【解決手段】透明基板および上記透明基板上に形成された複数色の着色層を有するカラーフィルタ、対向基板、および上記カラーフィルタおよび上記対向基板の間に形成された液晶層を備える液晶セル部と、青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体を有する発光装置を備えるバックライト部とを有し、上記複数色の着色層が、特定のトリアリールメタン系化合物の色材を含む青色着色層を有し、上記赤色蛍光体が、表面処理されたM
前記一般式(III)におけるアニオンが、モリブデンおよびタングステンを含むポリ酸アニオンであり、前記モリブデンと前記タングステンとのモル比が0.4:99.6〜15:85の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
前記一般式(III)におけるアニオンが、少なくともタングステンを含むポリ酸アニオンであり、モリブデンの前記タングステンに対するモル比が0.4/99.6未満であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
前記発光装置がリードフレームを有し、前記赤色蛍光体を前記リードフレームの上面から200μm以内で配置させたものであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の液晶表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の液晶表示装置およびその製造方法についての詳細を説明する。
【0038】
A.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、透明基板および上記透明基板上に形成された複数色の着色層を有するカラーフィルタ、対向基板、ならびに上記カラーフィルタおよび上記対向基板の間に形成された液晶層を備える液晶セル部と、青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体を有する発光装置を備えるバックライト部とを有し、上記複数色の着色層が、下記一般式(I)で表わされる色材を含む青色着色層を有し、上記赤色蛍光体が、表面処理された下記一般式(II)で表わされる蛍光体であることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0040】
(一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。B
−は1価のアニオンを表し、複数あるB
−は同一であっても異なっていてもよい。R
1〜R
5は各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
2とR
3、R
4とR
5が結合して環構造を形成してもよい。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
1〜R
5及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2〜4の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
【0041】
一般式(II)
M
12[M
21−xMn
4+xF
6]
【0042】
(上記一般式(II)中、M
1は、K
+、Li
+、Na
+、Rb
+、Cs
+及びNH
4+からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、M
2は、第4族元素および第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、xは0<x<0.2である。)
【0043】
また、本発明の液晶表示装置は、透明基板および上記透明基板上に形成された複数色の着色層を有するカラーフィルタ、対向基板、ならびに上記カラーフィルタおよび上記対向基板の間に形成された液晶層を備える液晶セル部と、青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体を有する発光装置を備えるバックライト部とを有し、上記複数色の着色層が、下記一般式(III)で表わされる色材を含む青色着色層を有し、上記赤色蛍光体が、表面処理された上記一般式(II)で表わされる蛍光体であることを特徴とするものである。
【0045】
(一般式(III)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。B
c−はc価のアニオンを表す。R
1〜R
5は各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
2とR
3、R
4とR
5が結合して環構造を形成してもよい。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
1〜R
5及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2〜4の整数、cは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。)
【0046】
すなわち、本発明の液晶表示装置は、液晶セル部におけるカラーフィルタの青色着色層が、上記一般式(I)または上記一般式(II)で表わされる色材を含み、バックライト部における発光装置の赤色蛍光体が、表面処理された上記一般式(II)で表わされる蛍光体であることを特徴とするものである。
【0047】
本発明の液晶表示装置について図を用いて説明する。
図1は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本発明の液晶表示装置100は、透明基板1、透明基板1上に形成された赤色着色層2R、緑色着色層2Gおよび青色着色層2Bの複数色の着色層2、各着色層2R、2G、2Bの間に形成され、画素を画定する遮光部3を有するカラーフィルタ4と、対向基板5、ならびにカラーフィルタ4および対向基板5の間に形成された液晶層6を有する液晶セル部10と、青色発光素子、ならびに赤色蛍光体および緑色蛍光体を有する発光装置21および導光板220を備えたバックライト部20と、を有する。また、液晶セル部の表面には、通常、偏光板30A、30Bが配置される。
【0048】
本発明によれば、液晶セル部におけるカラーフィルタの青色着色層が、上記一般式(I)または上記一般式(III)で表わされる色材を含み、バックライト部における発光装置の赤色蛍光体が、表面処理された上記一般式(II)で表わされる蛍光体であることにより、省電力性で表示品位の高く、表示品位の経時劣化を抑制可能な液晶表示装置とすることができる。
【0049】
従来から高輝度化に好適であるとされている上述の色材を用いた着色層を有するカラーフィルタを備えた液晶セル部と、高演色化に好適であるとされている上述の赤色蛍光体および緑色蛍光体を有するバックライト部とを組み合わせた場合、初期においては良好な色再現性を示すことができる。しかし、時間経過とともに色座標の白色点が緑色方向にシフトしてしまい、表示品位を維持することが困難であり、本発明者らは、液晶表示装置の表示品位の向上を図るべく検討した。
【0050】
ここで、液晶表示装置の色特性の経時的な劣化の要因としては、液晶表示装置を構成する液晶セル部、およびバックライト部の色特性の経時的な変化が挙げられる。また、液晶セル部の色特性が経時的に変化する要因としては、例えば、カラーフィルタの着色層中に含まれる色材の劣化が挙げられる。また、液晶セル部に用いられるカラーフィルタおよび対向基板を構成する各部材としては、樹脂成分を含むものも多く用いられているが、樹脂成分は経時劣化により黄変しやすい傾向にあることから、この点も上記要因として考えられる。具体的には、カラーフィルタのオーバーコート層の劣化、カラーフィルタの着色層中の樹脂の劣化等が挙げられる。
また、例えば、液晶セル部に含まれる液晶が劣化することや、液晶層を封止するシール剤の成分が液晶層中に溶解することにより、液晶層が着色されることも考えられる。また、配向膜の劣化による液晶の配向異常や、柱状スペーサの圧縮特性変化による液晶層の厚み変化についても液晶セル部の色特性が経時的に変化する要因として考えられる。
また、バックライト部の色特性が経時的に変化する要因としては、発光装置の赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色発光素子のそれぞれの劣化が挙げられる。また、パッケージを形成している樹脂やLEDを封止する封止樹脂の劣化やバックライトの構成部材(導光板、拡散シート、プリズムシート、輝度向上フィルムなど)の劣化が上記要因として考えられる。
さらに、液晶表示装置の色特性の経時的な劣化の要因としては、光学部材の劣化も考えられ、具体的には、偏光板、プリズムシート、拡散シート等の劣化が考えられる。
【0051】
上述したように、液晶表示装置の色特性の経時的な劣化の要因としては複数考えられ、また、これらの要因については、個々の要因の解消策を講じた場合も必ずしも、液晶表示装置全体の色特性の経時的な劣化の抑制効果を発揮することができるものではない。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究を行なった結果、液晶表示装置を劣化させる複数の要因の中から、上記色座標における白色点の緑色方向へのシフトは、青色着色層に含有される色材の劣化によるカラーフィルタの色座標の白色点の黄色方向のシフトと、発光装置に用いられる赤色蛍光体の劣化によるバックライトの色座標の白色点の青色方向のシフトとが相関して起こることを見出した。
また、本発明者らは、液晶表示装置の上記色座標における白色点の緑色方向へのシフトを生じる主たる要因が、液晶セル部の一部材であるカラーフィルタの青色着色層中の色材の劣化と、バックライト部の一部材である発光装置の赤色蛍光体の劣化との2つの要因が相関して生じることを見出した。
【0052】
上記知見を基に、本発明者らは、更なる鋭意研究を重ねた結果、トリアリールメタン系化合物のなかでも各種耐久性が良好な上記一般式(I)または上記一般式(III)で表わされる色材を含む青色着色層を有するカラーフィルタと、上記一般式(II)で表わされる蛍光体に表面処理を施して耐久性を向上させた蛍光体を有する発光装置とを組み合わせて用いた場合に、液晶表示装置の表示品位の経時的な劣化を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0053】
以下、本発明の液晶表示装置の各構成について説明する。
【0054】
I.液晶セル部
本発明の液晶セル部は、カラーフィルタと、対向基板と、液晶層とを有するものである。
【0055】
1.カラーフィルタ
本発明におけるカラーフィルタは、透明基板と、複数色の着色層とを有する。
【0056】
(1)複数色の着色層
本発明における複数色の着色層は、少なくとも青色着色層を有するものである。また、複数色の着色層は、通常、赤色着色層、緑色着色層および青色着色層を有するものである。
【0057】
(A)青色着色層
本発明に用いられる青色着色層は、上記一般式(I)で表わされる色材を含む態様(第1態様)と、上記一般式(III)で表わされる色材を含む態様(第2態様)との2つの態様を有する。以下、各態様の青色着色層について説明する。
【0058】
(a)第1態様
第1態様の青色着色層は、上記一般式(I)で表わされる色材を含み、また、通常、バインダー樹脂を含む。
【0059】
(i)色材
本態様に用いられる色材は、下記一般式(I)で表わされる化合物である。
【0061】
(一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。B
−は1価のアニオンを表し、複数あるB
−は同一であっても異なっていてもよい。R
1〜R
5は各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
2とR
3、R
4とR
5が結合して環構造を形成してもよい。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
1〜R
5及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2〜4の整数を表す。bは0又は1であり、bが0のとき結合は存在しない。複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。)
【0062】
(カチオン部)
本態様において用いられる色材のカチオン部は、下記一般式(IV)で表される構造を有する2価以上のカチオンである。一般式(IV)で表されるカチオン部は、従来のトリアリールメタン系塩基性染料やキサンテン系塩基性染料と異なり、その塩化物であっても水に実質的に溶解しない。
一般式(IV)で表される構造は従来のトリアリールメタン骨格一つのみからなるカチオンがa価の共有結合を介して連結された2価以上のカチオンである。
従来のトリアリールメタン骨格一つのみからなるモノカチオンとアニオンを構成する結合種がイオン結合のみであると考えた場合、本態様の2価以上のカチオンからなる塩形成物を構成する結合種はイオン結合に加え、モノカチオン同士を連結する共有結合を含む構造であると考えることができる。そのため、下記一般式(IV)で表される構造を有する2価以上のカチオンからなる塩形成物は、従来のトリアリールメタン骨格一つからなる塩形成物よりも構成要素全体により強い結合種が増えた結果、安定性が高くなり、水和しにくくなると推定される。更に、一般式(IV)で表される構造は、連結基Aの影響で分子量が大きくなり、且つ、疎水性がより高くなるため、結合の安定性と相俟って水に実質的に溶解しなくなると推定される。
【0064】
(式(IV)中、A、R
1〜R
5、Ar
1、a及びbは、式(I)と同様である。)
上記一般式(I)におけるbは、0又は1の整数である。bが0の場合、下記式(V)で表されるトリアリールメタン骨格を有する。
【0066】
(式(V)中、R
1〜R
5及びAr
1は、式(I)と同様である。)
【0067】
また、bが1の場合、下記式(VI)で表されるキサンテン骨格を有する。
【0069】
(式(VI)中、R
1〜R
5及びAr
1は、式(I)と同様である。)
【0070】
複数あるbは同一であっても異なっていてもよい。すなわち、例えば、トリアリールメタン骨格のみ、又は、キサンテン骨格のみを複数有するカチオン部であってもよく、1分子内に、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部であってもよい。色純度の点からは、同一骨格のみを有するアニオン部であることが好ましい。一方、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部とすることにより、また、後述する置換基の組み合わせにより、一般式(I)の色材は、所望の色に調整することができる。
【0071】
上記一般式(I)におけるAは、N(窒素原子)と直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)が含まれていてもよいものである。Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aや他の発色部位の影響を受けず、単量体と同様の色を保持することができる。
Aにおいて、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基は、Nと直接結合する末端の炭素原子がπ結合を有しなければ、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、末端以外の炭素原子が不飽和結合を有していてもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、Nが含まれていてもよい。例えば、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよく、水素原子が更にハロゲン原子等に置換されていてもよい。
また、Aにおいて上記脂肪族炭化水素基を有する芳香族基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基を有する、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。
中でも、骨格の堅牢性の点から、Aは、環状の脂肪族炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基としては、中でも、有橋脂環式炭化水素基が、骨格の堅牢性の点から好ましい。有橋脂環式炭化水素基とは、脂肪族環内に橋かけ構造を有し、多環構造を有する多環状脂肪族炭化水素基をいい、例えば、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,2]オクタン、アダマンタン等が挙げられる。有橋脂環式炭化水素基の中でも、ノルボルナンが好ましい。また、芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環を含む基が挙げられ、中でも、ベンゼン環を含む基が好ましい。
原料入手の容易さの観点からAは2価が好ましい。例えば、Aが2価の有機基の場合、炭素数1〜20の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基や、キシリレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基を2個置換した芳香族基等が挙げられる。
【0072】
R
1〜R
5におけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であることが、製造及び原料調達の容易さの点から、より好ましい。中でも、R
1〜R
5におけるアルキル基がエチル基又はメチル基であることが特に好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
R
1〜R
5におけるアリール基は、特に限定されない。例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0073】
R
2とR
3、R
4とR
5が結合して環構造を形成しているとは、R
2とR
3、R
4とR
5が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。環構造は特に限定されないが、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0074】
中でも化学的安定性の点からR
1〜R
5としては、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又は、R
2とR
3、R
4とR
5が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成していることが好ましい。
【0075】
R
1〜R
5はそれぞれ独立に上記構造をとることができるが、中でも、色純度の点からR
1が水素原子であることが好ましく、さらに製造および原料調達の容易さの点からR
2〜R
5がすべて同一であることがより好ましい。
【0076】
Ar
1における2価の芳香族基は特に限定されない。芳香族基は、炭素環からなる芳香族炭化水素基の他、複素環基であってもよい。芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素としては、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素が挙げられる。当該鎖状多環式炭化水素においては、ジフェニルエーテル等のように鎖状骨格中にO、S、Nを有していてもよい。一方、複素環基における複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピロン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。
【0077】
芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0078】
Ar
1は炭素数が6〜20の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10〜14の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフチレン基であることがより好ましい。
【0079】
1分子内に複数あるR
1〜R
5及びAr
1は、同一であっても異なっていてもよい。複数あるR
1〜R
5及びAr
1がそれぞれ同一である場合には、発色部位が同一の発色を示すため、発色部位の単体と同様の色が再現でき、色純度の点から好ましい。一方、R
1〜R
5及びAr
1のうち少なくとも1つを異なる置換基とした場合には、複数種の単量体を混合した色を再現することができ、所望の色に調整することができる。
【0080】
(アニオン部)
本態様に係る色材において、アニオン部は、(B
−)で表される構造を有する1価のアニオンである。上記色材は1価のアニオンを有することにより、アルコール系溶媒やケトン系溶媒への溶解度が高く、高濃度の色材溶液を調製することも可能であり、種々の基材の染着に用いることができる。
B
−は1価のアニオンであれば、特に限定されず、有機アニオンであっても無機アニオンであってもよい。ここで有機アニオンとは、炭素原子を少なくとも1つ含有するアニオンを表す。また、無機アニオンとは、炭素原子を含有しないアニオンを表し、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンのようなハロゲン化物イオンや、硝酸イオン(NO
−)、過塩素酸イオン(ClO
4−)等が挙げられる。
【0081】
B
−が有機アニオンである場合、その構造は特に限定されない。中でも、アニオン性
置換基を有する有機基であることが好ましい。
アニオン性置換基としては、例えば、−SO
2N
−SO
2CH
3、−SO
2N
−COCH
3、−SO
2N
−SO
2CF
3、−SO
2N
−COCF
3、−CF
2SO
2N
−SO
2CH
3、−CF
2SO
2N
−COCH
3、−CF
2SO
2N
−SO
2CF
3、−CF
2SO
2N
−COCF
3等のイミド酸基や、−SO
3−、−CF
2SO
3−、−COO
−、−CF
2COO
−等の置換基が挙げられる。
中でも、原材料入手の容易さや製造コスト、高い酸性度によりカチオンを安定化し発色状態を維持する効果が高い点から、イミド酸基や、−SO
3−、−CF
2SO
3−が好ましく、更に、−SO
3−(スルホナト基)であることが好ましい。
【0082】
アニオン性置換基が置換される有機基としては、特に限定されない。当該有機基としては、直鎖、分岐、又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基、単環又は多環芳香族基及びこれらが組み合わされた基が挙げられ、これらは炭素鎖中に、O、S、N等の異種原子が含まれていてもよく、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基が含まれていてもよく、水素原子が置換されていてもよい。有機基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記アニオン性置換基が置換される有機基としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,2]ヘキサン、ビシクロ[3,2,3]オクタン、アダマンタン等の炭化水素;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、トリフェニレン、フルオレン、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール等の芳香族化合物が挙げられ、更にハロゲン原子、アルキル基等の置換基を有していてもよい。
アニオン性置換基が置換される有機基としては、中でも、アニオン性置換基の導入が容易な点から、単環又は多環芳香族炭化水素基及びこれらが組み合わされた基であることが好ましい。
【0083】
アニオンにより色変化しないことを目的とする場合には、400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機基を用いることが好ましい。400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機基としては、例えば、ナフタレン、テトラリン、インデン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の縮合多環式炭素環からなる有機基;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素からななる有機基;フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環からなる有機基、ピラン、ピロン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環からなる芳香族化合物;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環からなる有機基等が挙げられる。
【0084】
また、アニオン性置換基が置換される有機基としては、有機化合物又は有機金属化合物である、アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料及びフタロシアニン染料、インジゴ染料に由来する骨格を用いてもよい。或いは、従来公知の酸性染料、直接染料、酸性媒染染料を用いてもよい。
染料由来の骨格や酸性染料、直接染料、酸性媒染染料等を用いた場合には、得られる色材の色調が変化し、上記一般式(I)で表される色材の色調を所望のものに調整することができる。
【0085】
染料由来の骨格を有するアニオンの中でも、下記一般式(VII)で表されるアニオンが、耐熱性を向上する点から好ましい。
上記色材のアニオン部として、一般式(VII)のアニオンを用いた場合には、上記カチオン部との組み合わせにより、色材を所望の色に調整することができる。
【0087】
(一般式(VII)中、Mは2個の水素原子、若しくは、Cu、Mg、Al、Ni、Co、Fe、又はZnを表す。スルホナト基(−SO
3−基)は、芳香環に置換している。)
【0088】
また、本態様に係る色材において、上記有機アニオンが、下記一般式(VIII)で表されるアニオンであることが、耐熱性を向上する点から好ましい。
【0090】
(一般式(VIII)中、Ar
2は置換基を有していてもよい1価の芳香族基である。)
【0091】
上記色材のアニオン部として、上記一般式(VIII)のアニオンを用いた場合には、アニオンが無色ないし薄い黄色であるため、生じた色材が一般式(I)で表されるカチオンがもつ固有の色を保持しやすいという特徴を有する。
【0092】
Ar
2における芳香族基は特に限定されない。芳香族基には、炭素環からなる芳香族炭化水素基の他、複素環であってもよい。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素基;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素基が挙げられる。当該鎖状多環式炭化水素基においては、ジフェニルエーテル等のように鎖状骨格中にO、S等のヘテロ原子を有していてもよい。一方、複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピロン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。
【0093】
芳香族基が有する置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0094】
Ar
2は炭素数が6〜20の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10〜14の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフタレン基であることがより好ましい。
【0095】
上記色材において、複数あるアニオン(B
−)は、同一であっても異なっていてもよく、有機アニオンと無機アニオンを組み合わせて用いることもできる。
【0096】
上記色材の平均粒径としては、青色着色層を形成することができれば特に限定されないが、10nm〜300nmの範囲内、なかでも20nm〜200nmの範囲内、特に30nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
上記色材の平均粒径が小さいと、凝集し易くなり、青色着色層中に均一に分散させることが困難となる可能性があるからである。また、色材の平均粒径が大きすぎると所望の輝度を有する青色着色層を形成することが困難となる可能性があるからである。
上記色材の平均粒径は、少なくとも溶媒を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、上記色材を分散させた青色分散液を調製し、青色分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、濃厚系粒径アナライザー FPAR-1000)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分散粒径は、体積平均粒径である。青色分散液としては、例えば、色材5重量部に対して、ポリスルホン酸型高分子分散剤3重量部、酢酸−3−メトキシブチル80重量部を用いることにより調製することができる。
【0097】
青色着色層中の上記色材の含有量としては、本態様の液晶表示装置の用途等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、5質量%〜50質量%の範囲内、なかでも10質量%〜40質量%の範囲内、特に15質量%〜35質量%の範囲内であることが好ましい。
上記色材の含有量が少ないと、液晶表示装置の表示品位が低下する可能性があるからであり、上記色材の含有量が多いと、青色着色層自体を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0098】
上記色材の形成方法については、特許5223980号公報、および特許5403175号公報に記載されているカチオン部の塩化物の形成方法を用いることができる。
【0099】
(ii)その他の材料
(バインダー樹脂)
本態様に用いられる青色着色層は、通常、バインダー樹脂を含む。
本態様に用いられるバインダー樹脂としては、一般的なカラーフィルタの着色層に用いられるものと同様とすることができ、例えば、硬化性樹脂、感光性樹脂等を挙げることができる。バインダー樹脂としては、特許5223980号公報、および特許5403175号公報に記載の着色層樹脂組成物に用いられる感光性バインダー成分や硬化性バインダー成分を硬化させたものを好適に用いることができる。
【0100】
(その他の成分)
本態様における青色着色層は、通常、上述した色材と、バインダー樹脂とを含むものであり、必要に応じて、他の成分を適宜選択して含むことができる。
このような成分としては、例えば、酸化防止剤を挙げることができる。上記酸化防止剤を添加することにより、青色着色層の耐熱性、耐光性をより良好なものとすることができる。酸化防止剤としては、フリーラジカル捕捉機能を有する一次酸化防止剤や、過酸化物分解機能を有する二次酸化防止剤等を挙げることができ、一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。
一次酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(分子量206)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(分子量220)(商品名:ヨシノックス BHT(エーピーアイコーポレーション社製))、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(分子量383)(商品名:ヨシノックスBB(エーピーアイコーポレーション社製))、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(分子量341)(商品名:ヨシノックス 2246G(エーピーアイコーポレーション社製))、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(分子量369)(商品名:ヨシノックス 425(エーピーアイコーポレーション社製))、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール(分子量234)(商品名:ヨシノックス 250(エーピーアイコーポレーション社製))、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(分子量545)(商品名:ヨシノックス 930(エーピーアイコーポレーション社製))、n−オクタデシル−3−(3,5‐ジ‐t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量531)(商品名:トミノックス SS(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 1076(チバ・ジャパン株式会社製))、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(分子量1178)(商品名:トミノックス TT(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 1010(チバ・ジャパン株式会社製))、トリエチレングリコールビス[3‐(3‐t‐ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](分子量587)(商品名:トミノックス 917(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 245(チバ・ジャパン株式会社製))、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト(分子量784)(商品名:ヨシノックス 314(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 3114(チバ・ジャパン株式会社製))、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン(分子量741)(商品名:Sumilizer GA−80(住友化学製))、2,2−チオ‐ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量643)(商品名:IRGANOX 1035(チバ・ジャパン株式会社製))、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(分子量637)(商品名:IRGANOX 1098(チバ・ジャパン株式会社製))、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量391)(商品名:IRGANOX 1135(チバ・ジャパン株式会社製))、1,3,5−トリメチル‐2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(分子量775)(商品名:IRGANOX 1330(チバ・ジャパン株式会社製))、2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−6−メチルフェノール(分子量537)(商品名:IRGANOX 1726(チバ・ジャパン株式会社製))、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとポリエチレンワックスの混合体(分子量695)(商品名:IRGANOX 1425(チバ・ジャパン株式会社製))、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(分子量425)(商品名:IRGANOX 1520(チバ・ジャパン株式会社製))、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量639)(商品名:IRGANOX 259(チバ・ジャパン株式会社製))、2,4−ビス‐(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ‐3,5−ジ‐t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(分子量589)(商品名:IRGANOX 565(チバ・ジャパン株式会社製))、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフォナート(分子量356)(商品名:IRGAMOD295(チバ・ジャパン株式会社製))等が挙げられる。
二次酸化防止剤としては6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン(分子量661)(商品名:Sumilizer GP(住友化学製))、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(分子量647)(商品名:IRGAFOS 168(チバ・ジャパン株式会社製))、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン(分子量1465)(商品名:IRGAFOS 12(チバ・ジャパン株式会社製))、ビス(2,4−ジ−t−ブチル‐6−メチルフェニル)エチルフォスファイト(分子量514)(商品名:IRGAFOS 38(チバ・ジャパン株式会社製))、ジラウリルチオジプロピオネート(分子量515)(商品名:DLTP「ヨシトミ」(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX PS 800 FD(チバ・ジャパン株式会社製))、ジステアリルチオジプロピオネート(分子量683)(商品名:DSTP「ヨシトミ」(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX PS 802 FD(チバ・ジャパン株式会社製))、ジミリスチルチオジプロピオネート(分子量571)(商品名:DMTP「ヨシトミ」(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:Sumilizer TPM(住友化学製))、ジトリデシルチオジプロピオネート(分子量543)(商品名:DTTP(エーピーアイコーポレーション社製)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(分子量1162)(商品名:Sumilizer TP−D(住友化学製))等が挙げられる。
【0101】
青色着色層中の酸化防止剤の含有量としては、酸化防止剤の種類等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、0.001質量%〜5質量%の範囲内、なかでも0.01質量%〜1質量%の範囲内、特に0.05質量%〜0.5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0102】
(iii)その他
青色着色層の厚さ、配列および形成方法については、後述する「(c)複数の着色層」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0103】
(b)第2態様
第2態様の青色着色層は、上記一般式(III)で表わされる色材を含み、また、通常、バインダー樹脂を含む。
第2態様の青色着色層は、一般式(III)で表わされる色材を含むこと以外は、第1態様の青色着色層と同様の構成を有する。
以下、本態様に用いられる色材について説明する。
【0104】
本態様に用いられる色材は、下記一般式(III)で表される化合物である。
【0106】
(一般式(III)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。B
c−はc価のアニオンを表す。R
1〜R
5は各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
2とR
3、R
4とR
5が結合して環構造を形成してもよい。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
1〜R
5及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
aは2〜4の整数、cは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。)
【0107】
一般式(III)の色材を用いることにより、カラーフィルタの着色層を高コントラストで、かつ、耐溶剤性及び電気信頼性に優れたものとすることができる。
【0108】
従来、一般に、染料は溶剤に溶解しやすい。溶解性を低下する手段として、造塩化合物とする手法が用いられてきた。例えば、トリアリールメタン染料を造塩する手法として、対アニオンとして2価のアニオンを用いる手法がある(例えば、特許文献3)。この手法によれば、
図3のように、2価の対アニオン202が、2つの染料カチオン205とイオン結合204を形成することができるため、染料のみと比べて、溶剤への溶解性が低下する。しかしながら、このような手法によって得られた造塩化合物を用いた着色層であっても、配向膜形成時等に用いられる溶剤により、染料が溶解することがあり、電気信頼性も低下した。またイオン性の不純物が液晶セル中に混入することによって焼きつきなどの問題を引き起こす要因にもなる。
本態様において用いられる上記一般式(III)で表される色材は、
図2のように、2価以上の対アニオン202と共に、カチオン性の発色部位がAによる連結203を介して2個以上結合した、2価以上の対カチオン201を有している。例えば、アニオンとカチオンが共に2価のイオンである場合、色材の凝集体において、アニオンとカチオンが単に1分子対1分子でイオン結合しているのではなく、
図2のように複数の分子が連続したイオン結合を介して会合する、分子会合体210を形成するものと推定される。当該分子会合体210は、色材の凝集体中で1つの分子のように振る舞うため、見かけの分子量は、従来の造塩化合物の分子量に比べて格段に増大する。また、分子会合体210の形成により、固体状態での凝集力がより高まり、熱による運動を低下させ、更に電気的にも安定するため、イオン対の解離やカチオン部の分解を抑制できると推定される。その結果、一般式(III)で表される色材の耐溶剤性が向上し、当該色材を用いた着色層の耐溶剤性及び電気信頼性が向上するものと推定される。また、複数の分子がイオン結合を介して会合した分子会合体からなる微粒子はイオン対の運動性が低下しているため、微粒子間での再凝集によるコントラストの低下を抑制することができる。
なお、上記一般式(III)で表される色材は、カチオン性の発色部位に直接結合する連結基Aの炭化水素がπ結合を有していないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aの導入前後でほとんど変化しない。
また、電気信頼性は、
図1に示すような液晶セル部10を作成したときの電圧保持率により評価することができ、電気信頼性が高いとは該電圧保持率が高いことをいう。電気信頼性が低い場合には、液晶層に所定の電圧が印加されなくなり、液晶セルのコントラストが低下する等の問題を生ずる。
【0109】
以下、上記色材のアニオン部およびカチオン部について説明する。
【0110】
(i)カチオン部
カチオン部については、上述した一般式(I)で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、一般式(III)におけるeは一般式(I)のbに相当する。
【0111】
(ii)アニオン部
アニオン部は、(B
c−)で表される構造を有する、2価以上のアニオンである。B
c−は2価以上のアニオンであれば、特に限定されず、有機アニオンであっても無機アニオンであってもよい。ここで有機アニオンとは、炭素原子を少なくとも1つ含有するアニオンを表す。また、無機アニオンとは、炭素原子を含有しないアニオンを表す。
【0112】
B
c−が有機アニオンである場合、その構造は特に限定されない。中でも、アニオン性置換基を有する有機基であることが好ましい。
アニオン性置換基としては、例えば、−SO
2N
−SO
2CH
3、−SO
2N
−COCH
3、−SO
2N
−SO
2CF
3、−SO
2N
−COCF
3、−CF
2SO
2N
−SO
2CH
3、−CF
2SO
2N
−COCH
3、−CF
2SO
2N
−SO
2CF
3、−CF
2SO
2N
−COCF
3等のイミド酸基や、−SO
3−、−CF
2SO
3−、−PO
32−、−COO
−、−CF
2PO
32−、−CF
2COO
−等の置換基が挙げられる。
中でも、カチオンを安定化し、色材の発色を安定させる点から、1価のアニオン性置換基を2つ以上用いることが好ましい。また、原材料入手の容易さや製造コスト、高い酸性度によりカチオンを安定化し発色状態を維持する効果が高い点から、イミド酸基や、−SO
3−、−CF
2SO
3−が好ましく、更に、−SO
3−(スルホナト基)であることがより好ましい。
アニオン性置換基を複数置換する場合は、同一の置換基であってもよく、異なる置換基を用いてもよい。
【0113】
アニオン性置換基が置換される有機基としては、特に限定されない。当該有機基としては、直鎖、分岐、又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基、単環又は多環芳香族基及びこれらが組み合わされた基が挙げられ、これらは炭素鎖中に、O、S、N等の異種原子が含まれていてもよく、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基が含まれていてもよく、水素原子が置換されていてもよい。有機基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記アニオン性置換基が置換される有機基としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、[2,2,2]ビシクロヘキサン、[3,2,3]ビシクロオクタン、アダマンタン等の炭化水素;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、トリフェニレン、フルオレン、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール等の芳香族化合物が挙げられ、更にハロゲン原子、アルキル基等の置換基を有していてもよい。
アニオン性置換基が置換される有機基としては、中でも、アニオン性置換基の導入が容易な点から、単環又は多環芳香族炭化水素基及びこれらが組み合わされた基であることが好ましい。
アニオンにより色変化しないことを目的とする場合には、400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機基を用いることが好ましい。400nm以下の波長領域に吸収極大をもつ有機基としては、例えば、ナフタレン、テトラリン、インデン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の縮合多環式炭素環からなる有機基;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素からななる有機基;フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環からなる有機基、ピラン、ピロン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環からなる芳香族化合物;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環からなる有機基等が挙げられる。
【0114】
また、アニオン性置換基が置換される有機基としては、有機化合物又は有機金属化合物である、アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料等に由来する骨格を用いてもよい。或いは、従来公知の酸性染料、直接染料、酸性媒染染料等を用いてもよい。
染料由来の骨格や酸性染料、直接染料、酸性媒染染料等を用いた場合には、得られる色材の色調が変化し、上記化学式(III)で表される色材の色調を所望のものに調整することができる。
【0115】
酸性染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー1、3、7、9、11、17、23、25、29、34、36、38、40、42、54、65、72、73、76、79、98、99、111、112、113、114、116、119、123、128、134、135、138、139、140、144、150、155、157、160、161、163、168、169、172、177、178、179、184、190、193、196、197、199、202、203、204、205、207、212、214、220、221、228、230、232、235、238、240、242、243、251、C.I.アシッドレッド1、4、8、14、17、18、26、27、29、31、34、35、37、42、44、50、51、52、57、66、73、80、87、88、91、92、94、97、103、111、114、129、133、134、138、143、145、150、151、158、176、182、183、198、206、211、215、216、217、227、228、249、252、257、258、260、261、266、268、270、274、277、280、281、195、308、312、315、316、339、341、345、346、349、382、383、394、401、412、417、418、422、426、C.I.アシッドオレンジ6、7、8、10、12、26、50、51、52、56、62、63、64、74、75、94、95、107、108、169、173、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、18、23、25、27、29、40、42、45、51、62、70、74、80、83、86、87、90、92、96、103、112、113、120、129、138、147、150、158、171、182、192、210、242、243、256、259、267、278、280、285、290、296、315、324:1、335、340、C.I.アシッドバイオレット6B、7、9、17、19、C.I.アシッドグリーン1、3、5、9、16、25、27、50、58、63、65、80、104、105、106、109等が挙げられる。
【0116】
直接染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー2、33、34、35、38、39、43、47、50、54、58、68、69、70、71、86、93、94、95、98、102、108、109、129、136、138、141、C.I.ダイレクトレッド79、82、83、84、91、92、96、97、98、99、105、106、107、172、173、176、177、179、181、182、184、204、207、211、213、218、220、221、222、232、233、234、241、243、246、250、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、41、46、50、52、56、57、61、64、65、68、70、96、97、106、107、C.I.ダイレクトブルー57、77、80、81、84、85、86、90、93、94、95、97、98、99、100、101、106、107、108、109、113、114、115、117、119、137、149、150、153、155、156、158、159、160、161、162、163、164、166、167、170、171、172、173、188、189、190、192、193、194、196、198、199、200、207、209、210、212、213、214、222、228、229、237、238、242、243、244、245、247、248、250、251、252、256、257、259、260、268、274、275、293、C.I.ダイレクトバイオレット47、52、54、59、60、65、66、79、80、81、82、84、89、90、93、95、96、103、104、C.I.ダイレクトグリーン25、27、31、32、34、37、63、65、66、67、68、69、72、77、79、82等が挙げられる。
【0117】
酸性媒染染料としては、例えば、C.I.モーダントイエロー5、8、10、16、20、26、30、31、33、42、43、45、56、61、62、65、C.I.モーダントレッド1、2、3、4、9、11、12、14、17、18、19、22、23、24、25、26、30、32、33、36、37、38、39、41、43、45、46、48、53、56、63、71、74、85、86、88、90、94、95、C.I.モーダントオレンジ3、4、5、8、12、13、14、20、21、23、24、28、29、32、34、35、36、37、42、43、47、48、C.I.モーダントブルー1、2、3、7、8、9、12、13、15、16、19、20、21、22、23、24、26、30、31、32、39、40、41、43、44、48、49、53、61、74、77、83、84、C.I.モーダントバイオレット1、2、4、5、7、14、22、24、30、31、32、37、40、41、44、45、47、48、53、58、C.I.モーダントグリーン1、3、4、5、10、15、19、26、29、33、34、35、41、43、53等が挙げられる。
【0118】
上記染料のうち、染料自体が2価以上のアニオンである場合には、当該染料をそのまま、本態様における色材におけるアニオン部として使用することができる。染料自体が2価以上のアニオンでない場合には、適宜2価以上のアニオンとなるように、アニオン性置換基を導入する。
【0119】
上記有機アニオンは、中でも、下記一般式(IX)、下記一般式(X)、及び下記一般式(XI)で表されるアニオンよりなる群から選択される1種以上であることが、耐溶剤性及び電気信頼性を向上する点から好ましい。
【0121】
(一般式(IX)中、Ar
2は置換基を有していてもよいc価の芳香族基である。cは2以上の整数を表す。)
【0123】
(一般式(X)中、R
6は水素原子、又はメチル基であり、Ar
3は置換基を有していてもよい芳香族基である。Qは直接結合又は2価の連結基を表す。fは1以上の整数、gは2以上の整数を表す。)
【0125】
(一般式(XI)中、Mは2個の水素原子、若しくは、Cu、Mg、Al、Ni、Co、Fe、又はZnを表す。スルホナト基(−SO
3−基)は、芳香環に置換しており、cは2〜4の整数を表す。)
【0126】
色材のアニオン部として、上記一般式(IX)のアニオンを用いた場合には、アニオンが無色ないし薄い黄色であるため、生じた色材が一般式(III)で表されるカチオンがもつ固有の色を保持しやすいという特徴を有する。
色材のアニオン部として、上記一般式(X)のアニオンを用いた場合には、アニオン価数が多くなるため、より多くの一般式(III)で示されるカチオンと相互作用し得る。その結果、より凝集性が高く溶剤への不溶性が高まるという特徴を有する。
色材のアニオン部として、上記一般式(XI)のアニオンを用いた場合には、上記カチオン部との組み合わせにより、色材を所望の色に調整することができる。
【0127】
Ar
2及びAr
3における芳香族基は特に限定されない。芳香族基には、炭素環からなる芳香族炭化水素基の他、複素環であってもよい。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素基;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素基が挙げられる。当該鎖状多環式炭化水素基においては、ジフェニルエーテル等のように鎖状骨格中にO、S等のヘテロ原子を有していてもよい。一方、複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピロン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ−ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。
【0128】
芳香族基が有する置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0129】
Ar
2及びAr
3は炭素数が6〜20の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10〜14の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフタレン基であることがより好ましい。
【0130】
一般式(X)において、Qは直接結合、又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、Qは直接結合、又は−COO−基であることが好ましい。
【0131】
一般式(X)において、fは1以上の整数であれば、特に限定されない。原料入手の容易さの点からは、fが1であることがより好ましい。
また、gは2以上の整数である。中でも、耐熱性の点から、gは50以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましい。一方、溶解性の点から、gが3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましい。一般式(X)の重量平均分子量としては10000〜100000であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される標準ポリスチレン換算で求めたものである。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0132】
一般式(X)において、複数ある構成単位は、全て同一のものであってもよく、2種以上のものが含まれていてもよい。なお、一般式(X)において、複数あるfの総和が一般式(III)におけるcに相当する。
【0133】
一方、B
c−が無機アニオンである場合、無機のオキソ酸およびその脱水縮合物である限り、その構造や組成は特に限定されない。無機アニオンとしては、例えば、2価以上のオキソ酸のアニオン(リン酸イオン、硫酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン(WO
42−)、モリブデン酸イオン(MoO
42−)等)や、複数のオキソ酸が縮合したポリ酸イオン等の無機アニオンやその混合物を挙げることができる。
上記ポリ酸としては、イソポリ酸イオン(M
mO
n)
c−であってもヘテロポリ酸イオン(X
lM
mO
n)
c−であってもよい。上記イオン式中、Mはポリ原子、Xはヘテロ原子、mはポリ原子の組成比、nは酸素原子の組成比を表す。ポリ原子Mとしては、例えば、Mo、W、V、Ti、Nb等が挙げられる。またヘテロ原子Xとしては、例えば、Si、P、As、S、Fe、Co等が挙げられる。
中でも、耐熱性の点から、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)の少なくともいずれかを含む無機酸のアニオンであることが好ましい。
【0134】
また、本態様においては、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)の少なくともいずれかを含むポリ酸アニオンであることが好ましく、さらに好適な態様として、2つの実施態様が挙げられる。
第1実施態様の色材のアニオン部(B
c−)は、モリブデン及びタングステンを含み、モリブデンとタングステンとのモル比が0.4:99.6〜15:85で表されるc価のポリ酸アニオンである。また、第2実施態様の色材のアニオン部(B
c−)は、少なくともタングステンを含み、モリブデンのタングステンに対するモル比が0.4/99.6未満のc価のポリ酸アニオンである。
なお、本態様においてモリブデンとタングステンとのモル比とは、一般式(I)で表される色材全体におけるモリブデン原子とタングステン原子のモル比を表すものであり、モリブデンのタングステンに対するモル比とは、一般式(I)で表される色材全体におけるモリブデン原子のタングステン原子に対するモル比の値を表すものである。
【0135】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
カチオン性色材は一般に、光により酸化し、退色することが知られている。一方、タングステンやモリブデンを含むポリ酸は光還元性があり、その光還元反応が可逆的であることが知られている。このようなポリ酸をアニオンとして用いることにより、光によるカチオンの酸化反応を抑制し、耐光性が向上するものと推定される。そのメカニズムは未解明であるが、電子状態の違う、タングステンを含むポリ酸アニオンと、モリブデンを含むポリ酸アニオンを特定の割合で含有することにより、上記酸化反応を抑制する能力に優れるものと推定される。
【0136】
上記第1実施態様の色材は、対アニオンとしてモリブデン及びタングステンを含み、モリブデンとタングステンとのモル比が0.4:99.6〜15:85で表される2価以上のポリ酸アニオンを用いる。モリブデンを含むポリ酸アニオンを少量混合することにより、タングステンを含むポリ酸アニオンのみを用いた場合に比べて耐光性を向上し、耐熱性をも向上し得る。カチオンがタングステンを含むポリ酸アニオンとイオン対を形成すると、特に耐熱性が向上するものと推定される。しかしながらタングステンを含むポリ酸イオンはイオン径が大きいため、カチオンとの間で隙間を生じるものと推定される。一方、モリブデンを含むポリ酸アニオンは、タングステンを含むポリ酸アニオンよりイオン径が小さいものと推定される。本態様において用いられる色材は、更にイオン径の小さいモリブデンを含むポリ酸アニオンを少量含むことにより、カチオンとタングステンを含むポリ酸アニオンがイオン対を形成した際に生じる隙間に、モリブデンを含むポリ酸アニオンが入り込むものと推定される。これにより色材の耐熱性及び耐光性が向上するものと推定される。また、モリブデンとタングステンの両方を含むヘテロポリ酸を用いた場合には、当該ヘテロポリ酸自体がイオン径に分布があるものと推定され、イオン径の小さいヘテロポリ酸が、カチオンとの間の隙き間に入り込み、色材の耐熱性及び耐光性が向上するものと推定される。
【0137】
一方、第2実施態様の色材は、対アニオンとして、少なくともタングステンを含み、モリブデンの上記タングステンに対するモル比が0.4/99.6未満である2価以上のポリ酸アニオンを用いる。前述の通り、カチオンがタングステンを含むポリ酸アニオンとイオン対を形成すると、特に耐熱性が向上し、上記第1実施態様の色材と同等の耐熱性を有する。カラーフィルタ用途においては、特に高輝度な着色層が求められている。本発明者らはこのような観点から、耐熱性についてより詳細な検討を行った。その結果、モリブデンの上記タングステンに対するモル比が0.4/99.6未満と、ポリ酸アニオンにおけるモリブデンの含有割合が低い範囲か、若しくはポリ酸アニオン中にモリブデンを含まずタングステンのみを含有する場合、上記第1実施態様の色材と比較して露光後の輝度が高輝度であるとともに、高温加熱後における着色層の輝度の低下が、上記第1実施態様の色材と比較しても、より抑制されることが明らかとなった。このような効果を発揮する作用は未解明であるが、このような第2実施態様の色材を用いて形成された着色層はより高輝度化を達成できる。
【0138】
これらの結果、一般式(III)で表される色材は耐熱性及び耐光性に特に優れたものとなり、染料と同様の高輝度化を達成しながら、耐熱性及び耐光性に優れた青色着色層を形成可能な色材が得られると推定される。
【0139】
上記ポリ酸アニオンとしては、イソポリ酸イオン(M
mO
n)
c−であってもヘテロポリ酸イオン(X
lM
mO
n)
c−であってもよい。上記イオン式中、Mはポリ原子、Xはヘテロ原子、mはポリ原子の組成比、nは酸素原子の組成比を表す。ポリ原子Mは、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)のいずれか1つを必ず含む。ポリ原子Mは2種以上含まれていてもよい。ポリ原子MはMoおよびWの少なくともいずれかであることが好ましい。ヘテロ原子Xとしては、例えば、Si、P、As、S、Fe、Co等が挙げられる。また、一部にNa
+やH
+等の対カチオンが含まれていてもよい。
【0140】
モリブデンおよびタングステンの少なくともいずれかを含むポリ酸アニオンの具体例としては、例えば、ケギン型リンタングステン酸イオンα−[PW
12O
40]
3−、ドーソン型リンタングステン酸イオンα−[P
2W
18O
62]
6−、β−[P
2W
18O
62]
6−、ケギン型ケイタングステン酸イオンα−[SiW
12O
40]
4−、β−[SiW
12O
40]
4−、γ−[SiW
12O
40]
4−、さらにその他の例として[P
2W
17O
61]
10−、[P
2W
15O
56]
12−、[H
2P
2W
12O
48]
12−、[NaP
5W
30O
110]
14−、α−[SiW
9O
34]
10−、γ−[SiW
10O
36]
8−、α−[SiW
11O
39]
8−、β−[SiW
11O
39]
8−、[W
6O
19]
2−、[W
10O
32]
4−、WO
42−、α−[PMo
12O
40]
3−、α−[PW
11MoO
40]
3−、α−[PW
9Mo
3O
40]
3−、α−[PW
3Mo
9O
40]
3−、α−[SiMo
12O
40]
4−、α−[P
2Mo
18O
62]
6−、[Mo
2O
7]
2−、[Mo
6O
19]
2−、[Mo
8O
26]
4−等が挙げられる。
モリブデンおよびタングステンの少なくともいずれかを含む無機酸のアニオンとしては、耐熱性及び耐光性の点、及び原料入手の容易さの点から、上記の中でもヘテロポリ酸であることが好ましく、更にP(リン)を含むヘテロポリ酸であることがより好ましい。
【0141】
第1実施態様の色材におけるポリ酸アニオンは、上記のアニオンを1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができ、2種以上組み合わせて用いる場合には、ポリ酸アニオン全体におけるモリブデンとタングステンとのモル比が0.4:99.6〜15:85であればよい。中でも、耐熱性及び耐光性に優れる点から、モリブデンとタングステンとのモル比が0.8:99.2〜13:87であることが好ましく、1.0:99.0〜10:90であることがより好ましい。
【0142】
また、第2実施態様の色材におけるポリ酸アニオンは、上記のアニオンを1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができ、2種以上組み合わせて用いる場合には、ポリ酸アニオン全体におけるモリブデンのタングステンに対するモル比が0.4/99.6未満であればよい。中でも、加熱時に輝度が低下しにくい点から、モリブデンのタングステンに対するモル比が0.3/99.7以下であることが好ましい。この範囲には、ポリ原子としてモリブデンを含まずタングステンのみを含む場合、即ち、ポリ酸アニオン中のモリブデンとタングステンのモル比が0:100である場合が包含される。
【0143】
上記一般式(III)におけるaは、カチオンを構成する発色性カチオン部位の数であり、aは2〜4の整数である。すなわち、本態様において用いられる色材は、カチオンの価数が2以上であり、且つアニオンの価数も2以上であるため、上述した分子会合体が形成され、耐熱性及び耐光性が向上する。一方、aは4以下であればよく、製造の容易性の点からは、3以下であることがより好ましい。
【0144】
上記一般式(III)におけるbは分子会合体中のカチオンの分子数を、dは分子会合体中のアニオンの分子数を示し、b及びdは1以上の整数を表す。本態様における色材はその結晶乃至凝集体において、b及びdがそれぞれ1の場合に限られず、それぞれ2、3、4…と2以上のいかなる自然数をもとり得る。本態様における色材は、耐熱性及び耐光性の点から、少なくとも一部がb≧2の分子会合体を形成していることが好ましい。また、本態様における色材は、耐熱性及び耐光性の点から、少なくとも一部がd≧2の分子会合体を形成していることが好ましい。
bが2以上の場合、分子会合体中に複数あるカチオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。また、dが2以上の場合、分子会合体中に複数あるアニオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよく、有機アニオンと無機アニオンを組み合わせて用いることもできる。
【0145】
色材の平均粒径および青色着色層中の色材の含有量については、上述した第1態様の青色着色層の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0146】
色材の形成方法については、特許5223980号公報、および特許5403175号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0147】
(B)他の色の着色層
本発明に用いられる複数の着色層は、通常、上述した青色着色層の他、赤色着色層、緑色着色層を有する。また、上述した3色以外の着色層を有していてもよい。
【0148】
赤色着色層および緑色着色層は、通常、色材とバインダー樹脂とを含むものである。
赤色着色層に用いられる色材としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、赤色色材としては、PR149、PR177、PR179、PR202、PR207、PR209、PR214、PR242、PR254、PR255、PR264、ピグメントオレンジ38等を好適に用いることができる。
【0149】
また、緑色着色層に用いられる色材としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、緑色色材としては、PG1、PG7、PG36、PG58等を挙げることができる。
【0150】
赤色着色層および緑色着色層に用いられるバインダー樹脂、その他の成分については上記青色着色層に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、赤色着色層および緑色着色層中の色材の含有量についても、青色着色層中の色材の含有量と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0151】
(C)その他
本発明における複数色の着色層の配列としては、一般的な液晶表示装置に用いられるものと同様とすることができ、具体的には、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
【0152】
着色層の厚みとしては、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができ、特に限定されないが、通常、0.5μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜3.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0153】
着色層の形成方法としては、一般的なカラーフィルタの形成方法に用いられる方法と同様とすることができ、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィ法、インクジェット法を挙げることができる。
【0154】
(2)透明基板
本発明に用いられる透明基板は、上述した複数色の着色層等を支持するものである。
透明基板と透明性としては、例えば、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0155】
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
【0156】
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
【0157】
(3)その他の構成
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、および複数の着色層以外にも、例えば、遮光部、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。これらの構成については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0158】
(4)カラーフィルタの形成方法
本発明におけるカラーフィルタの形成方法は、上述した着色層を形成することができれば特に限定されず、一般的なカラーフィルタの形成方法と同様とすることができる。
【0159】
2.対向基板
本発明における対向基板については、液晶セルの駆動方式に応じて一般的なものを適宜選択して用いることができる。対向基板は、通常、カラーフィルタと対向する側の表面上に配向膜が形成される。また、対向基板は、必要に応じて、例えば、カラーフィルタと対向する側の表面上に上述した柱状スペーサが形成されていてもよい。
【0160】
3.液晶層
本発明における液晶層に用いられる液晶としては、液晶セル部の駆動方式に応じて適宜選択することができ、一般的なものを用いることができる。上記液晶としては、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0161】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタ及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタ及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0162】
4.その他
本発明の液晶セル部は、上述したカラーフィルタ、対向基板、および液晶層を有していれば特に限定されず、必要な構成を適宜選択して追加することができる。上記液晶セル部は、通常、カラーフィルタと対向基板との間に液晶層を封止するシール剤が配置される。シール剤については、一般的な液晶表示装置に用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0163】
本発明の液晶セル部の駆動方式としては、一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
【0164】
液晶セル部の形成方法については、一般的な液晶表示装置の液晶セルの形成方法と同様とすることができる。
【0165】
II.バックライト部
本発明におけるバックライト部は、少なくとも発光装置を有するものである。
【0166】
1.発光装置
本発明における発光装置は、青色発光素子と、赤色蛍光体と、緑色蛍光体とを有するものである。
本発明における発光装置は、通常、赤色領域(波長600nm〜680nmの範囲)、緑色領域(波長500nm〜545nmnmの範囲)、青色領域(波長380nm〜485nmの範囲)の各波長領域にそれぞれ1つ以上のピーク波長を有する発光スペクトルを示すように調整される。
【0167】
本発明の発光装置、ならびに、青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体の発光スペクトルは、一般的な分光光度計を用いて測定することができる。
【0168】
(1)赤色蛍光体
本発明における赤色蛍光体は、表面処理された下記一般式(II)で表わされる蛍光体である。
【0169】
一般式(II)
M
12[M
21−xMn
4+xF
6]
【0170】
(上記一般式(II)中、M
1は、K
+、Li
+、Na
+、Rb
+、Cs
+及びNH
4+からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、M
2は、第4族元素および第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、xは0<x<0.2である。)
【0171】
上記赤色蛍光体は、4価のMnで付活された、上記一般式(II)で示される化学組成を有し、蛍光体の内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有する赤色蛍光体である。このような蛍光体は、例えば、特許文献1に記載されたように、従来の方法で作成された上記一般式(II)で示される化学組成を有する蛍光体粒子の表面を、ある一定の厚みで、他の材料で被覆する表面処理をすることにより形成することができる。このような他の材料としては、一般的な蛍光体の被覆材料として用いられるものと同様とすることができ、具体的には、アルミナ、シリカのような酸化物や、ガスバリア性の高い樹脂や、4価のマンガンイオン濃度を低くした当該蛍光体の化学組成構成元素を含む化合物である。上記他の材料は、その材料自体が光を吸収しないように、発光素子や蛍光体の発光に対して透光性が高いことが好ましい。蛍光体粒子表面を被覆して表面処理する方法としては、蛍光体粒子の表面を、ある一定の深さまで反応溶液中にて反応させたり、公知の方法で、蛍光体粒子表面に他の材料を付着させたりすることにより行うことができる。
【0172】
上記一般式(II)中、M
1は少なくともK
+を含み、Li
+、Na
+、Rb
+、Cs
+及びNH
4+からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンである。また、M
2は、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、Si、Ge、Sn、TiおよびZrの少なくとも一種である。また、xは0<x<0.2である。
【0173】
また、赤色蛍光体の賦活剤濃度としては、所望の赤色光を発光することができれば特に限定されないが、6モル%以下であることが好ましく、なかでも1モル%〜5モル%の範囲内、特に2モル%〜4モル%の範囲内であることが好ましい。
赤色蛍光体の賦活剤濃度が高すぎる場合は、赤色蛍光体の耐光性が低下する可能性があるからであり、赤色蛍光体の賦活剤濃度が低すぎる場合は、赤色蛍光体が励起光を吸収しにくくなり発光効率が低下する可能性があるからである。
赤色蛍光体の賦活剤濃度とは、上述した一般式(II)で表わされる蛍光体におけるMのモル比をいい、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)や蛍光X線分析法を用いて測定することができる。
【0174】
本発明においては、上述した一般式(II)で表わされる蛍光体の他に加えて、公知のMnで賦活されたMgフルオロジャーマネート蛍光体や、CASN、SCASN系の窒化物蛍光体等を使用することができる。
【0175】
赤色蛍光体は、通常、後述する緑色蛍光体とともに樹脂中に分散されて後述する青色発光素子上に配置される。上記樹脂としては、一般的な発光装置に用いられるものを使用することができ、具体的には、シリコーン樹脂等を挙げることができる。
【0176】
(2)緑色蛍光体
本発明における緑色蛍光体としては、一般的な白色LED光源に用いられるものから適宜選択して用いることが可能であり、例えば、Mn賦活γ―ALON蛍光体、CaSc
2O
4:Ce系蛍光体、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce系蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si
2O
2N
2:Eu系蛍光体、M
3Si
6O
12N
2:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)、例えば、(Ca,Sr,Ba,Zn)
8MgSi
4O
16(F,Cl,Br,I):EuのようなEu賦活ハロシリケート蛍光体、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)
2SiO
4:Eu系蛍光体のようなEu賦活シリケート蛍光体、例えば、(Si,Al)
6(O,N)
8:EuのようなEu賦活βサイアロン蛍光体、例えば、SrGa
2S
4:Eu系蛍光体のようなEu賦活チオガレート蛍光体、(Y,Lu)
3(Al,Ga)
5O
12:Ceで示される希土類アルミン酸塩蛍光体、La
3Si
6N
11:Ceで示されるランタンシリコンナイトライド系蛍光体等を挙げることができる。
また、上記緑色蛍光体は、一種で用いてもよく、二種以上で用いてもよい。
なお、上記各組成式において、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。
本発明においては、なかでも緑色蛍光体がEu賦活βサイアロン蛍光体であることが好ましい。緑色光を良好に発光させることができ、経時劣化も少ないからである。Eu賦活βサイアロン蛍光体については、公知のものを用いることができるが、例えば国際公開第2007/066733号パンフレットに記載されたものを好適に用いることができる。
【0177】
(3)青色発光素子
本発明における青色発光素子は、蛍光体を励起する光を発光するものである。
青色発光素子としては、可視光の短波長領域の光を発するものを使用することができる。一般的には、青色に発光する発光素子としては、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いることができる。特に、青色発光素子としては、具体的には、上記窒化物系半導体を用いた青色発光ダイオード(青色LED)や、青色レーザーダイオード(LD)を挙げることができる。青色LEDおよび青色LDについては公知のものを用いることができる。
【0178】
(4)その他の構成
本発明に用いられる発光装置は、上述した青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体を有していれば特に限定されず、必要な構成を適宜選択して用いることができる。
【0179】
このような構成としては、一般的な発光装置に用いられるものと同様とすることができる。上記構成としては、発光装置の形式に応じて適宜選択することができ、例えば、砲弾型の発光装置の場合、マウントリード、インナーリード、導線ワイヤー、モールド部材等を挙げることができる。また、表面実装型の発光装置の場合、リードフレーム、導線ワイヤー、電極等を挙げることができる。
【0180】
また、このような構成としては、上述した青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体などを配置するための成型体を挙げることができる。このような成型体は、一般的な発光装置に用いられるものを使用することができる。また、成型体の材料としては、例えば、酸化チタンを含有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。また、成型体は、リードフレームと一体的に形成することができる。
【0181】
(5)その他
発光装置の形式は特に制限されず、通常用いられる形式から適宜選択することができる。発光装置の形式としては、例えば、砲弾型、表面実装型等を挙げることができる。一般に砲弾型とは、外面を構成する樹脂の形状を砲弾型に形成したものを指す。また表面実装型とは、凹状の収納部内に光源なる発光素子及び樹脂を充填して形成されたものを示す。また、発光装置の形態としては、平板状の実装基板上に青色発光素子を実装し、その青色発光素子を覆うように、緑色蛍光体および赤色蛍光体を含有した封止樹脂をレンズ状等に形成したものも挙げることができる。
【0182】
以下、本発明の実施の形態に係る発光装置の一例を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明における発光装置の一例を示す概略断面図であり、表面実装型発光装置の一例である。
図4に示す発光装置21は、可視光の短波長側(例えば380nm〜485nm)の光を発する窒化ガリウム系化合物半導体の青色発光素子24と、青色発光素子24を載置する凹部22を形成する成形体23と、を有する。成形体23は第1のリード25と第2のリード26とを有しており、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂により一体成形されている。成形体23は底面と側面を持つ凹部22を形成しており、凹部22の底面に青色発光素子24が載置されている。青色発光素子24は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は第1のリード25及び第2のリード26とワイヤー211、212を介して電気的に接続されている。発光素子24は封止部材により封止されている。封止部材はエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。封止部材は発光素子からの光を波長変換する赤色蛍光体27および緑色蛍光体28を含有している。封止部材は、蛍光体を高密度で含む第一の部位29aと、蛍光体の密度が低いか、蛍光体を実質的に含まない第二の部位29bとから構成されている。
【0183】
本発明においては、上記発光装置がリードフレームを有し、上記赤色蛍光体を上記リードフレームの上面から200μm以内で配置させたものであることが好ましく、なかでも150μm以内の範囲内で配置させたものであることが好ましく、特に100μm以内の範囲内に配置させたものであることが好ましい。本発明においては、赤色蛍光体および緑色蛍光体のうち少なくとも赤色蛍光体の一部がリードフレームに接していることがさらに好ましい。蛍光体の放熱経路を確保することができ、赤色蛍光体が劣化することを好適に抑制することができるからである。
なお、リードフレームの上面からの距離とは、例えば、
図4において、第1のリードおよび第2のリードの青色発光素子側の表面から蛍光体の表面までの垂直方向の距離をいう。
【0184】
(5)発光装置の形成方法
本発明における発光装置の形成方法としては、一般的な発光装置の形成方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0185】
2.その他
本発明におけるバックライト部は、上記発光装置を有していれば特に限定されず、必要な構成を適宜選択して用いることができる。このような構成としては、例えば、導光板、光拡散シート、プリズムシート等の光学部材や、発光装置を実装する実装基板等を挙げることができる。
導光板としては、一般的な発光装置に用いられるものを使用することができる。導光板としては、透光性と機械的強度を考慮して、アクリル樹脂やエポキシ樹脂を材料として射出成型によって形成される。光の取り出しを考慮して、導光板の各面に、凹凸加工を施してもよい。
また、光拡散シートおよびプリズムシートとしては、一般的なバックライトに用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
また、実装基板としては、一般的な発光装置に用いられるものを使用することができ、ガラスエポキシ樹脂のような絶縁性の板材に、銅、銀、金メッキなどにより配線パターンが施されているものを挙げることができる。実装基板は、可撓性を有するフレキシブル基板とすることもできる。また、実装基板は、通常、外部電極と接続させるための電極端子を有する。
発光装置は、半田や銀ペーストのような導電性材料によって、実装基板の配線パターンに接続される。
【0186】
また、本発明におけるバックライト部としては、
図1に示すように、発光装置21を導光板220の端面に配置させたものであってもよく、
図5に示すように、偏光板30B等の光学部材の液晶セル部10側とは反対側の全面に発光装置21を配置させた、いわゆる直下型のものであってもよい。
【0187】
III.その他の構成
本発明の液晶表示装置は、上述した液晶セル部と、バックライト部とを有していればよく、必要に応じて他の構成を適宜選択して追加することができる。本発明の液晶表示装置は、通常、液晶セル部の両面上に偏光板が配置される。また、液晶表示装置の液晶セル部の表示面側にタッチパネルセンサを配置してもよい。また、液晶表示装置の表示面側に前面板を配置してもよい。偏光板、タッチパネルセンサおよび前面板については、一般的な液晶表示装置に用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0188】
IV.その他
本発明の液晶表示装置の製造方法については、一般的な液晶表示装置の製造方法と同様とすることができ、例えば、後述する「B.液晶表示装置の製造方法」に記載する方法を挙げることができる。
【0189】
本発明の液晶表示装置の用途としては、例えば、携帯電話、タブレット端末、テレビ、パーソナルコンピューター、ウェアラブル端末等に用いることができる。
【0190】
B.液晶表示装置の製造方法
本発明の液晶表示装置の製造方法は、透明基板および上記透明基板上に形成された複数色の着色層を有するカラーフィルタ、対向基板、ならびに上記カラーフィルタおよび上記対向基板の間に形成された液晶層を備える液晶セル部と、青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体を有する発光装置を備えるバックライト部とを有する液晶表示装置を製造する製造方法であって、上記一般式(I)で表わされる色材を含む青色着色層を有する上記カラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成工程と、上記赤色蛍光体が、表面処理された上記一般式(II)で表わされる蛍光体である上記発光装置を形成する発光装置形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0191】
また、本発明の液晶表示装置の製造方法は、透明基板および上記透明基板上に形成された複数色の着色層を有するカラーフィルタ、対向基板、ならびに上記カラーフィルタおよび上記対向基板の間に形成された液晶層を備える液晶セル部と、青色発光素子、赤色蛍光体および緑色蛍光体を有する発光装置を備えるバックライト部とを有する液晶表示装置を製造する製造方法であって、上記一般式(III)で表わされる色材を含む青色着色層を有する上記カラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成工程と、上記赤色蛍光体が、表面処理された上記一般式(II)で表わされる蛍光体である上記発光装置を形成する発光装置形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0192】
本発明によれば、上記カラーフィルタ形成工程および発光装置形成工程を有することにより、省電力性で表示品位の高く、表示品位の経時劣化を抑制可能な液晶表示装置を製造することができる。
【0193】
本発明の液晶表示装置の製造方法における記カラーフィルタ形成工程および発光装置形成工程に用いられるカラーフィルタの形成方法および発光装置の形成方法ならびに得られるカラーフィルタおよび発光装置については、上述した「A.液晶表示装置」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。また、本発明により製造される液晶表示装置についても上述した「A.液晶表示装置」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0194】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0195】
[実施例1]
(硬化性樹脂組成物の調製)
重合槽中にメタクリル酸メチル(MMA)を63重量部、アクリル酸(AA)を12重量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88重量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を7重量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、更に100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、更にメタクリル酸グリシジル(GMA)を7重量部、トリエチルアミンを0.4重量部、及びハイドロキノンを0.2重量部添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
次に下記の材料を室温で攪拌、混合して硬化性樹脂組成物とした。
【0196】
<硬化性樹脂組成物の組成>
・上記共重合樹脂溶液(固形分50%):16重量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399):24重量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70):4重量部
・2−メチル−1−(4‐メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン:4重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:52重量部
【0197】
(ブラックマトリクスの形成)
まず、下記分量の成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調製した。
<黒色顔料分散液の組成>
・黒色顔料:23重量部
・高分子分散材(ビックケミー・ジャパン(株) Disperbyk111):2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル):75重量部
次に、下記分量の成分を十分混合して、遮光層用組成物を得た。
<遮光層用組成物の組成>
・上記黒色顔料分散液:61重量部
・硬化性樹脂組成物:20重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:30重量部
【0198】
そして、厚み0.7mmのガラス基板(旭硝子(株) AN100)上に上記遮光層用組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、膜厚約1μmの遮光層を形成した。当該遮光層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05wt%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより加熱処理を施して遮光部を形成すべき領域にブラックマトリクスを形成した。
【0199】
(着色層の形成)
上記のようにしてブラックマトリクスを形成した基板上に、下記組成の赤色硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布し、その後、70℃のオーブン中で3分間乾燥した。次いで、赤色硬化性樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、赤色硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより、加熱処理を施して赤色画素を形成すべき領域に赤色のレリーフパターン(厚み2.0μm)を形成した。
次に、下記組成の緑色硬化性樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、緑色画素を形成すべき領域に緑色のレリーフパターンを形成した。
さらに、下記組成の青色硬化性樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、青色画素を形成すべき領域に青色のレリーフパターンを形成し、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる着色層を形成した。
【0200】
(青色色材1の調製)
和光純薬(株)製 1−ヨードナフタレン15.2g(60mmol)、三井化学(株)製 ノルボルナンジアミン(NBDA)(CAS No.56602−77−8)4.63g(30mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 8.07g(84mmol)、アルドリッチ製 2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’,−ジメトキシビフェニル 0.09g(0.2mmol)、和光純薬(株)製 酢酸パラジウム 0.021g(0.1mmol)、キシレン 30mLに分散し130℃〜135℃で48時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し水を加え抽出した。次いで硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮することにより下記化学式(1)で示される中間体1 8.5g(収率70%)を得た。得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):407(M+H)、
・元素分析値:CHN実測値 (85.47%、8.02%、6.72%);理論値(85.26%、8.11%、6.63%)
【0201】
【化17】
【0202】
中間体1 8.46g(20.8mmol)、東京化成工業製 4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン13.5g(41.6mmol)トルエン60mLを入れ45℃〜50℃で攪拌した。和光純薬工業製オキシ塩化リン 6.38g(51.5mmol)を滴下し、2時間還流し冷却した。反応終了後、トルエンをデカントした。樹脂状析出物をクロロホルム40mL、水40mL、濃塩酸を加えて溶解しクロロホルム層を分液した。クロロホルム層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物に酢酸エチル65mLを加え還流した。冷却の後に析出物を濾過し下記化学式(2)で示される青色色材1(BB7−Nb−dimer)を15.9g(収率70%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):511(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (78.13%、7.48%、7.78%);理論値(78.06%、7.75%、7.69%)
【0203】
【化18】
【0204】
(着色組成物組成)
<赤色硬化性樹脂組成物の組成>
・C.I.ピグメントレッド177:2重量部
・C.I.ピグメントレッド254:4重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:2重量部
・上記硬化性樹脂組成物:30重量部(固形分40%)
・酢酸−3−メトキシブチル:80重量部
【0205】
<緑色硬化性樹脂組成物の組成>
・C.I.ピグメントグリーン58:5重量部
・C.I.ピグメントイエロー138:1重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:2重量部
・上記硬化性樹脂組成物:30重量部(固形分40%)
・酢酸−3−メトキシブチル:80重量部
【0206】
<青色硬化性樹脂組成物の組成>
・上記青色色材1:5重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・上記硬化性樹脂組成物:30重量部(固形分40%)
・酢酸−3−メトキシブチル:80重量部
【0207】
(保護膜の形成)
上記のようにして着色層を形成した基板上に、硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥塗膜2μmの塗布膜を形成した。
硬化性樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて保護層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して保護膜を形成した。
【0208】
(スペーサの形成)
上記のようにして着色層及び保護層を形成した基板上に、硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し塗布膜を形成した。硬化性樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置して、プロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いてスペーサの形成領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して、上端部面積が100μm
2で高さ3.0μmの固定スペーサを所定の個数密度となるように形成した。
【0209】
(液晶パネルの作製)
上記のようにして得られたカラーフィルタにポリイミドよりなる配向膜を形成した。次いでTFTを形成したガラス基板上にIPS液晶を必要量滴下し、上記カラーフィルタを重ね合わせ、UV硬化性樹脂をシール材として用い、常温で0.3kgf/cm
2の圧力をかけながら400mJ/cm
2の照射量で露光することにより接合して、セル組みし、液晶パネルを得た。
【0210】
(発光装置の作製)
成形体として、酸化チタンおよびエポキシ樹脂を含み、凹部を有する形状の樹脂成形体を用いた。また、上記成形体は、銀メッキを施した銅を主材とするリードフレームが一体形成されているものを用いた。青色発光素子は、発光ピーク波長が444nmの窒化ガリウム系半導体発光素子を用いた。成型体の凹部の底面にフェニルシリコーン樹脂を接着剤として青色発光素子を配置した後、金のワイヤーで、青色発光素子の正負一対の電極と、リードフレームとをそれぞれ接続した。次に、下記組成の封止部材用樹脂硬化物を成形体の凹部に充填した後硬化させることにより封止部材を形成した。
【0211】
<封止部材の組成>
・シリコーン樹脂(主剤):100重量部
・下記赤色蛍光体:31.57重量部
・β−サイアロン:11.68重量部
・フィラー(シリカ):5重量部
・ナノフィラー(シリカ):0.4重量部
・硬化剤(液状シリコーン樹脂):400重量部
【0212】
(赤色蛍光体の製造例1)
表1に示す仕込み組成比となるように、K
2MnF
6を21.66g秤量し、55重量%のHF水溶液800gに溶解した後、40重量%のH
2SiF
6水溶液400gを加えて溶液Aを調製した。一方でKHF
2を260.14g秤量し、それを55重量%のHF水溶液450gに溶解させて溶液Bを調製した。また、40重量%のH
2SiF
6水溶液200gを秤量したものを溶液Cとした。
次に室温(23℃〜28℃)で、溶液Aを撹拌しながら溶液Bと溶液Cとを同時に滴下していくことで蛍光体結晶(フッ化物粒子)を析出させていき、表2に示すように、溶液Bと溶液Cのそれぞれ75重量%の滴下が終了した段階で一旦滴下を停止した(第一の工程)。
還元剤として15gを秤量した30%のH
2O
2水溶液を溶液Aに添加した(第二の工程)後、溶液Bと溶液Cの滴下を再開した(第三の工程)。溶液Bと溶液Cの滴下が終了後、得られた沈殿物を分離、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄を行い、70℃で10時間乾燥することで製造例1の赤色蛍光体(K
2[Si
0.97Mn
4+0.03F
6])を作製した。本製造例1の赤色蛍光体は、フッ化物粒子の表面付近に4価のマンガンイオン濃度が低い領域が存在した。
【0213】
【表1】
【0214】
【表2】
【0215】
以上の手順により、発光装置を得た。
【0216】
(バックライト部の作製)
上述の発光装置と、上記発光装置を実装するための実装基板と、導光板とを準備した。アクリル樹脂を板状に成型して導光板を作成した。実装基板は、ガラスエポキシ樹脂の表面に銅箔を配置して配線パターンを形成した。上記の発光装置を半田で実装基板に配置した。実装基板に発光装置を実装した後、発光装置の光取り出し面側を、導光板の光入射面に向かい合うように配置させてバックライト部を作製した。
【0217】
(液晶表示装置の作製)
上記、液晶パネルとバックライトユニットの間に拡散シート、プリズムシートを設置し、ドライバーICを取り付け液晶表示装置を作製した。
【0218】
[実施例2]
青色色材2を使用した以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を作製した。
(青色色材2の調製)
関東化学社製12モリブドリン酸・n水和物0.433g(0.18mmol、nは30相当)と関東化学社製12タングストリン酸・n水和物3.55g(1.04mmol、nは30相当)を水50mLに溶解させた。
そこに、水50mLとメタノール100mLの混合溶媒に溶解させた青色色材1(中間体2) 2.0g(1.83mmol)に加え、常温で1時間攪拌した。該反応液を減圧下で濾取し、水で洗浄した。該ケーキを減圧乾燥して、モリブデンとタングステンとのモル比が14.6:85.4を得た。
【0219】
[実施例3]
青色色材3を使用した以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を作製した。
(青色色材3の調製)
12モリブドリン酸・n水和物を0.014g、12タングストリン酸・n水和物を4.15gとした以外は、青色色材2と同様にして、モリブデンとタングステンとのモル比が0.4:99.6を得た。
【0220】
[実施例4]
青色色材4を使用した以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を作製した。
(青色色材4の調製)
12モリブドリン酸・n水和物を0.577g、12タングストリン酸・n水和物を3.34gとした以外は、青色色材2と同様にして、モリブデンとタングステンとのモル比が17.8:82.3を得た。
【0221】
[比較例1]
青色色材としてBasic Blue 7(BB7)(東京化成工業製)を使用し、赤色蛍光体として、上述の赤色蛍光体の製造例1において、第二の工程を行わない以外は、製造例1と同様に赤色蛍光体を製造した。発光装置について、赤色蛍光体の製造方法を変更した以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を作製した。
【0222】
[比較例2]
青色色材5を使用した以外は比較例1と同様にして液晶表示装置を作製した。
(青色色材5の調製)
東京化成工業(株)製 ナフタレン−2,6−スルホネート2ナトリウム1.62g(50.2mmol)をメタノール50mL、水50mLの混合液に50−55℃で加熱溶解させ、東京化成工業(株)製 Basic Blue 7(CI−42595)5g(97.3mmol)を加え、同温で1時間攪拌した。エバポレータで溶液中のメタノールを濃縮し、水を100mL加え沈殿物を濾取し、水で洗浄した。該ケーキを減圧乾燥して下記化学式(5)で表される青色色材5 5.2g(収率86%)を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):478(+)、143(2−)(2価)
・元素分析値:CHN実測値 (73.12%、6.77%、6.86%);理論値(73.40%)
【0223】
【化19】
【0224】
[評価]
実施例1〜4および比較例1〜2の液晶表示装置を25℃で、150mAで駆動し1000時間静置して耐光性に対する信頼試験を行なった。試験前後の液晶表示装置の発光スペクトルをSR-UL1(トプコン社製)で測定した。WHITE座標の色シフト、NTSC比を比較したところ、比較例1、2に比べて実施例1〜4が良好な結果となった。WHITE座標およびNTSC比の結果を表3に、静置前後の赤色、緑色および青色の各座標を表4および表5に示す。なお、表中の耐光性前は試験前の測定値、耐光性後は試験後の測定値を示す。
【0225】
【表3】
【0226】
【表4】
【0227】
【表5】