(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-191137(P2015-191137A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】光導波路素子モジュール
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20151006BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02F1/035
G02F1/03 502
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-69087(P2014-69087)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】細川 洋一
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102AA22
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102BD09
2K102CA06
2K102DA04
2K102EA02
2K102EA03
2K102EA08
2K102EA09
2K102EA12
2K102EA14
(57)【要約】
【課題】
長いワイヤーを用いたワイヤーボンディングを使用せずに、光導波路素子と接続基板(中継基板又は終端基板)との電気的接続の不連続性を減少させ、電気特性の劣化を防止した光導波路素子モジュールを提供すること。
【解決手段】
接地電極の信号電極側のエッジの形状Lは、平面視した際に、座標x1の入力端部又は出力端部から座標x2の接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの制御電極(信号電極と接地電極)のインピーダンス変化が一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定されており、さらに、光導波路素子と接続基板とを繋ぐ接地用配線は、該制御電極に接続された該接地用配線の間隔が、該接地電極の間隔W1よりも大きいことを特徴とする光導波路素子モジュールである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、
該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、
該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、
該制御電極は、入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1より、該入力端部又は該出力端部から離れた部分の該接地電極の間隔W2の方が狭く、
該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの該制御電極のインピーダンス変化が一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定されており、
該光導波路素子と該接続基板とを繋ぐ接地用配線であり、該制御電極に接続された該接地用配線の間隔は、該間隔W1よりも大きいことを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、該形状L1と同じになるように設定されていることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、複数の直線で構成される多角形であることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、単数又は複数の曲率を有する曲線で構成されることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光導波路素子モジュールにおいて、該信号電極の両側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状になるように設定されていることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子モジュールに関し、特に、光導波路素子と接続基板とを筐体内に収容した光導波路素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光計測技術分野や光通信技術分野において、光変調器や光スイッチなどに電気光学効果を有する基板に光導波路を形成した光導波路素子が多用されている。これらの光導波路素子は、通常、密閉される筐体内に収容されて、光導波路素子モジュールを構成している。
【0003】
図1に示すように、光導波路素子モジュールの筐体内には、外部からの入力信号を光導波路素子の制御電極(信号電極および接地電極)に電気的に接続するための中継基板や、光導波路素子の制御電極の出力側に電気的に接続され、伝搬した電気信号を終端する又は筐体外に導出するための終端基板が収容されている(特許文献1参照)。本明細書において、中継基板と終端基板とを総称して接続基板という。
【0004】
光導波路素子の制御電極の入出力端部では、例えば、
図1に示すように、信号電極を挟むように接地電極が形成されている。また、制御電極も同様に、接続基板にも、信号線路を挟むように接地線路が形成されている。そして、制御電極の入出力端部の信号電極と接地電極、及び、接続基板の信号線路及び接地線路とは、金線などのワイヤーにより、各々電気的に接続(ワイヤーボンディング)されている。
【0005】
また、このような光導波路素子モジュール(例えば、光変調器)は、光通信技術分野において多用されるが、光導波路素子モジュールに電気信号を入力するための電気ケーブル(同軸ケーブル)が一般的にインピーダンス50Ωで設計されているため、電気ケーブル(同軸ケーブル)と直接あるいは間接的に電気接続される光導波路素子の信号電極および接続基板の信号線路は、インピーダンス不整合による電気特性の劣化を防止するために、インピーダンス50Ωで設計することが望ましい。
【0006】
また、電気光学効果を有する光導波路素子には、長さ数mmから数cm程度の変調部が設けられているが、光導波路の幅が数μmで、導波路間隔が数十から数百μm程度の光導波路に対して効率良く変調を行うため、変調部での信号電極の幅は数μmから数十μmと非常に細くなる。さらには、光導波路素子の制御電極の入出力端部から変調部までの距離が短いため、制御電極の入出力端部から変調部までの信号電極の幅も変調部と同様に細くなる。しかし、接続基板と電気接続される信号電極の幅が数μm〜数十μmだとワイヤーボンディング(ワイヤー径は数十μm、ボンディング数は2〜3本)ができないため、制御電極の入出力端部には、例えば、幅100μm以上、長さ100μm以上のボンディングエリアが設けられている。そのため、(ボンディングエリアを含む)制御電極の入出力端部には、信号電極および接地電極(GND)の幅が急激に変化するエリアが生じる。このような信号電極および接地電極(GND)の幅の急激な変化は、電気的接続の不連続性を発生させる原因となり、光導波路素子モジュールの電気的な特性劣化を引き起こすことが報告されている。
【0007】
図2に示すように、従来技術(特許文献2参照)では、光導波路素子上の接地電極幅W1が急激に変化するエリアAと、接続基板上の接地線路の端部Bを、金線などのワイヤーにより電気的に接続(ワイヤーボンディング)することで、信号電極および接地電極(GND)の幅が急激に変化することによって生じる電気的接続の不連続性を抑制し、光導波路素子モジュールの電気的な特性劣化を防止することが報告されている。
【0008】
しかし、従来技術のようなワイヤーボンディングは、作業者のスキルによってボンディング形状(ループ高さ、配線長さなど)あるいはボンディング位置にバラツキが生じるため、電気的接続の不連続性の抑制効果が安定せず、その結果、光導波路素子モジュールについて所望の電気特性が得られない場合がある。特に、接地電極と接地線路との間を接続するワイヤーは長くなるため、この様な不具合が増加する。
【0009】
専用装置によるワイヤーボンディングの自動化により、ボンディング形状(ループ高さ、配線長さなど)あるいはボンディング位置のバラツキを安定させることはできるが、手動あるいは自動でも、長いワイヤーを最低2本以上、設ける必要があり、ワイヤーボンディングによる作業工数が増加する。また、長いワイヤーは振動あるいは衝撃により外れる場合があり、ワイヤーボンディング接続の信頼性による光導波路素子モジュールの電気特性劣化も課題として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−233043号公報
【特許文献2】特許第5263210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、長いワイヤーを用いたワイヤーボンディングを使用せずに、光導波路素子と接続基板(中継基板又は終端基板)との電気的接続の不連続性を減少させ、電気特性の劣化を防止した光導波路素子モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子モジュールは、以下の技術的特徴を有する。
(1) 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該制御電極は、入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1より、該入力端部又は該出力端部から離れた部分の該接地電極の間隔W2の方が狭く、該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの該制御電極のインピーダンス変化が一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定されており、該光導波路素子と該接続基板とを繋ぐ接地用配線であり、該制御電極に接続された該接地用配線の間隔は、該間隔W1よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、該形状L1と同じになるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
(3) 上記(1)に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、複数の直線で構成される多角形であることを特徴とする。
【0015】
(4) 上記(1)に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、単数又は複数の曲率を有する曲線で構成されることを特徴とする。
【0016】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光導波路素子モジュールにおいて、該信号電極の両側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状になるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のように、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該制御電極は、入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1より、該入力端部又は該出力端部から離れた部分の該接地電極の間隔W2の方が狭く、該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの該制御電極のインピーダンス変化が一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定されており、該光導波路素子と該接続基板とを繋ぐ接地用配線であり、該制御電極に接続された該接地用配線の間隔は、該間隔W1よりも大きいことを特徴とするため、長いワイヤーを用いる必要が無く、しかも、接地電極を伝搬するマイクロ波信号が、接地電極の形状L2よりも信号電極寄りを伝搬するため、光導波路素子と接続基板との電気的接続の不連続性を減少させ、電気特性の劣化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】光導波路素子モジュールの構成の概要を説明する図である。
【
図2】特許文献2に開示された、光導波路素子と接続基板との接続状況を説明する図である。
【
図3】本発明の光導波路素子モジュールに利用される光導波路素子と接続基板との配線状況を説明する図である。
【
図4】本発明の光導波路素子モジュールの一実施例であり、接地電極の信号電極側のエッジの形状を、接地電極の間隔がW1からW2となるまでの間を直線形状に設定した例を説明する図である。
【
図5】本発明の光導波路素子モジュールの一実施例であり、接地電極の信号電極側のエッジの形状を、接地電極の間隔がW1からW2となるまでの間を多角形に設定した例を説明する図である。
【
図6】本発明の光導波路素子モジュールの一実施例であり、ワイヤーボンディングエリアをテーパ形状で形成した例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の光導波路素子モジュールについて、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光導波路素子モジュールは、
図3に示すように、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該制御電極は、入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1より、該入力端部又は該出力端部から離れた部分の該接地電極の間隔W2の方が狭く、該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの該制御電極のインピーダンス変化が一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定されており、該光導波路素子と該接続基板とを繋ぐ接地用配線であり、該制御電極に接続された該接地用配線の間隔は、該間隔W1よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
電気光学効果を有する基板としては、特に、LiNbO
3,LiTaO
3又はPLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン),Siのいずれかの単結晶や、InPやGaAsなど化合物半導体材料が、好適に利用可能である。特に、光変調器で多用されているLiNbO
3,LiTaO
5が、好ましい。また、基板に形成する光導波路は、例えば、LiNbO
3基板(LN基板)上にチタン(Ti)などの高屈折率物質を熱拡散することにより形成される。また、光導波路の側面に溝を形成したり、光導波路部分の厚みを他の基板部分より厚く形成して、リッジ型導波路とすることも可能である。
【0021】
制御電極は、信号電極や接地電極から構成され、基板表面に、Ti・Au等による下地電極パターンを形成し、金メッキ方法などにより形成することが可能である。さらに、必要に応じて光導波路形成後の基板表面に誘電体SiO
2等のバッファ層を設けることも可能である。
【0022】
本発明における「接続基板」とは、外部から電気信号が入力される入力端子と光導波路素子の信号入力部とを接続する中継基板や、電気信号の反射を抑制するために、光導波路素子の信号電極の出力端部に接続され、抵抗器等で電気信号を終端する終端基板などを意味する。接続基板の基板材料は、光導波路素子の基板材料よりも誘電率が低い材料、例えば、アルミナや半導体材料が使用される。これは、光導波路素子の広帯域化に寄与するためである。
【0023】
特に、光導波路素子を構成する基板の材料と接続基板の材料との誘電率が異なる場合には、制御電極の入力端部及び出力端部における信号電極の幅と接続基板の信号線路の幅や、制御電極の接地電極の間隔と接続基板の接地線路の間隔とは、各々が異なるため、本発明の構成を採用することがより好ましくなる。
【0024】
光導波路素子と接続基板とを電気的に接続する配線は、金などの導電性のワイヤーや幅広のリボンが利用可能であり、配線は、1本に限らず、同じ場所の近傍を複数本の導電性のワイヤーやリボンで接続することも可能である。
【0025】
本発明の特徴は、
図3に示すように制御電極、特に接地電極の幅の変化W(x)(接地電極の信号電極側の形状)を調整することである。光導波路素子の制御電極(信号電極と接地電極)の入力端部又は出力端部が位置する基板の一側面を基準として、基板の内部方向(x軸方向)を設定する。
図3は、光導波路素子や接続基板を上方から平面視した図である。
【0026】
x軸座標がx1の点には、制御電極の入力端部や出力端部が位置している。信号電極は、接地電極より、幾分、内部(x軸で示した下方向)に位置しても良い。当然、その逆も可能である。座標x1では、接地電極の間隔はW1で示される。また、x軸座標がx2の点は、制御電極(信号電極)の引き回し開始点であり、通常はこの位置のインピーダンスが、所望の値、例えば50Ω(外部の電気ケーブルのインピーダンスと同じ)に設定されている。座標x2では接地電極の間隔はW2で示される。
【0027】
従来は、x1の点からx2の点までの間では、
図2や
図3の形状L2のように、信号電極の形状の変化に対応し、インピーダンスが一定、又は連続的に変化(連続的に減少又は連続的に増加のいずれかで変化することを意味する。)するように、接地電極の信号電極側の形状を決めていた。
【0028】
しかしながら、この状態で、長いワイヤーを用いずに、
図3に示すように座標x1の近傍に接地用のワイヤーボンディングを行うと、接地電極におけるマイクロ波信号は、形状L2に沿ってしか伝搬できず、迂回した伝搬となる。このため、電気信号の損失や劣化が生じ、光導波路素子の電気的特性を劣化させる原因となっていた。
【0029】
このような迂回した伝搬を抑制するには、座標x1と座標x2との間を直線で結んだ形状L1とし、マイクロ波信号の伝搬距離を最小に設定することである。本発明の光導波路素子モジュールでは、座標x1からx2までの間の接地電極のエッジ形状Lを、二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定している。なお、本発明において、形状Lが形状L2と一致することは除外している。
【0030】
エッジの形状Lが、形状L1から形状L2に近づくに従い、電界分布が急激に変化しやすい接地電極パターンとなるため、できるだけ形状L1に近づくように接地電極パターンを構成することが望ましい。
【0031】
座標x1からx2までの間で、接地電極のエッジの形状Lを
図3に示すように設定した場合には、インピーダンスが急激に変化する。例えば、座標x1からx2に向かうに従い、インピーダンスが減少した後に増加するなどの変化を示す。このようなインピーダンス変化は、インピーダンス不整合の原因となり、マイクロ波信号の反射が発生し易いことが危惧される。しかしながら、本発明者らの研究・調査により、インピーダンスが不整合となっている領域が、座標x1からx2までの数十μm〜数百μmという長さであり、これは使用周波数範囲における波長(数mmから数cm)に比べて十分小さく、インピーダンス不整合による電気特性の劣化がほとんど生じないことが分かった。
【0032】
接地電極のエッジの形状Lの具体例として、
図3に示すように、単数又は複数の曲率を有する曲線で構成することができるが、これに限定されるものではない。
図4に示すように形状L1に一致させるように、光導波路素子の端部x1から電極引き回し開始点x2までの間を直線的な接地電極パターンで形成してもよい。
【0033】
さらに、
図5に示すように、幅W3やW4の場所で折れ曲がるように、エッジの形状Lを複数の直線で構成される多角形のように設定することも可能である。
【0034】
また、
図3〜
図5においては、ワイヤーボンディングエリアの電極パターンを正方形(又は長方形)としているが、ワイヤーボンディングに必要な面積が確保できれば、これらの形状である必要はない。
図6のように、信号電極のワイヤーボンディングエリアの形状を、座標x1の入力端部又は出力端部から座標x2の接地電極の間隔がW2となる位置を、直線で結んだ形状(テーパー形状)とすることも可能である。この場合、接地電極のエッジの形状をL3のように設定し、信号電極および接地電極(GND)それぞれの幅が徐々に変化する構成を採用することで、電界分布の急激な変化によって生じる電気的接続の不連続性が抑制され、光導波路素子モジュールの電気特性劣化が生じ難い。
【0035】
本発明では、光導波路素子の電極端部x1から電極引き回し開始点x2に向かって接地電極幅W(x)が徐々に変化する接地電極パターンにすることで、電界分布の急激な変化によって生じる電気的接続の不整合を抑制し、光導波路素子モジュールの電気特性の劣化を防止した。接地電極(GND)は、光導波路素子上に形成されるその他の電極パターンと同時に形成することができるため、作業工程が複雑化することは無い。しかも、特許文献2のような長いワイヤーを用いる必要が無く、ワイヤーボンディングによる作業工数を削減できる。
【0036】
また、制御電極は、パターン精度の高いフォトリソグラフィー技術を用いて形成できるため、接地電極幅W(x)のバラツキが小さく、ワイヤーボンディングの精度に比べて安定した接地電極パターンを得ることができ、その結果、所望の電気特性を安定して得ることができる。更には、フォトリソグラフィー技術を用いて形成された下地電極(膜)は基板との密着性が非常に高く、ワイヤーボンディングのように外れる心配がないため、信頼性の高い光導波路素子モジュールを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、長いワイヤーを用いたワイヤーボンディングを使用せずに、光導波路素子と接続基板(中継基板又は終端基板)との電気的接続の不連続性を減少させ、電気特性の劣化を防止した光導波路素子モジュールを提供することが可能となる。
【手続補正書】
【提出日】2015年8月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、
該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、
該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、
該制御電極は、入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1より、該入力端部又は該出力端部から離れた部分の該接地電極の間隔W2の方が狭く、
該信号電極は、該入力端部又は該出力端部に矩形状のボンディングエリアを有し、
該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの該制御電極のインピーダンスが一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定され、かつ、該エッジの形状L2と同じではなく、
該光導波路素子と該接続基板とを繋ぐ接地用配線は、該入力端部又は該出力端部の近傍の該接地電極に接続され、該接地電極に接続された該接地用配線の間隔は、該間隔W1よりも大きいことを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、該形状L1と同じになるように設定されていることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、複数の直線で構成される多角形であることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記した該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、単数又は複数の曲率を有する曲線で構成されることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子モジュールは、以下の技術的特徴を有する。
(1) 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該制御電極は、入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1より、該入力端部又は該出力端部から離れた部分の該接地電極の間隔W2の方が狭く、
該信号電極は、該入力端部又は該出力端部に矩形状のボンディングエリアを有し、該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの該制御電極のインピーダン
スが一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定され
、かつ、該エッジの形状L2と同じではなく、該光導波路素子と該接続基板とを繋ぐ接地用配線
は、該入力端部又は該出力端部の近傍の該接地電極に接続され、該
接地電極に接続された該接地用配線の間隔は、該間隔W1よりも大きいことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明のように、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該制御電極は、入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1より、該入力端部又は該出力端部から離れた部分の該接地電極の間隔W2の方が狭く、
該信号電極は、該入力端部又は該出力端部に矩形状のボンディングエリアを有し、該接地電極の該信号電極側のエッジの形状は、平面視した際に、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までを直線で結んだ形状L1と、該入力端部又は該出力端部から該接地電極の間隔W2となる位置までの該制御電極のインピーダン
スが一定又は連続的に変化するように構成された該エッジの形状L2との二つの形状(L1,L2)に挟まれる範囲内に位置するように設定され
、かつ、該エッジの形状L2と同じではなく、該光導波路素子と該接続基板とを繋ぐ接地用配線
は、該入力端部又は該出力端部の近傍の該接地電極に接続され、該
接地電極に接続された該接地用配線の間隔は、該間隔W1よりも大きいことを特徴とするため、長いワイヤーを用いる必要が無く、しかも、接地電極を伝搬するマイクロ波信号が、接地電極の形状L2よりも信号電極寄りを伝搬するため、光導波路素子と接続基板との電気的接続の不連続性を減少させ、電気特性の劣化を防止することが可能となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】