【解決手段】インダクタは、基板30と、基板30の下面30Aに積層された構造体41と、基板30の上面30Bに積層された複数の構造体42〜47とを有する積層体23と、積層体23を厚さ方向に貫通する貫通孔23Xの内壁面を含む積層体23の表面を被覆する絶縁膜25とを含むコイル基板20を有する。構造体41は、基板30の下面30Aに積層された絶縁層51と、絶縁層51の下面に積層された配線61とを有する。構造体42〜47は、絶縁層52〜57と、絶縁層52〜57の下面にそれぞれ積層され、側面の一部が絶縁層52〜57により被覆された配線62〜67とを有する。コイル基板20では、上下に隣接する配線61〜67同士が直列に接続されて螺旋状のコイルが形成されている。基板30の厚さは、絶縁層51〜57よりも厚い。
上下に隣接する前記基板と前記第2構造体とは接着層を介して積層され、上下に隣接する前記第2構造体同士は接着層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインダクタ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を添付図面を参照して説明する。
なお、添付図面は、特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。
【0009】
まず、コイル基板10の構造について説明する。
図1に示すように、コイル基板10は、例えば、平面視矩形状に形成されている。コイル基板10は、複数の個別領域A1が設けられたブロック11と、ブロック11よりも外側に突出して形成された外枠13とを有している。ブロック11は、例えば、平面視略矩形状に形成されている。ブロック11には、複数の個別領域A1がマトリクス状(ここでは、2×6)に設けられている。ここで、個別領域A1は、最終的に破線に沿って切断されて個片化され、各々個別の単位コイル基板(コイル基板)20となる領域である。すなわち、ブロック11は、個々のコイル基板20となる個別領域A1を複数有する領域である。
【0010】
なお、複数の個別領域A1は、
図1に示すように所定の間隔を介して配列されてもよいし、互いに接するように配列されてもよい。また、
図1に示した例では、ブロック11は、12個の個別領域A1を有するが、個別領域A1の数は特に制限されない。
【0011】
ブロック11は、複数のコイル基板20を連結する連結部12を有している。連結部12は、複数のコイル基板20を囲むように形成されている。連結部12は、複数のコイル基板20を支持している。
【0012】
外枠13は、例えば、コイル基板10の両端領域に形成されている。外枠13は、例えば、ブロック11の短辺から外側に張り出すように形成されている。この外枠13には、複数のスプロケットホール13Xが形成されている。複数のスプロケットホール13Xは、例えば、コイル基板10の短手方向(図中の上下方向)に沿って略一定間隔で連続的に形成されている。各スプロケットホール13Xの平面形状は、例えば、平面視略矩形状に形成されている。なお、スプロケットホール13Xは、コイル基板10を製造する過程でコイル基板10が各種製造装置等に装着された際に、モータ等により駆動されるスプロケットのピンと噛み合って、コイル基板10をピッチ送りするための貫通孔(つまり、搬送用の貫通孔)である。このため、隣接するスプロケットホール13Xの間隔は、製造過程でコイル基板10が装着される製造装置に対応して設定される。なお、コイル基板10のうち個別領域A1以外の部分(つまり、連結部12及び外枠13)は、個片化の際に廃棄される部分である。
【0013】
次に、
図2〜
図7に従って、個々のコイル基板20の構造について説明する。
図2に示すように、各個別領域A1に設けられたコイル基板20は、例えば、平面視略長方形状に形成されている。本例のコイル基板20の平面形状は、長方形の角部が面取りされるように形成され、さらに長方形の短辺から外側(図中上側及び図中下側)に突出する突出部21,22が形成されている。コイル基板20の平面形状は、
図2に示した形状に限定されず、任意の形状とすることができる。また、コイル基板20の平面形状は、任意の大きさとすることができる。例えば、コイル基板20の平面形状は、当該コイル基板20を用いて
図8(b)に示すインダクタ90を製造した際に、そのインダクタ90の平面形状が1.6mm×0.8mm程度の略矩形状となる程度の大きさとすることができる。コイル基板20の厚さは、例えば、0.5mm程度とすることができる。
【0014】
また、コイル基板20の平面視略中央部には、貫通孔20Xが形成されている。貫通孔20Xは、コイル基板20を厚さ方向に貫通するように形成されている。貫通孔20Xの平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、貫通孔20Xの平面形状は、略楕円形状又は略長円形状とすることができる。
【0015】
コイル基板20と連結部12との間には、当該コイル基板20を画定する開口部20Yが形成されている。開口部20Yは、コイル基板10を厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0016】
図3及び
図4に示すように、コイル基板20は、大略すると、基板30と、基板30の下面30Aに積層された構造体41と、基板30の上面30Bに積層された構造体42〜47とを含む積層体23を有し、その積層体23の表面を被覆する絶縁膜25を有している。
【0017】
積層体23の平面形状は、コイル基板20の平面形状と同様の形状に形成されている。例えば、積層体23の平面形状は、絶縁膜25の分だけコイル基板20の平面形状よりも一回り小さく形成されている。また、積層体23の平面視略中央部には、当該積層体23を厚さ方向に貫通する貫通孔23Xが形成されている。貫通孔23Xの平面形状は、例えば、貫通孔20Xの平面形状と同様に、略楕円形状又は略長円形状とすることができる。
【0018】
積層体23では、基板30の上面30Bに、接着層71を介して構造体42が積層され、構造体42上に、接着層72を介して構造体43が積層され、構造体43上に、接着層73を介して構造体44が積層されている。また、積層体23では、構造体44上に、接着層74を介して構造体45が積層され、構造体45上に、接着層75を介して構造体46が積層され、構造体46上に、接着層76を介して構造体47が積層されている。
【0019】
ここで、接着層71〜76としては、例えば、エポキシ系接着剤等の絶縁性樹脂製の耐熱性接着剤を用いることができる。接着層71〜76の厚さは、例えば、12〜35μm程度とすることができる。
【0020】
図4に示すように、構造体41は、絶縁層51と、配線61と、接続部61Aと、金属層61Dとを有し、構造体42は、絶縁層52と、配線62と、金属層62Dとを有し、構造体43は、絶縁層53と、配線63と、金属層63Dとを有している。構造体44は、絶縁層54と、配線64と、金属層64Dとを有し、構造体45は、絶縁層55と、配線65と、金属層65Dとを有している。構造体46は、絶縁層56と、配線66と、金属層66Dとを有し、構造体47は、絶縁層57と、配線67と、接続部67Aと、金属層67Dとを有している。
【0021】
ここで、絶縁層51〜57の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂等を主成分とする絶縁性樹脂を用いることができる。絶縁層51〜57の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いることができる。絶縁層51〜57は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。なお、絶縁層51〜57の熱膨張係数は、例えば、50〜120ppm/℃程度とすることができる。絶縁層51〜57の厚さは、例えば、12〜20μm程度とすることができる。
【0022】
また、最下層の配線61、接続部61A及び金属層61Dの材料としては、例えば、基板30よりも絶縁膜25との密着性が高い金属材料であることが好ましい。例えば、配線61、接続部61A及び金属層61Dの材料としては、銅(Cu)や銅合金を用いることができる。同様に、配線62〜67、接続部67A及び金属層62D〜67Dの材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。配線61〜67、接続部61A,67A及び金属層61D〜67Dの厚さは、例えば、12〜35μm程度とすることができる。
【0023】
基板30としては、例えば、シート状の絶縁基板を用いることができる。基板30の材料としては、例えば、当該基板30の熱膨張係数が絶縁層51〜57の熱膨張係数よりも低くなるように調整された絶縁性樹脂であることが好ましい。例えば、基板30の熱膨張係数は、10〜25ppm/℃程度に設定されている。また、基板30の材料としては、例えば、耐熱性に優れた材料であることが好ましい。さらに、基板30の材料としては、絶縁層51〜57よりも弾性率の高い材料であることが好ましい。このような基板30としては、例えば、ポリイミド(PI)フィルムやポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等の樹脂フィルムを用いることができる。基板30としては、熱膨張係数の低いポリイミドフィルムを好適に用いることができる。基板30の厚さは、例えば、絶縁層51〜57よりも厚く設定されている。例えば、基板30の厚さは、12〜50μm程度とすることができる。このような基板30は、絶縁層51〜57よりも高い剛性を持つ。
【0024】
図4及び
図5に示すように、基板30には、当該基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔30Xが形成されている。貫通孔30Xの平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、貫通孔30Xの平面形状は、直径が150μm程度の円形状とすることができる。
【0025】
次に、構造体41の構造について説明する。
絶縁層51は、基板30の下面30Aに積層されている。絶縁層51には、当該絶縁層51を厚さ方向に貫通する貫通孔51Xが形成されている。貫通孔51Xは、基板30の貫通孔30Xと連通するように形成されている。すなわち、貫通孔51Xは、貫通孔30Xと平面視で重複する位置に形成されている。このように連通する貫通孔30X,51X内には、ビア配線V1が形成されている。ビア配線V1は、貫通孔30X,51Xを充填するように形成されている。ビア配線V1は、配線61と電気的に接続されている。なお、ビア配線V1の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0026】
配線61、接続部61A及び金属層61Dは、絶縁層51の下面に積層されている。配線61、接続部61A及び金属層61Dは、積層体23の最下層に形成されている。配線61の幅は、例えば、50〜130μm程度とすることができる。配線61は、コイルの一部となる配線であり、コイルの1層目の配線(約1巻)である。なお、以下の説明では、コイルの一部となる配線における渦巻きに沿う方向を長手方向、その長手方向と平面視で直交する幅方向を短手方向とする。
【0027】
図5に示すように、配線61の平面形状は、略楕円形状に形成されている。但し、配線61には、所要箇所に当該配線61の短手方向(幅方向)及び厚さ方向を貫通する溝部61Xが形成されており、配線61は非環状に形成されている。配線61の短手方向の断面形状は、例えば、略矩形状とすることができる。
【0028】
接続部61Aは、配線61の一端部に形成されている。接続部61Aは、コイル基板20の突出部21(
図2参照)に対応する位置に形成されている。接続部61Aは、配線61と一体に形成されている。換言すると、接続部61Aは、配線61の一部である。この接続部61Aは、連結部12に形成された金属層81と電気的に接続されている。金属層81は、例えば、めっき給電用の給電ラインである。なお、接続部61Aは、コイル基板20が個片化されたときに、その個片化後のコイル基板20の側面20A(
図8(a)参照)から露出する。この露出した接続部61Aにはインダクタの電極が接続される。
【0029】
金属層61Dは、配線61と離間して形成されている。具体的には、金属層61Dと配線61との間には溝部61Yが形成されている。すなわち、金属層61Dは、溝部61Yによって配線61と電気的に絶縁されている。金属層61Dは、例えば、構造体41に形成された導電層(配線61、接続部61A及び金属層61D)の形状と、他の構造体に形成された導電層(例えば、配線67、接続部67A及び金属層61D)の形状との差を小さくするために設けられたダミーパターンである。金属層61Dは、コイル基板20の突出部22(
図2参照)に対応する位置に形成されている。具体的には、金属層61Dは、最上層の構造体47に形成された接続部67Aと平面視で重複する位置に設けられている。なお、金属層61Dは、コイル基板20が個片化されたときに、他の配線や金属層と電気的に接続されずに、電気的に孤立(フローティング)した状態となる。
【0030】
次に、基板30の上面30Bに積層された構造体の構造について説明する。
図4に示すように、基板30の上面30Bには、接着層71が積層されている。接着層71には、当該接着層71を厚さ方向に貫通して、基板30の貫通孔30Xと連通する貫通孔71Xが形成されている。
【0031】
構造体42は、接着層71を介して、基板30の上面30Bに積層されている。配線62及び金属層62Dは、接着層71上に積層されている。
図5に示すように、配線62は、平面視略コ字状に形成されている。配線62は、コイルの一部となる配線であり、コイルの2層目の配線(1巻の約3/4)である。
【0032】
金属層62Dは、例えば、金属層61Dと同様のダミーパターンである。金属層62Dの一部は、溝部62Yによって配線62と離間して形成されている。この金属層62Dは、接続部61A,67Aと平面視で重複する位置に形成されている。また、金属層62Dの一部は、溝部62Zによって配線62と離間して形成されている。この金属層62Dは、配線61の一部と平面視で重複する位置に形成されている。
【0033】
図4に示すように、絶縁層52は、配線62及び金属層62Dの側面及び上面を被覆するように接着層71上に積層されている。
構造体42には、絶縁層52及び配線62を厚さ方向に貫通して、接着層71の貫通孔71Xと連通する貫通孔42Xが形成されている。連通する貫通孔42X,71X内には、ビア配線V2が充填されている。このビア配線V2は、基板30の貫通孔30X及び絶縁層51の貫通孔51Xに充填されたビア配線V1と電気的に接続されている。そして、2層目の配線62は、ビア配線V1,V2からなる貫通電極を介して、1層目の配線61と直列に接続されている。ここで、ビア配線V1,V2からなる貫通電極は、絶縁層51と、基板30と、接着層71と、配線62と、絶縁層52とを貫通して形成されている。また、構造体42には、絶縁層52を厚さ方向に貫通して、配線62の上面の一部を露出する貫通孔42Yが形成されている。貫通孔42Yには、ビア配線V3が充填されている。配線62は、ビア配線V3と電気的に接続されている。なお、ビア配線V2,V3の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0034】
絶縁層52上には、接着層72が積層されている。接着層72には、当該接着層72を厚さ方向に貫通して、構造体42の貫通孔42Yと連通する貫通孔72Xが形成されている。
【0035】
構造体43は、接着層72を介して、構造体42上に積層されている。配線63及び金属層63Dは、接着層72上に積層されている。絶縁層53は、配線63及び金属層63Dの側面及び上面を被覆するように接着層72上に積層されている。
【0036】
図5に示すように、配線63は、平面視略楕円形状に形成されている。但し、配線63には、所要箇所に当該配線63の短手方向(幅方向)及び厚さ方向を貫通する溝部63Xが形成されており、配線63は非環状に形成されている。配線63は、コイルの一部となる配線であり、コイルの3層目の配線(約1巻)である。
【0037】
金属層63Dは、例えば、金属層61Dと同様のダミーパターンである。金属層63Dは、例えば、溝部63Yによって配線63と離間して形成されている。金属層63Dは、例えば、接続部61A,67Aと平面視で重複する位置に形成されている。
【0038】
図4に示すように、構造体43には、絶縁層53及び配線63を厚さ方向に貫通して、接着層72の貫通孔72Xと連通する貫通孔43Xが形成されている。連通する貫通孔43X,72X内には、ビア配線V4が充填されている。このビア配線V4は、構造体43の貫通孔42Yに充填されたビア配線V3と電気的に接続されている。そして、3層目の配線63は、ビア配線V3,V4からなる貫通電極を介して、2層目の配線62と直列に接続されている。ここで、ビア配線V3,V4からなる貫通電極は、上下に隣接する構造体42,43のうち下側の構造体42の絶縁層52と、接着層72と、上側の構造体43の配線63及び絶縁層53とを貫通して形成されている。また、構造体43には、絶縁層53を厚さ方向に貫通して、配線63の上面の一部を露出する貫通孔43Yが形成されている。この貫通孔43Yには、ビア配線V5(
図7参照)が充填されている。配線63は、ビア配線V5と電気的に接続されている。なお、ビア配線V4,V5の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0039】
絶縁層53上には、接着層73が積層されている。接着層73には、当該接着層73を厚さ方向に貫通して、構造体43の貫通孔43Yと連通する貫通孔73Xが形成されている。
【0040】
図4に示すように、構造体44は、接着層73を介して、構造体43上に積層されている。配線64及び金属層64Dは、接着層73上に積層されている。絶縁層54は、配線64及び金属層64Dの側面及び上面を被覆するように接着層73上に積層されている。なお、構造体44は、構造体42と同一の構造であり、例えば
図5に示すように、構造体42を絶縁層52の上面の法線を軸に180度回転させた構造に相当する構造を有している。
【0041】
配線64は、平面視略コ字状に形成されている。配線64は、コイルの一部となる配線であり、コイルの4層目の配線(1巻の約3/4)である。金属層64Dは、例えば、金属層61Dと同様のダミーパターンである。金属層64Dの一部は、例えば、溝部64Yによって配線64と離間して形成されている。この金属層64Dは、例えば、接続部61A,67Aと平面視で重複する位置に形成されている。また、金属層64Dの一部は、溝部64Zによって配線64と離間して形成されている。この金属層64Dは、配線63の一部と平面視で重複する位置に形成されている。
【0042】
構造体44には、絶縁層54及び配線64を厚さ方向に貫通して、接着層73の貫通孔73Xと連通する貫通孔44Xが形成されている。連通する貫通孔44X,73X内には、ビア配線V6(
図7参照)が充填されている。このビア配線V6は、構造体43の貫通孔43Yに充填されたビア配線V5(
図7参照)と電気的に接続されている。そして、4層目の配線64は、ビア配線V5,V6からなる貫通電極を介して、3層目の配線63と直列に接続されている。ここで、ビア配線V5,V6からなる貫通電極は、上下に隣接する構造体43,44のうち下側の構造体43の絶縁層53と、接着層73と、上側の構造体44の配線64及び絶縁層54とを貫通して形成されている。また、構造体44には、絶縁層54を厚さ方向に貫通して、配線64の上面の一部を露出する貫通孔44Yが形成されている。この貫通孔44Yには、ビア配線V7(
図7参照)が充填されている。配線64は、ビア配線V7と電気的に接続されている。なお、ビア配線V6,V7の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0043】
図6に示すように、絶縁層54上には、接着層74が積層されている。接着層74には、当該接着層74を厚さ方向に貫通して、構造体44の貫通孔44Yと連通する貫通孔74Xが形成されている。
【0044】
図4に示すように、構造体45は、接着層74を介して、構造体44上に積層されている。配線65及び金属層65Dは、接着層74上に積層されている。絶縁層55は、配線65及び金属層65Dの側面及び上面を被覆するように接着層74上に積層されている。なお、
図5及び
図6に示すように、構造体45は、構造体43と同一の構造であり、構造体43を絶縁層53の上面の法線を軸に180度回転させた構造に相当する構造を有している。
【0045】
図6に示すように、配線65は、平面視略楕円形状に形成されている。但し、配線65には、所要箇所に当該配線65の短手方向(幅方向)及び厚さ方向を貫通する溝部65Xが形成されており、配線65は非環状に形成されている。配線65は、コイルの一部となる配線であり、コイルの5層目の配線(約1巻)である。金属層65Dは、例えば、金属層61Dと同様のダミーパターンである。金属層65Dは、例えば、溝部65Yによって配線65と離間して形成されている。この金属層65Dは、例えば、接続部61A,67Aと平面視で重複する位置に形成されている。
【0046】
構造体45には、絶縁層55及び配線65を厚さ方向に貫通して、接着層74の貫通孔74Xと連通する貫通孔45Xが形成されている。連通する貫通孔45X,74X内には、ビア配線V8(
図7参照)が充填されている。このビア配線V8は、構造体44の貫通孔44Yに充填されたビア配線V7(
図7参照)と電気的に接続されている。そして、5層目の配線65は、ビア配線V7,V8からなる貫通電極を介して、4層目の配線64と直列に接続されている。ここで、ビア配線V7,V8からなる貫通電極は、上下に隣接する構造体44,45のうち下側の構造体44の絶縁層54と、接着層74と、上側の構造体45の配線65及び絶縁層55とを貫通して形成されている。また、
図4に示すように、構造体45には、絶縁層55を厚さ方向に貫通して、配線65の上面の一部を露出する貫通孔45Yが形成されている。この貫通孔45Yには、ビア配線V9が充填されている。配線65は、ビア配線V9と電気的に接続されている。なお、ビア配線V8,V9の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0047】
絶縁層55上には、接着層75が積層されている。接着層75には、当該接着層75を厚さ方向に貫通して、構造体45の貫通孔45Yと連通する貫通孔75Xが形成されている。
【0048】
構造体46は、接着層75を介して、構造体45上に積層されている。配線66及び金属層66Dは、接着層75上に積層されている。絶縁層56は、配線66及び金属層66Dの側面及び上面を被覆するように接着層75上に積層されている。なお、構造体46は、構造体42と同一の構造である。
【0049】
図6に示すように、配線66は、平面視略コ字状に形成されている。配線66は、コイルの一部となる配線であり、コイルの6層目の配線(1巻の約3/4)である。金属層66Dは、例えば、金属層61Dと同様のダミーパターンである。金属層66Dの一部は、例えば、溝部66Yによって配線66と離間して形成されている。この金属層66Dは、例えば、接続部61A,67Aと平面視で重複する位置に形成されている。また、金属層66Dの一部は、溝部66Zによって配線66と離間して形成されている。この金属層66Dは、配線65の一部と平面視で重複する位置に形成されている。
【0050】
構造体46には、絶縁層56及び配線66を厚さ方向に貫通して、接着層75の貫通孔75Xと連通する貫通孔46Xが形成されている。連通する貫通孔46X,75X内には、ビア配線V10が充填されている。このビア配線V10は、構造体45の貫通孔45Yに充填されたビア配線V9と電気的に接続されている。そして、6層目の配線66は、ビア配線V9,V10からなる貫通電極を介して、5層目の配線65と直列に接続されている。ここで、ビア配線V9,V10からなる貫通電極は、上下に隣接する構造体45,46のうち下側の構造体45の絶縁層55と、接着層75と、上側の構造体46の配線66及び絶縁層56とを貫通して形成されている。また、構造体46には、絶縁層56を厚さ方向に貫通して、配線66の上面の一部を露出する貫通孔46Yが形成されている。この貫通孔46Yには、ビア配線V11が充填されている。配線66は、ビア配線V11と電気的に接続されている。なお、ビア配線V10,V11の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0051】
絶縁層56上には、接着層76が積層されている。接着層76には、当該接着層76を厚さ方向に貫通して、構造体46の貫通孔46Yと連通する貫通孔76Xが形成されている。
【0052】
構造体47は、接着層76を介して、構造体46上に積層されている。配線67、接続部67A及び金属層67Dは、接着層76上に積層されている。絶縁層57は、配線67、接続部67A及び金属層67Dの側面及び上面を被覆するように接着層76上に積層されている。
【0053】
図6に示すように、配線67の平面形状は、略楕円形状に形成されている。但し、配線67には、所要箇所に当該配線67の短手方向(幅方向)及び厚さ方向を貫通する溝部67Xが形成されており、配線67は非環状に形成されている。配線67は、コイルの一部となる配線であり、コイルの7層目の配線(約1巻)である。
【0054】
接続部67Aは、配線67の一端部に形成されている。接続部67Aは、コイル基板20の突出部22(
図2参照)に対応する位置に形成されている。接続部67Aは、配線67と一体に形成されている。換言すると、接続部67Aは、配線67の一部である。なお、接続部67Aは、コイル基板20が個片化されたときに、その個片化後のコイル基板20の側面20B(
図8(a)参照)から露出する。この露出した接続部67Aにはインダクタの電極が接続される。
【0055】
金属層67Dは、例えば、金属層61Dと同様のダミーパターンである。金属層67Dは、例えば、溝部67Yによって配線67と離間して形成されている。この金属層67Dは、例えば、接続部61Aと平面視で重複する位置に形成されている。
【0056】
図4に示すように、構造体47には、絶縁層57及び配線67を厚さ方向に貫通して、接着層76の貫通孔76Xと連通する貫通孔47Xが形成されている。連通する貫通孔47X,76X内には、ビア配線V12が充填されている。このビア配線V12は、構造体46の貫通孔46Yに充填されたビア配線V11と電気的に接続されている。そして、7層目の配線67は、ビア配線V11,V12からなる貫通電極を介して、6層目の配線66と直列に接続されている。ここで、ビア配線V11,V12からなる貫通電極は、上下に隣接する構造体46,47のうち下側の構造体46の絶縁層56と、接着層76と、上側の構造体47の配線67及び絶縁層57とを貫通して形成されている。また、
図6に示すように、構造体47には、絶縁層57を厚さ方向に貫通して、配線67の上面の一部を露出する貫通孔47Yが形成されている。この貫通孔47Yには、ビア配線V13(
図7参照)が充填されている。配線67は、ビア配線V13と電気的に接続されている。ビア配線V12,V13の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0057】
なお、貫通孔42X〜47X,42Y〜47Y,71X〜76Xの平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、貫通孔42X〜47X,42Y〜47Y,71X〜76Xの平面形状は、直径が150μm程度の円形状とすることができる。
【0058】
このように、コイル基板20では、
図7に示すように、上下に隣接する構造体41〜47の配線61〜67同士をビア配線V1〜V12を介して直列に接続し、接続部61Aから接続部67Aに至る螺旋状のコイルを形成している。
【0059】
図2に示すように、以上説明した積層体23の平面視略中央部には、当該積層体23を厚さ方向に貫通する貫通孔23Xが形成されている。
図3及び
図4に示すように、貫通孔23Xの内壁面には、配線61〜67の側面が露出されている。
【0060】
図2〜
図4に示すように、絶縁膜25は、積層体23の表面全面を被覆するように形成されている。具体的には、絶縁膜25は、積層体23の外壁面(側壁)、最下層の配線61の下面及び側面、最上層の絶縁層57の上面、ビア配線V12,V13の上面、及び貫通孔23Xの内壁面を連続的に被覆するように形成されている。この絶縁膜25により、貫通孔23Xの内壁面に露出された配線61〜67の側面が被覆されている。また、絶縁膜25により、溝部61X,61Yに露出する配線61の側面が被覆されている。また、例えば
図2に示すように、積層体23の上面及び下面を被覆する絶縁膜25は、少なくとも、接続部67Aと平面視で重複する位置まで積層体23を被覆するとともに、金属層67Dと平面視で重複する位置まで積層体23を被覆するように形成されている。なお、本例の絶縁膜25は、連結部12の一部を被覆するように形成されている。但し、連結部12の大部分及び外枠13の全面は、絶縁膜25から露出されている。なお、
図2では、絶縁層57の図示を省略し、積層体23上の絶縁膜25の図示を省略している。
【0061】
ここで、絶縁膜25の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。絶縁膜25は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。絶縁膜25の厚さは、例えば、10〜50μm程度とすることができる。
【0062】
以上説明したコイル基板20は、隣接するコイル基板20と連結部12を介して連結されている。以下に、連結部12の構造について簡単に説明する。
図3に示すように、連結部12を構成する基板30の下面30Aには、絶縁層51と、金属層81とが順次積層されている。また、連結部12を構成する基板30の上面30Bには、接着層71、金属層82、絶縁層52、接着層72、金属層83、絶縁層53、接着層73、金属層84、絶縁層54、接着層74、金属層85、絶縁層55、接着層75、金属層86、絶縁層56、接着層76、金属層87、及び絶縁層57が順に積層されている。
図4に示すように、金属層81は金属層61D及び接続部61Aと電気的に接続され、金属層82は金属層62Dと電気的に接続され、金属層83は金属層63Dと電気的に接続され、金属層84は金属層64Dと電気的に接続されている。また、金属層85は金属層65Dと電気的に接続され、金属層86は金属層66Dと電気的に接続され、金属層87は金属層67D及び接続部67Aと電気的に接続されている。なお、金属層81〜87の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。
【0063】
図2に示すように、連結部12には、所要箇所に認識マーク12Xが形成されている。認識マーク12Xは、連結部12を厚さ方向に貫通するように形成されている。認識マーク12Xは、例えば、アライメントマークとして利用される。認識マーク12Xの平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。例えば、認識マーク12Xの平面形状は、略円形状とすることができる。
【0064】
次に、外枠13の構造について簡単に説明する。
図3に示すように、外枠13は、基板30のみによって構成されている。外枠13は、例えば、基板30の両端領域に形成されている。例えば、外枠13は、個別領域A1及び連結部12を構成する基板30が連結部12よりも外側に延在して形成されている。すなわち、基板30のみが連結部12よりも外側に張り出すように形成されている。そして、外枠13を構成する基板30に、上述したスプロケットホール13Xが形成されている。すなわち、スプロケットホール13Xは、基板30を厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0065】
図8(a)には、
図4に破線で示した切断位置で絶縁膜25、基板30、絶縁層51〜57、金属層61D〜67D等が切断されて個片化された後のコイル基板20が示されている。個片化後のコイル基板20では、一方の側面20Aに接続部61Aが露出され、側面20Aと対向する側面20Bに接続部67Aが露出されている。なお、この個片化後のコイル基板20は、天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。
【0066】
次に、コイル基板20を有するインダクタ90の構造について説明する。
図8(b)に示すように、インダクタ90は、コイル基板20を封止樹脂91で封止し、電極92,93を形成したチップインダクタである。インダクタ90の平面形状は、例えば、1.6mm×0.8mm程度の略矩形状とすることができる。インダクタ90の厚さは、例えば、1.0mm程度とすることができる。インダクタ90は、例えば、小型の電子機器の電圧変換回路等に用いることができる。
【0067】
封止樹脂91は、コイル基板20の側面20A及び側面20Bを除く部分を封止している。すなわち、封止樹脂91は、接続部61A,67Aが露出する側面20A,20Bを除いてコイル基板20(積層体23及び絶縁膜25)を全体的に被覆するように形成されている。例えば、封止樹脂91は、絶縁膜25の上面及び下面を被覆し、貫通孔23Xの内壁面を被覆する絶縁膜25の側面を被覆するように形成されている。すなわち、封止樹脂91は、貫通孔20X内にも形成されている。本例の封止樹脂91は、貫通孔20Xの内壁面全面を被覆するように貫通孔20X内に充填されている。封止樹脂91の材料としては、例えば、フェライト等の磁性体のフィラーを含有する絶縁性樹脂(例えば、エポキシ系樹脂)を用いることができる。なお、磁性体は、インダクタ90のインダクタンスを大きくする機能を有している。
【0068】
ここで、インダクタ90では、コイル基板20の略中央部に貫通孔20Xが形成されており、その貫通孔20Xも磁性体を含有する絶縁性樹脂で充填されている。これにより、貫通孔20Xを形成しない場合に比べて、コイル基板20の周囲のより多くの部分を、磁性体を含有する封止樹脂91で封止することができる。このため、インダクタ90のインダクタンスを向上させることができる。
【0069】
なお、貫通孔20X内に、フェライト等の磁性体のコアを配置し、コアを含めてコイル基板20を封止するように封止樹脂91を形成してもよい。このとき、コアの形状は、例えば、円柱状や直方体状とすることができる。
【0070】
電極92は、封止樹脂91の外側に形成され、接続部61Aの一部と接続されている。電極92は、コイル基板20の側面20Aと、その側面20A側に形成された封止樹脂91の側面と、封止樹脂91の上面及び下面の一部とを連続的に被覆するように形成されている。電極92の内壁面は、コイル基板20の側面20Aから露出する接続部61Aの側面と接している。これにより、電極92と接続部61Aとは電気的に接続されている。
【0071】
電極93は、封止樹脂91の外側に形成され、接続部67Aの一部と接続されている。電極93は、コイル基板20の側面20Bと、その側面20B側に形成された封止樹脂91の側面と、封止樹脂91の上面及び下面の一部とを連続的に被覆するように形成されている。電極93の内壁面は、コイル基板20の側面20Bから露出する接続部67Aの側面と接している。これにより、電極93と接続部67Aとは電気的に接続されている。
【0072】
電極92,93の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。また、電極92,93は、複数の金属層を積層した構造としてもよい。
なお、電極92,93は、ダミーパターンである金属層61D〜67Dとも接続されている。但し、金属層61D〜67Dは、配線61〜67及び他の金属層と電気的に接続されておらず、電気的に孤立している。このため、金属層61D〜67D及び電極92,93に起因して配線61〜67等が短絡することはない。
【0073】
次に、コイル基板10の製造方法について説明する。なお、説明の便宜上、最終的にコイル基板10の各構成要素となる部分には、最終的な構成要素の符号を付して説明する。
まず、
図9に示す工程では、基板100を用意する。基板100は、ブロック11と外枠13とを有する基板30が複数個連設された構造を有している。各ブロック11には、複数の個別領域A1が設けられ、それら複数の個別領域A1を囲むように連結部12が設けられている。また、外枠13は、基板100の短手方向又は各基板30の長手方向(つまり、図中上下方向)の両端領域に設けられている。この外枠13には、基板30を厚さ方向に貫通するスプロケットホール13Xが、基板100の長手方向(つまり、図中左右方向)に沿って略一定間隔で連続的に形成されている。スプロケットホール13Xは、例えば、プレス加工法やレーザ加工法を用いて形成することができる。なお、スプロケットホール13Xは、コイル基板10を製造する過程で基板100が各種製造装置等に装着された際に、モータ等により駆動されるスプロケットのピンと噛み合って、基板100をピッチ送りするための貫通孔(つまり、搬送用の貫通孔)である。
【0074】
基板100としては、リール状(テープ状)の可撓性を有する絶縁樹脂フィルムを用いることができる。基板100の幅(スプロケットホール13Xの配列方向と平面視で直交する方向の長さ)は、基板100が装着される製造装置に対応するように決定される。例えば、基板100の幅は、40〜90mm程度とすることができる。また、基板100の長手方向の長さは、任意に決定することができる。
図9に示した例では、各基板30に設ける個別領域A1を6行2列としたが、各基板30を長くして個別領域A1を例えば数100列程度とすることもできる。なお、切断位置A2は、後工程でリール状の基板100を切断してシート状とするための切断位置である。
【0075】
以下では、便宜上、1つの基板30の1つの個別領域A1(
図9において一点鎖線枠で示した領域)に着目して説明を行う。
次に、
図10(a)及び
図10(b)に示す工程では、外枠13を除く領域(つまり、ブロック11)に位置する基板30の下面30Aに、半硬化状態の絶縁層51を積層する。絶縁層51は、例えば、ブロック11に位置する基板30の下面30A全面を被覆するように形成される。例えば、絶縁層51の材料としてフィルム状の絶縁性樹脂を用いる場合には、基板30の下面30Aにフィルム状の絶縁性樹脂をラミネートする。但し、この工程では、フィルム状の絶縁性樹脂の熱硬化は行わず、B−ステージ状態(半硬化状態)にしておく。なお、絶縁層51を真空雰囲気中でラミネートすることにより、絶縁層51中へのボイドの巻き込みを抑制することができる。一方、絶縁層51の材料として液状又はペースト状の絶縁性樹脂を用いる場合には、基板30の下面30Aに液状又はペースト状の絶縁性樹脂を、例えば、印刷法やスピンコート法により塗布する。その後、塗布した液状又はペースト状の絶縁性樹脂をプリベークしてB−ステージ状態にする。
【0076】
続いて、各個別領域A1の基板30に貫通孔30Xを形成するとともに、各個別領域A1の絶縁層51に、貫通孔30Xと連通する貫通孔51Xを形成する。これら貫通孔30X,51Xは、例えば、プレス加工法やレーザ加工法により形成することができる。なお、本工程において、上述したスプロケットホール13Xを形成するようにしてもよい。すなわち、貫通孔30X,51Xとスプロケットホール13Xとを同一の工程で形成するようにしてもよい。
【0077】
次いで、
図11(a)に示す工程では、半硬化状態の絶縁層51の下面に、金属箔161を積層する。金属箔161は、例えば、絶縁層51の下面全面を被覆するように形成される。例えば、半硬化状態の絶縁層51の下面に、金属箔161を熱圧着によりラミネートする。その後、半硬化状態の絶縁層51を150℃程度の温度雰囲気でキュア(熱硬化処理)を行うことにより硬化させる。このとき、絶縁層51の硬化に伴って、絶縁層51の上面に基板30が接着されるとともに、絶縁層51の下面に金属箔161が接着される。すなわち、本工程における絶縁層51は、基板30と金属箔161とを接着する接着剤として機能する。なお、金属箔161は、後工程でパターニングされて配線61及び接続部61A等となる部位であり、例えば、銅箔を用いることができる。
【0078】
次いで、貫通孔51Xの底部に露出する金属箔161上に、貫通孔30X,51Xを充填するビア配線V1を形成する。ビア配線V1は、例えば、金属箔161を給電層に利用する電解めっき法により、貫通孔30X,51X内にめっき膜を析出させることで形成することができる。また、ビア配線V1は、貫通孔51Xの底部に露出する金属箔161上に銅等の金属ペーストを充填して形成するようにしてもよい。
【0079】
次に、金属箔161をパターニングし、
図11(b)及び
図11(c)に示すように、各個別領域A1に位置する絶縁層51の下面に、配線61を形成し、配線61の一端部に接続部61Aを形成するとともに、ダミーパターンである金属層61Dを形成する。これにより、基板30の下面30Aに、絶縁層51、配線61及び接続部61Aを有する構造体41が積層される。本工程で形成される配線61(第1金属層)は、例えば、
図7に示した配線61(つまり、螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線61)よりも平面形状が大きく形成されている。そして、この配線61(金属層)は、最終的に型抜き等により成形されて、コイルの一部となる1層目の配線(約1巻)となる部位である。また、本工程では、連結部12に位置する絶縁層51の下面に、接続部61A及び金属層61Dに接続する金属層81を形成する。換言すると、本工程では、
図11(a)に示した金属箔161をパターニングして、
図11(c)に示すように、開口部201Y及び溝部61X,61Yを形成する。溝部61Xは、後工程でコイル基板を成形する際に、コイルを構成する渦巻き形状を形成しやすくするために設けるものである。なお、本工程で形成された金属層81は、後工程において電解めっきにおける給電層として使用するものである。後工程において電解めっきを行わない場合には金属層81の形成を省略してもよい。また、
図11(c)では、開口部201Y及び溝部61X,61Yから露出する絶縁層51を梨地模様で示している。
【0080】
金属箔161のパターニングは、例えば、サブトラクティブ法などの各種配線形成方法を用いて行うことができる。例えば、金属箔161の下面に感光性のレジストを塗布し、所定の領域を露光及び現像してレジストに開口部を形成し、開口部内に露出する金属箔161をエッチングで除去することでパターニングできる。なお、配線61、接続部61A、金属層61D及び金属層81は一体に形成されている。
【0081】
次に、
図12に示す工程では、まず、基板100と同様の構造を有する支持フィルム102を準備する。すなわち、複数の個別領域A1が設けられたブロック11と、そのブロック11の外側に張り出すように形成された外枠13とを有する支持フィルム102を準備する。支持フィルム102としては、例えば、リール状(テープ状)の可撓性を有する絶縁樹脂フィルムを用いることができる。支持フィルム102としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミドフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムを用いることができる。支持フィルム102の厚さは、例えば、12〜50μm程度とすることができる。
【0082】
続いて、
図9及び
図10に示した工程と同様に、支持フィルム102の下面102Aに、絶縁層52と配線62とを有する構造体42を積層する。具体的には、外枠13に位置する支持フィルム102にスプロケットホール102Xを形成した後、外枠13を除く支持フィルム102の下面102Aに半硬化状態の絶縁層52を積層する。次いで、
図12(b)に示すように、プレス加工法やレーザ加工法により、支持フィルム102及び絶縁層52を厚さ方向に貫通する貫通孔42X,42Yを形成する。その後、半硬化状態の絶縁層52の下面に金属箔を積層し、その金属箔をサブトラクティブ法等によりパターニングする。これにより、
図12(c)に示すように、各個別領域A1に位置する絶縁層52の下面に、配線62が形成されるとともに、ダミーパターンである金属層62Dが形成される。また、配線62の所要箇所に、当該配線62を厚さ方向に貫通して貫通孔42Xと連通する貫通孔が形成され、支持フィルム102、絶縁層52及び配線62を厚さ方向に貫通する貫通孔42Xが形成される。さらに、連結部12に位置する絶縁層52の下面に、一部の金属層62Dに接続する金属層82が形成される。換言すると、本工程では、絶縁層52の下面に積層した金属箔をパターニングすることにより、貫通孔42X、開口部202Y及び溝部62Y,62Zが形成される。ここで、本工程で形成される配線62(第2金属層)は、例えば、
図7に示した配線62(つまり、螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線62)よりも平面形状が大きく形成されている。この配線62(金属層)は、最終的に成形(型抜き等)されて、コイルの一部となる2層目の配線(1巻の約3/4)となる部位である。この配線62と金属層82とは開口部202Y及び溝部62Yによって分離されて形成されている。また、溝部62Zは、後工程でコイル基板を成形する際に、コイルを構成する渦巻き形状を形成しやすくするために設けるものである。なお、
図12(c)では、開口部202Y及び溝部62Y,62Zから露出する絶縁層52を梨地模様で示している。
【0083】
また、スプロケットホール102Xは、スプロケットホール13Xと同様に、コイル基板10を製造する過程で支持フィルム102が各種製造装置等に装着された際に、モータ等により駆動されるスプロケットのピンと噛み合って、支持フィルム102をピッチ送りするための貫通孔(つまり、搬送用の貫通孔)である。
【0084】
貫通孔42Xは、基板30の上面30Bに構造体42が積層されたときに、貫通孔30Xと平面視で重複する位置に形成される。また、
図12(b)に示すように、貫通孔42Yの底部には、配線62の上面が露出されている。
【0085】
次に、
図13(a)〜
図13(c)に示す工程について説明する。なお、
図13(a)〜
図13(c)は、
図11(c)の11b−11b線位置及び
図12(c)の12a−12a線位置に対応する断面図である。まず、
図13(a)に示す工程では、接着層71を準備し、その接着層71を厚さ方向に貫通する貫通孔71Xを形成する。貫通孔71Xは、基板30の上面30Bに接着層71を介して構造体42を積層したときに、貫通孔30X,42Xと平面視で重複する位置に形成される。
【0086】
続いて、
図11(b)に示した構造体(つまり、基板30の下面30Aに構造体41が積層された構造体)の上方に、接着層71と、
図12(a)に示した構造体(つまり、支持フィルム102の下面102Aに構造体42が積層された構造体)とを順に配置する。このとき、
図12(a)に示した構造体は、配線62が、接着層71を介して、基板30の上面30Bと対向するように構造体42を下側に向けた状態で配置される。
【0087】
次いで、
図13(b)に示す工程では、基板30の上面30Bに接着層71を介して構造体42を積層する。すなわち、基板30と構造体42とを接着層71を介して対向配置し、構造体41及び支持フィルム102が外側に配置されるように、構造体42を基板30の上面30Bに積層する。例えば、
図13(a)に示した全ての構造体(つまり、
図11(b)に示した構造体、接着層71及び
図12(a)に示した構造体)を両面側から加熱・加圧する。これにより、配線62の側面を被覆するように絶縁層52が形成される。その後、接着層71を硬化させる。このとき、貫通孔42Xと、貫通孔71Xと、貫通孔30Xと、貫通孔51Xとが連通する。このため、貫通孔42X,71Xの底部には、ビア配線V1の上面が露出される。
【0088】
なお、
図12、
図13(a)及び
図13(b)に示した工程において、各貫通孔42X,42Y,71Xを形成する前に、接着層71を介して構造体42を基板30の上面30Bに積層した後に、貫通孔42X,42Y,71Xを形成するようにしてもよい。
【0089】
次に、13(c)に示す工程では、
図13(b)に示した支持フィルム102を構造体42の絶縁層52から除去(剥離)する。例えば、絶縁層52から支持フィルム102を機械的に剥離する。続いて、貫通孔42Xの底部に露出するビア配線V1上に、ビア配線V2を形成する。これにより、配線61と配線62とが、ビア配線V1,V2を介して直列に接続される。
【0090】
また、
図14(a)〜
図14(c)に示すように、貫通孔42Yの底部に露出する配線62上に、配線62と電気的に接続されるビア配線V3を形成する。本工程では、例えば、ビア配線V2,V3は、その上面が絶縁層52の上面と略面一になるように形成される。ビア配線V2,V3は、例えば、金属層81及び配線61を給電層に利用する電解めっき法や金属ペーストの充填等の方法により形成することができる。なお、
図14(a)では、絶縁層52の図示を省略し、開口部202Y及び溝部62Y,62Zから露出する接着層71を梨地模様で示している。
【0091】
以上説明した製造工程により、基板30の下面30Aに構造体41が積層され、基板30の上面30Bに構造体42が積層された積層体において、配線61と、ビア配線V1,V2と、配線62とが直列に接続される。この直列に接続された導体部分は、最終的に成形されて約1巻きと3/4のコイルとなる。
【0092】
次に、
図15に示す工程では、支持フィルム103の下面103Aに、絶縁層53と配線63とを有する構造体43を積層する。本工程は、
図12に示した工程と同様に行うことができる。具体的には、本工程と
図12に示した工程とは、貫通孔の位置や金属箔をパターニングした後の配線の形状が異なるだけである。このため、本工程における製造方法の説明を割愛し、
図15に示した構造体の構造について説明する。なお、支持フィルム103及び後工程で使用する支持フィルム104〜107の形状、厚さ及び材料等は、
図12に示した支持フィルム102と同様である。各支持フィルム103〜107の外枠13に形成されるスプロケットホール103X〜107Xについても、支持フィルム102のスプロケットホール102Xと同様の機能を有する。
【0093】
図15(a)に示す構造体では、支持フィルム103、絶縁層53及び配線63を厚さ方向に貫通する貫通孔43Xが形成され、支持フィルム103及び絶縁層53を厚さ方向に貫通して配線63の上面を露出する貫通孔43Yが形成されている。また、
図15(b)に示すように、絶縁層53の下面には、配線63と、金属層63Dと、金属層83とが形成されている。配線63と金属層63D,83とは開口部203Y及び溝部63Yによって分離されて形成されている。また、配線63には、後工程でコイル基板を成形する際に、コイルを構成する渦巻き形状を形成しやすくするための溝部63Xが形成されている。本工程で形成される配線63(第2金属層)は、例えば、
図7に示した配線63(つまり、螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線63)よりも平面形状が大きく形成されている。そして、この配線63は、最終的に成形(型抜き等)されて、コイルの一部となる3層目の配線(約1巻)となる部位である。なお、
図15(b)では、開口部203Y及び溝部63X,63Yから露出する絶縁層53を梨地模様で示している。
【0094】
次に、
図16(a)〜
図16(c)に示す工程について説明する。なお、
図16(a)〜
図16(c)は、
図14(a)の14c−14c線位置及び
図15(b)の15a−15a線位置に対応する断面図である。
【0095】
まず、
図16(a)に示す工程では、接着層72を準備し、その接着層72を厚さ方向に貫通する貫通孔72Xを形成する。続いて、
図13(b)に示した工程と同様に、構造体42の絶縁層52上に、接着層72を介して構造体43及び支持フィルム103を積層する。すなわち、構造体42と構造体43とを接着層72を介して対向配置し、構造体41及び支持フィルム103が外側に配置されるように、構造体43を構造体42上に積層する。このとき、貫通孔43Xと、貫通孔72Xと、貫通孔42Yとが連通する。このため、貫通孔43X,72Xの底部には、貫通孔42Yに充填されたビア配線V3が露出される。
【0096】
次に、
図16(b)に示す工程では、
図16(a)に示した支持フィルム103を構造体43の絶縁層53から剥離する。例えば、絶縁層53から支持フィルム103を機械的に剥離する。
【0097】
続いて、
図16(c)に示す工程では、貫通孔43X,72Xを充填するビア配線V4を形成するとともに、貫通孔43Yを充填するビア配線V5を形成する。これにより、配線62と配線63とがビア配線V3,V4を介して直列に接続され、配線63がビア配線V5と電気的に接続される。本工程では、例えば、ビア配線V4,V5は、その上面が絶縁層53の上面と略面一になるように形成される。ビア配線V4,V5は、例えば、金属層81及び配線61を給電層に利用する電解めっき法や金属ペーストの充填等の方法により形成することができる。
【0098】
以上説明した製造工程により、構造体41と、基板30と、構造体42と、構造体43とが積層された積層体において、配線61,62,63が、ビア配線V1〜V4を介して直列に接続される。この直列に接続された導体部分は、最終的に成形されて約2巻きと3/4のコイルとなる。
【0099】
なお、
図15、
図16(a)及び
図16(b)に示した工程において、接着層72を介して構造体43を構造体42上に積層した後に、貫通孔43X,43Y,72Xを形成するようにしてもよい。
【0100】
次に、
図17に示す工程では、支持フィルム104の下面104Aに、絶縁層54と配線64とを有する構造体44を積層する。本工程は、
図12に示した工程と同様に行うことができるため、製造方法の説明を割愛し、
図17に示した構造体の構造について説明する。
【0101】
図17(a)に示す構造体では、支持フィルム104、絶縁層54及び配線64を厚さ方向に貫通する貫通孔44Xが形成され、支持フィルム104及び絶縁層54を厚さ方向に貫通して配線64の上面を露出する貫通孔44Yが形成されている。また、
図17(b)に示すように、絶縁層54の下面には、配線64と、金属層64Dと、金属層84とが形成されている。配線64と金属層84とは開口部204Y及び溝部64Yによって分離されて形成されている。また、配線64には、後工程でコイル基板を成形する際に、コイルを構成する渦巻き形状を形成しやすくするための溝部64Zが形成されている。本工程で形成される配線64(第2金属層)は、例えば、
図7に示した配線64(つまり、螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線64)よりも平面形状が大きく形成されている。そして、この配線64は、最終的に成形(型抜き等)されて、コイルの一部となる4層目の配線(1巻の約3/4)となる部位である。なお、
図17(b)では、開口部204Y及び溝部64Y,64Zから露出する絶縁層54を梨地模様で示している。
【0102】
次に、
図18(a)及び
図18(b)に示す工程について説明する。なお、
図18(a)及び
図18(b)は、
図17(b)の17a−17a線位置に対応する断面図である。
まず、
図18(a)に示す工程では、接着層73を準備し、その接着層73を厚さ方向に貫通する貫通孔73Xを形成する。続いて、
図13(b)に示した工程と同様に、構造体43の絶縁層53上に、接着層73を介して構造体44及び支持フィルム104を積層する。すなわち、構造体43と構造体44とを接着層73を介して対向配置し、構造体41及び支持フィルム104が外側に配置されるように、構造体44を構造体43上に積層する。このとき、貫通孔44Xと、貫通孔73Xと、貫通孔43Yとが連通する。このため、貫通孔44X,73Xの底部には、貫通孔43Yに充填されたビア配線V5が露出される。次いで、支持フィルム104を構造体44の絶縁層54から剥離する。
【0103】
続いて、
図18(b)に示す工程では、貫通孔44X,73Xを充填するビア配線V6を形成するとともに、貫通孔44Yを充填するビア配線V7を形成する。これにより、配線64と配線63とがビア配線V5,V6を介して直列に接続され、配線64がビア配線V7と電気的に接続される。本工程では、例えば、ビア配線V6,V7は、その上面が絶縁層54の上面と略面一になるように形成される。ビア配線V6,V7は、例えば、金属層81及び配線61を給電層に利用する電解めっき法や金属ペーストの充填等の方法により形成することができる。
【0104】
以上説明した製造工程により、構造体41と、基板30と、構造体42〜44とが積層された積層体において、配線61,62,63,64がビア配線V1〜V6を介して直列に接続される。この直列に接続された導体部分は、最終的に成形されて約3巻きのコイルとなる。
【0105】
なお、
図17及び
図18(a)に示した工程において、接着層73を介して構造体44を構造体43上に積層した後に、貫通孔44X,44Y,73Xを形成するようにしてもよい。
【0106】
次に、
図19に示す工程では、支持フィルム105の下面105Aに、絶縁層55と配線65とを有する構造体45を積層する。本工程は、
図12に示した工程と同様に行うことができるため、製造方法の説明を割愛し、
図19に示した構造体の構造について説明する。
【0107】
図19(a)に示す構造体では、支持フィルム105、絶縁層55及び配線65を厚さ方向に貫通する貫通孔45Xが形成され、支持フィルム105及び絶縁層55を厚さ方向に貫通して配線65の上面を露出する貫通孔45Yが形成されている。また、
図19(b)に示すように、絶縁層55の下面には、配線65と、金属層65Dと、金属層85とが形成されている。配線65と金属層65D,85とは開口部205Y及び溝部65Yによって分離されて形成されている。また、配線65には、後工程でコイル基板を成形する際に、コイルを構成する渦巻き形状を形成しやすくするための溝部65Xが形成されている。本工程で形成される配線65(第2金属層)は、例えば、
図7に示した配線65(つまり、螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線65)よりも平面形状が大きく形成されている。そして、この配線65は、最終的に成形(型抜き等)されて、コイルの一部となる5層目の配線(約1巻)となる部位である。なお、
図19(b)では、開口部205Y及び溝部65X,65Yから露出する絶縁層55を梨地模様で示している。
【0108】
次に、
図20(a)及び
図20(b)に示す工程について説明する。なお、
図20(a)及び
図20(b)は、
図19(b)の19a−19a線位置に対応する断面図である。
まず、
図20(a)に示す工程では、接着層74を準備し、その接着層74を厚さ方向に貫通する貫通孔74Xを形成する。続いて、
図13(b)に示した工程と同様に、構造体44の絶縁層54上に、接着層74を介して構造体45及び支持フィルム105を積層する。すなわち、構造体44と構造体45とを接着層74を介して対向配置し、構造体41及び支持フィルム105が外側に配置されるように、構造体45を構造体44上に積層する。このとき、貫通孔45Xと、貫通孔74Xと、貫通孔44Yとが連通する。このため、貫通孔45X,74Xの底部には、貫通孔44Yに充填されたビア配線V7が露出される。次いで、支持フィルム105を構造体45の絶縁層55から剥離する。
【0109】
続いて、
図20(b)に示す工程では、貫通孔45X,74Xを充填するビア配線V8を形成するとともに、貫通孔45Yを充填するビア配線V9を形成する。これにより、配線65と配線64とがビア配線V7,V8を介して直列に接続され、配線65がビア配線V9と電気的に接続される。本工程では、例えば、ビア配線V8,V9は、その上面が絶縁層55の上面と略面一になるように形成される。ビア配線V8,V9は、例えば、金属層81及び配線61を給電層に利用する電解めっき法や金属ペーストの充填等の方法により形成することができる。
【0110】
以上説明した製造工程により、構造体41と、基板30と、構造体42〜45とが積層された積層体において、配線61,62,63,64,65がビア配線V1〜V8を介して直列に接続される。この直列に接続された導体部分は、最終的に成形されて約4巻きのコイルとなる。
【0111】
なお、
図19及び
図20(a)に示した工程において、接着層74を介して構造体45を構造体44上に積層した後に、貫通孔45X,45Y,74Xを形成するようにしてもよい。
【0112】
次に、
図21(a)及び
図21(b)に示す工程について説明する。なお、
図21(a)及び
図21(b)は、
図12(c)の12a−12a線位置に対応する断面図である。
図21(a)に示す工程では、まず、
図12に示した工程と同様に、支持フィルム106の下面106Aに、絶縁層56と配線66とを有する構造体46を積層する。この積層体では、支持フィルム106、絶縁層56及び配線66を厚さ方向に貫通する貫通孔46Xが形成され、支持フィルム106及び絶縁層56を厚さ方向に貫通して配線66の上面を露出する貫通孔46Yが形成されている。また、絶縁層56の下面には、配線66と、金属層66Dと、金属層86とが形成されている。配線66と金属層86とは溝部66Yによって分離されて形成されている。また、配線66には、後工程でコイル基板を成形する際に、コイルを構成する渦巻き形状を形成しやすくするための溝部66Zが形成されている。本工程で形成される配線66(第2金属層)は、例えば、
図7に示した配線66(つまり、螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線66)よりも平面形状が大きく形成されている。そして、この配線66は、最終的に成形(型抜き等)されて、コイルの一部となる6層目の配線(1巻の約3/4)となる部位である。なお、構造体46は、構造体42と同一の構造である。
図21では図示されていないが、構造体46には、開口部202Yと同様の位置に開口部が形成されている。
【0113】
続いて、接着層75を準備し、その接着層75を厚さ方向に貫通する貫通孔75Xを形成する。
次に、
図21(b)に示す工程では、
図13(b)に示した工程と同様に、構造体45の絶縁層55上に、接着層75を介して構造体46及び支持フィルム106を積層する。すなわち、構造体45と構造体46とを接着層75を介して対向配置し、構造体41及び支持フィルム106が外側に配置されるように、構造体46を構造体45上に積層する。このとき、貫通孔46Xと、貫通孔75Xと、貫通孔45Yとが連通する。このため、貫通孔46X,75Xの底部には、貫通孔45Yに充填されたビア配線V9が露出される。続いて、支持フィルム106を構造体46の絶縁層56から剥離する。次いで、貫通孔46X,75Xを充填するビア配線V10を形成するとともに、貫通孔46Yを充填するビア配線V11を形成する。これにより、配線66と配線65とがビア配線V9,V10を介して直列に接続され、配線66がビア配線V11と電気的に接続される。本工程では、例えば、ビア配線V10,V11は、その上面が絶縁層56の上面と略面一になるように形成される。ビア配線V10,V11は、例えば、金属層81及び配線61を給電層に利用する電解めっき法や金属ペーストの充填等の方法により形成することができる。
【0114】
以上説明した製造工程により、構造体41と、基板30と、構造体42〜46とが積層された積層体において、配線61,62,63,64,65,66がビア配線V1〜V10を介して直列に接続される。この直列に接続された導体部分は、最終的に成形されて約4巻きと3/4のコイルとなる。
【0115】
なお、
図21(a)に示した工程において、接着層75を介して構造体46を構造体45上に積層した後に、貫通孔46X,46Y,75Xを形成するようにしてもよい。
次に、
図22に示す工程では、支持フィルム107の下面107Aに、絶縁層57と配線67とを有する構造体47を積層する。本工程は、
図12に示した工程と同様に行うことができるため、製造方法の説明を割愛し、
図22に示した構造体の構造について説明する。
【0116】
図22(b)に示す構造体では、支持フィルム107、絶縁層57及び配線67を厚さ方向に貫通する貫通孔47Xが形成され、支持フィルム107及び絶縁層57を厚さ方向に貫通して配線67の上面を露出する貫通孔47Yが形成されている。また、
図22(a)及び
図22(c)に示すように、絶縁層57の下面には、配線67と、接続部67Aと、金属層67Dと、金属層87とが形成されている。これら配線67、接続部67A、金属層67D及び金属層87は一体に形成されている。また、
図22(c)に示すように、構造体47には、開口部207Yが形成されるとともに、配線67と金属層67Dとの間に溝部67Yが形成されている。配線67には、後工程でコイル基板を成形する際に、コイルを構成する渦巻き形状を形成しやすくするための溝部67Xが形成されている。本工程で形成される配線67(第2金属層)は、例えば、
図7に示した配線67(つまり、螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線67)よりも平面形状が大きく形成されている。そして、この配線67は、最終的に成形(型抜き等)されて、コイルの一部となる7層目の配線(約1巻)となる部位である。なお、
図22(c)では、開口部207Y及び溝部67X,67Yから露出する絶縁層57を梨地模様で示している。
【0117】
次に、
図23及び
図24に示す工程について説明する。なお、
図23及び
図24(a)は、
図22(c)の22a−22a線位置に対応する断面図であり、
図24(b)は、
図22(c)の22b−22b線位置に対応する断面図である。
【0118】
まず、
図23(a)に示す工程では、接着層76を準備し、その接着層76を厚さ方向に貫通する貫通孔76Xを形成する。続いて、
図13(b)に示した工程と同様に、構造体46の絶縁層56上に、接着層76を介して構造体47及び支持フィルム107を積層する。すなわち、構造体46と構造体47とを接着層76を介して対向配置し、構造体41及び支持フィルム107が外側に配置されるように、構造体47を構造体46上に積層する。このとき、貫通孔47Xと、貫通孔76Xと、貫通孔46Yとが連通する。このため、貫通孔47X,76Xの底部には、貫通孔46Yに充填されたビア配線V11が露出される。次いで、
図23(b)に示す工程では、
図23(a)に示した支持フィルム107を構造体47の絶縁層57から剥離する。
【0119】
続いて、
図24(a)及び
図24(b)に示す工程では、貫通孔47X,76Xを充填するビア配線V12を形成する。これにより、配線67と配線66とがビア配線V11,V12を介して直列に接続される。また、
図24(b)に示すように、貫通孔47Yを充填するビア配線V13を形成する。これにより、配線67がビア配線V13と電気的に接続される。本工程では、例えば、ビア配線V12,V13は、その上面が絶縁層57の上面と略面一になるように形成される。ビア配線V12,V13は、例えば、金属層81及び配線61を給電層に利用する電解めっき法や金属ペーストの充填等の方法により形成することができる。
【0120】
以上説明した製造工程により、構造体41と、基板30と、構造体42〜47とが積層された積層体において、配線61,62,63,64,65,66,67がビア配線V1〜V12を介して直列に接続される。この直列に接続された導体部分は、最終的に成形されて約5巻きと1/2のコイルとなる。
【0121】
なお、
図22及び
図23に示した工程において、接着層76を介して構造体47を構造体46上に積層した後に、貫通孔47X,47Y,76Xを形成するようにしてもよい。
以上の製造工程により、各個別領域A1に、基板30の下面30Aに構造体41が積層され、基板30の上面30Bに複数の構造体42〜47が順に積層された積層体23を製造することができる。
【0122】
次に、
図25(a)に示す工程では、
図24に示した構造体を、
図9に示した切断位置A2に沿って切断して個片化し、個々のシート状のコイル基板10を得る。
図25(a)の例では、コイル基板10には、12個の個別領域A1が形成されている。なお、
図25(a)に示した工程を実施せずに、
図24に示した工程が終了したリール状の基板100を、そのまま製品として出荷してもよい。
【0123】
次に、
図25(b)〜
図27に示す工程では、コイル基板10を型抜き等により成形して不要部分を除去し、各層に形成された配線61〜67を螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線に加工する。ここで、
図25(b)は、コイル基板10を成形する前の配線67及び接着層76を例示する平面図である。なお、
図25(b)では、絶縁層57の図示を省略し、開口部207Y及び溝部67X,67Yから露出する接着層76を梨地模様で示している。
図26は、コイル基板10を成形する前の各層に形成された配線61〜67の形状を模式的に例示する斜視図である。
図25(b)及び
図26に示したコイル基板10を、例えば金型を用いたプレス加工法等により成形し、
図27(a)及び
図27(b)に示した形状とする。具体的には、
図25(b)及び
図26に示したコイル基板10の不要部分、つまり開口部20Yに対応する位置の基板30、絶縁層51〜57、配線61〜67及び接着層71〜76(
図24(b)参照)をプレス加工により打ち抜いて除去する。さらに、コイル基板10の不要部分、つまり
図25(b)及び
図26に破線で示した領域と平面視で重複する位置の基板30、絶縁層51〜57、配線61〜67、及び接着層71〜76をプレス加工により打ち抜いて除去する。これにより、
図27(b)に示すように、ブロック11の所要箇所に開口部20Yが形成され、積層体23の外形が略長方形状に成形される。さらに、積層体23の略中央部に貫通孔23Xが形成される。この貫通孔23Xの形成により、
図27(a)に示すように、貫通孔23Xの内壁面から配線61〜67の各々の一部が露出される。ここでは図示を省略するが、開口部20Yの形成により、積層体23の外壁面(側壁)からも配線61〜67の各々の一部が露出される(
図3参照)。なお、このように成形された積層体23は各個別領域A1に形成され、隣接する積層体23同士は連結部12を介して相互に連結されている。
【0124】
本工程において、各構造体41〜47に形成された成形前の導電層(配線61〜67や金属層61D〜67D)がほとんど同じ形状に形成されている。すなわち、各構造体41〜47にダミーパターンである金属層61D〜67Dを設けることにより、各構造体41〜47に形成された導電層の形状差を小さくしている。これにより、プレス加工時に上記形状差に起因して積層体23が変形することを抑制することができる。
【0125】
本工程により、各層に形成された配線61〜67が螺旋状のコイルの一部を構成する形状に成形される。すなわち、成形後の配線61〜67は、ビア配線V1〜V12を介して直列に接続され、約5巻きと1/2の螺旋状のコイルとなる。
【0126】
なお、コイル基板10の成形(つまり、開口部20Y及び貫通孔23Xの形成)を、金型を用いたプレス加工法に代えて、レーザ加工法等により行うようにしてもよい。また、本工程において、開口部20Y及び貫通孔23Xの形成と併せて、
図27(b)に示すように、連結部12の所要箇所に、当該連結部12を厚さ方向に貫通する認識マーク12Xを形成するようにしてもよい。この認識マーク12Xは、例えば、金型を用いたプレス加工法やレーザ加工法により形成することができる。
【0127】
次に、
図28及び
図29(a)に示す工程では、貫通孔23Xの内壁面を含む積層体23の表面全面を被覆する絶縁膜25を形成する。すなわち、各個別領域A1に形成された積層体23の外壁面(側壁)、最下層の配線61の下面及び側面、最上層の絶縁層57の上面、ビア配線V12,V13の上面、及び貫通孔23Xの内壁面を連続的に被覆する絶縁膜25を形成する。積層体23の外壁面や貫通孔23Xの内壁面には各配線61〜67の端面が露出しているため、インダクタ90(
図8参照)を製造した際に、各配線61〜67が封止樹脂91に含有される場合がある導電体(磁性体のフィラー等)と短絡するおそれがある。これに対し、本例では、積層体23の表面を被覆する絶縁膜25を形成するため、封止樹脂91に含有される場合がある導電体との短絡を抑制することができる。
【0128】
なお、絶縁膜25は、例えば、スピンコート法やスプレーコート法により形成することができる。また、絶縁膜25として、電着レジストを用いるようにしてもよい。この場合には、電着塗布法により、積層体23の外壁面や貫通孔23Xの内壁面に露出する各配線61〜67の端面のみに電着レジスト(絶縁膜25)が被着される。
【0129】
以上の製造工程により、各個別領域A1にコイル基板20が製造され、複数のコイル基板20が設けられたコイル基板10が製造される。
次に、インダクタ90の製造方法について説明する。
【0130】
まず、
図29(b)に示す工程では、各個別領域A1に形成されたコイル基板20全体を封止する封止樹脂91を形成する。すなわち、各個別領域A1全体に封止樹脂91を形成する。これにより、コイル基板20の貫通孔20Xが封止樹脂91によって充填され、コイル基板20の外壁面(側壁)、コイル基板20の上面(絶縁膜25の上面)及びコイル基板20の下面(絶縁膜25の下面)が封止樹脂91によって被覆される。封止樹脂91を充填する方法としては、例えば、トランスファーモールド法、コンプレッションモールド法、インジェクションモールド法を用いることができる。
【0131】
次に、
図29(b)に示した構造体を破線で示した切断位置に沿って切断する、つまり、コイル基板10を個別領域A1毎に切断する。これにより、連結部12及び外枠13が除去され、封止樹脂91によって封止されたコイル基板20が個片化され、
図30(a)に示す構造体が複数個得られる。このとき、コイル基板20の一方の側面20Aには接続部61Aが露出され、コイル基板20の他方の側面20Bには接続部67Aが露出される。
【0132】
なお、
図29(b)及び
図30(a)に示した工程では、各個別領域A1に形成されたコイル基板20を封止する封止樹脂91を形成した後に、コイル基板20を個片化するようにした。これに限らず、例えば、コイル基板20を個片化した後に、各コイル基板20の側面20A,20Bを除く部分を封止するように封止樹脂91を形成するようにしてもよい。
【0133】
続いて、
図30(b)に示す工程では、コイル基板20の側面20A、封止樹脂91の一方の側面、上面及び下面の一部を連続的に被覆する電極92を形成する。また、コイル基板20の側面20B、封止樹脂91の他方の側面、上面及び下面の一部を連続的に被覆する電極93を形成する。電極92の内壁面は、コイル基板20の側面20Aから露出する接続部61Aの側面と接する。これにより、接続部61A及びその接続部61Aと一体に形成された配線61は、電極92と電気的に接続される。また、電極93の内壁面は、コイル基板20の側面20Bから露出する接続部67Aの側面と接する。これにより、接続部67A及びその接続部67Aと一体に形成された配線67は、電極93と電気的に接続される。
【0134】
以上の製造工程により、
図8(b)に示したインダクタ90を製造することができる。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)螺旋状のコイルの一部となる配線61〜67と、絶縁層51〜57とを有する構造体41〜47を、基板30の上下両面に積層し、上下に隣接する配線61〜67同士をビア配線V1〜V12を介して直列に接続して、1本の螺旋状のコイルを作製するようにした。これにより、基板30の上下両面に積層する構造体の積層数を調整することで、平面形状を変更することなく任意の巻き数のコイルを作製することができる。このため、従来のサイズ(例えば、平面形状が1.6mm×1.6mm)よりも小さいサイズ(例えば、平面形状が1.6mm×0.8mm)のコイルを容易に作製することができる。
【0135】
(2)また、基板30の上下両面に積層する構造体の積層数を増加させることにより、平面形状を変更することなくコイルの巻き数(ターン数)を増加させることができる。このため、小型でインダクタンスの大きいコイルを容易に作製することができる。
【0136】
(3)積層体23の中に、構造体41〜47が有する絶縁層51〜57よりも熱膨張係数の低い基板30を設けるようにした。これにより、コイル基板20に温度変化が生じた際に、基板30の熱変形(熱収縮又は熱膨脹)を小さくできるため、各層に形成された配線61〜67の位置の変位を抑制できる。すなわち、コイル基板20に温度変化が生じた場合であっても、配線61〜67から構成されるコイル(コイル基板20)の位置が設計値からずれることを好適に抑制することができる。換言すると、配線61〜67から構成されるコイルの位置精度を向上させることができる。
【0137】
(4)基板30の剛性を絶縁層51〜57よりも高くした。例えば、基板30を絶縁層51〜57よりも厚く形成した。このように基板30に高い剛性を持たせることにより、コイル基板20全体の熱変形を抑制することができる。
【0138】
(5)基板30の上下両面に構造体41〜47を積層して積層体23を形成し、その積層体23の最下層に配線61を露出するようにした。このとき、配線61(例えば、銅層)は、基板30(例えば、ポリイミドフィルム)よりも絶縁膜25との密着性が高い。このため、積層体23の最下層に基板30を露出させる場合に比べて、積層体23と絶縁膜25との密着性を向上させることができる。また、積層体23の最下層に基板30を露出させた場合には、その基板30と絶縁膜25との密着性が低いため、絶縁膜25を形成する前に基板30の下面に対して絶縁膜25との密着性を高めるための表面処理(例えば、プラズマ処理)を施す必要がある。これに対し、本例では、配線61と絶縁膜25との密着性が高いため、上述したような表面処理を施す必要がない。
【0139】
(6)溝部61X,61Yに露出する配線61の側面を被覆するように絶縁膜25を形成するようにした。これにより、絶縁膜25と配線61との接触面積を増加させることができるため、絶縁膜25と配線61との密着性をより向上させることができる。
【0140】
(7)コイル基板10では、積層体23を構成する基板30の一部を外枠13として利用し、その外枠13にスプロケットホール13Xを形成するようにした。これにより、積層体23を構成する部材以外の追加の部材を設けることなく、基板30のスプロケットホール13Xを利用してコイル基板10の搬送を容易に行うことができる。
【0141】
(8)ところで、コイルの一部を構成する形状の配線を予め各構造体に形成し、その各構造体を積層する方法も考えられる。すなわち、本例で言えば、
図7に示した形状の配線61〜67(貫通孔23Xが形成された状態の配線61〜67)を対応する構造体41〜47に形成し、その各構造体41〜47を基板30の上下両面に積層して積層体23を形成する方法も考えられる。しかし、この方法では、各配線が平面方向(例えば、左右)にずれて平面視で完全に重複するようには積層できない。その後、積層体に貫通孔等を形成すると、位置ずれした配線の一部が除去されるおそれがある。このような問題は、例えば、予め各構造体に形成する配線を細くすることで解決することができる。しかし、この場合には、コイルの直流抵抗が増加するという新たな問題が生じる。
【0142】
これに対し、本実施形態の製造方法では、螺旋状のコイルを構成する形状の配線61〜67(
図7に示した配線61〜67)よりも平面形状の大きい金属層(製造途中における配線61〜67)を予め各構造体41〜47に形成するようにした。そして、各構造体41〜47を基板30の上下両面に積層して積層体23を形成し、この積層体23を厚さ方向に成形して、各金属層を螺旋状のコイルの一部を構成する形状の配線に同時に加工するようにした。このため、各配線61〜67が平面方向にずれることなく、平面視で重複するように高精度に積層された配線61〜67から螺旋状のコイルを形成することができる。この結果、配線61〜67から構成されるコイルの直流抵抗を小さくすることができる。すなわち、各配線61〜67の平面方向への位置ずれを考慮する必要がないため、各配線61〜67の幅を太くすることが可能となり、コイルの直流抵抗を小さくすることができる。
【0143】
(9)基板100及び支持フィルム102〜107としてリール状(テープ状)の可撓性を有する絶縁樹脂フィルムを用いるようにした。これにより、コイル基板10をリールトゥリールで製造することができる。このため、大量生産によるコイル基板10の低コスト化を実現することができる。
【0144】
(10)1つの構造体41〜47(1層)に形成する配線61〜67をコイルの1巻き以下とするようにした。このため、1つの構造体41〜47(1層)に形成する配線の幅を太くすることが可能となる。すなわち、配線61〜67の幅方向の断面積を増やすことが可能となり、インダクタの性能に直結する巻き線抵抗を低減することができる。
【0145】
(11)各構造体41〜47にダミーパターンである金属層61D〜67Dを設けるようにした。これにより、各構造体41〜47に形成された導電層の形状差を小さくすることができる。このため、上述した形状差に起因して、上記導電層を被覆する絶縁層51〜57に凹凸が生じることを好適に抑制できる。
【0146】
(12)連結部12に位置する基板30の上下両面に金属層81〜87を積層するようにした。これにより、コイル基板10全体の機械的強度を高めることができる。
(13)上下に隣接する配線62〜67を電気的に接続する貫通電極(ビア配線V2〜V13)を、上下に隣接する構造体のうち下側の構造体に含まれる絶縁層と、上側の構造体に含まれる配線及び絶縁層とを貫通して形成するようにした。このため、構造体42〜47に含まれる絶縁層52〜57には、当該絶縁層52〜57を厚さ方向に貫通する貫通電極(ビア配線V2〜V13)が2箇所に形成される。例えば、絶縁層52にはビア配線V2,V3が形成され、絶縁層53にはビア配線V4,V5が形成され、絶縁層54にはビア配線V6,V7が形成され、絶縁層55にはビア配線V8,V9が形成され、絶縁層56にはビア配線V10,V11が形成され、絶縁層57にはビア配線V12,V13が形成される。これにより、絶縁層52〜57中においてはビア配線V2〜V13が支持体となって剛性を保つため、インダクタ90全体のねじれ等を抑制することができる。
【0147】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態の製造方法における開口部201Y〜207Yの形成を省略してもよい。この場合には、例えば、金属箔161等をパターニングする工程(例えば、
図11(b)に示した工程)において、絶縁層51の下面全面を被覆する金属箔161に溝部61X,61Yのみを形成する。すなわち、この場合には、溝部61X,61Y以外の金属箔161を残し、溝部61X,61Y以外の絶縁層51の下面を被覆する金属層を形成する。なお、他の層についても同様である。例えば、絶縁層52の下面に、貫通孔42X及び溝部62Y,62Z以外の絶縁層52の下面を被覆する金属層を形成する。
【0148】
・上記実施形態における金属層81〜87の形成を省略してもよい。
・上記実施形態における金属層61D〜67D(ダミーパターン)の形成を省略してもよい。
【0149】
・上記実施形態における認識マーク12Xと同様の認識マークを外枠13に形成するようにしてもよい。すなわち、外枠13に、位置決め(位置合わせ)のための貫通孔を形成するようにしてもよい。この場合において、外枠13に認識マーク及びスプロケットホール13Xの両方を形成するようにしてもよいし、外枠13に認識マークのみを形成するようにしてもよい。
【0150】
・上記実施形態における絶縁膜25を省略してもよい。例えば、封止樹脂91が磁性体を含有しない場合には、コイル基板20を被覆する絶縁膜25が不要となるため、その絶縁膜25を省略してもよい。なお、この場合には、封止樹脂91が短絡の原因となる磁性体を含有していないため、コイル基板20上に直接、封止樹脂91を形成することができる。
【0151】
・上記実施形態における基板30の上下両面に積層する構造体の数は特に制限されない。例えば、基板30の下面30Aに2つ以上の構造体を積層するようにしてもよいし、基板30の上面30Bに1〜5つ、又は7つ以上の構造体を積層するようにしてもよい。また、基板30が積層体23の厚さ方向の中心付近に配置されるように、基板30の下面30Aに積層する構造体の数と、基板30の上面30Bに積層する構造体の数とを設定するようにしてもよい。
【0152】
・上記実施形態における絶縁層51を省略してもよい。この場合には、基板30と配線61との密着性を向上させるために、基板30の下面30Aに対してプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。なお、この場合であっても、配線61と配線62との間の絶縁は基板30によって十分に確保することが可能である。
【0153】
・上記実施形態において、1つの構造体41〜47に形成する配線の巻き数は任意に組み合わせることができる。上記実施形態のように、約1巻きの配線と約3/4巻きの配線を組み合わせてもよいし、約1巻きの配線と約1/2巻きの配線を組み合わせてもよい。約3/4巻きの配線を用いた場合には、4種類のパターン(上記実施形態の例では、配線62,63,64,65)の配線が必要となる一方で、約1/2巻きの配線を用いる場合には、2種類のパターンの配線のみで構成することができる。