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特開2015-196808ポリビニルアルコールフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-196808(P2015-196808A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコールフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20151013BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20151013BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20151013BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   C08J5/18CEX
   C08J3/20
   C08L29/04 A
   C08K5/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-76628(P2014-76628)
(22)【出願日】2014年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 厚志
(72)【発明者】
【氏名】磯▲ざき▼ 孝徳
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA26
4F070AC36
4F070AC37
4F070AC38
4F070AC47
4F070AE02
4F070AE03
4F070AE14
4F070FA01
4F070FA05
4F070FB03
4F070FB07
4F071AA29
4F071AC11
4F071AE05
4F071AE10
4F071AF07
4F071AF08
4F071AF27
4F071AF30
4F071AF34
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH01
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J002BE021
4J002CH052
4J002EG026
4J002EJ037
4J002EP016
4J002EV186
4J002EV236
4J002EV256
4J002EW046
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD077
4J002FD312
4J002FD316
4J002GA01
4J002GG02
4J002GP00
4J002HA04
(57)【要約】
【課題】着色が少なく表面が平滑なポリビニルアルコールフィルムを簡便に製造することのできるPVAフィルムの製造方法、および、それにより製造されるポリビニルアルコールフィルムを提供すること。
【解決手段】界面活性剤および酸化防止剤を含むポリビニルアルコールフィルムの製造方法であって、界面活性剤および酸化防止剤の混合物とポリビニルアルコールとを混合する工程を有する、製造方法、および、それにより製造されるポリビニルアルコールフィルム。界面活性剤および酸化防止剤の混合物において、酸化防止剤が界面活性剤中に分散していることが好ましい。また、酸化防止剤の使用量がポリビニルアルコールに対して質量基準で1〜9ppmであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤および酸化防止剤を含むポリビニルアルコールフィルムの製造方法であって、界面活性剤および酸化防止剤の混合物とポリビニルアルコールとを混合する工程を有する、製造方法。
【請求項2】
界面活性剤および酸化防止剤の混合物において、酸化防止剤が界面活性剤中に分散している、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸化防止剤の使用量がポリビニルアルコールに対して質量基準で1〜9ppmである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸化防止剤がビスフェノール系酸化防止剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されるポリビニルアルコールフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色が少なく表面が平滑なポリビニルアルコールフィルムを簡便に製造することのできるポリビニルアルコールフィルムの製造方法、および、それにより製造されるポリビニルアルコールフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略称することがある)は、力学物性、透明性、酸素バリア性、耐油性等に優れており、従来より、繊維包装材料、農業用フィルム(野菜保温用、野菜生育用等のフィルム)、ガスバリア材、フィルター、偏光膜等の光学フィルムなどの用途に使用されている。
【0003】
PVAフィルムは若干着色があるという欠点を有する。従来、PVAフィルムの着色を抑制する方法としては、原料となるPVAを酸素の影響を受け難い条件で乾燥し着色の少ないPVAを得た後、これを用いてPVAフィルムを製造する方法などが知られている(例えば特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−226707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来公知の方法では、PVAを生産する際の着色を防ぐことは可能であるが、PVAフィルムを生産する際の着色を十分に防止するという点でさらなる改良の余地があった。
そこで本発明は、着色が少なく表面が平滑なPVAフィルムを簡便に製造することのできるPVAフィルムの製造方法、および、それにより製造されるPVAフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、界面活性剤と酸化防止剤とをともに含むPVAフィルムを製造するにあたり、界面活性剤と酸化防止剤とを予め混合して用いると、上記の課題が解決されることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、
[1]界面活性剤および酸化防止剤を含むPVAフィルムの製造方法であって、界面活性剤および酸化防止剤の混合物とPVAとを混合する工程を有する、製造方法;
[2]界面活性剤および酸化防止剤の混合物において、酸化防止剤が界面活性剤中に分散している、上記[1]の製造方法;
[3]酸化防止剤の使用量がPVAに対して質量基準で1〜9ppmである、上記[1]または[2]の製造方法;
[4]酸化防止剤がビスフェノール系酸化防止剤である、上記[1]〜[3]のいずれか1つの製造方法;
[5]上記[1]〜[4]のいずれか1つの製造方法によって製造されるPVAフィルム;
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、着色が少なく表面が平滑なPVAフィルムを簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
界面活性剤および酸化防止剤を含むPVAフィルムを製造するための本発明の方法は、界面活性剤および酸化防止剤の混合物とPVAとを混合する工程を有する。通常、界面活性剤および酸化防止剤を含むPVAフィルムを製造する場合には、PVAフィルムを製造するための製膜原液の調製時に、PVAおよび液体媒体の混合物に対して界面活性剤と酸化防止剤とを別々に添加する。これに対して本発明の製造方法では、界面活性剤および酸化防止剤の混合物を予め調製しておき、これをPVA(好ましくはPVAと液体媒体との混合物)とさらに混合することを特徴とする。このような方法を採用することにより、着色が少なく表面が平滑なPVAフィルムを簡便に製造することができる。なお、本発明を何ら限定するものではないが、上記のような優れた効果が奏される理由としては次のような理由が考えられる。すなわち、酸化防止剤を界面活性剤と予め混合せずにPVAと混合した場合には、製膜原液中における酸化防止剤の分散性が低くその酸化防止効果が十分に発揮されず、フィルムの表面の平滑性も向上しないが、界面活性剤と酸化防止剤とを予め混合しておくことにより、酸化防止剤の酸化防止効果が十分に発揮されて着色が少なくなり加えてフィルムの表面の平滑性も向上すると考えられる。
【0010】
〔PVA〕
本発明において使用されるPVAは、酢酸ビニルの単独重合体のけん化物などに代表される未変性のPVAであることが好ましいが、エチレン、プロピレン等のオレフィン;アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミドまたはその誘導体、メタクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリル系単量体;ビニルエーテル;ハロゲン化ビニル;マレイン酸またはその塩もしくはエステル;ビニルシリル化合物などの単量体のうちの1種類または2種類以上が主鎖中に共重合されている変性PVAであってもよい。変性PVAにおけるこれらの単量体による変性量は変性PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
【0011】
PVAの重合度は特に制限されないが、500〜8,000の範囲内であることが好ましく、700〜6,000の範囲内であることがより好ましく、1,000〜4,000の範囲内であることがさらに好ましい。PVAの重合度が500以上であることにより、得られるPVAフィルムの機械的強度が向上する。一方、PVAの重合度が8,000以下であることにより、後述する製膜原液を用いてPVAフィルムを製造する際にその製膜原液の粘度が過度に高くなって得られるPVAフィルムの厚みが不均一になるのを効果的に防止することができる。なお、本明細書でいうPVAの重合度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
【0012】
PVAのけん化度は80モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましい。PVAのけん化度が80モル%以上であることにより、得られるPVAフィルムの水膨潤性が向上する。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
【0013】
〔界面活性剤〕
本発明において使用される界面活性剤の種類に特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを使用することもできる。界面活性剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもどちらでもよい。
【0014】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、オクチルリン酸エステルカリウム塩、ラウリルリン酸エステルカリウム塩、ステアリルリン酸エステルカリウム塩、オクチルエーテルリン酸エステルカリウム塩、ドデシルリン酸エステルナトリウム塩、テトラデシルリン酸エステルナトリウム塩、ジオクチルリン酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステルカリウム塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステルアミン塩などが挙げられる。
【0015】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが挙げられる。
【0016】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩等のアミン類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;ラウリルピリジニウムクロライド等のピリジニウム塩などが挙げられる。
【0017】
両性界面活性剤としては、例えば、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどが挙げられる。
【0018】
界面活性剤の使用量は、本発明の効果がより顕著に奏されることから、PVA100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.02〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。界面活性剤を上記の使用量で使用することにより、当該量の界面活性剤を含むPVAフィルムが得られる。
【0019】
〔酸化防止剤〕
本発明において使用される酸化防止剤の種類に特に制限はないが、本発明の効果がより顕著に奏されることから、ビスフェノール系酸化防止剤が好ましい。ビスフェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、得られるPVAフィルムの着色をより低減することができることから、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)が特に好ましい。
【0020】
酸化防止剤の使用量は、PVAに対して質量基準で1〜9ppmの範囲内であることが好ましく、3〜7ppmの範囲内であることがより好ましい。上記使用量が1ppm以上であることにより、得られるPVAフィルムの着色をより低減することができる。一方、上記使用量が9ppm以下であることにより、得られるPVAフィルムの着色をより低減することができるとともに表面の平滑性がより向上する。酸化防止剤を上記の使用量で使用することにより、当該量の酸化防止剤を含むPVAフィルムが得られる。
【0021】
〔可塑剤、無機フィラーおよびその他の成分〕
PVAフィルムには、その用途や使用形態などに応じて、可塑剤、無機フィラーおよびその他の成分(PVA、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤および無機フィラー以外の成分)のうちの1種または2種以上をさらに含有させることができる。PVAフィルムに可塑剤、無機フィラーおよびその他の成分のうちの1種または2種以上を含有させる場合には、PVAフィルムの製膜前にこれらの成分を後述の製膜原液に予め含有させておくことが好ましい。これらの成分を製膜原液に予め含有させておく場合における、これらの成分の配合時期に特に制限はなく、界面活性剤、酸化防止剤およびPVAが混合されたものに配合したり、界面活性剤および酸化防止剤の混合物とPVAとを混合する前に界面活性剤および酸化防止剤の混合物かPVAのどちらか一方または両方に予め配合したり、界面活性剤と酸化防止剤とを混合する前に界面活性剤か酸化防止剤のどちらか一方または両方に予め配合したりすることができる。PVAフィルムに可塑剤、無機フィラーおよびその他の成分のうちの1種または2種以上を含有させる場合におけるこれらの成分の使用量は、目的とするPVAフィルムにおけるこれらの成分の含有量と同じ量とすればよい。
【0022】
可塑剤の種類に特に制限はないが、グリセリン、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール系可塑剤のうちの1種または2種以上が好ましく、グリセリンが特に好ましい。PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。当該含有量が30質量部以下であることにより、可塑剤がPVAフィルムの表面ににじみ出るのを効果的に防止することができる。
【0023】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、表面処理されていてもよい重質または軽質の炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、マイカ、炭酸マグネシウム、カオリン、ハロサイト、バイロフェライト、セリサイト等のクレー、タルクなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、PVAへの分散性の観点から、シリカ、タルクが好ましい。PVAフィルムにおける無機フィラーの含有量は、PVA100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
【0024】
上記したPVA、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤および無機フィラー以外のその他の成分としては、例えば、架橋剤、着色剤、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、澱粉、PVA以外の重合体(PVA以外の水溶性高分子等)などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。PVAフィルムの全質量に対する、PVA、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤および無機フィラーの合計の質量の占める割合は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、90〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0025】
〔PVAフィルムの製造方法〕
界面活性剤および酸化防止剤を含むPVAフィルムを製造するための本発明の方法は、界面活性剤および酸化防止剤の混合物とPVAとを混合する工程を有する。界面活性剤および酸化防止剤の混合物の調製方法に特に制限はなく、例えば、界面活性剤に酸化防止剤を添加するかまたは酸化防止剤に界面活性剤を添加した後に、撹拌機で撹拌する方法が挙げられる。
【0026】
界面活性剤および酸化防止剤の混合物においては、本発明の効果がより顕著に奏されることから、酸化防止剤が界面活性剤中に分散していることが好ましい。酸化防止剤が界面活性剤中に分散している混合物は、酸化防止剤および界面活性剤の各使用量やそれらの種類を適宜選択することにより得ることができ、例えば、液体の界面活性剤中に固体の酸化防止剤を添加して混合することにより得ることができる。
【0027】
界面活性剤および酸化防止剤の混合物とPVAとを混合する際の混合方法に特に制限はなく、例えば、界面活性剤および酸化防止剤の混合物とPVAのペレットとを混合して混合物とし、これと水などの液体媒体とをさらに混合する方法;水などの液体媒体に溶解させたPVAと界面活性剤および酸化防止剤の混合物とを混合する方法;PVAのペレットに水などの液体媒体を含浸させた後、これと界面活性剤および酸化防止剤の混合物とをさらに混合する方法などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより顕著に奏されることから、水などの液体媒体に溶解させたPVAと界面活性剤および酸化防止剤の混合物とを混合する方法;PVAのペレットに水などの液体媒体を含浸させた後、これと界面活性剤および酸化防止剤の混合物とをさらに混合する方法が好ましく、PVAのペレットに水などの液体媒体を含浸させた後、これと界面活性剤および酸化防止剤の混合物とをさらに混合する方法がより好ましい。混合は、撹拌羽を用いた撹拌機や押出機などを用いて行うことができる。
【0028】
本発明の規定を満たす限りPVAフィルムの製膜方法の種類に特に制限はなく、例えば、製膜原液を用いた、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられる。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でもキャスト製膜法、押出製膜法が、厚みおよび幅が均一で物性の良好なPVAフィルムが得られることから好ましい。
【0029】
上記の製膜原液としては、PVA、界面活性剤、酸化防止剤ならびに必要に応じてさらに上記した可塑剤、無機フィラーおよびその他の成分のうちの1種または2種以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、界面活性剤、酸化防止剤、液体媒体ならびに必要に応じてさらに上記した可塑剤、無機フィラーおよびその他の成分のうちの1種または2種以上を含み、PVAが溶融している製膜原液などが挙げられる。
【0030】
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷や回収性の点から水が好ましい。
【0031】
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は、製膜方法、製膜条件などによっても異なるが、一般的には、50〜95質量%の範囲内であることが好ましく、55〜90質量%の範囲内であることがより好ましく、60〜85質量%の範囲内であることがさらに好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。
【0032】
PVAフィルムの具体的な製造方法の例としては、例えば、T型スリットダイ、ホッパープレート、I−ダイ、リップコーターダイ等を用いて、上記の製膜原液を最上流側に位置する回転する加熱した第1ロール(あるいはベルト)の周面上に均一に吐出または流延し、この第1ロール(あるいはベルト)の周面上に吐出または流延された膜の一方の面から揮発性成分を蒸発させて乾燥し、続いてその下流側に配置した1個または複数個の回転する加熱したロールの周面上でさらに乾燥するか、または熱風乾燥装置の中を通過させてさらに乾燥した後、巻き取り装置により巻き取る方法を工業的に好ましく採用することができる。加熱したロールによる乾燥と熱風乾燥装置による乾燥とは、適宜組み合わせて実施してもよい。
【0033】
製膜されたフィルムには、必要に応じて熱処理を施すことができる。当該熱処理の温度は、70〜180℃の範囲内であることが好ましく、100〜150℃の範囲内であってもよい。熱処理の時間としては、例えば、1秒〜1時間の範囲内が挙げられる。なお、当該熱処理をはじめとするPVAフィルムを製造する各工程中で、高すぎる温度に晒されると、得られるPVAフィルムの水膨潤性が低下する場合があることなどから、製膜原液を用いてPVAフィルムを製造するまでの間の製膜原液およびフィルムの温度を180℃以下に保つことが好ましく、150℃以下、140℃以下、さらには130℃以下に保ってもよい。
【0034】
また必要に応じて、乾燥前、乾燥中または乾燥後のうちのいずれか1つまたは2つ以上の段階で一軸または二軸の延伸を行うこともできる。延伸の際の温度としては、20〜120℃の範囲内であることが好ましい。また、延伸倍率は、延伸前の長さに基づいて1.05〜5倍の範囲内であることが好ましく、1.1〜3倍の範囲内であることがより好ましい。さらに必要であれば、延伸後にフィルムを熱固定して残存応力を低下させることもできる。
【0035】
本発明の製造方法によれば、着色が少ないPVAフィルムを簡便に製造することができる。本発明の製造方法により製造されるPVAフィルムのb値は、1.1以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.9以下であることがさらに好ましく、0.8以下であることが特に好ましく、また、0以上であることが好ましい。PVAフィルムのb値は実施例において後述する方法により測定することができる。
【0036】
本発明の製造方法によれば、表面が平滑なPVAフィルムを簡便に製造することができる。本発明の製造方法により製造されるPVAフィルムのRaは、5.8nm以下であることが好ましく、4.5nm以下であることがより好ましく、3.0nm以下であることが特に好ましい。当該Raが5.8nm以下であることによりフィルム表面に異物等が付着して品質が低下するのを効果的に防止することができる。当該Raの下限に特に制限はないが、当該Raは例えば0.1nm以上である。PVAフィルムのRaは実施例において後述する方法により測定することができる。
【0037】
本発明の製造方法により製造されるPVAフィルムの厚みに特に制限はなく、PVAフィルムの用途や使用態様などに応じて適宜設定することができるが、1〜100μmの範囲内であることが好ましく、3〜50μmの範囲内であることがより好ましい。なお、PVAフィルムの厚みは、任意の5箇所の厚みを測定し、それらの平均値として求めることができる。
【0038】
本発明の製造方法により製造されるPVAフィルムの用途に特に制限はなく、例えば、繊維包装材料;農業用フィルム(野菜保温用、野菜生育用等のフィルム);ガスバリア材;偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルムを製造するための原反フィルムなどの用途をはじめ、水圧転写用、包装用、農業用、土木用、医療用、工業用、日用雑貨用、玩具用などの水溶性フィルムや生分解性フィルムの用途に好ましく使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0040】
[PVAフィルムのb値の測定]
以下の実施例または比較例で得られたPVAフィルムを、厚みが0.4〜0.5mmになるように複数重ねて、紫外−可視分光光度計(c光源、2度視野、透過光)でb値を測定し、この値をPVAフィルムの着色の指標とした。
【0041】
[PVAフィルムのRaの測定]
以下の実施例または比較例で得られたPVAフィルムを、走査型白色干渉計を用いて、0.091mmの範囲のRaの測定を行った。なお、フィルムの両面の測定を行い、Raの値の大きな方を、このフィルムのRaの値とした。当該RaをPVAフィルムの表面平滑性の指標とした。
【0042】
[実施例1]
(1)界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリン酸アミド)0.05質量部に酸化防止剤(4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール))0.0015質量部(後述のPVAに対して質量基準で15ppm)を加えて撹拌することにより、酸化防止剤が界面活性剤中に分散している混合物を得た。
上記の混合物を、PVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物、重合度2,400、けん化度99.9モル%)のペレット100質量部に水を含浸させたものに添加し、さらに可塑剤(グリセリン)12質量部および水を加えて撹拌することにより、揮発分率70質量%の製膜原液を得た。
(2)上記の製膜原液をPETフィルム上に流延し、室温で乾燥し、50μmのフィルムを得た。得られたフィルムを枠固定し、160℃で10分間熱処理をして、PVAフィルムを得た。
(3)得られたPVAフィルムを用いて、上記した方法によりb値およびRaの各測定を行ったところ、b値は0.9、Raは3.5nmであった。
【0043】
[実施例2]
酸化防止剤の使用量を0.0015質量部から0.0005質量部(PVAに対して質量基準で5ppm)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムを得て、b値およびRaの各測定を行ったところ、b値は0.7、Raは2.5nmであった。
【0044】
[比較例1]
酸化防止剤が界面活性剤中に分散している混合物を調製せずに、PVAのペレットに水を含浸させたものに対して酸化防止剤および界面活性剤をそれぞれ別々に添加したこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムを得て、b値およびRaの各測定を行ったところ、b値は1.3、Raは6.0nmであった。