【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の測定結果は以下に示す方法により試料調製及び測定を行ったものである。
【0036】
1)分子量及び分子量分布
分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
【0037】
2)構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、
13C−NMR及び
1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d
1を使用した。NMR測定溶媒であるテトラクロロエタン−d
2の共鳴線を内部標準として使用した。
【0038】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
硬化性樹脂組成物溶液をガラス基板に乾燥後の厚さが、20μmになるように均一に塗布した後、ホットプレートを用いて、90℃で30分間加熱し、乾燥させた。得られたガラス基板上の樹脂膜はガラス基板と共に、TMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に、220℃で20分間加熱処理することにより、残存する溶媒を除去した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により軟化温度を求めた。また、線膨張係数の変化する変曲点よりTgを求めた。さらに、平均線膨張係数(CTE)は、0〜40℃における試験片の寸法変化より算出した。
加熱プレス成形により得られた硬化物フィルムのTgの測定は動的粘弾性測定装置を使用し、昇温速度2℃/minで測定を行い、損失弾性率のピークより決定した。
【0039】
4)引張り強度及び伸び率
硬化物フィルムの引張り強度及び伸び率は引張り試験装置を用いて測定を行った。伸び率は引張り試験のチャートから測定した。
5)誘電率及び誘電正接
JIS C2565規格に準拠し、50℃の真空乾燥器で5時間、真空下、絶乾させ、デシケーター中に、恒量を取った後、株式会社エーイーティー製、空洞共振器法誘電率測定装置を使用して、18GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。材料の耐熱酸化劣化性を評価するため、硬化物フィルムを200℃のエアオーブン中に、1時間放置後の硬化物フィルムの18GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
6)成形性
黒化処理を行った銅張り積層板の上に、硬化性樹脂組成物の未硬化フィルムを積層し、真空ラミネーターを用いて、温度:110℃、プレス圧:0.1MPaで真空ラミネートを行い、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態により評価を行った。評価は黒化処理銅箔とフィルムの接着状態が良好であったものを「○」、黒化処理銅箔とフィルムとが容易に剥離することができる接着状態のものを「×」として評価した。
【0040】
実施例1
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた500ml、3口セパラブルフラスコに、2,6-ジメチルフェノール122.16g(東京化成工業製、1.0モル)、p−キシリレングリコールジメチルエーテル166.22g(東京化成工業製、1.0モル)、及びp−トルエンスルホン酸1.2gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成するメタノールは系外に除いた。その後、水洗によりp−トルエンスルホン酸を除去した後、減圧下、200℃に昇温し、未反応の2,6-ジメチルフェノールを除去し、2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A)137.1gを得た。得られた2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂の軟化点は91.5℃、150℃における溶融粘度は0.43Pa・sであった。また、水酸基当量は194であった。
また、得られた樹脂について、そのGPC、赤外吸収スペクトルおよび
1H−NMRを測定した。赤外吸収スペクトルの結果を
図1に示す。GPCの測定結果から数平均分子量(Mn)が1153、重量平均分子量(Mw)が1835であって分子量分布(Mw/Mn)が1.59であり、また、この2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A)における一般式(1)の分子量分布は、n=0が23.2%、n=1が9.2%、n=2が11.7%、n=3が15.7%、n=4が19.2%、およびn≧=5が21% であった。
更に、
1H−NMRの測定はプロトンノンデカップリング法により行った。この
1H−NMRの測定結果からこの2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A)にはメチロール基存在しないことが確認された。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0041】
参考例1
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた1L、3口セパラブルフラスコに、o-クレゾール214.2g(東京化成工業製)、p−キシリレングリコール117.4g、及びp−トルエンスルホン酸1.5gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸は系外に除いた。その後、水洗によりp−トルエンスルホン酸を除去した後、減圧下、200℃に昇温し、未反応のo-クレゾールを除去し、o-クレゾールアラルキル樹脂(B)216.4gを得た。得られたo-クレゾールアラルキル樹脂(B)の軟化点は66.8℃、150℃における溶融粘度は0.035Pa・sであった。また、水酸基当量は185であった。
GPCの測定結果から数平均分子量(Mn)が872、重量平均分子量(Mw)が1284であって分子量分布(Mw/Mn)が1.46であり、また、この実施例2で得られた熱可塑性o-クレゾールアラルキル樹脂(B)における一般式(1)の分子量分布は、n=0が10.8%、n=1が6.5%、n=2が11.1%、n=3が16.7%、n=4が24.2%、およびn≧5が30.4%であった。
更に、
1H-NMRの測定はプロトンノンデカップリング法により行った。この
1H−NMRの測定結果からこの合成例2で得られた熱可塑性熱可塑性o-クレゾールアラルキル樹脂(B)にはメチロール基存在しないことが確認された。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0042】
上記フェノールアラルキル樹脂(A)、(B)に加え、ビフェニレン基を有するフェノールアラルキル樹脂(C)(明和化成(株)製、商品名:MEH7851)を用意した。
【0043】
実施例2
温度調節器、攪拌装置、冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた4つ口フラスコに実施例1で合成した2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A);フェノール性水酸基のOH当量194g/eq)87.3部(0.45当量)、CMS−AM(セイミケミカル社製クロロメチルスチレン)72.1部(0.47当量)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド4.3部、2,4−ジニトロフェノール0.07部、メチルエチルケトン115部を仕込み攪拌溶解し、液温を75℃にし、50%水酸化ナトリウム水溶液36部(0.9当量)を20分間で滴下し、更に75℃で4時間攪拌を続けた。次に10%塩酸水溶液でフラスコ内を中和した後、トルエン180部を追加し、有機層を675mlの水で3回洗浄した。
【0044】
得られた有機相を蒸留することにより、有機相が225部になるまで濃縮し、メタノール/水=75/25(vol/vol)450部を加えて生成物を再沈殿した。同じ条件の再沈殿をさらに2回繰り返した。得られた樹脂の沈殿を濾過・乾燥し、ビニルベンジル化2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(VBE-A)を105.5g得た。
【0045】
生成物の確認をGPC、赤外線スペクトル(IR)、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していることを確認した。また、IRよりフェノール性水酸基が消失していることを確認した。
また、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線、5.25ppm、5.77ppm及び6.73ppm付近にビニル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、(VBE-A)が得られていることを確認した。ビニルベンジルエーテル基含有量は99.5%、フェノール性水酸基は検出することはできなかった。さらに、
13C−NMRを用いて、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピークを観察したところ、ピークの存在は確認できなかった。一方、目的の反応生成物に由来する112〜115ppmにビニル基のピークが観察され、かつ、ビニル基の面積値とベンジルエーテル基に由来するメチレン基のピークの面積値及び芳香族領域のピークの面積値とは、
1H−NMRの結果と良い一致を示した。
また、元素分析により総塩素含有量を測定したところ165ppmであった。GPC測定を行ったところ、クロロメチルスチレンに由来するピークは、観察されなかった。また、示差走査熱量計(DSC)により、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で熱相転移挙動を測定したところ、結晶に由来する融解ピークは観察されなかった。また、熱天秤(TGA)を使用し、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で、熱分解挙動を測定したところ、接線法による熱分解開始温度:414.7℃であり、600℃における炭化物生成量は、25wt%であった。これら測定により得られた結果を表2に示した。
【0046】
参考例2
温度調節器、攪拌装置、冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた4つ口フラスコに参考例1で合成したo-クレゾールアラルキル樹脂(B);フェノール性水酸基のOH当量185g/eq)92.5部(0.5当量)、CMS−AM(セイミケミカル社製クロロメチルスチレン)80.1部(0.525当量)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド4.8部、2,4−ジニトロフェノール0.08部、メチルエチルケトン128部を仕込み攪拌溶解し、液温を75℃にし、50%水酸化ナトリウム水溶液22.4部(1.0当量)を20分間で滴下し、更に75℃で4時間攪拌を続けた。次に10%塩酸水溶液でフラスコ内を中和した後、トルエン200部を追加し、有機層を750mlの水で3回洗浄した。
【0047】
得られた有機相を蒸留することにより、有機相が250部になるまで濃縮し、メタノール/水=75/25(vol/vol)500部を加えて生成物を再沈殿した。同じ条件の再沈殿をさらに2回繰り返した。得られた樹脂の沈殿を濾過・乾燥し、o-クレゾールアラルキル樹脂(B)とビニルベンジルクロライドとの反応生成物であるビニルベンジルエーテル樹脂としてのビニルベンジル化o-クレゾールアラルキル樹脂(VBE−B)を85.6g得た
【0048】
生成物の確認をGPC、赤外線スペクトル(IR)、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線、5.25ppm、5.77ppm及び6.73ppm付近にビニル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、(VBE-B)が得られていることを確認した。ビニルベンジルエーテル基含有量は98.1%、フェノール性水酸基は検出することはできなかった。また、元素分析により総塩素含有量を測定したところ175ppmであった。さらに、
13C−NMRを用いて、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピークを観察したところ、ピークの存在は確認できなかった。GPC測定を行ったところ、クロロメチルスチレンに由来するピークは、観察されなかった。一方、目的の反応生成物に由来する112〜115ppmにビニル基のピークが観察され、かつ、ビニル基の面積値とベンジルエーテル基に由来するメチレン基のピークの面積値及び芳香族領域のピークの面積値とは、
1H−NMRの結果と良い一致を示した。
また、示差走査熱量計(DSC)により、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で熱相転移挙動を測定したところ、結晶に由来する融解ピークは観察されなかった。また、熱天秤(TGA)を使用し、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で、熱分解挙動を測定したところ、接線法による熱分解開始温度:406.4℃であり、600℃における炭化物生成量は、29.9wt%であった。これら測定により得られた結果を表2に示した
【0049】
比較例1
温度調節器、攪拌装置、冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた4つ口フラスコに明和和化成(製)のフェノールアラルキル樹脂(C);フェノール性水酸基のOH当量208g/eq)135.2部(0.65当量)、CMS−AM104.15部(0.682当量)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド6.25部、2,4−ジニトロフェノール0.1部、メチルイソブチルケトン75部を仕込み攪拌溶解し、液温を105℃にし、50%水酸化ナトリウム水溶液52部(1.0当量)を20分間で滴下し、更に105℃で4時間攪拌を続けた。次に10%塩酸水溶液でフラスコ内を中和した後、トルエン235部を追加し、有機層を975mlの水で3回洗浄した。
【0050】
得られた有機相を蒸留することにより、有機相が145部になるまで濃縮し、メタノール/水=75/25(vol/vol)380部を加えて生成物を再沈殿した。同じ条件の再沈殿をさらに2回繰り返した。得られた樹脂の沈殿を濾過・乾燥し、樹脂(C)とビニルベンジルクロライドとの反応生成物であるポリ(ビニルベンジル)エーテル化合物としてのビニルベンジル化フェノールアラルキル樹脂(VBE−C)を168.34g得た。
【0051】
生成物の確認をGPC、赤外線スペクトル(IR)、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線、5.25ppm、5.77ppm及び6.73ppm付近にビニル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、(VBE-C)が得られていることを確認した。ビニルベンジルエーテル基含有量は97.3%、フェノール性水酸基は検出することはできなかった。また、元素分析により総塩素含有量を測定したところ200ppmであった。一方、
13C−NMR測定に於いて、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピーク面積が、112〜115ppmのビニル基のピーク面積と合計した総ピーク面積に対する比率を求めたところ、12.3%であった。GPC測定を行ったところ、クロロメチルスチレンに由来するピークは、観察されなかった。また、示差走査熱量計(DSC)により、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で熱相転移挙動を測定したところ、結晶に由来する融解ピークは観察されなかった。また、熱天秤(TGA)を使用し、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で、熱分解挙動を測定したところ、接線法による熱分解開始温度:415.3℃であり、600℃における炭化物生成量は、35.9wt%であった。これら測定により得られた結果を表2に示した。
【0052】
実施例3
実施例2で得られたVBE―A 70gと、重合開始剤としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルP)0.7gをトルエン30gに溶解し硬化性樹脂組成物(ワニスA)を得た。
【0053】
調製したワニスAを金型上に滴下し、80℃で溶媒を減圧下、脱揮除去し、乾燥後、金型を組上げた後、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた厚さ:0.2mmの硬化物シートについて、18.0GHzの誘電率と誘電正接を始めとする諸特性を測定した。また、200℃の空気雰囲気下のオーブン中に1hr放置した後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。これら測定により得られた結果を表3に示した。
【0054】
参考例3
参考例2で得られたVBE―B 70gと、重合開始剤としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルP)0.7gをトルエン30gに溶解し硬化性樹脂組成物(ワニスB)を得た。
【0055】
調製したワニスBを金型上に滴下し、80℃で溶媒を減圧下、脱揮除去し、乾燥後、金型を組上げた後、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた厚さ:0.2mmの硬化物シートについて、18.0GHzの誘電率と誘電正接を始めとする諸特性を測定した。また、200℃の空気雰囲気下のオーブン中に1hr放置した後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。これら測定により得られた結果を表3に示した。
【0056】
比較例2
比較例1で得られたVBE―C 70gと、重合開始剤としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルP)0.7gをトルエン30gに溶解し硬化性樹脂組成物(ワニスC)を得た。
【0057】
調製したワニスCを金型上に滴下し、80℃で溶媒を減圧下、脱揮除去し、乾燥後、金型を組上げた後、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた厚さ:0.2mmの硬化物シートについて、18.0GHzの誘電率と誘電正接を始めとする諸特性を測定した。また、200℃の空気雰囲気下のオーブン中に1hr放置した後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。これら測定により得られた結果を表3に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】