セメント製造設備からの排ガス中の揮発性水銀の含有量を効果的に低減し、集塵ダストに含有される水銀を揮発させる加熱装置のランニングコストを低減する排ガス処理方法及び処理装置を提供する。
排ガス処理方法は、セメント製造設備の集塵装置及び/又はバグフィルタ装置で捕集された集塵ダストに、該集塵ダストの加熱に必要な熱量に相当する量の可燃物を添加し、該集塵ダストと可燃物とを加熱し、加熱排ガス中の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を測定し、測定した酸素濃度及び一酸化炭素濃度から加熱する際の空気量を制御して、該集塵ダスト中に含有される水銀を揮発させて水銀を回収する工程を有し、好ましくは、更に、集塵ダストを加熱する前後の水銀濃度を測定して水銀の揮発率を算出し、揮発率が目標とする値になるように、集塵ダストを加熱する加熱温度を制御する。
セメント製造設備の集塵装置及び/又はバグフィルタ装置で捕集された集塵ダストに、該集塵ダストの加熱に必要な熱量に相当する量の可燃物を添加し、該集塵ダストと可燃物とを加熱し、加熱排ガス中の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を測定し、測定した酸素濃度及び一酸化炭素濃度から加熱する際の空気量を制御して、該集塵ダスト中に含有される水銀を揮発させて水銀を回収することを特徴とする、排ガス処理方法。
請求項1記載の排ガス処理方法において、更に、集塵ダストを加熱する前後の水銀濃度を測定して水銀の揮発率を算出し、揮発率が目標とする値になるように、集塵ダストを加熱する加熱温度を制御することを特徴とする、排ガス処理方法。
請求項1又は2記載の排ガス処理方法において、集塵ダストと可燃物とを加熱した加熱排ガス中の酸素濃度が3〜15容量%、一酸化炭素濃度が600〜10000ppmとなるように空気量を制御することを特徴とする、排ガス処理方法。
請求項4又は5記載の排ガス処理装置において、更に、集塵ダスト処理量と加熱温度から加熱に必用な熱量を算出して、可燃物の集塵ダストへの添加量を算出する演算装置、可燃物の添加量と空気量とを制御する調節装置を備えることを特徴とする、排ガス処理装置。
【背景技術】
【0002】
2013年10月に「水銀に関する水俣条約外交会議及び準備会合」が開催され、同条約の採択・署名が行われた。今後、環境中への水銀の排出量の削減とその適正管理に向けた取組が強化されるものと考えられる。
【0003】
セメント製造用の原燃料は、天然由来、及び廃棄物由来の水銀を含有しており、セメント焼成の過程で排ガス中に揮発し、煙突より大気に排出されている。
排出される水銀量は、水銀を含有する原燃料の使用量とその水銀濃度に依存する。
また、水銀とその化合物は沸点が低く(例 金属水銀:357℃、塩化水銀(II):302℃)、排ガス中のこれらの水銀は、排ガス温度の低下とともに排ガス中のダストに吸着、或は微粒子となり、集塵装置で捕集され、セメント製造の原料の一部に再利用される。従って、水銀はセメント製造設備内を循環、濃縮している。
【0004】
セメント製造設備からの排ガス中の水銀低減方法として、特開2012−116682号公報(特許文献1)には、セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスを、プレヒータ、該セメント原料粉砕装置及び集塵装置、ダスト分離フィルタ装置を経て外部に排出するとともに、セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該燃焼排ガスを該プレヒータ、該ダスト分離フィルタ装置を経て重金属除去装置に導入して重金属を除去した後に外部に排出することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法が開示されている。
【0005】
また特開2012−206883号公報(特許文献2)には、セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスをプレヒータから排出させた後に2経路に分岐させ、セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置及び外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスの一部を、セラミックフィルタ装置を通過させた後、前記セメント原料粉砕装置の手前で前記沈降室からの排気と合流させて、該セメント原料粉砕装置、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出し、セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、該沈降室、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスの一部を、該セラミックフィルタ装置、重金属除去装置を通過させた後、該バグフィルタ装置の下流で、前記バグフィルタ装置からの排気と合流させて、該外部排気手段より外部に排出することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法が開示されている。
【0006】
しかし、上記特許文献1及び2に記載された処理方法やシステムは、セメント原料粉砕装置が稼働中の時と停止中の時とで、セメント製造設備内の排ガスの流れを変化させることにより、セメント製造整備からの排ガス中の重金属を低減するものであり、集塵装置等により捕集されたダストを処理する方法やシステムではない。
【0007】
特開2002−355531号公報(特許文献3)には、セメント製造工程の排ガスから捕集した集塵ダストを加熱炉に導き、集塵ダストに含まれる揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱して上記揮発性金属成分をガス化して除去し、揮発性金属成分を除去した集塵ダストをセメント原料の一部に用い、排ガスから水銀を除去する方法としては、硫黄または金属硫化物による吸着除去や活性炭または活性炭を担持した吸着媒体による吸着除去である排ガスの処理方法が記載されている。
【0008】
また、特開2011−84425号公報(特許文献4)には、セメント製造設備の集塵装置後半部分で捕集された集塵ダストを加熱炉に導き、キャリアガス導入下、300〜600℃に加熱して、集塵ダスト中の水銀成分及び有機塩素化合物を揮発させ、該加熱炉を出た排ガスを、水銀成分除去装置中で洗浄水と接触させて水銀成分を吸収し、該水銀成分除去装置を出た排ガスを800℃以上のセメント製造設備内の高温部に導いて有機塩素化合物を分解することを特徴とするセメント製造設備からの排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の低減方法が提案されている。
【0009】
しかし、上記特許文献3の処理方法は、集塵ダストを加熱炉で水銀の揮発温度以上に加熱し吸着剤等を用いて除去する方法であり、特許文献4の処理方法はキャリアガス導入下で集塵ダストを加熱し、加熱炉の排ガスを吸収液に吸収また沈殿して回収するものであるが、これらの従来の集塵ダストを加熱し水銀を回収する方法では、加熱炉を水銀の揮発温度以上に加熱するため、常に加熱ヒータに一定以上の負荷がかかる状態であり、消費電力が大きくなってしまっている。またキャリアガスの導入が、加熱炉における温度損失を招き、ランニングコストの増加を招いている。
【0010】
今後、水銀を含有する天然及び廃棄物系の多様な原燃料を使用してセメント製造を行うにあたっては、セメント製造設備において廃棄物のリサイクルがますます進められ、廃棄物からの重金属量も増加する傾向にあり、かかる廃棄物系資源の有効利用の拡大を経済的な方法で図るためには、水銀除去・回収設備の加熱装置の消費電力を抑制して、ランニングコストを抑制しつつ排ガス中に含有される水銀濃度を有効に低減することができる、新規なセメント製造設備の水銀低減技術の確立が望まれているところである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決し、セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる集塵ダストに含有される揮発性重金属である水銀の含有量を効果的に低減するため、集塵ダストを加熱処理する加熱装置の消費電力量を低減させて、加熱装置のランニングコストを低減することができる、新規な排ガス処理方法及び処理装置を提供することである。
【0013】
具体的には、セメント製造設備の集塵装置及び/又はバグフィルタ装置で捕集された集塵ダストに含有される水銀を揮発させる加熱装置に、該集塵ダストとともに可燃物を導入して燃焼させることにより、加熱装置の消費電力等のランニングコストを低減させて、セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる揮発性水銀を効果的に低減する新規な排ガス処理方法及び処理装置を提供することである。
【0014】
なお、本発明において、集塵ダストとは、セメント製造設備の集塵装置で捕集されたダスト及びバグフィルタ装置から回収されるダストの双方のダストを意味するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、加熱装置からの排ガス中の酸素濃度及び一酸化炭素濃度より、集塵ダストに添加する可燃物の添加量及び加熱装置に導入する空気量を制御することで、加熱装置内で集塵ダストに含まれる水銀を揮発させる際の加熱装置の消費電力を抑制できることに着目して、上記課題を達成した。
【0016】
即ち、請求項1記載の排ガス処理方法は、セメント製造設備の集塵装置及び/又はバグフィルタ装置で捕集された集塵ダストに、該集塵ダストの加熱に必要な熱量に相当する量の可燃物を添加し、該集塵ダストと可燃物とを加熱し、加熱排ガス中の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を測定し、測定した酸素濃度及び一酸化炭素濃度から加熱する際の空気量を制御して、該集塵ダスト中に含有される水銀を揮発させて水銀を回収することを特徴とする、排ガス処理方法である。
【0017】
請求項2記載の排ガス処理方法は、請求項1記載の排ガス処理方法において、更に、集塵ダストを加熱する前後の水銀濃度を測定して水銀の揮発率を算出し、揮発率が目標とする値になるように、集塵ダストを加熱する加熱温度を制御することを特徴とする、排ガス処理方法である。
【0018】
請求項3記載の排ガス処理方法は、請求項1又は2記載の排ガス処理方法において、集塵ダストと可燃物とを加熱した加熱排ガス中の酸素濃度が3〜15容量%、一酸化炭素濃度が600〜10000ppmとなるように空気量を制御することを特徴とする、排ガス処理方法である。
【0019】
請求項4記載の排ガス処理装置は、セメント製造設備の排ガス中のダストを捕集する集塵装置及びバグフィルタ装置と、
該集塵装置及び/又はバグフィルタ装置から捕集された集塵ダストに可燃物を添加配合する可燃物供給装置と、
該集塵ダスト及び可燃物を加熱して、該ダスト中に含まれる水銀成分を揮発させる加熱装置と、
加熱装置に空気を供給する空気供給装置と、
加熱装置からの排ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度分析計と、一酸化炭素濃度を測定する一酸化炭素濃度分析計と、
該加熱装置からの揮発した水銀を含む排ガスを処理して、水銀を回収する水銀回収装置とを備えることを特徴とする、排ガス処理装置である。
【0020】
請求項5記載の排ガス処理装置は、請求項4記載の排ガス処理装置において、更に、加熱装置の前後にそれぞれ水銀濃度を測定する水銀濃度分析計を備えることを特徴とする、排ガス処理装置である。
【0021】
請求項6記載の排ガス処理装置は、請求項4又は5記載の排ガス処理装置において、更に、集塵ダスト処理量と加熱温度から加熱に必用な熱量を算出して、可燃物の集塵ダストへの添加量を算出する演算装置、可燃物の添加量と空気量とを制御する調節装置を備えることを特徴とする、排ガス処理装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の排ガス処理方法及び処理装置により、燃焼排ガス中のダストを除去するための集塵装置及びバグフィルタ装置から捕集した集塵ダストに適量の可燃物を添加配合するとともに、該加熱装置に導入される空気量の適正に制御して、加熱装置で該可燃物を燃焼させることにより、加熱装置の消費電力量を低減することができ、加熱装置のランニングコストを低減させることができる。
これにより、集塵ダストに含まれる水銀を有効に揮発除去して回収効率よく回収することができ、セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる水銀を低減することが可能となる。
【0023】
また、本発明の排ガス処理方法及び装置を用いることで、セメント製造設備において、水銀を高濃度に含有するか又は水銀の濃度は中又は低濃度であるが使用量の多い天然及び廃棄物系資源の原燃料としての有効利用の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を、図面を参照して、以下の実施形態により説明する。
本発明の排ガス処理方法は、セメント製造設備の集塵装置及び/又はバグフィルタ装置で捕集された集塵ダストに、該集塵ダストの加熱に必要な熱量に相当する量の可燃物を添加し、該集塵ダストと可燃物とを加熱し、加熱排ガス中の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を測定し、測定した酸素濃度及び一酸化炭素濃度から加熱する際の空気量を制御して、該集塵ダスト中に含有される水銀を揮発させて水銀を回収する、排ガス処理方法である。
好適には、集塵ダストを加熱する前後の水銀濃度を測定して水銀の揮発率を算出し、揮発率が目標とする値になるように、集塵ダストを加熱する加熱温度を制御する方法である。
【0026】
また、本発明の排ガス処理装置は、セメント製造設備の排ガス中のダストを捕集する集塵装置及びバグフィルタ装置と、
該集塵装置及び/又はバグフィルタ装置から捕集された集塵ダストに可燃物を添加配合する可燃物供給装置と、
該集塵ダスト及び可燃物を加熱して、該ダスト中に含まれる水銀成分を揮発させる加熱装置と、
加熱装置に空気を供給する空気供給装置と、
加熱装置からの排ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度分析計と、一酸化炭素濃度を測定する一酸化炭素濃度分析計と、
該加熱装置からの揮発した水銀を含む排ガスを処理して、水銀を回収する水銀回収装置とを備える、排ガス処理装置である。
好適には、更に、加熱装置の前後にそれぞれ水銀濃度を測定する水銀濃度分析計を備えることを特徴とする、排ガス処理装置である。
【0027】
図1は、本発明の排ガス処理方法、特に詳細にはセメント製造設備Xからの排ガス中の水銀低減方法を実施するため、集塵ダストを加熱処理する加熱装置の消費電力量を低減させて、加熱装置のランニングコストを低減することができる、集塵ダストからの水銀除去・回収設備Yの代表的な一例の図であり、
図1を参照して本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0028】
セメント製造設備の集塵装置1においては、水銀等を吸着したダストを含む排ガスが導入され、該ダストが捕集される。
該集塵装置1に導入される排ガス温度は、約80〜150℃であるので、排ガス中の水銀の大部分はダストに吸着されており、したがって、集塵装置1で捕集されたダストには、大部分の水銀が吸着している。
更に、集塵装置1から排出された排ガス中に含まれる細かいダストは、バグフィルタ装置17で捕集される。かかるバグフィルタ装置17で回収された細かいダストにも、水銀が吸着している。
上記したように、集塵装置1で捕集されたダスト及び/又はバグフィルタ装置17で捕集されたダストを集塵ダストと称する。
【0029】
該集塵ダストは、加熱装置2に導入される前に、可燃物が添加配合される。
可燃物としては、セメント原燃料として用いることができる可燃物であれば特に限定されず任意の可燃物を使用することができ、例えば、石炭微粉末や乾燥汚泥、木材チップ、廃プラスチック等を好適に用いることが可能である。
可燃物の形態としては、固体状、液体状やスラリー状の任意の形状のものを使用することができる。
可燃物の添加量は、集塵ダストを加熱するのに必要な熱量に相当する熱量を有するような量で添加される。
具体的には、ダストの加熱温度、ダストの処理量、およびダストの比熱から処理量演算装置20により集塵ダストの加熱に必要な熱量を算出し、次いで算出した集塵ダストの加熱に必用な熱量と可燃物の熱量とから可燃物の添加量を算出して、可燃物の添加量を調節装置5により調整するものである。
また、集塵ダストの処理量は、可燃物と混合する前に、例えば、ベルトスケール等の集塵ダスト定量供給装置(例えば、ベルトスケール)を設置して測定されて搬送される。
【0030】
集塵ダスト及び可燃物を、加熱装置2に導入して加熱する。加熱装置2の構造は特に限定されず、例えば、スクリュー式加熱器、バトル式加熱器、ロータリー式加熱器等を用いることができる。加熱装置2においては、集塵ダストに含まれる水銀が揮発するとともに、可燃物が燃焼する。
上記調節装置5により調節された添加量の可燃物の燃焼熱により、加熱装置の消費電力を低減してランニングコストを低減させることが可能となる。
また、加熱装置の電気炉以外の熱源としては、熱風加熱やバーナーによる加熱等を採用することができる。
【0031】
加熱温度としては、300〜600℃、好ましくは300〜450℃とすることが、望ましい。
300℃未満では、集塵ダストからの水銀の揮発が不十分となり、600℃を超えても水銀の揮発効果は変化がないため不経済だからである。
加熱装置中での集塵ダストの加熱時間は、例えば15〜120分程度であることが望ましく例示できる。
【0032】
また、加熱装置2に導入される空気量は、該加熱装置2から排出される揮発水銀を含む排ガス中の酸素濃度及び一酸化炭素濃度に依存して決定される。
特に、加熱装置2から排出された排ガス中の酸素濃度は、酸素濃度分析計4により、また一酸化炭素濃度は、一酸化炭素濃度分析計19により測定され、この結果が、加熱装置2に導入される空気量を調整する調整装置5と連動して、加熱装置への空気の導入量が決定される。
加熱装置2に導入される空気量は、好ましくは空気加熱機21を介して導入される。
【0033】
かかる加熱装置2の温度は、加熱装置2の前後に、水銀濃度分析計22及び23を設置して、集塵ダスト中の水銀濃度をそれぞれ測定し、以下の式より水銀の揮発率を算出し、揮発率が目標値になるように加熱装置の加熱温度を制御することが望ましい。
揮発率(%)=(1−加熱後ダストの水銀濃度/加熱前のダスト水銀濃度)×100
【0034】
該加熱装置2から排出される排ガス中の酸素濃度は3〜15容量%となることが望ましく、好ましくは4〜14容量、より好ましくは、6〜8容量%、一酸化炭素濃度は600〜10000ppm、好ましくは700〜7000容量、より好ましくは、2000〜4000容量%となることが、該加熱装置2の電力消費量の低減効果が大きい点から特に好ましい。
かかる酸素濃度となるためには、添加配合する可燃物が石炭微粉末の時には、集塵ダスト100質量部に対して可燃物を約4.3質量部添加配合した場合で、空気量が120〜440m
3N/hとなる。
【0035】
このように、加熱装置2からの排ガスの酸素濃度及び一酸化炭素濃度を分析して、所定の濃度となるように、空気量の供給量を調整しながら加熱することによって、加熱装置のランニングコスト(消費電力等)を低減させることができる。
【0036】
加熱装置2にはフィルタを備えることが望ましく、加熱装置2で加熱されて水銀が分離された後のダストは、原料混合・供給装置10に導入されて、ドライヤー14や粉砕装置16から導入される原料と混合されて、セメント製造原料として、プレヒータ12に搬送されて再利用されることができる。
【0037】
加熱装置2から排出された排ガス中には、水銀が含有される。該排ガスは、上記したように酸素濃度及び一酸化炭素濃度を酸素濃度分析計4及び一酸化炭素濃度分析計19によりそれぞれ測定され、水銀回収装置3に導入されて、排ガスから水銀が回収される。
【0038】
水銀回収装置3としては、活性炭吸着塔(
図3(a))、ガス冷却器(
図3(b))、スラバー(
図3(c)、
図3(d))等を例示することができる。
好ましくは、スクラバー方式の水銀回収装置を用いることができ、排ガス中の水銀を洗浄液と接触させるが、該洗浄液が単純な水(上水道水、工業用水、セメント製造工程等から排出される2次排水等)の場合のスクラバー方式(
図3(c))と、酸化剤を添加した液の場合のスクラバー方式(
図3(d))がある。
【0039】
洗浄液が単純な水(上水道水、工業用水、セメント製造工程等から排出される2次排水等)の場合のスクラバー方式での水銀回収は、例えば、
図3(c)に示すように、排ガスに洗浄水等を接触させることにより行うことができる。排ガス中の二価水銀は洗浄水に溶解するので、この洗浄液から二価水銀を公知の廃水処理装置により処理して回収する。また、排ガス中の金属水銀は、洗浄水との接触で排ガス温度が低下し、その温度が金属水銀の露点以下になると凝縮し、洗浄水と水銀との比重の差により、水銀回収装置3の底部に金属水銀が滞留し回収される。
【0040】
また、洗浄液に酸化剤を用いているスクラバー方式の場合には、例えば、
図3(d)に示すように、排ガス中の水銀を洗浄液と接触させて、水銀を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて水銀を除去する。なお、排ガス洗浄水としては、薬液調製・給水装置(図示せず)から供給される水、酸化剤溶液、酸・アルカリ剤によりpH調整された吸収液などを使用することができ、洗浄液は、例えばポンプを用いて水銀回収装置内を循環噴霧させて、排ガスと接触させる。
【0041】
このようしてスクラバー方式により除去した水銀は、スクラバーから排出された廃水(洗浄液)に含まれるため、該廃水を、公知の廃水処理装置により処理して水銀を回収し、水銀回収後の洗浄水は、セメント製造プロセスへ再利用されるか、放流されることとなる。
【0042】
図2は、
図1の本発明の処理装置の一例である集塵ダストから金属水銀を回収する設備を組み込んだセメント製造設備の代表的な一例を図であるが、これらに限定されるものではない。
セメント製造原料は、ドライヤー14に導入されて乾燥されてから、必要に応じて粉砕装置16で粉砕混合されて、原料混合・供給系装置10を経由してプレヒータ12の上部、プレヒータ12dに供給される。
ここでセメント原料としては、例えば石灰石、粘土、珪石、鉄滓、スラッジ・都市ごみの焼却で発生する灰等の廃棄物を使用することができる。
【0043】
プレヒータ2は、複数のサイクロン12a、12b、12c、12dから構成されており、その数は限定されない。
前記セメント原料は、プレヒータ12内を、上部のサイクロン12dから下部方向へサイクロン12c、サイクロン12b、サイクロン12aへと順次移動しながら予熱されて、最下部のサイクロン12aに導入された後、ロータリーキルン11へと供給される。
【0044】
さらに、プレヒータ12とロータリーキルン11の間に仮焼炉13を設けてもよく、セメント原料の仮焼を効率的に促進させるために設けられるものである。
該仮焼炉13としては、任意の公知の仮焼炉を用いることができ、例えば、SF仮焼炉、MFC仮焼炉、RSP仮焼炉、KSV仮焼炉、DD仮焼炉、SLC仮焼炉等が例示できる。
仮焼炉3が設けられている場合には、仮焼成されたセメント原料はロータリーキルン11へ供給される。
本発明においては、セメントロータリーキルン11、プレヒータ12、仮焼炉13を原料焼成装置という。
【0045】
ロータリーキルン11内に供給されたセメント原料は、焼成されてクリンカを製造する。
該ロータリーキルン11で上記セメント原料が加熱焼成される際に発生する排ガスは、ロータリーキルン11から排出されてプレヒータ12aに流入する。
また
図2に示すように、仮焼炉13が設けられている場合には、該ロータリーキルン11から排出された高温の排ガスは、仮焼炉13中でのセメント原料の仮焼成に利用され、仮焼炉3に流入する。該仮焼炉13で発生した排ガスもプレヒータ12aに流入する。
またロータリーキルン11からの排出される排ガスは、一部抽気されて脱塩バイパス処理される。
【0046】
該サイクロン12aに流入した排ガスは、サイクロン12b、サイクロン12c、サイクロン12dに順次流入して、プレヒータ12内を上方へと移動し、最上部のサイクロン12dから排出される。その際の排ガスの温度は通常約400℃前後である。
該プレヒータ内における排ガスは、供給された原料と接触して原料を予備加熱する。
該排ガス中に含まれる水銀及びその化合物は、該排ガス中に含まれた状態でプレヒータ12から排出される。
【0047】
プレヒータ12(最上部のサイクロン12d)から排出した排ガスは、ドライヤー14に導入される。該ドライヤー14に該プレヒータからの排ガスが導入されることで、プレヒータ12から排出される排ガス中に含まれる粒子径の大きいダストが分離されて沈降して回収することができる。
該ドライヤー14には、原料も導入されて乾燥される。
当該原料と、プレヒータ12から排出される排ガス中に含まれ回収された粒子径の大きいダスト等は、原料混合・供給装置10に導入される。また、必要に応じて、粉砕装置16により粉砕されて、原料混合・供給装置10に導入される。これらの原料及び粒子径の大きいダスト等とは、原料混合・供給装置10から、セメント製造原料としてプレヒータ12の上部のサイクロン12dに循環供給されることができる。
【0048】
次いで、ドライヤー14で粒子径の大きいダストが分離されて排出された排ガスは、スタビライザ15でガス温度を調節されて、集塵装置1に導入される。
該スタビライザ15で回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入され、粉砕装置16やドライヤー14から導入される原料やダスト等と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ12の上部のサイクロン12dに循環供給されることができる。
【0049】
スタビライザ15から排出された粒径の小さいダストを含有している排ガスを、集塵装置1に導入し、集塵装置1でダストが捕集された後の排ガスはバグフィルタ装置17に送られ、バグフィルタ装置17で細かいダストが捕集されて、バグフィルタ装置を通過した排ガスは煙突等の外気排気手段18によって大気に放出される。
【0050】
ここで、集塵装置1及び/又はバグフィルタ装置17で回収された集塵ダストは、上記
図1の集塵ダストから水銀を除去・回収する設備Yに搬送されて、水銀低減処理がなされる。
【0051】
また、上記集塵装置1及び/又はバクフィルタ装置17で回収されたダストの一部は、原料混合・供給装置10に導入され、粉砕装置16やスタビライザ15から導入される原料やダスト等と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン12dに循環供給されることができる。
【0052】
本発明の方法及び装置により、燃焼排ガス中のダストを除去するための集塵装置及びバグフィルタ装置から捕集した集塵ダストに可燃物を添加配合し、該加熱装置に導入される空気量の適正に制御して、加熱装置で該可燃物を燃焼させることにより、加熱装置の消費電力量を低減することができ、加熱装置のランニングコストを低減させることができ、集塵ダストに含まれる水銀を有効に揮発除去して回収効率よく回収することが可能となる。
また、水銀を高濃度に含有する天然及び廃棄物系資源等の原料としての利用を拡大することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により説明する。
(実施例1〜6、比較例1)
セメント製造設備の集塵装置1で捕集したダストである集塵ダストに、可燃物を添加し、集塵ダストに含まれる水銀を揮発させて水銀を除去した。
具体的には、該集塵ダストに可燃物を添加後、空気を供給しながら加熱装置2で、下記条件にて加熱し、該ダストに含まれる水銀を揮発させた。
なお、加熱装置2の加熱条件は、水銀の揮発率が88%となるように調整した。
【0054】
加熱条件は以下のとおりである。
1)集塵ダスト:セメント製造設備の集塵装置1で回収された集塵ダスト
2)可燃物:石炭微粉末(低位発熱量:6000kcal/h(乾燥体)、水銀濃度0,1mg/kg))
3)加熱条件:加熱装置の設定温度・・・450℃
集塵ダスト量・・・・10kg/h(乾燥基準)
(水銀濃度10mg/kg)
加熱時間:30分
4)加熱装置に供給した空気の温度・・・20℃
【0055】
また、加熱装置2の前後のダスト中の水銀濃度測定には、水銀濃度分析計(22,23)MA−2000(日本インスツルメンツ社製)を用いて測定した。
加熱前後の集塵ダスト水銀濃度から下記式により揮発率を算出し、その結果を表1に示す。
揮発率=(1−加熱後集塵ダストの水銀濃度÷加熱前集塵ダストの水銀濃度)×100
なお、可燃物中に含まれる水銀は、集塵ダストに含まれる水銀量と比較して極めて少ないため、加熱後の残渣中の水銀量を集塵ダスト中の水銀量とした。
また、加熱装置2から排出された排気中の酸素濃度及び一酸炭素濃度(加熱装置2の出口配管で測定)をそれぞれ酸素濃度分析計4及び一酸化炭素濃度分析計19より測定し、更に加熱装置2の消費電力を測定した。その結果も下記表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
上記表1より、集塵装置及びバグフィルタ装置から捕集した集塵ダストに可燃物を添加配合して、加熱装置に供給する空気量を調整しながら加熱装置で該可燃物を燃焼させることにより、極めて効率よく加熱装置の消費電力を削減させることができ、加熱装置のランニングコストを低減させることができることとなることがわかる。
【0058】
本発明の排ガス処理方法及び処理装置により、集塵装置で捕集した集塵ダストに含まれる水銀を揮発させるための加熱装置のランニングコストを低減させることができるため、経済的かつ効率的にセメント設備からの排ガス中に含まれる水銀を低減することが可能となる。