【解決手段】光電変換素子101は、光が入射される透明基板1と、カソード極6と、透明基板1とカソード極6の間に配置される、貫通孔を有する導電性金属層4と、導電性金属層4の少なくとも透明基板1側に、接触してまたは近接して配置されるとともに貫通孔を充填する電荷発生層2を設けたものである。電荷発生層2は、ペロブスカイト結晶構造をとる特定の結晶化合物層である。
前記導電性金属層の前記貫通孔を含む全面が金属酸化物層で被覆されるとともに、該導電性金属層と前記カソード極の間に電解質を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
前記導電性金属層の前記貫通孔を含む全面もしくは一部が金属酸化物層で被覆され、前記結晶化合物層が該導電性金属層と金属酸化物層を介して接触、または直接接触して、該導電性金属層と前記透明基板の間に配置され、ホール輸送層が該導電性金属層の該結晶化合物層が配置される側とは反対側の面に接触し、かつ該貫通孔を充填することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
前記導電性金属層の前記貫通孔を含む全面もしくは一部が金属酸化物層で被覆され、前記結晶化合物層が該導電性金属層の前記カソード極と対向する面に該金属酸化物層を介して接触、または直接接触して配置されるとともに前記貫通孔を充填し、該導電性金属層の透明基板側の面に接触して多孔体層が配置され、該多孔体層の孔を該結晶化合物層が充填してなることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子の一形態である色素増感太陽電池は、湿式太陽電池あるいはグレッツェル電池等と呼ばれ、シリコン半導体を用いることなくヨウ素溶液に代表される電気化学的なセル構造を持つ点に特徴がある。一般的には、透明な導電性ガラス板(透明導電膜を積層した透明基板)に二酸化チタン粉末等を焼付け、これに色素を吸着させて形成したチタニア層等の多孔質半導体層と導電性ガラス板(導電性基板)からなる対極の間に電解液としてヨウ素溶液等を配置した、簡易な構造を有する。
【0003】
色素増感太陽電池の発電メカニズムは、以下のとおりである。
受光面である透明な導電性ガラス板面から入射した光を、多孔質半導体層に吸着された色素が吸収し、電子励起を引き起こし、その励起した電子が半導体へと移動し、導電性ガラスへと導かれる。ついで、対極に戻った電子はヨウ素などの電解液を介して電子を失った色素へと導かれ、色素が再生される。
【0004】
色素増感太陽電池は、材料が安価であり、作製に大掛かりな設備を必要としないことから、低コストの太陽電池として注目されており、さらなる低コスト化のため、例えば高価な透明導電膜を省略することが検討されている。
【0005】
透明導電膜を省略する方法の一つとして、導電性金属からなる配線を光照射側となる透明基板の上に施すことが検討されている。しかし、この場合、入射光の一部は金属配線部
分に遮られることとなり、光電変換効率の低下を伴う。
【0006】
この点を改善するものとして、多孔質半導体層の光入射側とは反対側に、金属粉末を焼結させた金属焼結体からなる金属多孔体シートを集電電極として配置させた色素増感太陽電池が開示されている。(特許文献1)
【0007】
ところで、色素増感太陽電池における電荷の発生源は色素であるが、これについて金属錯体色素や有機色素など種々の検討がなされている。
【0008】
しかし、従来の色素は、耐久性が低い、効率が低い等の問題があり、実用に耐えうるものはいまだ存在しない。
【0009】
色素に代わる電荷の発生源として、光吸収能、電荷発生能、塗布成膜能に優れたペロブスカイト系結晶化合物が提案されており、このペロブスカイト系結晶を用いた光電変換素子が報告されている。(非特許文献1〜5)。
【0010】
また、例えば、従来の色素増感太陽電池の色素の代わりに、上記ペロブスカイト系結晶化合物を用い、集電電極と対極との間には電解液を用いたものが開示されている(特許文献2)。
【0011】
また、上記ペロブスカイト系結晶化合物を用い、多孔質半導体層を薄くした上で、電解液の代わりにホール輸送材料を用いた光電変換素子も開示されている(特許文献3)。
【0012】
しかし、上記に示すようなペロブスカイト系結晶化合物を用いた光電変換素子は、いずれも、光入射面に透明導電膜を有するものであるため、セルを大型化したときに、電極の抵抗が高くなり、発電効率が落ちるという問題がある。また、透明導電膜自身が光を吸収するので、ペロブスカイト結晶化合物に光が十分届かないという問題がある。その結果、ペロブスカイト系結晶化合物の本来の電子供給能力を十分に発揮できていないと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0033】
(本実施の形態に係る光電変換素子の基本原理)
本実施の形態に係る光電変換素子は、電荷発生材料として、言い換えれば光増感剤として特定のペロブスカイト結晶化合物を用いることおよび光の入射する透明基板側にアノード極を設けないことを最大の特徴とする。
【0034】
ペロブスカイト結晶構造をとる結晶化合物層(以下、これを単に結晶化合物層ということがある。)は、下記式(1)または下記式(2)で示される。
【0036】
(化2)
A
2BX
4 (2)
式(1)、(2)中、Aは1価の1族もしくは13族の金属カチオンまたは下記式(3)〜(7)で示される1価の非金属カチオンであり、BはCa
2+、Sr
2+、Cd
2+、Cu
2+、Cr
2+、Ni
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+、Pd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Yb
2+またはEu
2+であり、XはF
−、Br
−、Cl
−、I
−、HSO
4−、CH
3SO
4−、NO
3−、HCO
3−、CH
3COO
−、BF
4−、PF
6−、N(CN)
2−、CH
3COO
−、CF
3COO
−、SCN
−、SbF
6−、またはAlCl
4−である
【0041】
【化7】
式(3)〜(7)中、R
1〜R
16はそれぞれ独立に水素または1価の炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜48の芳香族炭化水素基、炭素数2〜48の芳香族複素環基、炭素数8〜50芳香族炭化水素置換アルキニル基、炭素数4〜50の芳香族複素環置換アルキニル基、炭素数8〜50の芳香族炭化水素置換アルケニル基、もしくは炭素数4〜50の芳香族複素環置換アルケニル基であり、R
17は1価の炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基である
【0042】
透明基板と離間し、結晶化合物層と接触してまたは近接して設けられる、集電極である導電性金属層がアノード極として機能する。
【0043】
本実施の形態に係る光電変換素子は、電荷発生源として、光吸収能、電荷発生能、塗布成膜能に優れた特定のペロブスカイト結晶化合物を用い、また、光入射側に透明導電膜を用いないため、入射光を透明導電膜等の他の層に吸収されることなく直接ペロブスカイト系結晶化合物に入射することができるので、高い発電効率を得ることができる。
本実施の形態に係る光電変換素子は、色素に代えて結晶化合物層を用いた増感太陽電池として、あるいは色素と結晶化合物層を併用した色素増感太陽電池として好適に用いることができるが、これに限らず、有機薄膜太陽電池、光センサー、光触媒等に用いることができる。
【0044】
(本実施の第一の形態に係る光電変換素子)
本実施の第一の形態に係る光電変換素子について、
図1を参照して説明する。
図1に示す本実施の形態例に係る光電変換素子101は、光が入射される透明基板1と、カソード極6と、透明基板1とカソード極6の間に配置される、貫通孔を有する導電性金属層4と、導電性金属層4の少なくとも透明基板1の側に、接触してまたは近接して配置されるとともに(
図1では導電性金属層4の両面に接触して配置される。)、貫通孔を充填する結晶化合物層(以下、これを電荷発生層という。)2を設けたものである。なお、導電性金属層4とカゾード極6は接触していない。
【0045】
透明基板1は、例えば、ガラス板であってもよく、あるいは、プラスチック板であってもよい。プラスチック板を用いる場合は、例えば、PET、PEN、ポリイミド、硬化アクリル樹脂、硬化エポキシ樹脂、硬化シリコーン樹脂、各種エンジニアリングプラスチック、メタセシス重合で得られる環状ポリマー等が挙げられる。
【0046】
電荷発生層2を成すペロブスカイト結晶化合物は、前記式(1)または前記式(2)で示される化合物である。
式(1)及び式(2)において、Aは、1価の1族もしくは13族の金属カチオンまたは下記式(3)〜(7)で示される1価の非金属カチオンであり、BはCa
2+、Sr
2+、Cd
2+、Cu
2+、Cr
2+、Ni
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+、Pd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Yb
2+またはEu
2+であり、XはF
−、Br
−、Cl
−、I
−、HSO
4−、CH
3SO
4−、NO
3−、HCO
3−、CH
3COO
−、BF
4−、PF
6−、N(CN)
2−、CH
3COO
−、CF
3COO
−、SCN
−、SbF
6−、またはAlCl
4−である。
Aは、1価の1族もしくは13族の金属カチオンとしては、好ましくは、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、Ag
+、In
+、Ga
+、Tl
+がである。
【0047】
Aは、1価の非金属カチオンの場合、前記式(3)〜(7)において、R
1〜R
16が脂肪族炭化水素基のときは、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基の如き直鎖飽和炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、4−デシルドデシル基等の分岐飽和炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ドデシルシクロヘキシル基等の飽和脂環炭化水素基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等の不飽和炭化水素基が例示できる。
R
1〜R
16が芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基のときは、炭素数6〜48の芳香族炭化水素基、又は炭素数2〜48の芳香族複素環基が好ましく、具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、オバレン、コラヌレン、フルミネン、アンタントレン、ゼトレン、テリレン、ナフタセノナフタセン、トルキセン、フラン、フロフラン、ジフロフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾフロベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピロロピロール、インドロインドール、ジピロロピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、テベニジン、キンドリン、キニンドリン、アクリンドリン、フタロペリン、トリフェノジチアジン、トリフェノジオキサジン、フェナントラジン、アントラジン、チアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、インドロカルバゾール、又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基等が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、クリセン、フラン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、カルバゾール、インドロカルバゾール、又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基が挙げられる。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜7であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていても良い。縮合環である場合、2〜5個の環が縮合した縮合環であることが好ましい。
ここで、芳香環が複数連結されて生じる基は、例えば、下記式で表わされる。
【0048】
【化8】
上式中、Ar
1〜Ar
5は、置換又は無置換の芳香環を示す
上記芳香環が複数連結されて生じる基の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ターチオフェン、ビピリジン、ビピリミジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、フェニルフェナンスレン、ピリジルベンゼン、ピリジルフェナンスレン、ビチオフェン、ターチオフェン、ビジチエノチオフェン、フェニルインドロカルバゾール等から水素を除いて生じる基等が挙げられる。
R
1〜R
16が芳香族炭化水素置換アルケニル基のときは、炭素数8〜50の芳香族炭化水素置換アルケニル基が好ましく、芳香族炭化水素置換アルキニル基である場合、炭素数8〜50の芳香族炭化水素置換アルキニル基が好ましい。これら芳香族炭化水素置換アルケニル基、芳香族炭化水素置換アルキニル基は、前記芳香族炭化水素基が、前記アルケニル基、前記アルキニル基に置換した基として解される。具体例としては、フェニルエテニル、ナフチルエテニル、フェニルエチニル、ナフチルエチニル等が例示できる。
R
1〜R
16が芳香族複素環置換アルケニル基である場合、炭素数8〜50の芳香族複素環置換アルケニル基が好ましく、芳香族複素環置換アルキニル基である場合、炭素数8〜50の芳芳香族複素環置換アルキニル基が好ましい。これら芳香族複素環置換アルケニル基、芳香族複素環置換アルキニル基は、前記芳香族複素環基が、前記アルケニル基、前記アルキニル基に置換した基として解される。具体例としては、チエニルエテニル、フラニルエテニル、チエニルエチニル、フラニルエチニル等が例示できる。
R
1〜R
16が置換基を有するとき、置換基の総数は各々1〜4、好ましくは1〜2である。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基も同様に置換基を有することができる。好ましい置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20アルケニル基、炭素数1〜20アルキニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、チオール基、スルホニル基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20の芳香族アミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、水酸基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のアルキルシリルアルキニル基、炭素数2〜20の芳香族炭化水素基、炭素数2〜20の芳香族複素環基、炭素数4〜22の芳香族炭化水素置換アルキニル基、炭素数4〜22の芳香族複素環置換アルキニル基、炭素数4〜22の芳香族炭化水素置換アルケニル基、炭素数4〜22の芳香族複素環置換アルケニル基等が挙げられる。
具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基の如き直鎖飽和炭化水素基、イソブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、4−デシルドデシル基等の分岐飽和炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ドデシルシクロヘキシル基等の飽和脂環炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、i-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、クロロブチル基、クロロペンチル基、クロロヘキシル基、クロロオクチル基、クロロドデシル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ブロモブチル基、ブロモペンチル基、ブロモヘキシル基、ブロモオクチル基、ブロモドデシル基、ヨードメチル基、ヨードエチル基、ヨードプロピル基、ヨードブチル基、ヨードペンチル基、ヨードヘキシル基、ヨードオクチル基、ヨードドデシル基、メチルアミド基、ジメチルアミド基、エチルアミド基、ジエチルアミド基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリイソブチルシリル基、トリメチルシリルエチル基、トリエチルシリルエチル基、トリイソプロピルシリルエチル基、トリイソブチルシリルエチル基、トリメチルシリルエテニル基、トリエチルシリルエテニル基、トリイソプロピルシリルエテニル基、トリイソブチルシリルエテニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基、トリイソブチルシリルエチニル基、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、クリセン、フラン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、カルバゾール、インドロカルバゾール、ビフェニル、ターフェニル、ターチオフェン、ビピリジン、ビピリミジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、フェニルフェナンスレン、ピリジルベンゼン、ピリジルフェナンスレン、ビチオフェン、ターチオフェン、ビジチエノチオフェン、フェニルインドロカルバゾール、フェニルエテニル、ナフチルエテニル、チエニルエテニル、フラニルエテニル、フェニルエチニル、ナフチルエチニル、チエニルエチニル、フラニルエチニル等が例示できる。置換基を2つ以上有する場合は、同一であっても異なっていても良い。
【0049】
式(3)〜(7)において、R
17は、1価の炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基であるが、置換又は未置換のいずれであってもよく、具体例としては、R
1〜R
16が脂肪族炭化水素基である場合と同様のものが挙げられる。
【0050】
式(1)および式(2)のBは、Ca
2+、Sr
2+、Cd
2+、Cu
2+、Cr
2+、Ni
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+、Pd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Yb
2+、またはEu
2+である。
式(1)及び式(2)のXは、F
−、Br
−、Cl
−、I
−、HSO
4−、CH
3SO
4−、NO
3−、HCO
3−、CH
3COO
−、BF
4−、PF
6−、N(CN)
2−、CH
3COO
−、CF
3COO
−、SCN
−、SbF
6−、またはAlCl
4−である。
【0051】
式(1)及び式(2)のA、B、Cはそれぞれ、複数種の組成で構成されてもよい。
また、電荷発生層を成すペロブスカイト結晶化合物のより好ましい具体的例としては、式(1)のAがCH
3NH
3+、BがPb
2+またはSn
2+、XがI
−、Br
−、またはCl
−で構成された化合物等が挙げられる。
【0052】
電荷発生層2の厚みは、好ましくは10nm〜5μmである。
電荷発生層2は、塗布法や蒸着法により形成する。
電荷発生層2は、層内で電子を発生させて導電性金属層4に電子を移動させることができればよい。従って、少なくとも透明基板1の側に接触してまたは近接して配置されていればよく、両面に配置されていても良い。また、近接して配置されている場合、電荷発生層2と導電性金属層4との間に、例えば、金属酸化物、金属のような電子移動が可能な層を介することが好ましい。より好ましくは、導電性金属層4の腐食または導電性金属層4からの漏れ電流を抑制できるので、金属酸化物である。金属酸化物の例は後述する。
【0053】
導電性金属層4は、適度の導電性を有するものである限り、適宜の金属を選定して用いることができる。
金属としては、タングステン(W)、チタン(Ti)、もしくはニッケル(Ni)、またはこれらの混合物、あるいはこれらの金属化合物を好適に用いることができるが、これら以外にも、例えば表面を不動態化した金属を用いることができる。
導電性金属層4は、例えば塗布法等の簡易な方法で形成することができるが、好ましくは、スパッタリングにより形成する。
導電性金属層4の厚みは、好ましくは100nm〜5μmである。面積抵抗を小さくする観点からは厚ければ厚い方が望ましく、より好ましくは200nm以上である。ペロブスカイト結晶化合物やホール輸送材料の電荷移動距離は、長くて1μm程度であるため、導電性金属層4の厚みの上限は5μmとする。
導電性金属層4には、深い孔状の多数の貫通孔が不規則に形成される。ここで、深い孔状の貫通孔とは、導電性金属層4の厚みが厚い場合においても、相対的に小さな径を有する孔が、確実に導電性金属層4を貫通する程度の奥行きの深い孔の意味であり、例えば、孔の径の寸法に比べて数倍あるいは数十倍程度の奥行き寸法をもつ長尺円柱状の孔をいう。
導電性金属層4は、スパッタ法により成膜された層の平均空孔直径よりも大きい平均空孔直径を有する、不規則に形成される深い孔状の多数の貫通孔を、さらに有することが好ましい。
導電性金属層4は、例えば導電性金属層4と同一材料で形成されて、透明基板1上の周縁に設けられる外部電極(集電極)に電気的に接続される。なお、外部電極は、透明基板1とは独立して適宜の位置に設けてもよい。
導電性金属層4に形成される深い孔状の多数の貫通孔の形成方法については後述する。
【0054】
カソード極6は、適度の導電性を有するものである限り、特に限定するものではなく、例えば、ITO(スズをドープした酸化インジウム膜)、FTO(フッ素をドープした酸化スズ膜)、あるいはSnO2膜等であってもよく、またPEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホン酸塩))等の導電性ポリマーからなる電極であってもよく、あるいはカーボンブラックやカーボンナノチューブ等の炭素材料からなる電極であってもよいが、より好ましくは、金や、銀、白金等の金属からなる電極である。
【0055】
(本実施の第二の形態に係る光電変換素子)
本実施の第二の形態に係る光電変換素子について、
図2を参照して説明する。
図2に示す本実施の第二の形態に係る光電変換素子201は、導電性金属層4の貫通孔を含む全面もしくは一部が金属酸化物層3で被覆され、結晶化合物層(電荷発生層)2が導電性金属層4と金属酸化物層3を介して接触、または直接接触して、導電性金属層4と透明基板1の間に配置され、ホール輸送層5が導電性金属層4の結晶化合物層2が配置される側とは反対側の面に接触し、かつ貫通孔を充填する点が、本実施の第一の形態に係る光電変換素子101と相違する。
【0056】
導電性金属層4の厚みは、好ましくは100nm〜5μmである。
【0057】
金属酸化物層3の材料は、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、あるいは銀(Ag)等の金属酸化物、またはこれらの混合物を用いることができる。
金属酸化物層3は、導電性金属層4の表面酸化や塗布法、またはスパッタリングにより形成する。
金属酸化物層3の具体的な形成方法については後述する。
【0058】
ホール輸送層5は、電荷発生層2とカソード極6との間において、正孔を移動させることができる半導体である限り、特に限定するものではなく、無機半導体材料や有機半導体材料、または光電変換素子101の電荷発生層と同様の有機成分と無機成分から成る半導体等を用いることができる。
無機半導体材料としては、例えば、CuI、CuBr、CuSCN、Cu
2O、CuO、CIS、CdS、CdSe、GaP、Fe
2O
3、CsPbI
3、CsSnI
3等が挙げられる。
有機半導体材料である場合、低分子材料や高分子材料が挙げられる、その中でも、1つまたは複数の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基を有している材料である。具体的には1つまたは複数の、チエニル基、チオフェニル基、フェナレニル基、ジチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ジケトピロロピロール基、エトキシジチオフェニル基、ジフェニルアミノ基、トリフェニルアミノ基、カルバゾリル基、エチレンジオキシチオフェニル基、ジオキシチオフェニル基、またはフルオレニル等を有する材料が挙げられる。
有機半導体材料である場合のより具体的な例としては、spiro−OMeTAD(2,2‘,7,’−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenylamine)9,9‘−spirobifluorene))、P3HT(poly(3−hexylthiophene))、PCPDTBT(Poly[2,1,3−benzothiadiazole−4,7−diyl[4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b:3,4−b’]dithiophene−2,6−diyl]])、PVK(poly(N−vinylcarbazole)、HTM−TFSI(1−hexyl−3−methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、Li−TFSI(lithium bis(trifluoromeyhanesulfonyl)imide)、tBP(4−tert−butylpyridine)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またホール輸送層は、複数の材料を有して成るものでもよい。
有機成分と無機成分から成る半導体である場合、光電変換素子101の電荷発生層を成すペロブスカイト系結晶化合物として例示してあるものと同様のものが、例として挙げられる。
ホール輸送層5の厚みは、好ましくは10nm〜5μm程度である。
ホール輸送層5は、塗布法やスパッタリングにより形成する。
【0059】
結晶化合物層(電荷発生層)2の結晶化合物の伝導帯のエネルギー準位は金属酸化物層3の金属酸化物の伝導帯のエネルギー準位よりも高いことが好ましい。また、金属酸化物層3の金属酸化物の価電子帯のエネルギー準位がカソード極6の仕事関数のエネルギー準位よりも低いことが好ましい。
【0060】
(本実施の第三の形態に係る光電変換素子)
本実施の第三の形態に係る光電変換素子について、
図3を参照して説明する。
図3に示す本実施の形態例に係る光電変換素子301は、前記導電性金属層の前記貫通孔を含む全面もしくは一部が金属酸化物層で被覆され、前記結晶化合物層が該導電性金属層の前記カソード極と対向する面に該金属酸化物層を介して接触、または直接接触して配置されるとともに前記貫通孔を充填し、該導電性金属層の透明基板側の面に接触して多孔体層が配置され、該多孔体層の孔を該結晶化合物層が充填してなる点が、本実施の第一の形態に係る光電変換素子101と相違する。
【0061】
導電性金属層4の厚みは、好ましくは100nm〜5μmである。
【0062】
多孔体層7は、透明基板1と導電性金属層4との接触を妨げ、かつ多孔体層7の中に、ペロブスカイト結晶化合物を含むことができるものであれば、特に限定されない。材料としては、例えば、ZnOやSnO
2、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2等のナノ粒子等適宜のものを用いることができる。ナノ粒子等の微粒子形状は特に限定するものではないが、1nm〜100nm程度が好ましい。
多孔体層7の厚みは、特に限定するものではないが、好ましくは10nm〜5μm程度であり、より好ましくは、50nm〜300nm程度である。
多孔体層7は、ナノ粒子のペーストの薄膜を形成した後に、例えば300〜550℃の温度で焼成した焼結体であってもよい。
【0063】
(本実施の第四の形態に係る光電変換素子)
本実施の第四の形態に係る光電変換素子について、
図4を参照して説明する。
図4に示す本実施の形態例に係る光電変換素子401は、結晶化合物層(電荷発生層)2とカソード極6に両面を接触してホール輸送層5が配置される点が、本実施の第三の形態に係る光電変換素子301と相違する。
【0064】
導電性金属層4の厚みは、好ましくは100nm〜5μmである。
【0065】
(本実施の第五の形態に係る光電変換素子)
本実施の第五の形態に係る光電変換素子について、
図5を参照して説明する。
図5に示す本実施の形態例に係る光電変換素子501は、導電性金属層14の貫通孔を含む全面が金属酸化物層13で被覆されるとともに、導電性金属層14とカソード極6の間に電解質15を有する点が、本実施の第一の形態に係る光電変換素子101と相違する。
【0066】
導電性金属層14は、適度の導電性を有し、電解質15に溶出しないものであれば特に限定するものではない。導電性金属層14の材料は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)及び金(Au)からなる群から選ばれる1種または2種以上の金属材料またはこれらの化合物であるか、これらで被覆した材料であることが好ましい。
導電性金属層14は、表裏に貫通している孔を有していれば、その形状は限定するものではなく、例えば、金網、メッシュ、不織布、金属箔にドリルやエッチング等で貫通孔を形成したもの、金属粒子の焼結体等が挙げられ、また光電変換素子101〜401の導電性金属層4と同様のものも用いることができる。
導電性金属層14は、貫通孔を有する金属多孔体で形成され、通過する電解質15が、電荷発生層12まで均一に浸透することが好ましい。導電性金属層14の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、100nm〜600μmとすることが好ましい。導電性金属層14の厚みが、100nm未満の場合には、電気抵抗が上昇するおそれがある。一方、導電性金属層14の厚みが600μmを超えると、内部を通過する電解質15の流動抵抗が大きすぎて、電解質15の移動が阻害されるおそれがある。
【0067】
カソード極16は、カソード極6と同様の構成とすることができる。また、透明基板11と同様の基板を用い、基板の電解質15に向けた面の一部に、例えば、ITO(スズをドープした酸化インジウム膜)、FTO(フッ素をドープした酸化スズ膜)、SnO
2膜、Ti、W、Mo、Ph、Pt、Ta等の金属膜等の導電膜を積層し、さらに導電膜の上に、例えば、白金膜や良導電性炭素等の触媒膜を設けてもよい。また、透明基板を省略し、金属箔に白金膜等の触媒膜を設けてもよい。金属箔は、好ましくは、Tiである。
【0068】
電解質15は、特に限定されないが、ヨウ素、リチウムイオン、イオン液体、t-ブチルピリジン等を含むものであり、例えばヨウ素の場合、ヨウ化物イオンおよびヨウ素の組み合わせからなる酸化還元体を用いることができる。また、コバルト等の金属錯体を酸化還元対として用いてもよい。また、この酸化還元体を溶解可能な適宜の溶媒を含むものであり、例えば、アセトニトリル、γブチロラクトン、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、イオン液体等が挙げられる。
電解質15の注入方法は特に限定されないが、封止材の一部をシールせずに開口部にしておき、その開口部から電解質15を注入し、開口部をシールすることもできる。また、カソード極16の一部に予め開口部を設けておき、そこから電解質15を注入した後に開口部をシールすることもできる。
【0069】
導電性金属層14とカソード極16を接触しないように配置するため、例えば電解質15に対して耐腐食性を有し、かつ、電解質イオンの拡散を妨げないように十分な空孔を有するガラスペーパーなどのスペーサで絶縁する方法もある。導電性金属層14とカソード極16の間隔は100μm以下であることが好ましい。
【0070】
本実施の第一〜五の形態に係る光電変換素子光電変換素子101〜501の好ましい製造方法について、以下に説明する。
【0071】
(本実施の第一の形態に係る光電変換素子の製造方法例)
透明樹脂基板上に、メチルアミンヨウ化水素酸塩(CH
3NH
3I)とヨウ化鉛(PbI
2)を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布成膜し、100℃で30分乾燥して、ペロブスカイト系結晶化合物からなる層を成膜する。その上から、メッシュ状にパターニングされたメタルマスクを用いて、チタン(Ti)をスパッタ法により成膜することで、厚み300nmの導電性金属層を作製する。この導電性金属層の上から、再度メチルアミンヨウ化水素酸塩(CH
3NH
3I)とヨウ化鉛(PbI
2)を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布成膜し、100℃で30分乾燥することで、厚み500nmのペロブスカイト系結晶化合物からなる電荷発生層を作製する。最後に、ペロブスカイト結晶化合物からなる電荷発生層の上から、カソード極として金を蒸着成膜することで、光電変換素子を作製する。
【0072】
(本実施の第二の形態に係る光電変換素子の製造方法例)
透明樹脂基板上に、メチルアミンヨウ化水素酸塩(CH
3NH
3I)とヨウ化鉛(PbI
2)を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布成膜し、100℃で30分乾燥して、ペロブスカイト系結晶化合物からなる層を成膜する。その上から、メッシュ状にパターニングされたメタルマスクを用いて、スパッタ法により、チタニア(TiO
2)、チタン(Ti)、チタニア(TiO
2)の順で成膜することで、金属酸化物層で覆われた、厚み300nmの導電性金属層を作製する。
この導電性金属層の上から、spiro−OMeTAD(2,2‘,7,’−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenylamine)9,9‘−spirobifluorene))とtBP(4−tert−butylpyridine)、Li−TFSI(lithium bis(trifluoromeyhanesulfonyl)imide)を溶解させたクロロベンゼン溶液を塗布成膜、乾燥し、厚み100nmのホール輸送層を作製する。
最後に、ホール輸送層の上から、カソード極として金を蒸着成膜することで、光電変換素子を作製する。
【0073】
(本実施の第三の形態に係る光電変換素子の製造方法例)
透明ガラス基板上に、チタニアペーストを塗布し、450℃で30分間焼成して、厚み200nmのポーラスチタニアからなる多孔体層を作製する。多孔体層の表面に酸化亜鉛のテトラポッド型結晶とチタニアの微粒子との混合組成物スラリーをスプレー法により分散する。スプレー分散後、450℃で30分間焼成する。この後、スパッタ法によりチタン(Ti)を成膜する。残存する酸化亜鉛のテトラポッド型結晶を、希塩酸でリンスすることにより取り除く。その後、陽極酸化により、チタン(Ti)表面を酸化することで、金属酸化物層で覆われた、厚み300nmの導電性金属層を作製する。この導電性金属層の上から、メチルアミンヨウ化水素酸塩(CH
3NH
3I)とヨウ化鉛(PbI
2)を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布成膜する。このとき、γ−ブチロラクトン溶液は、多孔体層まで浸透する。これを100℃で30分乾燥することで、厚み400nmのペロブスカイト系結晶化合物からなる電荷発生層を作製する。最後に、電荷発生層の上から、カソード極として金を蒸着成膜することで、光電変換素子を作製する。
【0074】
(本実施の第四の形態に係る光電変換素子の製造方法例)
透明樹脂基板上に、チタニア微粒子をスプレー法に分散し、厚み200nmの多孔体層を作製する。多孔体層の表面に酸化亜鉛のテトラポッド型結晶とチタニアの微粒子との混合組成物スラリーをスプレー法により分散する。この後、スパッタ法によりチタン(Ti)を成膜する。残存する酸化亜鉛のテトラポッド型結晶を、希塩酸でリンスすることにより取り除く。その後、陽極酸化により、チタン(Ti)表面を酸化することで、金属酸化物層で覆われた、厚み300nmの導電性金属層を作製する。この導電性金属層の上から、メチルアミンヨウ化水素酸塩(CH
3NH
3I)とヨウ化鉛(PbI
2)を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布成膜する。このとき、γ−ブチロラクトン溶液は、多孔体層まで浸透する。これを100℃で30分乾燥することで、厚み400nmのペロブスカイト系結晶化合物からなる電荷発生層を作製する。この電荷発生層の上から、spiro−OMeTAD(2,2‘,7,’−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenylamine)9,9‘−spirobifluorene))とtBP(4−tert−butylpyridine)、Li−TFSI(lithium bis(trifluoromeyhanesulfonyl)imide)を溶解させたクロロベンゼン溶液を塗布成膜、乾燥し、厚み100nmのホール輸送層を作製する。最後に、ホール輸送層の上から、カソード極として金を蒸着成膜することで、光電変換素子を作製する。
【0075】
(本実施の第五の形態に係る光電変換素子の製造方法例)
貫通孔を有するチタン微細粉焼結体シートの表面を、陽極酸化により酸化することで、金属酸化物層で覆われた、厚み20μmの導電性金属層を作製する。透明樹脂基板上に、メチルアミンヨウ化水素酸塩(CH
3NH
3I)とヨウ化鉛(PbI
2)を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布成膜する。その上から、導電性金属層となる表面酸化されたチタン微細粉焼結体シートを密着させ、100℃で30分乾燥することで、ペロブスカイト系結晶化合物からなる電荷発生層を成膜する。チタン箔に白金をスパッタ法により成膜したものをカソード極とし、カソード極の白金を成膜している側と、透明基板の導電性金属層が積層されている側を向き合うようにして、厚み60μmの半硬化樹脂シートを挟んで、115℃で接着して積層する。その際、半硬化樹脂シートは発電部に接触しないよう、発電部を囲むように配置し、また、後に電解液が注入できるように約1mm程度の隙間を2ヶ所設ける。約1mmの隙間からヨウ素、LiIからなるアセトニトリル溶媒の電解液を注入して色素増感太陽電池を作製する。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例)
透明ガラス基板上に、チタニアペーストを塗布し、450℃で30分間焼成して、厚み200nmのポーラスチタニア層を作製した。ポーラスチタニア層の表面に酸化亜鉛のテトラポッド型結晶(商品名:パナテトラ、平均繊維径約1μm:株式会社アムテック製)とチタニアの微粒子との混合組成物スラリーをスプレー法により分散した。スプレー分散後、450℃で30分間焼成した。この後、スパッタ法によりチタン(Ti)を製膜した。
希塩酸でリンスすることにより、残存する酸化亜鉛のテトラポッド型結晶を取り除き、厚み300nmの貫通孔を有する導電性金属層を作製した。その後、陽極酸化により、チタン(Ti)表面を酸化した。
一方、CH
3NH
2メタノール溶液とヨウ化水素酸を混合し、溶媒を留去することで、CH
3NH
3Iを作製した。導電性金属層の上から、CH
3NH
3IとPbI
2を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布し、100℃で30分間乾燥することで、厚み400nmのCH
3NH
3PbI
3で示されるペロブスカイト系結晶化合物からなる層を作製した。
更にその上から、spiro−OMeTAD(2,2‘,7,’−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenylamine)9,9‘−spirobifluorene))とtBP(4−tert−butylpyridine)、Li−TFSI(lithium bis(trifluoromeyhanesulfonyl)imide)を溶解させたクロロベンゼン溶液を塗布し、乾燥することで、厚み100nmのホール輸送層を作製した。
最後に、ホール輸送層の上から、カソード極として金を蒸着製膜することで、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子の特性は、ソーラーシミュレータを用いてAM1.5、100mW/cm
2の疑似太陽光を光電変換素子に照射して評価を行った。光電変換素子の第一の電極部(チタン)とカソード極(金)を電気的に接続したときの素子の性能は、V
ocが0.83V、J
scが16.4mA/cm
2、FFが0.72、効率が9.8%であった。
【0078】
(比較例)
FTO(フッ素をドープした酸化スズ膜)膜が製膜された透明基板上に、TAA(Titaniumu diisopropoxide bis(acetylacetonate))2−プロパノール溶液をスプレー法により噴霧し、450℃で30分間焼成して、厚み30nmの緻密なチタニア膜をFTO膜上に形成した。その上にチタニアペーストを塗布し、450℃で30分間焼成することで、厚み400nmのポーラスチタニア層を作製した。
ポーラスチタニア層の上から、CH
3NH
3IとPbI
2を等モル量溶解させたγ−ブチロラクトン溶液を塗布し、100℃で30分間乾燥することで、厚み400nmのCH
3NH
3PbI
3で示されるペロブスカイト系結晶化合物からなる層を作製した。なお、CH
3NH
3Iは実施例と同様の方法で作製した。
CH
3NH
3PbI
3で示されるペロブスカイト系結晶化合物からなる層の上から、spiro−OMeTAD(2,2‘,7,’−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenylamine)9,9‘−spirobifluorene))とtBP(4−tert−butylpyridine)、Li−TFSI(lithium bis(trifluoromeyhanesulfonyl)imide)を溶解させたクロロベンゼン溶液を塗布し、乾燥することで、厚み100nmのホール輸送層を作製した。
最後に、ホール輸送層の上から、カソード極として金を蒸着製膜することで、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子の特性を、実施例と同様の方法で評価を行ったところ、V
ocが0.81V、J
scが14.9mA/cm
2、FFが0.67、効率が8.1%であった。
【0079】
実施例と比較例の比較により、本発明の光電変換素子が高い特性を有することが明らかとなった。