【解決手段】セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1は、供給された主燃料を環状に噴射させる環状の主燃料噴射口部66を有する主燃料バーナー60と、噴射された主燃料に可燃性物が到達するように、移送用気体流で可燃性物を移送方向に移送させると共に移送された可燃性物をさらに旋回用気体流wで旋回方向sに旋回させて拡散噴射させる可燃性物噴射手段としての可燃性物噴射ノズル10と、を備える。可燃性物噴射ノズル10は、搬送孔部20の中心Oに対して旋回方向s側に傾いた旋回用噴射口30を含む。
前記1以上の旋回用噴射口の噴射側の端部は、前記搬送孔部の内側面より外側に位置する、請求項1から5のいずれかに記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
【背景技術】
【0002】
セメントロータリーキルンに用いられる燃料燃焼装置は、供給された主燃料を環状に噴出させる環状の主燃料噴射端部を有する主燃料バーナーと、その環状の内側又は燃料燃焼装置の上部に配置された、廃プラスチックのような可燃性物を移送用気体流と共に、截頭円錐の側面状態に拡散噴射させる可燃性物噴射手段とを備える(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
燃料燃焼装置の主燃料の噴射手段は、先端が可燃性物噴射口とされる断面形状が円状の内側面を有する搬送孔部と、搬送孔部における可燃性物噴射口の近傍の内側面から中心に向けて延在した複数のブレードとを有し、複数のブレードは、搬送孔部の軸方向に対して所定の角度を有している。
主燃料は搬送孔部の軸の方向に流れる移送用気体流により搬送孔部内を搬送孔部の軸の方向に流れる。そして、複数のブレードから噴出された燃焼用1次空気流により、高温の2次空気を巻込みながらバーナーフレームに向けて截頭円錐の側面状態に拡散し、速やかに燃焼される。
【0004】
しかし、ブレードは、主燃料噴射口の近傍に形成されているので、主燃料とは別に移送用気体とともに吹き込まれた廃プラスチックのような可燃性物は、燃焼用1次空気流によって十分に拡散することは出来ず、主燃料が主に燃焼しているバーナーフレーム辺縁部に到達し難い。
また、これらを解決する目的で可燃性物の搬送管内に旋回拡散用のブレードを設置すると、搬送孔部内の可燃性物がブレードに引っかかり、可燃性物がブレードの位置で詰まり、ひいては、燃焼効果が悪化する恐れがある。
また、ブレードを可燃性物噴射口の近傍に設置しても、ブレードは固定されているので、セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置の運転中に、可燃性物の大きさや重さが変わっても、可燃性物の大きさや重さに応じた適切な向きにブレードを変えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、セメントロータリーキルン内で可燃性物を主燃料と共に効率よく燃焼させることができるセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のものを提供する。
[1]セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置は、供給された主燃料を環状に噴射させる環状の主燃料噴射口部を有する主燃料バーナーと、噴射された主燃料に可燃性物が到達するように、移送用気体流で前記可燃性物を移送方向に移送させると共に移送された前記可燃性物をさらに旋回用気体流で旋回方向に旋回させて拡散噴射させる可燃性物噴射手段と、を備える。前記可燃性物噴射手段は、内側を前記可燃性物が前記移送用気体流で前記移送方向に流れるように、前記移送方向に対して直交する平面における断面形状が円状の内側面、及び、前記主燃料噴射口部の内側に配置され、前記移送方向における前記内側面の端部に形成された、前記可燃性物が噴射する可燃性物噴射口を有する搬送孔部と、前記搬送孔部に形成され、前記移送方向から前記搬送孔部を見た場合において、前記旋回用気体流が前記搬送孔部の中心の周りを前記旋回方向に旋回するように、前記旋回用気体流を噴射する1以上の旋回用噴射口であって前記搬送孔部の中心に対して前記旋回方向側に傾いた1以上の旋回用噴射口と、前記旋回用気体流が前記1以上の旋回用噴射口から噴射するように、旋回用気体を供給する気体供給部と、を含む。前記1以上の旋回用噴射口は、前記搬送孔部における前記可燃性物噴射口から前記移送方向とは反対方向に、前記可燃性物が前記移送方向に進むにつれて前記搬送孔部の内側で前記旋回方向に旋回することができる旋回距離だけ離れた位置に形成されている。
【0008】
[2]前記旋回用噴射口の数は2以上であり、前記2以上の旋回用噴射口のうちある1つの旋回用噴射口は、前記移送方向から前記搬送孔部を見た場合において、前記旋回用気体流が前記搬送孔部の中心と、前記2以上の旋回用噴射口のうち前記ある1つの旋回用噴射口に対して前記旋回方向側の隣りに位置する旋回用噴射口と、の間を通るように、傾いている、[1]に記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
[3]前記旋回用噴射口の数は2以上であり、各旋回用噴射口は、前記移送方向から前記搬送孔部を見た場合において、各旋回用噴射口と前記搬送孔部の中心とを結んだ線に対して10度以上80度以下の範囲で傾いている、[1]に記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
【0009】
[4]前記旋回距離は、前記搬送孔部の内径の1.5倍の長さより長い、[1]から[3]のいずれかに記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
[5]以下の式で求められるスワール数(Sw)が0.2以上0.7以下である、[1]から[4]のいずれかに記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
(Gφ/(Gx×r))=(Sw)
Gφ:前記可燃性物が前記搬送孔部を流れる際の前記旋回方向の運動量(角運動量)
Gx:前記可燃性物が前記搬送孔部を流れる際の前記移送方向の運動量(軸方向運動量)
r:前記搬送孔部の内側面の半径
Sw:スワール数
【0010】
[6]前記1以上の旋回用噴射口の噴射側の端部は、前記搬送孔部の内側面より外側に位置する、[1]から[5]のいずれかに記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
[7]前記搬送孔部は可燃性物搬送用管であり、前記1以上の旋回用噴射口は、前記可燃性物搬送用管に形成されたスリットである、[1]から[6]のいずれかに記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
[8]前記スリットは、前記移送方向に伸びている、[7]に記載のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置。
【発明の効果】
【0011】
旋回用噴射口が搬送孔部の内側面から内側に突出していないので、搬送孔部の内部には曲部や障害物が無く、可燃性物が搬送孔部の内部で詰まりにくくすることができる。
また、搬送孔部を流れ方向から見ると、スリットの旋回方向の幅は内側面の円周長さに対して非常に短いので、流れ方向に流れる可燃性物がスリットに引っかかる恐れが殆どない。
本発明によれば、セメントロータリーキルン内で可燃性物を主燃料と共に効率よく燃焼させることができるセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係るセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1は、供給された主燃料を気体と共に環状に噴射させる主燃料バーナー60と、噴射された主燃料に可燃性物Rが到達するように、移送用気体流vで可燃性物Rを移送方向に移送させると共に移送された可燃性物Rをさらに旋回用気体流wで旋回方向sに旋回させて截頭円錐の側面状態に拡散噴射させる可燃物噴射手段とを有し、主燃料及び可燃性物Rを主燃料バーナー60のバーナーフレームAにおいて燃焼させる燃料燃焼装置である。本実施形態で用いる気体、移送用気体及び旋回用気体は空気であることが好ましいが、これに限定されず、燃焼排ガスや酸素を付加した空気などの気体であってもよく、また、その気体は、圧縮気体であってもよい。
【0015】
セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1は、主燃料バーナー60と、可燃性物噴射手段とを備える。本実施形態では、主燃料バーナー60は、環状のバーナーであり、可燃性物噴射手段は、主燃料バーナー60の内側に配置された、可燃性物Rを旋回かつ截頭円錐の側面状態に拡散状態に噴射させる可燃性物噴射ノズル10である。また、主燃料バーナー60から噴射される主燃料は、例えば、製造コスト低減により推進されている無煙炭やオイルコークスなどの難燃性燃料である固体粉末燃料として説明する。
【0016】
(主燃料バーナー)
図1及び
図2に示すように、主燃料バーナー60は、環状の主燃料噴射口部66を備える。さらに、主燃料バーナー60は、主燃料噴射口部66の内側に配置された環状の内側気体噴射口部64と、主燃料噴射口部66の外側に配置された環状の外側気体噴射口部68とを備える。内側気体噴射口部64、主燃料噴射口部66及び外側気体噴射口部68のそれぞれの移送方向f側の端部は主燃料噴射端部62と同じ位置に位置する。
【0017】
図2に示すように、主燃料噴射口部66は複数の主燃料噴射口66aで構成され、内側気体噴射口部64は複数の内側気体噴射口64aで構成され、外側気体噴射口部68は複数の外側気体噴射口68aで構成されている。
複数の内側気体噴射口64aと、複数の主燃料噴射口66aと、複数の外側気体噴射口68aとは、可燃性物噴射ノズル10を中心に環状に配置された最内周の第1円筒状部材a、その外側の第2円筒状部材b、第3円筒状部材c、最外周の第4円筒状部材d及び複数の整流板69により仕切られることにより、形成されている。
【0018】
図1に示すように、内側気体噴射口部64の一方はファン61aに接続している。内側気体噴射口部64の他方側には、複数の螺旋流路65が形成されている。ファン61aから送られてきた気体が可燃性物噴射ノズル10を中心に一方の旋回方向に旋回しかつ截頭円錐の側面状態に拡散するように、螺旋状の流路を形成している。
【0019】
主燃料噴射口部66は、主燃料を気体と共に噴射方向に向けて環状に噴射するように、主燃料を供給する主燃料供給部(図示せず)とファン61aとに接続している。主燃料噴射口部66の主燃料噴射端部62から環状に噴射した主燃料は、内側気体噴射口部64から噴射した気体により、噴射方向に進みながら旋回しかつ截頭円錐の側面状態に拡散する。
【0020】
外側気体噴射口部68の一方はファン61bに接続している。外側気体噴射口部68から噴出する高速気体流により生じる負圧によって周囲の高温ガスが誘引されるように、内側気体噴射口部64や主燃料噴射口部66からの噴射速度より速い速度で、外側気体噴射口部68から気体を噴射する。
主燃料噴射口部66から噴射された主燃料は、内側気体噴射口部64から噴射した気体により、噴射方向に進みながら旋回しかつ截頭円錐の側面状態に拡散すると共に、燃焼する。
【0021】
(可燃性物噴射手段)
図1及び
図2に示すように、可燃性物噴射手段は、噴射された主燃料のバーナーフレームAに可燃性物Rが到達するように、移送用気体流で可燃性物Rを移送方向f(
図1参照)に移送させると共に移送された可燃性物Rをさらに旋回用気体流wで旋回方向s(
図2参照)に旋回させて、截頭円錐の側面状態に拡散噴射させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、可燃性物噴射手段は、可燃性物Rを移送用気体流と共に、截頭円錐の側面状態に拡散噴射させる可燃性物噴射ノズル10として説明する。
【0022】
可燃性物噴射ノズル10は、搬送孔部20と、旋回用噴射口30と、気体供給部とを含む。本実施形態では、旋回用噴射口30の数は4つとして説明するが、1つ以上であればよい。
【0023】
また、本実施形態では、搬送孔部20と旋回用噴射口30とは、第1円筒状部材aと、4つのスリットを有する可燃性物用円筒状部材eと、環状封止部材27とで構成される。可燃性物用円筒状部材eは、第1円筒状部材aの内側に配置され、また、環状封止部材27は、第1円筒状部材aの移送方向f側端部と、可燃性物用円筒状部材eの移送方向f側端部とを気密的に塞いだ、環状板である。したがって、本実施形態では、搬送孔部20と旋回用噴射口30とは、いわゆる内側にスリットを有する2重管として説明しているがこれに限定されない。
【0024】
図1に示すように、搬送孔部20は、円状の内側面22と、可燃性物噴射口26とを有する。本実施形態では、搬送孔部20は、パイプのような可燃性物搬送用管である。
内側面22は、可燃性物Rが内側面22の内側を移送用気体流vと共に流れるように、可燃性物Rの移送方向f(噴射方向と同じ方向)に対して直交する平面(
図2の紙面)において、円状の断面形状を有する。移送用気体流vはファン52からの供給量に依存する。
可燃性物噴射口26は、主燃料噴射口部66の内側に配置されている。可燃性物噴射口26は、移送方向fにおける内側面22の端部に形成されており、可燃性物Rが噴射する噴射口である。
【0025】
気体供給部は、旋回用気体流wが旋回用噴射口30から噴射するように、旋回用気体を供給することができればよく、例えば、ファン54である。旋回用噴射口30から噴射する旋回用気体流wは、ファン54からの供給量に依存する。
【0026】
各旋回用噴射口30は、旋回用気体流wが噴射するように、可燃性物用円筒状部材eを半径方向に貫通するスリットである。
本実施形態では、旋回用噴射口30は、旋回用噴射口30が搬送孔部20の内側面22から内側に突出しないように、内側面22に開口したスリットである。
旋回用噴射口30が搬送孔部20の内側面22から内側に突出していないので、搬送孔部20の内部には曲部や障害物が無い。このため、可燃性物Rを搬送孔部20の内部で詰まりにくくすることができる。
スリットは、移送方向fに伸びていることが好ましいが、移送方向fに対して所定の角度で傾いていてもよい。搬送孔部20を移送方向fから見ると、移送方向fに伸びているスリットの旋回方向sの幅は、内側面22の円周長さに対して非常に短いので、移送方向fに流れる可燃性物Rがスリットに引っかかりにくくなる。
【0027】
図2に示すように、旋回用噴射口30の可燃性物用円筒状部材eを貫通する方向は、搬送孔部20の中心Oに対して旋回方向sの側に傾いている。
例えば、移送方向fから搬送孔部20を見た場合において、旋回用気体流wが搬送孔部20の中心Oと位置P2にある旋回用噴射口30との間を通るように、位置P1にある旋回用噴射口30の向きが傾いていることが好ましい。ここで、位置P2の旋回用噴射口30は、4つの旋回用噴射口30のうち位置P1にある旋回用噴射口30に対して旋回方向sの側の隣りに位置する。他の旋回用噴射口30も同様に傾いていることが好ましい。
また、位置P1の旋回用噴射口30の向きは、位置P1の旋回用噴射口30と搬送孔部20の中心Oとを結んだ線と旋回用気体流wの向きとの間の角度θが10度以上80度以下の範囲となるように、傾いていてもよい。
【0028】
また、旋回用噴射口30は、搬送孔部20における可燃性物噴射口26から移送方向fとは反対方向に、可燃性物Rが移送方向fに進むにつれて搬送孔部20の内側で旋回方向sに旋回することができる旋回距離だけ離れた位置に形成されている。旋回距離は、例えば、搬送孔部20の内側面22の内径の1.5倍(内側面22の半径rの3倍)の長さより長いことが好ましい。
【0029】
以上のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1は、搬送孔部20に形成され、移送方向vから搬送孔部20を見た場合において、旋回用気体流wが搬送孔部20の中心の周りを旋回方向sに旋回するように、旋回用気体流wを噴射する旋回用噴射口30を有し、その旋回用噴射口30は、搬送孔部20の中心Oに対して旋回方向s側に傾いている。このため、可燃性物Rに高速の旋回用気体流wによる旋回力を与えた状態で、主燃料バーナー60のバーナーフレームAに可燃性物Rを吹き込むので、可燃性物Rを、バーナーフレームA内の酸素濃度の高い位置に拡散させ、速やかに燃焼させることができる。
これにより、セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1はロータリーキルン76内で可燃性物Rを主燃料と共に効率よく燃焼させることができ、可燃性物Rの熱量を有効に利用できると共に、リサイクル資源の利用拡大を図ることができる。
【0030】
また、セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1は、ファン54の出力を調整することにより、旋回用噴射口30から吹き込まれる旋回用気体流wの速度を調整することができ、ひいては、可燃性物Rの旋回力を調整することができる。同様に、ファン52の出力を調整することにより、搬送孔部20内の可燃性物Rの移送用気体流vの速度を調整することができる。このため、可燃性物Rの大きさや重さが変わっても、ファン52とファン54との出力を調整するだけで、旋回用気体流wと移送用気体流vとの速度を調整することができ、可燃性物Rが主燃料バーナー60のバーナーフレームAに吹き込まれる位置を調整することができる。換言すると、ファン52とファン54との出力を調整するだけで、低温の旋回用気体流wと移送用気体流vとの使用量が削減されるので、ロータリーキルン76内の熱量を有効に利用することができる。例えば、可燃性物Rが小径又は低比重な粒子になった場合、旋回用噴射口30から吹き込まれる旋回用気体流wの速度を遅くすべく、ファン54の出力を下げる。逆に、可燃性物Rが大径又は高比重な粒子になった場合、旋回用噴射口30から吹き込まれる旋回用気体流wの速度を速くすべく、ファン54の出力を上げる。
【0031】
移送用気体流v及び旋回用気体流wの運動量は、以下の式で求められるスワール数(Sw)が0.2以上0.7以下となるようにすることが好ましい。
(Gφ/(Gx×r))=(Sw)
ここで、
Gφ:可燃性物Rが搬送孔部20を流れる際の旋回方向sの運動量(角運動量)
Gx:可燃性物Rが搬送孔部20を流れる際の移送方向fの運動量(軸方向運動量)
r:搬送孔部20の内側面の半径
Sw:スワール数
である。
【0032】
(セメントクリンカー焼成装置)
図3を参照して、セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1が用いられるセメントクリンカー焼成装置70を説明する。
セメントクリンカー焼成装置70は、石灰石、粘土、珪酸原料、酸化鉄原料などのセメント原料を焼成する際に使用される。セメントクリンカー焼成装置70は、4つのサイクロン71、72、73、74と、
図3を正面から見て右側下段のサイクロン72に連結された仮焼炉75、左側下段のサイクロン74及び右側下段のサイクロン72に連結されたライジングダクト77及びインレットフッド78と、インレットフッド78に連結されるロータリーキルン76と、ロータリーキルン76に連結される冷却機80と、左側最上段のサイクロン73に配管81を介して連結されるファン82とを備える。
【0033】
そして、ロータリーキルン76には、原料を焼成する燃料燃焼装置としての上述のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1が取り付けられている。また、ロータリーキルン76の内部には、セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1の主燃料バーナー60によりバーナーフレームが生じる。
【0034】
一次気体外流は、冷却機80からの高温の二次気体を同伴させて火炎を高温化することにより、石炭燃焼は促進される。
【0035】
つぎにセメントの製造方法について説明する。該製造方法は、原料作製工程と、セメントクリンカーの焼成工程と、仕上げ工程とを備えている。
【0036】
まず、原料作製工程において、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料を中心に所要の構成成分になるように粉砕、乾燥、混合して成分が安定した粉体原料(以下、単に原料という)が作製される。
【0037】
つぎに、セメントクリンカーの焼成工程に移行する。原料作製工程で作製された原料は、上述したセメントクリンカー焼成装置70のサスペンションプリヒーター(SP)の右側上段のサイクロン71に供給される。そして、右側上段のサイクロン71に供給された原料は、右側上段のサイクロン71のガス出口から排出されるガスと熱交換をしながら左側下段のサイクロン74内に導かれ、左側下段のサイクロン74で固気分離される。固体として分離された原料は、右側下段のサイクロン72に供給され、各段のサイクロン71、72、73、74で、「入口に供給」、「熱交換」、「固気分離」を順次繰り返し、仮焼炉75に供給される。仮焼炉75では、燃料を燃焼させて石灰石成分から二酸化炭素を分離して生石灰成分を生成させる。気流に同伴されて仮焼炉75を出た原料は、右側下段のサイクロン72内に導かれ、固気分離される。そして、固気分離された原料は、インレットフッド78を経てロータリーキルン76へと供給される。ロータリーキルン76に供給された原料は、ロータリーキルン76の傾斜に沿って窯尻から窯前へとさらに熱交換をしながら移動して焼成され、(セメント)クリンカーとなる。セメントクリンカーは品質上急冷が必要なので、ロータリーキルン76を出た後直ぐに冷却機80へと導かれ、ここで、気体などで急冷されて半製品であるセメントクリンカー(中間製品)となる。
【0038】
つぎに、仕上げ工程に移行して、セメントクリンカーに石膏が加えられて、セメントが完成する。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。例えば、本発明は、セメントクリンカー焼成装置のバーナーに適用するようにしたが、セメントクリンカー焼成装置に限定されるものではなく、微粉炭を燃料とする種々のバーナーにも適用できる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以上のセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1において、有効に可燃性物Rを搬送孔部20の可燃性物噴射口26から、截頭円錐の側面状態に拡散させるための移送用気体流vと旋回用気体流wとを説明する。
可燃性物RをバーナーフレームA内のO
2濃度の高い領域で有効に燃焼させるためには、可燃性物Rを可燃性物噴射口26から、噴流角度を0°<α<90°の範囲でロータリーキルン76内に、截頭円錐の側面状態に拡散させる必要がある。このとき、噴流角度αは、噴流角度α=arctan(旋回用気体流w/移送用気体流vの速度)で求められる。
旋回用気体流wが主燃料噴射口部66の主燃料噴射端部62で0よりも大きいと、可燃性物Rが可燃性物噴射口26から旋回状態及び拡散状態で噴射する。そこで、旋回用気体流wが主燃料噴射口部66の主燃料噴射端部62で0よりも大きくなるような、旋回用噴射口30のスリットから搬送孔部20内に流入させる旋回用気体流wの速度をシミュレーションで求めた。
【0041】
図4に、シミュレーションで用いたセメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1のモデルを示す。
図4に示すように、セメントロータリーキルン用燃料燃焼装置1のロータリーキルン76のモデルとして、直径(D2)が1000mm、長さ(L2)が5000mmのパイプとした。搬送孔部20の内側面22のモデルとして、直径(D1)が100mm、長さ(L1)が1500mmのパイプを用いた。旋回用噴射口30はスリットとし、パイプの先端からスリットの端部までの距離(m1)を50mm、スリットの幅(B)を2.5mm、スリットの長さ(m2)を50mmとした。スリットの向きは、スリットの位置とパイプの中心Oとを結んだ線とスリットからの旋回用気体流wの向きとの間の角度θを45°とし、スリットを、パイプの周囲を4分割した位置に形成した。パイプの内部への吹込み流速(移送用気体流vの速度)を25m/sに固定し、スリットからの吹込み流速(旋回用気体流w)を25,50,75,100,150,200m/sに、変化させた時の結果を表1及び
図5に示す。なお、可燃性物Rは直径3mm、比重1.3とした。
【0042】
表1及び
図5より、幾何学的には、スリットから吹込まれる旋回用気体流wの速度が25m/sでも、可燃性物噴射口26における旋回方向sの速度は0m/s以上であったが、この実施例(可燃性物Rの直径3mm、比重1.3)では、有効な截頭円錐の側面状態に拡散させるためには、スリットにおける旋回用気体流wの速度は75m/s以上必要であった。
【0043】
【表1】
【0044】
旋回を伴った流れは、可燃性物Rの角運動量(Gφ)と軸方向運動量(Gx)との比である、以下の式で算出されるスワール数(Sw)によって示される。本実施例では、Sw数が0.2以上0.7以下となる範囲に、スリットからの旋回用気体流wの速度を調整すると、可燃性物噴射口26から可燃性物Rが有効な截頭円錐の側面状態に拡散することが分かった。
移送用気体流v及び旋回用気体流wの運動量は、以下の式で求められるスワール数(Sw)が0.2以上0.7以下となるようにすることが分かった。
(Gφ/(Gx×r))=(Sw)
ここで、
Gφ:可燃性物Rが搬送孔部20を流れる際の旋回方向sの運動量(角運動量)
Gx:可燃性物Rが搬送孔部20を流れる際の移送方向fの運動量(軸方向運動量)
r:搬送孔部20の内側面の半径
Sw:スワール数
である。