【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0073】
[平均粒子径の測定]
SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として一次粒子の平均粒子径を算出した。また、CV値(変動係数)は、(標準偏差)÷(平均粒子径)によって算出した。なお、CV値が小さいほど、粒子径がより均一であることを示す。
【0074】
[10%熱収縮温度]
試料を5Φ×2mmの円柱状成型器に入れ、プレス成型して得られる成型体を作製し、窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、熱機械分析装置(TMA)により測定される10%熱収縮の温度を10%熱収縮温度とした。
【0075】
(合成例1)
乾燥窒素雰囲気中において、バリウムジエトキシド(Ba(OC
2H
5)
2)及びチタンテトライソプロポキシド(Ti(OiC
3H
7)
4)をモル比で2:8となるようにメタノールとエチレングリコールモノメチルエーテル(EGMME)の混合溶媒に溶解し、0.7mol/Lのバリウム‐チタン複合酸化物の前駆体溶液を調製した。前駆体溶液を−40℃まで冷却した後、撹拌しながら水/メタノール混合溶液(体積比1:1)を滴下し加水分解を行った。混合溶液の滴下量は、水の添加量が前駆体溶液中の全金属(Ba及びTiの合計)のモル数に対して5モル倍となるようにした。加水分解後、80℃で5日間のエージングを行い、バリウム/チタン比が2:8の複合酸化物の微粒子を得た。
【0076】
(合成例2)
乾燥窒素雰囲気中において、バリウムジエトキシド(Ba(OC
2H
5)
2)及びチタンテトライソプロポキシド(Ti(OiC
3H
7)
4)をモル比で3:7となるようにメタノールとエチレングリコールモノメチルエーテル(EGMME)の混合溶媒に溶解し、0.7mol/Lのバリウム‐チタン複合酸化物の前駆体溶液を調製した。後の処理は合成例1と同様に行い,バリウム/チタン比が3:7の複合酸化物の微粒子を得た。
【0077】
(合成例3)
乾燥窒素雰囲気中において、バリウムジエトキシド(Ba(OC
2H
5)
2)及びチタンテトライソプロポキシド(Ti(OiC
3H
7)
4)をモル比で4:6となるようにメタノールとエチレングリコールモノメチルエーテル(EGMME)の混合溶媒に溶解し、0.7mol/Lのバリウム‐チタン複合酸化物の前駆体溶液を調製した。後の処理は合成例1と同様に行い,バリウム/チタン比が4:6の複合酸化物の微粒子を得た。
【0078】
(合成例4)
乾燥窒素雰囲気中において、バリウムジエトキシド(Ba(OC
2H
5)
2)及びチタンテトライソプロポキシド(Ti(OiC
3H
7)
4)をモル比で8:2となるようにメタノールとエチレングリコールモノメチルエーテル(EGMME)の混合溶媒に溶解し、0.7mol/Lのバリウム‐チタン複合酸化物の前駆体溶液を調製した。後の処理は合成例1と同様に行い,バリウム/チタン比が8:2の複合酸化物の微粒子を得た。
【0079】
(合成例5)
乾燥窒素雰囲気中において、バリウムジエトキシド(Ba(OC
2H
5)
2)及びチタンテトライソプロポキシド(Ti(OiC
3H
7)
4)をモル比で5:5となるようにメタノールとエチレングリコールモノメチルエーテル(EGMME)の混合溶媒に溶解し、0.7mol/Lのバリウム‐チタン複合酸化物の前駆体溶液を調製した。前駆体溶液を−30℃まで冷却した後、撹拌しながら水/メタノール混合溶液(体積比1:1)を滴下し加水分解を行った。混合溶液の滴下量は、水の添加量が前駆体溶液中のTiに対して5モル倍となるようにした。加水分解後、80℃で2時間のエージングを行い、バリウム/チタン比が5:5の複合酸化物の微粒子を得た。
【0080】
(合成例6)
合成例5と同様に加水分解の処理まで行い,80℃のエージングを1時間行うことでバリウム/チタン比が5:5の複合酸化物の微粒子を得た。
【0081】
(実施例1)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に690gのオレイルアミン(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって錯化反応液A−1’(ニッケルイオンの濃度;2wt%)を得た。
【0082】
<マトリックス部の形成及び複合酸化物の微粒子の固定>
得られた錯化反応液A−1’に、合成例1で合成した複合酸化物の微粒子(金属組成;Ba:Ti=2:8(モル比)、チタン元素;39.2wt%、バリウム元素;28.1wt% 結晶化度;0、X線回折によりペロブスカイト構造を示すピークが観測されない)をオレイルアミンに分散させたスラリー(固形分濃度;1wt%)の100g(仕込みニッケル元素100重量部に対し、6重量部の複合酸化物の微粒子を含有)を加えた後、マイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持した後、この温度を保持した状態で、0.45gの1−ドデカンチオールを添加することによって、複合ニッケル微粒子A−1のスラリーを得た。
【0083】
<洗浄及び乾燥>
得られた複合ニッケル微粒子A−1のスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル微粒子A−1を得た。この複合ニッケル微粒子A−1の特徴は、次のとおりであった。
1)複合ニッケル微粒子A−1の元素分析;C;0.5、O;2.6、S;0.38(単位は質量%)。
2)複合ニッケル微粒子A−1の平均粒子径;90nm、CV値;0.18。
3)複合ニッケル微粒子A−1中の元素分析の結果、チタン元素を2.00wt%、バリウム元素を1.44wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=3.11のモル比率を有する複合ニッケル微粒子。
4)複合ニッケル微粒子A−1のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;725℃
【0084】
複合ニッケル微粒子A−1のSEM写真を
図2に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図3に示した。この結果、アモルファスなチタンとバリウムを含む複合酸化物がニッケルに固定化されることで耐焼結性を大幅に向上することができる。
【0085】
(実施例2)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に690gのオレイルアミン(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって錯化反応液A−2’(ニッケルイオンの濃度;2wt%)を得た。
【0086】
<マトリックス部の形成及び複合酸化物の微粒子の固定>
得られた錯化反応液A−2’に、合成例2で合成した複合酸化物の微粒子(金属組成;Ba:Ti=3:7(モル比)、チタン元素;31.4wt%、バリウム元素;38.6wt%、結晶化度;0、X線回折によりペロブスカイト構造を示すピークが観測されない)をオレイルアミンに分散させたスラリー(固形分濃度;1wt%)の100g(仕込みニッケル元素100重量部に対し、6重量部の複合酸化物の微粒子を含有)を加えた後、マイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持した後、この温度を保持した状態で、0.45gの1−ドデカンチオールを添加することによって、複合ニッケル微粒子A−2のスラリーを得た。
【0087】
<洗浄及び乾燥>
得られた複合ニッケル微粒子A−2のスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル微粒子A−2を得た。この複合ニッケル微粒子A−2の特徴は、次のとおりであった。
【0088】
1)複合ニッケル微粒子A−2の元素分析;C;1.4、O;2.9、S;0.36(単位は質量%)。
2)複合ニッケル微粒子A−2の平均粒子径;53nm、CV値;0.15。
3)複合ニッケル微粒子A−2中の元素分析の結果、チタン元素を1.6wt%、バリウム元素を1.97wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=3.85のモル比率を有する複合ニッケル微粒子。
4)複合ニッケル微粒子A−2のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;725℃
【0089】
複合ニッケル微粒子A−2のSEM写真を
図4に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図5に示した。
【0090】
(実施例3)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に690gのオレイルアミン(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって錯化反応液A−3’(ニッケルイオンの濃度;2wt%)を得た。
【0091】
<マトリックス部の形成及び複合酸化物の微粒子の固定>
得られた錯化反応液A−3’に、合成例3で合成した複合酸化物の微粒子(金属組成;Ba:Ti=4:6(モル比)、チタン元素;24.8wt%、バリウム元素;47.5wt%、結晶化度0.4、X線回折によりペロブスカイト構造を示すピークが観測される)をオレイルアミンに分散させたスラリー(固形分濃度;1wt%)の100g(仕込みニッケル元素100重量部に対し、6重量部の複合酸化物の微粒子を含有)を加えた後、マイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持した後、この温度を保持した状態で、0.45gの1−ドデカンチオールを添加することによって、複合ニッケル微粒子A−3のスラリーを得た。
【0092】
<洗浄及び乾燥>
得られた複合ニッケル微粒子A−3のスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル微粒子A−3を得た。この複合ニッケル微粒子A−3の特徴は、次のとおりであった。
1)複合ニッケル微粒子A−3の元素分析;C;0.9、O;2.5、S;0.39(単位は質量%)。
2)複合ニッケル微粒子A−3の平均粒子径;87nm、CV値;0.20。
3)複合ニッケル微粒子A−3中の元素分析の結果、チタン元素を1.3wt%、バリウム元素を2.5wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=3.47のモル比率を有する複合ニッケル微粒子。
4)複合ニッケル微粒子A−3のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;760℃
【0093】
複合ニッケル微粒子A−3のSEM写真を
図6に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図7に示した。
【0094】
(実施例4)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に690gのオレイルアミン(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって錯化反応液A−4’(ニッケルイオンの濃度;2wt%)を得た。
【0095】
<マトリックス部の形成及び複合酸化物の微粒子の固定>
得られた錯化反応液A−4’に、合成例4で合成した複合酸化物の微粒子(金属組成;Ba:Ti=8:2(モル比)、チタン元素;6.3wt%、バリウム元素;72.5wt%、結晶化度;0.2、X線回折によりペロブスカイト構造を示すピークが観測される)をオレイルアミンに分散させたスラリー(固形分濃度;1wt%)の100g(仕込みニッケル元素100重量部に対し、6重量部の複合酸化物の微粒子を含有)を加えた後、マイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持した後、この温度を保持した状態で、0.45gの1−ドデカンチオールを添加することによって、複合ニッケル微粒子A−4のスラリーを得た。
【0096】
<洗浄及び乾燥>
得られた複合ニッケル微粒子A−4のスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル微粒子A−4を得た。この複合ニッケル微粒子A−4の特徴は、次のとおりであった。
1)複合ニッケル微粒子A−4の元素分析;C;0.4、O;1.9、S;0.41(単位は質量%)。
2)複合ニッケル微粒子A−4の平均粒子径;70nm、CV値;0.23。
3)複合ニッケル微粒子A−4中の元素分析の結果、チタン元素を0.24wt%、バリウム元素を2.80wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=4.68のモル比率を有する複合ニッケル微粒子。
4)複合ニッケル微粒子A−4のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;560℃
【0097】
複合ニッケル微粒子A−4のSEM写真を
図8に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図9に示した。
【0098】
(実施例5)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に690gのオレイルアミン(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって錯化反応液A−5’(ニッケルイオンの濃度;2wt%)を得た。
【0099】
<マトリックス部の形成及び複合酸化物の微粒子の固定>
得られた錯化反応液A−5’に、合成例5で合成した複合酸化物の微粒子(金属組成;Ba:Ti=5:5 (モル比)、チタン元素;19.2wt%、バリウム元素;55.1wt% 結晶化度0.3、X線回折によりペロブスカイト構造を示すピークが観測される)をオレイルアミンに分散させたスラリー(固形分濃度;1wt%)の100g(仕込みニッケル元素100重量部に対し、6重量部の複合酸化物の微粒子を含有)を加えた後、マイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持した後、この温度を保持した状態で、0.45gの1−ドデカンチオールを添加することによって、複合ニッケル微粒子A−5のスラリーを得た。
【0100】
<洗浄及び乾燥>
得られた複合ニッケル微粒子A−5のスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル微粒子A−5を得た。この複合ニッケル微粒子A−5の特徴は、次のとおりであった。
1)複合ニッケル微粒子A−5の元素分析;C;0.50、O;2.32、S;0.40(単位は質量%)。
2)複合ニッケル微粒子A−5の平均粒子径;92nm、CV値;0.18。
3)複合ニッケル微粒子A−5中の元素分析の結果、チタン元素を0.78wt%、バリウム元素を2.41wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=4.28のモル比率を有する複合ニッケル微粒子。
4)複合ニッケル微粒子A−5のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;690℃
【0101】
複合ニッケル微粒子A−5のSEM写真を
図10に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図11に示した。
【0102】
(実施例6)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に690gのオレイルアミン(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって錯化反応液A−6’(ニッケルイオンの濃度;2wt%)を得た。
【0103】
<マトリックス部の形成及び複合酸化物の微粒子の固定>
得られた錯化反応液A−6’に、合成例6で合成した複合酸化物の微粒子(金属組成;Ba:Ti=5:5 (モル比)、チタン元素;19.2wt%、バリウム元素;55.1wt% 結晶化度0、X線回折によりペロブスカイト構造を示すピークが観測されない)をオレイルアミンに分散させたスラリー(固形分濃度;1wt%)の100g(仕込みニッケル元素100重量部に対し、6重量部の複合酸化物の微粒子を含有)を加えた後、マイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持した後、この温度を保持した状態で、0.45gの1−ドデカンチオールを添加することによって、複合ニッケル微粒子A−6のスラリーを得た。
【0104】
<洗浄及び乾燥>
得られた複合ニッケル微粒子A−6のスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル微粒子A−6を得た。この複合ニッケル微粒子A−6の特徴は、次のとおりであった。
1)複合ニッケル微粒子A−6の元素分析;C;1.0、O;2.3、S;0.40(単位は質量%)。
2)複合ニッケル微粒子A−6の平均粒子径;75nm、CV値;0.18。
3)複合ニッケル微粒子A−6中の元素分析の結果、チタン元素を0.93wt%、バリウム元素を2.66wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=4.28のモル比率を有する複合ニッケル微粒子。
4)複合ニッケル微粒子A−6のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;730℃
【0105】
複合ニッケル微粒子A−6のSEM写真を
図12に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図13に示した。
【0106】
(比較例1)
<溶解工程>
酢酸ニッケル四水和物60.0g(241.1mmmol))にオレイルアミン690g(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって酢酸ニッケルをオレイルアミンに溶解させた。
【0107】
<還元工程>
次いで、その溶液にマイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持した後、この温度を保持した状態で、0.45gの1−ドデカンチオールを添加することによって、ニッケル微粒子B−1のスラリーを得た。
【0108】
<洗浄及び乾燥>
得られたニッケル微粒子B−1のスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥してニッケル微粒子B−1を得た。このニッケル微粒子B−1の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子B−1の元素分析;C;0.5、O;1.7、S;0.40(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子B−1の平均粒子径;92nm、CV値;0.17。
3)ニッケル微粒子B−1のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;470℃
【0109】
ニッケル微粒子B−1のSEM写真を
図14に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図15に示した。この結果、チタンとバリウムを含む複合酸化物が固定化されていないニッケル微粒子B−1は耐焼結性に劣ることがわかる。
【0110】
(比較例2)
ゾルゲル法で合成したペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムの微粒子(金属組成;Ba:Ti=5:5(モル比)、平均粒子径;10nm、結晶化度;0.8)をオレイルアミンに分散させようと試みたがすぐに沈殿し、分散しなかった。本スラリーを用いて、実施例1と同様の実験を行い、複合ニッケル微粒子B−2を得た。この複合ニッケル微粒子B−2の特徴は、次のとおりであった。
1)複合ニッケル微粒子B−2の元素分析;C;0.4、O;1.6、S;0.41(単位は質量%)。
2)複合ニッケル微粒子B−2の平均粒子径;87nm、CV値;0.17。
3)複合ニッケル微粒子B−2中の元素分析の結果、チタン元素を0.01wt%、バリウム元素を0.15wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=73.0のモル比率を有する複合ニッケル微粒子。
4)複合ニッケル微粒子B−2のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;425℃
【0111】
複合ニッケル微粒子B−2のSEM写真を
図16に、熱機械分析(TMA)の測定結果を
図17に示した。この結果、結晶性のチタン酸バリウムを用いた場合、ニッケル微粒子の表面に効率よく固定化されていないため、その複合ニッケル微粒子B−2は耐焼結性に劣ることがわかる。
【0112】
(比較例3)
市販のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムの微粒子(戸田工業株式会社製、商品名;T−BTO−020RF、金属組成;Ba:Ti=5:5(モル比)、平均粒子径;20nm、結晶化度;1.0)を超音波ホモジナイザーにてオレイルアミンに分散させた。本スラリーを用いて、実施例1と同様の実験を行い、ニッケル微粒子組成物B−3を得た。このニッケル微粒子組成物B−3の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子組成物B−3の元素分析;C;0.4、O;1.5、S;0.40(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子組成物B−3は、平均粒子径92nmのNi粒子と平均粒子径20nmのチタン酸バリウムの混合物。
3)ニッケル微粒子組成物B−3中の元素分析の結果、チタン元素を0.01wt%、バリウム元素を0.17wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=64.8のモル比率を有するニッケル微粒子組成物。
4)ニッケル微粒子組成物B−3のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;410℃
【0113】
この結果、結晶性のチタン酸バリウムを用いた場合、ニッケル微粒子の表面に効率よく固定化されていないため、そのニッケル微粒子組成物B−3は耐焼結性に劣ることがわかる。
【0114】
(比較例4)
比較例1で合成したニッケル微粒子B−1(平均粒子径 92nm)6.5重量部と実施例3で使用した合成例3の複合酸化物の微粒子の93.5重量部を乾式でよく混合して得られたニッケル微粒子組成物B−4の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子組成物B−4の元素分析;C;0.4、O;2.7、S;0.38(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子組成物B−4は、平均粒子径92nmのNi粒子と平均粒子径10nmの複合酸化物の微粒子の混合物。
3)ニッケル微粒子組成物B−4中の元素分析の結果、チタン元素を1.3wt%、バリウム元素を2.6wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)=3.66のモル比率を有するニッケル微粒子組成物。
4)ニッケル微粒子組成物B−4のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;420℃
【0115】
この結果、チタン酸バリウムを単純に混合した粒子では耐焼結性が向上し難いことがわかる。
【0116】
(比較例5)
比較例1で合成したニッケル微粒子B−1(平均粒子径 92nm)6.0重量部と実施例5で使用した合成例5の複合酸化物の微粒子の94.0重量部を乾式でよく混合して得られたニッケル微粒子組成物B−5の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子組成物B−5の元素分析;C;0.4、O;2.52、S;0.3.6(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子組成物B−5は、平均粒子径92nmのNi粒子と平均粒子径10nmの複合酸化物の微粒子の混合物。
3)ニッケル微粒子組成物B−5中の元素分析の結果、チタン元素を0.8wt%、バリウム元素を2.35wt%含有。その結果、O/(Ba+Ti)4.66=のモル比率を有するニッケル微粒子組成物。
4)ニッケル微粒子組成物B−5のTMA測定結果より得られる10%収縮時の温度;450℃
【0117】
この結果、チタン酸バリウムを単純に混合した粒子では耐焼結性が向上し難いことがわかる。
【0118】
実施例1〜6と比較例1〜5の結果を表1及び表2に示す。ここで、比較例3〜5で得られたニッケル微粒子組成物B−3〜B−5は、ニッケル微粒子と複合酸化物の混合物であるので、表2中の比較例3〜5における「平均粒子径」は、ニッケル微粒子の平均粒子径を採用した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
表1及び表2から、バリウム元素及びチタン元素を含む複合酸化物をニッケル微粒子に固定化したことによって、耐焼結性が大幅に改善していることがわかる。
【0122】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。