特開2015-178653(P2015-178653A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-178653スパッタリング装置及びスパッタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-178653(P2015-178653A)
(43)【公開日】2015年10月8日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置及びスパッタリング方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20150911BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20150911BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20150911BHJP
【FI】
   C23C14/34 T
   H01L21/285 S
   H01L21/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-56071(P2014-56071)
(22)【出願日】2014年3月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智保
【テーマコード(参考)】
4K029
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029AA29
4K029BA08
4K029BD02
4K029CA05
4K029CA13
4K029DA01
4K029DA04
4K029DA10
4K029DC28
4K029DC34
4K029DC39
4K029DE05
4K029EA04
4K029JA08
4M104BB04
4M104DD39
4M104DD40
4M104DD41
4M104HH13
4M104HH14
5F033HH11
5F033PP14
5F033PP21
5F033XX02
5F033XX04
(57)【要約】
【課題】ターゲットのスパッタ面から飛散する中性のスパッタ粒子の基板への入射を効果的に抑制できる構造を持つスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】処理室11と、処理室内にスパッタガスを導入するガス導入手段6と、処理室を臨むように設けられるターゲットTに電力投入するスパッタ電源E1とを備える。処理室が両端開口部Cs1,Cs2にターゲットと基板とが夫々配置される筒状体1で画成され、筒状体は、少なくとも一箇所の湾曲部12を有して処理室内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入してスパッタリングしたときにターゲットから飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板に到達しないように構成される。筒状体の周囲に、ターゲットと基板との間に筒状体の輪郭に対応する磁力線が通るように磁場を発生させる磁場発生手段5,E3を設けてイオン化したスパッタ粒子が基板に到達するように構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引きされる処理室と、処理室内にスパッタガスを導入するガス導入手段と、処理室を臨むように設けられるターゲットに電力投入するスパッタ電源と、を備えるスパッタリング装置において、
処理室が両端開口部にターゲットと処理すべき基板とが夫々配置される筒状体で画成され、筒状体は、少なくとも一箇所の湾曲部を有して処理室内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入してスパッタリングしたときにターゲットから飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板に到達しないように構成され、
筒状体の周囲に、ターゲットと基板との間に筒状体の輪郭に対応する磁力線が通るように磁場を発生させる磁場発生手段を設けてイオン化したスパッタ粒子が基板に到達するように構成したことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記筒状体はL字状の輪郭を有することを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記筒状体は、前記イオン化したスパッタ粒子を前記基板に向けて収束させる電位発生手段を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記電位発生手段は、前記筒状体の内面を覆うように設けた導電性の板状部材と、板状部材に正の電位を印加する電源とを備えることを特徴とする請求項3記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記基板の一方の面を開放して保持し、この基板を一定の回転速度で回転駆動するステージを更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のスパッタリング装置を用いたスパッタリング方法において、
磁場発生手段による磁場を発生させない磁場発生手段の稼働停止状態にて、真空引きされた処理室内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入してスパッタリングする第1工程と、ターゲットへの電力投入を維持したままスパッタガスの導入を停止する第2工程と、磁場発生手段を稼働させ、イオン化したスパッタ粒子を基板に到達させて基板の一方の面にイオン化したスパッタ粒子を付着、堆積させて成膜する第3工程とを含むことを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項7】
第3工程にて電位発生手段を稼働させ、前記イオン化したスパッタ粒子を前記基板に向けて収束させる工程を更に含むことを特徴とする請求項6記載のスパッタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置及びスパッタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパッタリング装置は、例えば半導体デバイスの製作工程で種々の薄膜を成膜するために用いられ、その中で、高アスペクト比の微細孔を備える処理すべき基板に対して銅膜等をボトムカバレッジよく成膜できる、SIS(Self-Ionized Sputtering)技術を利用したものが例えば特許文献1で知られている。
【0003】
このものは、真空引きされる処理室と、処理室内にスパッタガスを導入するガス導入手段と、処理室に設けた基板に対向配置されるターゲットに電力を投入するスパッタ電源とを備える。また、このものは、ターゲットのスパッタ面側を下とし、ターゲットの下方に磁場を発生させる磁石ユニットと、ターゲットのスパッタ面と、ターゲットに対向配置される基板との全面に亘って所定の間隔で垂直な磁力線が通るように垂直磁場を発生させる磁場発生手段とを更に備えている。
【0004】
スパッタリングによる成膜時、垂直な磁力線が通るように垂直磁場を発生させた状態でターゲットに例えば負の電位を持った所定電力を投入してこのターゲットをスパッタリングすると、スパッタ面から飛散したスパッタ粒子のイオン化が促進され、このイオン化したスパッタ粒子は正電荷を有するので、上記垂直磁場によりその方向が変えられ、基板に対して略垂直に入射して付着するようになる。この場合、上記従来例のものでは、スパッタリングの開始時、処理室に希ガスからなるスパッタガスを導入することでスパッタ面の下方空間にプラズマを発生させ、磁石ユニットによりスパッタ面の下方に発生させた磁場でプラズマが封じ込められると、スパッタガスの導入を停止し、低圧力下で自己放電させている(所謂自己保持放電)。
【0005】
これにより、ターゲット等で反射したスパッタガスが基板に入射することを抑制しつつ、スパッタ粒子のイオン化率を高め、垂直な成分を持って基板に入射するイオン化したスパッタ粒子の割合を増加させている。然し、上記従来例のものでは、主として、自己保持放電させるまでの間に、ターゲットのスパッタ面から大きな角度広がりを持って飛散する中性のスパッタ粒子がそのまま基板に付着する割合が多く、微細孔の形態によっては、ボトムカバレッジが劣化する(つまり、コンタクトホールなどの微細孔が塞がれてしまう)という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再表2009/150997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、ターゲットのスパッタ面から飛散する中性のスパッタ粒子の基板への入射を効果的に抑制できる構造を持つスパッタリング装置及びこれを用いたスパッタリング方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、真空引きされる処理室と、処理室内にスパッタガスを導入するガス導入手段と、処理室を臨むように設けられるターゲットに電力投入するスパッタ電源と、を備える本発明のスパッタリング装置は、処理室が両端開口部にターゲットと処理すべき基板とが夫々配置される筒状体で画成され、筒状体は、少なくとも一箇所の湾曲部を有して処理室内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入してスパッタリングしたときにターゲットから飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板に到達しないように構成され、筒状体の周囲に、ターゲットと基板との間に筒状体の輪郭に対応する磁力線が通るように磁場を発生させる磁場発生手段を設けてイオン化したスパッタ粒子が基板に到達するように構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、筒状体の両端開口部に処理すべき基板とターゲットとを夫々セットした後、処理室を真空引きする。処理室が所定圧力に到達すると、希ガスからなるスパッタガスを導入し、ターゲットに例えば負の電位を持った所定電力を投入すると、ターゲットと基板との間の空間にプラズマが発生し、ターゲットがスパッタリングされる。このとき、ターゲットのスパッタ面から飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板に到達しない位置関係となるように筒状体が湾曲部を有しているため、中性のスパッタ粒子の基板への入射を効果的に抑制することができる。
【0010】
そして、磁場発生手段によりターゲットと基板との間に筒状体の輪郭に対応する磁力線が通るように磁場を発生させると、スパッタ面から飛散したスパッタ粒子のイオン化が促進される一方で、基板にもこの基板の成膜面に対して垂直な磁力線が通るようになり、イオン化されたスパッタ粒子は、磁場に沿ってその方向が変えられて基板に対して略垂直に入射して付着、堆積して成膜される。その結果、処理すべき基板が高アスペクト比の微細孔を備えるような場合に、垂直な成分を持って基板に入射するイオン化したスパッタ粒子のみで成膜することができ、ボトムカバレッジを向上することができる。
【0011】
本発明においては、前記筒状体はL字状の輪郭を有することが好ましい。これにより、筒状体の簡単な構造で、ターゲットから飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板に到達しない構成を実現することができる。なお、本発明の湾曲部には、ターゲットのスパッタ面と基板の成膜面とが直交するように筒状体を90°屈曲させているような場合も含まれる。
【0012】
また、本発明においては、筒状体に、前記イオン化したスパッタ粒子を前記基板に向けて収束させる電位発生手段を更に備えることが好ましい。これにより、垂直な成分を持って基板に入射するイオン化したスパッタ粒子の総量が増加し、成膜レートが向上して量産性を高めることができる。この場合、電位発生手段として、前記筒状体の内面を覆うように設けた導電性の板状部材と、板状部材に正の電位を印加する電源とを備える構成を採用すればよい。
【0013】
ところで、筒状体が少なくとも一箇所の湾曲部を有することで、ターゲットと基板との間にこの筒状体の輪郭に対応する磁力線が通るように磁場を発生させたときに磁場勾配が生じていると、基板の膜厚分布の面内均一性が損なわれる虞がある。このような場合には、基板の一方の面を開放して保持し、この基板を一定の回転速度で回転駆動するステージを更に備えることが好ましい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、上記スパッタリング装置を用いた本発明のスパッタリング方法は、磁場発生手段による磁場を発生させない磁場発生手段の稼働停止状態にて、真空引きされた処理室内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入してスパッタリングする第1工程と、ターゲットへの電力投入を維持したままスパッタガスの導入を停止する第2工程と、磁場発生手段を稼働させ、イオン化したスパッタ粒子を基板に到達させて基板の一方の面にイオン化したスパッタ粒子を付着、堆積させて成膜する第3工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
これによれば、所謂自己保持放電するまでは磁場発生手段を稼働させないことで、ターゲットのスパッタ面から飛散するイオン化されたスパッタ粒子以外のものの基板への入射をより確実に防止することができる。この場合、第3工程にて電位発生手段を稼働させ、前記イオン化したスパッタ粒子を前記基板に向けて収束させる工程を更に含むことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のスパッタリング装置の構成を示す斜視図。
図2図1のスパッタリング装置の内部構造を示す模式断面図。
図3】本発明の実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、ターゲットTを銅製のものとし、処理すべき基板Wを一方の面に高アスペクト比の微細孔が複数形成されたものとし、この一方の面にCu膜を成膜する場合を例に本発明のスパッタリング装置の実施形態について説明する。以下において、「上」、「下」、「左」、「右」といった方向を示す用語は図2を基準とする。
【0018】
図1及び図2を参照して、SMは、所謂自己保持放電が可能なDCマグネトロンスパッタリング方式のスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは、処理室11を画成する真空チャンバとしての筒状体1を備える。なお、筒状体1の断面形状は円形に限らず、矩形等であってもよい。筒状体1の中央部には、ターゲットTのスパッタ面Tpから飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板Wに到達しない位置関係となるように単一の湾曲部12が形成されて略L字状の輪郭を有している。そして、筒状体1は、一端開口部13aが図1中右方を向くと共に他端開口部13aが下方を向く姿勢で支持台14で支持されている。
【0019】
筒状体1の一端開口部13aには、ターゲットTが処理室11を臨むようにカソードユニットCが取付けられている。カソードユニットCは、筒状体1の一端開口部13aを閉塞する蓋兼用の第1の支持体Cs1を備え、第1の支持体Cs1でターゲットTが支持される。なお、ターゲットTは、銅製のものに限定されるものではなく、処理すべき基板Wに形成しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択されるものであり、例えば、タングステン、タンタルやチタン製とすることもでき、公知の方法で所定形状に作製される。そして、スパッタ面Tpと背向する面にバッキングプレートBpをボンディングした状態で第1の支持体Cs1に絶縁体Isを介して取り付けられる。ターゲットTは、スパッタ電源としてのDC電源E1に接続され、負の電位を持つ所定電力(例えば、17〜20kW)が投入される。
【0020】
また、カソードユニットCは、第1の支持体Cs1の大気側(図2中、右側)に位置させて、ターゲットTのスパッタ面Tp左前方に磁界を形成する磁石ユニットMuを備える。磁石ユニットMuは、スパッタ面Tpと背向する側(ターゲットTの右側)に、ターゲット側の極性を互いに変えて列設した複数の磁石Mgで構成される。なお、磁石ユニットMu自体は、磁石の形状、個数やその配置を含め、公知の構造のものを用いることもできるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0021】
筒状体1の他端開口部13bには、筒状体1の他端開口部13bを閉塞する蓋兼用の第2の支持体Cs2が取り付けられ、第2の支持体Cs2でステージ2が支持され、ステージ2上に基板がその成膜面を上側に向けてセットされる。また、ステージ2には、第2の支持体Cs2の大気側(図2中、下側)に位置させて設けたモータ等の駆動手段3の駆動軸31が連結され、ステージ2、ひいては基板Wを所定回転数で回転できるようにしている。なお、ステージ2を図外の高周波電源に接続し、スパッタリング中、ステージ2、ひいては基板Wに所定のバイアス電位が印加できるようにしてもよい。
【0022】
筒状体1内には、内周面をその略全面に亘って覆うように、図示省略の絶縁体を介して導電性の板状部材4が着脱自在に設けられている。板状部材4には、電源としての他のDC電源E2に接続され、所定の正の電位(例えば、50〜150V)が印加されるようになっている。この場合、板状部材4は、中性及びイオン化されたスパッタ粒子が筒状体1内面に付着することを防止する防着板としての役割も果たす。本実施形態では、板状部材4とDC電源E2とが、イオン化したスパッタ粒子を基板Wに向けて収束させる電位発生手段を構成する。
【0023】
筒状体1の外周には、磁性材料からなるリング状のヨークに導線を巻回してなるコイル5が、筒状体1の全長に亘って所定間隔で複数設けられている。この場合、各コイル5は、筒状体1の外周面に立設した支柱51で支持されている。そして、各コイル5に公知の構造のDC電源E3から通電すると、ターゲットTと基板Wとの間に筒状体1の輪郭に対応し、かつ、基板Wの成膜面に対して垂直に磁力線Mfが通るように磁場が発生する。本実施形態では、各コイル5とDC電源E3とが磁場発生手段を構成する。なお、筒状体1の外周に設けるコイル5の個数や各コイル5相互の間隔等は、図2中に示す形態ものに限定されるものではなく、上記の如く磁場を発生させることができるものであれば、特に制限はなく、単一のコイルで構成することもできる。
【0024】
更に、筒状体1には、アルゴンガスなどの希ガス(スパッタガス)を導入するガス導入管6が接続され、その他端は、マスフローコントローラ61を介して図外のガス源に連通している。また、筒状体1には、ターボ分子ポンプやロータリポンプなどからなる真空ポンプ7に通じる排気管71が接続されている。
【0025】
以下に、上記スパッタリング装置SMを用いたスパッタリングによる成膜を説明する。先ず、ステージ2に基板Wをセットした後、真空ポンプ7を稼働させて処理室11内を所定圧力(例えば、10−5Pa)まで真空引きする。このとき、各コイル5には通電せず、磁場を発生させない状態とする(磁場発生手段の稼働停止状態)。処理室11の圧力が所定値に達すると、処理室11内にアルゴンガスを所定の流量で導入し、DC電源E1よりターゲットTに所定の負の電位を持った所定電力を投入する。これにより、処理室11内のターゲットTと基板Wとの間にプラズマが形成される。そして、主に磁石ユニットMuによる磁場で処理室11内にプラズマが封じ込められると、スパッタガスの導入を停止し、低圧力下で自己放電させる(所謂自己保持放電)。
【0026】
次に、DC電源E3によりコイル5に通電して磁場発生手段を稼働させ、ターゲットTと基板Wとの間に筒状体1の輪郭に対応し、かつ、基板Wの成膜面に対して垂直に磁力線Mfが通るように磁場を発生させると共に、DC電源E2により板状部材4に所定の正の電位(例えば、50〜150V)を印加する。このとき、ステージ2を所定回転数で回転させてもよい。これにより、イオン化したスパッタ粒子が、磁場に沿ってその方向が変えられ、かつ、基板Wに向けて収束されながら基板Wに対して略垂直に入射して付着、堆積して成膜される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、ターゲットTのスパッタ面Tpから飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板Wに到達しない位置関係となるように筒状体1が湾曲部を有し、しかも、自己保持放電するまでは各コイル5に通電しないため、ターゲットTのスパッタ面Tpから広い角度範囲も持って飛散する中性のスパッタ粒子は、殆ど基板Wに入射することがなく、イオン化されたスパッタ粒子のみが基板Wに対して略垂直に入射して付着、堆積して成膜される。その結果、基板Wが高アスペクト比の微細孔を備えるような場合にボトムカバレッジを向上することができる。このとき、電位発生手段4,E2を設けたことで基板Wに入射するイオン化したスパッタ粒子の総量が増加し、成膜レートが向上して量産性を高めることができる。また、成膜中、ステージ2を回転させることで、筒状体1が少なくとも一箇所の湾曲部12を有することで、ターゲットTと基板Wとの間に発生させた磁場に勾配が生じているような場合でも、基板Wの膜厚分布の面内均一性が損なわれることはない。
【0028】
以上の効果を確認するため、上記実施形態のスパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。ターゲットTとして組成比99.999%の銅製のものを用い、また、筒状体1として、ターゲットTのスパッタ面Tpと基板Wの成膜面との間の距離が920mmで、スパッタ面Tpから600mmの個所でL字状に湾曲させたものを用いた。スパッタリングの条件として、ターゲットTへの投入電力を18kW、スパッタガスとしてArを用い、スパッタによる成膜中、10sccmの流量でスパッタガスを導入した。そして、各コイル5への通電電流を0〜20Aの間で段階的に変化させて、基板Wへの成膜レートを測定し、その結果を図3に示す。
【0029】
これによれば、各コイル5への通電電流がゼロのとき(つまり、磁場発生手段の稼働停止状態のとき)、基板に銅が成膜されておらず、これにより、ターゲットTのスパッタ面Tpから飛散する中性のスパッタ粒子が直接基板に到達していないことが確認された。そして、各コイル5に通電すると、基板Wに銅が成膜されていき、その通電電流を増加させていくと、成膜レートが増加した。これにより、イオン化したスパッタ粒子のみを基板Wに到達させて成膜することができることが確認された。
【0030】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、筒状体1が単一の湾曲部12を有するものを例に説明したが、湾曲部12は複数あってもよく、また、本発明の湾曲部には、ターゲットTのスパッタ面Tpと基板Wの成膜面とが直交するように筒状体1を90°屈曲させているような場合も含む。なお、筒状体1が単一の湾曲部12を有する場合、ターゲットTと基板Wとが対面しないように湾曲させているだけでは不十分であり、広い角度範囲を持ってターゲットTから飛散する中性のスパッタ粒子が確実に基板Wに到達しないように、例えば、湾曲部12から両端開口部13a,13bまでの距離を適宜設計する必要がある。
【0031】
また、上記実施形態では、イオン化したスパッタ粒子を基板Wに向けて収束させる電位発生手段として、筒状体1内に設けた板状部材4と他のDC電源E2とで構成したものを例に説明したが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
SM…スパッタリング装置、1…筒状体、11…処理室、12…湾曲部、2…ステージ、4…板状部材(電位発生手段)、E2…DC電源(電位発生手段)、6…ガス導入管(ガス導入手段)、Mf…磁力線、T…ターゲット、Tp…スパッタ面、W…基板。
図1
図2
図3