【解決手段】静電チャック基板10の基板載置面11aには、基板Wが載置される。静電チャック基板10は、基板Wを加熱する抵抗発熱体13を有している。静電チャック基板10は、接着層20によりベースプレート30の上面30aに接着されている。ベースプレート30には、その上面30aと下面30bの間を貫通する貫通孔32が形成されている。接着層20には、ベースプレート30の貫通孔32と連通する貫通孔21が形成されている。ベースプレート30には、貫通孔32に挿入され、接着層20の貫通孔21に先端40aが配置された調整ロッド40が支持されている。
前記保持基板は、前記基板が載置される上面と前記発熱体との間に、前記基板を吸着する静電電極を有すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度調整装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を説明する。
なお、参照する添付図面は、部分的に拡大して示している場合があり、寸法,比率などは実際と異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部のハッチングを省略している。また、図面が煩雑になるのを防ぐために一部の符号を省略することがある。
【0009】
図1(a)に示すように、静電チャックは、静電チャック(ESC)基板10と、接着層20と、ベースプレート(基台)30とを有している。ベースプレート30は、静電チャック基板10を支持する部材である。
【0010】
静電チャック基板10は、基板本体(基体)11と、基板本体11に内蔵された静電電極12及び抵抗発熱体13を有している。基板本体11は、互いに対向する基板載置面11a(図において上面)と接着面11b(図において下面)を有している。基板載置面11aと接着面11bは互いに平行である。静電チャック基板10は、円形板状に形成されている。静電チャック基板10の大きさ(直径)はたとえば300mmである。また、静電チャック基板10の厚さは、たとえば、5mmである。基板本体11の基板載置面11aに基板Wが載置される。なお、以下の説明において、基板本体11を静電チャック基板10として説明する場合もある。
【0011】
基板本体11の材料は、絶縁性を有する材料である。たとえば、基板本体11の材料は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等のセラミックスや、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの有機材料である。本実施形態では、入手のし易さ、加工のし易さ、プラズマ等に対する耐性が比較的高いなどの点から、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックスを使用している。とくに、窒化アルミニウムを使用した場合、その熱伝導率は150〜250W/(m・K)と大きいため、静電チャック基板10に吸着した被吸着物の面内の温度差を小さくする上で好ましい。
【0012】
静電電極12は、薄膜状に形成された電極である。静電電極12は、基板本体11において、基板載置面11aの近傍に位置する部分に内設されている。静電電極12は、図示しない吸着用電源と電気的に接続される。静電電極12は、吸着用電源から印加される電圧により生じる静電力によって、基板載置面11aに基板Wを固定する。静電電極12の材料として、たとえば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)を用いることができる。なお、図では、1つの静電電極12として示しているが、同一平面上に配置された複数の電極を含む。
【0013】
抵抗発熱体13は、基板本体11において、静電電極12と、接着面11bとの間に内設されている。複数の抵抗発熱体13は、基板本体11内において、基板載置面11aと平行な面上に配置されている。各抵抗発熱体13は静電電極12と電気的に絶縁されている。
【0014】
複数の抵抗発熱体13は、図示しない加熱用電源と電気的に接続される。複数の抵抗発熱体13は、加熱用電源から印加される電圧に応じて発熱する。複数の抵抗発熱体13は、複数のゾーンに分けられ、個々に制御される。抵抗発熱体13の材料として、たとえば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)を用いることができる。このような静電チャック基板10は、たとえばタングステンを印刷したグリーンシートを積層後、焼成して形成される。
【0015】
図2に示すように、静電チャック基板10には、複数のゾーンZ1,Z2,Z3,Z4がたとえば同心円状に設定されている。
図1(a)に示す複数の抵抗発熱体13は、基板W全体の温度を均一とするように、ゾーンZ1〜Z4毎に制御される。
【0016】
静電チャック基板10は、接着層20によりベースプレート30の上面30aに接着されている。接着層20は、ベースプレート30の上に静電チャック基板10を接着する。また、接着層20は、静電チャック基板10の熱をベースプレート30に伝導する。接着層20の材料としては、熱伝導率の高い材料を選択するのが好ましく、たとえばシリコーン樹脂などを用いることができる。なお、接着層20の厚さは、たとえば1.0〜1.5mmである。
【0017】
ベースプレート30には管路31が形成されている。管路31は、冷却媒体を循環させるためのものである。冷却媒体は、たとえば水やガルデンである。たとえば、管路31は、ベースプレート30の上面30aと平行な面に沿って形成されている。
【0018】
図3は、管路31の一例を示す。管路31は、冷却媒体によりベースプレート30全体を冷却するように形成されている。冷却媒体は、管路31の一端の導入部31aから管路31内へ供給され、管路31の他端の排出部31bから排出される。管路31、導入部31a及び排出部31bは、冷却機構の一例である。
【0019】
ベースプレート30の材料としては、たとえばアルミニウムや超硬合金等の金属材料や、その金属材料とセラミックス材との複合材料等を用いることができる。本実施形態では、入手のし易さ、加工のし易さ、熱伝導性が良好であることなどの点から、アルミニウム又はその合金を使用し、その表面にアルマイト処理(絶縁層形成)を施したものを使用している。なお、ベースプレート30の厚さは、たとえば35〜40mmである。
【0020】
図1(a)に示すように、ベースプレート30には、上面30aと下面30bとの間を貫通する複数の貫通孔32が形成されている。たとえば、
図3に示すように、複数の貫通孔32は、ベースプレート30の面内(上面30a、または上面30aと平行な面)において、密度が均一となるように形成されている。
【0021】
図1(a)に示すように、接着層20には、上面20aと下面20bの間を貫通し、ベースプレート30の貫通孔32と連通する貫通孔21が形成されている。ベースプレート30の貫通孔32には調整ロッド40が挿入されている。調整ロッド40は、ベースプレート30にて支持されている。ベースプレート30は、調整ロッド40の先端40aを、接着層20の貫通孔21内に配置可能に支持する。
【0022】
次に、ベースプレート30の貫通孔32と調整ロッド40の詳細を説明する。なお、ここで説明する部材については、
図1(a)において詳細な形状と符号を省略する。
図1(b)に示すように、ベースプレート30の貫通孔32は、上面30aから下面に向かって延びる支持孔33と、下面に開口し支持孔33より拡径された調整孔34とを有している。調整孔34の内側面には、ねじ溝(雌ねじ)34aが形成されている。接着層20の貫通孔21の内径(直径)は、支持孔33の内径(直径)と等しい。
【0023】
調整ロッド40は、先端40a側の挿入部41と支持部42とを有している。挿入部41は、支持孔33及び接着層20の貫通孔21内に挿入される。支持部42は調整孔34内に挿入される。支持部42の外側面には調整孔34のねじ溝34aに螺入可能なねじ山(雄ねじ)42aが形成されている。調整ロッド40(挿入部41)の直径は、たとえば1〜5mmである。
【0024】
支持部42の長さと調整孔34の深さは、調整ロッド40の先端40aを配置する範囲に応じて設定されている。本実施形態では、接着層20の貫通孔21内に調整ロッド40の先端40aが配置されるように設定されている。つまり、調整ロッド40の移動範囲は、接着層20の厚さに応じて設定される。
【0025】
支持部42の端面42bには、治具挿入部42cが凹設されている。治具挿入部42cは、図示しない治具(たとえば、六角棒スパナや精密ドライバー等)を挿入可能に形成されている。これらの治具を用いて支持部42、つまり調整ロッド40を回転させ、調整ロッド40の先端40aの位置を調整することが可能である。
【0026】
調整ロッド40は、接着層20の熱伝導率よりも高い熱伝導率の材料により形成される。このような調整ロッド40の材料としては、たとえばアルミニウムや超硬合金等の金属材料や、その金属材料とセラミックス材との複合材料等を用いることができる。本実施形態では、入手のし易さ、加工のし易さ、熱伝導性が良好であることなどの点から、アルミニウム又はその合金が用いられる。
【0027】
次に、上記の静電チャックの作用を説明する。
静電チャック基板10の抵抗発熱体13は、通電によって発熱し、静電チャック基板10の基板載置面11aに載置された基板Wを加熱する。ベースプレート30は、冷却媒体により冷却される。したがって、静電チャック基板10の熱は、接着層20を介してベースプレート30へ伝達される。抵抗発熱体13による加熱と、ベースプレート30による冷却によって、静電チャック基板10の上面における温度を制御する。
【0028】
抵抗発熱体13の形状は、静電チャック基板10の基板載置面11aに載置された基板Wにおいて均一な温度となるように設計されている。しかし、抵抗発熱体13の形状、たとえば配線パターンの幅や厚さは、製造工程においてばらつきを生じる。このようなばらつきは、抵抗発熱体13における部分的な抵抗値のばらつき、つまり発熱量の部分的な変化を生じさせる。従って、抵抗発熱体13における形状のばらつきは、基板載置面11aにおける温度の不均一性を招く。たとえば、抵抗発熱体13のパターン幅が設計値よりも大きいと、パターン幅と設計値の間の差に応じて抵抗値が低くなり、発熱温度が低くなる。同様に、ベースプレート30において、製造工程において生じる管路31の形状ばらつきは、基板載置面11aにおける温度の不均一性を招く。
【0029】
調整ロッド40は、その先端40aが接着層20の貫通孔21内に配置され、貫通孔21に沿って移動するようにベースプレート30に支持されている。調整ロッド40は、接着層20の熱伝導率より高い熱伝導率の材料により形成されている。そして、静電チャック基板10の熱は、ベースプレート30へと伝達する。したがって、接着層20の貫通孔21付近における静電チャック基板10の温度は、貫通孔21に配置された調整ロッド40の熱伝導率と接着層20の熱伝導率の差に応じた値となる。たとえば、調整ロッド40の熱伝導率と接着層20の熱伝導率の差が大きいほど、貫通孔21とその付近における温度は低くなる。調整ロッド40による温度は、その調整ロッド40の外径、貫通孔21の内径に応じた範囲に影響する。
【0030】
また、接着層20の貫通孔21付近記における静電チャック基板10の温度は、貫通孔21に配置された調整ロッド40の先端40aと静電チャック基板10の接着面11bの間の距離に応じた値となる。調整ロッド40の先端40aが静電チャック基板10の接着面11bに近いほど、静電チャック基板10から調整ロッド40へ熱が効率よく伝達するため、貫通孔21とその付近における温度は低くなる。
【0031】
したがって、静電チャック基板10の基板載置面11aの温度を測定し、測定結果に応じて調整ロッド40の先端40aの位置を調整する。温度測定には、接触式温度計(例えば、熱電対を用いた温度計)又は非接触式温度計(例えば、赤外線放射温度計)を用いることができる。これにより、静電チャック基板10の基板載置面11aにおける発熱密度、発熱密度の分布を調整することができる。これにより、静電チャック基板10の基板載置面11aに吸着保持した基板Wの温度を均一に制御することができる。
【0032】
また、調整ロッド40は、ベースプレート30の上面30aと下面30bの間を貫通する貫通孔32に螺入されている。静電チャック基板10の基板載置面11aの温度を測定しながらベースプレート30の下面30bから調整ロッド40の先端40aの位置を調整する。これにより、静電チャック基板10の基板載置面11aの該当する調整ロッド40付近の温度を容易に変化させることができる。
【0033】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)静電チャック基板10の基板載置面11aには、基板Wが載置される。静電チャック基板10は、基板Wを加熱する抵抗発熱体13を有している。静電チャック基板10は、接着層20によりベースプレート30の上面30aに接着されている。ベースプレート30には、その上面30aと下面30bの間を貫通する貫通孔32が形成されている。接着層20には、ベースプレート30の貫通孔32と連通する貫通孔21が形成されている。ベースプレート30には、貫通孔32に挿入され、接着層20の貫通孔21に先端40aが配置された調整ロッド40が支持されている。
【0034】
接着層20の貫通孔21付近における静電チャック基板10の温度は、貫通孔21に配置された調整ロッド40の先端40aと静電チャック基板10の接着面11bの間の距離に応じた値となる。調整ロッド40の先端40aが静電チャック基板10の接着面11bに近いほど、静電チャック基板10から調整ロッド40へ熱が効率よく伝達するため、貫通孔21とその付近における温度は低くなる。したがって、静電チャック基板10の基板載置面11aの温度を測定し、測定結果に応じて調整ロッド40の先端40aの位置を調整する。これにより、静電チャック基板10の基板載置面11aにおける発熱密度、発熱密度の分布を調整することができる。これにより、静電チャック基板10の基板載置面11aに吸着保持した基板Wの温度を均一に制御することができる。
【0035】
(2)調整ロッド40は、ベースプレート30の上面30aと下面30bの間を貫通する貫通孔32に螺入されている。したがって、静電チャック基板10の基板載置面11aの温度を測定しながらベースプレート30の下面30bから調整ロッド40の先端40aの位置を調整することで、静電チャック基板10の基板載置面11aの温度を容易に調整することができる。
【0036】
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態において、静電チャック基板10の基板載置面11aにおける発熱密度を調整可能であればよく、調整ロッド40の材料を適宜変更してもよい。上記実施形態では、ベースプレート30と同じ材料を用いた。これを、ベースプレート30の熱伝導率より低い熱伝導率の材料を用いてもよい。また、接着層20の熱伝導率と同程度の熱伝導率の材料、または接着層20の熱伝導率より低い熱伝導率の材料を用いてもよい。
【0037】
・上記実施形態に対し、調整ロッド40を配置する貫通孔21,32を形成する位置を適宜変更してもよい。たとえば、温度ばらつきが多い部分に対して、他の部分より調整ロッド40の配置間隔を狭くするように、つまり、調整ロッド40の配置密度を、静電チャック基板10の基板載置面11aにおける温度分布に応じて異なるように、調整ロッド40を配置してもよい。