特開2015-195768(P2015-195768A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-195768(P2015-195768A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】細胞培養プレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-76066(P2014-76066)
(22)【出願日】2014年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】川北 展史
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB01
4B029GA03
(57)【要約】
【課題】複数のウェルを有する細胞培養プレートを射出成型法により製造する方法において、高い平坦性を実現する手法を提供する。
【解決手段】複数のウェルが配置される平面を4象限に分割したときの各象限で等価な位置に、複数のピンゲートのうちの少なくとも4つが配置された金型1を用いて、細胞培養プレートを製造する。少なくとも4つのピンゲートを各象限で等価に配置することにより、製造された細胞培養プレートの平坦性を向上させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルが配置される平面を4象限に分割したときの各象限で等価な位置に、複数のピンゲートのうちの少なくとも4つが配置された金型を用いて、細胞培養プレートを製造する細胞培養プレートの製造方法。
【請求項2】
前記複数のウェルが貫通孔である請求項1記載の細胞培養プレートの製造方法。
【請求項3】
前記各象限が、配置される前記複数のウェルの面積を等しくする請求項1または2記載に細胞培養プレートの製造方法。
【請求項4】
4つのピンゲートが、前記平面の中心から、前記各象限の長辺に対して5%から63%、かつ、前記各象限の短辺に対して7%から89%の範囲に配置される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の細胞培養プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞培養プレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養に関連して、多数の方法及び系が、化学的、生物化学的及び/又は生物学的評価を行うために開発されてきた。これらの方法及び系は、医療的診断、食品及び飲料品試験、環境モニタリング、製造品質管理、薬剤発見及び基礎的科学研究を含む種々の適用において重要である。加えて、これらの方法及び系において、マルチウェルを有する細胞培養プレートが用いられている。マルチウェルを有する細胞培養プレートによる評価においては、プレート全体の「平坦度」が重要とされている。その理由は、細胞培養プレートのウェル中の、またはウェルからのシグナル、例えば放射活性、蛍光、化学発光及び/又は光学的吸光度などの検出が、高い精密度及び正確度でおこなわれ得ることを確保するためである。プレートの底表面に複数の浅い「偽(mock)」ウェルを備えることにより、平坦度を有するマルチウェル細胞培養プレートが得られており、同マルチウェル細胞培養プレートは、約80μmのウェル底平坦度を有するとされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−543048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチウェルを有する細胞培養プレートの平坦性は、高ければ高いほど各種検出がより高い精度かつ正確度で行われ得る。特に、光学顕微鏡観察のおける焦点合わせを考慮した場合には、ウェル毎の焦点合わせが不要でより早く的確に観察できることが重要である。その観察性の観点から、数十μmオーダーのより平坦性の高いプレートの取得方法が求められている。前述の特許文献1は、細胞培養プレートの形状に着目した平坦性向上へのアプローチの一例である。一方、平坦性は、製品形状を具現化する射出成形法によっても高めることが可能である。しかしながら、特許文献1は、射出成型法による平坦性向上へのアプローチについて開示していない。
発明者らは、射出成型法によるアプローチによって、特許文献1よりも高い平坦性を実現する手法を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の細胞培養プレートの製造方法の一態様は、複数のウェルが配置される平面を4象限に分割したときの各象限で等価な位置に、複数のピンゲートのうちの少なくとも4つが配置された金型を用いて、細胞培養プレートを製造する。発明者らは、少なくとも4つのピンゲートを各象限で等価に配置することにより、製造された細胞培養プレートの平坦性が向上することを発見した。この製造方法を用いることにより、従来の製造方法に比べ平坦性の高い細胞培養プレートを、射出成形法で製造することができる。また、このような平坦性の高い細胞培養プレートを、上述したような方法及び系に適用すると、観察の操作性や精度を向上させることが可能になる。
【0006】
また、本発明にかかる細胞培養プレートの一態様において、複数のウェルが貫通孔であってもよい。細胞培養プレートが複数のウェルが貫通孔である場合には、複数のウェルが貫通孔でない場合に比べて、細胞培養プレートに生じる反りの影響が大きい。本願発明の製造方法の一態様を適用することにより、複数のウェルが貫通孔であっても、製造される細胞培養プレートの平坦性を従来の製造方法に比べ向上させることができる。加えて、各象限に配置される複数のウェルの面積を等しくすることが好ましい。穴または孔として形成されるウェルの面積を各象限で同じすると、成形品へのウェル形状の影響が各象限で同様になるため、各象限に生じる反りを4つの象限間で一様にすることができる。さらに加えて、4つのピンゲートが、平面の中心から、各象限の長辺に対して5%から63%、かつ、各象限の短辺に対して7%から89%の範囲に配置されることが好ましい。発明者らは、シミュレーション結果に基づいて、この範囲にピンゲートを配置することにより、細胞培養プレートの反りが小さくなることを発見した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、複数のウェルを有する細胞培養プレートを射出成形法により製造する方法において、高い平坦性を実現する手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1にかかる細胞培養プレートを成形する金型の一例を示す図である。
図2】従来の細胞培養プレートを成形する金型の一例を示す図である。
図3】細胞培養プレートに配置するピンゲートの位置を示す図である。
図4】細胞培養プレートの予測実反り最大値(シミュレーション結果)を示すグラフである。
図5】細胞培養プレートの長辺方向とZ軸方向との反り量(シミュレーション結果)の関係を示すグラフである。
図6】細胞培養プレートの短辺方向とZ軸方向との反り量(シミュレーション結果)の関係を示すグラフである。
図7】各象限において、ピンゲートの配置に好ましい領域を示す図である。
図8】実施例1の金型の構成を示す概略図である。
図9】実施例2の金型の構成を示す概略図である。
図10】実施例3の金型の構成を示す概略図である。
図11】実施例4の金型の構成を示す概略図である。
図12】比較例1の金型の構成を示す概略図である。
図13】比較例2の金型の構成を示す概略図である。
図14】実施例及び比較例のシミュレーション結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0010】
一実施形態に係る細胞培養プレートの製造方法は、射出成形法に適用され、ゲート方式としてピンゲートを複数配置した金型を用いる。金型は、複数のウェルが形成(配置)される平面(以降、適宜「ウェル形成面」と記載する)を4象限に分割したときの各象限で等価な位置に、複数のピンゲートのうちの少なくとも4つが配置される。いいかえると、一つの象限のピンゲートの位置を特定すると、他の象限のピンゲートの位置も、特定した位置と等価な位置に決定する。そして、金型へ複数のピンゲートから樹脂が供給され、成形品である細胞培養プレートを製造する。
【0011】
以降の説明では以下の用語を用いる。
「ウェル形成面」は、細胞培養プレートにおいて、複数のウェルが配置される面であり、「表面」または「裏面」のいずれかが存在する。表面は、細胞を培養するときに上側になる面であり、裏面は、表面に対向する面である。以降の説明では、表面または裏面のいずれでもよい場合には、「ウェル形成面」と記載し、二つの面を区別する場合には、「表面」または「裏面」と記載する。また、以下の説明では、細胞培養プレートのウェル形成面以外の面を、「側面」または「側壁」と記載する。
「4象限」は、交点で直交する直線によりウェル形成面を4領域に等分した4つの領域であり、第1象限から第4象限からなる。
「ウェル形成面の中心」は、直交する直線によりウェル形成面を四等分したときに、二つの直線が交わる点をいう。ウェル形成面の中心は、成形品の型となる金型の中心でもあり、細胞培養プレートの中心でもある。
以下、図面を参照して実施形態を詳述する。
【0012】
実施形態1.
図1に実施形態1の金型の一例を示す。本実施形態で用いる金型1は、成形品形成部11とランナー・ゲート部12とを少なくとも備える。説明を容易にするため、図1に示す金型1は、本実施形態の説明に必要な構成を示し、他の構成については省略している。
成形品形成部11は、溶解した樹脂を充填し、細胞培養プレートの成形品(製品)が製作されるキャビティに相当する。キャビティに溶解した樹脂(材料)が充填されると、細胞培養プレートの成形品(製品)が作製される。
ランナー・ゲート部12は、ランナーとゲートからなり、ゲートの形状としてピンゲート(ピンポイントゲート)が採用され、先端にピンゲートが形成されたランナーにより構成される。ランナー・ゲート部12は、溶解した樹脂を成形品形成部11へ供給する。図1では、ランナーとピンゲートとを区別して明示していないが、ピンゲートはランナー・ゲート部12が成形品形成部11と連結する4つの部分に配置される。
なお、本実施形態では、ピンゲートは、成形品に大きな残留歪みを与えるほど圧力が直接伝達しないものであればよく、一般的なピンゲート方式を適用することができる。ピンゲート方式についての詳細な説明を省略する。
加えて、図1に示すランナー・ゲート部12は、ピンゲートが成形品の裏側(裏面)から樹脂を供給するように配置される。本実施形態では、金型の裏側になる面に複数のピンゲートを配置する態様を説明するが、成形品の表側(表面)にピンゲートを配置する場合を排除するものではない。
また、実際には、ランナー・ゲート部12は、先端に向けて段階的に細くなっていく。しかし、本実施形態ではゲート位置が重要であるため、ランナー及びゲートそれぞれについての詳細な形状を表現していない。
【0013】
本実施形態では、ピンゲートがウェル形成面と連結する位置、言い換えると、ピンゲートから成形品形成部11のキャビティに樹脂が供給される位置が重要である。複数のピンゲート間隔は、樹脂の流動性を考慮して決定される。ランナー・ゲート部12は、成形品形成部11を4つの領域(第1象限から第4象限)に分割したときに、各象限に配置する4つのピンゲートが等価になるように、ピンゲート(ランナーとピンゲート)の位置を決定する。例えば、第1象限の中のどこがよいかを決定すると、他の象限においても、第1象限と等価な位置に配置する。言い換えると、中心から同じ距離、例えば二次元のX−Y座標で考えた場合、X、Yの座標の値の絶対値が同じになるように複数のピンゲートを配置する。後述する試験結果では、多点ピンゲートの数が4つの場合に好適な結果を得ることができた。
【0014】
本実施形態に係る細胞培養プレートの製造方法は、例えば、以下の工程を含む。
成形品において複数のウェルが配置されるウェル形成面へ、少なくとも4つのピンゲートを配置する位置を調整する工程。この工程では、ウェル形成面の中心を原点として4象限に分割したときに、すくなくとも4つのピンゲートを、各象限で等価な位置に配置するように調整する。
少なくとも4つのピンゲートを介して樹脂を供給する工程。
供給された樹脂を成形品へ成形する工程。
【0015】
次に、本実施形態の金型の特徴を、図2に一例として示す従来の金型と比較して説明する。
図2は従来の細胞培養プレートを成形する金型の一例を示す図である。金型9は、成形品形成部91とサイドゲート部92とを備える。
成形品形成部91は、図1の成形品形成部11と同様である。
サイドゲート部92は、ゲート形式としてサイドゲートを採用し、溶解した樹脂を成形品形成部91へ供給する。図2では、樹脂が供給されるランナーを明示していないが、サイドゲート部92に連結可能な位置から樹脂が供給されるように構成されればよい。
【0016】
細胞培養プレートは射出成形により製造されることが一般的であり、従来の金型の多くは成形品の側面から樹脂を充填するサイドゲートを採用している。サイドゲートでは金型を2プレートから構成される金型で作製可能であり、金型作製コストを抑えることが可能である。サイドゲート方式ではピンゲート方式と比較して、成形品におけるゲート跡が視認されにくく、外観品位が良好である。
例えば、特許文献1は、射出成形によりプレートを製造しているが、ゲート方式について開示していない。本実施形態では、より高い平坦性を有する細胞培養プレートを得るために、樹脂の充填位置を製品の裏面とし、ゲート方式を多点ピンゲート方式とした。
【0017】
図2に示す金型9は、樹脂の充填位置であるゲートが短辺サイドゲートであることから、成形品長手方向及び高さ方向に体積収縮率分布が生じて反りが発生すると推察できる。一方、本実施形態の金型1は、所定の間隔をもって、成形品の裏面になる位置に4つのピンゲートを配置することから、複数のピンゲートから金型内部に同時に樹脂を充填するように働く。これにより、成形品長手方向及び高さ方向の体積収縮率分布がより均一化して反りが低減されると推察する。反りの低減効果については、後述する試験結果で説明する。
加えて、本実施形態では、金型1内で成形品が成形され、金型1が開くと同時にゲート切断が可能であり、成形工程の簡略化が図れる。さらに加えて、ゲートの形状をピンゲートとすることにより、金型をコンパクトに設計することが可能であり、成形品製造に当たり、使用する樹脂量の削減も図ることができる。
【0018】
図2に示す従来技術では、ウェルプレートの反りを削減することが、根本的な課題となっていなかったことから、金型側面から樹脂を注入することで十分であった。これは、ウェルプレートの反りが、利用段階で問題になっていなかったという事情がある。そのため、この課題に着目する動機も生じなかった。
加えて、本願発明の一実施形態は、各ウェルが貫通孔である場合に特に有利な効果を奏し、その影響が大きい。その理由は、各ウェルに底がある場合(ウェルが穴の形状の場合)、反りが少なくなるからである。言い換えると、各ウェルの底に、ウェルと同じ樹脂で平面が形成されることになり、ウェルプレート全体が一つの平板になるため、ウェルプレート全体の反りが生じにくくなる。例えば、ウェルプレートは、実際には200μm程度の反り量が生じる。そのため、底がついているウェルプレートの場合、裏面が一様な平面であることから、この程度の反り量はウェルプレート全体への影響が小さくなる。一方、底がないウェルプレートの場合、ウェルプレートの表面及び裏面とも一様な平面となることなく、複数の開口部を有する面となる。そのため、表側または裏側のいずれかが平面であるウェルプレートに比べ、反りが生じやすくなる。
【0019】
例えば、貫通孔であるウェルの底に細胞培養のためのシート(マイクロウェル)を貼りあわせる場合には、反りが少ない方がよい。反りが少なくなることにより、マイクロウェル上で培養した細胞を観察することが容易になるという効果を奏する。特に、マイクロウェルで培養した細胞を顕微鏡観察するときに操作が容易になる。具体的には、例えば、焦点を合わせる回数を低減させるという有利な効果を奏する。また、播種された培養細胞の偏りが改善される結果、細胞の死滅の抑制に効果を奏する。
加えて、ウェルが貫通孔であり、かつ、マイクロウェルにパターンがある場合、ウェルプレートの裏面にマイクロウェルを貼る場合、ウェルプレートに反りがあると、精度よく接着するためには、接着方法などに制限が出てくると予測される。
これらの理由からもウェルプレートの反りが少ない方が好ましい。
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、従来の方法に比べより高い平坦性を備える細胞培養プレートを製造することができる。
【0020】
実施形態2.
実施形態1では、ランナー・ゲート部12が4つのピンゲートを備える態様を説明したが、ピンゲートを5つ以上備える場合であってもよい。例えば、ウェル形成面に配置する多点ピンゲートの数を2点、5点、8点、9点としても同様の高平坦性が得られる。この場合にも、各象限に配置されるピンゲートが、ウェル形成面の中心から等価な位置に配置される。例えば、奇数のピンゲートを配置する場合には、一つのピンゲートがウェル形成面の中心に配置される。
各象限においてピンゲートが等価となるように配置することによって、実施形態1と応用の効果を生じさせることが可能となる。
なお、上記各実施形態では、24穴ウェルプレートを一例として説明したが、ウェルの数はこれに限られるわけではない。ウェル数が多い場合にも反りの低減が可能になり細胞培養プレートの平坦性を向上させることができる。
【0021】
[試験結果]
樹脂の流動を解析するシミュレーションにより、本発明の一実施形態を考察した。
1.予測実反り最大値の試験
(1)試験条件
ピンゲートを配置する位置の違いにより、反りがどのように異なるかを樹脂流動解析の手法を用いて試験した。樹脂流動解析として、Autodesk Simulation Moldflow Insight 2013(オートデスク株式会社)を用いて実施した。本解析では、樹脂の充填・保圧及び反り解析手法を用いた。解析要素は3Dソリッド要素とした。樹脂は、東洋スチロール株式会社製ポリスチレンMT5Dとし、樹脂温度は220℃、金型温度は60℃とした。
細胞培養プレートは24穴ウェルプレートとし、ピンゲートを配置する位置の異なるモデルを用意した。ピンゲートを配置する位置を図3に示した。
図3に、細胞培養プレートに配置するピンゲートの位置を示す。ピンゲートは、各象限について等価な位置に配置するため、図3の右側に第1象限の配置を代表して示す。ピンゲートをテスト番号(Test No.)0から20に配置して試験を行う。第2象限から第4象限についても、第1象限と等価な位置に配置した。一つの象限のピンゲートの配置位置が特定すると、他の象限についてもピンゲートを等価な位置に配置するため、一意に決まることになる。
試験は、各象限において、テスト番号にピンゲートを配置した金型を用いる場合のシミュレーションを実施し、細胞培養プレートの実反り最大値を予測した。
製造する細胞培養プレートの大きさは、長辺が127mm、短辺が85mmとした。
【0022】
(2)試験結果
図4に、細胞培養プレートの予測実反り最大値を示すグラフを示す。図4の横軸にピンゲートを配置した位置を示すテスト番号を示し、縦軸に、長辺及び短辺の予測実反り最大値(マイクロメートル:μm)を示す。図4に示すように、テスト番号8,12,19において、予測実反り最大値が他の測定位置に比べ小さいと判定できる。また、テスト番号15,17が次に予測実反り最大値が小さいと判定できる。これらはいずれもウェル形成面の中心に比較的近い位置であるといえる。
次に、隣接するウェルの間のテスト番号8,7、15について、Z軸方向反り量と、長辺方向と短辺方向との関係を測定した結果を示す。テスト番号8,7、15はいずれも隣接するウェルの間であり、ウェル間の距離が他に比べ小さい位置に配置されている。
図5に、細胞培養プレートの長辺方向とZ軸方向との反り量の関係を示すグラフ、図6に、細胞培養プレートの短辺方向とZ軸方向との反り量の関係を示すグラフを示す。
図5の横軸は、細胞培養プレートの長辺の長さ0〜120mmであり、60mmの位置が細胞培養プレートの中心(ウェル形成面の中心)となる。図6の横軸は、短辺の長さ0〜60mmであり、30mmの位置が細胞培養プレートの中心(ウェル形成面の中心)となる。
【0023】
図5に示すように、テスト番号7の長辺方向のZ方向反り量は、細胞培養プレートの長辺方向の両端で2倍以上異なり、細胞培養プレートの両端で異なる反りが生じていると考えられる。テスト番号8、15の長辺方向では、細胞培養プレートの中心から概ね同様に反りが発生していると考えられる。図5を参照すると、長辺方向のZ軸方向反り量は、テスト番号8が小さく、続いてテスト番号15、7の順に小さくなっている。また、図6に示すように、短辺方向では、細胞培養プレートの中心から概ね同様に反りが発生していると考えられる。図6を参照すると、短辺方向のZ軸方向反り量は、テスト番号8が最も小さく、続いてテスト番号15、7の順に小さくなっている。
【0024】
図4乃至6に基づく記載から、ウェル形成面の中心からどの範囲の位置にピンゲートを配置することが好ましいかを検討した。その結果、ウェル形成面をX軸、Y軸を用いた座標(x、y)で表すと、細胞培養プレートの中心(0,0)から絶対値で(3,3)から(40,38)の矩形の範囲に配置することが好ましいことを発見した。図7に、各象限において、ピンゲートの配置に好ましい領域を示す。
この結果を、各象限の長辺及び短辺に対する割合で示すと以下の計算により算出できる。
各象限の長辺の長さは、原点から細胞培養プレート短辺までの距離である。従って、127mmを2で割った63.5mm(127/2=63.5)となる。
各象限の短辺の長さは、原点から細胞培養プレート長辺までの距離である。従って、85mmを2で割った42.5mm(85/2=42.5)となる。
上述した座標の割合を算出すると、各象限の長辺に対して、5〜63%(3/63.5〜40/63.5)、各象限の短辺に対して、7〜89%(3/42.5〜38/42.5)の範囲にピンゲートを配置すると、反りを低減することが可能になる。
シミュレーション結果によると、4つのピンゲートを、ウェル形成面の中心に近い位置に配置すると反り量が小さくなる結果が得られた。中でも隣接する二つのウェルの間にピンゲートを配置すると、反り量が小さい結果が出ている。反り量の観点から、テスト番号8、19が好ましいと考えられる。
【0025】
2.ピンゲートの数に基づく試験
ゲート方式の違いによる平坦性の検討として、Autodesk Simulation Moldflow Insight 2013(オートデスク株式会社)を用いた樹脂流動解析を実施した。本解析では、樹脂の充填・保圧及び反り解析手法を用いた。解析要素は3Dソリッド要素とした。樹脂は、東洋スチロール株式会社製ポリスチレンMT5Dとし、樹脂温度は220℃、金型温度は60℃とした。
ゲート方式の異なる金型を設計し、上述した条件の基に解析した。金型の解析モデルを図8〜13に示す。成形品の細胞培養プレートは、24穴ウェルプレートとし、ウェルが貫通孔であるものを用いた。また、細胞培養プレートの大きさは、長辺が127mm、短辺が85mmとした。成形品の細胞培養プレートの形状は実施例、比較例ともに同じものとした。ゲート方式についてピンゲート方式の4ケース、サイドゲート方式の2ケースを検討し、それぞれの反りについて比較した。
【0026】
説明を容易にするため、本発明の一実施形態(裏面多点ピンゲート方式のモデル)に基づいて設計した金型を実施例、従来モデルに基づいて設計した金型を比較例と記載する。図8〜11に実施例1〜4の金型1a〜1dを示す。図12、13に比較例1、2の金型9a、9bを示す。実施例1〜4の金型1a〜1dは、成形品形成部11a〜11dのウェル形成面の裏面に多点ピンゲート(ランナー・ゲート部12a〜12d)を配置する構成である。実施例1では、4つのピンゲートを配置し、実施例2では5つ、実施例3では8つ、実施例4では9つのピンゲートを配置した。比較例1、2は、金型9a、9bの成形品形成部91a、91bの側面にサイドゲート部92a、92bを配置した例である。比較例1では、成形品形成部の一つの側面にサイドゲートを配置し、図面の下側から樹脂を供給するように構成した。比較例2では、成形品形成部の対向する二つの側面にサイドゲートを配置した。比較例2では、各サイドゲートにおいて、3つの供給口から樹脂を供給する構成である。
【0027】
解析結果を図14に示す。従来モデルである比較例1(図12)及び比較例2(図13)に比べて、実施例(裏面多点ピンゲート方式)のモデルにおいて、反りが低下し、平坦性の向上が判明した。実際に、実施例1(図8)について金型を作製して射出成形試験を実施した結果、反り(平坦性)は32μmであった。比較例1について射出成形試験を実施した結果、反り(平坦性)は494μmであった。
【0028】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1、1a〜1d、9、9a、9b 金型
11、11a〜11d、91、91a、91b 成形品形成部
12、12a〜12d ランナー・ゲート部
92、92a、92b サイドゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14