【課題】耐摩耗性および耐衝撃性に優れ、直射日光などの熱線の照射を受けた場合であっても表面温度が上昇しがたく、再塗装性に優れた塗膜を表面に有し、高圧ガスを充填するための高圧ガスボンベなどとして好適に使用することができる高圧ガスボンベを提供すること。
【解決手段】表面上に塗膜が形成されてなる高圧ガスボンベであって、高圧ガスボンベの表面上に遮熱塗膜が形成され、当該遮熱塗膜上にさらに水性ポリウレタン塗料からなる塗膜が形成されていることを特徴とする高圧ガスボンベ。
表面上に塗膜が形成されてなる高圧ガスボンベであって、高圧ガスボンベの表面上に遮熱塗膜が形成され、当該遮熱塗膜上にさらに水性ポリウレタン塗料からなる塗膜が形成されていることを特徴とする高圧ガスボンベ。
水性ポリウレタン塗料が、ポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含有するポリオール成分とを反応させてなるポリウレタンを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高圧ガスボンベ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の高圧ガスボンベは、前記したように、高圧ガスボンベの表面上に遮熱塗膜が形成され、当該遮熱塗膜上にさらに水性ポリウレタン塗料からなる塗膜が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の高圧ガスボンベは、前記構成を有するので、耐摩耗性および耐衝撃性に優れ、直射日光などの熱線の照射を受けた場合であっても表面温度が上昇しがたく、再塗装性にも優れている。
【0017】
また、本発明の高圧ガスボンベによれば、耐摩耗性および耐衝撃性を維持するために必要な再塗装を繰り返して行なう頻度を大幅に低減することができるのみならず、再塗装を行なう際には、当該再塗装を容易に行なうことができる。
【0018】
また、本発明の高圧ガスボンベは、必要により貼付されるシールラベルを実用上支障なくその表面に密着させることができるとともに、所望により当該表面から容易に剥がすことができるという利点を有する。
【0019】
さらに、高圧ガスボンベは、高圧ガス取締法に基づく容器保安規則に従って、その内部に充填されるガスの種類を外部から識別することができるようにするために、所定の色彩を有する着色塗膜が形成されているが、本発明の高圧ガスボンベは、このような容器保安規則に従った高圧ガスボンベのみならず、表面に着色塗膜を有する種々の高圧ガスボンベとして好適に用いることができる。
【0020】
高圧ガスボンベの種類には特に限定がない。本発明の高圧ガスボンベは、例えば、前記した容器保安規則に従った高圧ガスボンベをはじめ、その表面塗膜に耐摩耗性および耐衝撃性が要求されるその他の高圧ガスボンベとして好適に用いることができる。
【0021】
高圧ガスボンベの材質には、特に限定がない。高圧ガスボンベの材質としては、例えば、鉄、銅、黄銅、ステンレス鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0022】
本発明の高圧ガスボンベの表面上には、遮熱塗膜が形成されている。したがって、本発明の高圧ガスボンベは、夏季などの高圧ガスボンベに直射日光が照射されたとき、その表面温度の上昇を抑制することができる。
【0023】
なお、遮熱塗膜は、直接、高圧ガスボンベの表面上に直接形成されていてもよく、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、下塗り塗膜などの上に形成されていてもよい。
【0024】
遮熱塗膜を形成させる際には、遮熱塗料を用いることができる。遮熱塗料には、水性遮熱塗料と有機系遮熱塗料とがある。遮熱塗料のなかでは、上塗りの水性ポリウレタン塗料からなる塗膜との密着性に優れるとともに、溶媒として揮発性有機化合物(VOC)を含有せず環境に優しいことから、水性遮熱塗料が好ましい。
【0025】
遮熱塗料は、樹脂バインダー、遮熱顔料および溶媒を含有する。
前記樹脂バインダーは、遮熱顔料の遮熱性を阻害させず、断熱性に優れているものであることが好ましい。前記樹脂バインダーに用いられる樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル−シリコーン系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの樹脂バインダーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。前記樹脂成分のなかでは、上塗りの水性ポリウレタン塗料からなる塗膜との密着性に優れていることから、アクリル−シリコーン系樹脂が好ましい。前記アクリル−シリコーン系樹脂は、上塗りの水性ポリウレタン塗料からなる塗膜との密着性を向上させる観点から、例えば、アクリル−シリコーン系樹脂エマルションとして用いることが好ましい。
【0026】
前記遮熱塗料における樹脂バインダーの固形分の含有率は、特に限定されないが、通常、塗膜の形成性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、遮熱塗料の塗工性を向上させる観点から、遮熱塗料における樹脂バインダーの固形分の含有率が好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下となるように調整することが望ましい。
【0027】
前記遮熱塗料に含有される遮熱顔料は、高圧ガスボンベに要求される色彩、樹脂バインダーの種類などに応じて適宜選択して用いることが好ましい。
【0028】
前記遮熱顔料には、無機系遮熱顔料と有機系遮熱顔料とがある。これらの遮熱顔料のなかでは、直射日光などの熱線が照射されたときの赤外領域における光線の反射性に優れていることから、無機系遮熱顔料が好ましい。
【0029】
無機系遮熱顔料としては、例えば、ガラス微粉末、ガラスバルーン、セラミックビーズなどのセラミック系顔料;アルミニウム、ケイ素−アルミニウム合金、鉄、ケイ素−鉄合金、鉄−クロム合金、鉄−マンガン合金、ビスマス−マンガン合金、マンガン−イットリウム合金、マグネシウム、マンガン、ニッケル、チタン、クロム、カルシウム、ジルコニウム、コバルトなどの金属系顔料;酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、チタン酸ナトリウム、酸化ケイ素、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化クロム、酸化鉄、酸化銅、酸化セリウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物系顔料;酸化鉄−酸化マンガン、酸化鉄−酸化クロム、酸化銅−酸化マグネシウムなどの複合酸化物系顔料;マイカ粉末、窒化ケイ素粉末、硫酸バリウム粉末、各種光輝顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの顔料は、必要により、本発明の目的が阻害されない範囲内で表面処理が施されていてもよい。
【0030】
前記無機系遮熱顔料のなかでは、耐摩耗性および耐衝撃性に優れ、直射日光などの熱線の照射を受けた場合であっても表面温度が上昇しがたく、再塗装性に優れた塗膜を表面に有する高圧ガスボンベを得る観点から、複合酸化物系顔料が好ましい。複合酸化物系顔料は、商業的に容易に入手することができるものであり、その例としては、例えば、Black 10C909A、Yellow 10C242、Green 410、Blue 424〔以上、ザ・シェフェード・カラー(The Shepherd Color)社製、商品名〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0031】
有機系遮熱顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、レーキ系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料(アントアンスロン顔料、ジアミノアンスラキノニル顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、アントラピリミジン顔料など)、ぺリレン系顔料、ぺリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、キニフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、カーボン系顔料などが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。これらの顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
樹脂バインダーの固形分100質量部あたりの遮熱顔料の量は、形成される遮熱塗膜の遮熱性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、上塗りの水性ポリウレタン塗料からなる塗膜との密着性を向上させる観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0033】
遮熱塗料が水性遮熱塗料である場合には、前記溶媒として、水をはじめ、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。また、遮熱塗料が有機系遮熱塗料である場合には、有機溶媒を用いることができる。
【0034】
本発明においては、上塗りの水性ポリウレタン塗料からなる塗膜との密着性に優れるとともに揮発性有機化合物(VOC)を含有せず環境に優しいことから、前記溶媒は、水、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であることが好ましい。
【0035】
水性遮熱塗料に好適な水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0036】
有機系遮熱塗料に好適な有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、イソノナンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0037】
前記溶媒の量は、特に限定されないが、通常、遮熱顔料の分散安定性を向上させる観点から、遮熱塗料における不揮発分の含有率が好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上となるように調整することが好ましい。また、遮熱塗料の塗工性を向上させる観点から、遮熱塗料における不揮発分の含有率が好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下となるように調整することが好ましい。なお、遮熱塗料における不揮発分の含有率は、例えば、遮熱塗料に用いられる溶媒の量を調整することにより、容易に調節することができる。
【0038】
なお、前記遮熱塗料には、必要により、例えば、前記遮熱顔料以外の顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、艶消し剤、防かび剤、帯電防止剤、防錆剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤、造膜助剤などの添加剤が、本発明の目的を阻害しない範囲内で含まれていてもよい。
【0039】
前記遮熱塗料は、前記樹脂バインダー、遮熱顔料、溶媒、および必要により添加される添加剤を混合することによって調製することができる。その際、前記各成分を混合することによって得られた混合物は、遮熱顔料を均一に分散させる観点から、例えば、ディスパー、ロールミル、ビーズミル、ボールミルなどの分散機を用いて分散させてもよい。
【0040】
遮熱塗料を高圧ガスボンベの表面に塗布する方法としては、例えば、エアースプレー法、ロールコーター法、フローコーター法、ディッピング法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。遮熱塗膜を形成させた後には、形成された遮熱塗膜を乾燥させることが好ましい。形成された遮熱塗膜の乾燥は、そのまま大気中に放置することによって行なうことができるほか、例えば、50〜100℃程度の温度で10〜30分間程度加熱することによって行なうことができる。
【0041】
形成される乾燥後の遮熱塗膜の厚さは、高圧ガスボンベの種類などによって異なるので一概には決定することができない。形成される乾燥後の遮熱塗膜の厚さは、当該高圧ガスボンベの種類に応じて適宜調整することが好ましく、一般的には20〜50μm程度であることが好ましい。
【0042】
以上のようにして遮熱塗料によって形成された遮熱塗膜上にさらに水性ポリウレタン塗料からなる塗膜が形成される。
【0043】
前記水性ポリウレタン塗料に用いられるポリウレタンは、耐候性、耐加水分解性および耐摩耗性に優れるとともに、変形追随性および耐衝撃性に優れていることから、ポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含有するポリオール成分とを反応させることによって得られるポリウレタンであることが好ましく、ポリイソシアネート成分と、ポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールを含有するポリオール成分とを反応させることによって得られたウレタンプレポリマーに、二塩基酸ジヒドラジドを含む鎖延長剤を反応させることによって得られるポリウレタンがより好ましい。
【0044】
まず、ポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含有するポリオール成分とを反応させることによって得られるポリウレタンについて、説明する。
前記ポリイソシアネート成分としては、遮熱塗膜との密着性を向上させる観点から、イソホロンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分が好ましい。ポリイソシアネート成分におけるイソホロンジイソシアネートの含有率は、遮熱塗膜との密着性を向上させる観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは75モル%以上であり、その上限値は100モル%である。
【0045】
前記ポリイソシアネート成分において、イソホロンジイソシアネート以外のポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−ジクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネーネートなどの脂環式ポリシアネート化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0046】
前記ポリオール成分に用いられるポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは500〜10000、より好ましくは500〜7000、さらに好ましくは800〜5000である。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールが分子中に有する水酸基の個数と、ポリカーボネートポリオールの水酸基価(mgKOH/g)から算出される値である。例えば、水酸基がポリカーボネートポリオールの分子中にN個存在する場合、式:
[ポリカーボネートポリオールの数平均分子量]
=(56100×N)/(ポリカーボネートポリオールの水酸基価)
に基づいて、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量を算出することができる。
【0047】
前記ポリカーボネートポリオールのなかでは、形成される塗膜の耐摩耗性を向上させる観点から、脂環式構造を有するポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0048】
脂環式構造を有するポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサンなどの炭素数5〜12の脂環式基を有するポリオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリカーボネートポリオールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
前記ポリオール成分におけるポリカーボネートポリオールの含有率は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは80〜97質量%、より好ましくは85〜95質量%である。
【0050】
なお、ポリオール成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、ポリカーボネートポリオール以外の他のポリオール化合物(以下、他のポリオール化合物という)が含まれていてもよい。
【0051】
前記他のポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオールなどのポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体またはブロック共重合体などのポリエーテルポリオール;アクリルポリオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他のポリオール化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
前記ポリオール成分における他のポリオール化合物の含有率は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。
【0053】
ポリイソシアネート成分の量は、ポリオール成分の水酸基1モルあたりの当該ポリイソシアネート成分のイソシアナト基が好ましくは1.01〜2.5モル、より好ましくは1.2〜2.2モルとなるように調整することが好ましい。
【0054】
ポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含有するポリオール成分とを反応させる際には、触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレートなどのスズ系触媒;オクチル酸鉛などの鉛系触媒;トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0055】
ポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含有するポリオール成分とを反応させる際には、溶媒を用いることができる。溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、酢酸エチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0056】
ポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含有するポリオール成分との反応温度は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜120℃である。ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応時間は、特に限定されず、例えば、ポリオール成分の水酸基モル数の90モル%以上、好ましくは95%モル以上、より好ましくは98モル%以上がポリイソシアネート成分と反応するのに要する時間であることが好ましい。
【0057】
以上のようにしてポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含有するポリオール成分とを反応させることにより、ポリウレタンを得ることができる。
【0058】
次に、前記で得られたポリウレタンを水系媒体に分散させることにより、ポリウレタン水分散体が得られる。
【0059】
前記水系媒体としては、例えば、水、水と親水性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級1価アルコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどの非プロトン性親水性有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0060】
前記ポリウレタンを水系媒体中に分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの分散機で水系媒体を攪拌しながら、中和されたウレタンプレポリマーを添加する方法などが挙げられる。
【0061】
水系媒体の量は、ポリウレタン水分散体中のポリウレタンの含有率が好ましくは5〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%となるように調整することが望ましい。
【0062】
本発明の水性ポリウレタン塗料は、以上のようにして得られたポリウレタン水分散体を含有する。
【0063】
次に、前述した、ポリイソシアネート成分と、ポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールを含有するポリオール成分とを反応させることによって得られたウレタンプレポリマーと、二塩基酸ジヒドラジドを含む鎖延長剤とを反応させることによって得られるポリウレタンについて説明する。
【0064】
前記ポリイソシアネート成分としては、前述したものを例示することができる。
【0065】
前記ポリオール成分は、ポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールを含有する。
【0066】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、前述したものを例示することができる。
【0067】
前記ポリオール成分におけるポリカーボネートポリオールの含有率は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは80〜97質量%、より好ましくは85〜95質量%である。
【0068】
前記酸性基含有ポリオールは、酸性基を少なくとも1個分子内に有するポリオール化合物である。酸性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホニル基、リン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性基のなかでは、カルボキシ基が好ましい。
【0069】
酸性基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性基含有ポリオールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの酸性基含有ポリオールのなかでは、2,2−ジメチロールプロピオン酸および2,2−ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0070】
ポリオール成分における酸性基含有ポリオールの含有率は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。
【0071】
なお、ポリオール成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、ポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオール以外の他のポリオール化合物(以下、他のポリオール化合物という)が含まれていてもよい。
【0072】
前記他のポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオールなどのポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体またはブロック共重合体などのポリエーテルポリオール;アクリルポリオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他のポリオール化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
なお、前記ポリオール成分における他のポリオール化合物の含有率は、前記ポリオール成分におけるポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールの残部、すなわち0〜17質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0074】
ポリイソシアネート成分の量は、ポリオール成分の水酸基1モルあたりの当該ポリイソシアネート成分のイソシアナト基が好ましくは1.01〜2.5モル、より好ましくは1.2〜2.2モルとなるように調整することが好ましい。
【0075】
ポリイソシアネート成分と、ポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールを含有するポリオール成分とを反応させる際には、触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレートなどのスズ系触媒;オクチル酸鉛などの鉛系触媒;トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0076】
ポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールを含有するポリオール成分とを反応させる際には、溶媒を用いることができる。溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、酢酸エチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0077】
ポリイソシアネート成分と、ポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールを含有するポリオール成分との反応温度は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜120℃である。ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応時間は、特に限定されず、例えば、ポリオール成分の水酸基モル数の90モル%以上、好ましくは95%モル以上、より好ましくは98モル%以上がポリイソシアネート成分と反応するのに要する時間であることが好ましい。
【0078】
以上のようにしてポリイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールおよび酸性基含有ポリオールを含有するポリオール成分とを反応させることにより、ウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0079】
次に、前記で得られたポリウレタンを水系媒体に分散させることにより、ポリウレタン水分散体が得られる。
【0080】
前記水系媒体としては、例えば、水をはじめ、水と親水性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級1価アルコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどの非プロトン性親水性有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0081】
前記ポリウレタンを水系媒体中に分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの分散機で水系媒体を攪拌しながら、中和されたウレタンプレポリマーを添加する方法などが挙げられる。
【0082】
水系媒体の量は、ポリウレタン水分散体中のポリウレタンの含有率が好ましくは5〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%となるように調整することが望ましい。
【0083】
次に、前記で得られたウレタンプレポリマーの酸性基を中和剤で中和し、ウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる。その後、ウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させた後、ウレタンプレポリマーのイソシアナト基と二塩基酸ジヒドラジドを含む鎖延長剤とを反応させることにより、ポリウレタン水分散体の形態で得ることができる。
【0084】
前記中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジンなどの有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ;アンモニアなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0085】
ウレタンプレポリマー中の酸性基1当量あたりの中和剤の量は、好ましくは0.5〜2当量、より好ましくは0.7〜1.5当量、さらに好ましくは0.85〜1.3当量である。
【0086】
前記で中和されたウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの分散機で水系媒体を攪拌しながら、中和されたウレタンプレポリマーを添加する方法などが挙げられる。
水系媒体としては、例えば、水をはじめ、水と親水性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級1価アルコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどの非プロトン性親水性有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0087】
水系媒体の量は、ポリウレタン水分散体中のポリウレタンの含有率が好ましくは5〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%となるように調整することが望ましい。
【0088】
前記鎖延長剤は、二塩基酸ジヒドラジドを含む。二塩基酸ジヒドラジドとしては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジカルボン酸のジヒドラジド;テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、1,2−フェニレンジ酢酸ジヒドラジド、1,3−フェニレンジ酢酸ジヒドラジド、1,4−フェニレンジ酢酸ジヒドラジドなどの芳香族ジカルボン酸のジヒドラジドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0089】
前記鎖延長剤における二塩基酸ジヒドラジドの含有率は、遮熱塗膜との密着性を向上させる観点から、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。
【0090】
鎖延長剤には、二塩基酸ジヒドラジド以外の鎖延長剤が含まれていてもよい。二塩基酸ジヒドラジド以外の鎖延長剤としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール化合物;ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0091】
前記鎖延長剤における二塩基酸ジヒドラジド以外の鎖延長剤の含有率は、遮熱塗膜との密着性を向上させる観点から、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは0〜20モル%である。
【0092】
ウレタンプレポリマーのイソシアナト基1モルあたりの鎖延長剤の量は、好ましくは0.2〜0.6モル、より好ましくは0.3〜0.5モルである。
【0093】
ウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応温度は、好ましくは0〜60℃、より好ましくは0〜40℃である。中和されたウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応時間は、好ましくは0.1〜3時間、より好ましくは0.1〜2時間である。
【0094】
以上のようにしてウレタンプレポリマーのイソシアナト基と二塩基酸ジヒドラジドを含む鎖延長剤とを反応させることにより、ポリウレタン水分散体を得ることができる。
【0095】
本発明の水性ポリウレタン塗料は、前記で得られたポリウレタン水分散体を含有する。
【0096】
前記で得られた水性ポリウレタン塗料は、耐候性、耐加水分解性および耐摩耗性に優れるとともに、変形追随性および耐衝撃性に優れていることから、本発明において好適に用いることができる。
【0097】
前記水性ポリウレタン塗料における水性ポリウレタン水分散体の含有率は、5〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。
【0098】
水性ポリウレタン塗料における固形分の含有率は、特に限定されないが、通常、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、塗工性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。水性ポリウレタン塗料における固形分の含有率は、例えば、水性ポリウレタン塗料に用いられる溶媒の量を調整することにより、容易に調節することができる。
【0099】
なお、水性ポリウレタン塗料には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、ポリウレタン以外の樹脂成分が含まれていてもよい。当該ポリウレタン以外の樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの樹脂成分は、それぞれ単独でもといてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0100】
また、水性ポリウレタン塗料には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、硬化剤が含まれていてもよい。硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、カルボジイミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの硬化剤は、それぞれ単独でもといてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0101】
さらに、水性ポリウレタン塗料には、必要により、例えば、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、分散剤、酸化防止剤、艶消し剤、防かび剤、帯電防止剤、防錆剤、凍結防止剤、造膜助剤などの添加剤が、本発明の目的を阻害しない範囲内で含まれていてもよい。
【0102】
水性ポリウレタン塗料には、通常、溶媒が含まれる。溶媒として、水をはじめ、水と低級アルコールなどの水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。
【0103】
水性ポリウレタン塗料を遮熱塗膜の表面に塗布する方法としては、例えば、エアースプレー法、ロールコーター法、フローコーター法、ディッピング法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。水性ポリウレタン塗料からなる塗膜を形成させた後には、形成された塗膜を乾燥させることが好ましい。形成された塗膜の乾燥は、そのまま大気中に放置することによって行なうことができるほか、例えば、50〜100℃程度の温度で10〜30分間程度加熱することによって行なうことができる。
【0104】
形成される乾燥後の塗膜の厚さは、高圧ガスボンベの種類などによって異なるので一概には決定することができないことから当該高圧ガスボンベの種類に応じて適宜調整することが好ましいが、通常、50〜150μm程度であることが好ましい。
【0105】
なお、水性ポリウレタン塗料からなる塗膜には、当該高圧ガスボンベの表面に貼付されるシールラベルを容易に剥がすことができるようにするために、例えば、長鎖アルキル基が導入された変性シリコーンオイルなどの離型剤が本発明の目的を阻害しない範囲内で含まれていてもよい。
【0106】
以上のようにして遮熱塗膜および水性ポリウレタン塗料からなる塗膜を形成させることにより、本発明の高圧ガスボンベが得られる。
【0107】
本発明の高圧ガスボンベの表面に形成されている水性ポリウレタン塗料からなる塗膜の弾性率は、耐衝撃性を向上させる観点から、好ましくは20〜1500MPa、より好ましくは200〜1100MPaである。なお、塗膜の弾性率は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0108】
また、本発明の高圧ガスボンベの表面に形成されている水性ポリウレタン塗料からなる塗膜の破断時の伸びは、耐衝撃性を向上させる観点から、好ましくは100〜400%、より好ましくは150〜300%である。なお、塗膜の破断時の伸びは、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0109】
さらに、本発明の高圧ガスボンベの表面に形成されている水性ポリウレタン塗料からなる塗膜の摩耗指数は、耐衝撃性を向上させる観点から、25以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。なお、塗膜の摩耗指数は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0110】
本発明の高圧ガスボンベは、耐摩耗性および耐衝撃性に優れ、直射日光などの熱線の照射を受けた場合であっても表面温度が上昇しがたく、再塗装性に優れた塗膜を表面に有するので、例えば、高圧ガスを充填するための高圧ガスボンベなどとして好適に使用することができるものである。
【実施例】
【0111】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0112】
製造例1
白色顔料としてチタンホワイト〔石原産業(株)製、商品名:タイペークR−930〕75質量部、水道水15質量部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:DKSディスコートN−14〕4質量部、消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5質量部、および増粘剤〔日本合成化学工業(株)製、商品名:チローゼH4000P〕の2質量%水溶液5.5質量部を混合し、分散機としてビーズミルを用いて最大粒径が5μm以下となるまで分散させることにより、顔料分散ペーストを得た。
【0113】
次に、アクリルシリコーン樹脂エマルション〔DIC(株)製、商品名:ボンコートSA−6360〕100質量部、前記で得られた顔料分散ペースト40質量部、凍結防止剤〔プロピレングリコール〕2質量部、造膜助剤〔ダウ・ケミカル日本(株)製、商品名:ダワノールDPnB〕8質量部、増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕2質量部を混合し、均一な組成となるように撹拌することにより、白色塗料を得た。
【0114】
前記で得られた白色塗料95質量部と遮熱顔料〔シェファードカラージャパン社製、商品名:Black10C909〕5質量部とを混合し、ホモディスパーで十分に分散させることにより、灰色の遮熱塗料を得た。
【0115】
製造例2
1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させることによって得られたポリカーボネートジオール〔宇部興産(株)製、商品名:ETERNACOLL(登録商標) UM90(3/1)〕1500質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸220質量部、N−メチロールピロリドン1347質量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1445質量部、ジブチル錫ジラウレート2.6質量部およびトリエチルアミンを窒素ガス雰囲気中にて混合し、得られた混合物を80〜90℃の温度で5時間加熱することにより、反応を行なった。得られた反応混合物を80℃に調節した後、得られた反応混合物から4340質量部を取り出し、この反応混合物4340質量部に、強撹拌下で水道水6900質量部およびトリエチルアミン15質量部を添加することにより、混合部を得た。前記で得られた混合物に、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626質量部を添加することにより、ポリウレタン水分散体を得た。
【0116】
前記で得られたポリウレタン水分散体90質量部、造膜助剤〔協和発酵ケミカル(株)製、商品名:キョーワノールM〕5質量部、離型剤〔信越化学工業(株)製、商品名:シルキャストU〕2質量部、レベリング剤〔モメンティブ社製、品番:3500〕1質量部および水道水10質量部を混合することにより、水性ポリウレタン塗料を得た。
【0117】
前記で得られた水性ポリウレタン塗料からなる塗膜の弾性率および破断時の伸びを以下の方法に基づいて調べた。その結果、塗膜の弾性率は1100MPaであり、塗膜の破断時の伸びは150%であった。
【0118】
〔塗膜の弾性率および破断時の伸び〕
塗膜の弾性率および破断時の伸びは、JIS K7311に準拠し、温度23℃、相対湿度50%、引張速度10mm/分の測定条件下で膜厚が約50μmの塗膜に対し、精密万能試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAG−100KNG〕を用いて測定した。
【0119】
実施例1
基材として、縦75mm、横150mm、厚さ4mmの冷間圧延鋼板を用い、この鋼板の一方表面上に、製造例1で得られた遮熱塗料を乾燥後の塗膜の厚さが30μm程度となるように塗布し、70℃の大気中で30分間加熱した後、7日間大気中で放置することによって自然乾燥させて遮熱塗膜および当該遮熱塗膜上にさらに水性ポリウレタン塗料からなる塗膜が形成された基材を得た。
【0120】
次に、前記で得られた遮熱塗膜が形成された基材の遮熱塗膜上に、製造例2で得られた水性ポリウレタン塗料を乾燥後の塗膜の厚さが30μm程度となるように塗布し、70℃の大気中で30分間加熱した後、7日間大気中で放置することによって自然乾燥させて遮熱塗膜が形成された試験片を得た。
【0121】
比較例1
実施例1において、製造例2で得られた水性ポリウレタン塗料の代わりに、白色ウレタン塗料〔大日本塗料(株)製、商品名:ビューウレタンSS〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0122】
比較例2
実施例1において、製造例2で得られた水性ポリウレタン塗料の代わりに、白色アクリル樹脂系塗料〔(株)フェクト製、商品名:SSコート水性〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0123】
次に、実施例1および比較例1〜2で得られた試験片を用い、当該試験片に形成されている塗膜の物性として耐摩耗性、ラベルの剥離性、耐衝撃性および光沢を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
【0124】
〔耐摩耗性〕
JIS K7204に記載の摩耗輪による摩耗試験方法に準じて評価した。気温18〜19℃、相対湿度55〜58%の雰囲気中で、テーバー摩耗試験機〔東洋精機(株)製、MODEL5130〕に摩耗輪CS−10を取り付け、荷重500gで250回試験片を回転させ、試験片の試験前後の質量を測定し、摩耗損失量を求めた。
【0125】
次に、前記で測定された摩耗損失量から摩耗指数を式:
[摩耗指数]=[1000÷試験片の回転数]×[摩耗損失量]
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて、耐摩耗性を評価した。
【0126】
(耐摩耗性の評価基準)
◎:摩耗指数が10以下
○:摩耗指数が10を超え25以下
△:摩耗指数が25を超え50以下
×:摩耗指数が50を超過
【0127】
〔ラベルの剥離性〕
ラベルとして、ラベルA〔アスクル(株)製、商品名:マルチプリンタラベル〕、ラベルB〔コクヨS&T(株)製、商品名:ノーカットラベル KJ−G6105〕またはラベルC〔ニチバン(株)製、商品名:マイタックラベル〕を用い、ラベルと試験片の塗膜面とを隙間なく密着させた後、当該ラベルの端部を剥がし、剥がしたラベルの端部にクリップを取り付け、当該クリップにバネ秤〔(株)三光精衡所製〕を取り付け、ラベルを180度方向に剥離し、ラベルが剥がれるときの引張り荷重を測定した。
【0128】
(ラベルの剥離性の評価基準)
◎:引張り荷重が5g未満
○:引張り荷重が5g以上10g未満
△:引張り荷重が10g以上30g未満
×:引張り荷重が30g以上
【0129】
〔耐衝撃性〕
各試験片を、温度20℃±1、相対湿度75±2%の恒温恒湿室内で24時間放置した後、JIS K5600−5−3(1999)に規定のデュポン衝撃試験器を用いて試験片の塗膜を上向きにし、質量300gのおもりを100cmの高さから撃心(1/2インチ)の上に落とし、塗膜に割れまたは剥がれが発生しているかどうかを確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0130】
(耐衝撃性の評価基準)
○:形成されている塗膜に割れおよび剥がれの発生が認められない。
×:形成されている塗膜に少なくとも割れまたは剥がれの発生が認められる。
【0131】
〔光沢〕
試験片に形成されている塗膜面の60度鏡面反射率を「UNIGLOSS60」コニカミノルタ(株)製を用いて測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0132】
(光沢の評価基準)
◎:反射率が80%以上
○:反射率が60%以上80%未満
△:反射率が40%以上60%未満
×:反射率が40%未満
【0133】
【表1】
【0134】
表1に示された結果から、実施例1で得られた試験片は、比較例1〜2で得られた試験片と対比して、耐摩耗性が格段に優れており、耐衝撃性および光沢にも優れていることがわかる。
【0135】
また、実施例1でえられた試験片は、ラベルの剥離性に優れていることから、シールラベルを試験片の表面上に密着させることができるとともに、所望により試験片から容易に剥がすことができることがわかる。
【0136】
したがって、実施例1によれば、遮熱塗膜が形成されているので、遮熱性に優れているのみならず、高圧ガスボンベを運搬したり、取り扱うときに他の部材と衝突したり、擦れたりすることにより、塗膜の破片や剥離片などが生じがたく、さらに塗膜の剥がれによって高圧ガスボンベの金属面が露出し、腐食することも防止することができることから、例えば、クリーンルーム内などでも好適に使用することができることがわかる。
【0137】
また、各実施例でえられた試験片は、いずれも反射率が高く、高圧ガスボンベなどの金属容器に失われがちなガラス光沢も有することがわかる。