【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25−26年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)ICTイノベーション創出型研究開発「極低消費電力テラヘルツ波無線通信に向けた集積回路基盤技術の研究開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】テラヘルツ波デバイス140Uは、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブのフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブの面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ内に配置され、格子点の線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路上に配置されたRTDデバイス4とを備える。
前記2次元フォトニック結晶スラブ上の前記共鳴トンネルダイオードデバイスの周囲に配置されたテラヘルツ波吸収体を備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記テラヘルツ波吸収体は、キャリアドープされた半導体層、ポリマーフォトニック結晶層、金属微細構造を有するメタマテリアル層のいずれかを備えることを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記2次元フォトニック結晶導波路の中央部分の高さと前記第1の電極若しくは前記第2の電極の高さを合わせたことを特徴とする請求項10に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記2次元フォトニック結晶導波路の中央部分の高さと前記第1の電極若しくは前記第2の電極の高さを合わせたことを特徴とする請求項15に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記金属パターンは、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナアンテナ、スロットアンテナ、リングスロットアンテナ、若しくはボータイアンテナのいずれかを備えることを特徴とする請求項20に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記金属スロット線路表面若しくは前記金属スロット線路間の前記2次元フォトニック結晶導波路表面に配置された検出部を備えることを特徴とする請求項23に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記金属スロット線路は、テラヘルツ波の伝搬方向に沿って、テラヘルツ波の結合長の偶数倍の長さを有することを特徴とする請求項23に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記検出部は、テラヘルツ波の伝搬方向に沿って、前記金属スロット線路の端部からテラヘルツ波の結合長の奇数倍の長さの位置に配置されることを特徴とする請求項29に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記格子点は、正方格子、長方格子、面心長方格子、若しくは三角格子のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1〜37のいずれか1項に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記半導体材料は、シリコン(Si)、GaAs、InP、GaN、さらに、GaInAsP/InP系、InGaAs/GaAs系、GaAlAs/GaAs系若しくはGaInNAs/GaAs系、GaAlInAs/InP系、AlGaInP/GaAs系、GaInN/GaN系の内、いずれかを適用可能であることを特徴とする請求項40に記載のテラヘルツ波デバイス。
前記テラヘルツ波デバイスは、テラヘルツ波受信器、テラヘルツ波送信器、若しくはテラヘルツ波送受信器のいずれかを備えることを特徴とする請求項42に記載のテラヘルツ波集積回路。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0025】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0026】
以下の説明において、実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスには、テラヘルツ波送信器、テラヘルツ波受信器、およびデバイス単体で送受信可能なテラヘルツ波送受信器が含まれる。また、実施の形態に係るテラヘルツ波集積回路には、これらのテラヘルツ波デバイスが搭載可能である。
【0027】
[第1の実施の形態]
(テラヘルツ波集積回路)
テラヘルツ波デバイスとしてテラヘルツ波送信器18T、テラヘルツ波受信器18Rを搭載した実施の形態に係るテラヘルツ波集積回路2の模式的鳥瞰構成は、
図1に示すように表される。
【0028】
実施の形態に係るテラヘルツ波集積回路2において、テラヘルツ波の導波及び導入には、
図1に示すように、低損失な誘電体導波路(2次元フォトニック結晶を用いた線欠陥導波路)を用いる。
【0029】
実施の形態に係るテラヘルツ波集積回路2は、
図1に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯における光波もしくはテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aとを備える。
【0030】
また、実施の形態に係るテラヘルツ波集積回路2は、
図1に示すように、例えば、方向性結合器20と、方向性結合器20と2次元フォトニック結晶導波路14を介して結合される入出力機構16と、方向性結合器20と2次元フォトニック結晶導波路14Rを介して結合されるテラヘルツ波受信器(検出器)18Rと、方向性結合器20と2次元フォトニック結晶導波路14Tを介して結合されるテラヘルツ波送信器(光源)18Tとを備える。
【0031】
方向性結合器20は、例えば、格子点の2列間隔分離隔した2次元フォトニック結晶導波路14
1・14
2を備える。
【0032】
2次元フォトニック結晶導波路14・14
1・14
2・14R・14Tは、2次元フォトニック結晶スラブ12に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成される。
【0033】
入出力機構16は、自由空間からのカプラであって、例えば、1次元フォトニック結晶からなるグレーティングカプラで構成される。尚、入出力機構16は、2次元フォトニック結晶を用いて構成することも可能である。
【0034】
テラヘルツ波受信器(検出器)18Rは、例えば、共鳴トンネルダイオード(RTD:Resonant Tunneling Diode)などを搭載したテラヘルツ波受信器、あるいはショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)などで構成可能である。
【0035】
テラヘルツ波送信器(光源)18Tは、RTDなどを搭載したテラヘルツ波送信器、あるいは量子カスケードレーザ、もしくは、CMOS発振器や、高速フォトダイオードと周波数差がテラヘルツ波に相当する2つの半導体レーザからなるフォトミキサなどで構成可能である。ここで、量子カスケードレーザの材料系としては、GaInAs/AlInAs、GaAs/AlGaAs、InAs/AlGaSb、GaN/AlInGaN、Si/SiGeなどが適用可能である。半導体レーザの材料系としては、例えば、以下のものを適用可能である。すなわち、例えば、波長1.3μm〜1.5μmでは、GaInAsP/InP系、波長900nmの赤外光では、InGaAs/GaAs系、波長800nm〜900の赤外光/近赤外光では、GaAlAs/GaAs系若しくはGaInNAs/GaAs系、波長1.3μm〜1.67μmでは、GaAlInAs/InP系、波長0.65μmでは、AlGaInP/GaAs系、青色光では、GaInN/GaN系などを適用可能である。
【0036】
実施の形態に係るテラヘルツ波集積回路2は、テラヘルツ波を伝播可能である。
【0037】
また、テラヘルツ波受信器として、RTDデバイスを用いる場合には、テーパースロットアンテナを集積化した構成を用いても良い。さらに、テーパースロットアンテナではなくダイポールアンテナ、スロットアンテナなどの他種のアンテナ構造を集積したものも使用可能である。
【0038】
(テラヘルツ波デバイス)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uの模式的鳥瞰構成は、
図2に示すように表される。
【0039】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uは、
図2に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14上に配置されたダイオードデバイスとを備える。
【0040】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいて、テラヘルツ波の導波及び導入には、
図2に示すように、低損失な誘電体導波路(2次元フォトニック結晶を用いた線欠陥導波路)を用いる。
【0041】
ここで、ダイオードデバイスとしては、2次元フォトニック結晶導波路14上に配置された共鳴トンネルダイオード(RTD)デバイス4若しくはSBDを適用可能である。
【0042】
共鳴トンネルダイオード(RTD)デバイス4は、テラヘルツ波送信器18T、テラヘルツ波受信器18R、或いはデバイス単体で送受信可能なテラヘルツ波送受信器として適用可能である。また、SBDは、テラヘルツ波受信器18Rとして適用可能である。
【0043】
RTDデバイス4の共鳴トンネルダイオード(RTD)は、2次元フォトニック結晶導波路14の中心に来るように配置すると良い。RTDデバイス4と2次元フォトニック結晶導波路14との結合効率が上昇するからである。
【0044】
2次元フォトニック結晶導波路14上にRTDデバイス4を配置する場合、RTDデバイス4のエピタキシャル成長層ができるだけ、2次元フォトニック結晶導波路14の表面に近づくように、RTDデバイス4の基板を薄く研磨し、さらにRTD部分が2次元フォトニック結晶導波路14の中心に来るように配置すると良い。RTDデバイス4と2次元フォトニック結晶導波路14との結合効率がより効率が上昇するからである。
【0045】
(テーパースロットアンテナを集積化したRTDデバイス)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なテーパースロットアンテナを集積化したRTDデバイス4の模式的鳥瞰構成は、
図3に示すように表される。
【0046】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なテーパースロットアンテナを集積化したRTDデバイスは、
図3に示すように、半導体基板100と、半導体基板100上に配置された第1の電極122と、第1の電極122上に配置された絶縁層123と、第1の電極122に対して絶縁層123を介して配置され、かつ半導体基板100上に第1の電極122に対向して配置された第2の電極124と、絶縁層123を挟み第1の電極122と第2の電極124間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、半導体基板100上に対向する第1の電極122と第2の電極124間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、半導体基板100上に対向する第1の電極122と第2の電極124間に配置された導波路70と、導波路70に隣接して、半導体基板100上に対向する第1の電極122と第2の電極124間に配置されたホーン開口部80とを備える。
【0047】
能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、タンネット(TUNNETT:Tunnel Transit Time)ダイオード、インパット(IMPATT:Impact Ionization Avalanche Transit Time)ダイオード、GaAs系電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、GaN系FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)などを適用することもできる。
【0048】
ホーン開口部80は、テーパースロットアンテナから構成される。ホーン開口部80の開口角θは、例えば、10度程度以下に設定することが、電磁波(hν)の放射方向に指向特性を持たせる上で望ましい。ホーン開口部80の長さL3は、例えば、約700μm程度以下である。ホーン開口部80の先端部における開口幅は、例えば、約160μm程度である。
【0049】
導波路70は、共振器60の開口部に配置されている。導波路70の長さL2は、例えば、約700μm程度以下である。また、導波路70における第1の電極122と第2の電極124間の間隔は、例えば、約24μm程度である。
【0050】
なお、ホーン開口部80のホーン形状は、電磁波を空気中に取り出すために必要な構造である。ホーン形状によって、インピーダンス整合性良く電磁波を空気中に効率よく取り出すことができる。尚、ホーンの形状は、直線性形状に限らず、非直線性形状、曲線形状、2次曲線形状、放物線形状、階段状形状などであっても良い。
【0051】
共振器60には、2箇所の凹部125、126が形成されており、この2つの凹部125、126に挟まれて、凸部127が形成されている。そして、第2の電極124の凸部127の略中央部には突起部128が形成され、この突起部128の下側に第1の電極122と挟まれるように、能動素子90が配置される。
【0052】
共振器60の長さL1は、例えば、約30μm程度以下である。突起部128の長さは、例えば、約6μm程度以下である。また、凹部125、126の幅(第1の電極122と第2の電極124との間隔)は、例えば、約4μm程度である。能動素子90の寸法は、例えば、約1.4μm
2程度である。但し、能動素子90のサイズは、この値に限定されず、例えば、約5.3μm
2程度以下であってもよい。能動素子90の詳細構造については後述する。共振器60の各部のサイズは、上記寸法に限定されるものではなく、発振する電磁波の周波数に応じて設計上適宜設定されるものである。
【0053】
また、
図3に示すように、導波路70における第1の電極122と第2の電極124間の間隔に比べて、共振器60が形成されている部分の第1の電極122と第2の電極124間の間隔は、狭い。
【0054】
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置されている。金属/絶縁体/金属からなるMIMリフレクタ50の積層構造により、第2の電極124と第1の電極122は高周波的に短絡されるようになっている。
【0055】
なお、ここで、MIMリフレクタ50は、直流的には開放(オープン)でありながら、高周波を反射させることが可能となるという効果を有する。
【0056】
半導体基板100は、例えば、半絶縁性のInP基板によって形成され、厚さは、例えば、約600μm程度である。尚、厚さは適宜選択可能であり、後述するように薄層化することが望ましい。
【0057】
第1の電極122および第2の電極124は、いずれも例えば、Au/Pd/Tiのメタル積層構造からなり、Ti層は半絶縁性のInP基板との接触状態を良好にするためのバッファ層である。第1の電極122および第2の電極124の厚さは、例えば、約数100nm程度である。なお、第1の電極122、第2の電極124は、いずれも真空蒸着法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0058】
絶縁層123は、例えば、SiO
2膜で形成することができる。その他、Si
3N
4膜、SiON膜、HfO
2膜、Al
2O
3膜などを適用することもできる。なお、絶縁層3の厚さは、MIMリフレクタ50の幾何学的な平面寸法と、回路特性上の要求されるキャパシタ値を考慮して決めることができ、例えば、数10nm〜数100nm程度である。絶縁層3は、化学的気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0059】
MIMリフレクタ50は、第1の電極122と第2の電極124間に絶縁層123を介在させた構造から形成されている。また、RTDからなる能動素子90は、半絶縁性の半導体基板(InP基板)100上に配置されている。RTDのn
+GaInAs層91aの一部分をエッチングした表面上に接触して、第1の電極122が配置されている。第2の電極124は、RTDのn
+GaInAs層91b上に接触して配置されている。さらに、第2の電極124は、半絶縁性の半導体基板100上に延在して配置されている。
【0060】
このように、第2の電極124が、半絶縁性の半導体基板100上に延在して配置されていることから、互いに短絡されることがなく、RTDのn
+GaInAs層91aとn
+GaInAs層91b間に所定の直流バイアス電圧を印加できる構成を提供している。
【0061】
なお、第1の電極122と第2の電極124には、直流電源115が接続されるとともに、寄生発振を防止するための抵抗(図示省略)が接続されている。
【0062】
(共鳴トンネルダイオード)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なRTDデバイスのRTDの模式的断面構造は、
図4に示すように表される。
【0063】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なRTD90の構成例は、
図4に示すように、半絶縁性のInP基板からなる半導体基板100上に配置されn型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91aと、GaInAs層91a上に配置されn型不純物をドープされたGaInAs層92aと、GaInAs層92a上に配置されたアンドープのGaInAs層93bと、GaInAs層93b上に配置されたAlAs層94a/GaInAs層95/AlAs層94bから構成されたRTD部と、AlAs層94b上に配置されたアンドープのGaInAs層93bと、GaInAs層93a上に配置されn型不純物をドープされたGaInAs層92bと、GaInAs層92b上に配置されn型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91bと、GaInAs層91b上に配置された第2の電極124と、GaInAs層91aのエッチングされた表面上に配置された第1の電極122とを備える。
【0064】
図4に示すように、RTD90は、GaInAs層95をAlAs層94a、94bで挟んで形成されている。このように積層されたRTD90は、スペーサとして用いられるアンドープGaInAs層93a、93bを介在させてn型のGaInAs層92a、92b、及びn
+型のGaInAs層91a、91bを介して、下側に位置する第1の電極122と上側に位置する第2の電極124にオーミックに接続される構造となっている。
【0065】
ここで、各層の厚さは、例えば以下の通りである。
n
+型のGaInAs層91aおよび91bの厚さは、それぞれ例えば、約400nmおよび30nm程度である。n型のGaInAs層91aおよび91bの厚さは、略等しく、例えば、約50nm程度である。アンドープGaInAs層93aおよび93bの厚さは、略等しく、例えば、約5nm程度である。AlAs層94aおよび94bの厚さは、等しく、例えば、約1.5nm程度である。GaInAs層95の厚さは、例えば、約4.5nm程度である。
【0066】
なお、
図4に示す積層構造の側壁部には、SiO
2膜、Si
3N
4膜、SiON膜、HfO
2膜、Al
2O
3膜など、若しくはこれらの多層膜からなる絶縁膜を堆積することもできる。絶縁層は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0067】
RTDデバイス4としては、
図3に示すように、テーパースロットアンテナ(ホーン開口部80)を集積化した構成を用いるが、テーパースロットアンテナではなくダイポールアンテナ、スロットアンテナなどの他種のアンテナ構造を集積したものも使用可能である。
【0068】
(テラヘルツ波の伝播モード)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、2次元フォトニック結晶スラブ12とRTDを搭載するInP基板100との間のテラヘルツ波の伝播モードを説明する模式的断面構造は、
図5に示すように表される。
図5において、x軸方向にテラヘルツ波が伝播する。
【0069】
Si(シリコン)で形成された2次元フォトニック結晶スラブ12上にRTD90を搭載したInP基板100を配置すると、2次元フォトニック結晶導波路14から伝搬してくる波が、
図5に示すように、方向性結合器と同様の原理でInP基板100と2次元フォトニック結晶スラブ12間でカップリングを繰り返すことになる。InP基板100上にアンテナが無い場合には、波のエネルギーが完全にInP基板100内へ結合した点にRTD90が来れば、もっともRTD90に効率よくエネルギーを入射できる。しかしそのためには、InP基板100の端からRTD90に至る距離を結合長L
Cに合わせてカットしなければならない。
【0070】
テーパースロットアンテナを集積化したRTDデバイス4は、一度InP基板100内へ結合した波はほとんどがテーパースロットアンテナにキャッチされ、そのままRTD90にエネルギーが搬送されるため、テラヘルツ波の進行方向に対するRTD90の実装位置精度は緩和される。ただし、波の進行方向に垂直な方向、すなわち横方向(y軸方向)の位置ずれはシビアに特性に影響する。また、この配置はRTDデバイス4のテーパースロットアンテナ(80:
図3)の放射パターンと2次元フォトニック結晶導波路14の伝搬方向が同一であることも効率上昇に寄与する。
【0071】
(テーパースロットアンテナを集積化したRTDデバイスとの配置方法1)
2次元フォトニック結晶スラブ12上にRTDデバイス4を配置した第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uの模式的断面構造は、
図6に示すように表される。
【0072】
ここで、RTDデバイス4は、InP基板100と、InP基板100上に配置された第1の電極122および第2の電極124と、第1の電極122と第2の電極124との間に配置されたRTD90とを備える。RTD90は、
図6では、第1の電極122と第2の電極124との間に模式的に横方向に配置されるように示されているが、詳細構造では、
図3・
図4に示すように、第1の電極122と第2の電極124との間に積層化されて配置されている。
【0073】
さらに、2次元フォトニック結晶スラブ12上にコプレーナー実装基板130が配置されており、コプレーナー実装基板130上に形成された電極134と、RTDデバイス4の第1の電極122間にはボンディングワイヤ132が接続されている。尚、ボンディングワイヤ132の代わりに、導波路で接続する構成を採用しても良い。また、コプレーナー実装基板130は、さらに矢印方向の延長方向の端面にSMAコネクタなどを接続しても良い。
【0074】
RTD90を実装するInP基板100の厚さT1は、できるだけ薄い方が望ましい。シミュレーションでは、後述する
図20に示すように、InP基板100の厚さT1を600μm、200μm、20μmと振って計算したところ、20μmのものが最も良い結果を示した。なお、SBDを実装する場合には、InP基板の代わりにGaAs基板を適用することができる。GaAs基板の厚さも同様に、できるだけ薄い方が望ましい。
【0075】
RTDデバイス4において、RTD90とテーパースロットアンテナを搭載するInP基板100をできるだけ薄くすることは、
図5におけるテラヘルツ波の伝播モードの説明と同様に、基板内モードを抑制する効果がある。また、テーパースロットアンテナの集光特性をより良く活用することもできる。また、
図6に示すように、Auのボンディングワイヤ132をボンディングすることで信号の取り出しおよび導入が可能である。ここで、実験の都合上、Auのボンディングワイヤ132を適用したが、金属配線など他の結合手段を適用しても良い。
【0076】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいては、RTD90とテーパースロットアンテナを搭載するInP基板100をできるだけ薄くすることによって、RTD90部分に効率よくエネルギー搬送することが可能である。
【0077】
(変形例1:テーパースロットアンテナを集積化したRTDデバイスとの配置方法2)
2次元フォトニック結晶スラブ12上にRTDデバイス4を配置した第1の実施の形態の変形例1に係るテラヘルツ波デバイス140Dの模式的鳥瞰構成は、
図7に示すように表される。
【0078】
第1の実施の形態の変形例1に係るテラヘルツ波デバイス140Dは、
図7に示すように、ダイオードデバイスを2次元フォトニック結晶導波路14上にアンテナ電極面を下にして、フリップチップに配置している。すなわち、
図7の例では、ダイオードデバイスとしてRTDデバイス4を適用し、後述する
図8および
図9に示すように、RTDデバイス4を2次元フォトニック結晶導波路14上にフリップチップに配置している。
【0079】
上部配置構造の場合、RTDデバイス4の基板(RTDの場合はInP、SBDの場合はGaAs)をできるだけ薄く形成することが望ましいが、研磨の加工限界に律速される。そこで、ダイオードチップを裏返してフリップチップ実装することができれば、ダイオード部分をより2次元フォトニック結晶導波路14表面に近づけることができる。フリップチップ実装構造は、基板を薄くする構造と同じ効果が期待できる。ただし、このフリップチップ実装構造も基板モードを抑制するためには、できるだけ基板を薄く形成することが望ましい点は同様である。
【0080】
また、フリップチップ実装構造の配置を実現するためには、2次元フォトニック結晶導波路14自体に信号取り出し、及び導入のための信号線を配線する必要がある。
図7において、電極142・144は、フリップチップに配置されたRTDデバイス4の電極122・124に接続された信号線の例である。
【0081】
(テラヘルツ波デバイスの融合方法)
第1の実施の形態の変形例1に係るテラヘルツ波デバイスの融合方法を説明する模式的断面構造は、
図8に示すように表される。
【0082】
また、2次元フォトニック結晶スラブ上にRTDデバイス4を配置した第1の実施の形態の変形例1に係るテラヘルツ波デバイス140Dの模式的断面構造は、
図9に示すように表される。
【0083】
フリップチップ実装においては、例えば、第1の電極122と2次元フォトニック結晶スラブ12上に形成した信号線145とをコンタクトさせながら接着させる方法としては、例えば、導電性ペーストを用いる方法、或いはAuのバンプを形成し、このAuバンプを介して接続する方法などがある。
【0084】
2次元フォトニック結晶スラブ12上にRTDを配置した第1の実施の形態の変形例1に係るテラヘルツ波デバイス140Dにおいて、樹脂層146を用いて、樹脂封止した模式的断面構造は、
図10に示すように表される。例えば、張り合わせた時の隙間を樹脂等で充填することで、空気のギャップを緩和することができる。
【0085】
(変形例2)
InP基板100Tを薄層化した第1の実施の形態の変形例2に係るテラヘルツ波デバイス140Dの模式的断面構造は、
図11に示すように表される。
【0086】
さらに、InP基板100Tを薄層化した第1の実施の形態の変形例2に係るテラヘルツ波デバイス140Dにおいて、樹脂層146を用いて樹脂封止した模式的断面構造は、
図12に示すように表される。
【0087】
フリップチップ実装においては、アンテナ電極面を下にして、フリップチップ実装する。この場合、ダイオードの位置が2次元フォトニック結晶導波路14の表面に最も近くなりエネルギーの導入効率も改善可能である。この場合でも、InP基板内モードやInP基板100を介して上部から外部へエネルギーが漏れ出すことを防ぐには、やはりInP基板100の厚さをできるだけ薄くすることが望ましい。
【0088】
(変形例3)
第1の実施の形態の変形例3に係るテラヘルツ波デバイス140Dの模式的断面構造は、
図13に示すように表される。
【0089】
RTDデバイス4(122、124、90)と2次元フォトニック結晶スラブ12上に形成した信号線145がフリップチップにコンタクトした状態を樹脂層146や接着剤等で固定することができれば、塩酸でInP基板100を全て無くしアンテナ電極122・124とRTD90だけの薄い膜が2次元フォトニック結晶スラブ12上に転写されたことと同じことになる。この場合、RTD90の位置が2次元フォトニック結晶導波路14の表面に最も近くなりエネルギーの導入効率も変形例2に比べて、さらに改善可能である。また、InP基板内モードやInP基板を介して上部から外部へエネルギーが漏れ出すことも防ぐことができる。
【0090】
(コプレーナー実装基板との実装構造例)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uとコプレーナー実装基板130との実装構造例の模式的平面構成は、
図14に示すように表される。また、
図14に対応する表面写真例は、
図15に示すように表される。
図14および
図15に示された構成は、テーパースロットアンテナを集積したRTDデバイスとの配置方法1(
図6)に対応している。すなわち、2次元フォトニック結晶導波路14上部にダイオード(電極構造を含む)の中心が2次元フォトニック結晶導波路14の中心に来るように配置する。また、InP基板100はできるだけ研磨して薄くする。今回の試作では200μmまでInP基板100を研磨した。一方、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uとして、受信器を構成する場合には、RTD90の代わりにGaAs基板を薄層化したSBDを搭載可能である。
【0091】
ここで、2次元フォトニック結晶スラブ12内に形成された格子点12Aの周期aは、約240μmである。また、2次元フォトニック結晶スラブ12を形成するシリコン基板の抵抗率は、約10000Ωcmである。また、
図14において、2次元フォトニック結晶導波路14の長さLS2は、約14mmである。
【0092】
また、
図14・
図15に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12上に形成された2次元フォトニック結晶導波路14を延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面には、WR−3導波管などとの結合性を向上させるために、2次元フォトニック結晶導波路が延伸した断熱的モード変換機構部10を備えていても良い。断熱的モード変換機構部10の長さLS1は、例えば、約3mmである。
【0093】
断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備えている。テーパー形状の側面は、傾斜面を有していても良い。また、テーパー形状の側面は、曲面を有していても良い。また、テーパー形状の側面は、段差面を有していても良い。
【0094】
また、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる円錐型形状を備えていても良い。
【0095】
また、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる四角錘形状を備えていても良い。
【0096】
また、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなる楔型形状を備えていても良い。
【0097】
また、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる撥型形状を備えていても良い。
【0098】
また、断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部の厚さが薄くなる階段型形状を備えていても良い。
【0099】
また、断熱的モード変換機構部10は、樹脂層により保護されていても良い。
【0100】
断熱的モード変換機構部10は、導波管導波路内に挿入可能である。ここで、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジは、端面に接していても良い。また、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジは、端面から離隔していても良い。
【0101】
さらに、断熱的モード変換機構部10が配置される2次元フォトニック結晶スラブ12の端面は、断熱的モード変換機構部10の周辺部において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジとの間にギャップを備え、導波管フランジから離隔していても良い。ギャップが有る場合は、導波管フランジは、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔して配置されているため、テラヘルツ入力波の表面モードを抑制することができる。
【0102】
詳細構造は省略されているが、
図15に示す例では、断熱的モード変換機構部10が配置される2次元フォトニック結晶スラブ12の端面は、断熱的モード変換機構部10の周辺部において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジとの間にギャップを備えている。
【0103】
(フォトニック結晶の有無によるRTD検波強度の周波数特性)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、フォトニック結晶の有無によるRTD検波強度の周波数特性の実験結果は、
図16に示すように表される。
図16において、曲線WPは、
図14・
図15に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12を適用し、2次元フォトニック結晶導波路14を伝播したテラヘルツ波をテーパースロットアンテナにより受信した第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスの場合の検波強度(dBm)を表す。一方、曲線WOPは、2次元フォトニック結晶スラブ12を適用せず、テラヘルツ波をテーパースロットアンテナにより直接受信した比較例の検波強度(dBm)を表す。
【0104】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、
図16に示すように、フォトニック結晶の導波帯域ΔF(PC)において、検波強度(dBm)が平均して34dB改善されている。フォトニック結晶導波路なしで、金属電極兼アンテナを配したダイオードのみだとアンテナの指向性の周波数依存性が大きく影響し、検波強度が最大で50dBも変動する。これに対し、2次元フォトニック結晶導波路14を介して、検波すると検波強度の変動も20dB以下に抑えることができる。シミュレーション結果では、変動は2dB以下である。
【0105】
一方、レンズつきRTDとの検波強度の比較結果によれば、アンテナ利得が自由空間入射と比較して8dB改善されるレンズ付きRTDと比較して、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、実験的に3―13dBの検波強度の改善が得られた。
【0106】
(アイパターン)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、ギガビット通信の実験結果であって、3Gbpsにおけるエラーフリー通信時のアイパターンは、
図17に示すように表される。第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、3Gbpsリアルタイム通信によるエラーフリー伝送が実現された。すなわち、作製した第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスモジュールの検出動作において3Gbpsのエラーフリー通信にも成功した。
【0107】
(RTDデバイスの位置ずれ)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいて、2次元フォトニック結晶導波路14上に搭載するRTDデバイス4の位置ずれ(l
1とl
2との差)が小さい例は、
図18(a)に示すように表わされ、位置ずれが大きい例は、
図18(b)に示すように表される。
図18(a)では、2次元フォトニック結晶導波路14上に搭載するRTDデバイス4の位置ずれ(l
1とl
2との差)が周期a/8(30μm)と小さい場合に対応し、
図18(b)では、2次元フォトニック結晶導波路14上に搭載するRTDデバイス4の位置ずれ(l
1とl
2との差)が周期a(240μm)と大きい場合に対応している。
【0108】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、位置ずれの大小によるRTD検波強度の周波数特性の実験結果は、
図19に示すように表される。
図19において、曲線DSは、2次元フォトニック結晶導波路14上に搭載するRTDデバイス4の位置ずれ(l
1とl
2との差)が小さい例(
図18(a))に対応し、曲線DLは、2次元フォトニック結晶導波路14上に搭載するRTDデバイス4の位置ずれ(l
1とl
2との差)が大きい例(
図18(b))に対応する。位置合わせによりフォトニック結晶の導波帯域ΔF(PC)における検波強度が平均で約18dB改善される。つまりRTDデバイス4と2次元フォトニック結晶導波路14の中心は、周期a/4以下で精度合わせをすることが望ましい。
【0109】
(基板厚さ依存性:シミュレーション結果)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、RTDデバイス4のInP基板100厚さをパラメータとする結合効率の周波数特性のシミュレーション結果は、
図20に示すように表される。
【0110】
RTDデバイス4のInP基板100の厚さを600μm、200μm、20μmと変化させると、
図20に示すように、InP基板100の厚さが薄ければ薄いほど、フォトニック結晶の導波帯域ΔF(PC)において、平均結合効率が改善する。例えば、InP基板100の厚さを600μm、200μm、20μmと変化させると、平均結合効率は、−14dB、−13dB、−10dBとなり、平均結合効率が改善する。
【0111】
[第2の実施の形態]
(テラヘルツ波デバイス)
第2の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eの模式的鳥瞰構成は、
図21に示すように表される。
【0112】
第2の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eは、
図21に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置されたRTDデバイス4とを備える。
【0113】
ここで、RTDデバイス4のRTD90と2次元フォトニック結晶導波路14の端面における電磁界分布のニアフィールドパターンの中心が近くなるように配置するとより結合効率が上昇する。
【0114】
第1の実施の形態および第2の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、RTDデバイスの設置方法による結合効率の周波数特性を比較したシミュレーション結果は、
図22に示すように表される。
図22において、曲線Uは、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uの上面設置型に対応し、曲線Eは、第2の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eの端面設置型に対応している。
【0115】
2次元フォトニック結晶スラブ12の2次元フォトニック結晶導波路14上に配置するだけでなく、端面に配置することでも電磁波の結合は可能である。
図22に示すように、フォトニック結晶の導波帯域ΔF(PC)において、端面結合の方では信号強度が5dB落ちる結果となっているが、目的によっては使用可能である。
【0116】
さらに、この時の計算はダイオードの周りを吸収境界条件として設定しているため、ダイオード素子内における多重反射やファブリペローモードが抑制されて強度の変動は2dB以内に抑えられている。
【0117】
[第3の実施の形態]
(埋め込み型)
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なRTDデバイス4Sの模式的鳥瞰構成は、
図23に示すように表される。
図23において、RTDデバイス4Sの幅はW
D、長さはL
D、厚さはInP基板100の厚さT1に略等しい。
【0118】
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なRTDデバイス4Sは、
図23に示すように、半導体基板100と、半導体基板100上に配置された第1の電極122および第2の電極124と、半導体基板100上に配置され、第1の電極122および第2の電極124に主電極が接続されたRTD90とを備える。すなわち、
図3に示されたテーパースロットアンテナ部分を切り落とした形状を備え、単にダイオードが電極122・124に配線されている。
【0119】
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なRTDデバイス4Sは、テーパースロットアンテナ型とは異なり、ダイポール型のアンテナを形成している。その他の構成は、
図3の構造と同様である。2次元フォトニック結晶導波路との結合方法は、突合せ型、埋め込み型などを採用可能である。
【0120】
図23に示されたRTDデバイス4Sの構造では、アンテナ動作する部分が無いので、理論的には大きな利得は生じない。このため、何か外部から電磁波を効率よくダイオード部分へ導入する工夫が必要である。例えば、ホーンアンテナに実装して利得を稼いでも良い。すなわち、第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能なRTDデバイス4Sにおいては、単に電極122・124を付けるだけではなく、スロットアンテナやパッチアンテナ、ダイポールアンテナなど電磁波が上下方向に出てくるアンテナを集積化しても良い。
【0121】
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、
図24および
図25に示すように、この利得を稼ぐ役割を2次元フォトニック結晶導波路14からの導入構造に持たせている。
【0122】
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスの模式的鳥瞰構成は、
図24に示すように表される。
【0123】
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Bは、
図24に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14に形成された溝部において、2次元フォトニック結晶導波路14の上面と表面が面一に配置されたダイオードデバイスとを備える。
【0124】
ここで、ダイオードデバイスは、
図23に示されたように、テーパースロットアンテナ構造を切り落としたRTDデバイス4Sで構成可能である。
【0125】
RTDデバイス4Sは、半導体基板100と、半導体基板100上に配置された第1の電極122および第2の電極124と、半導体基板100上に配置され、第1の電極122および第2の電極124に主電極が接続されたRTD90とを備える。
【0126】
また、ダイオードデバイスは、受信器としては、SBDでも構成可能である。
【0127】
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Bにおいて、2次元フォトニック結晶導波路14にコの字型の溝部を形成することによって、
図24に示すように、RTDデバイス4Sの配置精度を良好に確保することができる。すなわち、テラヘルツ波の伝播方向に垂直な横方向の位置調整を簡単にすることができる。
【0128】
さらに、2次元フォトニック結晶導波路14にコの字型の溝部を形成することによって、電磁波の閉じ込めを強めることで利得の向上を図ることができる。
【0129】
前述の通り、テーパースロットアンテナの無い素子は利得を稼げないので、上部に張り合わせた構造では効率よくエネルギーを導入できない。また、十分な結合長L
Cも確保できないため、直接的に電磁波をダイオードチップ内に導入する構造が必要である。第2の実施の形態と同様の端面配置構造のように、2次元フォトニック結晶導波路14の終端にRTDデバイス4Sを配置することで、効率よく電磁波を導入することができる。
【0130】
さらに、第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスのように、2次元フォトニック結晶導波路14の終端近傍において、ダイオードチップの幅W
Dに合わせて溝を掘ると、横方向のアライメント位置調整も簡単になる。その上、ダイオードチップの両サイドまでフォトニックバンドギャップ効果で伝搬モードが維持されるため、より効率的にダイオードにエネルギーが搬送される。
【0131】
また、テーパースロットアンテナでは、放射パターンが波の進行方向と一致していたが、基板面に対して垂直方向に電磁波が放射されるその他の形のアンテナ(パッチアンテナ、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ等)が集積されていても、上記の配置で十分対応可能である。チップを立てて配置すれば、電磁波の進行方向とアンテナの放射パターンが一致するので、効率的な結合が実現できる。すなわち、第3の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、テーパースロットでないアンテナを集積化した素子でも十分に対応可能となる。
【0132】
(変形例:突合せ型)
第3の実施の形態の変形例に係るテラヘルツ波デバイス140Cの模式的鳥瞰構成は、
図25に示すように表される。
【0133】
第3の実施の形態の変形例に係るテラヘルツ波デバイス140Cは、
図25に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14に形成された溝部において、2次元フォトニック結晶導波路14の2次元フォトニック結晶スラブ12表面に垂直方向の断面の中央部と表面が一致して配置されたダイオードデバイスとを備える。
【0134】
2次元フォトニック結晶導波路14を伝播するテラヘルツ波は、2次元フォトニック結晶導波路14の中央部において最も電界が強い。したがって、RTDデバイス4Sの電極122・124の高さを、2次元フォトニック結晶導波路14の2次元フォトニック結晶スラブ12表面に垂直方向の断面の中央部の高さと合わせると、
図24に示された埋め込み型に比べて、さらに結合効率が向上する。
【0135】
第3の実施の形態およびその変形例に係るテラヘルツ波デバイスの結合効率の周波数特性(シミュレーション結果)は、
図26に示すように表される。
図26において、曲線BUは埋め込み型構造(
図24)に対応し、曲線BCは突合せ型構造(
図25)に対応する。また、曲線TSは比較のためのテーパースロット型RTDを上面設置型で配置した構造例(
図2)に対応し、特性は、
図22の曲線Uに対応している。
【0136】
図26に示すように、第3の実施の形態およびその変形例に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、突合せ型構造(
図25)の場合の方が埋め込み型構造(
図24)の場合に比べて、導波モードの電界分布との結合が良くなった結果、約4dB結合効率が高くなる.
導波路中央が最も電界が強いので、電極の高さを合わせると、突合せ型の方が埋め込んだ場合に比べ、導波モードの電界分布との結合効率が良好となり、その結果、約4dB程度結合効率が高くなる。
【0137】
(基板内の多重反射の影響)
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいて、RTDデバイス4のInP基板100内の多重反射を説明する模式的平面構成は、
図27に示すように表される。
図27においては、RTDデバイス4が2次元フォトニック結晶スラブ12上に配置されている。2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aの線欠陥により形成される2次元フォトニック結晶導波路14上にRTDデバイス4のスロットアンテナ部分の導波若しくは受波方向が一致するように配置されている。この状態において、2次元フォトニック結晶導波路14上を伝播するテラヘルツ波(矢印PW1)を受信すると、RTDデバイス4のInP基板100内において、2次元フォトニック結晶導波路14の延伸する方向の多重反射波(矢印PWL)および2次元フォトニック結晶導波路14の延伸する方向に垂直な方向の多重反射波(矢印PWV)が発生する。
【0138】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいて、このようなRTDデバイス4のInP基板100内の多重反射による透過率T(dB)の周波数特性のばらつきに関するシミュレーション結果は、
図28に示すように表される。
図28において、曲線TTは、送信時の透過特性を表し、曲線TRは、受信時の透過特性を表す。ここで、シミュレーションに用いたRTDデバイス4のInP基板100の厚さT1は、約350μmである。
【0139】
第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uの周波数特性は、
図28に示すように、RTDデバイス4のInP基板100内の多重反射に起因する周波数特性によって、帯域が狭められている。また、
図28に示すように、透過率Tの強度変化として、25dB以上の強度変化もシミュレーション結果により得られている。また、RTDデバイス4のInP基板100内での多重反射が影響して、周波数依存性のばらつきも大きくなっている。このため、改善には、InP基板100内における多重反射の影響を緩和する構造が必要である。
【0140】
テーパースロットアンテナを有するRTDデバイス4の場合、波の伝搬方向とアンテナの放射パターンが同一方向に形成されることは利得向上にはつながるが、多重反射との方向も一致するため影響が出やすい。
【0141】
(第4の実施の形態:端面設置型)
RTDデバイス4のInP基板100内の多重反射による透過率の周波数特性のばらつきを改善する第4の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eの模式的鳥瞰構成は、
図29(a)に示すように表され、
図29(a)のRTDデバイス4と2次元フォトニック結晶スラブ12との結合部分Aの拡大図は、
図29(b)に示すように表される。
【0142】
第4の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eにおいては、2次元フォトニック結晶導波路14中で、導波されるテラヘルツ波の最も強度の高い中央部分とテーパースロットアンテナの高さを合わせて端面入射させる構成を備える。ここで、適用したフォトニック結晶スラブ12の厚さは約200μmであり、RTDデバイス4のInP基板100の厚さは、約100μmである。
【0143】
第4の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eにおいては、テーパースロットアンテナ集積型のRTDデバイス4を2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置し、かつ2次元フォトニック結晶導波路14中の電磁界分布が強くなる中央部分CPとテーパースロットアンテナの高さを破線で示すように合わせている。このような配置を採用することで、第4の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eの端面設置型において、周波数変動が抑制可能である。
【0144】
第4の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eにおいて、透過率T(dB)の周波数特性に関するシミュレーション結果は
図30に示すように表される。
図30において、曲線Eは、第4の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140E(
図29(a))に示される端面設置型構造に対応し、曲線Uは、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140U(
図2)に示される上面設置型構造に対応する。
【0145】
第4の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Eの端面設置型においては、
図30に示すように、多重反射の影響が5〜7GHz間隔での3〜5dBの変動に抑えられていることが、透過率T(dB)の周波数特性に関するシミュレーション結果より得られている。
【0146】
(第5の実施の形態:テラヘルツ波吸収体の設置)
RTDデバイス4のInP基板100内の多重反射による透過率の周波数特性のばらつきを改善する第5の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uの模式的鳥瞰構成は、
図31に示すように表される。
【0147】
第5の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uは、
図31に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12上のRTDデバイス4の周囲に配置されたテラヘルツ波吸収体150を備える。
【0148】
ここで、テラヘルツ波吸収体150は、キャリアドープされた半導体層、ポリマーフォトニック結晶層、金属微細構造を有するメタマテリアル層などで形成可能である。
【0149】
第5の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいては、
図31に示すように、テラヘルツ波吸収体150をRTDデバイス4の周囲に配置することで、RTDデバイス4を構成するInP基板100とテラヘルツ波吸収体150との比誘電率の差が、InP基板100と空気との比誘電率差に比べて軽減される。このため、RTDデバイス4のInP基板100端での反射を軽減可能である。
【0150】
第5の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいては、2次元フォトニック結晶導波路14を伝播してきたテラヘルツ波は、
図31中の矢印で示すように、テラヘルツ波吸収体150によって吸収可能である。
【0151】
テラヘルツ波吸収体150としてシリコン基板を適用する場合には、キャリアドープすることでシリコン基板における吸収損失を増大可能であるため、シリコン基板内での多重反射を軽減することも可能である。ここで、テラヘルツ波吸収体150を構成するシリコン基板の抵抗率は、例えば、約100Ωcmであり、厚さは、例えば、約200μmである。また、RTDデバイス4を構成するInP基板100の厚さも例えば、約200μmである。
【0152】
第5の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいて、透過率T(dB)の周波数特性のシミュレーション結果は、
図32に示すように表される。
図32において、曲線WAは、テラヘルツ波吸収体150を備える場合に対応し、曲線WOAは、テラヘルツ波吸収体150を備えない場合に対応する。
【0153】
第5の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいては、RTDデバイス4の周りにテラヘルツ波吸収体150を配置することによって、多重反射の影響を低減化可能である。
【0154】
第5の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Uにおいては、
図32に示すように、340GHz以上の周波数fにおいて、局所的な透過率T(dB)の変動が1dB以下に抑制され、3dB帯域も20GHz以上確保可能である。
【0155】
(第6の実施の形態:テラヘルツ波デバイス埋め込み構造)
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tの模式的平面パターン構成は、
図33に示すように表される。
【0156】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tは、
図33に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14の上に配置された金属パターンとしてテーパースロットアンテナ(122・124)と、テーパースロットアンテナ(122・124)上に配置されたRTD90とを備える。
【0157】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tにおいては、
図33に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14上に、テーパースロットアンテナ(122・124)パターンを形成し、このテーパースロットアンテナ(122・124)パターン上にRTD90をダイボンディングによって形成している。
【0158】
テーパースロットアンテナ(122・124)のテーパー長L
Tは、
図33に示すように、RTD90の配置される位置からテーパースロットアンテナ(122・124)の先端位置までの長さで表される。テーパー長L
Tは、フォトニック結晶の格子定数aのN倍、すなわち、L
T=Naで表される。ここで、Nは自然数である。
【0159】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tにおいては、第1の実施の形態(
図2)の構造とは異なり、2次元フォトニック結晶導波路14上にテーパースロットアンテナ(122・124)を形成する。
【0160】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tは、RTDチップをハイブリッド集積するのではなく、2次元フォトニック結晶導波路14の表面に金属アンテナパターンを形成し、伝送路中にテラヘルツ波能動素子(RTD等,ダイオードなど)を埋め込むことでモノリシックに形成している。ここで、テラヘルツ波能動素子としては、RTD等が適用される。RTD90は、テーパースロットアンテナ(122・124)を構成する第1の電極122・第2の電極124間に集積化可能である。また、テラヘルツ波の検出素子としては、RTD若しくはSBDなどを適用可能である。なお、ハイブリッドで形成する場合、例えば、2次元フォトニック結晶導波路14部分をくりぬいて、金属アンテナパターンおよびテラヘルツ波能動素子(RTD等,ダイオードなど)を埋め込み形成しても良い。
【0161】
アンテナ構造としては、
図33には、テーパースロットアンテナの例が示されているが、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナ、リングスロットアンテナ、ボータイアンテナなどを適用しても良い。
【0162】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tにおいて、
図33中の矢印に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14に対してテラヘルツ波を導入し、テラヘルツ波デバイスの結合効率の周波数特性を計算したシミュレーション結果は、
図34に示すように表される。ここで、テーパー長L
T=6.5aとしている。
【0163】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tにおいては、2次元フォトニック結晶導波路14上にテーパースロットアンテナ(122・124)を形成するため、半導体基板(InP基板)100の影響がなくなる。このため、高い結合効率が得られる。フォトニック結晶伝送路の伝搬帯域ΔF(PC)における平均結合効率は、−約7.8dBである。
図20に示された第1の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスのRTDデバイスの基板厚さ20μmの場合の結合効率の周波数特性と比較して、結合効率は約2.2dB改善されている。
【0164】
また、第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tにおいては、結合効率の3dB帯域も40GHzであり、広帯域特性のシミュレーション結果が得られている。
【0165】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、平均結合効率のテーパー長L
T依存性(シミュレーション結果)は、
図35に示すように表される。
図35に示すように、平均結合効率には、テーパー長L
Tの最適値が存在する。ただし,L
T=4.5aから7.5aの範囲ではいずれもハイブリッド集積よりも効率が高い。
【0166】
第6の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140Tにおいては、RTD90とテラヘルツ波帯の2次元フォトニック結晶導波路14の融合構成として、高効率で広帯域化された構造を提供可能である。第1の実施の形態の構成に比べて、フォトニック結晶表面に金属アンテナを形成することで、2次元フォトニック結晶導波路14中の電磁波を効率よくカップリングさせることができる。
【0167】
第6の実施の形態によれば、ただ単にハイブリッド集積化するのではなく、モノリシックに集積化したアンテナパターンを用いることで、高効率化および広帯域化を実現可能である。
【0168】
第6の実施の形態によれば、誘電体導波路との結合効率が向上し、また広帯域化可能なテラヘルツ波デバイス、およびテラヘルツ波デバイスを搭載可能なテラヘルツ波集積回路を提供することができる。
【0169】
(第7の実施の形態:金属線路のフォトニック結晶表面への装荷)
第7の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STの模式的平面パターン構成は、
図36に示すように表される。
【0170】
第7の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STは、
図36に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14の上に配置された金属パターンとして金属スロット線路152・154とを備える。
【0171】
第7の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいては、
図36中の矢印に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14に対して導入されフォトニック結晶中を伝播するテラヘルツ波を表面の金属スロット線路152・154へ取り出すことができる。
【0172】
(変形例)
第7の実施の形態の変形例に係るテラヘルツ波デバイス140Sは、
図37に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14の上に配置された金属パターンとして金属スロット線路152・154の代わりに金属ストリップ線路156を備える。その他の構成は、第7の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STと同様である。
【0173】
第7の実施の形態の変形例に係るテラヘルツ波デバイス140Sにおいても、
図37中の矢印に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14に対して導入されフォトニック結晶中を伝播するテラヘルツ波を表面の金属ストリップ線路156へ取り出すことができる。
【0174】
第7の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、2次元フォトニック結晶導波路14の延伸する方向に沿う模式的断面構造例1は、
図38(a)に示すように表され、2次元フォトニック結晶導波路14の延伸する方向に沿う模式的断面構造例2は、
図38(b)に示すように表される。
【0175】
第7の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STは、
図38(a)若しくは
図38(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の裏面側に裏面電極層88を備えていても良い。裏面電極層88を配置することによって、2次元フォトニック結晶導波路14上に配置される金属スロット線路152・154や金属ストリップ線路156を伝搬するテラヘルツ波の電磁界分布を安定化させ、また特性インピーダンスの変動を抑制し、安定化する効果が得られる。
【0176】
裏面電極層88は、
図38(a)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の裏面側にギャップ86を介して配置されていても良い。また、裏面電極層88は、
図38(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の裏面に直接配置されていても良い。また、裏面電極層88は、2次元フォトニック結晶スラブ12の裏面全体に配置されていても良い。また、裏面電極層88は、2次元フォトニック結晶スラブ12の裏面側であって、表面の2次元フォトニック結晶導波路14に対応する領域幅に配置されていても良い。このような裏面電極層88は、第7の実施の形態の変形例に係るテラヘルツ波デバイス140Sにおいても同様に配置可能である。
【0177】
また、第7の実施の形態によれば、電極パターンのみでなく、機能的な回路を集積化することも可能である。また、第7の実施の形態に係る導波路技術は、テラヘルツ波の応用の際、スマートなシステムの構築やテラヘルツ波集積回路などの基盤技術として、適用可能である。
【0178】
また、第7の実施の形態によれば、RTD内部の電磁界エネルギーを高効率に2次元フォトニック結晶導波路14内へ結合させ、逆に2次元フォトニック結晶導波路14内部の電磁界エネルギーを高効率にRTD90内へ結合させることができる。
【0179】
また、第7の実施の形態によれば、効率の改善以上に、金属線の電極パターンを導波路上に形成するという構造自体が、様々な応用面へ適用可能である。
【0180】
また、第7の実施の形態によれば、実装プロセスの簡略化や信頼性の向上にも有効であり、信号線として利用すれば、機能的な回路として集積化への応用も可能である。
【0181】
第7の実施の形態およびその変形例によれば、誘電体導波路との結合効率が向上し、また広帯域化可能なテラヘルツ波デバイス、およびテラヘルツ波デバイスを搭載可能なテラヘルツ波集積回路を提供することができる。
【0182】
(第8の実施の形態:センシング,スイッチ等への応用)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STの模式的平面パターン構成は、
図39(a)に示すように表され、
図39(a)において、2次元フォトニック結晶導波路14の延伸するx方向に沿う模式的断面構造は、
図39(b)に示すように表される。
【0183】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STは、
図39(a)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12と、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折させる格子点12Aと、2次元フォトニック結晶スラブ12内に配置され、格子点12Aの線欠陥により形成された2次元フォトニック結晶導波路14と、2次元フォトニック結晶導波路14上に配置された金属パターンとして、所定の長さを有する金属スロット線路152・154とを備える。
【0184】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、デバイス表面へのテラヘルツ波の取出し動作は、
図39(b)内の矢印で示すように表される。すなわち、2次元フォトニック結晶導波路14のフォトニック結晶中を伝播するテラヘルツ波は、金属スロット線路152・154の金属中に電界が引き寄せられる。このため、金属スロット線路152・154の表面および金属スロット線路152・154間の2次元フォトニック結晶導波路14の表面へテラヘルツ波が取り出される。
【0185】
図39(b)において、破線で示される長方形は、テラヘルツ波の波束を模式的に表わす。破線で示される1個の長方形が連続する正方向および負方向の波束を模式的に表わす。フォトニック結晶中をx方向に伝播して来たテラヘルツ波の波束は、金属スロット線路152・154の金属中に電界が引き寄せられるため、金属スロット線路152・154の表面および金属スロット線路152・154間の2次元フォトニック結晶導波路14の表面へ取り出されて伝播する。
図39(a)において、破線で示される長円形は、金属スロット線路152・154間の2次元フォトニック結晶導波路14の表面を伝播するテラヘルツ波の波束を模式的に表わす。
【0186】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいては、金属スロット線路152・154のx方向の長さを適切な所定の長さに設計することで、
図39(b)内の矢印で示すように、フォトニック結晶へテラヘルツ波を戻すことができる。例えば、金属スロット線路152・154のx方向の長さを結合長L
Cの偶数倍の長さに設計することで、フォトニック結晶へテラヘルツ波を戻すことができる。
【0187】
(表面へのテラヘルツ波の取り出しの応用:相互作用)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、デバイス表面へのテラヘルツ波の取出し応用(相互作用)の説明であって、ダイオード、自由キャリア、センシング検体等の検出部158を金属スロット線路152・154間に配置した模式的平面パターン構成は、
図40(a)に示すように表され、
図40(a)において、2次元フォトニック結晶導波路14の延伸するx方向に沿う模式的断面構造は、
図40(b)に示すように表される。
【0188】
検出部158として、RTD若しくはSBDなどのダイオードを2次元フォトニック結晶導波路14の表面のテラヘルツ波の伝播部分に埋め込めれば、高い結合効率が実現できる。検出部158として、RTD若しくはSBDなどのダイオードチップを2次元フォトニック結晶導波路14の表面にハイブリッド集積化する場合も同様である。
【0189】
検出部158は、金属スロット線路152・154上に配置しても良い。ただし、テラヘルツ波との相互作用を効率的に行うためには、金属スロット線路152・154間に配置することが望ましい。
【0190】
また、金属スロット線路152・154間に印加する電界もしくは金属スロット線路152・154間への光照射や電子ビーム照射によって、金属スロット線路152・154間のフォトニック結晶中に自由キャリアを発生させることによって、検出部158を形成しても良い。また、このような自由キャリアの発生により形成した検出部158を複数個発生させると、検出部158は、テラヘルツ波の金属反射鏡のように振る舞うことが可能となるため、複数の検出部158間にテラヘルツ波を閉じ込めることも可能である。
【0191】
検出部158として、自由キャリアを2箇所発生させて、2箇所の自由キャリア間にテラヘルツ波を閉じ込めたりすることで、自由キャリアの反射鏡効果で共振器やフィルタも形成可能である。
【0192】
また、検出部158として、センシング検体等を金属スロット線路152・154間に配置しても良い。センシング検体の例としては、タンパク質や薬品など、また抗原抗体反応のための抗原若しくは抗体なども適用可能である。
【0193】
したがって、第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいては、テラヘルツ波を吸収・反射させ、テラヘルツ波共振器やテラヘルツ波フィルタを構成することもでき、さらに、テラヘルツ波スイッチ・テラヘルツ波変調機能を発現させることも可能である。
【0194】
また、電界の強い部分にセンシング検体となる検出部158を配置することによって、高感度のテラヘルツ波センシングも可能である。
【0195】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいては、誘電体導波路との結合効率が向上し、また広帯域化可能なテラヘルツ波デバイス、およびテラヘルツ波デバイスを搭載可能なテラヘルツ波集積回路を提供することができる。さらに、ダイオード、自由キャリア、センシング検体等の検出部158を金属スロット線路152・154間に配置することによって、テラヘルツ波を吸収・反射させ、スイッチ・変調、高感度のテラヘルツ波センシング機能を発現することができる。
【0196】
(表面電界強度:シミュレーション結果)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、表面電界強度のシミュレーション結果は、
図41に示すように表される。
図41の表面電界強度のシミュレーション結果は、2次元フォトニック結晶導波路14の表面にギャップ間隔MGAP=10μmの金属スロット線路152・154を形成した場合に相当している。このシミュレーションでは、金属スロット線路152・154の伝搬方向の長さは半無限に設定している。
図41に示すように、金属スロット線路152・154の微小ギャップ中の電界強度が強くなっている。
【0197】
(断面電界強度:シミュレーション結果)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、断面電界強度のシミュレーション結果は、
図42に示すように表される。2次元フォトニック結晶導波路14中をテラヘルツ波が伝搬してきて、金属スロット線路152・154の金属線路装荷領域MGRに入ると、
図42に示すように、結合長L
Cで方向性結合現象が起きる。すなわち、
図42に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14の表面の電界が強い位置は、破線の長円形EA1・EA2・EA3で示すように表される。逆に、2次元フォトニック結晶導波路14の表面の電界が弱い位置では、2次元フォトニック結晶導波路14の伝送路内部の電界が強い。
【0198】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、金属スロット線路152・154を2次元フォトニック結晶導波路14の表面に装荷すると、テラヘルツ波が伝搬するにつれて、
図42に示すように、金属スロット線路152・154間の2次元フォトニック結晶導波路14の表面の電界が強い位置と電界が弱い位置が繰り返されて、結合長L
Cで方向性結合現象が起きている。
【0199】
(伝搬方向の表面電界強度プロファイル)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、伝搬方向の表面電界強度プロファイルは、
図43に示すように表される。横軸は、2次元フォトニック結晶導波路14上に配置される金属スロット線路152・154の金属線路装荷領域MGRの端面を伝搬方向xのゼロ点とし、金属線路装荷領域MGRが延伸する方向を正方向の距離x(μm)で表したものである。
【0200】
図43に示すように、「表面」に電界強度が強い部分S1・S2・S3・S4…が存在する。この表面電界強度が強い部分S1・S2・S3・S4…の位置は、座標xが結合長L
Cの奇数倍の距離に相当している。
【0201】
また、
図43に示すように、「内部」に電界強度が強い部分B1・B2・B3・B4…が存在する。こ内部電界強度が強い部分B1・B2・B3・B4…の位置は、座標xが結合長L
Cの偶数倍の距離に相当している。
【0202】
例えば、この表面電界強度が強い部分S1・S2・S3・S4…の位置において、ダイオード、自由キャリア、センシング検体等の検出部158を配置することによって、前述の各種の相互作用を効率的に引き起こすことが可能である。
【0203】
また、例えば、内部電界強度が強い部分B1・B2・B3・B4…の位置において金属スロット線路152・154を終端することで、テラヘルツ波を再び、2次元フォトニック結晶導波路14へ効率的に戻すことができる。
【0204】
(結合長L
Cの2倍の長さの金属スロット線路)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、結合長L
Cの2倍の長さの金属スロット線路152・154の金属線路装荷領域MGRを有する2次元フォトニック結晶導波路14の表面電界強度プロファイルは、
図44(a)に示すように表され、
図44(a)において、伝搬方向の断面電界強度プロファイルは、
図44(b)に示すように表される。金属スロット線路152・154間には、ギャップ間隔MGAPが形成されている。また、
図44(b)において、金属スロット線路152・154の金属線路装荷領域MGRで示される部分が、2次元フォトニック結晶導波路14上に金属スロット線路152・154が配置される部分に対応している。
【0205】
図44(a)および
図44(b)に示すように、金属スロット線路152・154の伝搬方向に沿う長さを結合長L
Cの2倍とすることで、金属スロット線路152・154の伝搬方向に沿うほぼ中央部分の表面電界強度が強くなる。また、テラヘルツ波が方向性結合現象に基づき、金属スロット線路152・154の伝搬方向に沿うほぼ端面近傍において、再び2次元フォトニック結晶導波路14中を伝搬する。
【0206】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、2次元フォトニック結晶導波路14の表面の金属スロット線路152・154間にダイオードを埋め込んだ場合の結合効率の周波数特性のシミュレーション結果は、
図45に示すように表される。ここで、ダイオードとしては、RTD若しくはSBDなどを適用可能である。
【0207】
図45に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14の表面の金属スロット線路152・154間に電界が引き寄せられた結果、フォトニック結晶伝送路の伝搬帯域ΔF(PC)における結合効率は、約−5.5dB(28%)という高い値が得られている。この値は、第6の実施の形態における約−7.8dBに比べ、約30%向上している。
【0208】
(結合効率とギャップ間隔MGAPとの関係:シミュレーション)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、2次元フォトニック結晶導波路14から金属スロット線路152・154への結合効率とギャップ間隔MGAPとの関係のシミュレーション結果は、
図46(a)に示すように表される。また、2次元フォトニック結晶導波路14と金属スロット線路152・154との結合部分近傍の模式的平面パターン構成は、
図46(b)に示すように表される。
【0209】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、
図46(a)に示すように、ギャップ間隔MGAPは狭いほど、2次元フォトニック結晶導波路14表面近傍の電界強度は強くなり、結合効率は増加する。
【0210】
一方で,空間的な大きさの関係でギャップ間隔MGAPが小さすぎると、
図46(a)に示すように、結合効率が低下する。ギャップ間隔MGAPとしては、100nmからフォトニック結晶の格子定数a程度が望ましいが、
図46(a)に示すように、5μmから20μmがより望ましい。
【0211】
(ダイオードチップとの結合の例)
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいて、金属スロット線路152・154上にダイオードチップをフリップチップに結合した状態の模式的平面パターン構成は、
図47(a)に示すように表され、
図47(a)において、2次元フォトニック結晶導波路の延伸する方向に沿う模式的断面構造は、
図47(b)に示すように表され、
図47(b)において、FC部分の拡大図は、
図47(c)に示すように表される。
【0212】
図47(a)・
図47(b)・
図47(c)に示すように、2次元フォトニック結晶導波路14上にギャップ間隔MGAPを有する金属スロット線路152・154を形成し、さらに、金属スロット線路152・154上に接着層160を介してRTD90をフリップチップにダイボンディングする。接着層160の厚さが薄いほど、結合効率は高い。接着層160としては、例えば、厚さ約5μmのPET(ポリエチレンテレフタラート:polyethylene terephthalate)テープなどを適用しても良い。ダイオードチップとしては、RTD若しくはSBDなどを適用可能である。
【0213】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイス140STにおいては、効率的に電磁波が結合できるようになり、従来と比較して約2.2dBの効率改善と約40GHzにわたる広帯域な結合特性が得られる。
【0214】
また、効率の改善以上に、金属スロット線路152・154の線路パターンを2次元フォトニック結晶導波路上に形成する構成により、様々な応用面の広がりを有する。
【0215】
第8の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、実装プロセスの簡略化や信頼性の向上にも有効であり、金属スロット線路を信号線として利用すれば、機能的な回路として集積化への適用も可能である。
【0216】
第8の実施の形態によれば、誘電体導波路との結合効率が向上し、また広帯域化可能なテラヘルツ波デバイス、およびテラヘルツ波デバイスを搭載可能なテラヘルツ波集積回路を提供することができる。
【0217】
(第9の実施の形態:導波管との接続構造)
第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、広い帯域を有する導波管26との接続構造の模式的平面パターン構成は、
図48(a)に示すように表され、
図48(a)において、接続部分における電磁界シミュレーション結果は、
図48(b)に示すように表される。
【0218】
一方、比較例に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、広い帯域を有する導波管26との接続構造の模式的平面パターン構成は、
図49(a)に示すように表され、
図49(a)において、接続部分における電磁界シミュレーション結果は、
図49(b)に示すように表される。
【0219】
第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、
図48(a)および
図48(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12上に形成された2次元フォトニック結晶導波路14を延伸した2次元フォトニック結晶スラブ12の端面には、WR−3導波管26などとの結合性を向上させるために、2次元フォトニック結晶導波路14が延伸した断熱的モード変換機構部10を備える。
【0220】
断熱的モード変換機構部10は、2次元フォトニック結晶スラブ12の平面視において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔するにしたがって、先端部が細くなるテーパー形状を備えている。
【0221】
断熱的モード変換機構部10は、導波管26内に挿入可能である。ここで、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジ40は、端面に接していても良い。また、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジ40は、端面から離隔していても良い。
【0222】
さらに、断熱的モード変換機構部10が配置される2次元フォトニック結晶スラブ12の端面は、断熱的モード変換機構部10の周辺部において、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジ40との間にギャップ領域SCG(
図48(a))を備え、導波管フランジ40から離隔していても良い。ギャップSCG(
図48(a))が有る場合は、導波管フランジ40は、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面から離隔して配置されているため、テラヘルツ入力波の表面モードを抑制することができる。
【0223】
第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、
図48(a)および
図48(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジ40との間のギャップ領域SCGは、格子定数aの1〜1.5倍程度の相対的に微小な領域である。
【0224】
一方、比較例に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、
図49(a)および
図49(b)に示すように、2次元フォトニック結晶スラブ12の端面に配置される導波管フランジ40との間のギャップ領域は、格子定数aの2a×5a程度の相対的に大きな領域である。
図49(a)において、ギャップW
Gは2a程度である。
【0225】
第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、
図48(b)および
図49(b)に示すように、接続部分での電磁界の広がりが低減している。
【0226】
第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいて、3dB帯域幅の周波数特性のシミュレーション結果は、
図50に示すように表される。シミュレーションにおいて、2次元フォトニック結晶導波路14の長さは、2cmとしている。
図50において、実線NDは、
図48(a)に示された第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに対応し、破線FDは、
図48(b)に示された比較例に係るテラヘルツ波デバイスに対応している。
【0227】
第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、
図50に示すように、3dB帯域幅が2倍に改善している。この結果、第9の実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスにおいては、高速通信が可能になる。
【0228】
(格子点の周期構造とバンド構造)
上述ように、実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスは、テラヘルツ波の導波に適した低損失な誘電体導波路(フォトニック結晶を用いた線欠陥導波路)と高効率に結合可能である。
【0229】
実施の形態に係るテラヘルツ波デバイスに適用可能な2次元フォトニック結晶スラブ12の格子点12Aの周期構造であって、正方格子・三角格子・長方格子・菱型格子(面心長方格子)の配置例は、
図51(a)・
図52(a)・
図53(a)・
図54(a)に示すように模式的に表され、対応する2次元フォトニック結晶スラブ12のバンド構造は、
図51(b)・
図52(b)・
図53(b)・
図54(b)に示すように表される。
【0230】
格子点12Aは、正方格子、長方格子、面心長方格子、若しくは三角格子のいずれかに配置されていても良い。
【0231】
また、格子点12Aは、正方格子若しくは長方格子に配置され、かつフォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造におけるΓ点、X点、若しくはM点における電磁波を2次元フォトニック結晶スラブ12面内で回折可能である。
【0232】
また、格子点12Aは、面心長方格子若しくは三角格子に配置され、かつフォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造におけるΓ点、X点、若しくはJ点における電磁波をフォトニック結晶スラブ面内で回折可能である。
【0233】
すなわち、格子点12Aは、2次元フォトニック結晶スラブ12内に周期的に配置され、2次元フォトニック結晶スラブ12のフォトニックバンド構造のフォトニックバンドギャップ帯におけるテラヘルツ波を、2次元フォトニック結晶スラブ12の面内での存在を禁止するために回折可能である。
【0234】
また、格子点12Aは、多角形、円形、楕円形若しくは長円形のいずれかの孔形状を備えていても良い。
【0235】
以上説明したように、本発明によれば、誘電体導波路との結合効率が向上しかつ広帯域化可能なテラヘルツ波デバイス、およびテラヘルツ波デバイスを搭載可能なテラヘルツ波集積回路を提供することができる。
【0236】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0237】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。