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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194517(P2015-194517A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20151009BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20151009BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20151009BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20151009BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20151009BHJP
【FI】
   G02F1/035
   G02B6/12 J
   G02B6/12 B
   G02B6/42
   H01L31/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-71019(P2014-71019)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
2K102
5F088
【Fターム(参考)】
2H137AB12
2H137AC06
2H137BA52
2H137BA53
2H137BA54
2H137BB14
2H137BB17
2H137BB25
2H137BB31
2H137BC51
2H137CA34
2H137CA71
2H137CA72
2H137CA74
2H147AB02
2H147AB06
2H147BA05
2H147BA09
2H147BE01
2H147BG01
2H147BG11
2H147CA13
2H147CD02
2H147CD09
2H147EA05A
2H147EA05B
2H147EA05C
2H147EA06A
2H147EA06B
2H147EA06C
2H147EA10D
2H147EA12C
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147EA37A
2H147FA20
2H147FB12
2H147FD15
2H147FD20
2H147GA19
2H147GA22
2K102AA21
2K102BA01
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102BD09
2K102CA09
2K102CA18
2K102DA04
2K102DB04
2K102DC04
2K102DD04
2K102DD05
2K102EA02
2K102EA25
2K102EB02
2K102EB22
5F088AA01
5F088AB07
5F088BA02
5F088BA20
5F088DA01
5F088GA05
5F088HA09
5F088JA14
(57)【要約】
【課題】
光変調器を構成する基板上に受光素子を配置し、マッハツェンダー型光導波路の合波部からの2つの放射光を同時に受光モニタする場合でも、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することが可能な光変調器を提供すること。
【解決手段】
基板1と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極(不図示)とを有する光変調器において、受光素子5が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路24を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、該受光素子には、一つの受光素子基板55に2つ以上の受光部(51,52)が離間して形成されていることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する光変調器において、
受光素子が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、
該受光素子には、一つの受光素子基板に2つ以上の受光部が離間して形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、該出力導波路と該受光素子との間には低屈折率構造が形成され、該基板の該放射光の伝搬している部分と該受光素子との間には高屈折率構造が形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項2に記載の光変調器において、該低屈折率構造を挟む2つの該高屈折率構造の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1に記載の光変調器において、該基板の該放射光が伝搬している位置に、溝又は反射部材を配置し、該放射光を該受光素子に導くことを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項4に記載の光変調器において、該出力導波路を挟む2つの該溝又は2つの該反射部材の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光変調器において、該基板には、該放射光を導波する放射光用導波路が形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光変調器において、該基板の厚みは20μm以下であることを特徴とする光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関するものであり、特に、マッハツェンダー型光導波路を有する光変調器において、マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される放射光を受光素子で検出する構成を有する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、マッハツェンダー型光導波路を有する強度変調器など各種の光変調器が用いられている。マッハツェンダー型光導波路から出力される光の強度変化は、変調電極に印加される電圧に対して正弦関数的な特性を示す。光変調器の用途に応じて、最適な出力光の強度を得るため、変調電極に印加される変調信号は、適切な動作バイアス点に設定することが必要となる。
【0003】
このため、従来では、光変調器から出力される信号光の一部、あるいはマッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される放射光を、モニタ光として、光検出器のような受光素子で検出し、光変調器の出力光の強度の状態をモニタすることが行われている。そして、受光素子の検出値(モニタ出力)に基づき、変調電極に印加される変調信号の動作バイアス点を調整(バイアス制御)している。
【0004】
特許文献1には、図1に示すような、基板1の外部に配置された、受光素子5で放射光をモニタする光変調器を開示している。具体的には、電気光学効果を有する基板1には、マッハツェンダー型光導波路(21〜24)を含む光導波路2が形成されている。マッハツェンダー型光導波路を構成する2つの分岐導波路に沿って、光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極が設けられているが、図面では省略されている。出力導波路24には、光ファイバ4が接続され、出射光を外部に導出するよう構成されている。
【0005】
マッハツェンダー型光導波路の合波部23から放出される2つの放射光(R1,R2)は、基板1の端部に光ファイバ4を接続するための補強用キャピラリ3の内部を通過し、受光素子5に導入される。特に、図1に示すように、2つの放射光を一つの受光素子で受光するよう構成することで、2つの放射光を合成した状態でモニタでき、モニタ光と出力光Sとの位相差を補償することが可能となる。
【0006】
モニタ光と出力光の位相差を補償する精度を高めるには、2つの放射光を受光する光量比を最適に設定することが不可欠である。このため、図1のキャピラリ3と受光素子5との間には何らかの光量比調整手段が設けられる。
【0007】
特許文献2には、図2及び3に示すように、光変調器を構成する基板1上に受光素子5を配置する構成が開示されている。具体的には、基板1には、マッハツェンダー型光導波路を含む光導波路2や、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極(不図示)が形成されている。受光素子5は、マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路24を跨ぐように配置されている。
【0008】
図2では、受光素子5は、マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を共に受光するよう構成している。放射光は基板1の内部を伝搬するが、放射光の伝搬する位置を精確にコントロールするために、放射光を導波する放射光用導波路(25,26)を設けることが可能である。受光素子5は、2つの放射光用導波路(25,26)にかかるように配置されている。
【0009】
図3は、図2の一点鎖線X−X’における断面図である。放射光用導波路(25,26)に接触又は近接して高屈折率膜(40、41)を配置することにより、放射光の一部(R1,R2)は受光素子5の方に吸い上げられ、受光部50に入射する。
【0010】
図2及び3の構成では、2つの放射光を同時に受光することができ、図1の従来例で説明したように、2つの放射光を同時に受光し、両者の受光強度を調整することで、放射光を用いたモニタ光と出力導波路から出射される出力光との間の位相差を補償し、良好なモニタ特性を得ることができる。
【0011】
特許文献1のように、基板1の外部に受光素子5を配置する場合には、同一基板上に複数のマッハツェンダー型光導波路を集積する場合や、基板の端面から離れた位置にマッハツェンダー型光導波路が形成され、当該マッハツェンダー型光導波路とキャピラリとの間に他の光導波路が存在する場合などでは、着目する光波のみを受光素子に導くことは極めて困難となる。
【0012】
これに対し、特許文献2のように、基板1の表面に受光素子を配置する構成は、着目する光波を精確に受光できる利点がある。しかしながら、2つの放射光を同時に受光するためには、図3に示す2つの放射光用導波路(25,26)の間隔Wと同じ位か、それ以上に大きなサイズの受光面積を形成することが必要となる。受光部の面積の拡大は、その大きさに逆比例して、受光素子の周波数帯域が低下するという問題を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4977789号公報
【特許文献2】特開2013−80009号公報
【特許文献3】特願2014−009554号(2014年1月22日出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、光変調器を構成する基板上に受光素子を配置し、マッハツェンダー型光導波路の合波部からの2つの放射光を同時に受光モニタする場合でも、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することが可能な光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は以下のような技術的特徴を有している。
(1) 基板と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する光変調器において、受光素子が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、該受光素子には、一つの受光素子基板に2つ以上の受光部が離間して形成されていることを特徴とする。
【0016】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、該出力導波路と該受光素子との間には低屈折率構造が形成され、該基板の該放射光の伝搬している部分と該受光素子との間には高屈折率構造が形成されていることを特徴とする。
【0017】
(3) 上記(2)に記載の光変調器において、該低屈折率構造を挟む2つの該高屈折率構造の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする。
【0018】
(4) 上記(1)に記載の光変調器において、該基板の該放射光が伝搬している位置に、溝又は反射部材を配置し、該放射光を該受光素子に導くことを特徴とする。
【0019】
(5) 上記(4)に記載の光変調器において、該出力導波路を挟む2つの該溝又は2つの該反射部材の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする。
【0020】
(6) 上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の光変調器において、該基板には、該放射光を導波する放射光用導波路が形成されていることを特徴とする。
【0021】
(7) 上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光変調器において、該基板の厚みは20μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光変調器は、 基板と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する光変調器において、受光素子が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、該受光素子には、一つの受光素子基板内に2つ以上の受光部が離間して形成されているため、一つの受光部の面積を従来より小さく設定することができ、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することが可能な光変調器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】特許文献1に記載された従来例であり、光変調器を構成する基板の外部に受光素子を配置した様子を示す図である。
図2】特許文献2に記載された従来例であり、光変調器を構成する基板上に受光素子を配置した様子を示す図である。
図3図2に示す一点鎖線X−X’における断面図を示す図である。
図4】本発明の光変調器に使用される受光素子の概略を示す図である。
図5図4の受光素子において、放射光用導波路に沿った方向の断面図であり、光波の伝播の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の光変調器について詳細に説明する。
本発明の光変調器は、図4に示すように、基板1と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極(不図示)とを有する光変調器において、受光素子5が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路24を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、該受光素子には、一つの受光素子基板55に2つ以上の受光部(51,52)が離間して形成されていることを特徴とする。なお、図4は、図3と同様に、出力導波路を跨ぐように配置された受光素子の断面図の概略を主に図示している。
【0025】
基板1としては、石英、半導体など光導波路を形成できる基板であれば良く、特に、電気光学効果を有する基板である、LiNbO,LiTaO又はPLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)のいずれかの単結晶が好適に利用可能である。
【0026】
特に、本発明に好適な基板は、基板の厚みが20μm以下のものである。このような薄板では、光波が基板内に閉じ込められ易く、光導波路を伝搬する光波と基板内を伝搬する光波の分離が難しい。このため、本発明の光変調器のように基板上に受光素子を配置することで、効率的に着目する光波を受光することが可能となる。しかも、基板内を伝搬する不要光も多くなることから、特許文献1又は2に示すように、2つの放射光を同時に受光することで、より精確なモニタ信号を得ることが可能となる。20μm以下の厚みの基板を使用するには、図4に示すように、基板1を機械的に補強する構成が必要であり、補強基板11を基板1に樹脂等の接着層10を介して接合している。
【0027】
基板に形成する光導波路は、例えば、LiNbO基板(LN基板)上にチタン(Ti)などの高屈折率物質を熱拡散することにより形成される。また、光導波路となる部分の両側に溝を形成したリブ型光導波路や光導波路部分を凸状としたリッジ型導波路も利用可能である。また、PLC等の異なる基板に光導波路を形成し、これらの基板を貼り合せ集積した光回路にも、本発明を適用することが可能である。
【0028】
変調電極は、信号電極や接地電極から構成され、基板表面に、Ti・Auの電極パターンを形成し、金メッキ方法などにより形成することが可能である。さらに、必要に応じて光導波路形成後の基板表面に誘電体SiO等のバッファ層を設けることも可能である。なお、基板(光導波路)内を伝搬する放射光を、受光素子側に導出する領域においては、バッファ層を形成すると、放射光を効率良く導出することが難しくなるため、当該領域にはバッファ層を形成しないことが好ましい。
【0029】
本発明の光変調器の特徴は、図4のように、光変調器に使用される受光素子には、一つの受光素子基板55に2つ以上の受光部(51,52)が離間して形成されていることである。これにより、1つの受光部の面積を低くすることができ、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することができる。
【0030】
各受光部は独立して放射光を受光するが、各受光部の配線を並列に接続することで、受光部からのモニタ信号を電気的に重畳し、実質的に2つの放射光を単一の受光部で同時に受光するのと同等の効果を得ることができる。その結果、周波数帯域を低下させず、2つの放射光を同時にモニタでき、モニタ光と出力導波路24を伝搬する出力光と間の位相差をより正確に補償することが可能となる。
【0031】
受光素子5としては、フォトダイオード(PD)が好適に使用できる。図4では、InPやGaAsの基板(受光素子基板)55の上側に、InGaAs(受光する光波の波長1550nmの場合)やGaAs(850nm)による受光層53を設け、当該受光層53に接するように2つの受光部(51,52)が独立して配置されている。各受光部(51,52)には、モニタ光として2つの放射光(R1,R2)が各々に入射される。
【0032】
図4では、2つの放射光を案内する放射光用導波路(25,26)に、放射光用導波路の屈折率より高い屈折率を持つ受光素子基板55を接触させ、放射光用導波路を伝搬する放射光を受光部(51,52)の方に吸い上げている。出力導波路24と基板55との間には、空気層などの空洞61が形成されている。
【0033】
受光部の配置位置は、図4のように導波路断面方向からみた場合は、放射光用導波路(モニタ用導波路)の直上に配置されていることが望ましい。これは、放射光用導波路から受光素子基板内に放射された光(エバネセント波)は、導波路断面内では、導波路基板の法線方向に放射され、また放射角度が法線を中心として対称だからである。
【0034】
また、導波光の進行方向に対しては、受光部の最適な位置はモニタ光の放射角度によって決まる。例えば受光素子基板の屈折率が3.16、導波路の実効屈折率を2.15とすると、放射角度は導波路基板の法線から約43度の方向となる。但し、受光素子基板内のモニタ光の多重反射を考慮した場合はこの限りではない。図5は、受光素子に対する、モニタ用導波路である放射光用導波路(25,26)に沿った方向の断面図であり、モニタ用導波路を伝搬する光波(矢印)の一部が、受光素子基板内に入射する様子を図示している。
【0035】
受光部の面積は、任意に設定することが可能であるが、導波路の断面方向については、受光部でのモニタ光のビーム幅程度に設定すれば良い。例えば、導波光の波長を1.55μm、導波路のモード径を10μm、受光素子基板の高さを150μmとすると、前述の屈折率条件のもとで、受光部におけるビームの幅は20μm程度となる。但し、受光素子の実装位置トレランスを考慮すると、受光部の幅は40〜80μm程度が望ましい。
【0036】
一方で、図5に示すように、導波路の進行方向については、モニタ光はほぼ一様な強度の平行ビームとなるため、受光部の幅に特段の制限はないが、PD作製の容易さから、正方形もしくは円形の受光部となることが望ましい。
【0037】
2つの受光部をワイヤーボンディングなどにより電気的に並列接続すれば、2つのモニタ信号は重畳され、出力光(メイン光)との位相差を打ち消すことが可能となる。この並列接続は、ワイヤーボンディング以外には、受光素子基板上でパターニングによる配線を形成することでも可能である。
【0038】
なお、受光部は2つに限定されるわけではなく、一つの放射光を受光する受光部を2つ以上の受光部に分割して構成することも可能である。一般に、受光部の面積が大きくなると、周波数帯域が低下するため、対応帯域を考慮して複数に分割することが好ましい。ただし、多くの受光部に分割することは、ワイヤーボンディング又は配線パターンを複雑化することになり、製造コストが高くなる原因となる。このため、一つの放射光に対して、受光部は1〜5の範囲に抑制することが好ましい。
【0039】
受光面積が少なくなると、逆に、感度が低下する。このため、本出願人が先に行った特許出願(特許文献3参照)で開示した、受光素子内の多重反射を用いる技術も本発明に組み合わせることは、大変有効である。ただし、放射光用導波路に対する受光素子の配置位置を微調整することで、2つの放射光の受光量のバランスを調整することが可能である。この調整を活かすには、多重反射した光波により、例えば、一方の放射光が、他方の放射光が入るべき受光部に必要以上に入射しないよう、反射を制御することが必要となる。
【0040】
受光素子5を構成する基板内で放射光を多重反射させるためには、光波が反射する場所に、誘電体多層膜や金属反射膜などの反射膜を配置したり、基板内で全反射させることが好ましい。例えば、埋込み電極を構成する金属膜の下面で反射させたり、基板の外周面の少なくとも一部に誘電体多層膜や金属膜を配置して、反射効率を上げることが可能である。しかも、誘電体多層膜や金属膜を利用することで、受光素子基板の表面状態(汚れ等)によらず安定した反射が可能となる。
【0041】
受光素子内にモニタすべき光波を導入するには、特許文献2にも開示されているように、光導波路等の光波を導波している箇所に、受光素子基板55を直接接触させる方法だけでなく、図3のように、光導波路25(26)等と受光素子基板55との間に高屈折率膜(40,41)を介在させる方法もある。この場合は、高屈折率膜の屈折率は、光導波路25(26)(または、光波を導波している基板1)の屈折率よりも高く、受光素子基板55の屈折率よりも低く設定することが必要である。このように、モニタすべき光波が伝搬している部分と受光素子との間には高屈折率構造(光波が伝搬している部分より高い屈折率を有する構造)を設け、他方、モニタすべきできない光波(受光素子への入射を抑制すべき光波)が伝搬している部分と受光素子との間には低屈折率構造(光波が伝搬している部分より低い屈折率を有する構造)を設けている。低屈折率構造としては、低屈折率膜を配置するだけでなく、空気層を介在させる構成であっても良い。
【0042】
また、特許文献2にも開示されているように、基板1(あるいは光導波路25等)に溝又は反射部材を配置して、モニタ光の一部を受光素子の方に導くことも可能である。
【0043】
図3又は4に示すように、低屈折率構造60(61)を挟む2つの高屈折率構造(40,41)を配置する場合には、該高屈折率構造の間隔Wは、出力導波路24を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることが好ましい。これは、出力導波路を伝搬する光波まで受光素子に吸い上げることを抑制するためである。また、基板1に溝や反射部材を配置して、モニタすべき光波を受光素子側に偏向させる場合も、同様に、出力導波路24を挟む2つの溝又は2つの反射部材の間隔Wは、出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることが好ましい。
【0044】
更に本発明の光変調器においても、特許文献2と同様に、受光素子5の基板1(又は光導波路25,26)に対する配置位置を調整することで、2つの放射光の受光量の比を調整することが可能となる。また、図2のように、放射光を導波する放射光用導波路(25,26)を設けることにより、放射光を受光素子5へ、より効率的に導くことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る光変調器によれば、光変調器を構成する基板上に受光素子を配置し、マッハツェンダー型光導波路の合波部からの2つの放射光を同時に受光モニタする場合でも、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することが可能な光変調器を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 光導波路
21 入力導波路
22 分岐導波路
23 合波部
24 出力導波路
25,26 放射光用導波路
3 キャピラリ
5 受光素子
50,51,52 受光部
55 受光素子基板
40,41 高屈折率構造
60,61 低屈折率構造
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2015年8月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する光変調器において、
受光素子が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、
該受光素子には、一つの受光素子基板に、各放射光に対応してつの受光部が離間して形成され、前記各受光部からのモニタ信号を電気的に重畳して出力することを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、該受光部の幅は40〜80μmであることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光変調器において、前記各受光部からのモニタ信号を電気的に重畳する手段は、前記各受光部の配線を並列に接続するものであることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、該出力導波路と該受光素子との間には、該出力導波路より低い屈折率を有する低屈折率構造が形成され、該基板の該放射光の伝搬している部分と該受光素子との間には、前記放射光の伝搬している部分より高い屈折率を有する高屈折率構造が形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項に記載の光変調器において、該低屈折率構造を挟む2つの該高屈折率構造の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、該基板の該放射光が伝搬している位置に、溝又は反射部材を配置し、該放射光を該受光素子に導くことを特徴とする光変調器。
【請求項7】
請求項に記載の光変調器において、該出力導波路を挟む2つの該溝又は2つの該反射部材の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする光変調器。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の光変調器において、該基板には、該放射光を導波する放射光用導波路が形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかに記載の光変調器において、該基板の厚みは20μm以下であることを特徴とする光変調器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は以下のような技術的特徴を有している。
(1) 基板と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する光変調器において、受光素子が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、該受光素子には、一つの受光素子基板に、各放射光に対応してつの受光部が離間して形成され、前記各受光部からのモニタ信号を電気的に重畳して出力することを特徴とする。
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、該受光部の幅は40〜80μmであることを特徴とする。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、前記各受光部からのモニタ信号を電気的に重畳する手段は、前記各受光部の配線を並列に接続するものであることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、該出力導波路と該受光素子との間には、該出力導波路より低い屈折率を有する低屈折率構造が形成され、該基板の該放射光の伝搬している部分と該受光素子との間には、前記放射光の伝搬している部分より高い屈折率を有する高屈折率構造が形成されていることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(5) 上記(4)に記載の光変調器において、該低屈折率構造を挟む2つの該高屈折率構造の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
(6) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、該基板の該放射光が伝搬している位置に、溝又は反射部材を配置し、該放射光を該受光素子に導くことを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
(7) 上記(6)に記載の光変調器において、該出力導波路を挟む2つの該溝又は2つの該反射部材の間隔は、該出力導波路を伝搬する光波のモード径の2倍以上であることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
(8) 上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の光変調器において、該基板には、該放射光を導波する放射光用導波路が形成されていることを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
(9) 上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の光変調器において、該基板の厚みは20μm以下であることを特徴とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明の光変調器は、基板と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する光変調器において、受光素子が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、該受光素子には、一つの受光素子基板に、各放射光に対応してつの受光部が離間して形成され、前記各受光部からのモニタ信号を電気的に重畳して出力するため、一つの受光部の面積を従来より小さく設定することができ、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することが可能な光変調器を提供することができる。