【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、アルカリ蓄電池の正極に用いられるニッケル焼結基板を製造する方法であって、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、有機溶媒とを含んだNi微細粒子スラリーを、表面がニッケルめっきされた多孔性集電体に塗布し、H
2を含んだ還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度で焼結させて、Ni粒子焼結体を形成することを特徴とするアルカリ蓄電池正極用ニッケル焼結基板の製造方法である。
【0011】
また、本発明は、アルカリ蓄電池の正極に用いられるニッケル焼結基板を製造する方法であって、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、有機溶媒とを含んだNi微細粒子スラリーを、表面がニッケルめっきされた多孔性集電体に塗布して、溶媒乾燥させた後、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子と、有機溶媒とを含んだNi混合粒子スラリーを塗布して、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度で焼結させて、Ni粒子焼結体を形成することを特徴とするアルカリ蓄電池正極用ニッケル焼結基板の製造方法である。
【0012】
また、本発明は、アルカリ蓄電池の正極に用いられるニッケル焼結基板を製造する方法であって、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、有機溶媒とを含んだNi微細粒子スラリーを多孔性集電体に塗布して、溶媒乾燥させた後、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子を含んだNi細粒子スラリーを塗布して、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度で焼結させ、未焼結のNi細粒子を除去して、Ni粒子焼結体を形成することを特徴とするアルカリ蓄電池正極用ニッケル焼結基板の製造方法である。
【0013】
更に、本発明は、アルカリ蓄電池の正極に用いられるニッケル焼結基板を製造する方法であって、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、有機溶媒とを含んだ第1のNi微細粒子スラリーを多孔性集電体に塗布して、溶媒乾燥させた後、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子を含んだNi細粒子スラリーを塗布して、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度で焼結させ、未焼結のNi細粒子を除去し、更に、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、有機溶媒とを含んだ第2のNi微細粒子スラリーを塗布して、再び、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度で焼結させて、Ni粒子焼結体を形成することを特徴とするアルカリ蓄電池正極用ニッケル焼結基板の製造方法である。
【0014】
更にまた、本発明は、ニッケルめっきの施された多孔性集電体の表面に、Ni粒子の焼結したNi粒子焼結体を備えたアルカリ蓄電池正極用ニッケル焼結基板であって、Ni粒子焼結体が、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子が焼結したNi微細粒子焼結層を含むことを特徴とするアルカリ蓄電池正極用ニッケル焼結基板である。
【0015】
本発明においては、SEM観察で測定される平均粒径が15〜150nm、好ましくは80〜110nmのNi微細粒子を含んだNi微細粒子スラリーを用いて、多孔性集電体上にNi粒子焼結体を形成する。このようなナノメーターサイズのNi微細粒子は、Ni粒子焼結体を形成する際に、マイクロメーターサイズのNi粒子を用いる場合に比べて比表面積が大きくなり、表面活性が高く、従来法より低温で焼結させることができることから、室温に戻る際の熱応力を低減して反りの発生を抑制できると共に、熱応力の低減により多孔性集電体からのNi粒子焼結体の剥離、もしくはNi粒子焼結体からの多孔性集電体の剥離を防ぐことができる。また、多孔性集電体との接触面積が増して接合強度が高くなることからも、多孔性集電体からの剥離を防止することができる。Ni微細粒子スラリー中のNi微細粒子の平均粒径が15nm未満であると、凝集し易くなって取扱が難しくなる。反対に、150nmを超えると400℃以下での低温焼成が難しくなる。
【0016】
このNi微細粒子を用いてニッケル焼結基板を得るための具体的な製造方法について、好ましくは、下記のような製造方法を例示することができる。なお、スラリーに含まれるNiナノ粒子の平均粒径の求め方については、一般に、レーザー回折法、動的光散乱法、X線小角散乱法等が挙げられるが、特に表面活性が高く凝集しやすいナノ粒子についてはこれらの測定では二次粒子を測定しまう可能性があり、測定溶媒との親和性や測定溶液の濃度調整等も必要になることから、本発明では、SEM観察により平均粒径を測定するものとする。
【0017】
すなわち、第一の製造例として、分散剤で保護されたNi微細粒子と有機溶媒とを含んだNi微細粒子スラリーを多孔性集電体に塗布し、H
2を含んだ還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度でNi微細粒子を焼結させて、Ni粒子焼結体を形成する。Ni微細粒子を焼結させる温度については、好ましくは250℃以上350℃以下であるのがよい。また、この焼結温度の下限については、平均粒径20nmのNi微細粒子を電子顕微鏡で観察しながら昇温すると、約200℃で一部の粒子同士が融着し、一体化することが知られていることなどから(一之瀬昇・尾崎義治・賀集誠一郎 超微粒子技術入門 オーム社 pp29)、200℃でも焼結は進行すると考えられるが、全ての焼結が進行するまでには長時間かかることが予測され、工業的な利用は難しい。そのため、焼結温度は230℃以上とする。一方、焼結温度が400℃を超えると、ニッケル焼結基板が室温に戻った際に、多孔性集電体とニッケルの線膨張差により発生する熱応力が大きくなり、ニッケル焼結基板が反ってしまったり、Ni粒子焼結体が多孔性集電体から剥離してしまうおそれがある。
【0018】
Ni微細粒子スラリー中でNi微細粒子を保護する分散剤については、焼結温度によって分解もしくは消失する有機物であるのがよく、好ましくは、脂肪酸からなる分散剤、又は、脂肪酸に脂肪族アミンを更に含んだ分散剤を用いるようにするのがよい。このうち、脂肪酸については、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状のものであってもよく、例えば、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸等の炭素数3〜8の飽和脂肪酸、ブテン酸(クロトン酸等)、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ソルビン酸(2,4−ヘキサジエン酸)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸等を挙げることができる。分散剤には、これらの脂肪酸が1種単独で含まれていても2種以上含まれていてもよい。一方、脂肪族アミンは、飽和又は不飽和のいずれでもよく、1級、2級、3級のいずれのアミンであってもよく、直鎖状又は分岐状のものであってもよい。このような脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン等アルキルアミン、アリルアミン等のアルケニルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン等を挙げることができる。分散剤には、これらの脂肪族アミンが1種単独で含まれていても2種以上含まれていてもよい。なお、これらの分散剤は、Ni微細粒子を保護して凝集を防ぐと共に、酸化を抑制する。
【0019】
また、Ni微細粒子スラリーに用いる有機溶媒については、特に制限はないが、沸点が200℃以下のアルコール系溶剤を用いるのが好ましい。このような低沸点溶剤であれば、焼結前に多孔性集電体に塗布したNi微細粒子スラリーを100〜200℃で溶媒を乾燥させることで、得られるNi粒子焼結体の厚みのばらつきを抑える上で好都合である。そして、Ni微細粒子スラリーとしては、例えば、分散剤で保護されたNi微細粒子を20〜85質量%、有機溶媒を15〜80質量%の割合で配合されるのがよい。なお、Ni微細粒子スラリー(下記で説明するNi細粒子スラリー等においても同様)には、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤等を、有機溶媒中に好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となる範囲で配合することができる。
【0020】
そして、ニッケルめっきが施された多孔性集電体の表面(表裏両面)にNi微細粒子スラリーを塗布し、必要に応じて溶剤乾燥させた後、H
2を含んだ還元雰囲気中でNi微細粒子を焼結させて、Ni粒子焼結体を形成する。ここで、H
2を含んだ還元雰囲気にするのは、通常、Niは(酸素が僅かでも有る雰囲気に曝されると)その表面に酸化皮膜を有することから、焼結を進行させるために必要になる。H
2の濃度は爆発限界値の4%以下であれば十分である。また、多孔性集電体については、例えば、表面に1〜10μm程度の厚さでニッケルめっきが施された穿孔鋼板等のような公知のものを用いることができる。このときの焼結時間については、特に制限はないが、10〜60分間程度で十分である。また、多孔性集電体上に形成するNi粒子焼結体の厚さについては、50〜150μmであるのがよい。
【0021】
このようにして、Ni微細粒子同士が強固に接合されると共に、多孔性集電体との接合強度に優れた多孔質のNi粒子焼結体が得られて、ニッケル焼結基板を形成することができる。加えて、本発明によれば、比表面積の高いNi粒子焼結体を得ることができる。一般に、粒子の焼結プロセスは、(i)粒子の鋭角接触、(ii)ネックの生成・成長、開気孔の生成、(iii)ネック部・粒界の肥大化、開気孔の連続性(ネットワーク形成)、(iv)気孔の切断・孤立、消滅の順で進み、Agナノ粒子やAuナノ粒子では、これらのプロセスが進行し易く、最終的には(iv)のように連続孔が閉孔して隙間はなくなり緻密化する(例えば、『焼結材料工学』石田恒雄著、森北出版株式会社のp78等参照)。これに対して、本発明では、
図5に示したように、(i)Ni微細粒子の凝集による鋭角接触iから、(ii)ネックの成長・生成(ネッキングii)、(iii)ネック部・粒界の肥大化、開気孔の連続性(ネットワーク形成)程度までの焼結しか進まずに、連続孔3が残った状態となり、得られるNi粒子焼結体の比表面積は高くなる。現在、焼結体基板に使用されるニッケル粉末(マイクロメーターサイズの粒子)の比表面積は0.5m
2/g程度であるところ(エヌ・ティー・エス出版 電子とイオンの機能化学シリーズvol.1 いま注目されているニッケル―水素二次電池のすべて 田村英雄 監修 p163)、これらは焼結が進めば、比表面積はそれより更に低下する。ところが、本発明によれば、比表面積の大きなNi微細粒子を用いてNi粒子焼結体を形成することから、少なくとも、比表面積は0.5m
2/g以上を確保することができるようになる。
【0022】
また、本発明における第二の製造例としては、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子を含んだNi微細粒子スラリーの他に、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子とSEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子とを含んだNi混合粒子スラリーを用いて、Ni粒子焼結体を形成する。
【0023】
先ず、上述したNi微細粒子スラリーをニッケルめっきが施された多孔性集電体に塗布して、溶媒乾燥させた後、次いで、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子と、有機溶媒とを含んだNi混合粒子スラリーを塗布し、必要に応じて溶媒乾燥させて、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度でNi微細粒子及びNi細粒子を焼結させる。Ni混合粒子スラリーにおけるNi細粒子の平均粒径が0.5μm未満であると、Ni微細粒子とNi細粒子との粒径の比が1に近づいていき、異粒径を混合する効果が少なくなり、反対に、10μmを超えると、Ni混合粒子スラリーの粘度が高くなり、塗布が困難になるおそれがある。また、Ni混合粒子スラリーにおけるNi細粒子の平均粒径の好ましい範囲は1〜8μmである。
【0024】
ここで、Ni混合粒子スラリーにおける分散剤や有機溶媒については、第一の製造例で説明したものと同様のものを用いることができる。また、Ni混合粒子スラリーにおいて、分散剤で保護されたNi微細粒子とNi細粒子との合計が20〜85質量%、有機溶媒が15〜80質量%の割合で配合されるのがよい。ここで、Ni混合粒子スラリー中に含まれるNi微細粒子とNi細粒子との比率については、SEM観察で測定されたNi微細粒子とSEM観察で測定されたNi細粒子とが、これらNi微細粒子の断面積(Sn)とNi細粒子の断面積(Sm)の合計に対するNi微細粒子の断面積(Sn)の比〔Sn/(Sn+Sm)〕の値が0.2より小さくなるようにするか、或いは0.3より大きくなるようにするのが好ましい。これらの範囲を外れると粒子の充填率が高くなってしまい、Ni粒子焼結体の比表面積が低下してしまうおそれがある。なお、多孔性集電体を含めて、その他の条件等については、第一の製造例の場合と同様にすることができる。
【0025】
これにより、Ni微細粒子が焼結したNi微細粒子焼結層、及び、Ni微細粒子とNi細粒子とが焼結したNi混合粒子焼結層から構成されるNi粒子焼結体が得られて、多孔性集電体とNi微細粒子焼結層とが強固に接合されると共に、Ni微細粒子との焼結を介してNi細粒子がNi粒子焼結体中に固定される。また、好適には、Ni粒子焼結体の比表面積を1.0m
2/g以上にすることができる。Ni粒子焼結体における各層の厚さについては、Ni微細粒子焼結層が50〜150μmであるのがよく、Ni混合粒子焼結層が50〜300μmであるのがよく、Ni微細粒子焼結層とNi混合粒子焼結層とを合せたNi粒子焼結体の厚さが100〜450μmであるのがよい。
【0026】
また、本発明における第三の製造例では、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子を含んだNi微細粒子スラリーの他に、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子を含んだNi細粒子スラリーを用いて、Ni粒子焼結体を形成する。
【0027】
先ず、上述したNi微細粒子スラリーをニッケルめっきが施された多孔性集電体に塗布して、溶媒乾燥させた後、次いで、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子を含んだNi細粒子スラリーを塗布し、必要に応じて溶媒乾燥させて、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度でNi微細粒子及びNi細粒子を焼結させる。その際、Ni微細粒子が焼結してNi微細粒子焼結層が形成されると共に、このNi微細粒子焼結層の表面にNi細粒子の一部が焼結してNi細粒子からなるNi細粒子層が形成されるため、未焼結のNi細粒子を除去して、Ni粒子焼結体を得るようにする。Ni細粒子スラリーにおけるNi細粒子の平均粒径が0.5μm未満であると、異粒径を用いる効果が少なくなり、反対に、10μmを超えると、Ni混合粒子スラリーの粘度が高くなり、塗布が困難になるおそれがある。また、Ni細粒子スラリーにおけるNi細粒子の平均粒径の好ましい範囲は1〜8μmである。
【0028】
ここで、Ni微細粒子スラリーの分散剤や有機溶媒については、第一の製造例で説明したものと同様のものを用いることができる。また、Ni細粒子スラリーとしては公知のものを用いることができ、例えば、メチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとを含む水溶液にNi細粒子を分散させて得ることができる。もしくは、第一の製造例で使用した溶媒にNi細粒子を分散せしめて得ることができる。Ni細粒子スラリーとしては、例えば、Ni細粒子を20〜60質量%、有機溶媒を40〜80質量%の割合で配合されるのがよい。
【0029】
一方、未焼結のNi細粒子を除去する手段としては、例えば、振動除去や液中での洗浄のほか、Niは磁性体であることから未焼結Niを磁石で回収すること等が挙げられるが、これらに制限されない。なお、多孔性集電体を含めて、その他の条件等については、第一の製造例の場合と同様にすることができる。
【0030】
これにより、Ni微細粒子が焼結したNi微細粒子焼結層と、このNi微細粒子焼結層の表面に焼結したNi細粒子からなるNi細粒子層とから構成されるNi粒子焼結体が得られて、多孔性集電体とNi微細粒子焼結層とが強固に接合されると共に、Ni細粒子がNi粒子焼結体中に固定される。また、好適には、Ni粒子焼結体の比表面積を2.5m
2/g以上にすることができる。更に、Ni粒子焼結体における各層の厚さについては、Ni微細粒子焼結層が50〜150μmであるのがよく、Ni細粒子層が0.5〜10μmであるのがよく、Ni微細粒子焼結層とNi細粒子層とを合せたNi粒子焼結体の厚さが50〜160μmであるのがよい。
【0031】
また、本発明における第四の製造例では、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子を含んだNi微細粒子スラリーの他に、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子を含んだNi細粒子スラリーと、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子を含んだ別のNi微細粒子スラリーとを用いて、Ni粒子焼結体を形成する。
【0032】
先ず、第1のNi微細粒子スラリーとして上述したNi微細粒子スラリーを多孔性集電体に塗布して、溶媒乾燥させた後、次いで、SEM観察で測定される平均粒径0.5〜10μmのNi細粒子を含んだNi細粒子スラリーを塗布し、必要に応じて溶媒乾燥させて、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度でNi微細粒子及びNi細粒子を焼結させる。このとき、多孔性集電体上にNi微細粒子焼結層とNi細粒子層とが形成される点は上記第三の製造例と同様であるため、未焼結のNi細粒子は除去する。この第四の製造例では、更に、分散剤で保護され、SEM観察で測定される平均粒径15〜150nmのNi微細粒子と、有機溶媒とを含んだ第2のNi微細粒子スラリーを塗布して、再び、H
2を含む還元雰囲気中、230℃以上400℃以下の温度でNi微細粒子及びNi細粒子を焼結させ、Ni細粒子層上にNi微細粒子からなる第2のNi微細粒子焼結層を形成して、Ni粒子焼結体を得る。
【0033】
ここで、第2のNi微細粒子焼結層を得る第2のNi微細粒子スラリーについては、最初の焼結で形成されたNi細粒子層の表面に第2のNi微細粒子焼結層を薄く積層させるのが好適であることから、好ましくは、第1のNi微細粒子スラリーに比べて2〜10倍に希釈されるように、有機溶媒の比率を高めたものを用いるのがよい。また、この第四の製造例について、Ni微細粒子スラリーにおける分散剤や有機溶媒は第一の製造例で説明したものと同様のものを用いることがでる。また、Ni細粒子スラリーや未焼結のNi細粒子を除去する手段については、第三の製造例と同様である。更には、多孔性集電体を含めて、その他の条件等についても第一の製造例の場合と同様にすることができる。
【0034】
これにより、Ni微細粒子が焼結した第1のNi微細粒子焼結層と、このNi微細粒子焼結層の表面に焼結したNi細粒子からなるNi細粒子層と、Ni細粒子層に焼結したNi微細粒子からなる第2のNi微細粒子焼結層とから構成されるNi粒子焼結体が得られて、多孔性集電体と第1のNi微細粒子焼結層とが強固に接合されると共に、Ni細粒子層を介して、最表面に第2のNi微細粒子焼結層が形成されて、Ni粒子焼結体の表面積をより大きくすることができる。好適には、Ni粒子焼結体の比表面積を3m
2/g以上にすることができる。また、第1のNi微細粒子焼結層の厚さは50〜150μm、Ni細粒子層の厚さは0.5〜10μm、第2のNi微細粒子焼結層の厚さは0.015〜1μmであるのがよく、これらを合計したNi粒子焼結体の厚さは50〜161μmであるのがよい。
【0035】
そして、上記の各製造例を含めて、本発明によって得られたニッケル焼結基板は、例えば、ニッケル塩の高濃度溶液(含浸液)を細孔内に含浸した後にアルカリ溶液に浸漬して化学的に中和する化学含浸法や電解含浸法等の公知の手法により、細孔内に水酸化ニッケルを析出させ、KOH水溶液中で充放電するなどして不純物を除去し、更には、水洗や乾燥処理等を施すことで、アルカリ蓄電池用の正極を得ることができる。