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特開2015-190178充填材の供給方法、及び、省力化軌道の補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-190178(P2015-190178A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】充填材の供給方法、及び、省力化軌道の補修方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/18 20060101AFI20151006BHJP
   E01B 1/00 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   E01B27/18
   E01B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-67856(P2014-67856)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 賢司
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正博
【テーマコード(参考)】
2D056
2D057
【Fターム(参考)】
2D056AA03
2D056AA09
2D057AA03
2D057BA00
2D057CB00
(57)【要約】
【課題】 充填空間に充填材を供給する際に、路盤表面の意図しない範囲にまで充填材が流出してしまうのを防止することができる充填材の供給方法を提供すると共に、該充填材の供給方法を用いた省力化軌道の補修方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 路盤上に形成されて枕木を保持する枕木保持体と路盤との間に形成された充填空間に、水分を含有する充填材を流し込んで供給する充填材の供給方法において、前記路盤表面における前記充填空間を形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤表面に壁部材を配置し、該壁部材と路盤との間に形成される隙間を覆うように水硬性材料を配置することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路盤上に形成されて枕木を保持する枕木保持体と路盤との間に形成された充填空間に、水分を含有する充填材を流し込んで供給する充填材の供給方法において、
前記路盤表面における前記充填空間を形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤表面に壁部材を配置し、該壁部材と路盤との間に形成される隙間を覆うように水硬性材料を配置することを特徴とする充填材の供給方法。
【請求項2】
路盤上に形成されて枕木を保持する枕木保持体と路盤との間に形成された充填空間に、水分を含有する充填材を流し込んで供給する充填材の供給方法において、
前記路盤表面における前記充填空間を形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤表面に水硬性材料を配置することを特徴とする充填材の供給方法。
【請求項3】
路盤上に一体的に形成されて枕木を保持する枕木保持体を備える省力化軌道の補修方法において、
枕木保持体と路盤との間に形成された充填空間に、請求項1又は2に記載の充填材の供給方法を用いて水分を含有する充填材を供給することを特徴とする省力化軌道の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕木を保持する枕木保持体と路盤との間に形成された空間に充填材を供給する充填材の供給方法、及び、該供給方法を用いた省力化軌道の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
列車等が通行する軌道(線路)は、例えば、路盤と、該路盤上に敷き詰められたバラスト(砕石や砂利等)と、該バラストに埋め込まれた枕木と、該枕木に取り付けられたレールとから構成されている。敷き詰められたバラストは、路盤上に枕木を保持する枕木保持体となると共に、列車等が軌道を通行する際に生じる衝撃が直接路盤に加わるのを緩衝し、列車等の乗り心地を良好にする役割を果たしている。
【0003】
近年では、枕木保持体を一体的に形成した省力化軌道が知られている。例えば、敷き詰められたバラストに枕木を埋め込んだ状態で、バラストを構成する砕石等の隙間にセメントモルタル等の凝固材を注入し、一体的に枕木保持体を形成したものが知られている。このような省力化軌道を用いることで、列車等の乗り心地を維持しつつ、砕石等からなるバラストが列車等の通行によって崩れてしまうのを防止することができ、定期的に行われるバラストの保守作業の手間を軽減することが可能となっている。
【0004】
上記のように枕木保持体が一体的に形成されている場合、列車等が軌道を通行することで生じる衝撃によって、路盤の表面と枕木保持体との間に摩擦が生じたり、路盤の表面が枕木保持体によって押し固められて変形したりする場合がある。これにより、枕木保持体の下方領域の路盤の表面に凹部が形成され、枕木保持体と路盤との間に空間が形成される場合がある。斯かる空間が形成されると、列車等が通行した際に、斯かる空間上に位置する枕木に取り付けられたレールが列車等の重量によって上下に移動することとなる。このようなレールの上下動の幅が大きくなると、レールが破損したり、列車等が脱線したりする要因となる。
【0005】
上記のような空間を補修する方法として、斯かる空間(以下、充填空間とも記す)に充填材を供給して充填空間を埋め込む方法が知られている。例えば、一体的に形成された枕木保持体に、充填空間に達する貫通孔を形成し、水硬性材料と水とから構成された充填材を該貫通孔を通じて充填空間に供給し、充填空間内で充填材を硬化させて充填空間を埋め込む方法が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
また、充填空間が枕木保持体の下方領域の外側に開放するように、枕木保持体と路盤との間に開口を形成し、上述のように貫通孔から充填材を供給して、開口から充填材を溢れ出させる方法も知られている(特許文献2参照)。さらに、前記開口から充填空間に充填材を供給する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−344475号公報
【特許文献2】特開2010−229696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように、充填空間が枕木保持体の下方領域より外側に開放している場合には、充填空間に供給した充填材が開口から溢れ出し、路盤表面の意図しない範囲にまで広がってしまう虞がある。また、開口から充填材を供給する場合には、開口から充填空間に流れ込まなかった充填材が開口の周辺に流出し、路盤表面の意図しない範囲にまで広がってしまう虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、充填空間に充填材を供給する際に、路盤表面の意図しない範囲にまで充填材が流出してしまうのを防止することができる充填材の供給方法を提供すると共に、該充填材の供給方法を用いた省力化軌道の補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る充填材の供給方法は、路盤上に形成されて枕木を保持する枕木保持体と路盤との間に形成された充填空間に、水分を含有する充填材を流し込んで供給する充填材の供給方法において、前記路盤表面における前記充填空間を形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤表面に壁部材を配置し、該壁部材と路盤との間に形成される隙間を覆うように水硬性材料を配置することを特徴とする。
【0011】
斯かる構成によれば、前記路盤表面における前記充填空間を形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤表面に壁部材を配置し、該壁部材と路盤との間に形成される隙間を覆うように水硬性材料を配置することで、壁部材によって包囲された領域に充填材を流し込んだ際に、斯かる領域の外側の意図しない範囲に充填材が流出してしまうのを防止することができる。
【0012】
具体的には、路盤表面における壁部材によって包囲された領域に流し込まれた充填材は、壁部材に案内され、路盤表面における充填空間を形成する領域(以下、充填空間形成領域とも記す)内に流れ込むこととなる。また、壁部材によって包囲された領域に流し込まれた充填材は、路盤と壁部材との間に形成された隙間を覆う水硬性材料と接触し、接触した部分の水分が水硬性材料に奪われることとなる。このため、充填材における水硬性材料と接触した部分の水分量が低下し、斯かる部分の流動性が低下することとなる。
【0013】
これにより、壁部材と路盤との間に形成された隙間から充填材が流出し、壁部材によって包囲された領域の外側の意図しない範囲にまで充填材が流出してしまうのを防止することができる。このため、充填材の損失を抑制することができると共に、流出した充填材を除去したり、清掃したりする作業の手間を軽減することができ、充填材の供給作業を効率的に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る他の充填材の供給方法は、路盤上に形成されて枕木を保持する枕木保持体と路盤との間に形成された充填空間に、水分を含有する充填材を流し込んで供給する充填材の供給方法において、前記路盤表面における前記充填空間を形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤表面に水硬性材料を配置することを特徴とする。
【0015】
斯かる構成よれば、前記路盤表面における前記充填空間を形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤表面に水硬性材料を配置することで、水硬性材料によって包囲された領域に充填材を流し込んだ際に、斯かる領域の外側の意図しない範囲に充填材が流出してしまうのを防止することができる。
【0016】
具体的には、路盤表面における水硬性材料によって包囲された領域に流し込まれた充填材は、水硬性材料によって案内され、路盤表面における充填空間を形成する領域内に流れ込むこととなる。また、水硬性材料によって包囲された領域に流し込まれた充填材は、水硬性材料と接触し、接触した部分の水分が水硬性材料に奪われることとなる。このため、充填材における水硬性材料と接触した部分の水分量が低下し、斯かる部分の流動性が低下することとなる。
【0017】
これにより、水硬性材料によって包囲された領域から充填材が流出し、意図しない範囲にまで充填材が流出してしまうのを防止することができる。このため、充填材の損失を抑制することができると共に、流出した充填材を除去したり、清掃したりする作業の手間を軽減することができ、充填材の供給作業を効率的に行うことができる。
【0018】
本発明に係る省力化軌道の補修方法は、路盤上に一体的に形成されて枕木を保持する枕木保持体を備える省力化軌道の補修方法において、枕木保持体と路盤との間に形成された充填空間に、上記の充填材の供給方法を用いて水分を含有する充填材を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、充填空間に充填材を供給する際に、路盤表面の意図しない範囲にまで充填材が流出してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る充填材の供給方法を用いて補修する軌道を上方から見た図であって、(a)は、型枠を設置した状態を示した図、(b)は、(a)のX−X断面図。
図2】本実施形態に係る充填材の供給方法を用いて補修する軌道に型枠を設置した状態を示した軌道の断面図であって、(a)は、型枠内に充填材を流し込んで充填空間に充填材を供給した状態を示した図、(b)は、充填空間に満たされた充填材が硬化して充填層が形成された状態を示した図。
図3】(a)は、他の実施形態に係る充填材の供給方法を用いて補修する軌道に型枠を設置し、充填材を充填空間に流し込んだ状態を示した軌道の断面図、(b)は、更に他の実施形態に係る充填材の供給方法を用いて補修する軌道に型枠を設置し、充填材を充填空間に流し込んだ状態を示した軌道の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図1〜3を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態に係る充填材の供給方法(以下、本供給方法とも記す)は、列車等が通行する軌道(線路)を補修する際に用いられるものである。前記軌道は、図1に示すように、路盤1と、該路盤1上に配置されてレールAを保持する枕木2と、該枕木2と路盤1との間に形成されて枕木2を保持する枕木保持体3と、砕石等から構成されて枕木2及び枕木保持体3の周囲に配置されるバラスト(図示せず)とから構成される。
【0023】
路盤1は、列車等を通行させる領域の地盤を押し固めるなどして形成されたものである。枕木2は、一方向が長手となるように形成された角材から構成されている。該枕木2は、長手方向が路盤1の表面に対して略平行すると共に、列車等が通行する方向に対して直行するように配置されている。
【0024】
枕木保持体3は、上面側に枕木2の下端側が埋め込まれた状態で、枕木2を保持している。本願実施形態では、枕木保持体3は、バラストに用いられる砕石等が積み上げられた状態で一体的に形成されてなるものである。具体的には、枕木保持体3は、積み上げられた砕石等に上方から枕木2の下端側を埋め込み、砕石等の隙間にセメントモルタル等の凝固材を充填して一体的に形成したものである。本実施形態では、枕木保持体3は、列車等の通行する方向(レールAの延びる方向)に沿って長尺状となるように板状に形成されている。このような枕木保持体3を備える軌道は、一般的に省力化軌道と呼ばれるものに該当する。
【0025】
本供給方法は、路盤1と枕木保持体3との間に形成された空間(以下、充填空間とも記す)Rに充填材を供給する際に用いられるものである。本実施形態では、充填空間Rは、路盤1の表面における枕木保持体3の下方領域に凹部1aが形成されることで、該凹部1aの内面と枕木保持体3の下面との間に形成されている。凹部1aは、軌道を通行する列車等の重量が枕木2及び枕木保持体3を介して路盤1に伝達されることで、路盤1と枕木保持体3との間に摩擦が生じたり、枕木保持体3の下方領域において路盤1が押圧されて変形したりすることで形成される。
【0026】
また、本実施形態では、充填空間Rは、枕木2を上方から見た際に(即ち、平面視において)、枕木2と重なるように(即ち、枕木2の下側に)形成される。また、充填空間Rは、枕木2の長手方向に沿って長手となるように形成されている。つまり、凹部1aが枕木2の長手方向に沿って長手となるように形成されることで、充填空間Rが形成されている。
【0027】
また、充填空間Rは、枕木保持体3の下方領域よりも外側に開放するように形成されている。具体的には、充填空間Rは、路盤1の表面と枕木保持体3との間に形成された開口R1から枕木保持体3の下方領域よりも外側に開放するように形成されている。該開口R1は、枕木保持体3の端部(具体的には、下面における端縁部)と、路盤1の表面(具体的には、凹部1aの内面)との間に形成されている。
【0028】
本実施形態では、枕木保持体3の長手方向に直交する幅方向の両端部と路盤1の表面との間に一対の開口R1,R1が形成されている。具体的には、一対の開口R1,R1は、凹部1aの長手方向の両端部が路盤1の表面における枕木保持体3の下方領域の端部にまで達することで、一対の開口R1,R1が形成されている。そして、一対の開口R1,R1から充填空間Rの長手方向の両端部が枕木保持体3の下方領域よりも外側に開放している。言い換えれば、充填空間Rは、枕木保持体3の下方領域を枕木保持体3の幅方向の一端側から他端側に向かって連通するように形成されている。
【0029】
本供給方法は、充填空間Rに水分を含有する充填材を充填する際に用いられるものである。具体的には、本供給方法は、流動性を有する充填材を開口R1から充填空間R内に流し込むことで、充填空間Rに充填材を供給するものである。
【0030】
充填材としては、水と水硬性材料とが混練されてなるものが用いられる。水硬性材料と水との混合比としては、特に限定されるものではなく、充填空間Rへの流入をスムーズに行うことができると共に、充填空間Rに隙間無く充填することができる程度の流動性(具体的には、フロー値)を有するように設定することが好ましい。充填材のフロー値としては、300mm以上であることが好ましく、400mm以上であることがより好ましい。
【0031】
水硬性材料は、水と接触することで硬化するように構成されたものであり、粉状に形成されたものを用いることができる。例えば、水硬性材料としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、ジェットセメント、アルミナセメント等の速硬性セメント等を用いることができ、特に超速硬性のレギュレーテッドセットセメント(ジェットセメント系)が好ましい。
【0032】
また、充填材には、必要に応じて、混和材、急結剤、凝結調節剤、減水剤、細骨材等を配合してもよい。混和材としては、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石微粉末、消石灰、粘土鉱物系の微粉末などを用いることができる。急結剤としては、アルミン酸ソーダ、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩、炭酸ナトリウム等の炭酸塩等を用いることができる。凝結調節剤としては、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸等のオキシカルボン酸、これらの塩類などを用いることができる。
【0033】
本供給方法では、路盤1の表面における充填空間Rを形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤1の表面に壁部材4を配置する。具体的には、平面視における凹部1aの外周部の少なくとも一部を包囲するように、凹部1aよりも外側の路盤1の表面に壁部材4を配置する。本実施形態では、路盤1の表面における開口R1を形成する領域を包囲するように、枕木保持体3の下方領域よりも外側の路盤1の表面に壁部材4を配置する。壁部材4は、コ字状に形成された板部材が枕木保持体3の下方領域よりも外側の路盤1の表面に起立するように配置されて構成されている。
【0034】
板部材を路盤上に配置する際には、枕木2及び枕木保持体3の周囲に配置されたバラストを開口R1の周囲から除去して開口R1を露出させ、開口R1の周囲における路盤1の表層を掘り起こす。そして、コ字状の板部材の下端部を路盤1の表層に埋め込むことで、板部材を路盤1に設置する。
【0035】
本供給方法では、路盤1の表面と壁部材4との間に形成される隙間を覆うように水硬性材料を配置する。具体的には、路盤1の表面と壁部材4の下端部との境界部(より詳しくは、壁部材4によって包囲された領域の内側の境界部)を覆うように水硬性材料を配置する。また、路盤1の表面と壁部材4の下端部との境界部の略全域を覆うように水硬性材料を配置する。水硬性材料としては、充填材に用いられるものと同一のもの、又は、異なるものを用いることができる。
【0036】
上述のような粉体状の水硬性材料を用いる場合には、路盤1の表面から隆起するように水硬性材料を配置する。これにより、路盤1の表面と壁部材4の下端部との境界部の覆うように水硬性材料の隆起部5が形成され、壁部材4と隆起部5とからなる型枠6が構成される。本供給方法では、一対の開口R1,R1のそれぞれの近傍に型枠6が形成される。
【0037】
本供給方法では、図2(a)に示すように、一対の開口R1,R1のうち、一方の開口R1(以下、充填材供給口R2とも記す)から充填空間Rに充填材Gを流し込む。具体的には、充填材供給口R2の近傍に形成された型枠6の内側に充填材Gを流し込む。型枠6の内側に流し込まれた充填材Gは、型枠6によって案内されて充填材供給口R2から充填空間Rに流れ込む。
【0038】
そして、充填空間Rに流れ込んだ充填材Gは、充填空間Rを隙間無く満たすと共に、他方の開口R1(以下、充填材排出口R3とも記す)から排出され、充填材排出口R3の近傍の型枠6の内側に流れ込む。このように、充填材排出口R3から充填材Gが排出されることで、充填空間Rが充填材Gによって略満たされたことを確認することができる。
【0039】
充填材供給口R2及び充填材排出口R3の近傍に形成された型枠6,6の内側では、充填材Gが隆起部5と接触し、接触した部分の水分が隆起部5を形成する水硬性材料に奪われることとなる。このため、充填材Gにおける水硬性材料と接触した部分の水分量が低下し、斯かる部分の流動性が低下することとなる。また、水分を吸収した隆起部5(即ち、水硬性材料)によって、路盤1の表面と壁部材4の下端部と境界部に形成された隙間が閉塞されることとなる。
【0040】
これにより、路盤1と壁部材4との間に形成された隙間から充填材Gが流出するのを防止することができ、壁部材4によって包囲された領域の外側の意図しない範囲にまで充填材Gが流出してしまうのを防止することができる。このため、充填材Gの損失を抑制することができると共に、流出した充填材Gを除去したり、清掃したりする作業の手間を軽減することができ、充填材Gの供給作業を効率的に行うことができる。
【0041】
充填空間Rに満たされた充填材Gは、所定時間を経過することで硬化し、図2(b)に示すように、充填層G1を形成する。これにより、充填空間Rが埋め込まれ、充填空間Rが形成された領域におけるレールA、枕木2及び枕木保持体3の上下動を防止することができ、軌道の補修を行うことができる。
【0042】
以上のように、本発明に係る充填材の供給方法、及び、省力化軌道の補修方法によれば、充填空間に充填材を供給する際に、路盤表面の意図しない範囲にまで充填材が流出してしまうのを防止することができる。
【0043】
なお、本発明に係る充填材の供給方法、及び、省力化軌道の補修方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、枕木保持体3が列車等の通行する方向に沿って長尺状となるように形成されているが、これに限定されるものではなく、枚葉体状に形成されたものが列車等の通行する方向に沿って複数配列されるように構成されてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、バラストを構成する砕石等が一体的に形成されることで枕木保持体3が形成されているが、これに限定されるものではなく、コンクリート等の水硬性材料が水と混練されて硬化することで枕木保持体が形成されてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、充填空間Rが一対の開口R1,R1から開放するように構成されているが、これに限定されるものではなく、一つの開口R1のみから充填空間Rが開放するように構成されてもよい。斯かる場合には、一つの開口R1が充填材供給口R2及び充填材排出口R3として機能する。
【0047】
また、上記実施形態では、路盤1の表面に凹部1aが形成されることで充填空間Rが形成されているが、これに限定されるものではなく、枕木保持体3の下面側に凹部が形成されることで、充填空間Rが形成されてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、路盤1の表面と壁部材4との境界部の略全域を覆うように隆起部5が形成されているが、これに限定されるものではなく、路盤1の表面と壁部材4との境界部を部分的に(具体的には、隙間が形成された部分のみを)覆うように隆起部5を形成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、壁部材4によって包囲された領域内に水硬性材料が配置されている(隆起部5が形成されている)が、これに限定されるものではなく、壁部材4によって包囲された領域の外側において、路盤1の表面と壁部材4との境界部を覆うように水硬性材料を配置して、隆起部5を形成してもよい。斯かる場合には、路盤1の表面と壁部材4との境界に形成された隙間に流れ込んだ充填材Gが型枠6によって包囲された領域の外側に流出した際に、流出した充填材Gが隆起部5に接触するため、上述のように接触した部分の流動性を低下させることができる。路盤層1の表面の意図しない範囲にまで広がってしまうのを防止することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、充填材供給口R2から充填材Gを充填空間Rに供給しているが、これに限定されるものではなく、充填空間Rに達するように枕木保持体3に貫通孔を形成し、該貫通孔から充填空間Rに充填材Gを供給してもよい。斯かる場合、充填空間Rを満たした充填材Gは、一対の開口R1,R1から排出され、型枠6,6の内側に流れ込むこととなる。
【0051】
また、上記実施形態では、水硬性材料を配置して隆起部5を形成すると共に、壁部材4を用いているが、これに限定されるものではなく、図3(a)に示すように、壁部材4を用いずに型枠6を構成してもよい。具体的には、路盤1の表面における充填空間Rを形成する領域の外周部の少なくとも一部を包囲するように、該領域よりも外側の路盤1の表面に水硬性材料を配置するようにしてもよい。具体的には、路盤1の表面における開口R1を形成する領域を包囲するように、枕木保持体3の下方領域よりも外側の路盤1の表面に水硬性材料を配置するようにしてもよい。つまり、隆起部5のみによって型枠6を構成してもよい。
【0052】
このように構成することで、水硬性材料によって包囲された領域に充填材Gを流し込んだ際に、斯かる領域の外側の意図しない範囲に充填材Gが流出してしまうのを防止することができる。具体的には、路盤1の表面における水硬性材料によって包囲された領域に流し込まれた充填材Gは、斯かる領域を形成する隆起部5(水硬性材料)に接触して開口R1へ案内され、充填空間Rに流れ込むこととなる。
【0053】
この際、隆起部5(水硬性材料)によって包囲された領域に流し込まれた充填材Gは、隆起部5を形成する水硬性材料と接触し、接触した部分の水分が水硬性材料に奪われることとなる。このため、充填材Gにおける水硬性材料と接触した部分の水分量が低下し、斯かる部分の流動性が低下することとなる。
【0054】
これにより、隆起部5(水硬性材料)によって包囲された領域から充填材Gが流出し、路盤層1の表面の意図しない範囲にまで広がってしまうのを防止することができる。このため、充填材Gの損失を抑制することができると共に、流出した充填材Gを除去したり、清掃したりする作業の手間を軽減することができ、充填材Gの供給作業を効率的に行うことができる。
【0055】
また、上記実施形態では、充填空間Rが枕木保持体3の下方領域よりも外側に開放するように形成されているが、これに限定されるものではなく、凹部1aが枕木保持体3の下方領域よりも内側に形成されることで、充填空間Rが枕木保持体3の下方領域よりも外側に開放しないように形成されてもよい。斯かる場合には、図3(b)に示すように、ジャッキ等(図示せず)を用いて枕木保持体3を路盤1の表面から離間させ、凹部1aの外周部の少なくとも一部を包囲するように水硬性材料を配置して隆起部5を形成し、型枠6を構成してもよい。この際、隆起部5を枕木保持体3の下方領域から該下方領域よりも外側に亘って形成することで、枕木保持体3の下方領域よりも外側から充填材Gの供給を行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
1…路盤、1a…凹部、2…枕木、3…枕木保持体、4…壁部材、5…隆起部、6…型枠、A…レール、R…充填空間、R1…開口、R2…充填材供給口、R3…充填材排出口、G…充填材
図1
図2
図3