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特開2015-189613コンクリート組成物及びコンクリート組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189613(P2015-189613A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】コンクリート組成物及びコンクリート組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20151006BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20151006BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B14/28
   C04B20/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-67122(P2014-67122)
(22)【出願日】2014年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 一徳
(72)【発明者】
【氏名】武藤 貴彦
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA10
(57)【要約】
【課題】乾燥収縮ひずみが低減された、圧縮強度の高いコンクリート組成物及び該コンクリート組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】硬質砂岩を含む細骨材と、粗骨材と、セメントと、水とを含むコンクリート組成物であって、コンクリート組成物中の細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えることを特徴とするコンクリート組成物、及び、硬質砂岩を含む細骨材と、粗骨材と、セメントと、水とを混練するコンクリート組成物の製造方法であって、細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えるように該硬質砂岩の粒径を調整するコンクリート組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質砂岩を含む細骨材と、粗骨材と、セメントと、水とを含むコンクリート組成物であって、
コンクリート組成物中の細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えることを特徴とするコンクリート組成物。
【請求項2】
細骨材が、該細骨材に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50よりも小さい重量平均粒径D50を有する石灰岩をさらに含む、請求項1に記載のコンクリート組成物。
【請求項3】
硬質砂岩を含む細骨材と、粗骨材と、セメントと、水とを混練するコンクリート組成物の製造方法であって、
細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えるように該硬質砂岩の粒径を調整するコンクリート組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート組成物及びコンクリート組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリートは、打設時からの時間の経過と共に乾燥し、それに伴い収縮する。このような乾燥収縮により生じるコンクリートのひずみは、コンクリート構造物にひび割れが発生する要因となり、構造物の耐久性の低下に大きな影響を及ぼす。そのため、乾燥収縮ひずみの小さいコンクリートが求められている。
【0003】
近年、コンクリートの乾燥収縮ひずみの要因の一つとして、コンクリートを構成する骨材の粒径が指摘されている。例えば、下記の非特許文献1には、セメント硬化体では、骨材の寸法が小さいほど乾燥収縮量が大きいことについて開示されている。また、下記の非特許文献2には、細骨材と粗骨材とを含むコンクリートの乾燥収縮ひずみは、粗骨材体積率が高い方が乾燥収縮低減効果が高いことについて開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「骨材の寸法および種類がセメント硬化体の乾燥収縮に及ぼす影響に関する一考」、土木学会中部支部研究発表会講演概要集、2010年、P479
【非特許文献2】「骨材量と骨材寸法がコンクリートの乾燥収縮に与える影響」、日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸)、2010年、P915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粗骨材と細骨材を組み合わせて用いるコンクリート材料において、それぞれの粒径がコンクリートの乾燥収縮に対して及ぼす具体的な影響については、未だ明確に知られていない。そのため、コンクリート材料の製造プロセスでは、コンクリート材料に含まれる粗骨材及び/または細骨材の粒径を制御することによって、コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減するための実用的な試みは行われていなかった。
【0006】
また、一般的に、コンクリートは圧縮強度が高いことが要求されることから、低い乾燥収縮ひずみと高い圧縮強度とを両立可能なコンクリートが求められている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、乾燥収縮ひずみが低減された、圧縮強度の高いコンクリート組成物及び該コンクリート組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、細骨材と粗骨材とを含むコンクリート組成物では、粗骨材の粒径はコンクリート組成物の乾燥収縮ひずみにあまり影響を及ぼさないことを見出した。その上で、細骨材の粒径によるコンクリート組成物の乾燥収縮ひずみへの影響は、骨材材料によって大きく異なり、特に細骨材として硬質砂岩を用いた場合には、細骨材の粒径はコンクリート組成物の乾燥収縮ひずみに大きく影響を及ぼすことが判明した。このことから、細骨材として硬質砂岩を用いた場合には、該細骨材の粒径を調整することによって、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみを低減し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のコンクリート組成物は、硬質砂岩を含む細骨材と、粗骨材と、セメントと、水とを含むコンクリート組成物であって、コンクリート組成物中の細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50(メディアン径)が0.85mmを超えることを特徴とする。
【0010】
斯かるコンクリート組成物では、該硬質砂岩の重量平均粒径D50について0.85mmを超える大きさとし、粒径の小さい硬質砂岩の割合を小さくすることによって、コンクリートの乾燥収縮ひずみを効果的に低減することができる。
【0011】
加えて、斯かるコンクリート組成物では、細骨材に硬質砂岩を含むため、比較的高い圧縮強度を備えるという利点も有する。
【0012】
また、本発明に係るコンクリート組成物においては、好ましくは、細骨材が、該細骨材に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50よりも小さい重量平均粒径D50を有する石灰岩をさらに含んでいる。
【0013】
本発明者らは、石灰岩を骨材とするコンクリート組成物についても、粒径と乾燥収縮ひずみとの関係を検討した結果、細骨材として石灰岩を用いた場合には、細骨材の粒径はコンクリート組成物の乾燥収縮ひずみにはあまり影響を及ぼさないことも見出した。そのため、斯かるコンクリート組成物では、乾燥収縮ひずみに悪影響を及ぼすことなく、細骨材全体の粒度分布を所定の範囲に調整することができるため、圧縮強度や流動性などのコンクリート組成物に要求される特性を効果的に高めることができる。
【0014】
また、本発明は、硬質砂岩を含む細骨材と、粗骨材と、セメントと、水とを混練するコンクリート組成物の製造方法であって、細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えるように該硬質砂岩の粒径を調整するコンクリート組成物の製造方法にも関する。
【0015】
斯かるコンクリート組成物の製造方法によれば、乾燥収縮ひずみが効果的に低減された、圧縮強度の高いコンクリート組成物を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乾燥収縮ひずみが低減され、圧縮強度の高いコンクリート組成物及び該コンクリート組成物の製造方法を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本明細書において、コンクリート及びコンクリート組成物とは、細骨材、粗骨材、セメント及び水を含む構成材料を混合したものとし、未硬化体及び硬化体を含む。また、細骨材とは、一般には10mm網ふるいを全部通り、5mm網ふるいを質量で85%以上通る骨材のことをいうが、本明細書では、細骨材とは、5mm網ふるいを全て通る、粒径が5mm以下の骨材とし、それより大きい粒径の骨材を含まないものとする。同様に、本明細書において、粗骨材とは、5mm網ふるい上に全てとどまる、細骨材より大きい粒径を有する骨材とする。
また、本明細書において、粒径とは、JIS A 1102に従う骨材のふるい分け試験方法によって測定したJIS Z 8801−1の試験用ふるいの目開きで表したものとする。加えて、細骨材を所定の目開きの試験用ふるいにかけた際、該試験用ふるい上にとどまる重量が全体の半分以上である場合に、重量平均粒径D50が該目開きの大きさを超えるとする。
【0018】
(細骨材)
本発明のコンクリート組成物は、硬質砂岩を含む細骨材を含み、コンクリート組成物中の細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50(メディアン径)が0.85mmを超えることを特徴とする。本発明者らは、硬質砂岩の細骨材を含むコンクリート組成物では、粒径が0.85mm程度またはそれより小さい硬質砂岩の割合が多い細骨材を用いると、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみが大きくなることを見出した。したがって、本発明では、該硬質砂岩の重量平均粒径D50について0.85mmを超える大きさとし、粒径の小さい硬質砂岩の割合を小さくすることによって、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみを効果的に低減することができる。
なお、本明細書において、硬質砂岩とは、JIS A 5003に従う圧縮強さが200kgf/cm2以上の砂岩をいうが、本発明のコンクリート組成物に用いる細骨材に含まれる硬質砂岩の圧縮強さとしては、300kgf/cm2以上が好ましく、400kgf/cm2以上がより好ましい。
該硬質砂岩の重量平均粒径D50は、好ましくは1.0mmを超えてもよく、より好ましくは1.2mmを超えてもよい。また、コンクリート組成物の十分な流動性を確保するため、該硬質砂岩の重量平均粒径D50は、好ましくは2.0mm以下であってもよく、より好ましくは1.5mm以下であってもよい。
【0019】
好ましくは、該硬質砂岩に含まれる粒径0.3mm以下の硬質砂岩の量が、該硬質砂岩全体量に対して15重量%未満であってもよい。粒径0.3mm以下の硬質砂岩は粒径が非常に小さいため、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみにより大きな影響を及ぼす。そのため、粒径0.3mm以下の硬質砂岩の含有量が少ない細骨材を用いたコンクリート組成物によれば、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみをさらに低減することができる。該硬質砂岩に含まれる粒径0.3mm以下の硬質砂岩の量は、該硬質砂岩全体量に対して、好ましくは10重量%未満であってもよく、より好ましくは8重量%未満であってもよい。さらに、該硬質砂岩は、粒径0.3mm以下の硬質砂岩を含まなくてもよい。
【0020】
特に、本発明のコンクリート組成物に含まれる細骨材は、該細骨材に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50よりも小さい重量平均粒径D50を有する石灰岩をさらに含んでいてもよい。本発明者らは、石灰岩を含むコンクリート組成物において、細骨材中の石灰岩の粒径は、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみに対してあまり影響を及ぼさないことを見出した。そのため、斯かるコンクリート組成物により、乾燥収縮ひずみに悪影響を及ぼすことなく、細骨材全体の粒度分布を所定の範囲に調整することができるため、圧縮強度や流動性などのコンクリート組成物に要求される特性を効果的に高めることができる。
加えて、石灰岩は、一般に硬質砂岩よりも乾燥収縮ひずみが少ない骨材として知られている。したがって、斯かるコンクリート組成物では、小粒径の硬質砂岩(すなわち、硬質砂岩において特に乾燥収縮ひずみの大きい部分)を主として石灰岩に置換したものとなるため、同様の粒度分布を有する硬質砂岩のみからなる細骨材を用いたコンクリート組成物と比較して、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみを効率的により高めることができる。
【0021】
該石灰岩は、コンクリート組成物中の細骨材全体に対して、0〜99体積%、好ましくは25〜99体積%、さらに好ましく25〜50体積%含まれていてもよい。特に、粒径0.3mm以下の石灰岩が、コンクリート組成物中の細骨材全体に対して0〜50体積%、好ましくは0〜14体積%含まれていてもよい。該細骨材に含まれる該石灰岩の量を上記範囲とすることにより、乾燥収縮ひずみをさらに低減しつつ、圧縮強度や流動性などのコンクリート組成物に要求される特性をより効果的に高めることができる。
なお、該石灰岩の重量平均粒径D50は、好ましくは0.85mm以下であってもよく、より好ましくは0.6mm以下であってもよく、さらに好ましくは0.3mm以下であってもよい。
【0022】
本発明のコンクリート組成物に含まれる細骨材としては、硬質砂岩を粉砕して製造される硬質砂岩の砕砂を用いることが好ましい。また、該細骨材が石灰岩を含む場合には、該硬質砂岩の砕砂に、石灰岩の砕砂を混合して用いることが好ましい。
【0023】
なお、該細骨材は、他の砕砂等の人工細骨材、天然砂または再生砂などをさらに含んでいてもよいが、該細骨材は、硬質砂岩を主成分とすることが好ましい。該細骨材全体に含まれる硬質砂岩の量は、好ましくは、該細骨材全体の10重量%以上であってよく、より好ましくは、50重量%以上であってよい。また、いずれの場合においても、全ての細骨材に含まれる硬質砂岩全体の重量平均粒径D50が0.8mmを超えるように調整される。
【0024】
(粗骨材)
本発明のコンクリート組成物に含まれる粗骨材は、コンクリート組成物に一般的に用いられる粗骨材であれば、特に限定されない。すなわち、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみは、コンクリート組成物に含まれる粗骨材の粒径による影響をあまり受けないため、コンクリート組成物の粗骨材として許容され得る任意の粒径の粗骨材を用いることができる。
該粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、海砂利などの天然骨材、硬質砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石などの人工骨材、または再生骨材等が挙げられる。該粗骨材は、一種または複数種を用いてもよい。また、該粗骨材として、該コンクリート組成物に使用される細骨材の主成分である硬質砂岩を(例えば、砕石として)用いることができる。
【0025】
本発明のコンクリート組成物に含まれる細骨材と粗骨材との配合比率は、細骨材率(細骨材及び粗骨材の合計に対する細骨材の体積割合)として、好ましくは、34〜54%であり、より好ましくは、38〜50%とすることができる。細骨材率を該範囲とすることで、圧縮強度や流動性などのコンクリート組成物に要求される特性を保ちつつ、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみをより効果的に低減することができる。
【0026】
(セメント)
本発明のコンクリート組成物に含まれるセメントは、コンクリート組成物に一般的に用いられるセメントであれば、特に限定されない。該セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、ジェットセメント等が挙げられる。該セメントは、一種または複数種を用いてもよい。
【0027】
(水)
本発明のコンクリート組成物に含まれる水としては、特に限定されず、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等が使用できるが、セメントの水和反応やコンクリート硬化体に悪影響を及ぼす有機物、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が含まれない、またはそれらの含有量が極めて微量であることが好ましい。該水としては、品質の安定した水道水または工業用水が特に好ましい。
【0028】
本発明のコンクリート組成物における単位水量は、好ましくは、200kg/m3以下であり、より好ましくは、185kg/m3以下とすることができる。また、本発明のコンクリート組成物では、水/セメント比が、好ましくは35〜70重量%、より好ましくは40〜65重量%となるように、上記水が添加されてもよい。
【0029】
(添加物)
本発明のコンクリート組成物は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。該添加剤としては、減水剤、分散剤、硬化促進剤等の通常のコンクリート組成物に配合される添加剤を適宜用いることができる。該添加剤は、1種だけ添加してもよく、2種以上を組み合わせて添加してもよい。
【0030】
(製造方法)
本発明のコンクリート組成物の製造方法は、上述の細骨材を骨材材料として用いるために、細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えるように該硬質砂岩の粒径を調整することを特徴とする。該細骨材の粒径は、任意の方法で調整することができる。例えば、ふるい分けなどによって硬質砂岩の砕砂から粒径の小さい硬質砂岩(例えば、粒径0.85mm以下の硬質砂岩)を除去した後、必要に応じて除去した硬質砂岩を、細骨材中の硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えるように(すなわち、目開き0.85mmの試験用ふるいの上に、細骨材全体の50重量%を超える量がとどまるように)加えることにより、硬質砂岩の粒径を調整してもよい。また、硬質砂岩材料から砕砂を製造する際の破砕条件を調整することにより、重量平均粒径D50が0.85mmを超える硬質砂岩からなる細骨材を直接製造してもよい。
【0031】
該細骨材には、上記硬質砂岩の重量平均粒径D50よりも小さい重量平均粒径D50を有する石灰岩をさらに混合してもよい。該石灰岩の粒径は、任意の方法で調整することができる。例えば、ふるい分けなどによって石灰岩の砕砂から粒径の大きい石灰岩を除去してもよく、石灰岩の破砕条件を調整することにより直接製造してもよい。また、該石灰岩と上記硬質砂岩とは、あらかじめ混合しておいてもよく、後述するセメント等との混練時に別々の細骨材として導入し、その際に混合してもよい。
【0032】
本発明のコンクリート組成物は、上述の細骨材、粗骨材、セメント、水及び必要により添加剤を混練することにより製造される。該混練は、ミキサーなどの公知の混練装置を用いるなど、コンクリート製造に一般的に用いられる任意の方法により行うことができる。
【0033】
以上のように、本発明のコンクリート組成物は、硬質砂岩を含む細骨材を含み、コンクリート組成物中の細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50(メディアン径)が0.85mmを超えることを特徴とするため、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみを効果的に低減することができる。
【0034】
さらに、本発明のコンクリート組成物において、細骨材が、該細骨材に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50よりも小さい重量平均粒径D50を有する石灰岩をさらに含んでいる場合には、圧縮強度や流動性などのコンクリート組成物に要求される特性を効果的に高めると共に、コンクリート組成物の乾燥収縮ひずみを効率的により高めることができる。
【0035】
また、本発明のコンクリート組成物の製造方法は、硬質砂岩を含む細骨材を用い、細骨材全体に含まれる硬質砂岩の重量平均粒径D50が0.85mmを超えるように該硬質砂岩の粒径を調整するため、乾燥収縮ひずみが効果的に低減されたコンクリート組成物を製造することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(硬質砂岩コンクリート)
以下の実施例及び比較例の硬質砂岩コンクリート組成物を製造するに際し、下記材料を用いた。
細骨材(S):硬質砂岩(大阪府茨木産)、表乾密度2.65g/cm3、絶乾密度2.61g/cm3、吸水率1.68%、D50=0.8mm
粗骨材(G):硬質砂岩(大阪府茨木産)、表乾密度2.69g/cm3、絶乾密度2.66g/cm3、吸水率0.95%、D50=12.5mm
セメント(C):普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント(株)社製)
AE減水剤:マスターポリヒード(BASFジャパン(株)社製)
【0038】
比較例1
表1に示す割合の上記細骨材、上記粗骨材、上記セメント及び水(W、水道水)に、該セメントに対し0.6重量%のAE減水剤を加えて混合して、比較例1のコンクリート組成物を得た。なお、表1では、「W/C」は、水/セメント比を意味し、「s/a」は、細骨材率(全骨材に占める細骨材の体積割合)を意味する。
【0039】
【表1】
【0040】
骨材の粒径調整
上記細骨材及び粗骨材を、JIS A 1102に従う骨材のふるい分け試験方法により、粒径別に分類した。具体的には、上記細骨材及び粗骨材を、JIS Z 8801−1に従う金属製試験用ふるい((株)飯田製作所社製)を用いて、それぞれ粒径5〜1.2mm、1.2〜0.3mm及び0.3mm以下の粒径の硬質砂岩からなる細骨材、並びに粒径15〜10mm及び10〜5mmの粒径の硬質砂岩からなる粗骨材を得た。
また、上記のように分類した細骨材及び粗骨材について、JIS Z 8801−1に従う金属製試験用ふるい((株)飯田製作所社製)を用いて、それぞれのD50を測定した。具体的には、各骨材に対して、JIS Z 8801−1の付表に列挙された目開きの試験用ふるいをそれぞれ用いて該ふるい上にとどまる骨材の重量の割合を測定し、該割合が50重量%を超える値及び50重量%を下回る値を示すデータ群から、それぞれ50重量%に最も近いデータを1つずつ選択した後、以下の式によりD50の値を推定した。
【0041】
【数1】
Ds,Dl:試験用ふるい上にとどまる骨材の割合が50重量%を超える/下回るデータにおける該試験用ふるいの目開き(mm)
rs,rl:試験用ふるい上にとどまる骨材の割合が50重量%を超える/下回るデータにおける該骨材の重量%
【0042】
実施例1
上記粒径調整により得た粒径5〜1.2mmの硬質砂岩(D50=2.0mm)からなる細骨材として用いた以外は比較例1と同様にして、実施例1のコンクリート組成物を得た。
【0043】
比較例2
上記粒径調整により得た粒径1.2〜0.3mmの硬質砂岩(D50=0.6mm)からなる細骨材として用いた以外は比較例1と同様にして、比較例2のコンクリート組成物を得た。
【0044】
比較例3
上記粒径調整により得た粒径0.3mm以下の硬質砂岩(D50=0.2mm)からなる細骨材として用い、加えたAE減水剤をセメントに対して0.7重量%とした以外は比較例1と同様にして、比較例3のコンクリート組成物を得た。
【0045】
比較例4
46 上記粒径調整により得た粒径15〜10mmの硬質砂岩(D50=12.5mm)からなる粗骨材として用いた以外は比較例1と同様にして、比較例5のコンクリート組成物を得た。
【0046】
比較例5
上記粒径調整により得た粒径10〜5mmの硬質砂岩(D50=7.5mm)からなる粗骨材として用いた以外は比較例1と同様にして、比較例6のコンクリート組成物を得た。
【0047】
乾燥収縮ひずみの評価方法
実施例1及び比較例1〜6のコンクリート組成物について、JIS A 11129−2に従う方法により乾燥材齢7日における乾燥収縮ひずみを測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示される実施例1及び比較例1によれば、細骨材の粒径を調整することにより粒径5〜1.2mmの硬質砂岩(すなわち、D50>0.85mmの硬質砂岩)からなる細骨材を用いた実施例1のコンクリート組成物では、細骨材の粒径を調整しなかった比較例1のコンクリート組成物と比較して、乾燥収縮ひずみが効果的に低減されたことが明らかになった。
さらに、表2に示される比較例1〜3によれば、粒径1.2mm未満の硬質砂岩(D50<0.85mmの硬質砂岩)からなる細骨材を用いた比較例2,3のコンクリート組成物では、実施例1のコンクリート組成物と比較して、乾燥収縮ひずみが大幅に増加している。これにより、硬質砂岩を細骨材とするコンクリート組成物の乾燥収縮ひずみは、細骨材の粒径に大きく影響を受けることも明らかになった。
また、表2に示される比較例4及び5によれば、粗骨材の粒径を調整しても、乾燥収縮ひずみはあまり影響を受けないことが明らかになった。
【0050】
(石灰岩コンクリート)
以下の実施例及び比較例の石灰岩コンクリート組成物を製造するに際し、下記材料を用いた。
細骨材(S):石灰岩(秋芳産)、表乾密度2.60g/cm3、絶乾密度2.54g/cm3、吸水率2.40%、D50=0.8mm
粗骨材(G):石灰岩(秋芳産)、表乾密度2.69g/cm3、絶乾密度2.67g/cm3、吸水率0.57%、D50=12.5mm、
【0051】
参考例1
細骨材及び粗骨材として上記の石灰岩を用いた以外は比較例1と同様にして、参考例1のコンクリート組成物を得た。
【0052】
骨材の粒径調整
上述の硬質砂岩コンクリート組成物の製造と同様の方法により、上記細骨材の粒径を調整し、粒径5〜1.2mm、1.2〜0.3mm及び0.3mm以下の粒径の石灰岩からなる細骨材を得た後、それぞれのD50を測定した。
【0053】
参考例2
上記粒径調整により得た粒径5〜1.2mmの石灰岩(D50=2.0mm)からなる細骨材として用いた以外は参考例1と同様にして、参考例2のコンクリート組成物を得た。
【0054】
参考例3
上記粒径調整により得た粒径1.2〜0.3mmの石灰岩(D50=0.6mm)からなる細骨材として用いた以外は参考例1と同様にして、参考例3のコンクリート組成物を得た。
【0055】
参考例4
上記粒径調整により得た粒径0.3mm以下の石灰岩(D50=0.2mm)からなる細骨材として用い、加えたAE減水剤をセメントに対して0.5重量%とした以外は参考例1と同様にして、参考例4のコンクリート組成物を得た。
【0056】
乾燥収縮ひずみの評価方法
参考例1〜7のコンクリート組成物について、上述の硬質砂岩コンクリート組成物と同様の方法により、乾燥材齢7日における乾燥収縮ひずみを測定した。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
表3に示される参考例1〜4によれば、骨材を石灰岩とするコンクリート組成物では、細骨材の粒径を調整しても、乾燥収縮ひずみはあまり影響を受けないことが明らかになった。