特開2015-192102(P2015-192102A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015192102-反応性イオンエッチング装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-192102(P2015-192102A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】反応性イオンエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20151006BHJP
【FI】
   H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-69893(P2014-69893)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】上村 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】長田 大和
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA09
5F004BA20
5F004DA04
5F004DB19
(57)【要約】
【課題】処理対象物に対する真空紫外光の照射を抑制しつつ、ステージへの投入電力が小さくてもエッチングレートの著しい低下を抑制することができる反応性イオンエッチング装置を提供する。
【解決手段】真空処理室1aと、真空処理室に設けられて処理対象物Wを保持するステージ2と、真空処理室にエッチングガスを導入するガス導入手段4と、エッチングガスを電離するプラズマを真空処理室内に発生させるプラズマ発生手段5,E2と、ステージにバイアス電力を投入する電源E1とを備える。真空処理室内にステージの外形と同等以上の外形を持ち、複数の透孔61が開設された遮蔽板6をステージに対向配置し、真空処理室内の遮蔽板の上方空間をプラズマ発生空間SPとし、ステージの遮蔽板への投影面の面積に対する、ステージ側からプラズマ発生空間を臨む遮蔽板下面60における各透孔の部分の面積の総和の比率を10〜80%の範囲内に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理室と、真空処理室に設けられて処理対象物を保持するステージと、真空処理室にエッチングガスを導入するガス導入手段と、エッチングガスを電離するプラズマを真空処理室内に発生させるプラズマ発生手段と、ステージにバイアス電力を投入する電源とを備える反応性イオンエッチング装置において、
真空処理室内にステージの外形と同等以上の外形を持ち、複数の透孔が開設された遮蔽板をステージに対向配置し、ステージから遮蔽板に向かう方向を上として、真空処理室内の遮蔽板の上方空間をプラズマ発生空間とし、
ステージの遮蔽板への投影面の面積に対する、ステージ側からプラズマ発生空間を臨む遮蔽板下面における各透孔の部分の面積の総和の比率を10〜80%の範囲内に設定することを特徴とする反応性イオンエッチング装置。
【請求項2】
前記透孔の各々は、前記遮蔽板の中心を中心とする同心円上に周方向の長さが同等となるように開設されていることを特徴とする請求項1記載の反応性イオンエッチング装置。
【請求項3】
前記透孔の各々は、平面視円形または矩形であることを特徴とする請求項1記載の反応性イオンエッチング装置。
【請求項4】
前記遮蔽板から処理対象物までの距離を30mm〜100mmの範囲内に設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の反応性イオンエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性イオンエッチング装置に関し、より詳しくは、窒化ガリウム膜のエッチングに適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム膜は、大きなバンドギャップを有するため、例えば、パワーデバイスの材料として用いられている。パワーデバイスの製造工程において、窒化ガリウム膜は例えば反応性イオンエッチング装置を用いてエッチングされる。反応性イオンエッチング装置としては、真空処理室に設けられて処理対象物を保持するステージと、真空処理室にエッチングガスを導入するガス導入手段と、エッチングガスを電離するプラズマを真空処理室内に発生させるプラズマ発生手段と、ステージにバイアス電力を投入する電源とを備えるものが知られている。ここで、窒化ガリウム膜はプラズマによるダメージを受けやすいため、バイアス電力を小さく(例えば5W以下)設定することが一般であるが、プラズマからの真空紫外光が窒化ガリウム膜に照射されると、窒化ガリウム膜がダメージを受けることが知られている。
【0003】
処理対象物への真空紫外光の照射を抑制できるものとして、真空処理室内でステージに対向配置した遮蔽板を備えるマイクロ波プラズマエッチング装置が例えば特許文献1で知られている。このものでは、遮蔽板を真空紫外光を透過しない材料で作製し、この遮蔽板にステージ側から遮蔽板上方のプラズマ発生空間が見えないように斜めにのびる透孔を複数開設することで、プラズマからの真空紫外光が処理対象物に照射されないようにしている。
【0004】
そこで、上記遮蔽板を反応性イオンエッチング装置に適用し、窒化ガリウム膜をエッチングすることが考えられるが、窒化ガリウム膜のエッチングレートが著しく低下することが判明した。これは、上記遮蔽板の透孔はステージ側からプラズマ発生空間を臨まないように形成されているため、透孔を介して窒化ガリウム膜に対してイオンが殆ど供給されず、窒化ガリウム膜に印加される自己バイアス電圧が著しく低くなるためであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−12962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、処理対象物に対する真空紫外光の照射を抑制しつつ、ステージへの投入電力が小さくてもエッチングレートの著しい低下を抑制することができる反応性イオンエッチング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空処理室と、真空処理室に設けられて処理対象物を保持するステージと、真空処理室にエッチングガスを導入するガス導入手段と、エッチングガスを電離するプラズマを真空処理室内に発生させるプラズマ発生手段と、ステージにバイアス電力を投入する電源とを備える本発明の反応性イオンエッチング装置は、真空処理室内にステージの外形と同等以上の外形を持ち、複数の透孔が開設された遮蔽板をステージに対向配置し、ステージから遮蔽板に向かう方向を上として、真空処理室内の遮蔽板の上方空間をプラズマ発生空間とし、ステージの遮蔽板への投影面の面積に対する、ステージ側からプラズマ発生空間を臨む遮蔽板下面における各透孔の部分の面積の総和の比率を10〜80%の範囲内に設定することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、遮蔽板にステージ側からプラズマ発生空間を臨むように複数の透孔を開設し、このプラズマ発生空間を臨む遮蔽板下面における各透孔の部分の面積の総和を、ステージの遮蔽板への投影面の面積に対して10〜80%の範囲内に設定することで、各透孔を介して処理対象物に対してイオンを効率よく供給できる。このため、バイアス電力が小さくても、処理対象物に印加される自己バイアス電圧が低下せず、エッチングレートの著しい低下を抑制することができる。これと併せて、遮蔽板の透孔以外の部分でプラズマからの真空紫外光を効率よく遮蔽することができる。従って、処理対象物に対する真空紫外光の照射を抑制しつつ、ステージへの投入電力が小さくてもエッチングレートの著しい低下を抑制することができる反応性イオンエッチング装置を得ることができる。尚、透孔を遮蔽板下面に対して斜めにのびるように開設した場合、「ステージ側からプラズマ発生空間を臨む遮蔽板下面における各透孔の部分」とは、遮蔽板下面における各透孔を遮蔽板上面に投影したときに遮蔽板上面における各透孔と互いに重複する部分をいうものとする。
【0009】
本発明において、前記透孔の各々を、前記遮蔽板の中心を中心とする同心円上に周方向の長さが同等となるように開設することができる。また、本発明において、前記透孔の各々を、平面視円形または矩形とすることができる。
【0010】
本発明において、前記遮蔽板から処理対象物までの距離を30mm〜100mmの範囲内に設定することが好ましい。30mmよりも短いと、遮蔽板の透孔直下に位置する処理対象物のエッチングレートと遮蔽板の透孔を除く部分の直下に位置する処理対象物のエッチングレートとの差が大きくなり、エッチングレートの面内均一性が悪くなるという問題がある。一方、100mmよりも長いと、遮蔽板のステージ側に漏れ出るプラズマが多くなり、処理対象物への真空紫外光の照射を効果的に抑制できないという問題がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の反応性イオンエッチング装置を模式的に示す図。
図2】(a)〜(c)は、遮蔽板の例を夫々示す平面図。
図3】本発明の効果を確認する実験結果を示すグラフ。
図4】本発明の効果を確認する実験結果を示すグラフ。
図5】本発明の効果を確認する実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の反応性イオンエッチング装置(以下「エッチング装置」という)を説明する。図1を参照して、EMは、エッチング装置であり、エッチング装置EMは、真空処理室を画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の上部開口は、石英等の誘電体で形成される天板11で塞がれている。真空チャンバ1の側壁上部にはフランジ1aが設けられ、フランジ上面に形成された凹溝1bに嵌め込まれたOリング12により、フランジ1aと天板11との間がシールされている。
【0013】
真空チャンバ1内の底部には、絶縁体Iを介して基板ステージ2が設けられ、図示省略の公知の静電チャック等により、処理対象物Wをその処理面を上側にして位置決め保持できるようになっている。基板ステージ2には、真空チャンバ1の下部開口を介して高周波電源E1からの出力が接続されており、処理対象物Wにバイアス電位を印加できるようになっている。尚、基板ステージ2には図示省略の温媒流路が形成され、温媒流路に温度制御された温媒を流すことで、処理対象物Wを所定温度に加熱できるようになっている。
【0014】
真空チャンバ1の底部には、図示省略の真空ポンプなどの真空排気手段に通じる排気管3が接続され、真空チャンバ1内を真空引きできるようになっている。また、真空チャンバ1の側壁には、図示省略の流量制御手段(マスフローコントローラ)を介してガス源に通じるガス管4が接続され、真空チャンバ1内にエッチングガスを所定流量で導入できるようになっている。
【0015】
天板11の外側には、複数段(本実施形態では2段)のループ状のアンテナコイル5が設けられ、このアンテナコイル5には高周波電源E2からの出力が接続され、プラズマ発生用の高周波電力を投入できるようになっている。これらのアンテナコイル5及び高周波電源E2は、本発明の「プラズマ発生手段」を構成し、後述する遮蔽板6の上方空間(以下「プラズマ発生空間」という)SPにプラズマを発生させることができる。
【0016】
ここで、プラズマからの真空紫外光が処理対象物Wに照射されると、処理対象物Wがダメージを受ける。このような真空紫外光の照射を抑制するために、上記エッチング装置EMは、ステージ2の外形と同等以上の外形を持つ遮蔽板6をステージ2に対向配置した。遮蔽板6は、ステージ2の外側で真空チャンバ1底部に立設した支持部7の上部で支持されている。遮蔽板6及び支持部7の材料としては、石英、アルミナ、アルミニウム、チタンのような、真空紫外光を遮蔽する材料を用いることができる。また、遮蔽板6として、アルミニウムやチタンなどの金属製の母材表面をアルミナ膜で覆ってなるものを用いることができる。
【0017】
図2(a)も参照して、遮蔽板6には、平面視円形の透孔61が複数開設されている。これらの透孔61は、ステージ2からプラズマ発生空間SPを臨むように、即ち、遮蔽板60下面に対して直交する方向にのびるように形成されている。ステージ2の遮蔽板6への投影面の面積に対する、ステージ2側からプラズマ発生空間SPを臨む遮蔽板下面60における各透孔61の部分の面積の総和の比率(以下「開口率」という)が10〜80%の範囲内、好ましくは20〜50%の範囲内に設定されている。開口率が10%未満だと、遮蔽板6のステージ側に漏れ出るプラズマが少なくなり、エッチング処理が困難になるという問題がある。生産効率(生産性)を鑑みると、開口率を20%以上に設定することが好ましい。一方で、開口率が80%よりも高いと、処理対象物Wへの真空紫外光の照射を効果的に抑制できないという問題がある。尚、処理対象物Wのダメージの指標である後述のPLシフト量は1.0に近い数値であることが好ましいため、開口率を50%以下に設定することが好ましい。透孔61の直径は、3〜40mmの範囲内に設定することができる。また、遮蔽板6の厚さは、その材質に応じて例えば、2〜15mmの範囲内で適宜設定することができる。遮蔽板6から処理対象物Wまでの距離は30mm〜100mmの範囲内に設定することが好ましい。30mmよりも短いと、遮蔽板6の透孔61直下に位置する処理対象物Wのエッチングレートと遮蔽板6の透孔61を除く部分の直下に位置する処理対象物Wのエッチングレートとの差が大きくなり、エッチングレートの面内均一性が悪くなるという問題がある。一方、100mmよりも長いと、遮蔽板6のステージ側に漏れ出るプラズマが多くなり、処理対象物Wへの真空紫外光の照射を効果的に抑制できないという問題がある。
【0018】
また、天板11とアンテナコイル5との間には、天板11に沿って電極7が配置されている。電極7には、高周波電源E2からの出力が可変容量コンデンサ(例えば、100pF〜200pF)8を介して接続されており、真空チャンバ1内にプラズマが発生した状態で電極7に電圧印加すると、電極7に対向する天板11の下面11aにイオンが引き込まれて、下面11aに付着した反応副生成物を除去できるようになっている。
【0019】
上記エッチング装置EMは、特に図示しないが、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御手段を有し、制御手段により上記各電源E1,E2の稼働、マスフローコントローラの稼働や真空排気手段の稼働等を統括管理するようになっている。以下、処理対象物Wを窒化ガリウム膜が形成されたサファイア基板とし、上記エッチング装置EMを用いて窒化ガリウム膜をエッチングするエッチング方法について説明する。
【0020】
先ず、真空排気手段を作動させて真空チャンバ1内を所望の真空度まで真空引きした状態で、図外の搬送ロボットを用いて処理対象物Wを搬送して基板ステージ2上に載置する。そして、ガス管4から真空チャンバ1内に、塩素含有ガスを20〜50sccmの流量で導入し、この状態で、高周波電源E2からアンテナコイル5に例えば13.56MHzの高周波電力を100W〜500W投入することで、真空チャンバ1内にプラズマPが発生する。これと併せて、ステージ2に例えば400kHzの高周波電力を1〜5W投入する。ここで、図2(a)に示すように直径30mmの透孔61が複数個(開口率50%)形成された遮蔽板6をステージ2に対向配置したため、プラズマPが透孔61を介してステージ2側に適度に漏れ出す。このため、塩素イオンが処理対象物Wに引き込まれて窒化ガリウム膜がエッチングされる。
【0021】
以上説明したように、遮蔽板6の透孔61を介して処理対象物WがプラズマPを臨むため、透孔61を介して遮蔽板6のステージ2側に適度にプラズマを漏れ出させることができる。このため、処理対象物Wに印加するバイアス電位が低くても(例えば、2W)、処理対象物Wに塩素イオンを効率よく引き込むことができる。また、遮蔽板6の透孔61以外の部分により、プラズマPからの真空紫外光を遮蔽することができる。従って、処理対象物Wに対する真空紫外光の照射を抑制しつつ、窒化ガリウム膜を確実にエッチングすることができる反応性イオンエッチング装置を得ることができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、平面視円形の透孔60が開設された遮蔽板6を例に説明したが、透孔の形状はこれに限定されず、例えば、図2(b)に示す遮蔽板6aのように、平面視矩形の透孔61aを開設してもよい。この場合、遮蔽板6aを格子状にパターニングすることにより、複数の透孔61aを開設することができる。また、図2(c)に示す遮蔽板6bのように、透孔61b(透孔61c,61d)の各々を、遮蔽板6bの中心を中心とする同心円上に周方向の長さが同等となるように開設されてもよい。この場合、径方向に等間隔で透孔61b,61c,61dが開設されてもよい。この場合、遮蔽板6bは、円形の基部63aと、この基部63aから径方向にのびる複数本(本実施形態では8本)の主枝部63bと、互いに隣接する主枝部63bで区画される空間を複数個の透孔に分割する円弧状の従枝部63cとで構成することができる。
【0023】
また、上記実施形態では、遮蔽板表面に対して直交方向にのびる透孔を開設する場合について説明したが、遮蔽板表面に対して斜めにのびる透孔を開設してもよい。この場合、ステージ側からプラズマ発生空間を臨む遮蔽板下面における各透孔の部分」とは、遮蔽板下面における各透孔を遮蔽板上面に投影したときに遮蔽板上面における各透孔と互いに重複する部分をいうものとする。上記従来例のものでは、このような部分はない。
【0024】
また、上記実施形態では、支持部7により遮蔽板6を支持しているが、真空チャンバ1の側壁に遮蔽板6を固定するようにしてもよい。また、プラズマを発生させる方法は、アンテナコイルに高周波電力を投入する方法に限らず、他の公知の方法を用いることができる。
【0025】
次に、上記効果を確認するために、上記エッチング装置EMを用いて次の実験を行った。本実験では、処理対象物Wとしてサファイア基板上に窒化ガリウム膜をスパッタ法により約30nmの厚さで成膜したものとし、この窒化ガリウム膜をエッチングした。エッチング条件は以下の通りである。即ち、遮蔽板6としてアルミナに開口率50%でφ30mmの透孔を複数開設したものを用い、遮蔽板6と処理対象物Wとの間の距離を60mmに設定し、塩素含有ガスの流量を30sccmとした(このときの真空チャンバ1内の圧力は約0.5Pa)、ステージ2への投入電力を400kHz、2Wに設定すると共に、アンテナコイル5への投入電力を13.56MHz、150Wに設定した。エッチング前後の窒化ガリウム膜のバンド端強度及びバンド内強度を夫々測定した結果、エッチング前(イニシャル)のバンド端強度は43(a.u)、バンド内強度が3797(a.u)であったのに対し、エッチング後のバンド端強度は41(a.u)、バンド内強度が3765(a.u)であった。これより、エッチング前後のバンド端強度に対するバンド内強度の比(バンド内強度/バンド端強度)を求めたところ、エッチング前の88.3からエッチング後の91.8へと1.04倍に変化することが確認された。以下、エッチング前後の上記比(バンド内強度/バンド端強度)の変化を「PLシフト量」といい、ダメージの指標として用いる。尚、本実験でのエッチングレートを求めたところ、8nm/minであった。
【0026】
【表1】
【0027】
さらに、透孔61の開口率を10%,20%,40%,70%,80%,90%,100%(遮蔽板無し)と変化させた点を除き、上記と同様にエッチングを夫々行い、PLシフト量を求めた結果を図3に示す。この開口率が10%,20%,80%,100%のときのエッチングレートを併せて測定し、その測定結果を図4に示す。図3及び図4に示す結果から、透孔61の開口率を10%〜80%の範囲内に設定すれば、PLシフト量を抑制しつつ、窒化ガリウム膜をエッチングできることが判った。さらに、開口率を20〜50%の範囲内に設定すれば、生産効率を高めることができると共にPLシフト量をより一層抑制できることが判った。
【0028】
また、遮蔽板6の材料を石英、アルミニウムに変えた点を除き、上記と同様にエッチングを行い(開口率50%)、PLシフト量を求めた結果を図5に示す。これによれば、遮蔽板6の材料はアルミナが好ましい。但し、アルミナ製の遮蔽板に透孔を開設するには加工性が難しいため、アルミニウムやチタンなどの金属製の遮蔽板の少なくともプラズマ側の面にアルミナ膜を形成することが好ましく、アルミナ膜の形成方法としては溶射法を用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
EM…反応性イオンエッチング装置、W…基板(処理対象物)、1a…真空処理室、2…ステージ、4…ガス管(ガス導入手段)、5…アンテナコイル(プラズマ発生手段)、E1…電源、E2…高周波電源(プラズマ発生手段)、6…遮蔽板、60…遮蔽板下面、61…透孔。
図1
図2
図3
図4
図5