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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-197448(P2015-197448A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】光導波路素子モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   G02F1/03 505
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-73458(P2014-73458)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA02
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102BD09
2K102CA06
2K102DA04
2K102DA05
2K102DD04
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA09
2K102EA16
2K102EB16
2K102EB30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異なる光導波路素子に対して共通の接続基板を使用することを可能にし、かつ、信号電極の曲部における電気信号の伝搬特性の劣化を抑制した光導波路素子モジュールを提供する。
【解決手段】基板に形成された光導波路と、光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、入力又は出力端部における接地電極GDの間隔W1が、接続基板の光導波路素子側の接地線路GD1(GD2)の間隔W2よりも大きく、入力又は出力端部から離れた部分に、接地電極GDの間隔が間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、信号電極SLは、入力又は出力端部から制御電極が光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、信号電極の曲部における接地電極の局所的な電位差の発生を抑制する抑制手段(WR20〜WR32)を設けた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、
該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、
該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、
該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線を用いて接続されており、
該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極の間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、
さらに、該制御電極の該信号電極は、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、
該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設けたことを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、該抑制手段は、該信号電極の該曲部を挟む該接地電極間を接続する複数の配線であり、該接地電極間を接続する各配線は、該信号電極の該曲部の法線方向に合せて配置することであることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、長さを長く設定することであることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、該信号電極に近づくように配置することであることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子モジュールに関し、特に、光導波路素子と接続基板とを筐体内に収容した光導波路素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光計測技術分野や光通信技術分野において、光変調器や光スイッチなどの電気光学効果を有する基板に光導波路を形成した光導波路素子が多用されている。これらの光導波路素子は、通常、密閉される筐体(ケース)内に収容されて、光導波路素子モジュールを構成している。
【0003】
特許文献1に示すように、光導波路素子モジュールの筐体内には、外部からの入力線を光導波路素子の制御電極に電気的に接続するための中継基板(接続基板)や、光導波路素子の制御電極の出力側に電気的に接続され、出力信号を吸収又はモジュール外に導出するために終端基板(接続基板)が収容されている。
【0004】
通常は、接続部での不連続性を減らし周波数特性を向上するために、図1に示すように、光導波路素子1を構成する変調用基板と中継基板(CP1)の電極寸法や接地電極(GND)の間隔が等しくなるように設計されている。また、終端基板(CP2)と変調用基板との接続でも同じことが言える。このように変調用基板と接続基板との電極の寸法や間隔を合わせると、光導波路素子の種類だけ接続基板を用意する必要があり、製造コストの増加の原因となる。
【0005】
図1には、光導波路素子1として、基板上に不図示の光導波路が形成され、該光導波路を伝搬する光波を制御するため、信号電極SLと接地電極GDから構成される制御電極が設けられている。光導波路素子1に、光ファイバ(FB1,FB2)が接続され、光導波路素子1に入力光を導入し、さらに出力光を導出している。
【0006】
コネクタCN1により変調信号ISが入力され、コネクタCN2により変調信号OSを導出している。中継基板(接続基板)CP1には、信号線路SL1と接地線路GD1が形成され、終端基板(接続基板)CP2にも、信号線路SL2と接地線路GD2が設けられている。
【0007】
コネクタと、接続基板上の信号線路や接地線路とは、金リボンや金線等の配線RBを用いて、あるいは直接接続により、電気的に接続されている。接続基板の信号線路と光導波路素子の信号電極との間や、接続基板の接地線路と光導波路素子の接地電極とは、金線等の配線WRで電気的に接続されている。
【0008】
光導波路素子1や接続基板(CP1,CP2)は、金属製の筐体2内に収容されている。光ファイバ(FB1,FB2)やコネクタ(CN1,CN2)は筐体を貫通するように配置されている。
【0009】
光導波路素子の高周波化(広帯域化)が進み、図2に示す接続基板にアルミナなど光導波路素子を構成する基板(変調用基板)と比較して低誘電率な材料が用いられるようになっている。また、基板モードなどによる周波数特性劣化を防ぐため、接続基板などの接続部の寸法も小さくなっている。このため、従来のように、接地電極の間隔と接地線路の間隔とを等しく構成すると、光導波路素子の信号電極幅が小さくなり、LiNbOのような電気光学効果を有する基板又は半導体基板と、接続基板との信号線路の幅とが異なるため、接続部の不連続性が発生し電気特性が劣化する原因となっている。また、接続基板の入力側と出力側との間で、信号線路の幅や接地線路の間隔を急激に変化させると、インピーダンス不整合が発生し易くなり、電気的特性の劣化が一層顕著なものとなる。
【0010】
さらに、図2に示すように、筐体の外部の信号線と接続基板及び光導波路素子のインピーダンスを整合させるため、光導波路素子の信号電極SLの幅S1と接続基板の信号線路SL1(SL2)の幅S2とを異ならせ、かつ、光導波路素子の接地電極GDの間隔W1と接続基板の接地線路GD1(GD2)の間隔W2とを異ならせた場合には、接続基板と光導波路素子とでは信号部分と接地部分との電界強度が異なるなど、電気的接続における不連続性が発生し、電気特性の劣化を生じる。
【0011】
特許文献2では、このような不具合を解消するため、光導波路素子の接地電極と接続基板の接地線路とを電気的に接続する配線について、その配置に工夫を施すことを提案している。
【0012】
他方、光導波路素子に設けられた制御電極は、信号電極の取り回しの関係から多くの曲部を有している。図2に示すように、接続基板の信号線路GD1と信号線路SL1の最終端である点X1(Y1)から、光導波路素子の制御電極が光導波路に電界を印加する作用部の開始点X2(Y2)までの、信号電極SLに沿った長さは、点線X(Y)となる。図2からも分かるように、点線Xと点線Yとの長さが異なる。特に、曲部においては、信号電極を挟む各接地電極では、点X1から点線Xに沿った距離と、点Y1から点線Yに沿った距離とが異なるため、マイクロ波の伝搬時間が異なり、当該接地電極間で局所的な電位差が発生する。このため、マイクロ波などの電気信号の伝搬特性が劣化する原因となる。
【0013】
しかも、異なる光導波路素子に対して共通の接続基板を使用する場合などのように、光導波路素子の信号電極を挟む接地電極の間隔W1と接続基板の信号線路を挟む接地線路の間隔W2とが異なる場合には、上述した信号電極の曲部の影響も含め、作用部までに至る信号電極に沿った接地電極の長さがより異なり易くなる。このため、電気信号の伝搬特性の劣化が一層顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−233043号公報
【特許文献2】特開2011−209456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、異なる光導波路素子に対して共通の接続基板を使用することを可能にし、かつ、信号電極の曲部における電気信号の伝搬特性の劣化を抑制した光導波路素子モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子モジュールは以下のような技術的特徴を有する。
(1) 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線を用いて接続されており、該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極の間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、さらに、該制御電極の該信号電極は、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子モジュールにおいて、該抑制手段は、該信号電極の該曲部を挟む該接地電極間を接続する複数の配線であり、該接地電極間を接続する各配線は、該信号電極の該曲部の法線方向に合せて配置することであることを特徴とする。
【0018】
(3) 上記(1)に記載の光導波路素子モジュールにおいて、該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、長さを長く設定することであることを特徴とする。
【0019】
(4) 上記(1)に記載の光導波路素子モジュールにおいて、該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、該信号電極に近づくように配置することであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線を用いて接続されており、該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極の間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、さらに、該制御電極の該信号電極は、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設けたため、該曲部における電気信号の伝搬特性の劣化を抑制でき、さらには、異なる光導波路素子に対し共通の接続基板を使用した場合でも、該曲部における電気信号の伝搬特性の劣化を抑制できる。その結果、広帯域に亘り良好な光変調を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来の光導波路素子モジュールを説明する図である。
図2】光導波路素子の信号電極を挟む接地電極の間隔と接続基板の信号線路を挟む接地線路の間隔とが異なる場合の光導波路素子と接続基板との接続状態を説明する図であり、さらに、信号電極の曲部における接地電極間で局所的な電位差が発生する原因を説明する図である。
図3】本発明の光導波路素子モジュールに利用される光導波路素子と接続基板との配線状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光導波路素子モジュールについて、好適例を用いて詳細に説明する。
図2に示すように、本発明の光導波路素子モジュールは、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極SLと該信号電極を挟むように配置された接地電極GDとから構成され、該接続基板は、信号線路SL1(SL2)と該信号線路を挟むように配置された接地線路GD1(GD2)とが設けられ、該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線(WR1,WR2,WR20〜21)を用いて接続されており、該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極GDの間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路GD1(GD2)の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極GDの間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、さらに、該制御電極の該信号電極SLは、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
電気光学効果を有する基板としては、特に、LiNbO,LiTaO又はPLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)のいずれかの単結晶が好適に利用可能である。特に、光変調器で多用されているLiNbO,LiTaOが、好ましい。また、基板に形成する光導波路は、例えば、LiNbO基板(LN基板)上にチタン(Ti)などの高屈折率物質を熱拡散することにより形成される。また、光導波路の側面に溝を形成したり、光導波路部分の厚みを他の基板部分より厚く形成して、リッジ型導波路とすることも可能である。
【0024】
制御電極は、信号電極や接地電極から構成され、基板表面に、Ti・Auの電極パターンを形成し、金メッキ方法などにより形成することが可能である。さらに、必要に応じて光導波路形成後の基板表面に誘電体SiO等のバッファ層を設けることも可能である。
【0025】
本発明における「接続基板」とは、外部から電気信号が入力される入力端子と光導波路素子の信号入力部とを接続する中継基板や、光導波路素子の信号電極の出力端部に接続される、電気信号の反射を抑制するため、電気信号を抵抗器等で吸収する終端器、あるいは、光導波路素子の信号電極の出力端部と出力用端子とを接続する終端基板などを意味する。接続基板の基板材料は、光導波路素子の基板材料よりも誘電率が低い材料、例えば、アルミナや半導体材料が使用される。これは、光導波路素子の広帯域化に寄与するためである。
【0026】
光導波路素子と接続基板とを繋ぐ配線は、金線や幅広の金リボンが利用可能であり、特に、金線をワイヤーボンディングする方法が、両者の配線方法としては好ましい。また、配線は、1本に限らず、同じ場所の近傍を複数本の金線で接続することも可能である。
【0027】
本発明の光導波路素子モジュールは、図2に示すように、制御電極の信号電極SLは、入力端部又は出力端部から制御電極が光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、該信号電極の曲部における該信号電極SLを挟む接地電極GDの局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設けたことを特徴とする。
【0028】
特に、接地電極GDの間隔W1が、接地線路GD1(GD2)の間隔W2よりも大きく、入力端部又は出力端部から離れた部分に、接地電極GDの間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有する場合のように、接地線路の間隔と接地電極の間隔とが連続的に滑らかに変化していない場合には、信号電極の曲部における接地電極の局所的な電位差の発生を抑制することが、一層難しくなる。
【0029】
信号電極の曲部における接地電極の局所的な電位差の発生を抑制する抑制手段としては、図2に示すように、信号電極SLの曲部を挟む接地電極GD間を接続する複数の配線(WR30〜32)であり、接地電極間を接続する各配線(WR30〜32)は、信号電極の曲部の法線方向に合せて配置することである。
【0030】
配線WR30〜32により、信号電極の曲部において、信号電極SLを伝搬するマイクロ波信号に対しては、該信号電極を挟む接地電極が常に同じ電位になるように配線されているので、マイクロ波の伝搬特性が劣化するのを抑制することができる。
【0031】
他の抑制手段としては、接地電極GDと接地線路(GD1,GD2)との間を接続する配線であって、入力端部又は出力端部から制御電極が光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極(図2の左側の接地電極)に接続される配線WR20が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線WR2より、長さを長く設定することである。
【0032】
これにより、信号電極に沿った接地電極の長さが信号電極の両側で異なる場合であっても、マイクロ波信号が信号電極の曲部に入った際の接地電極間の電位差の発生を抑制することが可能となる。
【0033】
さらに、その他の抑制手段としては、接地電極GDと該接地線路(GD1,GD2)との間を接続する配線であって、入力端部又は出力端部から制御電極が光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線WR21が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線WR2より、該信号電極SLに近づくように配置することである。
【0034】
このような構成によっても、信号電極に沿った接地電極の長さが信号電極の両側で異なる場合であっても、マイクロ波信号が信号電極の曲部に入った際の接地電極間の電位差の発生を抑制することが可能となる。当然、上述した抑制手段を適宜組み合わせて利用できることは言うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、異なる光導波路素子に対して共通の接続基板を使用することを可能にし、かつ、信号電極の曲部における電気信号の伝搬特性の劣化を抑制した光導波路素子モジュールを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 光導波路素子
2 筐体
CN1,CN2 コネクタ
CP1,CP2 接続基板
GD 接地電極
GD1,GD2 接地線路
SL 信号電極
SL1,SL2 信号線路
WR,WR1〜32 配線
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2015年5月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、
該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、
該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、
該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線を用いて接続されており、
該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極の間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、
さらに、該制御電極の該信号電極は、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、
該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設け、かつ該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、長さを長く設定することであることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線の接続位置は、前記接地電極の間隔W1より狭い幅の範囲内に配置されることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項3】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、
該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、
該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、
該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線を用いて接続されており、
該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極の間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、
さらに、該制御電極の該信号電極は、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、
該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設け、かつ該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、該信号電極に近づくように配置することであることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線の接続位置は、前記接地電極の間隔W1より狭い幅の範囲内に配置されることを特徴とする光導波路素子モジュール。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子モジュールは以下のような技術的特徴を有する。
(1) 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線を用いて接続されており、該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極の間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、さらに、該制御電極の該信号電極は、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設け、かつ該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、長さを長く設定することであることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線の接続位置は、前記接地電極の間隔W1より狭い幅の範囲内に配置されることを特徴とする。
なお、本発明における「接地電極の間隔W1より狭い幅の範囲内に配置される」という意味は、図3の両矢印W1で示される「接地電極の間隔W1」の幅に対して、当該幅より狭い範囲に、配線(WR20,WR21)の接続位置が配置されることを意味している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
(3) 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を制御するための制御電極とを有する光導波路素子と、該光導波路素子の外部に設けられ、該制御電極と電気的に接続された配線を有する接続基板と、該光導波路素子と該接続基板とを筐体内に収容する光導波路素子モジュールにおいて、該制御電極は、信号電極と該信号電極を挟むように配置された接地電極とから構成され、該接続基板は、信号線路と該信号線路を挟むように配置された接地線路とが設けられ、該信号電極と該信号線路との間、及び該接地電極と該接地線路との間は、各々、配線を用いて接続されており、該制御電極は、該制御電極の入力端部又は出力端部における該接地電極の間隔W1が、該接続基板の該光導波路素子側の該接地線路の間隔W2よりも大きく、該入力端部又は該出力端部から離れた部分に、該接地電極の間隔が該間隔W2よりも小さい間隔W3となる部分を有し、さらに、該制御電極の該信号電極は、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間に、曲部を有し、該信号電極の曲部における該信号電極を挟む該接地電極の局所的な電位差の発生を抑制するための抑制手段を設け、かつ該抑制手段は、該接地電極と該接地線路との間を接続する配線であって、前記入力端部又は出力端部から該制御電極が該光導波路に電界を印加する作用部までの間で該信号電極に沿った該接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線が、当該接地電極の長さが短い側の接地電極に接続される配線より、該信号電極に近づくように配置することであることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
(4) 上記()に記載の光導波路素子モジュールにおいて、前記接地電極の長さが長い方の側の接地電極に接続される配線の接続位置は、前記接地電極の間隔W1より狭い幅の範囲内に配置されることを特徴とする。