(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194449(P2015-194449A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】供試体の作製方法および供試体の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20151009BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20151009BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
G01N27/04 A
G01N33/38
G01N1/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-73349(P2014-73349)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173810
【氏名又は名称】一般財団法人土木研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康範
(72)【発明者】
【氏名】多田 紀枝
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃
(72)【発明者】
【氏名】大田 孝二
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 聡
【テーマコード(参考)】
2G052
2G060
【Fターム(参考)】
2G052AA16
2G052AD29
2G052AD52
2G052GA23
2G060AA14
2G060AC01
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG11
2G060JA03
(57)【要約】
【課題】電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる供試体を作製することができる供試体の作製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】コンクリートと水とが混練されてなる混練物を型枠内で硬化させることで形成されて電気抵抗に基づく測定の対象となる供試体を作製する供試体の作製方法であって、複数の棒状部材の一端部が型枠内の混練物から突出するように複数の棒状部材が混練物に差し込まれた状態で混練物を硬化させて硬化体を形成する硬化体形成工程と、該硬化体から少なくとも一対の棒状部材を引き抜く引き抜き工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートと水とが混練されてなる混練物を型枠内で硬化させることで形成されて電気抵抗に基づく測定の対象となる供試体を作製する供試体の作製方法であって、
複数の棒状部材の一端部が型枠内の混練物から突出するように複数の棒状部材が混練物に差し込まれた状態で混練物を硬化させて硬化体を形成する硬化体形成工程と、該硬化体から少なくとも一対の棒状部材を引き抜く引き抜き工程とを備えることを特徴とする供試体の作製方法。
【請求項2】
前記硬化体形成工程では、各棒状部材が混練物に差し込まれた状態で、棒状部材の差し込み方向に沿った混練物の外周面から25mm以上内側の領域に各棒状部材が差し込まれることを特徴とする請求項1に記載の供試体の作製方法。
【請求項3】
前記硬化体形成工程では、各棒状部材が混練物に差し込まれた状態で、棒状部材の差し込み方向に位置する型枠内の混練物の両端部から60mm以上内側の領域に、各棒状部材の他端部が位置するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の供試体の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の供試体の作製方法によって作製される供試体に対して、内部の電気抵抗に基づく測定を行う供試体の測定方法であって、
前記引き抜き工程の直後に一対の挿入孔のそれぞれに一対の電極のそれぞれを挿入し、一対の電極間における供試体の電気抵抗に基づく測定を行う第一測定工程を備えることを特徴とする供試体の測定方法。
【請求項5】
前記第一測定工程では、一対の電極を備える電気抵抗式水分計を用いて、一対の電極間における供試体の電気抵抗に基づくカウント値を測定するように構成されており、
第一測定工程後、供試体内におけるカウント値を測定した位置の周辺の部位から試験片を採取し、該試験片の含水率を測定する第二測定工程を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の供試体の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気抵抗に基づく測定の対象となる供試体を作製する方法および該供試体を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートと水とが混練されてなる混練物が硬化することで形成されるコンクリート構造物に対して、内部の電気抵抗に基づく種々の測定が行われている。例えば、コンクリート構造物内に含有される水分は、コンクリート構造物の劣化現象に関与することが知られているため、コンクリート構造物の含水率を把握するべく、コンクリート構造物内の電気抵抗に基づく含水率の測定が行われている。
【0003】
斯かる含水率の測定の1つとして、電気抵抗式水分計を用いた方法が提案されている。具体的には、電気ドリルを用いてコンクリート構造物を穿孔して複数の孔を形成し、該複数の孔から選択される一対の孔に電気抵抗式水分計の一対の電極を挿入する。そして、一対の電極間におけるコンクリート構造物内の電気抵抗に基づくカウント値を測定する。これにより、得られるカウント値に対応した含水率を把握することが可能となっている(非特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「外部環境がコンクリート構造物内部の含水状態に与える影響」(土木学会 第64回年次学術講演会概要集 平成21年9月)
【非特許文献2】「建設技術研究開発費補助金総合研究報告書」(研究期間:平成20年度〜平成21年度)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、電極を挿入する孔(以下、挿入孔とも記す)が電気ドリルを用いて形成される場合、電気ドリルの刃の回転による摩擦や気流の影響によって、挿入孔の内面が乾燥することになる。また、穿孔によって生じる粉塵を挿入孔内から除去するために、挿入孔内に気体を噴射したり、挿入孔内から粉塵を吸い上げたりすることでも、挿入孔の内面が乾燥することになる。また、電気ドリルの刃の回転や粉塵の除去による気流によって、コンクリート構造物の内部と挿入孔の内面との間に温度差が生じることになる。
【0006】
このように、挿入孔の内面の乾燥や、挿入孔の内面とコンクリート構造物の内部との温度差が生じることで、一対の電極間の電気抵抗とコンクリート構造物内の真の電気抵抗との間に誤差が生じることになる。更に、コンクリート構造物を穿孔する際に、電気ドリルの刃が粗骨材を貫通した場合には、挿入孔内に粗骨材が露出するため、粗骨材と電極とが接触する虞がある。斯かる場合には、粗骨材自体の含水率が一対の電極間の電気抵抗に影響することなるため、一対の電極間の電気抵抗とコンクリート構造物内の真の電気抵抗との間に誤差が生じることになる。
【0007】
そこで、本発明は、電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる供試体を作製することができる供試体の作製方法、および、該供試体の測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る供試体の作製方法は、コンクリートと水とが混練されてなる混練物を型枠内で硬化させることで形成されて電気抵抗に基づく測定の対象となる供試体を作製する供試体の作製方法であって、複数の棒状部材の一端部が型枠内の混練物から突出するように複数の棒状部材が混練物に差し込まれた状態で混練物を硬化させて硬化体を形成する硬化体形成工程と、該硬化体から少なくとも一対の棒状部材を引き抜く引き抜き工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
斯かる構成によれば、各棒状部材の一端部が混練物から突出した状態となる。このため、硬化体が形成された状態で、棒状部材の一端部を把持して硬化体から引き抜くことで(引き抜き工程)、硬化体には、一対の電極のそれぞれを挿入可能な一対の挿入孔が形成される。これにより、一対の挿入孔を備えた供試体が形成される。
【0010】
この一対の挿入孔は、硬化体を電気ドリルで穿孔して形成されたものではないため、電気ドリルの刃の回転による摩擦や気流の影響によって、挿入孔の内面が乾燥することがない。また、穿孔による粉塵が生じないため、挿入孔内の粉塵を除去するべく挿入孔内に気体を噴射したり、挿入孔内から粉塵を吸い上げたりする必要がない。このため、粉塵を除去する際の気流によって挿入孔の内面が乾燥することもない。
【0011】
また、電気ドリルの刃の回転や粉塵の除去による気流によって、供試体の内部と挿入孔の内面との間に温度差が生じることもない。更に、硬化前の混練物に棒状部材が差し込まれるため、電極ドリルの刃のように、棒状部材が粗骨材を貫通することがない。このため、一対の電極のそれぞれを一対の挿入孔のそれぞれに挿入した際に、挿入孔内に粗骨材が露出して電極と接触することがない。
【0012】
これにより、一対の電極のそれぞれを一対の挿入孔のそれぞれに挿入し、一対の電極間の電気抵抗に基づく測定を行う際に、挿入孔の内面の状態(乾燥状態、温度状態)や粗骨材と電極との接触を考慮する必要がなく、正確な(真の測定結果により近い)測定結果を得ることができる。
【0013】
前記硬化体形成工程では、各棒状部材が混練物に差し込まれた状態で、棒状部材の差し込み方向に沿った混練物の外周面から25mm以上内側の領域に各棒状部材が差し込まれることが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、一対の棒状部材を引き抜くことで形成される一対の挿入孔は、供試体における挿入孔の深さ方向に沿った外周面から25mm以上内側の領域に形成される。これにより、斯かる領域に一対の電極を配置することができるため、供試体の外周面から内部へ向かって進行する乾燥の影響を受けることなく、一対の電極間の電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる。
【0015】
前記硬化体形成工程では、各棒状部材が混練物に差し込まれた状態で、棒状部材の差し込み方向に位置する型枠内の混練物の両端部から60mm以上内側の領域に、各棒状部材の他端部が位置するように構成されることが好ましい。
【0016】
斯かる構成によれば、棒状部材の差し込み方向に位置する型枠内の混練物の両端面から60mm以上内側の領域に、各棒状部材の他端部が位置することで、供試体の表面から十分に離間した位置に電極を挿入可能な挿入孔を形成することができる。このため、供試体の両端面(型枠内の混練物の両端面に想到する両端面)から内部へ向かって進行する乾燥の影響を受けることなく、一対の電極間の電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる。
【0017】
本発明に係る供試体の測定方法は、上記何れかの供試体の作製方法によって作製される供試体に対して、内部の電気抵抗に基づく測定を行う供試体の測定方法であって、引き抜き工程の直後に一対の挿入孔のそれぞれに一対の電極のそれぞれを挿入し、一対の電極間における供試体の電気抵抗に基づく測定を行う第一測定工程を備えることを特徴とする。
【0018】
斯かる構成によれば、一対の挿入孔は、硬化体を電気ドリルで穿孔して形成されたものではないため、電気ドリルの刃の回転による摩擦や気流の影響によって、挿入孔の内面が乾燥することがない。また、穿孔による粉塵が生じないため、挿入孔内の粉塵を除去するべく挿入孔内に気体を噴射したり、挿入孔内から粉塵を吸い上げたりする必要がない。このため、粉塵を除去する際の気流によって挿入孔の内面が乾燥することもない。
【0019】
また、電気ドリルの刃の回転や粉塵の除去による気流によって、供試体の内部と挿入孔の内面との間に温度差が生じることもない。更に、硬化前の混練物に棒状部材が差し込まれるため、電極ドリルの刃のように、棒状部材が粗骨材を貫通することがない。このため、一対の電極のそれぞれを一対の挿入孔のそれぞれに挿入した際に、挿入孔内に粗骨材が露出して電極と接触することがない。
【0020】
これにより、引き抜き工程の直後に一対の電極のそれぞれを一対の挿入孔のそれぞれに挿入し、一対の電極間の電気抵抗に基づく測定を行うことで、挿入孔の内面の状態(乾燥状態、温度状態)や粗骨材と電極との接触を考慮する必要がなく、正確な(真の測定結果により近い)測定結果を得ることができる。
【0021】
前記第一測定工程では、一対の電極を備える電気抵抗式水分計を用いて、一対の電極間における供試体の電気抵抗に基づくカウント値を測定するように構成されており、
第一測定工程後、供試体内におけるカウント値を測定した位置の周辺の部位から試験片を採取し、該試験片の含水率を測定する第二測定工程を更に備えることが好ましい。
【0022】
斯かる構成によれば、挿入孔の内面の状態(乾燥状態、温度状態)や電極と粗骨材との接触を考慮することなく、正確な(真の測定結果により近い)カウント値を測定することができる。これにより、該カウント値および第二測定工程の測定結果からカウント値に対応する含水率を把握することができるため、他の供試体やコンクリート構造物のカウント値を測定することで、該カウント値から含水率を推定することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる供試体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る供試体の作製方法の一実施形態における硬化体形成工程において、型枠に充填された混練物に棒状部材を差し込む際の斜視図。
【
図2】(a)は、同実施形態における硬化体形成工程で、混練物に棒状部材が差し込まれた状態を上方から見た図、(b)は、同実施形態における硬化体形成工程における(a)のI−I断面図。
【
図4】実施例におけるカウント数と含水率の温度毎の近似を示したグラフ。
【
図5】実施例の近似式における各係数に関する温度の二次式による近似を示したグラフ。
【
図6】実施例の近似式において温度毎のカウント数と含水率との関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について
図1〜3を参照しながら説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0026】
本実施形態に係る供試体の作製方法は、電気抵抗に基づく測定の対象となる供試体を作製するものである。具体的には、コンクリートと水とが混練されてなる混練物を形成する混練工程と、複数の棒状部材を混練物に差し込んだ状態で該混練物を硬化させて硬化体を形成する硬化体形成工程と、該硬化体から少なくとも一対の棒状部材を引き抜く引き抜き工程とを備える。
【0027】
前記混練工程では、セメントと粗骨材とから構成されるコンクリートと所定量の水とが混練されて混練物が形成される。なお、セメントおよび粗骨材と共に、細骨材、混和剤(減水剤等)、混和材等が混練されてもよい。
【0028】
前記硬化体形成工程では、
図1に示すように、混練工程で得られる混練物Aが円筒状の内部空間を備える型枠X内に充填される。そして、3本の棒状部材Y,Y,Yが型枠Xの軸方向に沿って混練物Aに差し込まれる。型枠Xのサイズとしては、特に限定されるものではなく、例えば、φ80mm以上120mm以下であり、高さ150mm以上220mm以下の内部空間を備える型枠Xを用いることができる。
【0029】
各棒状部材Yの差し込み位置としては、特に限定されるものではないが、例えば、
図2(a)に示すように、棒状部材Yの差し込み方向に沿った混練物Aの外周面A1から25mm以上内側の領域R1であることが好ましい。また、3本の棒状部材Y,Y,Yは、混練物Aに差し込まれた状態で、それぞれが等間隔に配置される(即ち、正三角形状に配置される)ことが好ましい。隣り合う棒状部材Y,Yの間隔としては、特に限定されるものではなく、例えば、20mm以上40mm以下であることが好ましい。
【0030】
また、各棒状部材Yは、
図2(b)に示すように、混練物Aに差し込まれた状態で、一端部Y1が混練物Aから突出した状態となる。各棒状部材Yの一端部Y1の混練物Aからの突出量としては、特に限定されるものではないが、該一端部Y1をペンチ等の工具で把持可能な程度であることが好ましい。また、各棒状部材Yが混練物Aに差し込まれた状態では、各棒状部材Yの他端部Y2は、棒状部材Yの差し込み方向に位置する混練物Aの両端面A2,A2から60mm以上内側の領域R2に位置することが好ましい。
【0031】
そして、三本の棒状部材Y,Y,Yが差し込まれた状態で混練物Aが硬化することで硬化体Bが形成される。
【0032】
前記引き抜き工程では、硬化体Bから突出した各棒状部材Yの一端部Y1が把持されて硬化体Bから棒状部材Yが引き抜かれる。これにより、
図3に示すように、供試体Cが形成される。該供試体Cは、各棒状部材Yが引き抜かれた位置に、電極を挿入可能な挿入孔C1を備える。該挿入孔C1は、供試体Cにおける挿入孔C1の深さ方向に沿った外周面C2から25mm以上内側の領域(以下、内側領域とも記す)R3に形成されることが好ましい。また、挿入孔C1の底部は、供試体Cにおける挿入孔C1の深さ方向に位置する両端面C3,C3から60mm以上内側の領域(以下、深さ領域とも記す)R4に形成されることが好ましい。
【0033】
次に、上記の方法で作製される供試体Cに対して電気抵抗に基づく測定を行う測定方法について説明する。具体的には、斯かる測定方法は、一対の電極を備えた電気抵抗式水分計を用いて供試体Cのカウント値を測定する第一測定工程と、供試体Cの含水率を測定する第二測定工程とを備える。
【0034】
第一測定工程では、供試体Cが形成された直後(即ち、三本の棒状部材Y,Y,Yが引き抜かれた直後)に、一対の挿入孔C1,C1のそれぞれに一対の電極のそれぞれが挿入される。各電極の挿入位置としては、特に限定されるものではないが、供試体Cの深さ領域R4内であることが好ましい。これにより、一対の電極間の電気抵抗に基づくカウント値が測定される。
【0035】
第二測定工程では、第一測定工程後の供試体Cにおいて、内側領域R3内および深さ領域R4内から試験片が採取される。具体的には、供試体Cを割裂し、内側領域R3内および深さ領域R4内における一対の電極間の部位からたがね等を用いて試験片が採取される。そして、該試験片の含水率の測定が行われる。含水率の測定方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法が挙げられる。具体的には、「コンクリート試料中の自由水の定量方法」の105℃乾燥法(社団法人 日本コンクリート工学協会(現 公益社団法人 日本コンクリート工学会)編 コンクリートの試験・分析マニュアル,p.56)に準じて、採取直後の試験片の重量と、105℃の温度で乾燥させて恒量となった後の試験片の重量とを測定する。そして、乾燥前後の試験片の重量差を採取直後の試験片に含有されていた水分の重量とし、採取直後の試験片の重量に対する水分重量の割合を含水率とすることができる。
【0036】
そして、含水率の異なる(例えば、乾燥状態のことなる)複数の供試体Cに対して第一測定工程および第二測定工程を行うことで、含水率の変化に対するカウント値の変化を把握することが可能となる。これにより、カウント値に基づいて含水率を推定することが可能となる。
【0037】
以上のように、本発明に係る供試体の作製方法によれば、電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる供試体を作製することができ、本発明に係る供試体の測定方法によれば、電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる。
【0038】
即ち、各棒状部材Yの一端部Y1が混練物Aから突出した状態となる。このため、硬化体Bが形成された状態で、棒状部材Yの一端部Y1を把持して硬化体Bから引き抜くことで(引き抜き工程)、硬化体Bには、一対の電極のそれぞれを挿入可能な一対の挿入孔C1,C1が形成される。これにより、一対の挿入孔C1,C1を備えた供試体Cが形成される。この一対の挿入孔C1,C1は、硬化体Bを電気ドリルで穿孔して形成されたものではないため、電気ドリルの刃の回転による摩擦や気流の影響によって、挿入孔C1の内面が乾燥することがない。また、穿孔による粉塵が生じないため、挿入孔C1内の粉塵を除去するべく挿入孔内に気体を噴射したり、挿入孔C1内から粉塵を吸い上げたりする必要がない。このため、粉塵を除去する際の気流によって挿入孔C1の内面が乾燥することもない。
【0039】
また、電気ドリルの刃の回転や粉塵の除去による気流によって、供試体Cの内部と挿入孔C1の内面との間に温度差が生じることもない。更に、硬化前の混練物Aに棒状部材Yが差し込まれるため、電極ドリルの刃のように、棒状部材Yが粗骨材を貫通することがない。このため、一対の電極のそれぞれを一対の挿入孔C1,C1のそれぞれに挿入した際に、挿入孔C1内に粗骨材が露出して電極と接触することがない。
【0040】
これにより、一対の電極のそれぞれを一対の挿入孔C1,C1のそれぞれに挿入し、一対の電極間の電気抵抗に基づく測定を行う際に、挿入孔の内面の状態(乾燥状態、温度状態)や粗骨材と電極との接触を考慮する必要がなく、正確な(真の測定結果により近い)測定結果を得ることができる。
【0041】
また、一対の棒状部材Y,Yを引き抜くことで形成される一対の挿入孔C1,C1は、挿入孔C1の深さ方向に沿った供試体Cの外周面C2から25mm以上内側の領域R3に形成される。これにより、斯かる領域に一対の電極を配置することができるため、供試体Cの外周面C2から内部へ向かって進行する乾燥の影響を受けることなく、一対の電極間の電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる。
【0042】
また、棒状部材Yの差し込み方向に位置する混練物Aの両端面C3,C3から60mm以上内側の領域R4に、各棒状部材Yの他端部Y2が位置することで、供試体Cの表面から十分に離間した位置に電極を挿入可能な挿入孔C1を形成することができる。このため、供試体Cの両端面(型枠内の混練物Aの両端面に想到する両端面)C3,C3から内部へ向かって進行する乾燥の影響を受けることなく、一対の電極間の電気抵抗に基づく測定を正確に行うことができる。
【0043】
なお、本発明に係る供試体の作製方法および供試体の測定方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、円柱状の内部空間を備える型枠が用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば、立方体状や直方体状の内部空間を備える型枠であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、電気抵抗式水分計を用いてカウント値が測定され、供試体の含水率との関係が把握されるように構成されているが、供試体の電気抵抗に基づく測定であれば、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の試験例について説明する。
【0047】
1.使用材料および使用設備
・型枠:φ100mm×高さ200mmの円柱状の内部空間を備えるもの
・棒状部材:φ6mm×長さ150mm ステンレス製(SUS304)
・C:普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm
3 住友大阪セメント社製)
・S1:細骨材(砕砂 密度2.64g/cm
3)
・S2:細骨材(砕砂 密度2.59g/cm
3)
・G:粗骨材(砕石 密度:2.63g/cm
3)
・AD:AE減水剤(ポゾリス15L BASFポゾリス社製)
・AE:消泡剤(マイクロエア40 BASFポゾリス社製)
・W:上水道水(密度:1.00g/cm
3)
・NaCl
【0048】
2.混練工程
上記の材料を下記表1の配合で混練して混練物を形成した。該混練物の性状については、下記表2に示す。また、該混練物を硬化させて形成される硬化体の圧縮強度(材齢28日)をJIS A 1108に準拠して測定した。測定結果については、下記表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
3.硬化体形成工程
上記の混練物を20℃の環境下で上記の型枠の内部空間を満たすように充填した。そして、型枠内の混練物に上記の棒状部材(三本)を差し込んだ。この際、三本の棒状部材は、中心間距離が30mmとなるように正三角形状に配置され、該正三角形の中心が型枠内の混練物の軸線上に位置するようにした。また、各棒状部材の差し込み深さは、100mmとした。そして、型枠の開口部をビニールで封緘した状態で、混練物を所定温度で養生(乾燥)させて硬化体を得た。養生(乾燥)の温度および期間は、下記表3に示す。なお、養生(乾燥)期間が24時間を経過した時点で、脱型して養生(乾燥)を行った。
【0052】
【表3】
【0053】
4.引き抜き工程
上記の各養生(乾燥)温度において、養生(乾燥)期間毎の各硬化体から三本の棒状部材を引き抜いて、各養生(乾燥)温度における養生(乾燥)期間毎の供試体を形成した。
【0054】
5.温度測定工程
引き抜き工程直後に、各供試体の各挿入孔内の温度を測定した。各挿入孔内の温度(即ち、供試体の温度)は、養生(乾燥)温度と略同一であった。
【0055】
6.第一測定工程(カウント値の測定)
引き抜き工程直後に、各供試体の三つの挿入孔から選択した2つ(一対)の挿入孔のそれぞれに電気抵抗式水分計の一対の電極のそれぞれを挿入してカウント値を測定した。測定箇所としては、挿入孔の深さの60mm〜100mmの範囲で、深さ方向に10mm間隔とした。また、上記のカウント値の測定を他の対の挿入孔においても行った。そして、測定されたカウント値の平均値を算出してカウント値とした。
【0056】
7.第二測定工程(含水率の測定)
第一測定工程後の各供試体を割裂し、挿入孔の深さ方向の60mm〜100mmの範囲から試験片を採取した。そして、該試験片の重量(W)を測定した後、105℃で乾燥した。該乾燥は、試験片の経時的な質量変動が無くなるまで行った。乾燥後の試験片の重量(W
0)を測定した。そして、下記(1)式により、含水率(M)を算出した。
M={(W−W
0)/W}×100・・・(1)
【0057】
8.近似式の作成
上記の第一測定工程および第二測定工程での、カウント値と含水率とを下記表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
そして、供試体の温度毎にカウント値に対する含水率をグラフにプロットし、種々の方法で近似式を作成する。例えば、本試験例では、
図4に示すように、供試体の温度毎にカウント値(カウント数)に対する含水率をグラフにプロットし、供試体の温度毎に試行的に近似式(下記(2)式)を得た。
y=y
0+A
1×exp((x−x
0)/t
1)・・・(2)
【0060】
そして、
図5に示すように、上記の近似式(2)の各係数を温度の二次式で近似することによって、温度毎の係数を得た。温度毎の係数は、下記表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
そして、得られた近似式(2)および温度毎の係数を用いて、
図6に示すようなグラフを作成することで、カウント値から含水率を推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
A…混練物、B…硬化体、C…供試体、C1…挿入孔、R3…内側領域、R4…深さ領域、X…型枠、Y…棒状部材