【解決手段】変位情報生成装置1は、光源2と、ホログラム3と、反射層4と、光検出器5とを備えている。ホログラム3および反射層4は構造物10に取り付けられる。光源2とホログラム3が所定の位置関係にあるとき、光源2から出射された光はホログラム3に照射され、ホログラム3は回折光13を発生し、光検出器5は回折光13を受ける。構造物10の変位に応じて光源2とホログラム3の位置関係が変化すると、ホログラム3の回折効率が変化する。光源2から出射された光をホログラム3に照射したときの光検出器5の出力信号は、構造物10の変位に関する情報となる。
前記ホログラムが前記構造物に取り付けられて、前記構造物の変位に応じて、前記光源と前記ホログラムの位置関係が変化することを特徴とする請求項1記載の変位情報生成装置。
前記ホログラムは、透過型ホログラムであり、前記光源から出射されて前記反射部材によって反射された光が入射する第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記光検出器は、前記ホログラムの第2の面側に配置されていることを特徴とする請求項6または7記載の変位情報生成装置。
前記光検出器の出力信号は、前記光検出器が受けた光の強度分布を表す信号であることを特徴とする請求項1ないし4および6ないし8のいずれかに記載の変位情報生成装置。
再生用参照光が照射されたときに回折光を発生するホログラムと、前記ホログラムに照射される光を出射する光源と、受けた光に応じた信号を出力し、前記ホログラムが前記回折光を発生したときには前記回折光を受けることが可能な光検出器とを備えた変位情報生成装置を用いて、構造物の変位に関する情報を生成する変位情報生成方法であって、
前記構造物の変位に応じて、前記光源と前記ホログラムの位置関係または前記光源から出射されて前記ホログラムに照射される光の経路の状態が変化し、前記光源と前記ホログラムが所定の位置関係にあるとき、または前記光の経路が所定の状態のときには前記光源から出射された光が前記再生用参照光となるように、前記変位情報生成装置を設置する手順と、
前記構造物の変位に関する情報を生成する手順とを備え、
前記構造物の変位に関する情報は、前記光源から出射された光を前記ホログラムに照射したときの前記光検出器の出力信号であることを特徴とする変位情報生成方法。
前記ホログラムが前記構造物に取り付けられて、前記構造物の変位に応じて、前記光源と前記ホログラムの位置関係が変化することを特徴とする請求項11記載の変位情報生成方法。
前記ホログラムは、透過型ホログラムであり、前記光源から出射されて前記反射部材によって反射された光が入射する第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記光検出器は、前記ホログラムの第2の面側に配置されていることを特徴とする請求項16または17記載の変位情報生成方法。
前記光検出器の出力信号は、前記光検出器が受けた光の強度分布を表す信号であることを特徴とする請求項11ないし14および16ないし18のいずれかに記載の変位情報生成方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る変位情報生成装置1の概略の構成について説明する。変位情報生成装置1は、構造物10の変位に関する情報を生成する装置である。
図1に示したように、変位情報生成装置1は、光源2と、ホログラム3と、反射層4と、光検出器5とを備えている。
【0023】
光源2は、ホログラム3に照射される光を出射する。なお、本出願において使用する「光」は、可視光に限らない広義の光である。光源2は、特にレーザ光を出射する。光源2としては、例えば半導体レーザ、固体レーザまたはガスレーザを用いることができる。
【0024】
ホログラム3は、再生用参照光が照射されたときに回折光を発生する。ホログラム3は、特に、透過型ホログラムである。ホログラム3は、光源2から出射された光が入射する第1の面3aと、第1の面3aとは反対側の第2の面3bとを有している。反射層4は、ホログラム3の第2の面3bに接し、ホログラム3と一体化されている。以下、ホログラム3および反射層4を含む構造体をホログラムモジュール6と呼ぶ。ホログラム3、反射層4ならびにホログラムモジュール6は、可撓性を有していてもよい。
【0025】
光検出器5は、ホログラム3からの光を受け、受けた光に応じた信号を出力する。光検出器5は、特に、ホログラム3が回折光を発生したときには回折光を受けることが可能である。本実施の形態における光検出器5の出力信号は、光検出器5が受けた光の強度を表す信号である。光検出器5としては、例えばフォトダイオードや光電子増倍管を用いることができる。
【0026】
変位情報生成装置1は、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム3の位置関係または光源2から出射されてホログラム3に照射される光の経路の状態が変化し、光源2とホログラム3が所定の位置関係にあるとき、または上記光の経路が所定の状態のときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように設置される。そして、光源2から出射された光をホログラム3に照射したときの光検出器5の出力信号が、構造物10の変位に関する情報となる。
【0027】
本実施の形態では、特に、ホログラム3および反射層4を含むホログラムモジュール6が構造物10に取り付けられて、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム3の位置関係が変化する。
図1は、光源2とホログラム3が所定の位置関係にあるときを表している。このときには、光源2から出射されて、ホログラム3を透過して反射層4で反射された光が再生用参照光となり、回折光は、ホログラム3の第1の面3aから出射される。
図1において、符号11は、光源2から出射されてホログラム3の第1の面3aに入射する入射光を示している。符号12は、入射光11がホログラム3を透過して反射層4で反射された後の光である反射光を示している。符号13は、ホログラム3が発生した回折光を示している。
【0028】
変位情報生成装置1は、更に、光源2を支持すると共に光源2の位置および姿勢を変更可能な光源支持装置7と、図示しない支持部とを備えている。支持部は、光源支持装置7および光検出器5を一体的に支持する。以下、光源2、光源支持装置7、光検出器5および図示しない支持部を含む一体的な構造体を、光学モジュール8と呼ぶ。光源支持装置7については、後で詳しく説明する。
【0029】
なお、本実施の形態において、ホログラム3として、透過型ホログラムの代わりに反射型ホログラムを用いてもよい。この場合には、反射層4は不要であり、ホログラム3が構造物10に取り付けられる。
【0030】
次に、
図2を参照して、
図1に示したホログラム3の作製方法について説明する。
図2に示したように、ホログラム3は、例えば、ホログラム用感光材料よりなる感光層3Pに記録用参照光21と信号光22を入射させ、記録用参照光21と信号光22の干渉によって生じる干渉縞を、何らかの光学定数の変化として感光層3Pに記録することによって作製される。信号光22は、ホログラフィにおける物体光に対応する。
図2は、ホログラム3が透過型ホログラムである場合におけるホログラム3の作製方法を示している。この場合、記録用参照光21と信号光22を、感光層3Pの同じ面に入射させる。ここで、記録用参照光21および信号光22が入射する感光層3Pの面を第1の面3Paとし、第1の面3Paとは反対側の感光層3Pの面を第2の面3Pbとする。なお、図示しないが、反射型ホログラムを作製する場合には、記録用参照光21と信号光22を、感光層3Pの互いに反対側の面に入射させる。
【0031】
ホログラム用感光材料は、光が照射されることによって屈折率、透過率、反射率、偏光特性といった何らかの光学定数が変化しうる材料である。具体的には、ホログラム用感光材料としては、フォトポリマー、フォトリフラクティブ結晶、フォトリフラクティブポリマー、カルコゲナイド化合物、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料等が挙げられる。
【0032】
記録用参照光21と信号光22が照射される第1の面3Paは、平面であってもよいし、凹凸がある面であってもよい。第1の面3Paに凹凸がある場合には、空気と感光層3Pとの屈折率差に起因した記録用参照光21および信号光22の反射および散乱を抑制することができ、良好なホログラム3を作製することが可能になる。このような凹凸を形成する方法として例えば、電子線加工法、リソグラフィ法、インプリント法、光誘起表面レリーフ法等が挙げられる。
【0033】
次に、
図3を参照して、
図1に示したホログラムモジュール6の作製方法について説明する。
図2に示した感光層3Pは、記録用参照光21と信号光22の干渉によって生じる干渉縞が記録されて、
図3に示したホログラム3になる。感光層3Pの第1の面3Paと第2の面3Pbは、それぞれ、ホログラム3の第1の面3aと第2の面3bになる。ホログラムモジュール6は、ホログラム3の第2の面3bに反射層4を接合することによって作製される。
【0034】
なお、ホログラム3は、光学定数の変化によって干渉縞が記録されたものに限らない。例えば、ホログラム3は、媒体表面の凹凸によって干渉縞が記録された表面レリーフ型ホログラムであってもよい。
【0035】
反射層4は、接着剤を用いてホログラム3の第2の面3bに貼り付けてもよいし、真空蒸着法、スパッタリング法等によって第2の面3bに形成してもよい。反射層4は、
図1に示した光源2から出射される光に対して高い反射率、好ましくは50%以上の反射率を示すように形成される。反射層4の材料としては、例えば、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Ta、W、Pd、Pt、Au、Pb等の金属、およびこれらの合金を用いることができる。また、反射層4は、多層反射膜を用いて構成してもよい。
【0036】
ホログラムモジュール6は、ホログラム3および反射層4を支持するための1つ以上の基板を含んでいてもよい。基板は、ホログラム3の第1の面3aに接する位置、ホログラム3の第2の面3bと反射層4の間、反射層4におけるホログラム3とは反対側の面に接する位置のうちの1つ以上の位置に設けることができる。ホログラム3の第1の面3aに接する位置に設けられる基板と、ホログラム3の第2の面3bと反射層4の間に設けられる基板は、
図1に示した光源2から出射される光に対して高い透過率を有している必要がある。基板は、可撓性を有していてもよい。
【0037】
基板の材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂等が用いられるが、成形性およびコストの点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性およびコストの点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂が特に好ましい。また、基板としては、表面を紫外線硬化樹脂等でハードコート処理したものや、反射防止処理をしたものも適宜使用することができる。また、予め反射層4が設けられた基板を用いて、ホログラムモジュール6を作製してもよい。
【0038】
ホログラム3の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ホログラム3の厚みが1〜3000μmの範囲内であれば、350nm〜800nmの波長領域における透過率が高くなるため、有利である。基板を用いずホログラムモジュール6を作製する場合には、表面を紫外線硬化樹脂等でハードコート処理したものや反射防止処理をしたホログラム3を用いて、ホログラムモジュール6を作製してもよい。
【0039】
次に、
図4を参照して、本実施の形態におけるホログラム3の回折光発生の原理について説明する。始めに、ホログラム3に照射する光すなわち入射光11の波長が
図2に示した記録用参照光21の波長と等しい場合について説明する。ホログラム3に入射する入射光11は、ホログラム3を透過して反射層4で反射されて、反射光12となる。この反射光12の進行方向が、
図2に示した記録用参照光21の進行方向とは反対方向であるとき、反射光12は、記録用参照光21に対する位相共役光であって、ホログラム3から回折光13を発生させることのできる再生用参照光となる。また、反射光12の進行方向が記録用参照光21の進行方向とは反対方向であるときに、ブラッグの回折条件が満たされて、ホログラム3の回折効率が最大になる。ホログラム3が発生した回折光13は、ホログラム3の第1の面3aから出射される。回折光13の進行方向は、
図2に示した信号光22の進行方向とは反対方向である。回折光13は、信号光22に対する位相共役光である。
【0040】
ホログラム3に照射する光すなわち入射光11の波長は、
図2に示した記録用参照光21の波長と異なっていてもよい。この場合には、反射光12の進行方向が、記録用参照光21の進行方向と平行ではない所定の方向のときに、反射光12が再生用参照光となって、ホログラム3の回折効率が最大になる。また、この場合には、ホログラム3が発生した回折光13の進行方向は、信号光22の進行方向と平行ではない。
【0041】
ホログラム3に照射する光の波長は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ホログラム3に照射する光の波長としては、光軸調整の容易さから、可視光領域の波長が好ましい。
【0042】
図1を参照して説明した、光源2とホログラム3の所定の位置関係というのは、ホログラム3の回折効率が最大になるように入射光11がホログラム3に入射するときの光源2とホログラム3の位置関係である。
【0043】
本実施の形態では、構造物10が変位すると、それに追従してホログラムモジュール6も変位し、その結果、光源2とホログラム3の位置関係が変化する。光源2とホログラム3の位置関係が、構造物10の変位に起因して上記所定の位置関係からずれると、光源2とホログラム3の位置関係が上記所定の位置関係である場合に比べて、ホログラム3の回折効率が低下して、回折光13の強度が低下する。そのため、光検出器5が受ける光の強度は、光源2とホログラム3の位置関係が上記所定の位置関係であるときに最大値になり、光源2とホログラム3の位置関係が、構造物10の変位に起因して上記所定の位置関係からずれると最大値よりも小さくなる。光検出器5は、光検出器5が受けた光の強度を表す信号を出力する。この光検出器5の出力信号は、構造物10の変位に応じて変化する。そのため、光源2から出射された光をホログラム3に照射したときの光検出器5の出力信号は、構造物10の変位に関する情報となる。
【0044】
次に、本実施の形態に係る変位情報生成方法について説明する。本実施の形態に係る変位情報生成方法は、本実施の形態に係る変位情報生成装置1を用いて、構造物10の変位に関する情報を生成する方法である。変位情報生成方法は、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム3の位置関係または光源2から出射されてホログラム3に照射される光の経路の状態が変化し、光源2とホログラム3が所定の位置関係にあるとき、または上記光の経路が所定の状態のときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように、変位情報生成装置1を設置する手順と、構造物10の変位に関する情報を生成する手順とを備えている。構造物10の変位に関する情報は、光源2から出射された光をホログラム3に照射したときの光検出器5の出力信号である。
【0045】
本実施の形態における変位情報生成装置1を設置する手順では、ホログラムモジュール6を構造物10に取り付け、光学モジュール8を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置する。光学モジュール8は、常時設置していてもよいし、構造物10の変位に関する情報を生成するときにのみ設置してもよい。
【0046】
[第1の実施例]
以下、第1の実施の形態におけるホログラム3の実施例である第1の実施例のホログラム3とその特性について説明する。なお、本実施の形態におけるホログラム3は、以下に示す第1の実施例のホログラム3に限定されるものではない。
【0047】
第1の実施例では、以下の方法で、
図2に示した感光層3Pを作製した。まず、マトリックス樹脂形成成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製)34.5部(質量部)、ポリエーテルトリオール((株)ADEKA製、G−400、平均分子量430)46.1部およびトリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製)10.0部と、ジブチルスズジラウレート(東京化成工業(株)製)0.06部、4−ビニルジフェニルスルフィド(新日鉄住金化学(株)製)2.0質量部、Irgacure−379(BASF製)0.6部およびO−アセチルクエン酸トリブチル(東京化成工業(株)製)6.0部を配合して、フォトポリマー組成物を調製した。
【0048】
次に、上記フォトポリマー組成物を、シリコンフィルムスペーサーを介して貼り合わせた2枚のガラス基板の空隙に導入し、窒素雰囲気下、60℃で2時間加熱処理を施して、2枚のガラス基板の間に、フォトポリマーからなる感光層3Pを形成した。2枚のガラス基板の各面の大きさは、30mm×30mmである。シリコンフィルムスペーサーは、それぞれ厚みが0.3mm、0.5mm、0.7mm、1.0mm、1.5mmの5つを用意し、シリコンフィルムスペーサーを変えることで、それぞれ厚みが0.3mm、0.5mm、0.7mm、1.0mm、1.5mmの5種類の感光層3Pを作製した。
【0049】
第1の実施例のホログラム3は、
図5に示した記録用光学系を用いて、感光層3Pの第1の面3Paに記録用参照光21と信号光22を入射させ、記録用参照光21と信号光22の干渉によって生じる干渉縞を感光層3Pに記録することによって作製した。
図5に示した記録用光学系は、連続発振の半導体レーザ31と、この半導体レーザ31の出射光の光路上に順に配置されたミラー32、1/2波長板33、偏光ビームスプリッタ34、シャッタ35、ビームエキスパンダ36、1/2波長板37、絞り38および偏光ビームスプリッタ39を備えている。
【0050】
半導体レーザ31は、波長405nmのレーザ光を出射する。半導体レーザ31の出射光は、ミラー32で反射され、1/2波長板33を通過して、偏光ビームスプリッタ34で反射される。1/2波長板33と偏光ビームスプリッタ34は、偏光ビームスプリッタ34で反射された後の光の強度を調整するために設けられている。偏光ビームスプリッタ34で反射された後の光は、シャッタ35を通過し、更にビームエキスパンダ36を通過してビーム径が拡大される。ビームエキスパンダ36は、スペイシャルフィルタとコリメータレンズとを含み、ビームエキスパンダ36を通過した後の光が平面波となるように調整されている。ビームエキスパンダ36を通過した後の光は、1/2波長板37を通過し、更に絞り38を通過して、ビーム径が縮小された後、偏光ビームスプリッタ39に入射する。絞り38の開口径は6mmである。
【0051】
偏光ビームスプリッタ39は、入射した光をS偏光の光とP偏光の光に分離する斜面を有し、S偏光の光は斜面で反射して偏光ビームスプリッタ39から出射され、P偏光の光は斜面を通過して偏光ビームスプリッタ39から出射される。1/2波長板37は、偏光ビームスプリッタ39で分離されるS偏光の光とP偏光の光の強度の比率を調整するために設けられている。ここで、絞り38側から偏光ビームスプリッタ39に入射して、偏光ビームスプリッタ39から出射されたP偏光の光を、第1のP偏光の光と呼ぶ。
【0052】
図5に示した記録用光学系は、更に、偏光ビームスプリッタ39から出射されたS偏光の光の光路上に順に配置された1/4波長板40およびミラー41を備えている。偏光ビームスプリッタ39から出射されたS偏光の光は、1/4波長板40を通過して、円偏光の光に変換される。この円偏光の光は、ミラー41で反射され、1/4波長板40を通過して、P偏光の光に変換される。このP偏光の光は、偏光ビームスプリッタ39の斜面を通過して、偏光ビームスプリッタ39から出射される。このP偏光の光を、第2のP偏光の光と呼ぶ。
【0053】
図5に示した記録用光学系は、更に、偏光ビームスプリッタ39から出射された第1のP偏光の光の光路上に配置されたミラー42と、偏光ビームスプリッタ39から出射された第2のP偏光の光の光路上に配置されたシャッタ43と、感光層3Pを支持する回転ステージ44とを備えている。なお、シャッタ43は、後で説明する再生用光学系において閉状態にされるが、記録用光学系では常に開状態にされている。
【0054】
偏光ビームスプリッタ39から出射された第1のP偏光の光は、ミラー42で反射されて、記録用参照光21として、回転ステージ44によって支持された感光層3Pの第1の面3Paに照射される。また、偏光ビームスプリッタ39から出射された第2のP偏光の光は、シャッタ43を通過して、信号光22として、回転ステージ44によって支持された感光層3Pの第1の面3Paに照射される。回転ステージ44は、感光層3Pの第1の面3Paの法線方向を回転させて、第1の面3Paに対する記録用参照光21と信号光22の入射角を変更できるようになっている。
【0055】
感光層3Pに記録用参照光21と信号光22を入射させてホログラム3を作製する際には、所定の時間だけ、シャッタ35を開いて、記録用参照光21と信号光22によって感光層3Pを露光させた。その際、感光層3Pにおける記録用参照光21と信号光22の合計の光強度を24mW/cm
2とし、露光エネルギーが60mJ/cm
2となるようにした。このように感光層3Pを露光させた後、感光層3Pに残存する光重合開始剤、モノマーを消費するためのポストキュアを十分に行って、感光層3Pをホログラム3とした。ポストキュアは、露光後の感光層3Pに対して、中心波長が405nmの発光ダイオードの出射光を照射して行った。以上の処理を、前述の5種類の感光層3Pを用いて行い、それぞれ厚みが0.3mm、0.5mm、0.7mm、1.0mm、1.5mmの5種類の第1の実施例のホログラム3を作製した。
【0056】
次に、
図6を参照して、第1の実施例のホログラム3の特性を測定するために使用した再生用光学系について説明する。この再生用光学系は、
図5に示した記録用光学系の構成要素の他に、2つの光パワーメータ46,47を備えている。再生用光学系においては、シャッタ43は閉状態にされている。また、回転ステージ44は、第1の実施例のホログラム3を支持している。光パワーメータ46は、ホログラム3に入射する再生用参照光の強度を検出するためのものである。光パワーメータ47は、ホログラム3に再生用参照光が照射されたときにホログラム3が発生する回折光の強度を検出するためのものである。
【0057】
再生用光学系では、波長405nmの半導体レーザ31の出射光は、ミラー32、1/2波長板33、偏光ビームスプリッタ34、シャッタ35、ビームエキスパンダ36、1/2波長板37、絞り38を順に通過して、偏光ビームスプリッタ39に入射する。絞り38の開口径は2.7mmである。再生用光学系では、偏光ビームスプリッタ39の斜面を通過した第1のP偏光の光が利用される。この第1のP偏光の光は、ミラー42で反射されて、再生用参照光51として、回転ステージ44によって支持されたホログラム3の第1の面に照射される。
【0058】
ホログラム3の特性の測定は、以下のようにして行った。まず、回転ステージ44上にホログラム3を配置しない状態で、再生用参照光51を発生させて、この再生用参照光51の強度を光パワーメータ46によって検出した。このときに光パワーメータ46によって検出した再生用参照光51の強度は、後にホログラム3が回転ステージ44上に配置されたときにホログラム3に入射する再生用参照光51の強度に相当する。以下、この強度を入射光強度と言う。次に、回転ステージ44上にホログラム3を配置し、回転ステージ44によって、再生用参照光51が入射するホログラム3の第1の面3aの法線方向を回転させながら、所定の時間だけシャッタ35を開いて、再生用参照光51をホログラム3の第1の面3aに照射し、光パワーメータ47によって、ホログラム3が発生した回折光53の強度(以下、回折光強度と言う。)を検出した。なお、このとき、ホログラム3を透過した透過光52は、光パワーメータ46に入射する。
【0059】
ここで、ホログラム3の第1の面3aに対する再生用参照光51の入射角が、感光層3Pの第1の面3Paに対する記録用参照光21の入射角と等しいときのホログラム3の位置を正位置と呼ぶ。また、ホログラム3の第1の面3aに対する再生用参照光51の入射角から、感光層3Pの第1の面3Paに対する記録用参照光21の入射角を引いた値を、入射角ずれ量(単位は度)と定義する。ホログラム3が正位置にあるときの入射角ずれ量は0である。再生用参照光51をホログラム3の第1の面3aに照射する際には、回転ステージ44によって、入射角ずれ量が負の値から0を経由して正の値に変化するように、ホログラム3の位置を変更した。ホログラム3の特性の測定では、次に、下記の式(1)で表される回折効率を求めた。
【0060】
回折効率=(回折光強度/入射光強度)×100(%) …(1)
【0061】
ホログラム3の特性の測定では、このようにして、厚みが異なる5種類のホログラム3の各々について、入射角ずれ量と回折効率の関係を求めた。ここで、任意の回折効率を、回折効率の最大値で除して得られる値を、規格化回折効率と定義する。ホログラム3の特性の測定では、厚みが異なる5種類のホログラム3の各々について、入射角ずれ量と規格化回折効率の関係を求めた。
【0062】
以上の方法で求めた第1の実施例のホログラム3の特性を、
図7に示す。
図7において、横軸は入射角ずれ量(度)であり、縦軸は規格化回折効率である。また、
図7において、0.3mm、0.5mm、0.7mm、1.0mm、1.5mmと付記された5種類の点および線は、それぞれ、厚みが0.3mm、0.5mm、0.7mm、1.0mm、1.5mmのホログラム3の特性を表している。
【0063】
図7に示したように、5種類のホログラム3のいずれにおいても、入射角ずれ量がほぼ0のときに規格化回折効率が最大値になり、入射角ずれ量の絶対値が大きくなるに従って規格化回折効率が低下している。また、厚みが0.3mm以外の4種類のホログラム3では、入射角ずれ量の絶対値が0.1度になるまでに規格化回折効率がほぼ0になっている。入射角ずれ量の変化に対する規格化回折効率の変化が最も緩やかな、厚みが0.3mmのホログラム3でも、入射角ずれ量の絶対値が0.15度になると規格化回折効率がほぼ0になっている。このことから、ホログラム3は、入射角ずれ量を感度よく検出可能なセンサとなり得ることが分かる。
【0064】
また、
図7に示したように、ホログラム3の厚みが大きくなるほど、入射角ずれ量の変化に対するホログラム3の規格化回折効率の変化の勾配が大きくなっている。そのため、入射角ずれ量の変化に対するホログラム3の感度は、ホログラム3の厚みによって調整することが可能である。
【0065】
なお、
図7は、ホログラム3単体の特性を示しているが、
図1に示したホログラム3と反射層4を含むホログラムモジュール6の特性も、
図7と同様になる。光源2とホログラム3の所定の位置関係は、
図7における入射角ずれ量が0の場合に相当する。第1の実施の形態では、光源2とホログラム3の位置関係が上記所定の位置関係であるときに、ホログラム3の回折効率が最大値になり、光検出器5が受ける光の強度も最大値になる。光源2とホログラム3の位置関係が、構造物10の変位に起因して上記所定の位置関係からずれると、光源2とホログラム3の位置関係が上記所定の位置関係である場合に比べて、ホログラム3の回折効率が低下して、光検出器5が受ける光の強度も低下する。
【0066】
次に、
図8を参照して、
図1に示した光源支持装置7の一例について説明する。始めに、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向、Z方向とする。
図8に示した光源支持装置7は、XY回転ステージ71と傾斜ステージ72とを備えている。XY回転ステージ71は、ベース71Aとテーブル71Bを有している。XY回転ステージ71は、ベース71Aに対してテーブル71Bを、X方向とY方向に移動可能であり、且つZ方向を中心として回転可能である。傾斜ステージ72は、テーブル71Bに取り付けられている。傾斜ステージ72は、光源2を支持し、且つ光源2の出射光73の方向がZ方向に対してなす角度αを変更できるように光源2の姿勢を変更可能である。この光源支持装置7によれば、光源2における出射光73の出射位置をX方向およびY方向に変更可能である。光源支持装置7によれば、更に、出射光73の方向を表すベクトルをXY平面上に投影してできるベクトルがX方向に対してなす角度βと、上記の角度αを変更可能である。
【0067】
光源支持装置7によれば、ホログラムモジュール6が変位しても、光源2の位置および姿勢を調整して、光源2の出射光73をホログラム3の第1の面3aに入射させることが可能になる。また、光源支持装置7によれば、光源2の位置および姿勢を調整して、出射光73がホログラム3の第1の面3aに入射することを前提として、出射光73の方向すなわち入射光11の方向を変更することができる。
【0068】
以下、構造物10の変位に伴うホログラム3の変位の複数の態様と、本実施の形態に係る変位情報生成装置1および変位情報生成方法を用いた構造物10の変位の検出方法の一例について、概念的に説明する。この検出方法では、入射光11の方向を変更しながら、光検出器5が受けた光の強度(以下、受光強度と記す。)を求め、この入射光11の方向と受光強度の関係に基づいて、構造物10の変位を検出する。受光強度は、光検出器5の出力信号に基づいて求められる。
【0069】
ここで、構造物10にホログラムモジュール6を取り付けた後、構造物10の変位が生じていない段階におけるホログラム3の状態を、ホログラム3の初期状態と呼ぶ。また、初期状態のホログラム3の回折効率が最大値になるとき、すなわち光源2と初期状態のホログラム3の位置関係が所定の位置関係であるときの入射光11の方向を基準方向と定義し、このときの受光強度を基準強度と定義する。入射光11の方向は、ホログラム3の第1の面3aを基準とした座標ではなく、空間上の座標で規定される。また、任意の入射光11の方向が基準方向に対してなす角度を、入射光方向ずれ量(単位は度)と定義する。また、任意の入射光11の方向が基準方向に対して時計回り方向に回転している場合の入射光方向ずれ量は正の値で表し、任意の入射光11の方向が基準方向に対して反時計回り方向に回転している場合の入射光方向ずれ量は負の値で表すものとする。また、任意の受光強度を基準強度で除して得られる値を、規格化強度と定義する。
【0070】
構造物10の変位の検出方法では、始めに、初期状態のホログラム3について、入射光11の方向と受光強度の関係である入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を求める。
【0071】
図9は、初期状態のホログラム3に対する入射光11の方向を変更する方法を示している。この方法では、光源支持装置7を用いて光源2の位置および姿勢を調整して、光源2の出射光73がホログラム3の第1の面3aに入射することを前提として、出射光73の方向すなわち入射光11の方向を変更する。
図9では、光源2と初期状態のホログラム3の位置関係が所定の位置関係であるときの光源2と入射光11を実線で表し、他のときの光源2と入射光11を破線で表している。
【0072】
図10は、初期状態のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を概念的に示す特性図である。
図10において、横軸は入射光方向ずれ量(度)であり、縦軸は規格化強度である。
図10に示したように、初期状態のホログラム3では、入射光方向ずれ量が0のときに規格化強度が最大値である1になり、入射光方向ずれ量の絶対値が大きくなるに従って規格化強度が低下する。
【0073】
次に、
図11を参照して、構造物10の変位に伴うホログラム3の変位の第1の態様について説明する。第1の態様は、ホログラム3の第1の面3aの法線方向3Nが回転するように、ホログラム3が変位する態様である。
図11では、初期状態のホログラム3を破線で表し、第1の態様の変位後のホログラム3を実線で表している。ここで、変位後のホログラム3は、初期状態に対してホログラム3の第1の面3aの法線方向3Nがdθだけ回転したものであるとする。構造物10の変位の検出方法では、
図9に示した初期状態のホログラム3に対する場合と同様にして、変位後のホログラム3について、入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を求める。
【0074】
図12は、第1の態様の変位後のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を概念的に示す特性図である。
図12における横軸と縦軸は、
図10と同じである。
図12において、実線の曲線は、第1の態様の変位後のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を示し、破線の曲線は、初期状態のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を示している。
図12に示したように、第1の態様の変位後のホログラム3では、入射光方向ずれ量がdθのときに規格化強度が最大値である1になり、入射光方向ずれ量がdθから離れるに従って規格化強度が低下する。従って、
図12に示した特性図から、第1の態様の変位の前後におけるホログラム3の回転角度dθを求めることができる。
【0075】
なお、
図11では、便宜上、dθを大きく描いているが、実際のdθの大きさは、せいぜい数度程度の小さい値である。第1の態様でホログラム3が変位すると、初期状態に対して、ホログラム3が発生する回折光13の方向が変化する。しかし、この回折光13の方向の変化の大きさは、dθと同様に小さい。そのため、回折光13の方向が変化しても、光検出器5は回折光13を受けることができる。
【0076】
次に、
図13を参照して、構造物10の変位に伴うホログラム3の変位の第2の態様について説明する。第2の態様は、ホログラム3が、第1の面3aに平行な方向に変位する態様である。
図13では、初期状態のホログラム3を破線で表し、第2の態様の変位後のホログラム3を実線で表している。構造物10の変位の検出方法では、
図9に示した初期状態のホログラム3に対する場合と同様にして、変位後のホログラム3について、入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を求める。この場合には、
図9において実線で示した光源2の位置から、
図9において実線で示した入射光11の方向に垂直な方向に、所定の距離d1だけ光源2の位置をずらすと、
図10に示した入射光方向ずれ量と規格化強度の関係が得られる。ここで、
図9において実線で示した入射光11が初期状態のホログラム3の第1の面3aに入射する際の入射角をθiとし、第2の態様の変位の前後におけるホログラム3の位置の変化量をd2とする。d2は、下記の式(2)によって求められる。
【0078】
入射角θiは既知である。従って、d1を求めることにより、式(2)を使って、第2の態様の変位の前後におけるホログラム3の位置の変化量d2を求めることができる。
【0079】
次に、
図14を参照して、構造物10の変位に伴うホログラム3の変位の第3の態様について説明する。第3の態様は、ホログラム3の第1の面3aが歪むように、ホログラム3が変位する態様である。構造物10の変位の検出方法では、
図9に示した初期状態のホログラム3に対する場合と同様にして、変位後のホログラム3について、入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を求める。
【0080】
図15は、第3の態様の変位後のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を概念的に示す特性図である。
図15における横軸と縦軸は、
図10と同じである。
図15に示したように、第3の態様の変位後のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係では、規格化強度の最大値が1より小さくなる。また、第3の態様の変位後のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を表す曲線の形状は、
図10に示した初期状態のホログラム3についての入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を表す曲線に比べて、なだらかになる。これらの現象は、第3の態様の変位後のホログラム3では、干渉縞の間隔が不均一になっているために生じる。このような入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を表す曲線の形状の特徴から、ホログラム3に第3の態様の変位が生じていることを知ることができる。
【0081】
第1ないし第3の態様の2つまたは3つが複合した変位がホログラム3に生じた場合には、上述の第1ないし第3の態様に特有の特徴が複合して現れる。例えば、第1の態様と第2の態様が複合した変位がホログラム3に生じた場合には、
図9において実線で示した光源2の位置から、
図9において実線で示した入射光11の方向に垂直な方向に、所定の距離d1だけ光源2の位置をずらすと、
図12に示したような入射光方向ずれ量と規格化強度の関係が得られる。従って、この場合には、d1を求めることにより、第2の態様の変位の前後におけるホログラム3の位置の変化量d2を求めることができ、
図12に示した特性図から第1の態様の変位の前後におけるホログラム3の回転角度dθを求めることができる。第1の態様と第2の態様に加えて第3の態様が複合した変位がホログラム3に生じた場合には、前述の入射光方向ずれ量と規格化強度の関係を表す曲線の形状の特徴から、ホログラム3に第3の態様の変位が生じていることを知ることができる。
【0082】
以上説明した例の構造物10の変位の検出方法によれば、第1ないし第3の態様のホログラム3の変位を検出することができる。ホログラム3の変位は構造物10の変位に追従するため、複数の態様のホログラム3の変位を検出できるということは、同様の複数の態様の構造物10の変位を検出できるということである。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態に係る変位情報生成装置1および変位情報生成方法によれば、簡単な構成で、空間を伝搬するという光の特徴を活かして、構造物10の変位に関する情報を生成することが可能になる。
【0084】
本実施の形態では、特にホログラム3を利用するが、このホログラム3の作製の際に構造物10を利用することはない。そのため、本実施の形態によれば、ホログラム3の作製を、構造物10の近くではなく、振動対策、迷光対策、温湿度管理等の点でホログラム3の作製に適した環境で行うことができる。従って、本実施の形態によれば、高精度のホログラム3を作製することが可能である。
【0085】
また、本実施の形態によれば、導線を用いた電力の供給や信号の出力の必要がないホログラムモジュール6を構造物10に取り付けて、ホログラムモジュール6に対して導線で接続されない光学モジュール8を構造物10から離れた場所に設置して、光学モジュール8の光検出器5から構造物10の変位に関する情報を取得することができる。従って、本実施の形態によれば、導線を用いずに、構造物10から離れた場所で、構造物10の変位に関する情報を取得可能な、構造ヘルスモニタリングに適したシステムを構築することができる。
【0086】
本実施の形態では、構造物10の変位に応じて光源2とホログラム3の位置関係が変化するように、ホログラムモジュール6を構造物10に取り付け、光学モジュール8を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置することが好ましい。ただし、本実施の形態において、構造物10の変位に応じて光源2とホログラム3の位置関係が変化するように、光学モジュール8を構造物10に取り付け、ホログラムモジュール6を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置してもよい。あるいは、構造物10の変位に応じて光源2とホログラム3の位置関係が変化するように、ホログラムモジュール6と光学モジュール8を、構造物10における互いに異なる場所に取り付けてもよい。
【0087】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、
図16を参照して、本実施の形態に係る変位情報生成装置81の概略の構成について説明する。
図16に示したように、変位情報生成装置81は、光源2と、ホログラム83と、光検出器85とを備えている。変位情報生成装置81は、更に、光源支持装置7と、光源支持装置7を支持する図示しない支持部とを備えている。
【0088】
変位情報生成装置81は、更に、ホログラム83と光検出器85を一体的に保持する保持部86を備えている。以下、ホログラム83、光検出器85および保持部86を含む構造体を、変位情報生成器87と呼ぶ。ホログラム83、光検出器85、保持部86ならびに変位情報生成器87は、可撓性を有していてもよい。
【0089】
変位情報生成装置81は、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム83の位置関係が変化し、光源2とホログラム83が所定の位置関係にあるときには光源2から出射された光が、ホログラム83に対する再生用参照光となるように設置される。本実施の形態では、特に、ホログラム83および光検出器85を含む変位情報生成器87が構造物10に取り付けられる。そして、光源2から出射された光をホログラム83に照射したときの光検出器85の出力信号が、構造物10の変位に関する情報となる。
【0090】
次に、
図17を参照して、変位情報生成器87の構成について詳しく説明する。ホログラム83は、透過型ホログラムである。ホログラム83は、光源2から出射された光が入射する第1の面83aと、第1の面83aとは反対側の第2の面83bとを有している。
図17において、符号11は、光源2から出射されてホログラム83の第1の面83aに入射する入射光を示している。ホログラム83は、入射光11が再生用参照光となるときには、回折光91を発生する。この回折光91は、ホログラム83の第2の面83bから出射される。ホログラム83の回折効率が100%ではないときには、入射光11の一部は、ホログラム83を透過して、ホログラム83の第2の面83bから出射される透過光92となる。回折光91と透過光92の進行方向は、互いに異なる。
【0091】
光検出器85は、ホログラム83の第2の面83b側に、第2の面83bに対して所定の間隔を開けて配置されている。光検出器85は、受光領域で受けた光に応じた信号を出力する。光検出器85は、ホログラム83が回折光91を発生したときには回折光91を受けることが可能である。本実施の形態における光検出器85は、特に、回折光91を受けることが可能な第1の受光領域85Aと、透過光92を受けることが可能な第2の受光領域85Bとを有している。また、光検出器85は、第1の受光領域85Aで受けた光の強度を表す第1の信号SAと、第2の受光領域85Bで受けた光の強度を表す第2の信号SBとを出力する。光検出器85としては、例えば2分割フォトダイオードを用いることができる。
【0092】
本実施の形態に係る変位情報生成方法は、本実施の形態に係る変位情報生成装置81を用いて、構造物10の変位に関する情報を生成する方法である。変位情報生成方法は、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム83の位置関係が変化し、光源2とホログラム83が所定の位置関係にあるときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように、変位情報生成装置81を設置する手順と、構造物10の変位に関する情報を生成する手順とを備えている。構造物10の変位に関する情報は、光源2から出射された光をホログラム83に照射したときの光検出器85の出力信号である。本実施の形態における変位情報生成装置81を設置する手順では、変位情報生成器87を構造物10に取り付け、光源2を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置する。光源2は、常時設置していてもよいし、構造物10の変位に関する情報を生成するときにのみ設置してもよい。
【0093】
本実施の形態では、光源2とホログラム83が所定の位置関係にあるときに、ホログラム83の回折効率が最大になり、光検出器85の第1の受光領域85Aで受けた光の強度が最大になり、光検出器85の第2の受光領域85Bで受けた光の強度が最小になる。構造物10が変位すると、それに追従して、ホログラム83を含む変位情報生成器87も変位し、その結果、光源2とホログラム83の位置関係が変化する。光源2とホログラム83の位置関係が、構造物10の変位に起因して上記所定の位置関係からずれると、光源2とホログラム83の位置関係が上記所定の位置関係である場合に比べて、ホログラム83の回折効率が低下して、光検出器85の第1の受光領域85Aで受けた光の強度が低下し、光検出器85の第2の受光領域85Bで受けた光の強度が増加する。そのため、光源2から出射された光をホログラム83に照射したときの光検出器85の出力信号SA,SBは、構造物10の変位に関する情報となる。
【0094】
ここで、出力信号SA,SBによって表わされる光の強度を、それぞれIA,IBとする。SA,SBまたはIA,IBを用いた演算によって、構造物10の変位に関する更なる情報を生成してもよい。この演算によって生成される情報としては、例えば、IA−IBや、IA/(IA+IB)が挙げられる。
【0095】
本実施の形態に係る変位情報生成装置81および変位情報生成方法によれば、第1の実施の形態において説明した構造物10の変位の検出方法と同様にして、構造物10の変位を検出することが可能になる。
【0096】
なお、本実施の形態において、構造物10の変位に応じて光源2とホログラム83の位置関係が変化するように、光源2を構造物10に取り付け、変位情報生成器87を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置してもよい。あるいは、構造物10の変位に応じて光源2とホログラム83の位置関係が変化するように、光源2と変位情報生成器87を、構造物10における互いに異なる場所に取り付けてもよい。
【0097】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0098】
[第3の実施の形態]
次に、
図18および
図19を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図18は、本実施の形態に係る変位情報生成装置101の概略の構成を示す説明図である。
図19は、
図18における変位情報生成器の構成を示す説明図である。
【0099】
図18に示したように、変位情報生成装置101は、光源2と、光源支持装置7と、変位情報生成器87と、反射部材102とを備えている。変位情報生成装置101は、更に、光源支持装置7および変位情報生成器87を一体的に支持する図示しない支持部を備えている。以下、光源2、光源支持装置7、変位情報生成器87および図示しない支持部を含む一体的な構造体を、光学モジュール103と呼ぶ。
【0100】
図19に示したように、変位情報生成器87は、第2の実施の形態と同様に、ホログラム83、光検出器85および保持部86を含んでいる。
【0101】
変位情報生成装置101は、構造物10の変位に応じて、光源2から出射されてホログラム83に照射される光の経路の状態が変化し、この光の経路が所定の状態のときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように設置される。本実施の形態では、特に、反射部材102が、構造物10に取り付けられる。反射部材102は、反射面102aを有し、この反射面102aによって、光源2から出射された光をホログラム83に向けて反射する。反射面102aは、光源2から出射される光に対して高い反射率、好ましくは50%以上の反射率を有する。反射部材102は、可撓性を有していてもよい。反射部材102は、例えば、樹脂等からなる基板に反射層を設けて構成されたものでもよい。
【0102】
ここで、構造物10に反射部材102を取り付けた後、構造物10の変位が生じていない段階における反射部材102の状態を、反射部材102の初期状態と呼ぶ。変位情報生成器87と初期状態の反射部材102は、光源2から出射された光である出射光73が、初期状態の反射部材102で反射されて反射光111となり、この反射光111がホログラム83に照射されるように配置される。本実施の形態では、光源2から出射され、反射部材102で反射されてホログラム83に向かう光である反射光111をホログラム83に照射したときの光検出器85の出力信号が、構造物10の変位に関する情報となる。
【0103】
反射部材102が初期状態のとき、反射光111は、ホログラム83に対する再生用参照光となる。
図19に示したように、ホログラム83は、反射光111が再生用参照光であるときには、回折光91を発生する。この回折光91は、ホログラム83の第2の面83bから出射される。ホログラム83の回折効率が100%ではないときには、入射光11の一部は、ホログラム83を透過して、ホログラム83の第2の面83bから出射される透過光92となる。回折光91と透過光92の進行方向は、互いに異なる。
【0104】
光検出器85は、回折光91を受けることが可能な第1の受光領域85Aと、透過光92を受けることが可能な第2の受光領域85Bとを有している。また、光検出器85は、第1の受光領域85Aで受けた光の強度を表す第1の信号SAと、第2の受光領域85Bで受けた光の強度を表す第2の信号SBとを出力する。
【0105】
本実施の形態に係る変位情報生成方法は、本実施の形態に係る変位情報生成装置101を用いて、構造物10の変位に関する情報を生成する方法である。変位情報生成方法は、構造物10の変位に応じて、光源2から出射されて、反射部材102を経由してホログラム83に照射される光の経路(以下、照射光の経路と言う。)の状態が変化し、照射光の経路が所定の状態のときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように、変位情報生成装置101を設置する手順と、構造物10の変位に関する情報を生成する手順とを備えている。構造物10の変位に関する情報は、光源2から出射された光を、反射部材102を経由させてホログラム83に照射したときの光検出器85の出力信号である。本実施の形態における変位情報生成装置101を設置する手順では、反射部材102を構造物10に取り付け、光学モジュール103を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置する。光学モジュール103は、常時設置していてもよいし、構造物10の変位に関する情報を生成するときにのみ設置してもよい。
【0106】
本実施の形態では、反射部材102が初期状態であって、反射光111がホログラム83に対する再生用参照光となるときに、ホログラム83の回折効率が最大になり、光検出器85の第1の受光領域85Aで受けた光の強度が最大になり、光検出器85の第2の受光領域85Bで受けた光の強度が最小になる。このときの照射光の経路の状態を、照射光の経路の初期状態と呼ぶ。構造物10が変位すると、それに追従して反射部材102も変位し、その結果、照射光の経路の状態が変化する。照射光の経路の状態が、照射光の経路の初期状態から変化すると、初期状態のときに比べて、ホログラム83の回折効率が低下して、光検出器85の第1の受光領域85Aで受けた光の強度が低下し、光検出器85の第2の受光領域85Bで受けた光の強度が増加する。そのため、光源2から出射された光を、反射部材102を経由させてホログラム83に照射したときの光検出器85の出力信号SA,SBは、構造物10の変位に関する情報となる。
【0107】
第2の実施の形態と同様に、出力信号SA,SBによって表わされる光の強度をそれぞれIA,IBとしたとき、SA,SBまたはIA,IBを用いた演算によって、構造物10の変位に関する更なる情報を生成してもよい。
【0108】
以下、構造物10の変位に伴う反射部材102の変位ならびに照射光の経路の状態の変化の複数の態様について説明する。
【0109】
第1の態様は、反射部材102の反射面102aの法線方向が回転するように、反射部材102が変位する態様である。この第1の態様では、照射光の経路の状態は、初期状態に比べて、反射面102aに対する光源2の出射光73の入射位置を中心として、反射光111の経路が回転するように変化する。これにより、ホログラム83に対する反射光111の入射角が変化する。
【0110】
第2の態様は、反射部材102が、反射面102aに平行な方向に変位する態様である。この第2の態様で反射部材102が変位した場合には、光源2の出射光73を反射部材102の反射面102aで反射させてホログラム83に入射せるためには、光源2の位置と姿勢を変えて、照射光の経路の初期状態に比べて、出射光73の経路と反射光111の経路の両方を変更する必要がある。従って、第2の態様では、初期状態に比べて、出射光73の経路と反射光111の経路の両方が変化するように、照射光の経路の状態が変化する。上記の第1の態様と同様に、第2の態様でも、ホログラム83に対する反射光111の入射角が変化する。
【0111】
第3の態様は、反射面102aが歪むように反射部材102が変位する態様である。この第3の態様では、初期状態に比べて、照射光の経路の一部を構成する反射面102aの状態が変化するように、照射光の経路の状態が変化する。この第3の態様で反射部材102が変位した場合には、照射光の経路が初期状態のときに比べて、反射光111の波面が変化する。その結果、ホログラム83の回折効率が低下する。
【0112】
本実施の形態では、光源支持装置7を用いて光源2の位置および姿勢を調整して、反射光111がホログラム83の第1の面83aに入射することを前提として、出射光73の方向を変更して、出射光73の方向と回折光91の強度との関係を求めることにより、第1ないし第3の態様の反射部材102の変位を検出することができる。反射部材102の変位は構造物10の変位に追従するため、複数の態様の反射部材102の変位を検出できるということは、同様の複数の態様の構造物10の変位を検出できるということである。
【0113】
本実施の形態によれば、変位情報生成装置101の主要な構成要素である光源2、ホログラム83および光検出器85を一体化することができる。また、本実施の形態によれば、構造物10に取り付けるものがホログラム83ではなく反射部材102でよい。従って、本実施の形態によれば、環境に起因したホログラム83の劣化を防止することができる。また、反射部材102は、ホログラムに比べて、構成が簡単で、低コストで、耐環境性に優れている。従って、反射部材102を構造物10の変位に関する情報を生成するためのセンサと捉えると、反射部材102は、構造ヘルスモニタリングにおいて構造物に設置するのに適したセンサであると言える。
【0114】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0115】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。始めに、
図20を参照して、本実施の形態に係る変位情報生成装置201の概略の構成について説明する。変位情報生成装置201は、第1の実施の形態におけるホログラム3の代わりにホログラム203を備え、第1の実施の形態における光検出器5の代わりに光検出器205を備えている。また、変位情報生成装置201は、結像光学系207を備えている。
【0116】
ホログラム203は、記録用参照光と所定の2次元パターンの強度分布を有する信号光との干渉によって生じる干渉縞が記録されたものである。ホログラム203は、再生用参照光が照射されたときに回折光を発生する。この回折光は、信号光と同じ2次元パターンの強度分布を有する。本実施の形態におけるホログラム203の回折光発生の原理は、第1の実施の形態におけるホログラム3と同様である。
【0117】
ホログラム203は、透過型ホログラムである。ホログラム203は、光源2から出射された光が入射する第1の面203aと、第1の面203aとは反対側の第2の面203bとを有している。反射層4は、ホログラム203の第2の面203bに接し、ホログラム203と一体化されている。以下、ホログラム203および反射層4を含む構造体をホログラムモジュール206と呼ぶ。ホログラム203、反射層4ならびにホログラムモジュール206は、可撓性を有していてもよい。
【0118】
光検出器205は、ホログラム203からの光を受け、受けた光の強度分布を表す信号を出力する。光検出器205は、特に、ホログラム203が回折光を発生したときには回折光を受けることが可能である。光検出器205としては、例えば、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)や電荷結合素子(CCD)等を用いたイメージセンサを用いることができる。結像光学系207は、例えば複数のレンズからなり、回折光が有する強度分布の2次元パターンを、光検出器205上に結像する。変位情報生成装置201は、光源支持装置7、光検出器5および結像光学系207を一体的に支持する、図示しない支持部を備えている。以下、光源2、光源支持装置7、光検出器205、結像光学系207および図示しない支持部を含む一体的な構造体を、光学モジュール208と呼ぶ。
【0119】
変位情報生成装置201におけるその他の構成は、第1の実施の形態に係る変位情報生成装置1と同じである。
【0120】
変位情報生成装置201は、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム203の位置関係または光源2から出射されてホログラム203に照射される光の経路の状態が変化し、光源2とホログラム203が所定の位置関係にあるとき、または上記光の経路が所定の状態のときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように設置される。そして、光源2から出射された光をホログラム203に照射したときの光検出器205の出力信号が、構造物10の変位に関する情報となる。なお、本実施の形態では、光源2が出射する光の波長は、ホログラム203作製時における記録用参照光の波長と等しい。
【0121】
本実施の形態では、特に、ホログラム203および反射層4を含むホログラムモジュール206が構造物10に取り付けられて、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム203の位置関係が変化する。
図20は、光源2とホログラム203が所定の位置関係にあるときを表している。このときには、光源2から出射されて、ホログラム203を透過して反射層4で反射された光が再生用参照光となり、回折光は、ホログラム203の第1の面203aから出射される。
図20において、符号11は、光源2から出射されてホログラム203の第1の面203aに入射する入射光を示している。符号12は、入射光11がホログラム203を透過して反射層4で反射された後の光である反射光を示している。符号213は、ホログラム203が発生した回折光を示している。
【0122】
なお、本実施の形態において、ホログラム203として、透過型ホログラムの代わりに反射型ホログラムを用いてもよい。この場合には、反射層4は不要であり、ホログラム203が構造物10に取り付けられる。
【0123】
本実施の形態において、光源2とホログラム203の所定の位置関係というのは、ホログラム203の回折効率が最大になるように入射光11がホログラム203に入射するときの光源2とホログラム203の位置関係である。
【0124】
本実施の形態では、構造物10が変位すると、それに追従してホログラムモジュール206も変位し、その結果、光源2とホログラム203の位置関係が変化する。光源2とホログラム203の位置関係が、構造物10の変位に起因して上記所定の位置関係からずれると、光源2とホログラム203の位置関係が上記所定の位置関係である場合に比べて、ホログラム203の回折効率が低下する。
【0125】
本実施の形態では、ホログラム203の回折効率が最大であるときに、光検出器205は、信号光と同じ強度分布を有する光を受ける。構造物10の変位に起因してホログラム203の回折効率が低下すると、光検出器205が受ける光の強度分布の鮮明度が低下する。この鮮明度は、光検出器205の出力信号に基づいて評価することができる。従って、光源2から出射された光をホログラム203に照射したときの光検出器205の出力信号は、構造物10の変位に関する情報となる。
【0126】
次に、本実施の形態に係る変位情報生成方法について説明する。本実施の形態に係る変位情報生成方法は、本実施の形態に係る変位情報生成装置201を用いて、構造物10の変位に関する情報を生成する方法である。変位情報生成方法は、構造物10の変位に応じて、光源2とホログラム203の位置関係が変化し、光源2とホログラム203が所定の位置関係にあるときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように、変位情報生成装置201を設置する手順と、構造物10の変位に関する情報を生成する手順とを備えている。構造物10の変位に関する情報は、光源2から出射された光をホログラム203に照射したときの光検出器205の出力信号である。
【0127】
本実施の形態における変位情報生成装置201を設置する手順では、ホログラムモジュール206を構造物10に取り付け、光学モジュール208を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置する。光学モジュール208は、常時設置していてもよいし、構造物10の変位に関する情報を生成するときにのみ設置してもよい。
【0128】
[第2の実施例]
以下、第4の実施の形態におけるホログラム203の実施例である第2の実施例のホログラム203とその特性について説明する。なお、本実施の形態におけるホログラム203は、以下に示す第2の実施例のホログラム203に限定されるものではない。
【0129】
第2の実施例では、以下の方法で、
図2に示した感光層3Pを作製した。まず、第1の実施例で調整したフォトポリマー組成物の複数の材料のうちのIrgacure−379(BASF製)0.6部をIrgacure−784(BASF製)0.6部に変更した複数の材料を配合して、フォトポリマー組成物を調製した。
【0130】
次に、上記フォトポリマー組成物を、厚みが0.3mmのシリコンフィルムスペーサーを介して貼り合わせた2枚のガラス基板の空隙に導入し、窒素雰囲気下、60℃で2時間加熱処理を施して、2枚のガラス基板の間に、フォトポリマーからなる感光層3Pを形成した。2枚のガラス基板の各面の大きさは、30mm×30mmである。
【0131】
第2の実施例のホログラム203は、
図21に示した記録用光学系を用いて、感光層3Pの第1の面3Paに記録用参照光21と信号光222を入射させ、記録用参照光21と信号光222の干渉によって生じる干渉縞を感光層3Pに記録することによって作製した。
【0132】
図21に示した記録用光学系は、
図5に示した第1の実施例における記録用光学系と、以下の点で異なっている。
図21に示した記録用光学系は、
図5に示した記録用光学系における半導体レーザ31の代わりにレーザ231を備えている。レーザ231としては、YAGレーザを用いた。このレーザ231は、波長532nmのレーザ光を出射する。
【0133】
また、
図21に示した記録用光学系は、
図5に示した記録用光学系における1/4波長板40およびミラー41の代わりに、偏光ビームスプリッタ39から出射されたS偏光の光の光路上に配置された反射型の空間光変調器240を備えている。ここでは、空間光変調器240として、液晶を用いた位相変調型のものを使用している。この空間光変調器240は、互いに直交する高速軸と低速軸を有し、高速軸と低速軸が、偏光ビームスプリッタ39から出射されたS偏光の光の偏光方向に対して±45°になるように配置されている。空間光変調器240において、オン状態の画素に入射したS偏光の光は、高速軸方向の偏光成分と低速軸方向の偏光成分との間で1/2波長分位相がずれるように位相変調されて、P偏光の光となって出射される。空間光変調器240において、オフ状態の画素に入射したS偏光の光は、S偏光のまま出射される。なお、空間光変調器240としては、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)等を用いた振幅変調型のものを使用してもよい。この場合には、空間光変調器240と偏光ビームスプリッタ39の間に図示しない1/4波長板を挿入する。この場合、偏光ビームスプリッタ39から出射されたS偏光の光は、1/4波長板を通過して、円偏光の光に変換された後、空間光変調器240で変調され、1/4波長板を通過して、P偏光の光に変換される。空間光変調器240によって変調されて偏光ビームスプリッタ39に入射したP偏光の光は、偏光ビームスプリッタ39の斜面を通過して、第2のP偏光の光として、偏光ビームスプリッタ39から出射される。
【0134】
また、
図21に示した記録用光学系は、
図5に示した記録用光学系における偏光ビームスプリッタ39とシャッタ43の間に配置された集光レンズ241を備えている。第1の実施例と同様に、シャッタ43は、後で説明する再生用光学系において閉状態にされるが、記録用光学系では常に開状態にされている。
【0135】
図21に示した記録用光学系では、レーザ231の出射光は、ミラー32、1/2波長板33、偏光ビームスプリッタ34、シャッタ35、ビームエキスパンダ36、1/2波長板37および絞り38を順に通過して、偏光ビームスプリッタ39に入射する。偏光ビームスプリッタ39から出射された第1のP偏光の光は、ミラー42で反射されて、記録用参照光21として、回転ステージ44によって支持された感光層3Pの第1の面3Paに照射される。また、偏光ビームスプリッタ39から出射された第2のP偏光の光は、集光レンズ241で集光され、シャッタ43を通過して、信号光222として、回転ステージ44によって支持された感光層3Pの第1の面3Paに照射される。
【0136】
感光層3Pに記録用参照光21と信号光222を入射させてホログラム203を作製する際には、所定の時間だけ、シャッタ35を開いて、記録用参照光21と信号光222によって感光層3Pを露光させた。その際、感光層3Pにおける記録用参照光21と信号光222の合計の光強度を40mW/cm
2とし、露光エネルギーが16mJ/cm
2となるようにした。このように感光層3Pを露光させた後、感光層3Pに残存する光重合開始剤、モノマーを消費するためのポストキュアを十分に行って、感光層3Pをホログラム203とした。ポストキュアは、露光後の感光層3Pに対して、中心波長が530nmの発光ダイオードの出射光を照射して行った。
【0137】
図22は、信号光222の強度分布の2次元パターンの一部を示している。第2の実施例では、信号光222の強度分布の2次元パターンとし、明暗のドットパターンを用いた。具体的には、信号光222の強度分布の2次元パターンは、配列された7×7個の領域を有し、各領域は50×50ドットを有している。この2次元パターンは、122.5kビットを構成する。
図22は、この2次元パターンにおける中央の領域と、その周辺の8つの領域のそれぞれの一部を示している。ドットには、相対的に輝度が小さい黒ドットと、相対的に輝度が大きい白ドットの2種類がある。
【0138】
次に、
図23を参照して、第2の実施例のホログラム203の特性を測定するために使用した再生用光学系について説明する。この再生用光学系は、
図21に示した記録用光学系の構成要素の他に、結像光学系250と、イメージセンサ251を備えている。再生用光学系においては、シャッタ43は閉状態にされている。また、回転ステージ44は、第2の実施例のホログラム203を支持している。
【0139】
再生用光学系では、レーザ231の出射光は、ミラー32、1/2波長板33、偏光ビームスプリッタ34、シャッタ35、ビームエキスパンダ36、1/2波長板37、絞り38を順に通過して、偏光ビームスプリッタ39に入射する。再生用光学系では、偏光ビームスプリッタ39の斜面を通過した第1のP偏光の光が利用される。この第1のP偏光の光は、ミラー42で反射されて、再生用参照光51として、回転ステージ44によって支持されたホログラム203の第1の面203aに照射される。ホログラム203に再生用参照光51が照射されると、ホログラム203は、信号光222と同じ2次元パターンの強度分布を有する回折光253を発生する。この回折光253が有する強度分布の2次元パターンは、結像光学系250によってイメージセンサ251上に結像し、イメージセンサ251によって撮像される。
【0140】
ホログラム203の特性の測定は、以下のようにして行った。まず、回転ステージ44によって、ホログラム203の第1の面203aに対する再生用参照光51の入射角を変更し、複数の入射角の各々のときに、イメージセンサ251によって回折光253の2次元パターンを撮像した。以下、イメージセンサ251によって撮像されて得られた画像を再生画像と呼ぶ。このようにして複数の入射角に対応する複数の再生画像を得た。次に、複数の再生画像の各々について、再生画像の鮮明度に対応するパラメータの値を求めた。第2の実施例では、このパラメータとして、以下のようにして求められる信号対雑音比SNRを用いた。
【0141】
まず、再生画像を複数の黒ドットと複数の白ドットに分割する。複数の黒ドットと複数の白ドットの位置は、信号光222の強度分布の2次元パターンの情報から予め分かっている。次に、再生画像について、複数の黒ドットの輝度の平均値μ
0と、複数の白ドットの輝度の平均値μ
1と、複数の黒ドットの輝度の標準偏差σ
0と、複数の白ドットの輝度の標準偏差σ
1を算出する。次に、下記の式(3)で表されるSNRを算出する。
【0142】
SNR=(μ
1−μ
0)/√(σ
12+σ
02) …(3)
【0143】
また、ホログラム203の回折効率が最大になるときの再生用参照光51の入射角と、任意の再生用参照光51の入射角との差を、入射角ずれ量(単位は度)と定義する。
【0144】
ホログラム203の特性の測定では、ホログラム203の特性として、入射角ずれ量とSNRとの関係を求めた。このようにして求められたホログラム203における入射角ずれ量とSNRとの関係を
図24に示す。
図24において、横軸は入射角ずれ量(度)であり、縦軸はSNRである。
図24では、測定によって得られた入射角ずれ量毎のSNRの値を複数の三角の点で示し、これらの近似曲線を実線の曲線で示している。
【0145】
図25、
図26、
図27、
図28は、それぞれ、
図24中の点P25,P26,P27,P28に対応する再生画像の一部を示している。
図24ないし
図27から、SNRの値が大きいほど、再生画像の鮮明度が高いことが分かる。
【0146】
図24に示したように、入射角ずれ量がほぼ0のときにSNRの値が最大値になり、入射角ずれ量の絶対値が大きくなるに従ってSNRの値が低下し、入射角ずれ量の絶対値が0.3度になるまでにSNRの値がほぼ0になっている。このことから、ホログラム203は、入射角ずれ量を感度よく検出可能なセンサとなり得ることが分かる。
【0147】
なお、
図24は、ホログラム203単体の特性を示しているが、
図20に示したホログラム203と反射層4を含むホログラムモジュール206の特性も、
図24と同様になる。
【0148】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、簡単な構成で、空間を伝搬するという光の特徴を活かして、構造物10の変位に関する情報を生成することが可能になる。
【0149】
また、本実施の形態では、第1の実施の形態における規格化強度の代わりに上記のSNRを用いることにより、第1の実施の形態において
図9ないし
図15を参照して説明した構造物10の変位の検出方法と同様にして、複数の態様のホログラム203および構造物10の変位を検出することが可能である。
【0150】
なお、本実施の形態において、構造物10の変位に応じて光源2とホログラム203の位置関係が変化するように、光学モジュール208を構造物10に取り付け、ホログラムモジュール206を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置してもよい。あるいは、構造物10の変位に応じて光源2とホログラム203の位置関係が変化するように、ホログラムモジュール206と光学モジュール208を、構造物10における互いに異なる場所に取り付けてもよい。
【0151】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0152】
[第5の実施の形態]
次に、
図29および
図30を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。
図29は、本実施の形態に係る変位情報生成装置301の概略の構成を示す説明図である。
図30は、
図29における変位情報生成器の構成を示す説明図である。
【0153】
図29に示したように、変位情報生成装置301は、光源2と、光源支持装置7と、変位情報生成器287と、反射部材102とを備えている。変位情報生成装置301は、更に、光源支持装置7および変位情報生成器287を一体的に支持する図示しない支持部を備えている。以下、光源2、光源支持装置7、変位情報生成器287および図示しない支持部を含む一体的な構造体を、光学モジュール303と呼ぶ。
【0154】
図30に示したように、変位情報生成器287は、ホログラム283と、結像光学系284と、光検出器285と、これらを保持する保持部286とを含んでいる。ホログラム283は、第4の実施の形態におけるホログラム203と同様に、記録用参照光と所定の2次元パターンの強度分布を有する信号光との干渉によって生じる干渉縞が記録されたものである。ホログラム283は、再生用参照光が照射されたときに回折光を発生する。この回折光は、信号光と同じ2次元パターンの強度分布を有する。ホログラム283は、透過型ホログラムである。ホログラム283は、光が入射する第1の面283aと、第1の面283aとは反対側の第2の面283bとを有している。回折光は、第2の面283bから出射される。
【0155】
光検出器285は、第4の実施の形態における光検出器205と同様に、ホログラム283からの光を受け、受けた光の強度分布を表す信号を出力する。光検出器285は、特に、ホログラム283が回折光を発生したときには回折光を受けることが可能である。結像光学系284は、ホログラム283が発生する回折光が有する強度分布の2次元パターンを、光検出器285上に結像する。
【0156】
変位情報生成装置301におけるその他の構成は、第3の実施の形態に係る変位情報生成装置101と同じである。
【0157】
変位情報生成装置301は、構造物10の変位に応じて、光源2から出射されてホログラム283に照射される光の経路の状態が変化し、この光の経路が所定の状態のときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように設置される。本実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、反射部材102が、構造物10に取り付けられる。反射部材102は、反射面102aを有し、この反射面102aによって、光源2から出射された光をホログラム283に向けて反射する。構造物10が変位すると、それに追従して反射部材102も変位し、その結果、光源2から出射されて、反射部材102を経由してホログラム283に照射される光の経路(以下、照射光の経路と言う。)の状態が変化する。本実施の形態では、光源2から出射され、反射部材102で反射されてホログラム83に向かう光である反射光111をホログラム283に照射したときの光検出器285の出力信号が、構造物10の変位に関する情報となる。なお、本実施の形態では、光源2が出射する光の波長は、ホログラム283作製時における記録用参照光の波長と等しい。
【0158】
本実施の形態に係る変位情報生成方法は、本実施の形態に係る変位情報生成装置301を用いて、構造物10の変位に関する情報を生成する方法である。変位情報生成方法は、構造物10の変位に応じて、照射光の経路の状態が変化し、照射光の経路が所定の状態のときには光源2から出射された光が再生用参照光となるように、変位情報生成装置301を設置する手順と、構造物10の変位に関する情報を生成する手順とを備えている。構造物10の変位に関する情報は、光源2から出射された光を、反射部材102を経由させてホログラム283に照射したときの光検出器285の出力信号である。本実施の形態における変位情報生成装置301を設置する手順では、反射部材102を構造物10に取り付け、光学モジュール303を、構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置する。光学モジュール303は、常時設置していてもよいし、構造物10の変位に関する情報を生成するときにのみ設置してもよい。
【0159】
本実施の形態では、反射部材102が、第3の実施の形態で説明した初期状態であって、反射光111がホログラム283に対する再生用参照光となるときに、ホログラム283の回折効率が最大になる。構造物10が変位すると、上述のように照射光の経路の状態が変化して、ホログラム283の回折効率が低下する。
【0160】
本実施の形態では、第4の実施の形態と同様に、ホログラム283の回折効率が最大であるときに、光検出器285は、信号光と同じ強度分布を有する光を受ける。構造物10の変位に起因してホログラム283の回折効率が低下すると、光検出器285が受ける光の強度分布の鮮明度が低下する。この鮮明度は、第4の実施の形態で説明したように、光検出器285の出力信号に基づいて評価することができる。従って、そのため、光源2から出射された光を反射部材102を経由させてホログラム283に照射したときの光検出器285の出力信号は、構造物10の変位に関する情報となる。
【0161】
本実施の形態では、光源支持装置7を用いて光源2の位置および姿勢を調整して、反射光111がホログラム283の第1の面283aに入射することを前提として、出射光73の方向を変更して、出射光73の方向と第4の実施の形態で説明したSNRとの関係を求めることにより、第3の実施の形態で説明した複数の態様の反射部材102および構造物10の変位を検出することができる。
【0162】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3または第4の実施の形態と同様である。
【0163】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明では、透過型のホログラムを、構造物から突出するように構造物に取り付け、光検出器を、ホログラムが発生する回折光を受けることが可能で且つ構造物10の変位に伴って変化しない位置に設置してもよい。