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特開2015-193553シクロアルカンジカルボン酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-193553(P2015-193553A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】シクロアルカンジカルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/09 20060101AFI20151009BHJP
   C07C 61/08 20060101ALI20151009BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20151009BHJP
【FI】
   C07C51/09
   C07C61/08
   C07B57/00 346
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-71720(P2014-71720)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大地
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC46
4H006AC83
4H006BJ10
4H006BS20
(57)【要約】
【課題】高い純度のtrans−シクロアルカンジカルボン酸を高い生産性で製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】工程(1)〜(3)を行う式(A)で表されるシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
工程(1):式(B)で表される化合物と、脂肪族炭化水素とを混合する工程
工程(2):得られた混合物から、固形物の式(C)で表される化合物を取得する工程
工程(3):得られた式(C)で表される化合物を加水分解する工程

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(1)〜(3)を行う式(A)で表されるシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
工程(1):式(B)で表される化合物と、脂肪族炭化水素とを混合する工程
工程(2):得られた混合物から、固形物の式(C)で表される化合物を取得する工程
工程(3):得られた式(C)で表される化合物を加水分解する工程
[式中、mは、0〜3の整数を表す。
Zは、メチルスルファニルメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、4−ペンテニルオキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基、ベンジルオキシメチル基、4−メトキシベンジルオキシメチル基、2−メトキシベンジルオキシメチル基、4−ニトロベンジルオキシメチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル基、1−メチル−1−フェノキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、1−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]エチル基、テトラヒドロピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、tert−ブチル基、トリチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−フェニル−2−エタノン−1−イル、シクロプロピルメチル基、−CH2−O−SiR又は−SiRを表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はベンジル基を表す。
pは、0又は1を表す。]
【請求項2】
脂肪族炭化水素が、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及びオクタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
【請求項3】
pが1である請求項1又は2に記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
【請求項4】
mが0である請求項1〜3のいずれかに記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
【請求項5】
Zがメトキシメチル基又は、エトキシメチル基である請求項1〜4のいずれかに記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
【請求項6】
式(B)で表される化合物と、脂肪族炭化水素とを混合することにより、式(C)で表される化合物と、式(D)で表される化合物とを分離するシクロアルカンジカルボン酸エステルの分離方法。
[式中、mは、0〜3の整数を表す。
Zは、メチルスルファニルメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、4−ペンテニルオキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基、ベンジルオキシメチル基、4−メトキシベンジルオキシメチル基、2−メトキシベンジルオキシメチル基、4−ニトロベンジルオキシメチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル基、1−メチル−1−フェノキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、1−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]エチル基、テトラヒドロピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、tert−ブチル基、トリチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−フェニル−2−エタノン−1−イル、シクロプロピルメチル基、−CH2−O−SiR又は−SiRを表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はベンジル基を表す。
pは、0又は1を表す。]
【請求項7】
脂肪族炭化水素が、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及びオクタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項6に記載のシクロアルカンジカルボン酸エステルの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロアルカンジカルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)に用いられる偏光板及び位相差板等の光学フィルムに適用される、液晶材料の多くはtrans−シクロアルカンジカルボン酸に由来する構造を含んでいる。trans−シクロアルカンジカルボン酸の製造時には通常、cis−シクロアルカンジカルボン酸が副生する。副生成物を除去する方法として、熱水で洗浄する方法(特許文献1)等が知られているが、高い純度のtrans−シクロアルカンジカルボン酸を、高い収率で得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−198760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のtrans−シクロアルカンジカルボン酸の製造方法は、高い純度と、高い生産性とを両立することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
【0006】
[1]工程(1)〜(3)を行う式(A)で表されるシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
工程(1):式(B)で表される化合物と、脂肪族炭化水素とを混合する工程
工程(2):得られた混合物から、固形物の式(C)で表される化合物を取得する工程
工程(3):得られた式(C)で表される化合物を加水分解する工程
[式中、mは、0〜3の整数を表す。
Zは、メチルスルファニルメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、4−ペンテニルオキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基、ベンジルオキシメチル基、4−メトキシベンジルオキシメチル基、2−メトキシベンジルオキシメチル基、4−ニトロベンジルオキシメチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル基、1−メチル−1−フェノキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、1−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]エチル基、テトラヒドロピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、tert−ブチル基、トリチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−フェニル−2−エタノン−1−イル、シクロプロピルメチル基、−CH2−O−SiR又は−SiRを表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はベンジル基を表す。
pは、0又は1を表す。]
[2]脂肪族炭化水素が、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及びオクタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
[3]pが1である請求項1又は2に記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
[4]mが0である請求項1〜3のいずれかに記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
[5]Zがメトキシメチル基又は、エトキシメチル基である請求項1〜4のいずれかに記載のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法。
[6]式(B)で表される化合物と、脂肪族炭化水素とを混合することにより、式(C)で表される化合物と、式(D)で表される化合物とを分離するシクロアルカンジカルボン酸エステルの分離方法。
[式中、mは、0〜3の整数を表す。
Zは、メチルスルファニルメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、4−ペンテニルオキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基、ベンジルオキシメチル基、4−メトキシベンジルオキシメチル基、2−メトキシベンジルオキシメチル基、4−ニトロベンジルオキシメチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル基、1−メチル−1−フェノキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、1−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]エチル基、テトラヒドロピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、tert−ブチル基、トリチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−フェニル−2−エタノン−1−イル、シクロプロピルメチル基、−CH2−O−SiR又は−SiRを表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はベンジル基を表す。
pは、0又は1を表す。]
[7]脂肪族炭化水素が、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及びオクタンからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項6に記載のシクロアルカンジカルボン酸エステルの分離方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシクロアルカンジカルボン酸の製造方法によれば、高い純度のtrans−シクロアルカンジカルボン酸を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の式(A)で表されるシクロアルカンジカルボン酸(以下、化合物(A)ということがある)の製造方法は、式(B)で表される化合物(以下、化合物(B)ということがある)と、脂肪族炭化水素とを混合する工程(1)と、得られた混合物から、固形物の式(C)で表される化合物(以下、化合物(C)ということがある)を取得する工程(2)と、得られた式(C)で表される化合物を加水分解する工程(3)とを含む製造方法である。
【0009】
mは0〜3の整数であり、好ましくは0である。
pは0又は1であり、好ましくは1である。
【0010】
Zで表される−CH−O−SiR又は−SiRにおけるR、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はベンジル基を表す。
【0011】
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等が挙げられる。
【0012】
炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0013】
−CH−O−SiRで表される基としては、具体的には、トリメチルシリルオキシメチル基、イソプロピルジメチルシリルオキシメチル基、tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシメチル基、トリベンジルシリルオキシメチル基、トリイソプロピルシリルオキシメチル基及び、ジ−tert−ブチルメチルシリルオキシメチル基等が挙げられる。
【0014】
−SiRで表される基としては、具体的には、トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジ−tert−ブチルメチルシリル基等が挙げられる。
【0015】
Zは好ましくは、メチルスルファニルメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、テトラヒドロピラニル基又は、テトラヒドロチオピラニル基である。より好ましくは、メチルスルファニルメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基又は、トリイソプロピルシリル基であり、さらに好ましくは、メトキシメチル基又は、エトキシメチル基である。Zがこれらの基であると、化合物(B)の安定性がより優れ、化合物(B)の生産性がより高くなるため好ましい。
【0016】
化合物(B)は、式(E)で表される化合物(以下、化合物(E)ということがある)から製造することができる。

[式中、m、p及びZは、上記と同じ意味を表す。]
【0017】
化合物(B)を製造する方法としては、例えば、塩基存在下で化合物(E)と式(F)で表される化合物(以下、化合物(F)ということがある)とを反応させる方法(第1の方法)、化合物(E)と、式(G)で表される化合物又は式(H)で表される化合物とを反応させる方法(第2の方法)、化合物(E)と式(I)で表される化合物とを反応させる方法(第3の方法)、化合物(E)と塩基とを反応させることにより式(E’)で表される化合物(以下、化合物(E‘)ということがある)を得た後、得られた式化合物(E’)と化合物(F)とを反応させる方法(第4の方法)が挙げられる。
反応条件がより温和であることから、第1の方法、第2の方法及び第4の方法が好ましい。
【0018】

Z−W (F)

[式中、Zは上記と同じ意味を表す。Wは、ハロゲン原子、トシル基、又はメシチル基を表す。]
【0019】

[式中、qは、0又は1を表す。Qは−O−又は−S−を表す。]
【0020】

[式中、RL1は、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基又はトリメチルシリルエチル基を表す。RL2は、水素原子、メチル基又はフッ素原子を表す。Qは−O−又は−S−を表す。]
【0021】
Z−OH (I)

[式(I)中、Zは上記と同じ意味を表す。]
【0022】
[式中、Mは、アルカリ金属原子を表す。Z、p及びmは、上記と同じ意味を表す。]
【0023】
第1の方法は、有機溶媒中で行うのが好ましい。化合物(E)と、化合物(F)との反応によって生じる塩を除去しながら反応を行ってよい。
【0024】
塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノピリジン及び、ジメチルアニリン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム及び、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩並びに、フッ化セシウム等の無機塩基が挙げられる。塩基が有機塩基の場合、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン及び、ジメチルアミノピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及び、ピリジンがより好ましい。塩基が無機塩基の場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム及び、炭酸セシウムが好ましく、水酸化カリウム及び、炭酸カリウムがより好ましい。また、無機塩基を用いる場合には、18−クラウン−6等のクラウンエーテル又は、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩等の相間移動触媒を併用してもよい。
塩基の添加量は、化合物(E)1モルに対して、通常2〜5モルである。
【0025】
は、好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子及び臭素原子がより好ましい。
【0026】
化合物(F)としては、メチルスルファニルクロロメタン、メチルスルファニルブロモメタン、メトキシクロロメタン、メトキシブロモメタン、クロロメトキシエタン、ブロモメトキシエタン、2−メトキシエトキシメチルクロリド、2−メトキシエトキシメチルブロミド、エトキシエチルクロリド、エトキシエチルブロミド、ベンジルオキシメチルクロリド、ベンジルオキシメチルブロミド、4−メトキシベンジルオキシメチルクロリド、4−ニトロベンジルオキシメチルクロリド、2−メトキシフェニルオキシメチルクロリド、tert−ブトキシメチルクロリド、tert−ブトキシメチルブロミド、4−ペンテニルオキシメチルクロリド、1−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]エチルクロリド、1−クロロメトキシ−2,2,2−トリクロロエタン、1−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]エチルクロリド、1−メチル−1−メトキシエチルクロリド、1−メチル−1−ベンジルオキシエチルクロリド、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチルクロリド、1−メチル−1−フェノキシエチルクロリド、tert−ブチルクロリド、tert−ブチルブロミド、トリチルクロリド、トリチルブロミド、1,3−ベンゾジチオラン−2−クロリド、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、イソプロピルジメチルクロロシラン、イソプロピルジメチルブロモシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルブロモシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルブロモシラン、トリベンジルクロロシラン、トリベンジルブロモシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリイソプロピルブロモシラン、ジ−tert−ブチルメチルクロロシラン、ジ−tert−ブチルメチルブロモシラン、トリメチルシリルオキシクロロメタン、2−フェニル−2−エタノン−1−イルクロリド、1,1,1,2−テトラクロロエタン及び、クロロメチルシクロプロパン等が挙げられる。これらには、市販されているものを用いることができる。
【0027】
有機溶媒は、好ましくはアルコール以外の親水性溶媒、及び、疎水性溶媒である。
アルコール以外の親水性溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン等の親水性ケトン溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン及び、エチレングリコールジメチルエーテル等の親水性エーテル溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及び、N−メチルピロリドン等の親水性アミド溶媒、並びに、ジメチルスルホキシド等の親水性スルホキシド溶媒等が挙げられる。
疎水性溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン及び、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及び、メチルイソブチルケトン等の疎水性ケトン溶媒、ペンタン、ヘキサン及び、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、乳酸エチル及び、酢酸エチル等のエステル系溶媒、並びに、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
第1の方法に用いられる有機溶媒は、好ましくは、親水性エーテル溶媒、親水性アミド溶媒、親水性スルホキシド溶媒、芳香族炭化水素溶媒、疎水性ケトン溶媒及び、ハロゲン系溶媒であり、より好ましくはハロゲン系溶媒である。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
化合物(F)の使用量は、化合物(E)1モルに対して、好ましくは1.8〜3モルであり、より好ましくは1.97〜2.7モルであり、さらに好ましくは2〜2.7モルである。
【0029】
第2の方法は、好ましくは有機溶媒中で行われ、また、好ましくは酸触媒存在下で行われる。
酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、塩酸水溶液、硫酸及び、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。酸触媒の添加量は、化合物(E)1モルに対して、好ましくは0.005〜0.2モルである。
【0030】
第2の方法に用いられる有機溶媒は、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン及びクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及び、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;乳酸エチル等のエステル系溶媒;並びに、クロロホルム及び、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒である。これらは、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
化合物(G)としては、具体的に、ジヒドロピラン、3−ブロモジヒドロピラン、ジヒドロチオピラン、ジヒドロフラン、ジヒドロチオフラン等が挙げられる。
化合物(H)としては、具体的に、ビニルメチルエーテルビニルエチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルベンジルエーテル、トリメチルシリルエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0032】
化合物(G)又は化合物(H)の使用量は、化合物(E)1モルに対して、好ましくは1.9〜5モルであり、より好ましくは1.9〜4モルであり、さらに好ましくは2.2〜4モルである。
【0033】
第3の方法は、有機溶媒中で行うのが好ましい。化合物(E)と化合物(I)とを、脱水縮合反応することにより化合物(B)を得ることができ、かかる脱水縮合反応には、好ましくは縮合剤が用いられる。
【0034】
縮合剤としては、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−パラ−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド:WSCとして市販)、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミドなどのカルボジイミド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1(4−ニトロベンゼンスルフォニル)−1H−1、2、4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−カルボベンゾキシスクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート及び、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル等が挙げられる。
縮合剤の使用量は、化合物(E)1モルに対して、好ましくは1.5〜2.5モルである。
【0035】
第3の方法に用いられる好ましい有機溶媒としては、前記第1の方法で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0036】
化合物(I)の使用量は、化合物(E)1モルに対して、好ましくは1.8〜3モルであり、より好ましくは1.97〜2.7モルであり、特に好ましくは2〜2.7モルである。
【0037】
第4の方法における、化合物(E)と塩基との反応は、好ましくは溶媒中で行われる。かかる溶媒としては、水、メタノール及び、エタノール等が挙げられ、好ましくは前記塩基を溶解する溶媒であり、中でもメタノール、エタノールが特に好ましい。
【0038】
塩基は、好ましくは無機塩基である。無機塩基としては、前記したものと同じものが挙げられる。好ましくは、水酸化ナトリウム及び、水酸化カリウムであり、より好ましくは、水酸化カリウムである。また、塩基との反応は、相間移動触媒の存在下で行ってもよい。相関移動触媒としては、前記したものと同じものが挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(E)1モルに対して、好ましくは2〜3.5モルである。
【0039】
Mは、好ましくはナトリウム、カリウム及び、セシウムであり、より好ましくはカリウムである。
【0040】
化合物(E)と塩基との反応終了後、得られた反応混合物を、濃縮又は濾過することによって化合物(E’)を取得することができる。化合物(E’)の貧溶媒と、反応混合物とを混合し、得られた混合物を濾過する方法が好ましい。化合物(E’)の貧溶媒としては、トルエン及び、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;クロロホルム及び、ジクロロメタン等のハロゲン溶媒;並びに、テトラヒドロフラン、ジオキサン及び、ジメトキシエタン等のエーテル溶媒等が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジオキサン及び、トルエンである。
得られた化合物(E’)を乾燥してもよい。
【0041】
化合物(E’)と化合物(F)との反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。化合物(E’)1モルに対する、化合物(F)の使用量は、好ましくは1.8〜3モルであり、より好ましくは1.97〜2.7モルであり、さらに好ましくは2〜2.3モルである。
【0042】
化合物(E’)と化合物(F)との反応に用いられる好ましい有機溶媒としては、第1の方法で挙げたものと同じものが挙げられる。より好ましくは、芳香族炭化水素溶媒、疎水性ケトン溶媒及び、ハロゲン溶媒等の疎水性溶媒であり、さらに好ましくはトルエン、キシレン、ジクロロメタン及び、クロロホルムである。これらの疎水性溶媒を用いれば、反応系中に水が存在していても、高い収率で、化合物(B)を得ることができる。有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
また、該反応は、相間移動触媒の存在下で行ってもよい。相関移動触媒としては、前記したものと同じものが挙げられる。
【0043】
化合物(B)の好ましい例としては、式(B−1)〜式(B−38)で表される化合物が挙げられる。好ましくは式(B−1)〜式(B−5)で表される化合物であり、より好ましくは式(B−2)又は式(B−3)で表される化合物である。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
化合物(B)には、化合物(C)と、式(D)で表される化合物(以下、化合物(D)ということがある)とが含まれる。
化合物(B)に含まれる化合物(C)の割合は、好ましくは30〜99.5質量%であり、より好ましくは50〜99.3質量%であり、さらに好ましくは70〜99.0質量%である。化合物(B)に含まれる化合物(D)の割合は、好ましくは0.5〜70質量%であり、より好ましくは0.7〜50質量%であり、さらに好ましくは1〜30質量%である。
【0050】
<工程(1)>
工程(1)における脂肪族炭化水素は、直鎖状、分枝鎖状及び環式のいずれであってもよい。また、好ましくは飽和脂肪族炭化水素である。
かかる脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及び、メチルシクロヘキサン等が挙げられ、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及び、オクタンである。これらの脂肪族炭化水素は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
化合物(B)1質量部に対する、脂肪族炭化水素の使用量は、通常、1〜20質量部であり、好ましくは1〜15質量部であり、さらに好ましくは2〜10質量部である。
【0052】
化合物(B)と脂肪族炭化水素との混合温度は、通常−20〜20℃であり、好ましくは−10〜10℃であり、より好ましくは0〜10℃である。混合時間は、通常1分〜72時間であり、好ましくは1分〜48時間であり、より好ましくは1分〜24時間である。
【0053】
<工程(2)>
工程(1)で得られた混合物から固形物の化合物(C)を取得する方法としては、濾過及びデカンテーション等(以下、濾過等ということがある)が挙げられる。
濾過等によって、固形物と液体物とを分離することによって、化合物(B)に含まれる化合物(D)を、液体物側に分離することができる。
【0054】
濾過等を行う際の混合物の温度は、通常−20〜20℃であり、好ましくは−10〜10℃であり、より好ましくは0〜10℃である。
【0055】
濾過等の後に、得られた固形物を、有機溶媒を用いてさらに洗浄してもよい。洗浄の際には、固形物及び有機溶媒を撹拌してもよいし、攪拌しなくてもよいが、洗浄効率の観点から、撹拌するのがより好ましい。洗浄に用いる有機溶媒は、好ましくは脂肪族炭化水素を含む溶媒である。かかる脂肪族炭化水素としては、工程(1)で例示したものと同じものが挙げられる。
【0056】
洗浄に用いる有機溶媒の量は、化合物(B)1質量部に対して、通常1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは1〜2質量部である。
【0057】
洗浄温度は、通常−20〜20℃であり、好ましくは−10〜10℃であり、より好ましくは0〜10℃である。
洗浄時間は、通常1分〜72時間であり、好ましくは1分〜48時間であり、より好ましくは1分〜2時間である。
【0058】
工程(2)では、固形物の化合物(C)と共に、微量の化合物(D)が取得される。
工程(2)の後に得られる、化合物(C)と化合物(D)との合計量に対する、化合物(C)の割合は、好ましくは99.6〜99.99質量%であり、より好ましくは99.7〜99.99質量%であり、さらに好ましくは99.8〜99.99質量%であり、特に好ましくは99.9〜99.99質量%である。化合物(D)の割合は、好ましくは0.01〜0.4質量%であり、より好ましくは0.01〜0.3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.2%であり、特に好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0059】
<工程(3)>
加水分解するとは、化合物(C)が有するエステル結合を分解して、カルボン酸を生成することである。加水分解を行う方法としては、酸を用いる方法及び、塩基を用いる方法が挙げられる。
加水分解の際に、化合物(A)の異性化が起きにくいという観点から、酸を用いる方法が好ましい。また、化合物(A)のカルボン酸塩が生じず、加水分解後の後処理が簡便であるという観点からも、酸を用いる方法が好ましい。
【0060】
加水分解に用いる酸としては、ブレンステッド酸及び、ルイス酸が挙げられる。
ブレンステッド酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸及び、硫酸等の無機ブレンステッド酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸及び、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機ブレンステッド酸が挙げられる。
【0061】
ルイス酸としては、五フッ化リン、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化スズ、塩化アンチモン、三塩化鉄、臭化亜鉛及び、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等が挙げられる。取り扱いが容易であることから、塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化スズ及び、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましく、安価であることから、塩化アルミニウム及び、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体がより好ましい。
【0062】
酸は、ブレンステッド酸が好ましく、中でも、有機溶媒への溶解性が高く、均一系で加水分解することができることから、有機ブレンステッド酸がより好ましい。
中でも、有機溶媒への溶解性が高く、かつ高い酸性度を有することから、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸及び、トリフロオロメタンスルホン酸がより好ましく、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸及び、メタンスルホン酸がさらに好ましい。
また、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸は、取り扱いが容易であり、安価であり且つ、反応液からの除去が容易であるため好ましい。
【0063】
加水分解に用いる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノピリジン及び、ジメチルアニリン等の有機塩基;並びに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム及び、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、及び、フッ化セシウム等の無機塩基が挙げられる。
有機塩基は、好ましくは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン及び、ジメチルアミノピリジンであり、より好ましくは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及び、ピリジンである。
無機塩基は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム及び、炭酸セシウムであり、より好ましくは水酸化カリウム及び、炭酸カリウムである。
【0064】
加水分解に塩基を用いる場合は、加水分解をより円滑に進めるために、さらに水を加えてもよい。
また、無機塩基を用いる場合には、相間移動触媒をさらに加えてもよい。相関移動触媒としては、前記したものと同じものが挙げられる。
【0065】
酸の使用量は、化合物(C)1モルに対して、通常0.1モル以上6.0モル以下であり、好ましくは0.1モル以上4.0モル以下であり、より好ましくは0.1モル以上3.6モル以下である。
【0066】
加水分解に酸を用いる場合は、加水分解をより円滑に進めるために、さらにチオアニソール、トリエチルシラン又は、アニソール等を加えてもよい。
【0067】
加水分解は、通常、溶媒中で行われる。好ましい溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタノール及び、ドデシルアルコール等のアルコール溶媒、アルコール以外の親水性溶媒、疎水性溶媒、並びに、水等が挙げられる。好ましくはアルコール溶媒、アルコール以外の親水性溶媒及び、疎水性溶媒等の有機溶媒である。
【0068】
溶媒の使用量は、化合物(C)1質量部に対して、通常1〜12質量部であり、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは2〜8質量部である。
加水分解を行う温度は、通常−80〜160℃であり、好ましくは−15〜100℃であり、より好ましくは0〜60℃である。
加水分解を行うための時間は、通常1分〜72時間であり、好ましくは1〜48時間であり、より好ましくは3〜48時間である。
【0069】
加水分解は、「Protective Groups in Organic Synthesis−THIRD EDITION」(Greene Wuts著、 WILEY−INTERSCIENCE社)に記載されている方法を参考にして行ってもよい。
【0070】
工程(3)の後に、化合物(A)を取り出す方法としては、加水分解を行った後の混合物を濃縮乾固する方法及び、化合物(A)を晶析した後に濾過する方法等が挙げられる。
【0071】
化合物(A)を晶析する場合は、加水分解に用いる溶媒は、親水性の溶媒であると好ましい。より好ましくはアルコール以外の親水性溶媒であり、さらに好ましくは親水性エーテル溶媒、親水性アミド溶媒及び、親水性スルホキシド溶媒であり、さらに好ましくは親水性アミド溶媒である。
【0072】
工程(3)を行った後には、化合物(A)と共に、微量のcis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が得られる。
工程(3)の後に得られる、化合物(A)とcis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸との合計量に対する、化合物(A)の割合は、好ましくは99.6〜99.99質量%であり、より好ましくは99.7〜99.99質量%であり、さらに好ましくは99.8〜99.99質量%であり、特に好ましくは99.9〜99.99質量%である。化合物(D)の割合は、好ましくは0.01〜0.4質量%であり、より好ましくは0.01〜0.3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.2%であり、特に好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0073】
工程(3)の後に、さらに、晶析等の精製を行ってもよい。晶析で精製する場合に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタノール及び、ドデシルアルコール等アルコール溶媒及び、水が挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール及び、水であり、より好ましくは水である。
【0074】
かくして得られる化合物(A)は、特開2010−31223号公報等に記載の液晶化合物の原料として使用することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「部」は特記ない限り質量部であり、「%」は特記ない限り質量%である。
【0076】
含有率は、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて内部標準法で測定した。LC測定条件は以下のとおりである。
測定装置: 島津LC−10AT
カラム: Kinetex ODS(2.6マイクロm、4.6mmφ×50mm)
移動相: (A液)0.1%トリフルオロ酢酸/水
(B液)0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル
グラジエント:0.1min(A液98%、B液2%)→30min(A液0%、B液100%)→3 5min(A液0%、B液100%)→35.1min
流量: 1.0mL/min
カラム温度: 40℃
注入量: 5μL
検出方法: UV(220nm)
内部標準物質:目的物質の再結晶精製品
【0077】
化合物(A)の製造を下記のスキームにしたがって行った。
第一工程&第二工程:

第三工程:
【0078】
(実施例1)
<工程(1)、工程(2)>
−5℃に冷却したヘプタン576部と、化合物(B−3)135部(化合物(C−3)含有率:99.22%、化合物(D−3)含有率:0.78%)とを混合した後、5℃に昇温し、さらに24時間撹拌した。得られた混合物を濾過することにより得られた固形物と、5℃に冷却したヘプタン288部とを混合し、さらに1.5時間撹拌した。得られた混合物を濾過することにより得られた固形物を減圧乾燥することにより、化合物(C−3)を含む固形物(1)125部を得た。
固形物(1)に含まれる化合物(C−3)の含有率は99.92%であり、化合物(D−3)の含有率は0.08%であった。
化合物(B−3)に含まれる化合物(C−3)を基準とした、固形物(1)に含まれる化合物(C−3)の収率は92%であった。
固形物(1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.20〜1.26(t、6H)、1.41〜1.57(m、4H)、2.08〜2.11(d、4H)、2.32(br、2H),(3.64〜3.72(q、4H)、5.29(s、4H)
【0079】
<工程(3)>
固形物(1)25部と、テトラヒドロフラン125部と、トリフルオロ酢酸30部とを混合し、50℃に保温しながら4時間撹拌した。得られた反応溶液を減圧濃縮することで化合物(A)を含む固形物(2)15部を得た。
固形物(2)に含まれる化合物(A)の含有率は99.89%であり、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の含有率は0.11%であった。
固形物(1)に含まれる化合物(C−3)を基準とした、固形物(2)に含まれる化合物(A)の収率は99%であった。
固形物(2)のH−NMR(CDCl):1.41〜1.57(m、4H)、2.08〜2.11(d、4H)、2.32(br、2H)
【0080】
(実施例2)
<工程(1)、工程(2)>
化合物(B−4)10部(化合物(C−4)含有率98.66%、化合物(D−4)含有率1.34%)と、ヘプタン43部とを混合した後、5℃に冷却し、10時間撹拌した。得られた混合物を濾過することにより得られた固形物と、5℃に冷却したヘプタン21部とを混合し、さらに5℃に保温しながら1時間撹拌した。得られた混合物を濾過することにより得られた固形物を減圧乾燥することにより、化合物(C−4)を含む固形物(3)9.4部を得た。
固形物(3)に含まれる化合物(C−4)の含有率は99.94%であり、化合物(D−4)の含有率は0.06%であった。
化合物(B−4)に含まれる化合物(C−4)を基準とした、固形物(3)に含まれる化合物(C−4)の収率は95%であった。
固形物(2)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.41〜1.56(m、4H)、2.08〜2.11(d、4H)、2.33(br、2H),3.39(s、6H)、3.54〜3.58(m、4H)、3.76〜3.80(m、4H)、5.33(s、4H)
【0081】
<工程(3)>
固形物(3)18部と、テトラヒドロフラン90部と、トリフルオロ酢酸18部とを混合し、50℃に保温しながら3.5時間撹拌した。得られた反応溶液を減圧濃縮することで化合物(A)を含む固形物(4)8.8部を得た。
固形物(4)に含まれる化合物(A)の含有率は99.91%であり、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の含有率は0.09%であった。
固形物(3)に含まれる化合物(C−4)を基準とした、固形物(4)に含まれる化合物(A−4)の収率は99%であった。
固形物(4)のH−NMR(CDCl):1.41〜1.57(m、4H)、2.08〜2.11(d、4H)、2.32(br、2H)
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、高い純度のtrans−シクロアルカンジカルボン酸を高い生産性で製造することができ、trans−シクロアルカンジカルボン酸の製造方法として産業上利用可能である。