【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、単にCMPとも記す)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線(ダマシン配線)形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば、特許文献1に開示されている。ダマシン配線技術は、配線工程の簡略化や、歩留まりおよび信頼性の向上が可能であり、今後適用が拡大していくと考えられる。
【0003】
高速ロジックデバイスには、ダマシン配線として、現在、低抵抗であることから配線金属として銅が主に用いられており、銅は今後DRAMに代表されるメモリデバイスにも使用が拡大されると考えられる。金属CMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を研磨剤で浸し、基板の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(以下、単に研磨圧力とも記す)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨剤と金属膜の凸部との機械的摩擦によって、凸部の金属膜を除去するものである。
【0004】
一方、配線の銅または銅合金等の下層には、層間絶縁膜中への銅拡散防止のためにバリア層として、タンタル、タンタル合金、またはタンタル化合物等が形成される。したがって、銅または銅合金を埋め込む配線部分以外では、露出したバリア層をCMPにより取り除く必要がある。しかし、バリア層は、銅または銅合金に比べ一般に硬度が高いために、銅または銅合金用の研磨材料の組み合わせを用いたCMPでは、十分なCMP速度が得られない場合が多い。
【0005】
一方、バリア層として用いられるタンタル、タンタル合金、またはタンタル化合物等は化学的に安定でエッチングが難しく、硬度が高いために機械的な研磨も銅または銅合金ほど容易ではない。さらに近年、バリア層用の材料として、ルテニウム、ルテニウム合金、ルテニウム化合物等の貴金属材料が検討されている。ルテニウム、ルテニウム合金、ルテニウム化合物等の貴金属材料はタンタル、タンタル合金、またはタンタル化合物に比べ抵抗率が低く、化学的気相成長法(CVD)による成膜が可能であり、より細い幅の配線に対応可能な点で優れている。しかし、ルテニウム、ルテニウム合金、またはルテニウム化合物等の貴金属材料は、タンタル、タンタル合金、またはタンタル化合物と同様に、化学的に安定で硬度が高いことから研磨が難しい。
【0006】
また、貴金属材料は、例えばDRAMキャパシタ構造の製造工程において電極材料として使用される。そして、ルテニウム単体や酸化ルテニウム(RuO
x)のような貴金属を含む材料からなる部分の一部を除去するのに研磨用組成物を用いた研磨を利用することが行われている。しかしながら、前述のバリア層用の貴金属材料と同様に、化学的に安定な貴金属を含む材料の除去には一般に時間がかかるため、この種の研磨用組成物に対してはスループット向上のためのさらなる改良のニーズが強い。
【0007】
CMPに用いられる研磨剤は、一般には酸化剤および砥粒を含む。このCMP用研磨剤によるCMPの基本的なメカニズムは、まず、酸化剤によって金属膜表面を酸化し、得られた金属膜表面の酸化層を砥粒によって削り取るというものであると考えられている。凹部の金属膜表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、砥粒による削り取りの効果が及ばないため、CMPの進行とともに凸部の金属膜が除去されて基板表面は平坦化される。
【0008】
CMPにおいては、配線金属に対する高い研磨速度、研磨速度の安定性、および研磨表面における低い欠陥密度が要求される。しかしながら、ルテニウムを含む膜は、銅、タングステンのような他のダマシン配線金属膜よりも化学的に安定でありかつ高硬度であるため、研磨し難い。このような貴金属を含む膜、特にルテニウムを含む膜の研磨液として、例えば特許文献2では、研磨砥粒、酸化剤、およびベンゾトリアゾールを含む研磨液が提案されている。
【0009】
また、トランジスタの消費電力低減やパフォーマンス(動作特性)を向上させる技術のひとつとして、キャリアの移動度を高める高移動度チャネル材料の検討が進められている。これらのキャリアの輸送特性が向上したチャネルでは、オン時のドレイン電流を高められるため、十分なオン電流を得つつ、電源電圧を下げられる。このコンビネーションは、低い電力におけるより高いMOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のパフォーマンスをもたらす。
【0010】
高移動度チャネル材料としてはIII−V族化合物、IV族化合物、Ge(ゲルマニウム)、C(炭素)のみからなるグラフェン等の適用が期待されている。現在は、III−V族化合物チャネルの形成は、チャネルの結晶性を高め、形状をうまく制御・成長させる技術が確立されていない課題がある為、III−V族化合物に比べて導入が容易なIV族化合物、特にSiGeと、Geなどが積極的に検討されている。
【0011】
高移動度材料を使用したチャネルは、IV族化合物チャネル、および/またはGeチャネル(以下、Ge材料部分ともいう)とケイ素材料を含有する部分(以下、ケイ素材料部分ともいう)とを有する研磨対象物を研磨して形成することができる。このとき、Ge材料部分を高い研磨速度で研磨することに加えて、研磨対象物の研磨後の表面にエッチングを原因とした段差を生じないことが求められる。例えば、特許文献3および特許文献4には、Ge基板を研磨する用途で使用される研磨用組成物が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ハロゲン原子を含有する酸化剤と、アミド結合を含有する有機化合物と、を含む、研磨用組成物である。このような構成とすることにより、IV族材料を含む層を有する研磨対象物の研磨に好適であり、かつIV族材料の溶解を防止することができる研磨用組成物となる。
【0019】
本発明の研磨用組成物により、なぜ上記の効果が得られるのか、詳細は不明であるが、アミド結合を含有する有機化合物が、ハロゲン原子を含有する酸化剤の分解を抑制し、かつIV族材料を含む層を保護する保護膜を形成する役割を果たすためと考えられる。なお、このメカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0020】
[研磨対象物]
本発明に係る研磨対象物は、特に制限されないが、IV族材料を含む層を有する研磨対象物を研磨する用途に好適に用いられる。さらに言えば、その研磨対象物を研磨して基板を製造する用途で使用される。IV族材料の例としては、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)等が挙げられる。
【0021】
次に、本発明の研磨用組成物の構成について、詳細に説明する。
【0022】
[ハロゲン原子を含有する酸化剤]
本発明で用いられる酸化剤は、ハロゲン原子を含有する。かような酸化剤の具体的な例としては、例えば、ハロゲン酸およびその塩、亜塩素酸(HClO
2)、亜臭素酸(HBrO
2)、亜ヨウ素酸(HIO
2)、亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)、亜塩素酸カリウム(KClO
2)、亜臭素酸ナトリウム(NaBrO
2)、亜臭素酸カリウム(KBrO
2)等の亜ハロゲン酸またはその塩;塩素酸ナトリウム(NaClO
3)、塩素酸カリウム(KClO
3)、塩素酸銀(AgClO
3)、塩素酸バリウム(Ba(ClO
3)
2)、臭素酸ナトリウム(NaBrO
3)、臭素酸カリウム(KBrO
3)、ヨウ素酸ナトリウム(NaIO
3)等のハロゲン酸またはその塩;過塩素酸(HClO
4)、過臭素酸(HBrO
4)、過ヨウ素酸(HIO
4)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO
4)、過ヨウ素酸カリウム(KIO
4)、過ヨウ素酸テトラブチルアンモニウム((C
4H
9)
4NIO
4)等の過ハロゲン酸またはその塩;次亜フッ素酸(HFO)、次亜塩素酸(HClO)、次亜臭素酸(HBrO)、次亜ヨウ素酸(HIO)等の次亜ハロゲン酸;次亜フッ素酸リチウム(LiFO)、次亜フッ素酸ナトリウム(NaFO)、次亜フッ素酸カリウム(KFO)、次亜フッ素酸マグネシウム(Mg(FO)
2)、次亜フッ素酸カルシウム(Ca(FO)
2)、次亜フッ素酸バリウム(Ba(FO)
2)等の次亜フッ素酸の塩;次亜塩素酸リチウム(LiClO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、次亜塩素酸カリウム(KClO)、次亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)
2)、次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)
2)、次亜塩素酸バリウム(Ba(ClO)
2)、次亜塩素酸t−ブチル(t−BuClO)、次亜塩素酸アンモニウム(NH
4ClO)、次亜塩素酸トリエタノールアミン((CH
2CH
2OH)
3N・ClO)等の次亜塩素酸の塩;次亜臭素酸リチウム(LiBrO)、次亜臭素酸ナトリウム(NaBrO)、次亜臭素酸カリウム(KBrO)、次亜臭素酸マグネシウム(Mg(BrO)
2)、次亜臭素酸カルシウム(Ca(BrO)
2)、次亜臭素酸バリウム(Ba(BrO)
2)、次亜臭素酸アンモニウム(NH
4BrO)、次亜臭素酸トリエタノールアミン((CH
2CH
2OH)
3N・BrO)等の次亜臭素酸の塩;次亜ヨウ素酸リチウム(LiIO)、次亜ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、次亜ヨウ素酸カリウム(KIO)、次亜ヨウ素酸マグネシウム(Mg(IO)
2)、次亜ヨウ素酸カルシウム(Ca(IO)
2)、次亜ヨウ素酸バリウム(Ba(IO)
2)、次亜ヨウ素酸アンモニウム(NH
4IO)、次亜ヨウ素酸トリエタノールアミン((CH
2CH
2OH)
3N・IO)等の次亜ヨウ素酸の塩等が挙げられる。これらハロゲン原子を含有する酸化剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0023】
これらハロゲン原子を有する酸化剤の中でも、亜塩素酸、次亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸およびこれらの塩が好ましい。塩としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などを選択することができる。
【0024】
本発明の研磨用組成物中の酸化剤の濃度の下限は、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の研磨用組成物中の酸化剤の濃度の上限は、0.5質量%未満であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、IV族材料を含む層の過剰な溶解を抑制しながら、高い研磨速度が得られ、効率的に加工することができる。
【0025】
[アミド結合を含有する有機化合物]
本発明の研磨用組成物は、アミド結合を含有する有機化合物を含む。該有機化合物は、−CO−NR−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する化合物である。かような有機化合物を含むことにより、本発明の研磨用組成物に含まれる酸化剤の分解を抑制し、かつIV族材料を含む層を保護する保護膜を形成する役割を果たすため、IV族材料の溶解を防止することができる。
【0026】
このような有機化合物の例としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素および尿素誘導体などが挙げられる。具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0027】
また、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0029】
ただし、上記一般式(1)中、R
1は水素原子、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アゾ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アリール基、またはアシル基を示す。これらの官能基は非置換でもよいし置換されていてもよい。一般式(1)中、R2は2個以上の炭素原子を有するヘテロ環式構造を示す。これらの官能基は無置換または置換のどちらでもよい。
【0030】
置換基は、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0031】
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、または環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
【0032】
なおここで、活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基を意味する。ここで、2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また、塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。
【0033】
これらの置換基は、上記と同様の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0034】
例えば、上記一般式(1)で表される化合物の具体的な例としては、例えば、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシメチル)−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(クロロメチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、5−チオキソピロリジン−2−オン、ピログルタミン酸(D型、L型、DL型)、L−ピログルタミン酸メチル、ピログルタミン酸エチル、スクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−メチルスクシンイミド、N−フェニルスクシンイミド、N−メチル−2−フェニルスクシンイミド、2−エチル−2−メチルスクシンイミド、ヘキサヒドロフタルイミド、ピロメリト酸ジイミド、ヘキサヒドロフタルイミド、2−オキソピロリジン−1−アセトアミド、1−メチル−5−オキソ−2−ピロリジン酢酸、2−(2−オキソピロリジン−1−イル)ブタンアミド、5−メトキシピロリジン−2−オン、ベルシミド、4−ヒドロキシ−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド、4−ヒドロキシ−2−ピロリドン、1−ヒドロキシ−3−アミノ−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、1,2−ジヒドロ−3H−ピロリザイン−3−オンなどが挙げられる。
【0036】
ただし、上記一般式(2)中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アゾ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アリール基、またはアシル基を示す。これらの官能基は非置換でもよいし置換されていてもよい。nは繰り返し単位の数を表す。
【0037】
例えば、一般式(2)で表される化合物の具体的な例としては、ポリ−N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0038】
これらアミド結合を含有する有機化合物は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0039】
本発明の研磨用組成物中のアミド結合を含有する有機化合物の含有量の下限は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の研磨用組成物中のアミド結合を含有する有機化合物の含有量の上限は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、酸化剤の分解を抑制し、かつIV族材料を含む層を保護する保護膜を形成する効果がさらに向上する。
【0040】
[砥粒]
本発明の研磨用組成物は、さらに砥粒を含むことが好ましい。砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する作用を有し、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を向上させる。
【0041】
本発明で使用される砥粒は、特に制限されないが、具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子が挙げられる。該砥粒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該砥粒は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0042】
これら砥粒の中でも、シリカが好ましく、特に好ましいのはコロイダルシリカである。
【0043】
砥粒は表面修飾されていてもよい。通常のコロイダルシリカは、酸性条件下でゼータ電位の値がゼロに近いために、酸性条件下ではシリカ粒子同士が互いに電気的に反発せず凝集を起こしやすい。これに対し、酸性条件でもゼータ電位が比較的大きな負の値を有するように表面修飾された砥粒は、酸性条件下においても互いに強く反発して良好に分散する結果、研磨用組成物の保存安定性を向上させることになる。このような表面修飾砥粒は、例えば、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムなどの金属あるいはそれらの酸化物を砥粒と混合して砥粒の表面にドープさせることにより得ることができる。
【0044】
なかでも、特に好ましいのは、有機酸を固定化したコロイダルシリカである。研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、例えばコロイダルシリカの表面に有機酸の官能基が化学的に結合することにより行われている。コロイダルシリカと有機酸を単に共存させただけではコロイダルシリカへの有機酸の固定化は果たされない。有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。あるいは、カルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2−ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0045】
砥粒の平均一次粒子径の下限は、5nm以上であることが好ましく、7nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、砥粒の平均一次粒子径の上限は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度は向上し、また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面にディッシングが生じるのをより抑えることができる。なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて算出される。
【0046】
研磨用組成物中の砥粒の含有量(濃度)の下限は、0.0002g/L以上であることが好ましく、0.002g/L以上であることがより好ましく、0.02g/L以上であることがさらに好ましい。また、研磨用組成物中の砥粒の含有量(濃度)の上限は、200g/L以下であることが好ましく、100g/L以下であることがより好ましく、50g/L以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、コストを抑えながら、高い研磨速度が得られ、効率的に加工することができる。
【0047】
[研磨用組成物のpH]
本発明の研磨用組成物のpHは、5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。また、本発明の研磨用組成物のpHは、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。この範囲であれば、研磨対象物の過剰な溶解を抑制しながら効率的な研磨を実施することができる。
【0048】
前記pHは、pH調節剤を適量添加することにより、調整することができる。研磨用組成物のpHを所望の値に調整するために必要に応じて使用されるpH調整剤は酸およびアルカリのいずれであってもよく、また、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよい。酸の具体例としては、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸および乳酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等の有機硫酸等の有機酸等が挙げられる。アルカリの具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、エチレンジアミンおよびピペラジンなどのアミン、ならびにテトラメチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらpH調節剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0049】
[水]
本発明の研磨用組成物は、各成分を分散または溶解するための分散媒または溶媒として水を含むことが好ましい。他の成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水が好ましい。
【0050】
[他の成分]
本発明の研磨用組成物は、必要に応じて、金属防食剤、防腐剤、防カビ剤、水溶性高分子、難溶性の有機物を溶解するための有機溶媒等の他の成分をさらに含んでもよい。以下、好ましい他の成分である、金属防食剤、防腐剤、および防カビ剤について説明する。
【0051】
〔金属防食剤〕
研磨用組成物中に金属防食剤を加えることにより、研磨用組成物を用いた研磨で配線の脇に凹みが生じるのをより抑えることができる。また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面にディッシングが生じるのをより抑えることができる。
【0052】
使用可能な金属防食剤は、特に制限されないが、好ましくは複素環式化合物または界面活性剤である。複素環式化合物中の複素環の員数は特に限定されない。また、複素環式化合物は、単環化合物であってもよいし、縮合環を有する多環化合物であってもよい。該金属防食剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該金属防食剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0053】
金属防食剤として使用可能な複素環化合物の具体例としては、例えば、ピロール化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物、ピリダジン化合物、ピリンジン化合物、インドリジン化合物、インドール化合物、イソインドール化合物、インダゾール化合物、プリン化合物、キノリジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、ナフチリジン化合物、フタラジン化合物、キノキサリン化合物、キナゾリン化合物、シンノリン化合物、ブテリジン化合物、チアゾール化合物、イソチアゾール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、フラザン化合物等の含窒素複素環化合物が挙げられる。
【0054】
さらに具体的な例を挙げると、ピラゾール化合物の例としては、例えば、1H−ピラゾール、4−ニトロ−3−ピラゾールカルボン酸、3,5−ピラゾールカルボン酸、3−アミノ−5−フェニルピラゾール、5−アミノ−3−フェニルピラゾール、3,4,5−トリブロモピラゾール、3−アミノピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−ヒドロキシメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、1−メチルピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、4−アミノ−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、アロプリノール、4−クロロ−1H−ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン、3,4−ジヒドロキシ−6−メチルピラゾロ(3,4−B)−ピリジン、6−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−アミン等が挙げられる。
【0055】
イミダゾール化合物の例としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルピラゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、2−クロロベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、2−(1−ヒドロキシエチル)ベンズイミダゾール、2−ヒドロキシベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2,5−ジメチルベンズイミダゾール、5−メチルベンゾイミダゾール、5−ニトロベンズイミダゾール、1H−プリン等が挙げられる。
【0056】
トリアゾール化合物の例としては、例えば、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシレート、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸メチル、1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、3,5−ジアミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ベンジル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、3−ブロモ−5−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェノール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジプロピル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジペプチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1,2,4−トリアゾール−3,4−ジアミン、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、1−カルボキシベンゾトリアゾール、5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール、5−ニトロ−1H−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0057】
テトラゾール化合物の例としては、例えば、1H−テトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−アミノテトラゾール、および5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0058】
インダゾール化合物の例としては、例えば、1H−インダゾール、5−アミノ−1H−インダゾール、5−ニトロ−1H−インダゾール、5−ヒドロキシ−1H−インダゾール、6−アミノ−1H−インダゾール、6−ニトロ−1H−インダゾール、6−ヒドロキシ−1H−インダゾール、3−カルボキシ−5−メチル−1H−インダゾール等が挙げられる。
【0059】
インドール化合物の例としては、例えば1H−インドール、1−メチル−1H−インドール、2−メチル−1H−インドール、3−メチル−1H−インドール、4−メチル−1H−インドール、5−メチル−1H−インドール、6−メチル−1H−インドール、7−メチル−1H−インドール、4−アミノ−1H−インドール、5−アミノ−1H−インドール、6−アミノ−1H−インドール、7−アミノ−1H−インドール、4−ヒドロキシ−1H−インドール、5−ヒドロキシ−1H−インドール、6−ヒドロキシ−1H−インドール、7−ヒドロキシ−1H−インドール、4−メトキシ−1H−インドール、5−メトキシ−1H−インドール、6−メトキシ−1H−インドール、7−メトキシ−1H−インドール、4−クロロ−1H−インドール、5−クロロ−1H−インドール、6−クロロ−1H−インドール、7−クロロ−1H−インドール、4−カルボキシ−1H−インドール、5−カルボキシ−1H−インドール、6−カルボキシ−1H−インドール、7−カルボキシ−1H−インドール、4−ニトロ−1H−インドール、5−ニトロ−1H−インドール、6−ニトロ−1H−インドール、7−ニトロ−1H−インドール、4−ニトリル−1H−インドール、5−ニトリル−1H−インドール、6−ニトリル−1H−インドール、7−ニトリル−1H−インドール、2,5−ジメチル−1H−インドール、1,2−ジメチル−1H−インドール、1,3−ジメチル−1H−インドール、2,3−ジメチル−1H−インドール、5−アミノ−2,3−ジメチル−1H−インドール、7−エチル−1H−インドール、5−(アミノメチル)インドール、2−メチル−5−アミノ−1H−インドール、3−ヒドロキシメチル−1H−インドール、6−イソプロピル−1H−インドール、5−クロロ−2−メチル−1H−インドール等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも好ましい複素環化合物はトリアゾール化合物であり、特に、1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール、1,2,3−トリアゾール、および1,2,4−トリアゾールが好ましい。これらの複素環化合物は、研磨対象物表面への化学的または物理的吸着力が高いため、研磨対象物表面により強固な保護膜を形成することができる。このことは、本発明の研磨用組成物を用いて研磨した後の、研磨対象物の表面の平坦性を向上させる上で有利である。
【0061】
また、金属防食剤として使用される界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0062】
陰イオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。
【0063】
陽イオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
【0064】
両性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0065】
非イオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、およびアルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルである。これらの界面活性剤は、研磨対象物表面への化学的または物理的吸着力が高いため、研磨対象物表面により強固な保護膜を形成することができる。このことは、本発明の研磨用組成物を用いて研磨した後の、研磨対象物の表面の平坦性を向上させる上で有利である。
【0067】
〔防腐剤および防カビ剤〕
本発明で用いられる防腐剤および防カビ剤としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。これら防腐剤および防カビ剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0068】
[研磨用組成物の製造方法]
本発明の研磨用組成物の製造方法は、特に制限されず、例えば、ハロゲン原子を含有する酸化剤およびアミド結合を含有する有機化合物、および必要に応じて他の成分を、水中で攪拌混合することにより得ることができる。
【0069】
各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10〜40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0070】
[研磨方法および基板の製造方法]
上述のように、本発明の研磨用組成物は、特に、IV族材料を含む層を有する研磨対象物の研磨に好適に用いられる。よって、本発明は、IV族材料を含む層を有する研磨対象物を本発明の研磨用組成物で研磨する研磨方法を提供する。また、本発明は、IV族材料を含む層を有する研磨対象物を前記研磨方法で研磨する工程を含む基板の製造方法を提供する。
【0071】
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0072】
前記研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0073】
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転速度は、10〜500rpmが好ましく、研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5〜10psiが好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明の研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0074】
研磨終了後、基板を流水中で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、金属またはケイ素含有材料を有する層を有する基板が得られる。
【実施例】
【0075】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0076】
(実施例1〜9、比較例1〜29)
表1に示すアミド結合を含有する有機化合物を、表1に示す組成物中の含有量となるように添加した。また、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムの水溶液(濃度:5.9質量%)または過酸化水素水溶液(濃度:31質量%)を、組成物中の含有量として0.03質量%となるように水中で攪拌混合し(混合温度:約25℃、混合時間:約10分)、実施例1〜9および比較例1〜29の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは、水酸化カリウム(KOH)を加え調整し、pHメータにより確認した。
【0077】
残存した酸化剤の割合(酸化剤残分率)は、保管前の研磨用組成物と、25℃で7日間保管した後の研磨用組成物とにおいて、平成15年9月29日厚生労働省告示第318号の方法により酸化剤の含有量をそれぞれ測定し、下記式により算出した。
【0078】
残存した酸化剤の割合(%)=(保管後の研磨用組成物中の酸化剤の量)/(保管前の研磨用組成物中の酸化剤の量)×100
Ge基板のエッチングレートは、浸漬条件:3cm×3cmのGe基板を、43℃で5分間浸漬させ(攪拌子を300rpmで回転させながら)、その後の重量変化から溶解量を算出し、その溶解量を浸漬時間で除して、Ge基板のエッチングレートを測定した。
【0079】
実施例1〜9および比較例1〜29の研磨用組成物の組成、ならびにGeエッチングレートおよび酸化剤残分率の測定結果を下記表1に示す。
【0080】
【表1-1】
【0081】
【表1-2】
【0082】
上記表1から明らかなように、実施例1〜9の研磨用組成物は、Geの溶解を抑制することが分かった。比較例2〜3、および比較例8〜13の研磨用組成物においては、Geエッチングレートが低いが、酸化剤残分率が低く、これらの研磨用組成物は、酸化剤を分解していることが分かる。
【0083】
(実施例10〜19、比較例30〜46)
砥粒として平均一次粒子径が30nm、平均二次粒子径が62nmであるコロイダルシリカ、ハロゲンを含有する酸化剤としてNaClO、アミド基を含有する有機化合物として下記表3に記載の化合物を、それぞれ下記表3に示すような含有量で、水中で攪拌混合し(混合温度:約25℃、混合時間:約10分)、実施例10〜19および比較例30〜46の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは、硝酸(HNO
3)または水酸化カリウム(KOH)を加え、pH8.5に調整した。
【0084】
〔研磨速度〕
Ge基板およびTEOS基板について、実施例10〜19および比較例30〜46の研磨用組成物を用いて、下記表2に示す研磨条件で一定時間研磨したときの研磨速度を求めた。Ge基板〔結晶方位(100)〕を3cm×3cmにクーポン化して使用した。Ge基板の研磨速度は、研磨前後の重量の差分から求めた。また、TEOS基板の研磨速度は、光干渉式膜厚測定装置を用いて測定される研磨前後のそれぞれの膜の厚みの差を、研磨時間で除することで求めた。
【0085】
【表2】
【0086】
さらに、上記と同様にして、実施例10〜19、比較例30〜46の研磨用組成物についてもGeエッチングレートおよび酸化剤残分率を測定した。これらの評価結果を、下記表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
上記表3に示すように、実施例10〜19の研磨用組成物を用いた場合、Geの溶解を抑制し、かつ酸化剤の分解を抑制してGe基板の研磨速度を向上させることが分かった。