【解決手段】非結晶硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む非結晶複合体を、100℃〜200℃の加熱温度で加熱することにより、結晶化硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む結晶化複合体を得る、結晶化複合体の製造方法。
非結晶硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む非結晶複合体を、100℃〜200℃の加熱温度で加熱することにより、結晶化硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む結晶化複合体を得る、結晶化複合体の製造方法。
前記非結晶複合体における酸化ケイ素の含有量が、前記非結晶硫化物系固体電解質に対して2〜40mol%である請求項1〜7のいずれか記載の結晶化複合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法では、非結晶硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む非結晶複合体を、100℃〜200℃の加熱温度で加熱することにより、結晶化硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む結晶化複合体を得る。
【0010】
具体的には、本発明の製造方法は、非結晶硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを接触させて、非結晶硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む非結晶複合体を得る工程、及び前記非結晶複合体を100℃〜200℃の加熱温度で加熱して、結晶化硫化物系固体電解質と酸化ケイ素とを含む結晶化複合体を得る工程、を含む。
複合体は、実質的に固体電解質と酸化ケイ素とのみからなるとしてよい。
【0011】
本発明で用いる非結晶硫化物系固体電解質としては、Li、P及びSを含む硫化物系固体電解質が好ましい。Li、P及びSを含む硫化物系固体電解質としては、少なくともLi
2Sを原料とする硫化物系固体電解質がさらに好ましい。Li
2Sを原料とする硫化物系固体電解質としては、Li
2Sとその他硫化物を原料とする硫化物系固体電解質がより好ましい。Li
2Sとその他硫化物を原料とする硫化物系固体電解質としては、Li
2Sとその他硫化物のモル比が、50:50〜95:5であるものが特に好ましい。
【0012】
また、Li
2Sとその他硫化物を原料とする硫化物系固体電解質としては、少なくともLi
2SとP
2S
5を原料とする硫化物系固体電解質が好ましい。
少なくともLi
2SとP
2S
5を原料とする硫化物系固体電解質としては、原料として用いるLi
2SとP
2S
5のモル比がLi
2S:P
2S
5=60:40〜82:18となる硫化物系固体電解質が好ましく、より好ましくは、Li
2SとP
2S
5のモル比がLi
2S:P
2S
5=65:35〜82:18である硫化物系固体電解質であり、例えば、Li
2S:P
2S
5=68:32〜82:18、Li
2S:P
2S
5=72:38〜78:22である。
【0013】
また、少なくともLi
2SとP
2S
5を原料とする硫化物系固体電解質としては、Li
2SとP
2S
5を原料とする硫化物系固体電解質が好ましい。
Li
2SとP
2S
5を原料とする硫化物系固体電解質としては、原料として用いるLi
2SとP
2S
5のモル比がLi
2S:P
2S
5=60:40〜82:18となる硫化物系固体電解質が好ましく、より好ましくは、Li
2SとP
2S
5のモル比がLi
2S:P
2S
5=65:35〜82:18である。即ち、硫化物系固体電解質に含まれるLi、P及びSを、Li
2SとP
2S
5の比に換算した場合に、モル比がLi
2S:P
2S
5=60:40〜82:18となる硫化物系固体電解質が好ましく、より好ましくは、Li
2SとP
2S
5のモル比がLi
2S:P
2S
5=65:35〜82:18である硫化物系固体電解質であり、例えば、Li
2S:P
2S
5=68:32〜82:18、Li
2S:P
2S
5=72:38〜78:22である。
【0014】
固体電解質には、Li
2SとP
2S
5の他、さらにハロゲン化物を添加してもよい。ハロゲン化物としてはLiI、LiBr、LiCl等が挙げられる。ハロゲン化物を添加した固体電解質として、具体的には、Li、P、S及びIを含む硫化物系固体電解質、Li、P、S及びBrを含む硫化物系固体電解質、Li、P、S及びClを含む硫化物系固体電解質が挙げられる。
【0015】
Li
2S及びP
2S
5のモル量の合計に対するハロゲン化物のモル量の比は、好ましくは[Li
2S+P
2S
5]:ハロゲン化物=50:50〜99:1であり、より好ましくは[Li
2S+P
2S
5]:ハロゲン化物=60:40〜98:2であり、さらに好ましくは[Li
2S+P
2S
5]:ハロゲン化物=70:30〜98:2であり、特に好ましくは[Li
2S+P
2S
5]:ハロゲン化物=72:28〜98:2であり、例えば[Li
2S+P
2S
5]:ハロゲン化物=72:28〜90:10、[Li
2S+P
2S
5]:ハロゲン化物=75:25〜88:12である。
【0016】
固体電解質としては、具体的にはLi
2S−P
2S
5,LiI−Li
2S−P
2S
5,LiBr−Li
2S−P
2S
5,LiCl−Li
2S−P
2S
5,Li
3PO
4−Li
2S−Si
2S等の硫化物系固体電解質が挙げられる。
【0017】
固体電解質は、MM(メカニカルミリング)法、溶融法、炭化水素系溶媒中で原料を接触させる方法(WO2009/047977)、炭化水素系溶媒中で原料を接触させる手段と粉砕合成手段とを交互に行う方法(特開2010−140893)、溶媒中で原料を接触させる工程の後に粉砕合成工程を行う方法(PCT/JP2012/005992)、その他の製造方法で得られたガラス状態のものを使用できる。
【0018】
本発明で用いる酸化ケイ素は二酸化ケイ素が好ましい。
酸化ケイ素の形状は、通常、粉末状であり、平均粒径は、0.01μm〜10μmが好ましく、特に0.01μm〜5μmが好ましい。酸化物の粒径が上記の範囲内であることにより、良好に分散できる。ここで平均粒径は、以下により求めた平均粒径の値を意味する。
はじめに、BET法を用いて、比表面積(質量と表面積の比)を測定する。次に、対象物質の真比重を用いて、体積と表面積の比を算出する。最後に、粒子が球であると仮定し、この球の直径を算出する。この球の直径を、平均粒径と定義する。
【0019】
非結晶複合体と結晶化複合体における酸化ケイ素の量、又は非結晶硫化物系固体電解質と接触させる酸化ケイ素の量は、好ましくは、硫化物系固体電解質に対して2〜40mol%、より好ましくは3〜30mol%、さらに好ましくは5〜25mol%である。酸化物の含有量が上記の範囲内であることにより、高イオン伝導性を保持できる。
【0020】
上記の非結晶硫化物系固体電解質と酸化ケイ素を接触させて非結晶複合体を得る。非結晶複合体における「非結晶」は固体電解質についてであり、酸化ケイ素は非晶質でも結晶でもよい。
【0021】
接触による複合化方法としては、固体電解質と酸化ケイ素を遊星型ボールミルで混合し複合化する方法等が挙げられる。
【0022】
非結晶複合体は酸化ケイ素の全てが複合化する必要はなく、少なくとも一部が複合化する。「複合化」とは、固体電解質と酸化ケイ素の表層がわずかに物理的又は化学的に結合しているが、両者が化学的に反応し第3の相の形成には至らない状態を意味する。このことは、電子顕微鏡での観察、及びラマン分光におけるピーク位置により確認できる。
【0023】
非結晶複合体を加熱して結晶化複合体を得る。尚、結晶化複合体における「結晶」は固体電解質についてであり、酸化ケイ素は非晶質でも結晶でもよい。結晶化複合体に含まれる結晶硫化物系固体電解質は、上記非結晶硫化物系固体電解質が結晶化したものである。
【0024】
結晶化固体電解質の結晶としては、チオリシコン(Li
3.2P
0.96S
4(thio−LISICON region III analog))結晶、Li
3PS
4結晶、Li
7P
3S
11結晶が挙げられる。1つの結晶構造のみからなっていてもよく、複数の結晶構造を有していてもよい。結晶構造はX線回折により確認できる。
結晶構造としては、より高いイオン伝導度が要求される場合にはLi
7P
3S
11 が好ましく、より高い化学安定性が要求される場合にはチオリシコン(Li
3.2P
0.96S
4((thio−LISICON region III analog))結晶、Li
3PS
4結晶が好ましい。
【0025】
本発明では、酸化ケイ素と複合化することにより、固体電解質の結晶化温度が低下する。従って、低温での結晶化が可能となり、製造効率が高まる。加熱温度は、100℃〜200℃であり、100〜190℃が好ましく、110〜180がより好ましい。加熱温度の上限は、非結晶硫化物系固体電解質の結晶化温度よりも5℃〜90℃低いことが好ましく、10℃〜80℃低いことがさらに好ましい。
【0026】
また、加熱は、露点−40℃以下の環境下で行うことが好ましく、より好ましくは露点−60℃以下の環境下で行うことが好ましい。
加熱時の圧力は、常圧であってもよく、減圧下であってもよい。雰囲気は、空気であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。さらに特開2010−186744に記載されているように溶媒中で加熱してもよい。
【0027】
ここで溶媒は、炭化水素系溶媒を含むことが好ましい。炭化水素系溶媒は、炭素原子と水素原子からなる溶媒であり、当該炭化水素系溶媒として、例えば飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0028】
飽和炭化水素溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、IPソルベント1016((株)出光興産製)、IPソルベント1620((株)出光興産製)等が挙げられる。飽和炭化水素溶媒は、上述の溶媒からなる群から選択される1以上を使用できる。
【0029】
不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
【0030】
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、また、イプゾール100((株)出光興産製)、イプゾール150((株)出光興産製)等が挙げられる。
炭化水素系溶媒は、1種単独でも、2種以上を使用してもよい。
炭化水素系溶媒は、好ましくは芳香族炭化水素系溶媒であり、さらに好ましくは下記式(1)で表わされる芳香族炭化水素系溶媒である。
Ph−(R)
n (1)
(式中、Phは、芳香族炭化水素基であり、Rはアルキル基である。nは1〜5から選択される整数である(好ましくは1又は2の整数)。)
【0031】
式(1)において、Phの芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフタセニル基が挙げられる。
式(1)において、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
式(1)で表わされる芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼンが挙げられ、好ましくはトルエンである。
【0032】
炭化水素系溶媒中の水分量は、50ppm(重量)以下であることが好ましい。水分は反応により硫化物系固体電解質の変性を引き起こし、固体電解質の性能を悪化させる。そのため、水分量は低いほど好ましく、炭化水素系溶媒中の水分量は、より好ましくは30ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0033】
熱処理時間は、0.1時間以上24時間以下が好ましく、特に0.2時間以上12時間以下が好ましい。例えば、0.5時間以上8時間以下、1時間以上5時間以下である。
【0034】
さらに、酸化ケイ素と複合化することにより、固体電解質の結晶化率が高まり、イオン伝導度が向上する。結晶化率は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。結晶化率は、例えば60%以上、70%以上、80%以上である。上限は特に無いが、例えば95%以下である。
【0035】
次に、他の発明として以下の正極合材及び負極合材を説明する。
正極合材は、正極活物質と複合体を含み、複合体は、固体電解質及び酸化ケイ素を含む非結晶複合体、及び固体電解質及び酸化ケイ素を含む結晶化複合体のうち少なくとも1つを含む。
【0036】
また、負極合材は、負極活物質と複合体を含み、複合体は、固体電解質及び酸化ケイ素を含む非結晶複合体、及び固体電解質及び酸化ケイ素を含む結晶化複合体のうち少なくとも1つを含む。
【0037】
正極合材、負極合材に用いる非結晶複合体、結晶化複合体は、上記本発明のものと同じである。正極活物質、負極活物質は後述する。
上記の他の発明により、正極層中での固体電解質と正極活物質の界面抵抗を減らすことができる。また、負極層中での固体電解質と負極活物質の界面抵抗を減らすことができる。
【0038】
正極活物質としては、公知のものが使用できる。例えば、金属酸化物、硫化物等が挙げられる。硫化物には、金属硫化物、非金属硫化物が含まれる。
金属酸化物は、例えば遷移金属酸化物である。具体的には、V
2O
5、V
6O
13、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li(Ni
aCo
bMn
c)O
2(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi
1−YCo
YO
2、LiCo
1−YMn
YO
2、LiNi
1−YMn
YO
2(ここで、0≦Y<1)、Li(Ni
aCo
bMn
c)O
4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn
2−ZNi
ZO
4、LiMn
2−ZCo
ZO
4(ここで、0<Z<2)、LiCoPO
4、LiFePO
4、CuO等が挙げられる。
金属硫化物としては、硫化チタン(TiS
2)、硫化モリブデン(MoS
2)、硫化鉄(FeS、FeS
2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni
3S
2)等が挙げられる。
その他、金属酸化物としては、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、鉛酸ビスマス(Bi
2Pb
2O
5)等が挙げられる。
非金属硫化物としては、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物等が挙げられる。
上記の他、セレン化ニオブ(NbSe
3)、金属インジウム、硫黄も正極活物質として使用できる。
【0039】
負極活物質としては、公知のものが使用でき、例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組み合わせた合金を負極材として用いることができる。
【実施例】
【0040】
製造例1[硫化リチウムの製造]
(1)硫化リチウム(Li
2S)の製造
撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。
続いて、この反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した硫化水素の一部を脱硫化水素化した。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。脱硫化水素反応が終了後(約80分)反応を終了し、硫化リチウムを得た。
【0041】
(2)硫化リチウムの精製
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
尚、亜硫酸リチウム(Li
2SO
3)、硫酸リチウム(Li
2SO
4)並びにチオ硫酸リチウム(Li
2S
2O
3)の各硫黄酸化物、及びN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)の含有量は、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、LMABは0.07質量%であった。
【0042】
製造例2[固体電解質の製造]
製造例1で製造した高純度硫化リチウム0.6975g(0.01518mol)と五硫化二燐(アルドリッチ社製)を1.1247g(0.00506mol)をよく混合した。そして、この混合した粉末と直径10mmのジルコニア製ボール10個と遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)ジルコニア製ポットに投入し完全密閉するとともにこのジルコニア製ポット内に窒素を充填し、窒素雰囲気にした。
そして、はじめの数分間は、遊星型ボールミルの回転を低速回転(85rpm)にして硫化リチウムと五硫化二燐を十分混合した。その後、徐々に遊星型ボールミルの回転数を上げ370rpmまで回転数を上げた。遊星型ボールミルの回転数を370rpmで20時間メカニカルミリングを行い、白黄色の粉体の固体電解質(Li
2S:P
2S
5=75:25(モル比))を得た。この白黄色の粉体をX線測定により評価した結果、ガラス化(硫化物ガラス)していることが確認できた。この硫化物ガラスのガラス転移温度をDSC(示差走査熱量測定)により測定したところ、190℃であった。また、この硫化物ガラスの結晶化温度をDSC(示差走査熱量測定)により測定したところ、205℃であった。
【0043】
製造例3[SiO
2の製造]
SiO
2(和光純薬株式会社、型番321−38372、純度97+%、平均粒径約70nm、アモルファス状態)を700℃で加熱して、乾燥したSiO
2を得た。乾燥したSiO
2は結晶化していることをX線測定により確認した。なお、SiO
2の平均粒径は、段落0018に記載の方法で測定した。
【0044】
実施例1
製造例2で製造した非結晶固体電解質と製造例3で製造したSiO
2の混合物0.5g、ジルコニアボール4mmΦを40g、45mlジルコニアポットに入れ、230rpmで2時間撹拌して複合化して、非結晶複合体を得た。固体電解質とSiO
2は、モル比で固体電解質:SiO
2=(100−X):XにおいてX=10となるように、ジルコニアポットに入れた。
【0045】
得られた非結晶複合体の結晶化温度をDSC(示差走査熱量測定)により測定した。結果を表1に示す。
また、得られた非結晶複合体を200℃で1時間加熱して、結晶化複合体を得た。固体電解質が結晶化していることはX線測定により確認した。また、X線測定により結晶化複合体に含まれる結晶はLi
3.2P
0.96S
4(thio−LISICON region III analog)結晶であることが分かった。
【0046】
実施例2
固体電解質:SiO
2=(100−X):XにおいてX=20となるようにSiO
2を入れた他は、実施例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。また、実施例1と同じ結晶が得られていることが分かった。
【0047】
実施例3
回転数を510rpmにした他は、実施例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。また、実施例1と同じ結晶が得られていることが分かった。
【0048】
実施例4
固体電解質:SiO
2=(100−X):XにおいてX=20となるようにSiO
2を入れた他は、実施例3と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。また、実施例1と同じ結晶が得られていることが分かった。
【0049】
実施例5
固体電解質:SiO
2=(100−X):XにおいてX=5となるようにSiO
2を入れた他は、実施例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。また、実施例1と同じ結晶が得られていることが分かった。
【0050】
実施例6
固体電解質:SiO
2=(100−X):XにおいてX=30となるようにSiO
2を入れた他は、実施例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。また、実施例1と同じ結晶が得られていることが分かった。
【0051】
実施例7
固体電解質:SiO
2=(100−X):XにおいてX=40となるようにSiO
2を入れた他は、実施例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。また、実施例1と同じ結晶が得られていることが分かった。
【0052】
比較例1
製造例2で製造した非結晶固体電解質とNbO
2の混合物を0.5g、ジルコニアボール4mmΦを40g、45mlジルコニアポットに入れ、230rpmで2時間撹拌して複合化して、非結晶複合体を得た。固体電解質とNbO
2は、モル比で固体電解質:NbO
2=(100−X):XにおいてX=3となるように、ジルコニアポットに入れた。
【0053】
得られた非結晶複合体の結晶化温度をDSC(示差走査熱量測定)により測定した。結果を表1に示す。
また、得られた非結晶複合体を250℃で1時間加熱して、結晶化複合体を得た。結晶化していることはX線測定により確認した。
【0054】
比較例2
固体電解質:NbO
2=(100−X):XにおいてX=6となるようにNbO
2を入れた他は、比較例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。
【0055】
比較例3
固体電解質:NbO
2=(100−X):XにおいてX=10となるようにNbO
2を入れた他は、比較例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。
【0056】
比較例4
固体電解質:NbO
2=(100−X):XにおいてX=0となるようにNbO
2を入れなかった他は、比較例1と同様にして、非結晶複合体と結晶化複合体を得た。非結晶複合体の結晶化温度を表1に示す。
【0057】
評価例1
実施例1〜4、比較例1〜4で得られた結晶化複合体のLiイオン伝導度と相対密度を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(1)Liイオン伝導度
結晶化複合体を錠剤成形機に充填し、360MPaの圧力を加え成形体を得た。さらに、カーボンペーストを成形体の両面に塗布、乾燥させることによって電極を形成し、伝導度測定用の成形体(直径約10mm、厚み約1mm)を作製した。この成形体について交流インピーダンス測定によりイオン伝導度測定を実施した。伝導度の値は25℃における数値を採用した。
【0059】
(2)相対密度
作製した成形体の重量と体積から相対密度を算出した。
【0060】
【表1】
【0061】
評価例2
実施例1,2,5〜7、比較例4で得られた非結晶複合体について、ラマン分光法を用いて、PS
43−のピークを観察した。測定結果を
図1に示す。PS
43−のピークはX=0〜40の範囲で変化していなかった。このことから、実施例1,2,5〜7で得られた非結晶複合体は固体電解質と酸化ケイ素が殆ど反応していないことが分かる。
また、固体電解質の結晶化温度が変わったことから、実施例1〜7で得られた非結晶複合体は、固体電解質と酸化ケイ素の単なる混合粉末でないと認められる。
【0062】
参考例1
実施例1前段で製造した非結晶複合体を用いて、以下の手順で正極合材とそれを用いた全固体電池を作製した。
LiCoO
27mg及び実施例1前段で製造した非結晶複合体3mgを乳鉢にて混合することにより正極合材を得た。この正極合材10mgと、製造例2で製造した非結晶固体電解質80mgとを、順にポリカーボネート製の筒(直径10mm)に入れ、360MPaで5分間プレスすることにより、正極合材からなる正極層と、非結晶固体電解質からなる固体電解質層を含む積層体を形成した。次に、正極層と逆側から、固体電解質層に接するようにインジウムシート(直径9mm)を張り付け、240MPaで2分間プレスして全固体電池とした。これを25℃、0.13mAcm
−2の電流密度で3.6Vまで充電を行った後、交流インピ−ダンス測定を行った。結果を
図2(X=10、下段)に示す。正極層中での固体電解質と正極活物質との界面抵抗は500Ωであった。
【0063】
参考例2
正極合材を、LiCoO
27mg及び製造例2で製造した非結晶固体電解質3mgを乳鉢にて混合することにより得た正極合材とした以外は、参考例1と同様にして全固体電池を作製し、初期充電後に交流インピ−ダンス測定を行った。結果を
図2(X=0、上段)に示す。正極層中での固体電解質と正極活物質との界面抵抗は600Ωであった。
【0064】
参考例1及び2のインピ−ダンス測定の結果から、正極合材に含まれる固体電解質として非結晶複合体を用いた方が、非結晶固体電解質そのものを用いた場合よりも、正極層中での正極活物質との界面抵抗が減少することが分かる。