の形状を円板形状とし、支持部の形状を円筒形状としたが、本発明はこれに限られず、例えば、吸着離脱部材の形状を矩形板形状とし、支持部の形状を角形筒形状とすることもできる。
【0048】
また、上記実施の形態では、基板を基板吸着離脱機構の吸着離脱部材上に載置して吸着させるようにしたが、本発明はこれに限られず、これらの上下関係を反転させた場合も含むものである。
また、基板を昇降させる機構として、上述した昇降ピンのほか基板を機械的に把持する機構を用いることもできる。
【0049】
さらに、上記実施の形態では、基板を吸着離脱部材の吸着面に吸着させた状態で、押圧部の押圧面を吸着離脱部材の被押圧面に対して平行となる位置から非平行となる位置に移動させて吸着離脱部材の被押圧面から押圧部の押圧面を剥離させるようにしたが、本発明はこれに限られず、吸着離脱部材の被押圧面の押圧部の押圧面に対する粘着力が、吸着離脱部材の吸着面の基板に対する粘着力より非常に小さい場合には、押圧部の押圧面を吸着離脱部材の被押圧面に対して平行にした状態で押圧部の押圧面の剥離を行うこともできる。
さらに、本発明は、真空中のみならず、大気中やガス中においても使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…基板吸着離脱機構
2…真空槽
3…吸着離脱部材
3a…吸着面
3b…被押圧面
4…支持部
5…押圧部
5a…押圧面
6…駆動機構
7…駆動部材
7a…傾斜機構部
10…昇降ピン
20…基板
図1
図2
図3
図4
図5