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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-178682(P2015-178682A)
(43)【公開日】2015年10月8日
(54)【発明の名称】反応性スパッタ装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20150911BHJP
【FI】
   C23C14/35 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-117781(P2015-117781)
(22)【出願日】2015年6月10日
(62)【分割の表示】特願2014-547590(P2014-547590)の分割
【原出願日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-178469(P2013-178469)
(32)【優先日】2013年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】武井 応樹
(72)【発明者】
【氏名】磯部 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】清田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 重光
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA50
4K029BD01
4K029CA06
4K029DA10
4K029DC16
4K029DC46
(57)【要約】
【課題】化合物膜と化合物膜以外の他の部材との境界にて化合物膜の特性がばらつくことを抑える反応性スパッタ装置を提供する。
【解決手段】カソードユニット22は、走査部27が走査を開始する開始位置にて、走査方向におけるターゲット23の第1端部23e1と形成領域の第1端部との間に配置される第1遮蔽板28aを備える。ターゲット23の第1端部23e1は、走査部27が開始位置にあるとき、走査方向にて形成領域の第1端部に近いターゲット23の端部である。第1遮蔽板28aは、第1エロージョン領域E1からターゲット23が向かう方向に放出されるスパッタ粒子SPのうち、形成領域への入射角度θ1が30°以下であるスパッタ粒子SPを形成領域に到達させない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象物に形成すべき化合物膜の形成領域に向けてスパッタ粒子を放出するカソード装置を備え、
前記形成領域と対向する空間が対向領域であり、
前記カソード装置は、
エロージョン領域を前記対向領域で走査する走査部と、
前記エロージョン領域が形成され、走査方向における長さが前記対向領域よりも短いターゲットと、を備え、
前記エロージョン領域は、
前記ターゲットに形成される2つのエロージョン領域のうちの1つであり、
前記2つのエロージョン領域は、
前記走査部が走査を開始する開始位置にて、第1エロージョン領域と第2エロージョン領域とを含み、
前記第1エロージョン領域は、前記走査部が前記開始位置にあるとき、前記走査方向における前記形成領域の2つの端部のうち前記スパッタ粒子が先に到達する第1端部に近い領域であり、前記第2エロージョン領域は、前記形成領域の前記第1端部から遠い領域であり、
前記カソード装置は、
前記開始位置にて、前記走査方向における前記ターゲットの第1端部と前記形成領域の前記第1端部との間に配置される遮蔽部を備え、前記ターゲットの第1端部は、前記走査部が前記開始位置にあるとき、前記走査方向にて前記形成領域の前記第1端部に近い前記ターゲットの端部であり、
前記遮蔽部は、
前記第1エロージョン領域から前記ターゲットが向かう方向に放出される前記スパッタ粒子のうち、前記形成領域への入射角度が30°以下であるスパッタ粒子を前記形成領域に到達させない
反応性スパッタ装置。
【請求項2】
前記遮蔽部は、
2つの遮蔽部のうちの1つである第1遮蔽部であり、
前記開始位置にて、前記走査方向において前記形成領域から遠い前記ターゲットの端部である第2端部よりも前記形成領域から離れた位置に配置される遮蔽部が、第2遮蔽部であり、
前記第2遮蔽部は、
前記第2エロージョン領域から前記ターゲットが向かう方向とは反対側に向けて放出されるスパッタ粒子のうち、前記形成領域への入射角度が30°以下であるスパッタ粒子を前記形成領域に到達させない
請求項1に記載の反応性スパッタ装置。
【請求項3】
前記ターゲットは、
前記走査方向に沿って並ぶ2つのターゲットのうちの1つであり、
前記2つのターゲットは、
前記開始位置にて前記形成領域に近い第1ターゲットと、前記第1ターゲットよりも前記形成領域から遠い第2ターゲットと、を含み、
前記第2遮蔽部は、
前記第1ターゲットの前記第1エロージョン領域から前記ターゲットが向かう方向とは反対の方向に放出される前記スパッタ粒子のうち、前記形成領域への入射角度が9°以下であるスパッタ粒子を前記形成領域に到達させない
請求項2に記載の反応性スパッタ装置。
【請求項4】
前記カソード装置は、
前記ターゲットに対して前記形成領域とは反対側に配置され、前記ターゲットに前記エロージョン領域を形成する磁気回路と、
前記走査方向にて前記磁気回路を前記ターゲットの前記第1端部と第2端部との間で走査する磁気回路走査部と、を備え、
前記磁気回路走査部は、
前記開始位置にて、前記磁気回路を前記ターゲットの前記第1端部と前記走査方向にて重なる位置に配置する
請求項1から3のいずれか一項に記載の反応性スパッタ装置。
【請求項5】
前記走査部が、
前記ターゲットに前記対向領域を1回通過させるとき、
前記磁気回路走査部が、
前記磁気回路を前記ターゲットの前記第1端部から前記第2端部に向けて1回走査する
請求項4に記載の反応性スパッタ装置。
【請求項6】
前記カソード装置は、
前記走査方向にて前記2つのターゲットの間に配置される第3遮蔽部を備える
請求項3に記載の反応性スパッタ装置。
【請求項7】
前記カソード装置は、
2つのカソード装置のうちの1つであり、
前記2つのカソード装置では、各カソード装置の有する前記ターゲットの形成材料における主たる成分が相互に異なり、
前記2つのカソード装置のうちの一方のカソード装置を走査部が走査するとき、他方のカソード装置を走査部が走査しない
請求項1から6のいずれか一項に記載の反応性スパッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、大型基板に化合物膜を形成する反応性スパッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイは、表示素子を駆動する複数の薄膜トランジスタを備えている。薄膜トランジスタはチャネル層を有し、チャネル層の形成材料は、例えば、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)等の酸化物半導体である。近年では、チャネル層の形成対象である基板が大型化し、大型の基板に成膜するスパッタ装置として、例えば、特許文献1に記載のように、複数のターゲットが1つの方向に沿って並べられたスパッタ装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−41115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のスパッタ装置にて基板と向かい合う領域には、ターゲット表面そのものであるターゲット領域と、2つのターゲット表面に挟まれる領域である非ターゲット領域とが含まれる。ターゲット領域と非ターゲット領域とでは、生成されるプラズマの状態が相互に異なるため、基板においては、ターゲット領域と向かい合う部分と、非ターゲット領域と向かい合う部分とで、到達するスパッタ粒子の状態、例えば、到達するスパッタ粒子の量や、スパッタ粒子に含まれる酸素の量が異なる。結果として、基板に形成されたIGZO膜の面内では、IGZO膜に求められる電気的な特性がばらついてしまう。
【0005】
IGZO膜がチャネル層として用いられる場合には、ゲート酸化膜との界面を構成するIGZO膜の状態により、薄膜トランジスタの特性が大きく左右される。そのため、チャネル層であるIGZO膜にて上述のようなばらつきが生じていると、複数の薄膜トランジスタの各々の動作が基板の面内にてばらついてしまう。
【0006】
なお、こうした膜特性のばらつきは、薄膜の形成材料がIGZOである場合に限らず、基板と対向する領域に並べられた複数のエロージョン領域を用いたスパッタによって、1つの基板に反応性スパッタ法によって酸化膜や窒化膜等の化合物膜が形成される場合にも生じる。
本開示の技術は、化合物膜と化合物膜以外の他の部材との境界にて化合物膜の特性がばらつくことを抑える反応性スパッタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の一態様は、成膜対象物に形成すべき化合物膜の形成領域に向けてスパッタ粒子を放出するカソード装置を備える。前記形成領域と対向する空間が対向領域であり、前記カソード装置は、エロージョン領域を前記対向領域で走査する走査部と、前記エロージョン領域が形成され、走査方向における長さが前記対向領域よりも短いターゲットと、を備える。前記エロージョン領域は、前記ターゲットに形成される2つのエロージョン領域のうちの1つであり、前記2つのエロージョン領域は、前記走査部が走査を開始する開始位置にて、第1エロージョン領域と第2エロージョン領域と、を含む。前記第1エロージョン領域は、前記走査部が前記開始位置にあるとき、前記走査方向における前記形成領域の2つの端部のうち前記スパッタ粒子が先に到達する第
1端部に近い領域であり、前記第2エロージョン領域は、前記形成領域の前記第1端部から遠い領域である。前記カソード装置は、前記開始位置にて、前記走査方向における前記ターゲットの第1端部と前記形成領域の前記第1端部との間に配置される遮蔽部を備える。前記ターゲットの第1端部は、前記走査部が前記開始位置にあるとき、前記走査方向にて前記形成領域の前記第1端部に近い前記ターゲットの端部である。前記遮蔽部は、前記第1エロージョン領域から前記ターゲットが向かう方向に放出される前記スパッタ粒子のうち、前記形成領域への入射角度が30°以下であるスパッタ粒子を前記形成領域に到達させない。
【0008】
第1エロージョン領域から放出されるスパッタ粒子のうち、ターゲットの向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子は、第1エロージョン領域と隣り合う第2エロージョン領域に向けて飛行しない。そのため、第2エロージョン領域に向けて飛行する複数のスパッタ粒子と比べて、飛行経路が、プラズマ密度の高い領域を通らない。それゆえに、スパッタ粒子がプラズマに含まれる活性種と反応する確率が小さくなり、形成領域に形成された化合物膜にて単位厚さや単位面積あたりの反応ガスに含まれる原子の密度が小さくなる。結果として、化合物膜の単位厚さや単位面積あたりの組成にばらつきが生じる。
【0009】
一方、スパッタ粒子の入射角度が小さいほど、スパッタ粒子が形成領域に到達するまでのスパッタ粒子の飛行距離が大きくなるため、スパッタ粒子が、プラズマ密度の高い領域を超えた空間にて、スパッタガス等の活性種以外の粒子と衝突する回数が多くなる。これにより、化合物膜を構成するスパッタ粒子のエネルギーにばらつきが生じるため、形成された化合物膜にて膜密度にばらつきが生じる。結果として、入射角度の小さいスパッタ粒子が化合物膜に含まれるほど、化合物膜の膜特性にばらつきが生じる。
【0010】
この点で、本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様によれば、遮蔽部は、入射角度が30°以下であるスパッタ粒子を基板に到達させないため、化合物膜の単位厚さや単位面積での膜特性のばらつきが抑えられる。
【0011】
また、化合物膜の形成初期の分子層にて、膜の組成がばらつくことも抑えられ、結果として、化合物膜と化合物膜以外の他の膜との境界にて化合物膜の特性がばらつくことが抑えられる。
【0012】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様は、前記遮蔽部が、2つの遮蔽部のうちの1つである第1遮蔽部であり、前記開始位置にて、前記走査方向において前記形成領域から遠い前記ターゲットの端部である第2端部よりも前記形成領域から離れた位置に配置される遮蔽部が、第2遮蔽部である。前記第2遮蔽部は、前記第2エロージョン領域から前記ターゲットが向かう方向とは反対側に向けて放出されるスパッタ粒子のうち、前記形成領域への入射角度が30°以下であるスパッタ粒子を前記形成領域に到達させない。
【0013】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様によれば、第1エロージョン領域から放出されて最初に形成領域に到達するスパッタ粒子に続いて形成領域に到達するスパッタ粒子も、入射角度が30°よりも大きいスパッタ粒子に限られる。結果として、化合物膜が、入射角度の制限されたスパッタ粒子によって形成されるため、化合物膜の厚さ方向の全体で、単位厚さや単位面積での組成や膜密度のばらつきが抑えられる。結果として、膜特性のばらつきが抑えられる。
【0014】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様は、前記ターゲットが、前記走査方向に沿って並ぶ2つのターゲットのうちの1つであり、前記2つのターゲットは、前記開始位置にて前記形成領域に近い第1ターゲットと、前記第1ターゲットよりも前記形成
領域から遠い第2ターゲットと、を含む。前記第2遮蔽部は、前記第1ターゲットの前記第1エロージョン領域から前記ターゲットが向かう方向とは反対の方向に放出される前記スパッタ粒子のうち、前記形成領域への入射角度が9°以下であるスパッタ粒子を前記形成領域に到達させない。
【0015】
第1エロージョン領域から放出されるスパッタ粒子のうち、ターゲットの向かう方向とは反対の方向に放出される複数のスパッタ粒子は、第1ターゲットの第2エロージョン領域、および、第2ターゲットの各エロージョン領域に向けて飛行する。そのため、第1エロージョン領域から放出された複数のスパッタ粒子の飛行経路は、基板に到達するまでにプラズマ密度の高い領域、すなわち、他のエロージョン領域からスパッタ粒子の飛行する空間に延びる垂直磁場が0である領域を通る。
【0016】
しかしながら、入射角度が9°以下であるスパッタ粒子では、入射角度がより大きいスパッタ粒子と比べて、プラズマ密度の高い領域を超えてから形成領域までの飛行経路が長くなるため、プラズマ密度の高い領域を超えた空間にて、スパッタ粒子が、スパッガス等の活性種以外の粒子との衝突する回数が大きくなる。そのため、スパッタ粒子の有するエネルギーが小さくなり、化合物膜の膜密度が小さくなる。結果として、化合物膜の膜密度が理論密度から離れるため、化合物膜の膜特性が低くなる。
【0017】
この点で、本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様によれば、第2遮蔽部が、上述の入射角度が9°以下であるスパッタ粒子を形成領域に到達させないため、化合物膜の膜密度が小さくなることが抑えられる。
【0018】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様は、前記カソード装置が、前記ターゲットに対して前記形成領域とは反対側に配置され、前記ターゲットに前記エロージョン領域を形成する磁気回路と、前記走査方向にて前記磁気回路を前記ターゲットの前記第1端部と第2端部との間で走査する磁気回路走査部と、を備える。前記磁気回路走査部は、前記開始位置にて、前記磁気回路を前記ターゲットの前記第1端部と前記走査方向にて重なる位置に配置する。
【0019】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様によれば、磁気回路が第1端部と第2端部との間の他の位置に配置される場合と比べて、磁気回路の形成するエロージョンと、形成領域の第1端部との距離が最も小さくなる。そのため、形成領域の第1端部の近傍には、磁気回路が他の位置に配置される場合と比べて、入射角度がより大きいスパッタ粒子が到達する。結果として、化合物膜における組成や膜密度のばらつきがより抑えられる。
【0020】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様は、前記走査部が、前記ターゲットに前記対向領域を1回通過させるとき、前記磁気回路走査部が、前記磁気回路を前記ターゲットの前記第1端部から前記第2端部に向けて1回走査する。
【0021】
ターゲットが対向領域を1回通過して化合物膜を形成するとき、磁気回路が第1端部と第2端部との間を複数回行き来すると、ターゲットの走査方向に対する磁気回路の走査方向が変わるたびに、ターゲットに対する磁気回路の相対速度が変わる。磁気回路の相対速度が変わると、ターゲットの表面に形成されるプラズマの状態も変わるため、形成領域に向けて放出されるスパッタ粒子の数も変わる。結果として、ターゲットの走査方向において、化合物膜の厚さにばらつきが生じる。
【0022】
この点で、本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様によれば、ターゲットに対する磁気回路の相対速度が変わらないため、ターゲットの走査方向において、化合物
膜の厚さにばらつきが生じることが抑えられる。
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様は、前記カソード装置が、前記走査方向にて前記2つのターゲットの間に配置される第3遮蔽部を備える。
【0023】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様によれば、各ターゲットのエロージョン領域から放出されるスパッタ粒子のうち、形成領域に到達するスパッタ粒子の飛行経路の最大値が小さくなる。そのため、スパッタ粒子とプラズマ中の他の粒子との衝突する回数の最大値も小さくなる。それゆえに、スパッタ粒子の有するエネルギーの最小値が大きくなり、化合物膜の膜密度が小さくなることが抑えられる。
【0024】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様は、前記カソード装置が、2つのカソード装置のうちの1つであり、前記2つのカソード装置では、各カソード装置の有する前記ターゲットの形成材料における主たる成分が相互に異なる。前記2つのカソード装置のうち一方のカソード装置を走査部が走査するとき、他方のカソード装置を走査部が走査しない。
【0025】
本開示の技術における反応性スパッタ装置の他の態様によれば、2つの化合物膜から構成される積層膜において、各化合物膜における他の膜との境界の組成がばらつくことが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の技術における第1実施形態でのスパッタ装置の全体構成を基板とともに模式的に示す構成図である。
図2】スパッタチャンバの構成を模式的に示す構成図である。
図3】カソードユニットの構成を模式的に示す構成図である。
図4】スパッタチャンバの作用を説明するための作用図である。
図5】スパッタチャンバの作用を説明するための作用図である。
図6】スパッタチャンバの作用を説明するための作用図である。
図7】本開示の技術における第2実施形態でのカソードユニットの構成を模式的に示す構成図である。
図8】本開示の技術における第3実施形態でのスパッタチャンバの構成を模式的に示す構成図である。
図9】スパッタチャンバの作用を説明するための作用図である。
図10】スパッタチャンバの作用を説明するための作用図である。
図11】実施例における薄膜トランジスタの断面構造を示す断面図である。
図12】試験例1において形成領域に到達するスパッタ粒子の入射角度を説明するための図である。
図13】試験例2において形成領域に到達するスパッタ粒子の入射角度を説明するための図である。
図14】試験例3において形成領域に到達するスパッタ粒子の入射角度を説明するための図である。
図15】試験例4において形成領域に到達するスパッタ粒子の入射角度を説明するための図である。
図16】試験例1から試験例4における入射角度と閾値電圧の変化量の関係を示す表である。
図17】試験例における入射角度と膜密度との関係を示す表である。
図18】変形例におけるスパッタチャンバの構成を模式的に示す模式図である。
図19】変形例におけるカソードユニットの構成を模式的に示す模式図である。
図20】変形例におけるスパッタ装置の構成を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
図1から図6を参照してスパッタ装置の第1実施形態を説明する。以下では、スパッタ装置の全体構成、スパッタチャンバの構成、カソードユニットの構成、および、スパッタチャンバの作用を順に説明する。なお、以下では、基板に形成される化合物膜がインジウムガリウム亜鉛酸化物膜(IGZO膜)である場合を、スパッタ装置の一例として説明する。
【0028】
[スパッタ装置の全体構成]
図1を参照してスパッタ装置の全体構成を説明する。
図1に示されるように、スパッタ装置10では、搬出入チャンバ11、前処理チャンバ12、および、スパッタチャンバ13が、1つの方向である搬送方向に沿って配列されている。3つのチャンバの各々は、相互に隣り合う他のチャンバとゲートバルブ14によって連結されている。3つのチャンバの各々には、チャンバ内を排気する排気部15が連結され、3つのチャンバの各々は、排気部15の駆動によって個別に減圧される。3つのチャンバの各々の底面には、搬送方向に沿って延びる相互に平行な2つのレーンである成膜レーン16と回収レーン17とが敷かれている。
【0029】
成膜レーン16と回収レーン17とは、例えば、搬送方向に沿って延びるレールと、搬送方向に沿って配置された複数のローラーと、複数のローラーの各々を自転させる複数のモーター等から構成される。成膜レーン16は、スパッタ装置10の内部に搬入されたトレイTを搬出入チャンバ11からスパッタチャンバ13に向けて搬送し、回収レーン17は、スパッタチャンバ13の内部に搬入されたトレイTをスパッタチャンバ13から搬出入チャンバ11に向けて搬送する。
【0030】
トレイTには、紙面の手前に向かって延びる矩形状をなす基板Sが立てられた状態で固定されている。基板Sの幅は、例えば、搬送方向に沿って2200mmであり、紙面の手前に向かって2500mmである。
【0031】
搬出入チャンバ11は、スパッタ装置10の外部から搬入される成膜前の基板Sを前処理チャンバ12へ搬送し、前処理チャンバ12から搬入される成膜後の基板Sをスパッタ装置10の外部に搬出する。成膜前の基板Sが外部から搬出入チャンバ11へ搬入されるとき、また、成膜後の基板Sが搬出入チャンバ11から外部へ搬出されるとき、搬出入チャンバ11は内部を大気圧まで昇圧する。成膜前の基板Sが搬出入チャンバ11から前処理チャンバ12へ搬入されるとき、また、成膜後の基板Sが前処理チャンバ12から搬出入チャンバ11へ搬出されるとき、搬出入チャンバ11は前処理チャンバ12の内部と同じ程度にまで内部を減圧する。
【0032】
前処理チャンバ12は、搬出入チャンバ11から前処理チャンバ12へ搬入された成膜前の基板Sに、成膜に必要とされる処理として、例えば、加熱処理や洗浄処理等を行う。前処理チャンバ12は、搬出入チャンバ11から前処理チャンバ12へ搬出された基板Sをスパッタチャンバ13へ搬入する。また、前処理チャンバ12は、スパッタチャンバ13から前処理チャンバ12へ搬出された基板Sを搬出入チャンバ11へ搬出する。
【0033】
スパッタチャンバ13は、基板Sに向けてスパッタ粒子を放出するカソード装置18、および、成膜レーン16と回収レーン17との間に配置されたレーン変更部19を備えている。スパッタチャンバ13は、前処理チャンバ12からスパッタチャンバ13へ搬入された成膜前の基板Sに対し、カソード装置18を用いてIGZO膜を形成する。スパッタチャンバ13は、レーン変更部19を用いて成膜後のトレイTを成膜レーン16から回収レーン17へ移動させる。
【0034】
[スパッタチャンバの構成]
図2を参照してスパッタチャンバの構成をより詳しく説明する。
図2に示されるように、スパッタチャンバ13の成膜レーン16は、前処理チャンバ12からスパッタチャンバ13へ搬入された基板Sを搬送方向に沿って搬送し、基板Sへの薄膜の形成が開始されてから終了されるまでの間は、成膜レーン16の途中でトレイTの位置を固定する。トレイTの位置がトレイTを支持する支持部材によって固定されるとき、基板Sにおける搬送方向の縁の位置も固定される。
【0035】
スパッタチャンバ13のガス供給部21は、トレイTとカソード装置18との間の隙間に、スパッタに用いられるガスを供給する。ガス供給部21から供給されるガスには、アルゴンガス等のスパッタガスと酸素ガス等の反応ガスとが含まれる。
【0036】
カソード装置18は、1つのカソードユニット22を有し、カソードユニット22は、基板Sの表面Saと対向する平面に沿って配置されている。カソードユニット22では、ターゲット23、バッキングプレート24、および、磁気回路25が、基板Sに近い側からこの順に配置されている。
【0037】
ターゲット23は、基板Sと対向する平面に沿った平板状に形成され、紙面と直交する方向である高さ方向において基板Sよりも長い幅を有し、また、搬送方向において基板Sよりも小さい幅、例えば5分の1程度の幅を有する。ターゲット23の形成材料では主たる成分がIGZOであり、例えば、ターゲット23の形成材料のうちの95質量%がIGZOであり、好ましくは99質量%以上がIGZOである。
【0038】
バッキングプレート24は、基板Sと対向する平面に沿った平板状に形成され、ターゲット23にて基板Sと向かい合わない面に接合されている。バッキングプレート24には、直流電源26Dが接続している。直流電源26Dから供給される直流電力は、バッキングプレート24を通じてターゲット23に供給される。
【0039】
磁気回路25は、相互に異なる磁極を有した複数の磁性体によって構成され、ターゲット23の表面23aであって、基板Sと向かい合うターゲット23の側面にマグネトロン磁場を形成する。ターゲット23の表面23aに対する法線に沿った方向が法線方向であるとき、ターゲット23の表面23aと基板Sの表面Saとの間の隙間で生成されるプラズマの密度は、磁気回路25が形成するマグネトロン磁場のうち法線方向に沿った磁場成分が0(B⊥0)である部分において最も高くなる。以下では、磁気回路25の形成するマグネトロン磁場のうち、法線方向に沿った磁場成分が0である領域がプラズマ密度の高い領域である。
【0040】
カソード装置18は、カソードユニット22を1つの方向である走査方向に沿って移動させる走査部27を備える。走査方向は、搬送方向と平行な方向である。走査部27は、例えば、走査方向に沿って延びるレールと、カソードユニット22における高さ方向の2つの端部の各々に取り付けられたローラーと、ローラーの各々を自転させる複数のモーター等から構成される。走査部27のレールは、走査方向において基板Sよりも長い幅を有する。なお、走査部27は、走査方向に沿ってカソードユニット22を移動させることが可能であれば、他の構成として具体化されてもよい。
【0041】
走査部27は、カソードユニット22を走査方向に沿って移動させることによって、IGZO膜の形成領域R1と対向する空間である対向領域R2でカソードユニット22を走査する。成膜対象物の一例である基板Sにおける表面Saの全体が、IGZO膜の形成領域R1の一例である。走査部27は、カソード装置18がスパッタ粒子を放出してIGZ
O膜の形成を開始するとき、例えば、走査部27における走査方向の一端部である開始位置Stから、走査方向の他端部である終了位置Enに向けて走査方向に沿ってカソードユニット22を移動させる。これにより、走査部27は、カソードユニット22のターゲット23を形成領域R1と対向する対向領域R2で走査する。
【0042】
形成領域R1と対向領域R2とが対向する方向が対向方向である。対向方向にて、基板Sの表面Saと、ターゲット23の表面23aとの間の距離は、300mm以下であり、例えば、150mmである。
【0043】
カソードユニット22が開始位置Stに配置されるとき、走査方向での形成領域R1の2つの端部のうち、スパッタ粒子が先に到達する第1端部Re1と、走査方向にて第1端部Re1に近いターゲット23の第1端部23e1との間の走査方向に沿った距離D1が、150mm以上である。カソードユニット22が終了位置Enに位置するとき、走査方向での形成領域R1の2つの端部のうち、スパッタ粒子が後に到達する第2端部Re2と、走査方向にて、第2端部Re2に近いターゲット23の第2端部23e2との間の走査方向に沿った距離D1が、150mm以上である。
【0044】
なお、形成領域R1にIGZO膜が形成されるとき、走査部27は、カソードユニット22を開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って1回走査してもよい。あるいは、走査部27は、カソードユニット22を開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って走査した後、終了位置Enから開始位置Stに向けて走査方向に沿って走査してもよい。これにより、走査部27は、カソードユニット22を走査方向に沿って2回走査する。走査部27は、カソードユニット22を走査方向に沿って開始位置Stと終了位置Enとに交互に移動させることによって、カソードユニット22を開始位置Stと終了位置Enとの間で複数回走査してもよい。走査部27がカソードユニット22を走査する回数は、IGZO膜の厚さに合わせて変更され、カソードユニット22の走査回数以外の条件が同じであれば、IGZO膜の厚さが大きいほど、走査部27がカソードユニット22を走査する回数が大きい値に設定される。
【0045】
[カソードユニットの構成]
図3を参照してカソードユニット22の構成をより詳しく説明する。なお、図3には、図2にて説明された開始位置Stにカソードユニット22が配置された状態が示されている。
【0046】
図3に示されるように、基板Sの表面Saが配置される平面が仮想平面Pidであり、仮想平面Pidと直交する直線が法線Lvである。ターゲット23にて基板Sと向かい合う側面である表面23aは、仮想平面Pidと平行な1つの平面上に配置されている。
【0047】
ターゲット23の表面23a上にマグネトロン磁場Bを形成する磁気回路25は、法線Lvに沿った磁場成分が0(B⊥0)である2つの垂直磁場ゼロ領域をターゲット23の表面23aに形成する。ターゲット23の表面23aでは、主に2つの垂直磁場ゼロ領域からスパッタ粒子SPが放出される。2つのゼロ磁場領域のうち、走査方向にて形成領域R1の第1端部Re1に近い垂直磁場ゼロ領域が第1エロージョン領域E1であり、第1端部Re1から遠い垂直磁場ゼロ領域が第2エロージョン領域E2である。
【0048】
磁気回路25は、紙面と直交する高さ方向においてターゲット23と略等しい幅を有し、走査方向において例えばターゲット23の3分の1程度の幅を有する。
【0049】
カソードユニット22は、第1エロージョン領域E1および第2エロージョン領域E2から放出される複数のスパッタ粒子SPのうちの一部を基板Sに到達させない2つの遮蔽
板28a,28bを備えている。2つの遮蔽板28a,28bは、高さ方向においてターゲット23と略等しい幅を有し、走査方向に直交する幅方向において、ターゲット23の表面23aから仮想平面Pidに向けて突き出している。第1遮蔽板28aと第2遮蔽板28bとは、幅方向における突き出し幅が相互に等しい。第1遮蔽板28aが第1遮蔽部の一例であり、第2遮蔽板28bが第2遮蔽部の一例である。
【0050】
一方の遮蔽板である第1遮蔽板28aは、カソードユニット22が開始位置Stに配置されるとき、走査方向にて、形成領域R1におけるスパッタ粒子SPが先に到達する第1端部Re1と、ターゲット23における第1端部Re1に近い第1端部23e1との間に配置される。他方の遮蔽板である第2遮蔽板28bは、カソードユニット22が開始位置Stに位置するとき、走査方向にて、形成領域R1の第1端部Re1から遠いターゲット23の端部である第2端部23e2よりも形成領域R1から離れた位置に配置される。
【0051】
カソードユニット22は、ターゲット23に対する磁気回路25の位置を変える磁気回路走査部29を備える。磁気回路走査部29は、例えば、走査方向に沿って延びるレールと、磁気回路25における高さ方向の2つの端部の各々に取り付けられたローラーと、ローラーの各々を自転させる複数のモーター等から構成される。磁気回路走査部29のレールは、走査方向においてターゲット23と略等しい幅を有する。なお、磁気回路走査部29は、走査方向に沿ってカソードユニット22を移動させることが可能であれば、他の構成として具体化されてもよい。
【0052】
磁気回路走査部29は、走査方向にて、ターゲット23の第1端部23e1と磁気回路25とが重なる第1位置P1と、ターゲット23の第2端部23e2と磁気回路25とが重なる第2位置P2との間で、磁気回路25を走査する。磁気回路走査部29は、カソード装置18がスパッタ粒子SPを放出してIGZO膜の形成を開始するとき、磁気回路25を第1位置P1から第2位置P2に向けて移動させる。磁気回路走査部29は、走査部27がカソードユニット22を開始位置Stから終了位置Enに向けて移動させるとき、例えば、磁気回路25を第1位置P1から第2位置P2に向けて移動させる。すなわち、磁気回路25は、カソードユニット22が開始位置Stから終了位置Enへの移動を開始するとき、第1位置P1から第2位置P2への移動を開始し、カソードユニット22が終了位置Enに到達するとき、第2位置P2に到達する。このように、磁気回路走査部29は、走査方向に沿ってカソードユニット22の移動方向とは逆方向に磁気回路25を移動させる。
【0053】
走査部27がカソードユニット22を開始位置Stから終了位置Enに向けて走査して、ターゲット23に対向領域R2を1回通過させるとき、磁気回路走査部29は、磁気回路25を第1位置P1から第2位置P2に向けて1回走査することが好ましい。
【0054】
ターゲット23が対向領域R2を1回通過してIGZO膜を形成するとき、磁気回路25が第1位置P1と第2位置P2との間を複数回行き来すると、ターゲット23の走査方向に対する磁気回路25の走査方向が変わるたびに、ターゲット23に対する磁気回路25の相対速度が変わる。磁気回路25の相対速度が変わると、ターゲット23の表面に形成されるプラズマの状態も変わるため、形成領域R1に向けて放出されるスパッタ粒子SPの数も変わる。結果として、ターゲット23の走査方向において、IGZO膜の厚さにばらつきが生じる。
【0055】
そのため、走査部27がターゲット23に対向領域R2を1回通過させるとき、磁気回路走査部29が磁気回路25を第1位置P1から第2位置P2に向けて1回走査することにより、走査方向においてIGZO膜の厚さにばらつきが生じることが抑えられる。
【0056】
磁気回路走査部29が走査方向に沿って磁気回路25を移動させるとき、磁気回路25の形成する垂直磁場ゼロ領域も走査方向に沿って移動する。そのため、第1エロージョン領域E1および第2エロージョン領域E2も走査方向に沿ってターゲット23の表面23a上を移動する。また、走査部27が走査方向に沿ってカソードユニット22を対向領域R2にて走査するとき、走査部27は、第1エロージョン領域E1および第2エロージョン領域E2も対向領域R2にて走査する。
【0057】
垂直磁場ゼロ領域である各エロージョン領域から放出されたスパッタ粒子SPの飛行経路Fに沿った平面と、仮想平面Pid、すなわち、基板Sの表面Saとが形成する角度が、スパッタ粒子の入射角度θである。
【0058】
各遮蔽板28a,28bは、各エロージョン領域E1,E2から放出された複数のスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが所定の範囲に含まれるスパッタ粒子SPを形成領域R1である基板Sの表面Saに到達させない。なお、第1遮蔽板28aと第2遮蔽板28bとは、走査方向にて配置される位置が相互に異なるものの、基板Sに到達するスパッタ粒子SPの制限に関わる構成は共通する。そのため、以下では、第1遮蔽板28aを詳しく説明し、第2遮蔽板28bの説明を省略する。
【0059】
磁気回路25が第1位置P1に配置されるとき、走査方向における第1エロージョン領域E1と第1遮蔽板28aとの間の距離が、最も小さくなる。そのため、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、第1遮蔽板28aに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θ1の範囲が最も大きくなる。第1遮蔽板28aは、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、入射角度θ1が例えば60°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。
【0060】
一方、磁気回路25が第2位置P2に配置されるとき、走査方向における第1エロージョン領域E1と第1遮蔽板28aとの間の距離が、最も大きくなる。そのため、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、第1遮蔽板28aに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θ2の範囲が最も小さくなる。第1遮蔽板28aは、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、入射角度θ2が30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。
【0061】
すなわち、第1遮蔽板28aは、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出されるスパッタ粒子SPのうち、走査方向における磁気回路25の位置に関わらず、入射角度θが30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。
【0062】
ここで、第1エロージョン領域E1から放出されるスパッタ粒子SPのうち、カソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子SPは、第1エロージョン領域E1と隣り合う第2エロージョン領域E2に向けて飛行しない。そのため、飛行経路Fが、他のエロージョン領域からスパッタ粒子の飛行する空間に向けて高さ方向に沿って延びるB⊥0の領域を通らない。それゆえに、スパッタ粒子SPがプラズマに含まれる酸素の活性種と反応する確率が小さくなり、このスパッタ粒子SPで構成されたIGZO膜にて単位厚さや単位面積あたりの酸素の密度が小さくなる。これにより、IGZO膜の面内において膜の組成にばらつきが生じる。
【0063】
一方、スパッタ粒子SPの入射角度θが小さいほど、プラズマ密度の高い領域であるB⊥0の領域を超えてから、スパッタ粒子SPが基板Sに到達するまでの飛行距離が大きく
なる。そのため、スパッタ粒子SPが、プラズマ密度の高い領域であるB⊥0の領域を超えた空間にて、スパッタガス等の活性種以外の粒子と衝突する回数が多くなる。これにより、IGZO膜を構成するスパッタ粒子SPのエネルギーにばらつきが生じるため、形成されたIGZO膜にて膜密度にばらつきが生じる。結果として、入射角度θの小さいスパッタ粒子SPがIGZO膜に含まれるほど、化合物膜の膜特性にばらつきが生じる。
【0064】
この点で、第1遮蔽板28aは、入射角度θが30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させないため、酸素の含まれる量や膜密度が小さいIGZO膜が形成されにくくなる。結果として、IGZO膜の単位厚さや単位面積での組成や膜密度のばらつきが抑えられる。
【0065】
一方、第2遮蔽板28bは、終了位置Enから開始位置Stに向けてカソードユニット22が走査方向に沿って移動するとき、第2エロージョン領域E2からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。そのため、IGZO膜の単位厚さや単位面積での組成や膜密度のばらつきが抑えられる。
【0066】
[スパッタチャンバの作用]
図4から図6を参照してスパッタチャンバ13の作用を説明する。以下では、カソードユニット22が開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って移動する場合の作用をスパッタチャンバの作用の一例として説明する。
【0067】
図4に示されるように、カソード装置18がIGZO膜の形成領域R1に向けてスパッタ粒子SPの放出を開始するとき、カソードユニット22は、開始位置Stに配置され、磁気回路25は第1位置P1に配置される。このとき、走査方向における形成領域R1の2つの端部のうち、スパッタ粒子SPが先に到達する第1端部Re1と、走査方向におけるターゲット23の2つの端部のうち、形成領域R1に近い第1端部23e1との間の距離D1が150mm以上である。そのため、ターゲット23に直流電力が供給されたときにターゲット23から放出されたスパッタ粒子SPのほとんどが、スパッタ粒子SPの入射角度θに関わらず基板Sに到達しにくくなる。
【0068】
ここで、直流電力が供給されたときにターゲット23から放出されたスパッタ粒子SPは、直流電力が継続して供給されているときの所定の時刻にターゲット23から放出されたスパッタ粒子SPと比べて、スパッタ粒子SPの有するエネルギーや、酸素の活性種と反応確率等が異なる。そのため、直流電力が供給されたときのスパッタ粒子SPが基板Sに到達すると、それ以降に基板Sに到達したスパッタ粒子SPによって形成された部分とは異なる膜質のIGZO膜が形成されてしまう。結果として、IGZO膜の形成初期の分子層にて、膜の組成にばらつきが生じる。
【0069】
この点で、形成領域R1の第1端部Re1と、ターゲット23の第1端部23e1との間の距離D1が走査方向にて150mm以上であるため、IGZO膜の形成初期の分子層にて、膜の組成がばらつくことが抑えられる。
【0070】
そして、カソードユニット22が走査方向に沿って移動すると、まず、ターゲット23から放出されるスパッタ粒子SPのうち、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出されるスパッタ粒子SPが、基板Sに到達する。この際、基板Sに到達するスパッタ粒子SPは、第1遮蔽板28aによって入射角度θが30°よりも大きいスパッタ粒子SPに限られる。
【0071】
しかも、第1エロージョン領域E1は、第2エロージョン領域E2と比べて形成領域R
1からの距離が小さいため、基板Sの各部分に最初に到達するスパッタ粒子SPは、第1エロージョン領域E1から放出されたスパッタ粒子SPである確率が高い。そのため、IGZO膜の初期層は、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出され、かつ、入射角度θが30°よりも大きいスパッタ粒子SPである確率が高い。それゆえに、IGZO膜の初期層にて膜の組成がばらつくことが抑えられる。
【0072】
また、IGZO膜の形成が開始されるとき、磁気回路走査部29が、磁気回路25を第1位置P1に配置する。そのため、磁気回路25が第1位置P1と第2位置P2との間の他の位置に配置される場合と比べて、磁気回路25の形成する第1エロージョン領域E1と、第1遮蔽板28aとの間の走査方向における距離が最も小さくなる。それゆえに、第1遮蔽板28aに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θの範囲が最も大きくなり、形成領域R1の第1端部Re1の近傍には、磁気回路25が他の位置に配置される場合と比べて、入射角度θがより大きいスパッタ粒子SPが到達する。結果として、IGZO膜における組成のばらつきがより抑えられる。
【0073】
図5に示されるように、カソードユニット22が、形成領域R1と対向する対向領域R2を走査されるとき、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出されたスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが30°以下であるスパッタ粒子SPは、基板Sに到達しない。加えて、第2エロージョン領域E2からカソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に放出されたスパッタ粒子SPのうち、入射角度が30°以下であるスパッタ粒子SPも、第2遮蔽板28bのために基板Sに到達しない。
【0074】
これにより、第1エロージョン領域E1から放出されて、最初に基板Sに到達するスパッタ粒子SPに続いて基板Sに到達するスパッタ粒子SPも、入射角度θが30°よりも大きいスパッタ粒子SPに限られる。結果として、IGZO膜が、入射角度θの制限されたスパッタ粒子SPのみによって形成されるため、IGZO膜の厚さ方向の全体で、単位厚さや単位面積での組成のばらつきが抑えられる。
【0075】
図6に示されるように、カソードユニット22が終了位置Enに配置されるとき、走査方向における形成領域R1の2つの端部のうち、スパッタ粒子SPが後に到達する第2端部Re2と、ターゲット23の第2端部23e2との間の距離D1が走査方向にて150mm以上である。そのため、カソードユニット22が終了位置Enから開始位置Stに向けて走査されるとき、ターゲット23から放出されるスパッタ粒子SPのほとんどが基板Sに到達しない状態から、カソードユニット22の走査が開始される。それゆえに、形成領域R1の第2端部23e2に到達するスパッタ粒子SPが、形成領域R1における他の部位と異なることが抑えられる。結果として、IGZO膜の組成が走査方向にてばらつくことが抑えられる。
【0076】
また、カソードユニット22が終了位置Enに配置された状態で、ターゲット23への直流電力の供給が停止され、そして、カソードユニット22が終了位置に配置された状態で、直流電力の供給が再開されても、基板Sには、直流電力が再開されたときのスパッタ粒子SPがほとんど到達しない。そのため、IGZO膜の組成が単位厚さや単位面積でばらつくことが抑えられる。
【0077】
以上説明したように、第1実施形態のスパッタ装置によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)形成領域R1の第1端部Re1と、ターゲット23の第1端部23e1との間の距離D1が走査方向にて150mm以上であるため、IGZO膜の形成初期の分子層にて、膜の組成がばらつくことが抑えられる。結果として、IGZO膜とIGZO膜以外の他の部材との境界にてIGZO膜の特性がばらつくことが抑えられる。
【0078】
(2)第1遮蔽板28aは、開始位置Stから終了位置Enに向けてカソードユニット22が走査されるとき、第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出されるスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。そのため、形成領域R1に最初に到達するスパッタ粒子SPは入射角度θが30°よりも大きいスパッタ粒子SPに限られるため、IGZO膜の形成初期における単位厚さや単位面積での組成のばらつきが抑えられる。
【0079】
(3)第2遮蔽板28bは、第2エロージョン領域E2からカソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に放出されたスパッタ粒子SPのうち、入射角度が30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。そのため、第1エロージョン領域E1から放出されて、最初に基板Sに到達するスパッタ粒子SPに続いて基板Sに到達するスパッタ粒子SPも、入射角度θが30°よりも大きいスパッタ粒子SPに限られる。結果として、IGZO膜が、入射角度θの制限されたスパッタ粒子SPのみによって形成されるため、IGZO膜の厚さ方向の全体で、単位厚さや単位面積での組成のばらつきが抑えられる。
【0080】
(4)IGZO膜の形成が開始されるとき、磁気回路走査部29が、磁気回路25を第1位置P1に配置する。そのため、磁気回路25が第1位置P1と第2位置P2との間の他の位置に配置される場合と比べて、磁気回路25の形成する第1エロージョン領域E1と、第1遮蔽板28aとの間の走査方向における距離が最も小さくなる。それゆえに、第1遮蔽板28aに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θの範囲が最も大きくなり、形成領域R1の第1端部Re1の近傍には、磁気回路25が他の位置に配置される場合と比べて、入射角度θのより大きいスパッタ粒子SPが到達する。結果として、IGZO膜における組成のばらつきがより抑えられる。
【0081】
(5)ターゲット23が対向領域R2を1回通過するとき、磁気回路25が第1位置P1から第2位置P2に向けて1回走査されることで、ターゲット23に対する磁気回路の相対速度が変わらない。そのため、ターゲット23の走査方向において、化合物膜の厚さにばらつきが生じることが抑えられる。
【0082】
[第2実施形態]
図7を参照してスパッタ装置の第2実施形態を説明する。第2実施形態のスパッタ装置は、第1実施形態のスパッタ装置と比べて、カソードユニット22の有するターゲットの個数が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明する。なお、図7では、先に説明された図3に示される構成と同等の構成に、同一の符号が付されている。また、図7では、カソードユニット22が、開始位置Stに配置された状態が示されている。
【0083】
[カソードユニット22の構成]
図7を参照してカソードユニット22の構成を説明する。
図7に示されるように、カソードユニット22は、第1カソード22Aと第2カソード22Bとを有している。第1カソード22Aと第2カソード22Bとの各々は、ターゲット23、バッキングプレート24、磁気回路25、および、磁気回路走査部29を備えている。第1カソード22Aと第2カソード22Bとでは、各ユニットの有するターゲット23が、走査方向に沿って並べられ、2つのターゲット23の表面23aの各々は、仮想平面Pidと平行な同一の平面に含まれる。カソードユニット22が開始位置Stに配置されるとき、第1カソード22Aは、第2カソード22Bよりも走査方向にて形成領域R1に近い。また、第1カソード22Aと第2カソード22Bとでは、各バッキングプレート24が、1つの交流電源26Aに対して並列に接続している。
【0084】
カソードユニット22は、カソードユニット22を走査方向に移動させる走査部27を備え、走査部27は、第1カソード22Aと第2カソード22Bとが連結された状態で、カソードユニット22を走査方向に沿って移動させる。カソードユニット22は、第1遮蔽板28aと第2遮蔽板28bとを備え、第1遮蔽板28aは、カソードユニット22が開始位置Stに配置された状態で、形成領域R1の第1端部Re1と、第1カソード22Aの有するターゲット23の第1端部23e1との間に配置される。一方、第2遮蔽板28bは、カソードユニット22が開始位置Stに配置された状態で、第2カソード22Bの有するターゲット23の第2端部23e2よりも形成領域R1の第1端部Re1から離れた位置に配置される。
【0085】
各遮蔽板28a,28bは、第1カソード22Aおよび第2カソード22Bの各エロージョン領域E1,E2から放出された複数のスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが所定の範囲に含まれるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。なお、第1遮蔽板28aと第2遮蔽板28bとは、走査方向にて配置される位置が相互に異なるものの、基板Sに到達するスパッタ粒子SPの制限に関わる構成は共通する。そのため、以下では、第2遮蔽板28bを詳しく説明し、第1遮蔽板28aの説明を省略する。
【0086】
磁気回路25が第1位置P1に配置されるとき、走査方向における第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1と第2遮蔽板28bとの間の距離が、最も大きくなる。そのため、第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、第2遮蔽板28bに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θ3の範囲が最も小さくなる。第2遮蔽板28bは、第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、入射角度θ3が9°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。
【0087】
ここで、第1エロージョン領域E1から放出されるスパッタ粒子SPのうち、カソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に放出される複数のスパッタ粒子SPは、第1カソード22Aの第2エロージョン領域E2、および、第2カソード22Bの各エロージョン領域に向けて飛行する。そのため、第1エロージョン領域E1から放出された複数のスパッタ粒子SPの飛行経路Fは、基板Sに到達するまでにプラズマ密度の高い領域を通る。しかしながら、入射角度θ3が9°以下であるスパッタ粒子SPでは、入射角度θがより大きいスパッタ粒子SPと比べて、他のエロージョン領域から高さ方向に沿って延びるB⊥0の領域を超えてから、基板Sに到達するまでの飛行距離が長くなる。そのため、プラズマ密度の高い領域であるB⊥0の領域を超えた空間にて、スパッタ粒子SPがスパッタガス等の活性種以外の粒子との衝突する回数が大きくなる。それゆえに、スパッタ粒子SPの有するエネルギーが小さくなり、入射角度θの小さいスパッタ粒子SPによって形成されたIGZO膜では、膜密度が小さくなる。結果として、IGZO膜の膜密度が理論密度から離れるため、IGZO膜の膜特性が低くなる。
【0088】
なお、第2遮蔽板28bは、第2カソード22Bの磁気回路25が第1位置P1に配置されるとき、第1実施形態における第2遮蔽板28bと同様、第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2から放出される複数のスパッタ粒子SPの一部を基板Sに到達させない。すなわち、第2遮蔽板28bは、第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2からカソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に放出されるスパッタ粒子SPのうち、入射角度θ2が30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。そのため、IGZO膜の単位厚さや単位面積での組成のばらつきが抑えられる。
【0089】
一方、2つの磁気回路25の各々が第2位置P2に配置されるとき、走査方向における第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2と第1遮蔽板28aとの間の距離が、最
も大きくなる。そのため、第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子のうち、第1遮蔽板28aに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θ3の範囲が最も小さくなる。すなわち、第1遮蔽板28aは、第2遮蔽板28bと同様、第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子のうち、入射角度θ3が9°以下であるスパッタ粒子を基板Sに到達させない。
【0090】
また、第1遮蔽板28aは、第1カソード22Aの磁気回路25が第2位置P2に配置されるとき、第1実施形態における第1遮蔽板28aと同様、第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1から放出される複数のスパッタ粒子SPの一部を基板Sに到達させない。すなわち、第1遮蔽板28aは、第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向に放出されるスパッタ粒子SPのうち、入射角度θ2が30°以下であるスパッタ粒子SPを基板Sに到達させない。
【0091】
以上説明したように、第2実施形態のスパッタ装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(6)第1遮蔽板28aおよび第2遮蔽板28bが、入射角度が9°以下であるスパッタ粒子を形成領域に到達させないため、IGZO膜の膜密度が小さくなることが抑えられる。
【0092】
[第3実施形態]
図8から図10を参照してスパッタ装置の第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態のスパッタ装置は、第1実施形態のスパッタ装置と比べて、スパッタチャンバ13の備えるカソードユニットの個数が異なる。そのため、以下ではこうした相違点を説明する。
【0093】
[スパッタチャンバ13の構成]
図8を参照してスパッタチャンバ13の構成を説明する。なお、図8では、先に説明された図3と同等の構成に同一の符号が付されている。
図8に示されるように、カソード装置18は、第1ユニット31と第2ユニット32とを備えている。第1ユニット31および第2ユニット32は、開始位置Stに配置された状態で、走査方向にて形成領域R1の第1端部Re1に近い側からこの順に並んでいる。第1ユニット31および第2ユニット32の各々は、ターゲット23、バッキングプレート24、磁気回路25、直流電源26D、第1遮蔽板28a、および、第2遮蔽板28bを備え、2つのカソードユニットでは、ターゲット23が、走査方向に沿って並んでいる。第1ユニット31および第2ユニット32は、1つの走査部27によって、走査方向に沿って対向領域R2を個別に走査される。なお、第1ユニット31および第2ユニット32の各々は、第1実施形態のカソードユニット22と同様、磁気回路走査部29も備えている。
【0094】
第1ユニット31と第2ユニット32とでは、各々が有するターゲット23の形成材料にて主たる成分が相互に異なる。第1ユニット31は、例えば、主たる成分が酸化シリコンであるターゲット23を有し、第2ユニット32は、例えば、主たる成分が酸化ニオブであるターゲット23を有している。なお、各ターゲット23では、例えば、形成材料のうちの95質量%が酸化シリコンあるいは酸化ニオブであり、好ましくは99質量%以上が酸化シリコンもしくは酸化ニオブである。
【0095】
第1ユニット31および第2ユニット32が開始位置Stに配置されるとき、形成領域R1の第1端部Re1と、第1ユニット31が有するターゲット23の第1端部23e1との間の距離は、150mm以上である。
【0096】
[スパッタチャンバ13の作用]
図8から図10を参照してスパッタチャンバ13の構成を説明する。なお、以下では、形成領域R1である基板Sの表面Saに酸化シリコン膜と酸化ニオブ膜との積層膜が形成される場合を、スパッタチャンバ13の作用の一例として説明する。
【0097】
図8に示されるように、カソード装置18が積層膜の形成を開始するとき、開始位置Stに配置された第1ユニット31が、スパッタ粒子SPの放出を開始する。このとき、走査方向における形成領域R1の第1端部Re1と、ターゲット23の第1端部23e1との間の距離D1が150mm以上である。そのため、ターゲット23に直流電力が供給されたとき、ターゲット23から放出されたスパッタ粒子SPのほとんどが、スパッタ粒子SPの入射角度θに関わらず基板Sに到達しにくくなる。それゆえに、酸化シリコン膜の形成初期の分子層にて、膜の組成がばらつくことが抑えられる。
【0098】
図9に示されるように、第1ユニット31が走査方向に沿って移動することにより、第1ユニット31のエロージョン領域が、形成領域R1と対向する対向領域R2を走査方向に沿って走査される。この際、基板Sに到達するスパッタ粒子SPは、第1遮蔽板28aおよび第2遮蔽板28bによって、入射角度θが30°よりも大きいスパッタ粒子SPに限られる。そのため、酸化シリコン膜の初期層にて、膜の組成がばらつきことが抑えられる。
【0099】
図10に示されるように、第1ユニット31が走査方向に沿って移動して終了位置Enに到達すると、開始位置Stに配置された第2ユニット32が、スパッタ粒子SPの放出を開始する。第1ユニット31が終了位置Enに配置されるとき、第1ユニット31が有するターゲット23の第2端部23e2と、形成領域R1の第2端部Re2との間の距離D1は、150mm以上である。なお、走査部27が、第1ユニット31を開始位置Stから終了位置Enに向けて走査する間にわたって、走査部27は、第2ユニット32を走査しない。
【0100】
第2ユニット32が、開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って移動する。これにより、第2ユニット32のエロージョン領域が、形成領域R1と対向する対向領域R2を走査方向に沿って走査される。この際、第1ユニット31と同様、基板Sに到達するスパッタ粒子SPは、第1遮蔽板28aおよび第2遮蔽板28bによって、入射角度θが30°よりも大きいスパッタ粒子SPに限られる。そのため、酸化ニオブ膜の初期層にて、膜の組成がばらつくことが抑えられる。なお、第2ユニット32が終了位置Enに配置されるとき、第2ユニット32が有するターゲット23の第2端部23e2と、形成領域R1の第2端部Re2との間の距離D1は、150mm以上である。また、走査部27が、第2ユニット32を開始位置Stから終了位置Enに向けて走査する間にわたって、走査部27は、第1ユニット31を走査しない。
【0101】
以上説明したように、第3実施形態のスパッタ装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(7)酸化シリコン膜と酸化ニオブ膜とから構成される積層膜において、酸化シリコン膜における基板Sとの境界の組成がばらつくことが抑えられ、酸化ニオブ膜における酸化シリコン膜との境界の組成がばらつくことが抑えられる。
【0102】
[試験例]
[薄膜トランジスタの特性]
図11から図16を参照して薄膜トランジスタの特性に関する試験例を説明する。なお、以下では、IGZO膜の形成条件、実施例のスパッタ装置10によって形成されたIGZO膜を有する薄膜トランジスタ、および、薄膜トランジスタでの閾値電圧を順に説明す
る。
【0103】
[IGZO膜の形成条件]
第1実施形態のスパッタ装置10によって、以下の条件を用いて基板Sの表面SaにIGZO膜が形成された。IGZO膜が形成されるとき、カソードユニット22が、開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って走査されることにより、カソードユニット22のエロージョン領域が、対向領域R2を1回走査された。このとき、磁気回路25も、カソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に沿って、第1位置P1から第2位置P2に向けて1回走査された。
なお、P型シリコン基板上に熱酸化膜である酸化シリコン膜が形成された積層体を基板Sとして用いた。
・直流電力 : 10W/cm
・アルゴンガス分圧 : 0.30Pa
・酸素ガス分圧 : 0.05Pa
・基板Sの温度 : 100℃
【0104】
[薄膜トランジスタの構成]
図11を参照して、上述の条件を用いて形成されたIGZO膜をチャネル層として有する薄膜トランジスタの構成を説明する。
図11に示されるように、薄膜トランジスタ40は、ゲート電極41、ゲート酸化膜42、および、チャネル層43を備え、ゲート電極41、ゲート酸化膜42、および、チャネル層43は、下側からこの順に積層されている。ゲート電極41は、例えば、P型のシリコンで構成された基板であり、ゲート酸化膜42は、ゲート電極41の熱酸化によって形成された酸化シリコン膜である。チャネル層43は、上述のスパッタ装置10を用いて形成されたIGZO膜であり、チャネル層43の厚さは、例えば、50nmである。
【0105】
チャネル層43上には、ソース電極44とドレイン電極45とが形成され、ソース電極44とドレイン電極45とは、例えばモリブデンで構成されている。ソース電極44とドレイン電極45との間の幅であるチャネル長Lは、例えば、0.1mmであり、ソース電極44およびドレイン電極45の各々における紙面と直交する方向の幅であるチャネル幅Wは、例えば、1mmである。
【0106】
[試験例1]
図12を参照して試験例1を説明する。
図12に示されるように、試験例1では、1つの側面がターゲットTGの表面TGsと向かい合う対向遮蔽板M1がスパッタチャンバ13の内部に位置する状態で、先に説明した条件を用いてIGZO膜が形成された。対向遮蔽板M1として、搬送方向における幅が、ターゲットTGの搬送方向における幅よりも大きく、かつ、高さ方向における幅が、ターゲットTGの高さ方向における幅と略等しい板部材が用いられた。なお、ターゲットTG、ターゲットTGの表面TGsに形成されるエロージョン領域E、および、対向遮蔽板M1の各々は、ターゲットTGの搬送方向における中央を通る仮想平面を対称面とする面対称に配置された。
【0107】
対向遮蔽板M1は、エロージョン領域Eから放出された複数のスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域とは搬送方向における反対側に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が所定の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。すなわち、対向遮蔽板M1は、最小値θ1mである0°以上、最大値θ1Mである30°以下の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。
【0108】
一方、対向遮蔽板M1は、エロージョン領域Eから放出された複数のスパッタ粒子のう
ち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が所定の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。すなわち、対向遮蔽板M1は、最小値θ2mである0°以上、最大値θ2Mである15°以下の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。
【0109】
[試験例2]
図13を参照して試験例2を説明する。
図13に示されるように、試験例1と同様、対向遮蔽板M1がスパッタチャンバ13の内部に位置する状態で、IGZO膜が形成された。ただし、試験例2では、試験例1とは異なり、対向遮蔽板M1として、搬送方向における幅が、ターゲットTGの搬送方向における幅よりも小さい板部材が用いられた。なお、ターゲットTG、ターゲットTGの表面TGsに形成されるエロージョン領域E、および、対向遮蔽板M1の各々は、上述の仮想平面を対称面とする面対称に配置された。
【0110】
対向遮蔽板M1は、エロージョン領域Eから放出された複数のスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域とは搬送方向における反対側に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が所定の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。すなわち、対向遮蔽板M1は、最小値θ1mである0°以上、最大値θ1Mである60°以下の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。
【0111】
一方、対向遮蔽板M1は、エロージョン領域Eから放出された複数のスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が所定の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。すなわち、対向遮蔽板M1は、最小値θ2mである0°以上、最大値θ2Mである21°以下の範囲に含まれるスパッタ粒子のみを形成領域に到達させた。
【0112】
[試験例3]
図14を参照して試験例3を説明する。
図14に示されるように、試験例2と同じ対向遮蔽板M1、および、ターゲットTGの搬送方向における2つの端部の各々に、高さ方向に延びる遮蔽板M2が位置する状態で、IGZO膜が形成された。なお、ターゲットTG、ターゲットTGの表面TGsに形成されるエロージョン領域E、対向遮蔽板M1、および、遮蔽板M2の各々は、上述の仮想平面を対称面とする面対称に配置された。
【0113】
各遮蔽板M2は、搬送方向における距離が近いエロージョン領域Eから放出された複数のスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域とは搬送方向の反対側に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が30°以下のスパッタ粒子を形成領域に到達させなかった。一方、各遮蔽板M2は、搬送方向における距離が近いエロージョン領域から放出された複数のスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が9°以下のスパッタ粒子を形成領域に到達させなかった。
【0114】
そのため、試験例3では、エロージョン領域Eから放出されるスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域とは搬送方向の反対側に向けて飛行するスパッタ粒子のうち、入射角度が以下の範囲であるスパッタ粒子が形成領域に到達した。
30°<入射角度θ≦60°
【0115】
一方、エロージョン領域Eから放出されるスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域に向けて飛行するスパッタ粒子のうち、入射角度が以下の範囲であるスパッタ粒子が形成領域に到達した。
9°<入射角度θ≦21°
【0116】
[試験例4]
図15を参照して試験例4を説明する。
図15に示されるように、試験例3と同様に2つの遮蔽板M2が位置する状態で、IGZO膜が形成された。ただし、試験例4では、遮蔽板M2として、幅方向における幅が試験例3の遮蔽板M2よりも大きい板部材が用いられた。なお、ターゲットTG、ターゲットTGの表面TGsに形成されるエロージョン領域E、および、遮蔽板M2の各々は、上述の仮想平面を対称面とする面対称に配置された。
【0117】
各遮蔽板M2は、搬送方向における距離が近いエロージョン領域Eから放出された複数のスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域とは搬送方向の反対側に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が60°以下のスパッタ粒子を形成領域に到達させなかった。一方、各遮蔽板M2は、搬送方向における距離が近いエロージョン領域から放出された複数のスパッタ粒子のうち、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域に向けて飛行するスパッタ粒子であり、かつ、入射角度が21°以下のスパッタ粒子を形成領域に到達させなかった。
【0118】
[薄膜トランジスタの特性と入射角度との関係]
図16を参照して、IGZO膜をチャネル層として有する薄膜トランジスタの特性と、IGZO膜が形成されるときのスパッタ粒子の入射角度との関係を説明する。
【0119】
先の図12から図15で説明された試験例1から試験例4の各々にて形成されたIGZO膜を用いて、先の図11で説明された複薄の薄膜トランジスタが作成された。各試験例のIGZO膜を有する複数の薄膜トランジスタに対して、例えば、ゲート−ソース間電圧が20Vであり、ドレイン−ソース間電圧が20Vである条件にて、60分にわたってバイアスストレステストが行われた。そして、各薄膜トランジスタについて、バイアスストレステストの後の閾値電圧Vが測定され、閾値電圧Vの変化量(ΔV)の平均値が算出された。なお、閾値電圧Vは、ドレイン電流が1E−9Aに到達するときのゲート−ソース間電圧である。
【0120】
図16に示されるように、試験例1の薄膜トランジスタでは、閾値電圧Vの変化量が5.5であり、試験例2の薄膜トランジスタでは、閾値電圧Vの変化量が5.1であることが認められた。試験例2の薄膜トランジスタでは、試験例1の薄膜トランジスタと比べて、IGZO膜が形成されるとき、形成領域に到達するスパッタ粒子の入射角度の最大値θ1M,θ2Mが大きいため、閾値電圧Vの変化量が小さくなることが認められた。
【0121】
これに対し、試験例3の薄膜トランジスタでは、閾値電圧Vの変化量が2.1であり、試験例2の薄膜トランジスタと比べて、閾値電圧Vの変化量が大幅に小さくなることが認められた。
【0122】
ここで、試験例2の薄膜トランジスタと、試験例3の薄膜トランジスタとでは、IGZO膜が形成されるときの入射角度の最大値θ1M,θ2Mが同じである一方、入射角度の最小値θ1m,θ2mが相互に異なる。そして、試験例3では、試験例2よりも入射角度の最小値θ1m,θ2mが大きい。そのため、IGZO膜が形成されるとき、入射角度の小さいスパッタ粒子が形成領域に到達しないことによって、IGZO膜をチャネル層として有する薄膜トランジスタにて、閾値電圧Vの変化量が小さくなるといえる。より詳しくは、複数のスパッタ粒子のうち、下記の条件を満たすスパッタ粒子が形成領域に到達しないことにより、閾値電圧Vの変化量が小さくなるといえる。
【0123】
(A)他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域とは搬送方向の反対側に飛行するスパッタ粒子であって、形成領域に対する入射角度が30°以下であるスパッタ粒子。
(B)他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域に向けて飛行するスパッタ粒子であって、形成領域に対する入射角度が9°以下であるスパッタ粒子。
【0124】
一方、試験例4の薄膜トランジスタでは、閾値電圧Vの変化量が1.9であり、試験例3の薄膜トランジスタと比べて、閾値電圧Vの変化量が小さくはなる。しかしながら、試験例3の薄膜トランジスタでの閾値電圧Vの変化量と試験例4の薄膜トランジスタでの閾値電圧Vの変化量との差は、試験例2の薄膜トランジスタでのVの変化量と試験例3の薄膜トランジスタでの閾値電圧Vの変化量との差よりも小さいことが認められた。このように、入射角度θの最小値θ1m,θ2mを試験例3よりも大きくしても、薄膜トランジスタでの閾値電圧Vの変化量は、大幅には小さくならないことが認められた。
【0125】
それゆえに、IGZO膜が形成されるとき、形成領域に到達するスパッタ粒子は、上述の(A)の条件、および、(B)の条件を満たしていることが、薄膜トランジスタでの閾値電圧Vの変化量を小さくする上で、重要であるといえる。すなわち、条件(A)および(B)を満たすスパッタ粒子によってIGZO膜が形成されることにより、ゲート酸化膜との界面を形成するIGZO膜の面内では、IGZO膜の組成におけるばらつきが抑えられるため、IGZO膜の半導体特性のばらつきも抑えられる。これにより、ゲート酸化膜42の絶縁性が保たれやすくなり、薄膜トランジスタにおける閾値電圧の変化量が抑えられるといえる。
【0126】
なお、(A)の条件を満たすスパッタ粒子は、(B)の条件を満たすスパッタ粒子とは異なり、他のエロージョン領域Eから延びるB⊥0の領域に向けて飛行しないため、プラズマ中に含まれる活性種と反応する確率が小さくなる。そのため、特に、(A)の条件を満たすスパッタ粒子が形成領域に到達しないことで、IGZO膜の組成や膜密度がばらつくことが抑えられる。
【0127】
[IGZO膜の膜密度]
図17を参照して試験例としてIGZO膜の膜密度に関する試験例を説明する。なお、図17には、IGZO膜の膜密度がX線反射率法を用いて測定された結果、および、IGZO膜でのインジウムとガリウムと亜鉛との原子数の比が1:1:1であるときの理論密度(g/cm)が示されている。
上述した試験例2の条件にて形成されたIGZO膜の膜密度と、上述した試験例3の条件にて形成されたIGZO膜の膜密度とが測定された。
【0128】
図17に示されるように、試験例2の膜密度が5.22g/cmであり、試験例3の膜密度が6.23g/cmであることが認められた。そして、試験例3の膜密度が、試験例2の膜密度に比べて、理論密度である6.38g/cmに近い値であることが認められた。このように、上述した(A)および(B)の条件を満たすスパッタ粒子SPを含む複数のスパッタ粒子SPによって形成されたIGZO膜よりも、(A)および(B)の条件を満たすスパッタ粒子SPを含まない複数のスパッタ粒子SPによって形成されたIGZO膜では、膜密度が高められること、および、膜密度がより理論密度に近い値になることが認められた。
【0129】
このように、上述の(A)および(B)の条件を満たすスパッタ粒子SP以外のスパッタ粒子SPによって形成されたIGZO膜では、他の部材との界面におけるIGZO膜の特性に加えて、IGZO膜の厚さ方向の全体にわたるIGZO膜の特性である膜密度も高められる。
【0130】
なお、上述した各実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・第1実施形態および第2実施形態では、ターゲット23の形成材料における主たる成分が、IGZO以外の酸化物半導体、例えば、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化インジウム、および、チタン酸ストロンチウム等であってもよい。
【0131】
・第1実施形態および第2実施形態では、ターゲット23の形成材料における主たる成分が、IGZO以外であってもよく、インジウムを含むIGZO以外の酸化物半導体、例えば、酸化インジウム亜鉛スズ(IZTO)、酸化インジウム亜鉛アンチモン(IZAO)、酸化インジウムスズ亜鉛(ITZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、及び、酸化インジウムアンチモン(IAO)等が用いられてもよい。なお、これらIGZO以外のインジウム含有酸化物半導体が薄膜トランジスタのチャネル層として用いられた場合であっても、形成領域R1に入射するスパッタ粒子SPの入射角度θを制限することによって、IGZO膜と同様の効果が得られることが本願発明者らによって認められている。
【0132】
・ターゲット23の形成材料における主たる成分は、IGZOに限らず、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、及び、酸化アルミニウム等の無機酸化物であってもよい。
【0133】
・ターゲット23の形成材料における主たる成分は、金属、金属化合物、及び、半導体等であってもよい。ターゲット23の形成材料における主たる成分に単体の金属や半導体が用いられる場合には、ターゲット23から放出されたスパッタ粒子SPと、反応ガスから生成されたプラズマとの反応によって、酸化物膜や窒化物膜等の化合物膜の形成が可能である。
【0134】
・第3実施形態のスパッタ装置が備えるスパッタチャンバ13は、形成領域R1へのスパッタ粒子SPの放出が開始されるとき、第1ユニット31と第2ユニット32との両方が開始位置Stに配置される構成でなくともよい。
【0135】
図18に示されるように、第1ユニット31が開始位置Stに配置され、第2ユニット32が終了位置Enに配置される構成でもよい。こうした構成では、第1ユニット31が開始位置Stに配置されるとき、第1ユニット31のターゲット23の第1端部23e1と、形成領域R1の第1端部Re1との間の走査方向における距離D1が、150mm以上であることが好ましい。一方、第2ユニット32が終了位置Enに配置されるとき、第2ユニット32のターゲット23の第2端部23e2と、形成領域R1の第2端部Re2との間の走査方向における距離D1が、150mm以上であることが好ましい。
【0136】
形成領域R1に積層体が形成されるとき、例えば、走査部27が、第1ユニット31を開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って移動させる。これにより、形成領域R1には、例えば、酸化シリコン膜が形成される。そして、走査部27が、第1ユニット31を終了位置Enから開始位置Stに向けて走査方向に沿って移動させる。このとき、第1ユニット31は、スパッタ粒子SPを形成領域R1に放出してもよいし、放出しなくともよい。次いで、走査部27が、第2ユニット32を終了位置Enから開始位置Stに向けて走査方向に沿って移動させる。これにより、形成領域R1には、例えば、酸化ニオブ膜が形成される。そして、走査部27が、第2ユニット32を開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って移動させる。このとき、第2ユニット32は、スパッタ粒子SPを形成領域R1に放出してもよいし、放出しなくともよい。
【0137】
なお、第1ユニット31および第2ユニット32の各々が、スパッタ粒子SPを放出しながら走査方向に沿って開始位置Stと終了位置Enとの間で移動する回数は、各ユニッ
トが形成する化合物膜の厚さに合わせて変更することができる。
【0138】
・スパッタ装置10は、1つのカソードユニット22を有する2つのスパッタチャンバ13を備える構成であってもよい。こうした構成では、各スパッタチャンバ13のカソードユニット22が、形成材料の主たる成分が相互に異なるターゲット23を備えることによって、基板Sの表面Saに2つの化合物膜から構成される積層体が形成される。なお、スパッタ装置10は、1つのカソードユニット22を有する3つ以上のスパッタチャンバ13を備え、かつ、各カソードユニット22の有するターゲット23の形成材料における主たる成分が相互に異なる構成でもよい。こうした構成によれば、基板Sの表面Saには、3つ以上の化合物膜から構成される積層体が形成される。
【0139】
・第3実施形態の第1ユニット31は、形成材料の主たる成分が酸化シリコン以外であるターゲット23を備えてもよいし、第2ユニット32は、形成材料の主たる成分が酸化ニオブ以外であるターゲット23を備えてもよい。いずれのターゲット23も、形成材料の主たる成分が金属、金属化合物、および、半導体等のいずれであってもよい。
【0140】
・第3実施形態のスパッタチャンバ13は、3つ以上のカソードユニット22を備える構成でもよく、各カソードユニット22の備えるターゲット23の形成材料における主たる成分は、相互に異なってもよいし、同じであってもよい。
【0141】
図19に示されるように、第2実施形態のカソードユニット22は、走査方向にて第1カソード22Aのターゲット23と、第2カソード22Bのターゲット23との間に配置される第3遮蔽板28cを備えてもよい。第3遮蔽板28cにおける幅方向の突き出し幅は、第1遮蔽板28aおよび第2遮蔽板28bと相互に異なってもよいし、同じであってもよい。第3遮蔽板28cが、第3遮蔽部の一例である。
【0142】
カソードユニット22が開始位置Stから終了位置Enに向けて走査方向に沿って移動するとき、走査方向における第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1と第3遮蔽板28cとの間の距離が、最も大きくなる。ただし、走査方向における第1エロージョン領域E1と第3遮蔽板28cとの距離は、第1エロージョン領域E1と、第2遮蔽板28bとの間の距離よりも小さい。そのため、第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1からカソードユニット22の向かう方向とは反対の方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、第3遮蔽板28cに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θ4の範囲は、9°よりも大きくなる。それゆえに、形成領域R1に到達する複数のスパッタ粒子SPにて、飛行経路Fの最大値が小さくなり、スパッタ粒子SPとプラズマ中の他の粒子との衝突する回数の最大値も小さくなる。結果として、スパッタ粒子SPの有するエネルギーの最小値が大きくなり、IGZO膜の膜密度が小さくなることが抑えられる。
【0143】
一方、2つの磁気回路25の各々が第2位置P2に配置されるとき、走査方向における第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2と第3遮蔽板28cとの間の距離が、最も大きくなる。ただし、走査方向における第2エロージョン領域E2と、第1遮蔽板28aとの間の距離よりも小さい。そのため、第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2からカソードユニット22の向かう方向に放出される複数のスパッタ粒子SPのうち、第3遮蔽板28cに衝突するスパッタ粒子SPの入射角度θの範囲は、9°よりも大きくなる。それゆえに、第3遮蔽板28cは、第2カソード22Bから放出されるスパッタ粒子SPに対しても、第1カソード22Aから放出されるスパッタ粒子SPと同等に作用する。
【0144】
・第1実施形態から第3実施形態では、磁気回路走査部29が、磁気回路25を走査方向に沿って第1位置P1から第2位置P2に向けて移動させる。これに限らず、磁気回路
走査部29は、磁気回路25を走査方向に沿って第2位置P2から第1位置P1に向けて移動させてもよい。この際、走査部27がターゲット23に対向領域R2を1回走査させるとき、磁気回路走査部29が磁気回路25を第2位置P2から第1位置P1に向けて1回走査することにより、上述の(5)に準じた効果を得ることは可能である。
【0145】
・磁気回路走査部29は、ターゲット23の第1端部23e1と第2端部23e2との間の一部を走査方向に沿って磁気回路25に走査させる構成でもよい。こうした構成では、走査方向における各エロージョン領域と各遮蔽部との間の距離における最大値が小さくなるため、突き出し幅のより小さい遮蔽板が、上述した各実施形態と同じ入射角度θのスパッタ粒子SPを形成領域R1に到達させない。
【0146】
・第1実施形態から第3実施形態では、カソードユニット22が磁気回路走査部29を備える。これに限らず、カソードユニット22は磁気回路走査部29を備えていなくともよい、すなわち、カソードユニット22にて、ターゲット23に対する各エロージョン領域の位置が固定された構成でもよい。こうした構成であっても、各遮蔽板28aが、入射角度θが30°以下のスパッタ粒子SPを形成領域R1に到達させない以上は、上述の(2)、(3)に準じた効果を得ることはできる。
【0147】
・第2実施形態のカソードユニット22では、第2遮蔽板28bが、第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1から放出されるスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが9°以下であるスパッタ粒子SPを形成領域R1に到達させてもよい。また、第1遮蔽板28aが、第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2から放出されるスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが9°以下であるスパッタ粒子SPを形成領域R1に到達させてもよい。こうした構成であっても、第1遮蔽板28aが、第1カソード22Aの第1エロージョン領域E1から放出されるスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが30°以下のスパッタ粒子SPを形成領域R1に到達させない以上は、上述の(2)に準じた効果を得ることはできる。また、第2遮蔽板28bが、第2カソード22Bの第2エロージョン領域E2から放出されるスパッタ粒子SPのうち、入射角度θが30°以下のスパッタ粒子SPを形成領域R1に到達させない以上は、上述した(3)に準じた効果を得ることはできる。
【0148】
・第1実施形態から第3実施形態では、第2遮蔽板28bが、走査方向にて第2遮蔽板28bに最も近いエロージョン領域から放出されるスパッタ粒子SPのうち、30°よりも小さい入射角度θのスパッタ粒子SPのみを形成領域R1に到達させない構成でもよい。こうした構成であっても、カソードユニット22が第2遮蔽板28bを備える以上、第2遮蔽板28bを備えていない構成と比べて、化合物膜における組成のばらつきを抑えることはできる。
【0149】
・第1遮蔽板28aの突き出し幅と第2遮蔽板28bの突き出し幅とが相互に等しくなくともよく、第1遮蔽板28aの突き出し幅が、第2遮蔽板28bの突き出し幅よりも小さくともよい。
【0150】
・第1実施形態から第3実施形態のカソードユニット22は、第2遮蔽板28bを備えていなくともよい。こうした構成であっても、第1遮蔽板28aを備えていれば、少なくとも形成領域R1に最初に到達するスパッタ粒子SPでの入射角度θは制限される。そのため、上述の(2)に準じた効果を得ることはできる。
【0151】
・第1実施形態から第3実施形態では、第1遮蔽板28aが、30°よりも小さい入射角度θのスパッタ粒子SPのみを形成領域R1に到達させない構成でもよい。こうした構成であっても、カソードユニット22が第1遮蔽板28aを備えている以上、上記(2)
に準じた効果を少なからず得ることはできる。
【0152】
・第1実施形態から第3実施形態では、カソードユニット22が終了位置Enに配置されるとき、形成領域R1の第2端部Re2と、走査方向での形成領域R1の第2端部Re2との距離が最も近いターゲット23の第2端部23e2との距離が、150mmでなくともよい。こうした構成であっても、カソードユニット22が開始位置Stに配置されるとき、形成領域R1の第1端部Re1と、走査方向での形成領域R1の第1端部Re1との距離が最も近いターゲット23の第2端部23e2との距離が、150mmであれば、上述の(1)に準じた効果を得ることができる。
【0153】
・スパッタ装置10は、搬出入チャンバ11、および、前処理チャンバ12を備えていなくともよく、スパッタチャンバ13を備えていれば、先に列記した効果を得ることは可能である。あるいは、スパッタ装置10は、複数の前処理チャンバ12を備える構成であってもよい。
・基板Sにおける搬送方向に沿った幅、および、紙面の手前に向かう幅は、上述した大きさに限らず、適宜変更可能である。
【0154】
・スパッタガスは、アルゴンガス以外の希ガス、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、および、キセノンガスであってもよい。また、反応ガスは、酸素ガス以外の酸素を含むガスや、窒素を含むガス等であってもよく、スパッタチャンバ13にて形成される化合物膜に合わせて変更可能である。
【0155】
・第2実施形態のカソードユニット22は、ターゲット23、バッキングプレート24、磁気回路25、交流電源26A、および、磁気回路走査部29から構成されるカソードを3つ以上備える構成であってもよい。
【0156】
・第3実施形態のスパッタチャンバ13は、第2実施形態のカソードユニット22、すなわち、第1カソード22Aと第2カソード22Bとを備えるカソードユニット22を2つ備える構成であってもよい。
【0157】
・IGZO膜を形成するときの条件は、上述の実施例にて説明した条件に限らず、他の条件でもよい。要は、基板Sの表面SaにIGZO膜を形成することのできる条件であればよい。
【0158】
図20に示されるように、スパッタ装置は、クラスター型のスパッタ装置50として具体化されてもよい。こうした構成では、スパッタ装置50が、搬送ロボット51Rを搭載する搬送チャンバ51と、搬送チャンバ51に連結される以下のチャンバを備える。すなわち、搬送チャンバ51には、成膜前の基板をスパッタ装置50の外部から搬入し、成膜後の基板をスパッタ装置50の外部に搬出する搬出入チャンバ52と、成膜に必要とされる前処理を基板に対して行う前処理チャンバ53と、基板に化合物膜を形成するスパッタチャンバ54とを備える。
【符号の説明】
【0159】
10,50…スパッタ装置、11,52…搬出入チャンバ、12,53…前処理チャンバ、13,54…スパッタチャンバ、14…ゲートバルブ、15…排気部、16…成膜レーン、17…回収レーン、18…カソード装置、19…レーン変更部、21…ガス供給部、22…カソードユニット、22A…第1カソード、22B…第2カソード、23,TG…ターゲット、23a,TGs…表面、23e1…第1端部、23e2…第2端部、24…バッキングプレート、25…磁気回路、26A…交流電源、26D…直流電源、27…走査部、28a…第1遮蔽板、28b…第2遮蔽板、28c…第3遮蔽板、29…磁気回
路走査部、31…第1ユニット、32…第2ユニット、40…薄膜トランジスタ、41…ゲート電極、42…ゲート酸化膜、43…チャネル層、44…ソース電極、45…ドレイン電極、51…搬送チャンバ、51R…搬送ロボット、B…マグネトロン磁場、D1…距離、E…エロージョン領域、E1…第1エロージョン領域、E2…第2エロージョン領域、En…終了位置、F…飛行経路、Lv…法線、M1…対向遮蔽板、M2,M3…遮蔽板、P1…第1位置、P2…第2位置、Pid…仮想平面、R1…形成領域、R2…対向領域、Re1…第1端部、Re2…第2端部、S…基板、Sa…表面、SP…スパッタ粒子、St…開始位置、T…トレイ、θ,θ1,θ2,θ3,θ4…入射角度。
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