(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189643(P2015-189643A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】製鋼スラグの選別方法、製鋼スラグおよび製鋼スラグの選別装置
(51)【国際特許分類】
C04B 5/00 20060101AFI20151006BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20151006BHJP
B07B 7/00 20060101ALI20151006BHJP
B07B 7/01 20060101ALI20151006BHJP
B07B 7/08 20060101ALI20151006BHJP
B07B 9/00 20060101ALI20151006BHJP
B03B 4/00 20060101ALI20151006BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20151006BHJP
B03B 7/00 20060101ALI20151006BHJP
F27D 15/00 20060101ALI20151006BHJP
C22B 7/04 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
C04B5/00 CZAB
B09B5/00 J
B07B7/00 Z
B07B7/01
B07B7/08
B07B9/00 A
B03B4/00
B03B5/28 Z
B03B7/00
F27D15/00 C
C22B7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-69128(P2014-69128)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】森川 卓子
【テーマコード(参考)】
4D004
4D021
4D071
4G112
4K001
4K063
【Fターム(参考)】
4D004AA43
4D004BA02
4D004CA08
4D004CA10
4D004DA01
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA20
4D021FA09
4D021FA12
4D021FA14
4D021FA22
4D021GB03
4D021HA10
4D071AA43
4D071AA81
4D071CA01
4D071CA03
4D071DA15
4G112JD02
4G112JE06
4K001BA12
4K001CA03
4K063HA38
(57)【要約】
【課題】簡便な方法により、クロムの含有量が小さい製鋼スラグを、製鋼スラグの中から選別する製鋼スラグの選別方法を提供する。
【解決手段】本発明の製鋼スラグの選別方法は、粉砕された製鋼スラグからクロムの含有量の小さな製鋼スラグを製鋼スラグの見かけ密度に基づいて選別する見かけ密度選別工程を含む。また、本発明の製鋼スラグの選別方法は、製鋼スラグの見かけ密度およびクロムの含有量を測定して、製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係を調べる見かけ密度−クロム含有量関係調査工程をさらに含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕された製鋼スラグからクロムの含有量の小さな製鋼スラグを該製鋼スラグの見かけ密度に基づいて選別する見かけ密度選別工程を含む製鋼スラグの選別方法。
【請求項2】
前記見かけ密度選別工程は、風力選別法、エアテーブル選別法、流動層式乾式比重選別法、重液選別法、ジグ選別法、テーブル選別法およびレオ選別法からなる群から選択される少なくとも1種の選別法により前記クロムの含有量の小さな製鋼スラグを選別する請求項1に記載の製鋼スラグの選別方法。
【請求項3】
前記見かけ密度選別工程は、風力選別法、エアテーブル選別法および流動層式乾式比重選別法からなる群から選択される少なくとも1種の選別法により前記クロムの含有量の小さな製鋼スラグを選別する請求項1に記載の製鋼スラグの選別方法。
【請求項4】
前記見かけ密度選別工程において前記製鋼スラグの選別の基準となる見かけ密度は、3.0g/cm3以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製鋼スラグの選別方法。
【請求項5】
前記製鋼スラグの見かけ密度およびクロムの含有量を測定して、前記製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係を調べる見かけ密度−クロム含有量関係調査工程をさらに含み、
前記見かけ密度選別工程は、前記製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係に基づいて、前記製鋼スラグの選別の基準となる見かけ密度を決定し、該基準となる見かけ密度に基づいて選別する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製鋼スラグの選別方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製鋼スラグの選別方法により選別された製鋼スラグ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製鋼スラグの選別方法により製鋼スラグを選別する、製鋼スラグの選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムの含有量が小さい製鋼スラグを、製鋼スラグの中から選別する製鋼スラグの選別方法、その選別方法により選別された製鋼スラグおよびその選別方法により製鋼スラグを選別する製鋼スラグの選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉および電気炉で鋼を製造するとき、溶銑およびスクラップなどの原料に消石灰などを加え酸素を吹き込み、原料の不純物を酸化させて消石灰と結合させ、製鋼スラグを生成させる。これにより、原料の不純物は製鋼スラグの中に取り込まれるので、溶解している鋼の中の不純物は除去される。このように生成した製鋼スラグは、粉砕された後、セメント原料、土木材、道路用路盤材、地盤改良材、コンクリート用骨材およびアスファルト混合物用骨材などの材料として使用される。
【0003】
製鋼スラグの一部に、クロムが含まれている場合がある。クロムが多く含まれている製鋼スラグを、上記材料に使用すると、製鋼スラグから六価クロム化合物が溶出する可能性があるので、クロムが一部に多く含まれている製鋼スラグの用途は限られていた。そこで、このような問題を解決するために、スラグの中からクロムの含有量が大きい部分を除去する方法が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0004】
特許文献1のクロム含有鋼精錬スラグの再利用方法では、クロム含有鋼の酸化精錬で発生する、冷却後の鉱物相のダイカルシウム・シリケートによって冷却過程で粉化するスラグを冷却し、冷却後の粒径10μm未満のスラグから磁着物を除去することにより、スラグからクロムの含有量が大きい部分を除去している。一方、特許文献2のセメント原料用スラグの製造方法では、スラグに還元剤を添加し、1000℃以上の温度で溶融し、撹拌混合した後、冷却し、冷却後のスラグから磁着物を取り除くことにより、スラグからクロムの含有量が大きい部分を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−138209号公報
【特許文献2】特開2010−105826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スラグは、鉄鋼業で生じる副生成物であり、セメント原料などの材料としてスラグを用いることにより材料にかかるコストを低減することができる。しかし、特許文献1に記載の方法では、10μm以下の粒径になるようにスラグを非常に細かく粉砕しなければならず、その処理にコストがかかる。一方、特許文献2に記載の方法では、スラグを1000℃以上に加熱しなければならず、その処理にもコストがかかる。このように、スラグからクロムの含有量が大きい部分を除去するのに要するコストが高くなると、安価なスラグを使用することの価値が低減する。
【0007】
そこで、本発明は、簡便な方法により、クロムの含有量が小さい製鋼スラグを、製鋼スラグの中から選別する製鋼スラグの選別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、製鋼スラグの見かけ密度が所定値よりも大きくなるとクロムの含有量が大きな製鋼スラグが存在しなくなることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]粉砕された製鋼スラグからクロムの含有量の小さな製鋼スラグを製鋼スラグの見かけ密度に基づいて選別する見かけ密度選別工程を含む製鋼スラグの選別方法。
[2]見かけ密度選別工程は、風力選別法、エアテーブル選別法、流動層式乾式比重選別法、重液選別法、ジグ選別法、テーブル選別法およびレオ選別法からなる群から選択される少なくとも1種の選別法によりクロムの含有量の小さな製鋼スラグを選別する上記[1]に記載の製鋼スラグの選別方法。
[3]見かけ密度選別工程は、風力選別法、エアテーブル選別法および流動層式乾式比重選別法からなる群から選択される少なくとも1種の選別法によりクロムの含有量の小さな製鋼スラグを選別する上記[1]に記載の製鋼スラグの選別方法。
[4]見かけ密度選別工程において製鋼スラグの選別の基準となる見かけ密度は、3.0g/cm
3以上である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製鋼スラグの選別方法。
[5]製鋼スラグの見かけ密度およびクロムの含有量を測定して、製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係を調べる見かけ密度−クロム含有量関係調査工程をさらに含み、見かけ密度選別工程は、製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係に基づいて、製鋼スラグの選別の基準となる見かけ密度を決定し、基準となる見かけ密度に基づいて選別する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製鋼スラグの選別方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製鋼スラグの選別方法により選別された製鋼スラグ。
[7]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製鋼スラグの選別方法により製鋼スラグを選別する、製鋼スラグの選別装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便な方法により、クロムの含有量が小さい製鋼スラグを、製鋼スラグの中から選別する製鋼スラグの選別方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例における製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製鋼スラグの選別方法は、粉砕された製鋼スラグを、製鋼スラグの見かけ密度に基づいて選別することにより、クロムの含有量が小さい製鋼スラグを、製鋼スラグの中から選別することができる。本発明の製鋼スラグの選別方法は見かけ密度選別工程を含む。また、本発明の製鋼スラグの選別方法は見かけ密度−クロム含有量関係調査工程をさらに含んでもよい。さらに、見かけ密度選別工程の前に、製鋼スラグの粒径に基づいて製鋼スラグを選別する粒径選別工程をさらに含んでもよい。以下、本発明の製鋼スラグの選別方法を詳細に説明する。
【0012】
[見かけ密度選別工程]
本発明の製鋼スラグの選別方法における見かけ密度選別工程では、粉砕された製鋼スラグからクロムの含有量の小さな製鋼スラグを製鋼スラグの見かけ密度に基づいて選別する。
【0013】
(製鋼スラグ)
上述したように、転炉および電気炉で鋼を製造するとき、溶銑およびスクラップなどの原料に消石灰などを加え酸素を吹き込み、原料の不純物を酸化させて消石灰と結合させることにより、製鋼スラグは生成する。製鋼スラグは、CaO、SiO
2、Fe
2O
3、MgOおよびAl
2O
3を主成分として含み、クロムを微量成分として含む。
【0014】
(粉砕)
製鋼スラグは、元々、岩石状の固形物であるが、通常、破砕され、ふるい分けされた後、一定の粒度分布を持つ材料として、販売されている。すなわち、製鋼スラグは、通常、粉砕された製鋼スラグの状態で販売されている。
【0015】
(見かけ密度)
見かけ密度は、いわゆる、製鋼スラグの質量を、製鋼スラグの実質部の容積と製鋼スラグの閉気孔の容積との合計の容積で割り算して算出した密度である。製鋼スラグの凝固過程で、製鋼スラグの内部にガスが残り、製鋼スラグの内部に空隙が生ずるため、製鋼スラグには閉気孔が多く存在する。製鋼スラグの見かけ密度は、製鋼スラグの組成により変わるが、一般的には、2.0〜5.5g/cm
3である。
【0016】
(選別方法)
見かけ密度選別工程における選別方法は、製鋼スラグの見かけ密度に基づいて製鋼スラグを選別する選別方法であれば、とくに限定されない。見かけ密度選別工程における選別方法は、乾式の選別方法であってもよいし、湿式の選別方法であってもよい。しかし、選別にかかるコストの観点および選別後スラグの利用しやすさといった観点から、見かけ密度選別工程における選別方法は、乾式の選別方法が好ましい。
【0017】
乾式の選別方法には、たとえば、風力選別法、エアテーブル選別法および流動層式乾式比重選別法などが挙げられる。
【0018】
風力選別法には、重力式、慣性式および遠心式の3種の選別法があり、いずれも流体中における沈降速度の差によって選別する点で同一である。重力式選別法は、重力の場の沈降速度の差を利用して見かけ密度の高い製鋼スラグと見かけ密度の低い整合スラグとを分別する方法である。慣性式風力選別法は、製鋼スラグの運動の慣性を利用して見かけ密度の高い製鋼スラグと見かけ密度の低い整合スラグとを分別する方法である。遠心式風力選別法は、遠心力場の沈降速度の差を利用して見かけ密度の高い製鋼スラグと見かけ密度の低い整合スラグとを分別する方法である。
【0019】
エアテーブル選別法は、長方形または平行四辺形のデッキの水平運動とデッキの表面から放出される空気とによって、見かけ密度の異なる製鋼スラグを選別する方法である。デッキに投入された製鋼スラグはデッキの水平運動によって、大きな見かけ密度の製鋼スラグを回収するデッキの端に運搬される力を受ける。一方、それと同時にデッキの表面からの空気流によって製鋼スラグはデッキの表面から浮遊し、重力の影響で傾斜したデッキ上を、小さな見かけ密度の製鋼スラグを回収するデッキの端へ滑落させられる力を受ける。見かけ密度の小さな製鋼スラグは空気流の影響が強く、デッキ上を滑落し、回収される。一方、見かけ密度の大きな製鋼スラグは空気流の影響をそれほど受けず、デッキの水平運動によって、大きな見かけ密度の製鋼スラグを回収するデッキの端に運搬される。
【0020】
流動層式乾式比重選別法は、製鋼スラグに空気を流入させて、製鋼スラグの流動層を形成し、大きな見かけ密度の製鋼スラグの流動層と小さな見かけ密度の製鋼スラグの流動層とを形成することにより、製鋼スラグを選別する方法である。
【0021】
湿式の選別方法には、たとえば、重液選別法、ジグ選別法、テーブル選別法およびレオ選別法などが挙げられる。重液選別法とは、ある比重液の中に製鋼スラグを投入し、その比重液の密度を境として、その比重液の密度よりも大きな見かけ密度の製鋼スラグとその比重液の密度よりも小さな見かけ密度の製鋼スラグとを分離する方法である。ジグ選別法とは、上下に振動する水流を流した水槽に、製鋼スラグを投入すると、大きな見かけ密度の製鋼スラグの層と小さな見かけ密度の製鋼スラグの層とができることを利用して、製鋼スラグを選別する方法である。テーブル選別法とは、長方形または平行四辺形のデッキの水平運動と水流とによって、見かけ密度の異なる製鋼スラグを選別する方法である。レオ選別法とは、水とともに樋の中を流れる間に製鋼スラグの見かけ密度の差によって分離する方法であり、見かけ密度の異なる製鋼スラグの運動の差が大きくなるように樋の傾斜および水流が調節される。
【0022】
見かけ密度選別工程は、風力選別法、エアテーブル選別法、流動層式乾式比重選別法、重液選別法、ジグ選別法、テーブル選別法およびレオ選別法からなる群から選択される少なくとも1種の選別法により製鋼スラグを選別することが好ましい。また、上述したように、見かけ密度選別工程では、乾式の選別方法により製鋼スラグを選別することが好ましいので、見かけ密度選別工程は、風力選別法、エアテーブル選別法および流動層式乾式比重選別法からなる群から選択される少なくとも1種の選別法により製鋼スラグを選別することがより好ましい。さらに、もっとも精度よく、見かけ比重に基づいて製鋼スラグを選別できることから、これらの選別方法の中でもっとも好ましい選別方法は、流動層式乾式比重選別法である。
【0023】
[見かけ密度−クロム含有量関係調査工程]
見かけ密度−クロム含有量関係調査工程は、製鋼スラグの見かけ密度およびクロムの含有量を測定して、製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係を調べる。製鋼スラグの見かけ密度の測定方法は、たとえば、製鋼スラグの見かけ容積(製鋼スラグの実質部の容積と閉気孔の容積との合計の容積)と質量とを測定し、製鋼スラグの質量を見かけ容積で割り算することにより算出することができる。製鋼スラグの見かけ容積は、たとえば、メスシリンダーの中に入っている媒体の中に製鋼スラグを入れ、製鋼スラグを入れた後の媒体の見かけ上の容積から製鋼スラグを入れる前の媒体の容積を引き算することにより算出できる。また、製鋼スラグの見かけ密度を、アルキメデス法およびピクノメーター法などの方法で測定してもよい。製鋼スラグ中のクロムの含有量は、たとえば、原子吸光分光分析法、ICP発光分光分析法、蛍光X線分析法および質量分析法などで測定することができる。
【0024】
そして、見かけ密度選別工程は、上記製鋼スラグの見かけ密度とクロム含有量との関係に基づいて、製鋼スラグの選別の基準となる見かけ密度を決定し、その基準となる見かけ密度に基づいて選別するようにしてもよい。たとえば、1.0質量%以下のクロムの含有量の製鋼スラグが必要である場合、上記関係で1.0質量%以下のクロムの含有量の製鋼スラグしか存在しない見かけ密度が、製鋼スラグを選別する基準となる見かけ密度となる。すなわち、1.0質量%以下のクロムの含有量の製鋼スラグが必要である場合、製鋼スラグを選別する基準となる見かけ密度は、たとえば、3.0g/cm
3以上である。また、0.5質量%以下のクロムの含有量の製鋼スラグが必要である場合、製鋼スラグを選別する基準となる見かけ密度は、たとえば3.5g/cm
3以上であり、0.3質量%以下のクロムの含有量の製鋼スラグが必要である場合、製鋼スラグを選別する基準となる見かけ密度は、たとえば4.0g/cm
3以上である。
【0025】
[粒径選別工程]
本発明の製鋼スラグの処理方法における粒径選別工程では、上記見かけ密度選別工程の前に、製鋼スラグの粒径に基づいて製鋼スラグを選別してもよい。
【0026】
(選別方法)
粒径選別工程における選別方法は、製鋼スラグの粒径に基づいて製鋼スラグを選別する選別方法であれば、とくに限定されない。見かけ密度の異なる製鋼スラグをその粒径に基づいて選別するので、粒径選別工程における好ましい選別方法は、ふるい分け法である。ふるい分け法は、一定の大きさの目開きを有するふるいを使用してそれを通過する粒子と通過しない粒子とに分離する方法である。粒径選別工程によって、細かい製鋼スラグを除去することにより、見かけ密度選別工程での選別に対する製鋼スラグの粒径の相違による影響を低減させることができ、見かけ密度選別工程による選別の精度を高めることができる。
【0027】
粒径選別工程で選別して除去する製鋼スラグの粒径は、たとえば、1mm以下であり、好ましくは0.5mm以下である。
【0028】
[製鋼スラグの選別装置]
本発明の製鋼スラグの選別装置は、上述の本発明の製鋼スラグの選別方法により製鋼スラグを選別する選別装置であれば、とくに限定されない。たとえば、そのような選別装置には、風力選別法、エアテーブル選別法、流動層式乾式比重選別法、重液選別法、ジグ選別法、テーブル選別法およびレオ選別法からなる群から選択される少なくとも1種の選別法によりクロムの含有量の小さな製鋼スラグを選別する、製鋼スラグの選別装置を挙げることができる。また、本発明の製鋼スラグの選別装置は、製鋼スラグの見かけ密度に基づいて製鋼スラグを選別する前に、ふるいなどを使用して、製鋼スラグの粒径に基づいて製鋼スラグを選別するようにしてもよい。
【0029】
[変形例]
上述したように、クロムの含有量が高い製鋼スラグの見かけ密度は低い。見かけ密度が低い製鋼スラグは細かい空隙を多く含む。細かい空隙を多く含む製鋼スラグは容易に圧壊する。そこで、製鋼スラグに所定の圧力を加え、細かく圧壊した製鋼スラグを除去して、あまり圧壊しなかった製鋼スラグを残すことにより、上述の見かけ密度選別工程の代替としてクロムの含有量が低い製鋼スラグを選別することもできる。
【0030】
たとえば、塊状の製鋼スラグをふるい分けして、製鋼スラグの粒度をある程度揃えた後、製鋼スラグを圧壊手段により粗粉砕する。その後、圧壊前の製鋼スラグの平均径に対して1/3〜1/4の径の目開きを有するふるいを通して、細かく圧壊した製鋼スラグを除去する。そして、ふるいに残っている製鋼スラグを所定の用途に使用する。スラグを圧壊させる圧壊手段には、たとえばロールミルがある。このように製鋼スラグを圧壊することにより、製鋼スラグからクロムの含有量が小さい製鋼スラグを容易に選別することができる。
【0031】
また、細かく圧壊した製鋼スラグを見かけ密度に基づいて選別して、細かく圧壊した製鋼スラグの中からクロムの含有量の小さな製鋼スラグを選別し、できるだけ多くの製鋼スラグを利用できるようにしてもよい。また、あまり圧壊しなかった製鋼スラグを見かけ密度に基づいて選別して、あまり圧壊しなかった製鋼スラグの中からクロムの含有量の比較的大きな製鋼スラグを選別し、さらにクロムの含有量が小さな製鋼スラグを選別できるようにしてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
【0033】
[評価方法]
製鋼スラグを以下のように評価した。
(見かけ密度)
製鋼スラグの見かけ密度を以下のようにして測定した。
(1)後述の見かけ密度の測定が容易であることから、粉砕された製鋼スラグの中から5〜20mmの粒径の製鋼スラグを任意に選択した。
(2)選択した製鋼スラグの質量を測定した(M(g))。
(3)粉末(材質:SiC、平均粒径:11.5μm)をメスシリンダーに入れ、手動で粉末をタッピングした後、メスシリンダーの目盛りから粉末の容積を測定した(V1(cm
3))。
(4)メスシリンダーに入っている上記粉末の中に製鋼スラグを入れ、粉末をタッピングした後、メスシリンダーの目盛りから粉末の見かけ容積を測定した(V2(cm
3))。タッピングは、タッピングによる粉末の体積減少が認められなくなるまで行った。なお、JIS−2512の金属粉−タップ密度測定方法で使用されるタッピング装置を用いてタッピングしてもよい。
(5)次式から、製鋼スラグのみかけ密度を算出した。
製鋼スラグの見かけ密度(g/cm
3)=M/(V2−V1)
【0034】
なお、製鋼スラグの見かけ密度の測定に粉体を使用したのは、製鋼スラグは、見かけ密度を測定した後、クロムの含有量の測定に使用されるため、見かけ密度を測定した後も乾燥していることが好ましいからである。
【0035】
(クロムの含有量)
製鋼スラグ中のクロムの含有量は、スラグを粉砕して酸溶解処理した後、ICP発光分光分析装置(SPECTRO社製、型番:CIROS−120)を使用して測定した。
【0036】
[評価結果]
評価結果を
図1に示す。
図1は、実施例における製鋼スラグの見かけ密度とクロムの含有量との間の関係を示す図である。この結果より、見かけ密度が3.0g/cm
3以上の製鋼スラグには、クロムの含有量が小さく、見かけ密度が3.5g/cm
3以上の製鋼スラグはさらにクロムの含有量が小さく、見かけ密度が4.0g/cm
3以上の製鋼スラグは、とくにクロムの含有量が小さいことがわかった。これより、製鋼スラグの中から見かけ密度が、好ましくは3.0g/cm
3以上、より好ましくは3.5g/cm
3以上、さらに好ましくは4.0g/cm
3以上の製鋼スラグを選別するという簡便な方法により、クロムの含有量が小さい製鋼スラグを、製鋼スラグの中から選別できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の製鋼スラグの選別方法は、セメント原料、土木材、道路用路盤材、地盤改良材、コンクリート用骨材およびアスファルト混合物用骨材などの材料として使用される製鋼スラグに有効に適用することができる。