【課題】厳しい熱履歴後も高度の誘電特性(低誘電率・低誘電正接)を有し、かつ高いガラス転移温度と難燃性、良好な成形性、低ハロゲン含有率、高い熱解分解温度を有する硬化物を与えるビニルベンジルエーテル樹脂、及び硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】2,6-キシレノールのようなo-位置換フェノールアラルキル樹脂と、ビニル芳香族ハロメチル化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させて、フェノール性OH基の60〜100モル%をビニルベンジルエーテル化して得られ、
式(1)で表されるフェノールアラルキル樹脂とビニル芳香族ハロメチル化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で、溶解度パラメーターの値が8.0〜15.0の溶媒中で、30〜100℃の温度で反応させることを特徴とする請求項1に記載のビニルベンジルエーテル樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を更に説明する。
本発明のポリ(ビニルベンジル)エーテル化合物は上記式(2)で表され、上記式(1)で表されるフェノールアラルキル樹脂と、ビニル芳香族ハロメチル化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させて得られる。式(1)と式(2)において、共通する記号は同じ意味を有する。
【0019】
式(1)で表されるフェノールアラルキル樹脂の製法は特に限定されるものではないが、好ましくは、o-位に置換基を有するフェノール類と、このフェノール類に対して、0.2〜2.0モルの式(4)で表される架橋剤を反応させることにより得ることができる。
【0020】
【化2】
(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、メトキシ基、エトキシ基、又は水酸基を表す。R
3、mは式(1)と同意である。)
【0021】
上記式(3)で表されるフェノール類としては、好ましくは、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、o−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2,6−ジ−tert-ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2,6−ジシクロヘキシルフェノール、2−アリルフェノール、2,6−ジアリルフェノールなどの置換フェノール類が挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。溶解性、難燃性並びに原料入手の容易さの観点から、より好ましくは、2,6−ジメチルフェノールである。
【0022】
また、上記式(4)において、Xは好ましくは、縮合のしやすさ及び工業的実施における原料の入手性の観点で、塩素原子又は水酸基である。式(4)で表される架橋剤としては、例えば、4,4’−ビス(フルオロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(ブロモメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(ヒドロキシエチル)−1,1’−ビフェニル、ジ(クロロメチル)ベンゼン、ジ(ブロモメチル)ベンゼン、ジ(クロロメチル)ナフタリン、ジ(クロロメチル)ビフェニルエーテル、キシリレングリコール、キシリレングリコールジメチルエーテル、キシリレングリコールジエチルエーテル、キシリレングリコールジプロピルエーテル、キシリレングリコールジブチルエーテル、キシリレングリコールモノメチルエーテル、キシリレングリコールモノエチルエーテルなどのキシリレングリコールモノまたはジ低級アルコールエーテルなどが挙げられる。より好ましくは、キシリレングリコール、キシリレングリコールジメチルエーテル、ジ(クロロメチル)ベンゼン、または4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニルである。特に好ましいのは、ジ(クロロメチル)ベンゼン、及び、p−キシリレングリコールジメチルエーテルである。
【0023】
式(1)で表されるフェノールアラルキル樹脂は、軟化点が50〜150℃の範囲にあることが、良好な使用性を与えたり又は良好な物性を示す成形品等を与えたりする点で望ましい。好ましい軟化点範囲は55℃〜125℃であり、更に好ましくは60℃〜100℃である。好ましい水酸基当量は、120から600の範囲であるが、より好ましくは130から400、更に好ましくは140から350の範囲である。これより水酸基当量値が小さいと硬化物とした際の難燃性が十分ではなく、これより大きいとビニルベンジルエーテル樹脂とした後、これを含む硬化性樹脂組成物の硬化性、耐熱性及び力学強度等が低下する。
【0024】
更に、このフェノールアラルキル樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で測定される前記式(1)のフェノールアラルキル樹脂の総ピーク面積に占めるn=0体のピーク面積の百分率は70%以下であることがよい。n=0体が多すぎるとビニルベンジルエーテル樹脂硬化物とした際の耐熱性が低下する。
【0025】
このフェノールアラルキル樹脂の製造方法は、フェノール類と上記架橋剤を、上記配合比となるように使用して、酸性触媒の存在下に100〜180℃の温度で2〜15時間、反応させることにより製造することができる。
【0026】
本発明のビニルベンジルエーテル樹脂は、式(1)のフェノールアラルキル樹脂とビニル芳香族ハロメチル化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させて得られる。
【0027】
式(1)及び式(2)において、R
1とR
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリル基、または炭素数6〜12のアリール基を表す。これらの基は、さらに置換基を有しても良く、例えば、炭素数1〜6のアルキル基である。R
1とR
2は同時に水素原子であることはない。好ましくは溶解性及び誘電特性と硬化性及び難燃性とのバランスの点から、R
1とR
2は、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜10、好ましくは炭素数6のアリール基であり、特に好ましくはR
1とR
2は炭素数1〜3のアルキル基である。
【0028】
また、R
3はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、アリル基、または炭素数6〜12のアリール基を示す。mは0〜4の数、好ましくは溶解性と難燃性のバランスの点から0〜2の数である。mが0のときは、R
3は存在しない。
【0029】
R
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又はビニルベンジル基を示すが、R
4に占めるビニルベンジル基の割合(モル%)は、60〜100%であるが、好ましくは90〜100%である。
【0030】
上記フェノールアラルキル樹脂を合成する際に、上記架橋剤において、Xがメトキシ基及びエトキシ基である場合、並びに反応溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類を使用した場合には、R
4の一部にアルキル基が導入される。そのような場合も含めて、式(2)で表されるビニルベンジルエーテル樹脂のR
4の0〜40%、好ましくは0〜10%が水素原子、アルキル基または両者であることがよい。ビニルベンジル基の割合が60%未満の場合は、重合活性点が少ないことと、フェノール性水酸基が多いため、硬化不足や誘電特性の悪化という問題が起こり好ましくない。
【0031】
また、nは平均値で1〜20の数を表すが、好ましくは1〜10である。nが20を超えると粘度が上昇し、微細パターンへの充填性が低下するという点で好ましくない。なお、分子量分布を有するときは、平均値(数平均)である。
【0032】
更に、本発明のビニルベンジルエーテル樹脂は、
13C−NMR測定に於いて、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピーク面積aが、112〜115ppmのビニル基のピーク面積bと合計した総ピーク面積(a+b)に対して、10.0%以下である。ここで、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピークは、前記式(1)のフェノールアラルキル樹脂とビニル芳香族ハロメチル化合物のような架橋剤とをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させる際に、系中に存在する水との副反応によって生成する副反応物である。一方、112〜115ppmのビニル基のピークは、式(1)のフェノールアラルキル樹脂とビニル芳香族ハロメチル化合物との反応によって生じる目的物である。
ピーク面積比a/(a+b)が、10.0%を越えると、誘電正接値が増大し、耐熱性、耐湿熱性が低下するので好ましくない。
【0033】
また、上記ビニルベンジルエーテル樹脂は、GPC測定において、ビニル芳香族ハロメチル化合物(c)に由来するピーク面積がビニルベンジルエーテル樹脂(d)のピーク面積と合計した総ピーク面積(c+d)に対して、1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以下であり、更に好ましくは0.2%以下である。ピーク面積比c/(c+d)を1.0%以下にすることにより、200℃以上の熱履歴を長時間受けた後での誘電特性の低下を抑えることができる。ここで、ビニルベンジルエーテル樹脂のピーク面積とは、純粋なビニルベンジルエーテル樹脂に基くピーク面積を意味する。本発明のビニルベンジルエーテル樹脂は反応生成物又はこれを精製したものであり、純粋なビニルベンジルエーテル樹脂の他に他の成分を少量含み得る。
【0034】
本発明のビニルベンジルエーテル樹脂は、全ハロゲン含有量が600ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、450ppm以下であり、更に好ましくは200ppm以下である。全ハロゲン含有量を600ppm以下にすることにより、250℃以上の熱履歴を長時間受けた後での誘電特性の低下が防止できる。このハロゲンは、主に原料である芳香族ハロメチル化合物に由来するので、上記ビニルベンジルエーテル樹脂のピーク面積と関連する。
【0035】
次に、本発明のビニルベンジルエーテル樹脂の製造方法では、上記式(1)で表されるフェノールアラルキル樹脂とビニル芳香族ハロメチル化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下で、溶解度パラメーターの値が8.0〜15.0の溶媒中で、30〜100℃の温度で反応させる。
【0036】
フェノールアラルキル樹脂とビニル芳香族ハロメチル化合物との反応は、液相でアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより行われる。この反応ではフェノールアラルキル樹脂のOH基と、ビニル芳香族ハロメチル化合物のCH
2X基が縮合反応して、脱HXとO-CH
2結合の生成が起こり、ビニルベンジルエーテル樹脂が生成する。
この製造方法では、式(1)で表されるフェノールアラルキル樹脂が使用されるが、これは、単独で使用してもよいし二種類以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の製造方法で使用されるビニル芳香族ハロメチル化合物は、CH
2=CH―Ar
2−CH
2Xで表わされる。ここで、Ar
2はフェニレン基又は置換フェニレン基である。置換フェニレン基の場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基が挙げられる。好ましくは炭素数が1〜6のアルキル基が挙げられる。また、Ar
2として、溶解性及び難燃性の観点から、より好ましくは、無置換、アルキル基置換、アルコキシ基置換もしくはフェニル基置換のフェニレン基である。更に好ましくは、工業的に製造が容易である、無置換及びアルキル基置換のフェニレン基である。したがって、本発明のビニルベンジルエーテル樹脂におけるビニルベンジルは、置換ビニルベンジルを含むと理解される。
【0038】
好ましいビニル芳香族ハロメチル化合物としては、p−ビニルベンジルクロライド、m−ビニルベンジルクロライド、p−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドとの混合体、p−ビニルベンジルブロマイド、m−ビニルベンジルブロマイド、p−ビニルベンジルブロマイドとm−ビニルベンジルブロマイドとの混合体を挙げることができる。中でも、p−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドとの混合体を使用すると、溶解性に優れたポリ(ビニルベンジル)エーテル化合物が得られ、他の材料との相溶性及び作業性が良好となるため好ましい。p−ビニルベンジルハライドとm−ビニルベンジルハライドの組成比に特に制限はないが、p−体/m−体(モル/モル)は、90/10〜10/90が好ましく、70/30〜30/70がより好ましく、60/40〜40/60が更に好ましい。
【0039】
フェノールアラルキル樹脂とビニル芳香族ハロメチル化合物との使用割合は、当量比(OH:ハロメチルのモル比)で100:95〜100:120であることが好ましい。当量比が該範囲内であると、仕込んだフェノールアラルキル樹脂の全量に近い量がビニル芳香族ハロメチル化合物と反応し、フェノールアラルキル樹脂中の水酸基がビニルベンジルエーテル化され、反応物中にほとんど残存しなくなることにより、後で行う硬化反応が十分に進行し、また、良好な誘電特性を示すこととなる。
【0040】
なお、前記式(2)のR
4に炭素数1〜12のアルキル基を導入する場合の製造方法は、好ましくはフェノール類を上記式(4)の架橋剤とを、酸性触媒の存在下に、アルコール類と反応させることにより製造することができる。その場合、樹脂中に平均として存在するR
4で表される構造単位を占める水素原子(H)と炭素数1〜12のアルキル基(R)の比率に制限はないが、誘電特性、成形性、離型性の観点から、R/H(モル比率)は0.005〜2.0であることが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0の範囲である。
ここで、R
4における炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、入手の容易性、コスト及び耐熱酸化劣化性の観点から、好ましくはメチル基及びエチル基である。最も好ましくは、メチル基である。
【0041】
上記ビニル芳香族ハロメチル化合物との反応を行う際には、溶解度パラメーターの値が8.0〜15.0の溶媒が使用される。好ましい溶解度パラメーター値を有する溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメトキシプロパン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン、キシレン、あるいはこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0042】
上記の反応を行う際には、アルカリ金属水酸化物を反応促進のために使用することがよく、好ましいアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはこれらの混合物が挙げられる。アルカリ金属水酸化物の配合割合は、フェノールアラルキル樹脂のヒドロキシ基に対して当量比で1.1〜2.0倍の範囲であることが好ましい。
【0043】
上記の反応の反応温度は、30〜100℃であることが必要である。より好ましくは、30〜60℃である。反応温度が30℃に満たないと、反応に長時間を要し、100℃を越えると、副反応を生じることに伴い、
13C−NMR測定に於ける、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピーク面積が増大し、誘電特性の悪化、耐熱性、耐湿熱性の悪化を招く。一方、反応時間は、反応に応じ適宜選択すればよいが、0.5〜20時間の範囲であれば十分に反応が進行する。
【0044】
上記ビニル芳香族ハロメチル化合物との反応を行う際に、反応の効率を高めるために、触媒の存在下反応を行うこともできる。触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどのような第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン化合物を挙げることができる。
【0045】
上記の反応生成物は、式(2)のビニルベンジルエーテル樹脂を含む粗ビニルベンジルエーテル樹脂であるので、これを精製して本発明のビニルベンジルエーテル樹脂とする。精製方法には制限はないが、貧溶媒を使用して、再沈精製あるいは再結晶により、精製することが好ましい。
【0046】
貧溶媒としては、ビニルベンジルエーテル樹脂の溶解性が低く、ハロゲン化合物類の溶解性が高いものが適する。かかる貧溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、水、あるいはその混合溶媒が挙げられるが、好ましくは水とアルコール類の混合溶媒である。このような貧溶媒として好適なものは、溶解度パラメーターとして、10以上の極性溶媒であり、より好ましくは溶解度パラメーターが11以上の極性溶媒である。特に、ビニルベンジルエーテル樹脂の回収歩留りと全ハロゲン含有量を600ppm以下、並びに、ビニル芳香族ハロメチル化合物に由来するピーク面積を1.0%以下に低減する精製効率の観点から、溶解度パラメーターの値として、15〜20の範囲が最も好ましい。
【0047】
上記の精製を行うことにより、本発明のビニルベンジルエーテル樹脂中の全ハロゲン含有量を600ppm以下にすることができる。また、精製条件を適切に選択すれば、GPC測定において、ビニル芳香族ハロメチル化合物に由来するピーク面積が式(2)のビニルベンジルエーテル樹脂のピーク面積と合計した総ピーク面積に対して、1.0%以下に低減することもできる。これらの要件を満たす精製条件は、再結晶の条件、回数等を調整することにより可能である。
【0048】
全ハロゲン含有量を600ppm以下にすることにより、200℃以上の熱履歴を長時間受けた後での誘電特性の低下を小さく抑えることができるので好ましい。より好ましくは450ppm以下であり、最も好ましくは200ppm以下である。ハロゲン含有量を600ppm以下にすることにより、反りや転写不良といった、成形不良現象を回避できるという望外の効果も得られることから好ましい。
また、ビニル芳香族ハロメチル化合物に由来するピーク面積が1.0%以下にすることにより、200℃以上の熱履歴を長時間受けた後での誘電特性の低下を小さくすることができる。より好ましくは、0.5%以下である。さらに好ましくは0.2%以下である。しかしながら、必要以上に全ハロゲン含有量やビニル芳香族ハロメチル化合物の含有量を低下させることは、精製歩留まりを大幅に低下させることになる。実験によれば、全ハロゲン含有量は2ppm以上であれば、上記のような工業的な実施に関わる問題が生じないことが判明したので、それを超える精製は精製歩留まりの面からは有利とは言えない。
【0049】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のビニルベンジルエーテル樹脂とラジカル重合開始剤(ラジカル重合触媒ともいう。)とを含有する。ラジカル重合開始剤としては、例えば、本発明の樹脂組成物は後述するように加熱等の手段により架橋反応を起こして硬化するが、その際の反応温度を低くしたり、不飽和基の架橋反応を促進する目的でラジカル重合開始剤を含有させて使用してもよい。この目的で用いられるラジカル重合開始剤の量は(A)成分と(B)成分の和を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%である。ラジカル重合開始剤はラジカル重合触媒であるので、以下ラジカル重合開始剤で代表する。
【0050】
ラジカル重合開始剤の代表的な例を挙げると、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物があるがこれらに限定されない。また過酸化物ではないが、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンもラジカル重合開始剤(又は重合触媒)として使用できる。しかし、本樹脂組成物の硬化に用いられる触媒、ラジカル重合開始剤はこれらの例に限定されない。
【0051】
ラジカル重合開始剤の配合量は、ビニルベンジルエーテル樹脂に対し、0.01〜10重量部の範囲であれば、硬化反応を阻害することなく良好に反応が進行する。
【0052】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ビニルベンジルエーテル樹脂と共重合可能な他の重合性モノマーを配合して硬化させてもよい。
【0053】
共重合可能な重合性モノマーとしては、スチレン、スチレンダイマー、アルファメチルスチレン、アルファメチルスチレンダイマー、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、アセナフチレン、ジビニルベンジルエーテル、アリルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0054】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、既知の熱硬化性樹脂、例えば、ビニルエステル樹脂、ポリビニルベンジル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリシアナート樹脂、フェノール樹脂等や、既知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、PPS樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等や、あるいは、既知の熱可塑性エラストマー、例えば、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水添スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体等やあるいはゴム類、例えばポリブタジェン、ポリイソプレンと配合することも可能である。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等の無機質充填材、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ポリスチレン等の難燃性付与剤を併用することにより、誘電特性や難燃性あるいは耐熱性が要求される電気又は電子部品材料、とりわけ半導体封止材料や電子材料用基板用ワニスとして特に有用なものとなる。
【0056】
本発明の電子材料用基板用ワニス(「回路基板材料用ワニス」も一例として含む。)は、本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させることにより製造することができる。ここで使用し得る前記溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、キシレン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の溶剤であることが好ましく、また、不揮発分20〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル化合物類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分20〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。なお、本発明の電子材料用基板用は、前記電子材料用基板用ワニスを硬化させて得られる。具体的には、プリント配線基板、プリント回路板、フレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等が挙げられる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムとして使用できる。例えば、半導体封止材料の硬化物は注型物又は成型物であり、かかる用途の硬化物を得る方法としては、該化合物を注型、或いはトランスファ−成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに80〜230℃で0.5〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。また、回路基板用ワニスの硬化物は積層物であり、この硬化物を得る方法としては、回路基板用ワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得て、それを単独同士で、あるいは銅箔等の金属箔と積層し熱プレス成形して得ることができる。
【0058】
また、チタン酸バリウム等の無機の高誘電体粉末、あるいはフェライト等の無機磁性体を配合することにより電子部品用材料、特に高周波電子部品材料として有用である。
【0059】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、後述する硬化複合材料と同様、金属箔(金属板を含む意味である。以下、同じ。)と張り合わせて用いることができる。
【0060】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性複合材料とその硬化体について説明する。本発明の硬化性樹脂組成物による硬化性複合材料には、機械的強度を高め、寸法安定性を増大させるために基材を加える。
【0061】
このような基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマットなどの各種ガラス布、アスベスト布、金属繊維布及びその他合成若しくは天然の無機繊維布、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾザール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維から得られる織布又は不織布、綿布、麻布、フェルトなどの天然繊維布、カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊紙などの天然セルロース系布などの布類、紙類等がそれぞれ単独で、あるいは2種以上併せて用いられる。
【0062】
基材の占める割合は、硬化性複合材料中に5〜90wt%、好ましくは10〜80wt%、更に好ましくは20〜70wt%であることがよい。基材が5wt%より少なくなると複合材料の硬化後の寸法安定性や強度が低下する傾向にある。また基材が90wt%より多くなると複合材料の誘電特性が低下する傾向にある。
本発明の硬化性複合材料には、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等一般のものが使用できる。
【0063】
本発明の硬化性複合材料を製造する方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を前述の芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0064】
本発明の硬化性複合材料を、加熱等の方法により硬化することによって複合材料硬化物が得られる。その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば硬化性複合材料を複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの複合材料硬化物を得ることができる。また、一度接着硬化させた硬化複合材料と硬化性複合材料を組み合わせて新たな層構成の複合材料硬化物を得ることも可能である。積層成形と硬化は、通常熱プレス等を用い同時に行われるが、両者をそれぞれ単独で行ってもよい。すなわち、あらかじめ積層成形して得た未硬化あるいは半硬化の複合材料を、熱処理又は別の方法で処理することによって硬化させることができる。
【0065】
成形及び硬化は、温度:80〜300℃、圧力:0.1〜1000kg/cm
2、時間:1分〜10時間の範囲、より好ましくは、温度:150〜250℃、圧力1〜500kg/cm
2、時間:1分〜5時間の範囲で行うことができる。
【0066】
本発明の積層体とは、本発明の複合材料硬化物の層と金属箔の層より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは3〜105μmの範囲である。
【0067】
本発明の積層体を製造する方法としては、例えば上で説明した本発明の硬化性樹脂組成物と基材から得た硬化性複合材料と、金属箔を目的に応じた層構成で積層し、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化させる方法を挙げることができる。本発明の硬化性樹脂組成物の積層体においては、複合材料硬化物と金属箔が任意の層構成で積層される。金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。上記の他、積層と硬化を複数回繰り返して多層化することも可能である。
【0068】
金属箔との接着には接着剤を用いることもできる。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、フェノール系、シアノアクリレート系等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。上記の積層成形と硬化は、本発明の複合材料硬化物の製造と同様の条件で行うことができる。
【0069】
また、本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形することもできる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは5〜105μmの範囲である。
本発明のフィルムを製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、PETフィルムなどの樹脂フィルムに塗布した後乾燥する方法などが挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0070】
本発明の樹脂付き金属箔とは本発明の硬化性樹脂組成物と金属箔より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは5〜105μmの範囲である。
【0071】
本発明の樹脂付き金属箔を製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、金属箔に塗布した後乾燥する方法が挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0072】
本発明の電子材料用基板は、本発明の硬化物を用いてなるものである。上記電子材料用基板は、耐熱性、耐水性が求められる環境下での信頼性や高周波信号の伝送信頼性が要求される携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の各種電気・電子機器用の部品として好適に用いることができる。特に、本発明の硬化物の優れた誘電特性の耐熱安定性及び微細パターンの回路形成に対応した寸法安定性、成形性から、上記電気・電子機器用の回路基板として好適に用いることができる。具体的には、片面、両面、多層プリント基板、フレキシブル基板、ビルドアップ基板が挙げられる。上記の導体層として金属めっきを用いた多層回路基板も好ましい例として含まれる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の測定結果は以下に示す方法により試料調製及び測定を行ったものである。
【0074】
1)ビニルベンジルエーテル樹脂の分子量及び分子量分布
分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
【0075】
2)ビニルベンジルエーテル樹脂の構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、
13C−NMR及び
1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d
1を使用した。NMR測定溶媒であるテトラクロロエタン−d
2の共鳴線を内部標準として使用した。
【0076】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
硬化性樹脂組成物溶液をガラス基板に乾燥後の厚さが、20μmになるように均一に塗布した後、ホットプレートを用いて、90℃で30分間加熱し、乾燥させた。得られたガラス基板上の樹脂膜はガラス基板と共に、TMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に、220℃で20分間加熱処理することにより、残存する溶媒を除去した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により軟化温度を求めた。また、線膨張係数の変化する変曲点よりTgを求めた。さらに、平均線膨張係数(CTE)は、0〜40℃における試験片の寸法変化より算出した。
加熱プレス成形により得られた硬化物フィルムのTgの測定は動的粘弾性測定装置を使用し、昇温速度2℃/minで測定を行い、損失弾性率のピークより決定した。
【0077】
4)引張り強度及び伸び率
硬化物フィルムの引張り強度及び伸び率は引張り試験装置を用いて測定を行った。伸び率は引張り試験のチャートから測定した。
5)誘電率及び誘電正接
JIS C2565規格に準拠し、50℃の真空乾燥器で5時間、真空下、絶乾させ、デシケーター中に、恒量を取った後、株式会社エーイーティー製、空洞共振器法誘電率測定装置を使用して、18GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。材料の耐熱酸化劣化性を評価するため、硬化物フィルムを200℃のエアオーブン中に、1時間放置後の硬化物フィルムの18GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
6)成形性
黒化処理を行った銅張り積層板の上に、硬化性樹脂組成物の未硬化フィルムを積層し、真空ラミネーターを用いて、温度:110℃、プレス圧:0.1MPaで真空ラミネートを行い、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態により評価を行った。評価は黒化処理銅箔とフィルムの接着状態が良好であったものを「○」、黒化処理銅箔とフィルムとが容易に剥離することができる接着状態のものを「×」として評価した。
【0078】
実施例1(合成例)
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた500ml、3口セパラブルフラスコに、2,6-ジメチルフェノール122.16g(東京化成工業製、1.0モル)、p−キシリレングリコールジメチルエーテル166.22g(東京化成工業製、1.0モル)、及びp−トルエンスルホン酸1.2gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成するメタノールは系外に除いた。その後、水洗によりp−トルエンスルホン酸を除去した後、減圧下、200℃に昇温し、未反応の2,6-ジメチルフェノールを除去し、2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A)137.1gを得た。得られた2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂の軟化点は91.5℃、150℃における溶融粘度は0.43Pa・sであった。また、水酸基当量は194であった。
また、得られた樹脂について、そのGPC、赤外吸収スペクトルおよび
1H−NMRを測定した。赤外吸収スペクトルの結果を
図1に示す。GPCの測定結果から数平均分子量(Mn)が1153、重量平均分子量(Mw)が1835であって分子量分布(Mw/Mn)が1.59であり、また、この2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A)における一般式(1)の分子量分布は、n=0が23.2%、n=1が9.2%、n=2が11.7%、n=3が15.7%、n=4が19.2%、およびn≧=5が21% であった。
更に、
1H−NMRの測定はプロトンノンデカップリング法により行った。この
1H−NMRの測定結果からこの2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A)にはメチロール基存在しないことが確認された。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0079】
実施例2(合成例)
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた1L、3口セパラブルフラスコに、o-クレゾール214.2g(東京化成工業製)、p−キシリレングリコール117.4g、及びp−トルエンスルホン酸1.5gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら150℃に昇温し5時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸は系外に除いた。その後、水洗によりp−トルエンスルホン酸を除去した後、減圧下、200℃に昇温し、未反応のo-クレゾールを除去し、o-クレゾールアラルキル樹脂(B)216.4gを得た。得られたo-クレゾールアラルキル樹脂(B)の軟化点は66.8℃、150℃における溶融粘度は0.035Pa・sであった。また、水酸基当量は185であった。
GPCの測定結果から数平均分子量(Mn)が872、重量平均分子量(Mw)が1284であって分子量分布(Mw/Mn)が1.46であり、また、この実施例2で得られた熱可塑性o-クレゾールアラルキル樹脂(B)における一般式(1)の分子量分布は、n=0が10.8%、n=1が6.5%、n=2が11.1%、n=3が16.7%、n=4が24.2%、およびn≧5が30.4% であった。
更に、
1H-NMRの測定はプロトンノンデカップリング法により行った。この
1H−NMRの測定結果からこの合成例2で得られた熱可塑性熱可塑性o-クレゾールアラルキル樹脂(B)にはメチロール基存在しないことが確認された。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0080】
参考例1
ビフェニレン基を有するフェノールアラルキル樹脂(C)(明和化成(株)製、商品名:MEH7851)を用意した。
【0081】
実施例3
温度調節器、攪拌装置、冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた4つ口フラスコに合成例1で合成した2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(A);フェノール性水酸基のOH当量194g/eq)87.3g(0.45当量)、CMS−AM(セイミケミカル社製クロロメチルスチレン)72.1g(0.47当量)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド4.3g、2,4−ジニトロフェノール0.07g、メチルエチルケトン115gを仕込み攪拌溶解し、液温を75℃にし、50%水酸化ナトリウム水溶液36g(0.9当量)を20分間で滴下し、更に75℃で4時間攪拌を続けた。次に10%塩酸水溶液でフラスコ内を中和した後、トルエン180gを追加し、有機層を675mlの水で3回洗浄した。
【0082】
得られた有機相を蒸留することにより、有機相が225gになるまで濃縮し、メタノール/水=75/25(vol/vol)450gを加えて生成物を再沈殿した。同じ条件の再沈殿をさらに2回繰り返した。得られた樹脂の沈殿を濾過・乾燥し、ビニルベンジル化2,6−ジメチルフェノールアラルキル樹脂(VBE-A)を105.5g得た。
【0083】
生成物の確認をGPC、赤外線スペクトル(IR)、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していることを確認した。また、IRよりフェノール性水酸基が消失していることを確認した。IRチャートを
図2に示す。
また、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線、5.25ppm、5.77ppm及び6.73ppm付近にビニル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、(VBE-A)が得られていることを確認した。ビニルベンジルエーテル基含有量は99.5%、フェノール性水酸基は検出することはできなかった。さらに、
13C−NMRを用いて、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピークを観察したところ、ピークの存在は確認できなかった。一方、目的の反応生成物に由来する112〜115ppmにビニル基のピークが観察され、かつ、ビニル基の面積値とベンジルエーテル基に由来するメチレン基のピークの面積値及び芳香族領域のピークの面積値とは、
1H−NMRの結果と良い一致を示した。
また、元素分析により総塩素含有量を測定したところ165ppmであった。GPC測定を行ったところ、クロロメチルスチレンに由来するピークは、観察されなかった。また、示差走査熱量計(DSC)により、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で熱相転移挙動を測定したところ、結晶に由来する融解ピークは観察されなかった。また、熱天秤(TGA)を使用し、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で、熱分解挙動を測定したところ、接線法による熱分解開始温度:414.7℃であり、600℃における炭化物生成量は、25wt%であった。これら測定により得られた結果を表2に示した。表2において、ピーク面積比は、上記a/(a+b)の値である。
【0084】
実施例4
温度調節器、攪拌装置、冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた4つ口フラスコに実施例2で合成したo-クレゾールアラルキル樹脂(B);フェノール性水酸基のOH当量185g/eq)92.5g(0.5当量)、CMS−AM(セイミケミカル社製クロロメチルスチレン)80.1g(0.525当量)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド4.8g、2,4−ジニトロフェノール0.08g、メチルエチルケトン128gを仕込み攪拌溶解し、液温を75℃にし、50%水酸化ナトリウム水溶液22.4g(1.0当量)を20分間で滴下し、更に75℃で4時間攪拌を続けた。次に10%塩酸水溶液でフラスコ内を中和した後、トルエン200gを追加し、有機層を750mlの水で3回洗浄した。
【0085】
得られた有機相を蒸留することにより、有機相が250gになるまで濃縮し、メタノール/水=75/25(vol/vol)500gを加えて生成物を再沈殿した。同じ条件の再沈殿をさらに2回繰り返した。得られた樹脂の沈殿を濾過・乾燥し、ビニルベンジル化o-クレゾールアラルキル樹脂(VBE−B)を85.6g得た
【0086】
生成物の確認をGPC、赤外線スペクトル(IR)、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線、5.25ppm、5.77ppm及び6.73ppm付近にビニル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、(VBE-B)が得られていることを確認した。ビニルベンジルエーテル基含有量は98.1%、フェノール性水酸基は検出することはできなかった。また、元素分析により総塩素含有量を測定したところ175ppmであった。さらに、
13C−NMRを用いて、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピークを観察したところ、ピークの存在は確認できなかった。GPC測定を行ったところ、クロロメチルスチレンに由来するピークは、観察されなかった。一方、目的の反応生成物に由来する112〜115ppmにビニル基のピークが観察され、かつ、ビニル基の面積値とベンジルエーテル基に由来するメチレン基のピークの面積値及び芳香族領域のピークの面積値とは、
1H−NMRの結果と良い一致を示した。
また、示差走査熱量計(DSC)により、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で熱相転移挙動を測定したところ、結晶に由来する融解ピークは観察されなかった。また、熱天秤(TGA)を使用し、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で、熱分解挙動を測定したところ、接線法による熱分解開始温度:406.4℃であり、600℃における炭化物生成量は、29.9wt%であった。これら測定により得られた結果を表2に示した
【0087】
比較例1
温度調節器、攪拌装置、冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた4つ口フラスコに明和和化成(製)のフェノールアラルキル樹脂(C);フェノール性水酸基のOH当量208g/eq)135.2g(0.65当量)、CMS−AM 104.15g(0.682当量)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド6.25g、2,4−ジニトロフェノール0.1g、メチルイソブチルケトン75gを仕込み攪拌溶解し、液温を105℃にし、50%水酸化ナトリウム水溶液52g(1.0当量)を20分間で滴下し、更に105℃で4時間攪拌を続けた。次に10%塩酸水溶液でフラスコ内を中和した後、トルエン235gを追加し、有機層を975mlの水で3回洗浄した。
【0088】
得られた有機相を蒸留することにより、有機相が145gになるまで濃縮し、メタノール/水=75/25(vol/vol)380gを加えて生成物を再沈殿した。同じ条件の再沈殿をさらに2回繰り返した。得られた樹脂の沈殿を濾過・乾燥し、樹脂(C)とビニルベンジルクロライドとの反応生成物であるビニルベンジル化フェノールアラルキル樹脂(VBE−C)を168.34g得た。
【0089】
生成物の確認をGPC、赤外線スペクトル(IR)、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線、5.25ppm、5.77ppm及び6.73ppm付近にビニル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、(VBE-C)が得られていることを確認した。ビニルベンジルエーテル基含有量は97.3%、フェノール性水酸基は検出することはできなかった。また、元素分析により総塩素含有量を測定したところ200ppmであった。一方、
13C−NMR測定に於いて、200〜204ppmのアルデヒド基に由来するピーク面積が、112〜115ppmのビニル基のピーク面積と合計した総ピーク面積に対する比率を求めたところ、12.3%であった。GPC測定を行ったところ、クロロメチルスチレンに由来するピークは、観察されなかった。また、示差走査熱量計(DSC)により、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で熱相転移挙動を測定したところ、結晶に由来する融解ピークは観察されなかった。また、熱天秤(TGA)を使用し、窒素気流下、昇温速度:10℃/分で、熱分解挙動を測定したところ、接線法による熱分解開始温度:415.3℃であり、600℃における炭化物生成量は、35.9wt%であった。これら測定により得られた結果を表2に示した。
【0090】
実施例5
実施例3で得られたVBE―A 70gと、重合開始剤としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルP)0.7gをトルエン30gに溶解し硬化性樹脂組成物(ワニスA)を得た。
【0091】
調製したワニスAを金型上に滴下し、80℃で溶媒を減圧下、脱揮除去し、乾燥後、金型を組上げた後、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた厚さ:0.2mmの硬化物シートについて、18.0GHzの誘電率と誘電正接を始めとする諸特性を測定した。また、200℃の空気雰囲気下のオーブン中に1hr放置した後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。これら測定により得られた結果を表3に示した。
【0092】
実施例6
実施例4で得られたVBE―B 70gと、重合開始剤としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルP)0.7gをトルエン30gに溶解し硬化性樹脂組成物(ワニスB)を得た。
【0093】
調製したワニスBを金型上に滴下し、80℃で溶媒を減圧下、脱揮除去し、乾燥後、金型を組上げた後、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた厚さ:0.2mmの硬化物シートについて、18.0GHzの誘電率と誘電正接を始めとする諸特性を測定した。また、200℃の空気雰囲気下のオーブン中に1hr放置した後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。これら測定により得られた結果を表3に示した。
【0094】
比較例2
比較例1で得られたVBE―C 70gと、重合開始剤としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルP)0.7gをトルエン30gに溶解し硬化性樹脂組成物(ワニスC)を得た。
【0095】
調製したワニスCを金型上に滴下し、80℃で溶媒を減圧下、脱揮除去し、乾燥後、金型を組上げた後、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた厚さ:0.2mmの硬化物シートについて、18.0GHzの誘電率と誘電正接を始めとする諸特性を測定した。また、200℃の空気雰囲気下のオーブン中に1hr放置した後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。これら測定により得られた結果を表3に示した。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】