【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例において特にことわりのない限り、各種測定、評価は下記によるものである。
【0050】
[ニッケル微粒子の平均粒子径]
平均粒子径は、SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出して、その平均粒径(面積平均径)と標準偏差を求めた。具体的には、抽出した微粒子のそれぞれについて面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として一次粒子の平均粒子径とした。また、CV値(変動係数)は、(標準偏差)÷(平均粒子径)によって算出した。なお、CV値が小さいほど、粒子径がより均一であることを示す。
【0051】
[ニッケル微粒子の結晶子径]
粉末X線回折(XRD)結果から、Scherrerの式により算出した。
【0052】
[5%熱収縮温度]
試料を5Φ×2mmの円柱状成型器に入れ、プレス成型して得られる成型体を作製し、窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、熱機械分析装置(TMA)により測定される5%熱収縮の温度を5%熱収縮温度とした。
【0053】
(実施例1)
濃度が108g/Lの塩化ニッケル六水和物、272g/Lのヒドラジン一水和物、97.3g/Lの水酸化ナトリウム及び50g/Lの分子量1540のポリエチレングリコールを含む溶液を調製した。次いで、激しく攪拌しながら(撹拌速度;600r.p.m.)、その溶液を80℃に加熱して、その温度に一時間保持することで、ニッケル微粒子1を得た。このニッケル微粒子1の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子1の元素分析;C:0.4、O:0.8(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子1のSEM測定から得られた平均粒子径;147nm、CV値;0.22。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子1におけるXRDからのNiの結晶子径;20.3nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;246℃
5)TOF−SIMS分析によりポリエチレングリコール由来の(CH
2CH
2O)−の官能基を示す質量数45にピークが検出された。また質量数60以上にはニッケル由来のピーク以外は検出されなかった。
6)ニッケル微粒子1の嵩密度;1.0g/cm
3
【0054】
ニッケル微粒子1のSEM、XRD、TMAの測定結果をそれぞれ
図1〜
図3に示す。
【0055】
(実施例2)
上記実施例1において、分子量400のポリエチレングリコールの濃度を200g/Lとしたこと以外は同様の過程を行って、ニッケル微粒子2を得た。このニッケル微粒子2の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子2の元素分析;C:0.5、O:1.1(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子2のSEM測定から得られた平均粒子径;87nm、CV値;0.26。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子2におけるXRDからのNiの結晶子径;15.8nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;254℃
5)TOF−SIMS分析によりポリエチレングリコール由来の(CH
2CH
2O)−の官能基を示す質量数45にピークが検出された。また質量数60以上にはニッケル由来のピーク以外は検出されなかった。
6)ニッケル微粒子2の嵩密度;0.7g/cm
3
【0056】
ニッケル微粒子2のSEM、XRD、TMAの測定結果をそれぞれ
図4〜
図6に示す。
【0057】
(実施例3)
上記実施例1において、分子量200のポリエチレングリコールの濃度を100g/L、保持時間を30分間としたこと以外は同様の過程を行って、ニッケル微粒子3を得た。このニッケル微粒子3の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子3の元素分析;C:0.4、O:2.1(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子3のSEM測定から得られた平均粒子径;50nm、CV値;0.18。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子4におけるXRDからのNiの結晶子径;11.8nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;142℃
5)TOF−SIMS分析によりポリエチレングリコール由来の(CH
2CH
2O)−の官能基を示す質量数45にピークが検出された。また質量数60以上にはニッケル由来のピーク以外は検出されなかった。
6)ニッケル微粒子3の嵩密度;0.6g/cm
3
【0058】
ニッケル微粒子3のSEM、XRD、TMA、TOF−SIMSの測定結果をそれぞれ
図7〜
図10に示す。
【0059】
(実施例4)
上記実施例1において、分子量400のポリエチレングリコールの濃度を200g/L、保持時間を30分間としたこと以外は同様の過程を行って、ニッケル微粒子4を得た。このニッケル微粒子4の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子4の元素分析;C:0.6、O:1.9(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子4のSEM測定から得られた平均粒子径;51nm、CV値;0.18。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子4におけるXRDからのNiの結晶子径;13.7nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;220℃
5)GC−MS分析によりポリエチレングリコール由来の(CH
2CH
2O)−の官能基を示す質量数45にピークが検出されるとともに、(CH
2CH
2O)
2−の官能基を示す質量数90にもピークを検出した。
6)ニッケル微粒子4の嵩密度;0.6g/cm
3
【0060】
ニッケル微粒子4のSEM、XRD、TMA、GC−MSの測定結果をそれぞれ
図11〜
図14に示す。
【0061】
(比較例1)
<溶解工程>
酢酸ニッケル四水和物285g(1.14mol)にオレイルアミン690g(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって酢酸ニッケルをオレイルアミンに溶解させた。
【0062】
<還元工程>
次いで、その溶液にマイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分保持することによってニッケル微粒子5を得た。このニッケル微粒子5の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子5の元素分析;C:0.3、O:0.6(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子5のSEM測定から得られた平均粒子径;158nm、CV値;0.12。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子5におけるXRDからのNiの結晶子径;18.3nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;315℃
5)ニッケル微粒子5の嵩密度;3.5g/cm
3
【0063】
ニッケル微粒子5のSEM、XRD、TMAの測定結果をそれぞれ
図15〜
図17に示す。
【0064】
(比較例2)
<溶解工程>
酢酸ニッケル四水和物60.0g(241.1mmmol)にオレイルアミン690g(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって酢酸ニッケルをオレイルアミンに溶解させた。
【0065】
<還元工程>
次いで、その溶液にマイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分保持することによってニッケル微粒子6を得た。このニッケル微粒子6の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子6の元素分析;C:0.7、O:1.3(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子6のSEM測定から得られた平均粒子径;90nm、CV値;0.19。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子6におけるXRDからのNiの結晶子径;16.0nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;295℃
5)ニッケル微粒子6の嵩密度;3.3g/cm
3
【0066】
ニッケル微粒子6のSEM、XRD、TMAの測定結果をそれぞれ
図18〜
図20に示す。
【0067】
(比較例3)
<溶解工程>
酢酸ニッケル四水和物479g(1.93mmmol)にオレイルアミン690g(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、40分間加熱することによって酢酸ニッケルをオレイルアミンに溶解させた。
【0068】
<還元工程>
次いで、その溶液に硝酸銀を1.63g加えてマイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分保持することによってニッケル微粒子7を得た。このニッケル微粒子7の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子7の元素分析;C:1.5、O:2.9(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子7のSEM測定から得られた平均粒子径;51nm、CV値;0.15。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子7におけるXRDからのNiの結晶子径;14.1nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;300℃
5)ニッケル微粒子7の嵩密度;3.0g/cm
3
【0069】
ニッケル微粒子7のSEM、XRD、TMAの測定結果をそれぞれ
図21〜
図23に示す。
【0070】
(比較例4)
濃度が108g/Lの塩化ニッケル六水和物、272g/Lのヒドラジン一水和物、97.3g/Lの水酸化ナトリウムを含む溶液を調製した。次いで、その溶液を80℃に加熱して、その温度に一時間保持することでニッケル微粒子8を得た。このニッケル微粒子8の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子8の元素分析;C:0.3、O:0.2(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子8のSEM測定から得られた平均粒子径;539nm、CV値;0.14。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子8におけるXRDからのNiの結晶子径;24.6nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;500℃
5)ニッケル微粒子8の嵩密度;1.9g/cm
3
【0071】
ニッケル微粒子8のSEM、XRD、TMAの測定結果をそれぞれ
図24〜
図26に示す。
【0072】
(比較例5)
塩化ニッケル六水和物の濃度が194g/Lの水・イソプロパノール混合溶液を、ヒドラジン一水和物の濃度254g/Lのイソプロパノール溶液に添加した。その溶液に濃度404g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加した。次いで、35℃で30分間静置後、1時間撹拌することで、ニッケル微粒子9を得た。このニッケル微粒子9の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子9の元素分析;C:0.3、O:0.7(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子9のSEM測定から得られた平均粒子径;80nm、CV値;0.17。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子9におけるXRDからのNiの結晶子径;15.0nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;320℃
5)ニッケル微粒子9の嵩密度;0.3g/cm
3
【0073】
ニッケル微粒子9のSEMの測定結果を
図27に示す。
【0074】
(参考例1)
上記実施例1における加熱時の撹拌速度を100r.p.m.にしたこと以外、実施例1と同様にして、ニッケル微粒子10を得た。このニッケル微粒子10の特徴は、次のとおりであった。
1)ニッケル微粒子10の元素分析;C:0.3、O:0.7(単位は質量%)。
2)ニッケル微粒子10のSEM測定から得られた平均粒子径;80nm、CV値;0.17。
3)XRDでNi以外のピークは検出されず。ニッケル微粒子10におけるXRDからのNiの結晶子径;15.0nm。
4)TMA測定時の5%熱収縮時の温度;320℃
5)ニッケル微粒子10の嵩密度;0.3g/cm
3
【0075】
実施例1〜4、比較例1〜5及び参考例1の結果をまとめて表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
以上の結果より、嵩密度が0.5〜3.5g/cm
3の範囲内、炭素元素の含有量が0.3〜1.0質量%の範囲内、酸素元素の含有量が0.5〜2.5質量%の範囲内であって、上の条件(1)と、条件(2)又は条件(3)の少なくとも片方を満足する実施例1〜4のニッケル微粒子は、比較例1〜5及び参考例1のニッケル微粒子に比べ、5%熱収縮温度が十分に低いことが確認できた。特に、実施例3におけるTMAの測定結果は、150℃程度の低温でも接合できる可能性があることを示している。従って、実施例1〜4のニッケル微粒子は、低温での焼結、熱融着が可能であり、接合材料として有用である。また、比較例5及び参考例1のニッケル微粒子は、実施例1〜4のニッケル微粒子に比べて嵩密度が低かった。その原因として、比較例5及び参考例1のニッケル微粒子では、ネッキングが生じて密なパッキングが行われていないことが考えられる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。