【解決手段】本発明は、エラストマー組成物からなる誘電層と、上記誘電層の表面側及び裏面側に積層される電極層とを有する複数の静電容量型センサを備える歪み計測装置であって、上記複数の静電容量型センサが帯状の平面形状を有し、1の静電容量型センサの少なくとも一方の端部に少なくとも1つの他の静電容量型センサの一方の端部が互いの長手方向が一致しない向きで連結され、上記複数の静電容量型センサの長手方向の伸縮量から歪み量及び歪み方向を計測する。上記複数の静電容量型センサが平面視で三角形の各辺を構成するよう連結されるとよい。また、上記複数の静電容量型センサが規則的に配設されるとよい。また、上記複数の静電容量型センサがランダムに配設されるとよい。また、上記電極層がカーボンナノチューブを含むとよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、複雑で広い範囲の形状変化に伴う歪みの方向及び大きさを計測できる歪み計測装置、歪み量及び歪み方向計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、エラストマー組成物からなる誘電層と、上記誘電層の表面側及び裏面側に積層される電極層とを有する複数の静電容量型センサを備える歪み計測装置であって、上記複数の静電容量型センサが帯状の平面形状を有し、1の静電容量型センサの少なくとも一方の端部に少なくとも1つの他の静電容量型センサの一方の端部が互いの長手方向が一致しない向きで連結され、上記複数の静電容量型センサの長手方向の伸縮量から歪み量及び歪み方向を計測することを特徴とする。
【0009】
当該歪み計測装置が備える静電容量型センサは、エラストマー組成物からなる誘電層の表面側及び裏面側に電極層が積層された帯状であるため、長手方向に対して高い伸縮性を有する。また、当該歪み計測装置は、高い伸縮性を有する複数の静電容量型センサの端部同士が互いの長手方向が一致しない向きで連結されているので、複数の静電容量型センサの伸縮量に基づいて、複数の静電容量型センサ間の角度変化に基づく歪みの方向及び大きさを高精度に計測できる。
【0010】
上記複数の静電容量型センサが、平面視で三角形の各辺を構成するよう連結されるとよい。このように平面視で三角形の各辺を構成するように複数の静電容量型センサを連結することで、より容易かつ確実に歪みの方向及び大きさを高精度に計測できる。
【0011】
上記複数の静電容量型センサが、規則的に配設されるとよい。このように複数の静電容量型センサを規則的に配設することで、歪みの方向及び大きさを計測領域全体で均等に計測することができる。
【0012】
上記複数の静電容量型センサが、ランダムに配設されるとよい。このように複数の静電容量型センサをランダムに配設することで、計測対象の表面に追従し易くすることができるほか、計測領域内における一定領域ごとに計測精度等を異ならせることができる。
【0013】
上記電極層は、カーボンナノチューブを含むことが好ましい。このように電極層がカーボンナノチューブを含むことで、上記各電極層が誘電層の変形に対し優れた追従性を発揮するので、静電容量型センサは、伸長度が大きく柔軟な計測対象物の変形や動作に、より精度よく追従することが可能となる。
【0014】
上記電極層の平均厚みとしては、0.1μm以上10μm以下が好ましい。このように電極層の平均厚みを上記範囲内とすることで、誘電層の表面側及び裏面側に積層された各電極層の導電性を高められると共に誘電層の変形に対してより高い追従性を発揮させることができる。
【0015】
上記エラストマー組成物は、主成分としてウレタンゴムを含むとよい。このように誘電層がウレタンゴムを主成分として含むエラストマー組成物からなることにより、誘電層の繰り返し変形での耐性が優れ、耐久性が向上する。
【0016】
上記誘電層の1軸方向の伸長率としては、30%以上が好ましい。このように誘電層の1軸方向の伸長率を上記下限以上とすることで、柔軟な計測対象物の変形や動作に対し優れた追従性をより効果的に発揮させることができる。
【0017】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、上記歪み計測装置を用いた歪み量及び歪み方向計測方法であって、互いの長手方向が一致しない向きで連結される3以上の静電容量型センサの端部の位置をノード、2つの静電容量型センサが成す角度をセンサ間角度とした場合、静電容量型センサの伸縮によるノード間距離の変化量から伸縮変形後の上記センサ間角度を求めることを特徴とする。
【0018】
当該歪み量及び歪み方向計測方法は、当該歪み計測装置を用いて、長手方向に対して高い伸縮性を有する静電容量型センサの伸縮変形量から伸縮変形後の2つの静電容量型センサが成す角度を求めることにより歪み量及び歪み方向を計測するので、歪み量及び歪み方向を高精度に計測できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の歪み計測装置、歪み量及び歪み方向計測方法は、複雑で広い範囲の形状の変形に伴う歪みの方向及び大きさを計測できるので、塑性変形する部材、人体の表面、衣服の表面等の歪みの方向及び大きさを高精度に計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
【0022】
[第一実施形態]
図1に示すように、当該歪み計測装置は、複数の静電容量型センサ1を備える。各静電容量型センサ1は、帯状の平面形状を有し、1の静電容量型センサ1の少なくとも一方の端部に少なくとも1つの他の静電容量型センサ1の一方の端部が互いの長手方向が一致しない向きで連結部10で連結される。これらの複数の静電容量型センサ1は、点対称となるよう規則的に配設されている。すなわち、複数の静電容量型センサ1は、変形前において
図1に示すように中心点(対称点)から放射線状に当角度間隔(図では45°)で配設される複数の静電容量型センサ1と、この等角度間隔で配設される複数の静電容量型センサ1の中心点と反対側の端部同士を接続する複数の静電容量型センサ1とから構成される。各静電容量型センサ1は、平面視で三角形の各辺を構成するよう連結されており、上記連結部10がこの三角形の頂点に該当する。当該歪み計測装置では、静電容量型センサ1が構成する三角形はすべて合同の直角二等辺三角形である。このように複数の静電容量型センサ1は、平面視で三角形のメッシュを形成するように連結されている。当該歪み計測装置は、これらの複数の静電容量型センサ1の長手方向の伸縮量から歪み量及び歪み方向を計測する。
【0023】
〔静電容量型センサ〕
図2に示すように、静電容量型センサ1は、エラストマー組成物からなる誘電層2と、誘電層2の表面側及び裏面側に積層される表側電極層3及び裏側電極層4とを備え、帯状(細長い長方形状)の平面形状を有している。静電容量型センサ1の一方の端部の表側には、表側電極層3に電気的に接続する表側接続部5が配置され、他方の端部の裏側には、裏側電極層4に電気的に接続する裏側接続部6が配置されている。また、誘電層2、表側電極層3及び裏側電極層4を覆うように保護層7が設けられている。
【0024】
上記静電容量型センサ1は、表側接続部5及び裏側接続部6に一定の電圧が印加されることで、表側接続部5と裏側接続部6との間の静電容量を測定できる。静電容量型センサ1を構成する誘電層2、表側電極層3及び裏側電極層4は伸縮性を有しているので、帯状の静電容量型センサ1は、主に長手方向に伸縮し、この伸縮による表側電極層3及び裏側電極層4の面積の変化に伴って静電容量が変化する。当該歪み計測装置は、この静電容量の変化から各静電容量型センサ1の伸縮量を取得する。
【0025】
<誘電層>
上記誘電層2は、弾性変形可能な層である。誘電層2は、帯状を呈しており、エラストマー組成物によって均質に形成されている。
【0026】
この誘電層2の平均厚みの下限としては、10μmが好ましく、30μmがより好ましい。誘電層2の平均厚みの上限としては、1,000μmが好ましく、200μmがより好ましい。誘電層2の平均厚みが上記下限未満であると、膜厚精度の高いエラストマー層の加工が難しく十分な測定精度が確保できないおそれがある。また、誘電層2の平均厚みが上記上限を超えると、静電容量が小さくなり検出感度が低下するだけでなく、静電容量型センサ1が厚くなりすぎ計測対象物への追従性が損なわれるおそれがある。
【0027】
また、誘電層2の平均幅の下限としては、0.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。また、誘電層2の平均幅の上限としては、30mmが好ましく、20mmがより好ましい。誘電層2の平均幅が上記下限未満になると、測定される静電容量が小さくなるため、測定誤差が大きくなるおそれがある。また、誘電層2の平均幅が上記上限を超えると、表側電極層3と裏側電極層4との間隔が大きくなり、歪み分布の空間分解能が低くなる。
【0028】
また、誘電層2の常温における比誘電率の下限としては、2が好ましく、5がより好ましい。誘電層2の比誘電率が上記下限未満であると、静電容量が小さくなり、センサとして利用した際に十分な感度が得られないおそれがある。
【0029】
さらに、誘電層2のヤング率の下限としては、0.01MPaが好ましく、0.1MPaがより好ましい。誘電層2のヤング率の上限としては、5MPaが好ましく、1MPaがより好ましい。ヤング率が上記下限未満であると、誘電層2の柔軟性が高くなりすぎ、加工が難しく、十分な測定精度が得られないおそれがある。一方、ヤング率が上記上限を超えると、誘電層2の柔軟性が低くなりすぎ、計測対象物への追従性が損なわれるおそれがある。
【0030】
また、誘電層2の1軸方向の伸長率の下限としては、30%が好ましく、50%がより好ましく、100%がさらに好ましい。誘電層2の1軸方向の伸長率を上記下限以上とすることで、静電容量型センサ1は、柔軟な計測対象物の変形や動作に対し、優れた追従性を効果的に発揮することができる。なお、誘電層2の1軸方向の伸長率の上限は特に限定されないが、例えば300%である。
【0031】
(エラストマー組成物)
上記誘電層2を構成するエラストマー組成物は、エラストマーを主成分とする。ここで「主成分」とは、エラストマー組成物を構成する成分のうち最も含有量が多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。このエラストマーとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等を用いることができる。誘電層2を構成するエラストマーとしては、高い伸び性を有し、繰り返し変形での耐性に優れ、永久歪み性が小さいシリコーンゴム、ウレタンゴムが好ましい。ウレタンゴムは、静電容量型センサ1に変形が加えられても永久歪みが小さいので好ましい。永久歪みが小さいと、繰り返し使用しても(例えば伸長率100%の伸縮変形を1000回繰り返したとしても)初期静電容量が変化しにくく、複数の静電容量型センサ1が配設されている当該歪み計測装置が、歪み計測装置として優れた計測精度を長期間にわたって維持することができる。さらにウレタンゴムは、表側電極層3及び裏側電極層4の導電性材料であるカーボンナノチューブとの密着性に優れる。
【0032】
誘電層2を形成するエラストマー組成物は、計測対象物や計測目的に応じて材料を選択することができ、配合の改良を施すことが可能である。上記エラストマー組成物は、上記エラストマー以外に架橋剤、可塑剤、鎖延長剤、加硫促進剤、触媒、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0033】
また、上記エラストマー組成物は、上記エラストマー以外に、チタン酸バリウムなどの誘電フィラーを含有することができる。誘電フィラーを含有することで、静電容量を大きくして検出感度を高めることができる。
【0034】
<表側電極層>
表側電極層3は、帯状を呈する誘電層2の表面側に積層されている。表側電極層3の一方の端部は、表側接続部5に電気的に接続されている。
【0035】
表側電極層3はカーボンナノチューブを含む。また、表側電極層3は、カーボンナノチューブ以外にも、エラストマー等のつなぎ材料を含んでもよい。このようなつなぎ材料を含むことで、表側電極層3と上記誘電層2との接着強度の向上、表側電極層3の膜強度の向上等を図ることができ、さらにカーボンナノチューブを含む塗布液の塗工時の環境安全性(カーボンナノチューブの毒性やアスベスト類似の問題)の確保に寄与する。但し、表側電極層3の全固形成分に対する上記つなぎ材料の含有量は少ない方が好ましい。上記つなぎ材料の含有量を少なくすることで、繰り返し変形に対する電気抵抗の変化が少なく耐久性に優れるとともに、誘電層2の変形の阻害を抑制することができる。
【0036】
上記カーボンナノチューブとしては、例えば単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブを用いることができる。これらのうち、直径がより小さくアスペクト比がより大きい単層カーボンナノチューブが好ましい。上記カーボンナノチューブの平均繊維長の下限としては、100μmが好ましく、150μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。また、上記カーボンナノチューブの平均繊維長の上限としては、700μmが好ましく、600μmがより好ましく、500μmがさらに好ましい。また、上記カーボンナノチューブのアスペクト比としては、1,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、30,000以上が特に好ましい。このような超長尺のカーボンナノチューブを用いることで、表側電極層3は、優れた伸縮性を発揮し、誘電層2の変形に対する追従性を向上させることができる。
【0037】
表側電極層3を形成する材料として長尺のカーボンナノチューブを用いることで、帯状の表側電極層3は優れた伸縮性を発揮し、誘電層2の伸縮変形に伴う表側電極層3の追従性を向上させることができる。また、長尺のカーボンナノチューブを含む表側電極層3は、繰り返し変形させた際に電気抵抗の変動が少ないため、長期信頼性にも優れる。この理由は、長尺のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ自体が伸縮しやすく、その結果、表側電極層3が誘電層2に追従して伸長した時に導電パスが切断されにくいためと考えられる。また、カーボンナノチューブを含む導電性組成物を用いて表側電極層3を形成した場合、その表側電極層3の導電性はカーボンナノチューブ同士が接触する(電気接点を形成する)ことにより発現する。ここで、長尺のカーボンナノチューブを用いた場合は、短尺のカーボンナノチューブを用いた場合に比べて、少ない電気接点数で導電性が確保されるとともに、1本のカーボンナノチューブにおける他のカーボンナノチューブとの電気接点数が多くなるため、より高次元の電気的ネットワークが形成される。このことにより、長尺のカーボンナノチューブを用いることで電気抵抗の変動が少なくなり、長期信頼性にも優れる表側電極層3が形成されると考えられる。
【0038】
上記カーボンナノチューブの平均繊維径の下限としては、0.5nmが好ましく、1nmがより好ましい。また、上記カーボンナノチューブの平均繊維径の上限としては、30nmが好ましく、20nmがより好ましい。カーボンナノチューブの平均繊維径がこの範囲であると、変形が加えられた際にカーボンナノチューブがバネのように伸び、高い追従性等を発揮することにより、上記表側電極層3が誘電層2の変形に対して高い追従性を発揮する。単層カーボンナノチューブは、平均繊維径が小さく(平均繊維径は製法に依存して0.5〜4nm程度)柔軟性に富む点で好ましい。一方、多層カーボンナノチューブは、平均繊維径が大きく剛直であるため、多層カーボンナノチューブの中ではより平均繊維径の小さいもの(例えば平均繊維径が30nm以下)が好ましい。
【0039】
上記つなぎ材料として含むエラストマー材料としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上併用しても良い。
【0040】
上記つなぎ材料としては、生ゴム(天然ゴム及び合成ゴムの加硫させていない状態のもの)も好ましい。このように比較的弾性の弱い材料を用いることで、誘電層2の変形に対する表側電極層3の追従性を高めることができる。
【0041】
また、表側電極層3は、上記カーボンナノチューブ及びエラストマー材料以外にも、各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えばカーボンナノチューブの分散のための分散剤、バインダーのための架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、鎖延長剤、酸化防止剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。表側電極層3の導電性を向上させる目的で、ドーパントとして電荷移動材料やイオン液体等の低分子材料をコーティング剤又は添加剤として用いる手法も考えられるが、表側電極層3に高アスペクト比のカーボンナノチューブを用いることで、特段処理をしなくても、十分な導電性を確保することができる。また、上記低分子材料を用いると、誘電層2のエラストマー又は誘電層2のエラストマー中の可塑剤に上記低分子材料が移行することに起因すると考えられる誘電層2の絶縁性の低下(体積抵抗率の低下)や、表側電極層3のドーパント効果の喪失、繰り返し変形に対する耐久性の低下、計測値の信頼性の低下を招来する可能性がある。従って、上記低分子材料を含まないことが好ましい。
【0042】
表側電極層3におけるカーボンナノチューブの全固形成分に対する含有量の下限としては、51質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、95質量%が特に好ましい。さらには、カーボンナノチューブ濃度を100質量%とし、表側電極層3が実質的にカーボンナノチューブのみからなる構成とすることが最も好ましい。また、表側電極層3は、上記エラストマー材料を含まない構成とすることが好ましい。このように導電性材料であるカーボンナノチューブ以外の含有割合を少なくすることで、繰り返し変形を受けても表側電極層3の導電性低下(電気抵抗の増加)を抑制することができ、耐久性に優れるものとすることができる。
【0043】
また、表側電極層3における長尺のカーボンナノチューブ(例えば平均繊維長100μm以上700μm以下のカーボンナノチューブ)の全固形成分に対する含有量の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。表側電極層3が上記下限以上の含有量の長尺のカーボンナノチューブを含むことで、表側電極層3が誘電層2の変形に対して高い追従性を発揮する。表側電極層3は、少なくとも上記下限以上の含有量の長尺のカーボンナノチューブを含んでいれば、短尺のカーボンナノチューブ(平均繊維長100μm未満)を混ぜてもよい。短尺のカーボンナノチューブを混ぜることで、表側電極層3が低コストで形成できる。
【0044】
また、表側電極層3の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。表側電極層3の平均厚みの上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。表側電極層3の平均厚みを上記範囲とすることで、表側電極層3が誘電層2の変形に対し優れた追従性を発揮することができる。表側電極層3の平均厚みが上記下限未満では導電性が不足し検出精度が低下するおそれがある。一方、表側電極層3の平均厚みが上記上限を超えるとカーボンナノチューブの補強効果により静電容量型センサ1が硬くなり、静電容量型センサ1の計測対象物への追従性が低下して誘電層2の変形を阻害するおそれがある。
【0045】
表側電極層3の平均幅は、表側電極層3を積層する誘電層2の幅以下の範囲で適宜設定すればよく、例えば0.5〜30mmとすることができる。
【0046】
また、誘電層2に積層された上記表側電極層3の透明性(可視光の透過率)は特に限定されず、透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0047】
上記エラストマー組成物からなる誘電層2は、容易に透明な誘電層とすることができ、上記表側電極層3及び裏側電極層4の透明性を高めることにより、静電容量型センサ1を全体として透明とすることができる。静電容量型センサ1として透明性が要求される場合には、透明な(例えば可視光(550nm光)の透過率が85%以上である)電極層を形成すればよい。
【0048】
一方、電極層の透明性は静電容量型センサ1としての性能には影響しない。そのため、透明性が要求されない場合には不透明な電極層を形成することで容易にかつ安価にセンサシートを製造することができる。透明な電極層を例えばカーボンナノチューブを含む導電性組成物を用いて形成する場合、カーボンナノチューブに対して高度な分散化処理や精製処理等の前処理が必要となって電極層の形成工程が煩雑となるため経済的に不利となる。
【0049】
また、表側電極層3は、カーボンナノチューブを含む塗布液の塗布により形成されることが好ましい。例えば誘電層2上にカーボンナノチューブを含む塗布液を直接スプレー塗工などにより塗布して、表側電極層3を形成させることが好ましい。これにより、表側電極層3と誘電層2との密着性が向上し、表側電極層3と誘電層2との層間剥離が抑制される。
【0050】
<裏側電極層>
裏側電極層4は、帯状を呈する誘電層2の裏面側に積層されている。裏側電極層4の一方の端部は、裏側接続部6に電気的に接続されている。
【0051】
裏側電極層4の構成は、上述の表側電極層3と略同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0052】
<保護層>
誘電層2、表側電極層3及び裏側電極層4を覆う保護層7は、表側電極層3及び裏側電極層4と外部の部材とが導通するのを抑制するために設けられている。
【0053】
また、保護層7を設ける目的は、表側電極層3及び裏側電極層4の保護に限定されるものではない。例えば着色した保護層を形成することにより、誘電層2、表側電極層3及び裏側電極層4を外部から見えなくできる。また、例えば保護層7の表面に接着性又は粘着性を有する層を付与することで、計測対象物を静電容量型センサ1に貼り付けることができる。また、例えば保護層の表面を摩擦係数の低い表面層とすることもできる。
【0054】
保護層7の材質は特に限定されず、その形成目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば誘電層2に用いたエラストマー組成物と同様のものを用いることができる。上記保護層7は、誘電層2と略同じベースポリマーを含んで形成されていることが好ましく、これにより誘電層2との高い接着性が得られる。
【0055】
〔連結部〕
上述した構成を有する帯状の静電容量型センサ1は、
図1に示すように互いの端部同士が連結部10で連結されている。静電容量型センサ1同士の連結方法としては、柔軟性が損なわれず、静電容量型センサ1の電極層が短絡しない連結方法であれば特に限定されない。例えば、静電容量型センサ1の端部同士は接着剤で接合されてもよいし、ボルトで連結されてもよい。また、高い柔軟性を有する薄膜、例えばエラストマー組成物からなる薄膜の表面に、静電容量型センサ1が変形しても端部同士が離間しないように複数の静電容量型センサ1が積層された構成としてもよい。
【0056】
〔歪み量及び歪み方向の計測方法〕
当該歪み計測装置は、LCRメータなどで構成される測定手段(図示せず)の測定用配線を各静電容量型センサ1の表側接続部5及び裏側接続部6に接続して、この測定手段によって表側接続部5と裏側接続部6との間に一定の電圧を印加することにより、その接続された表側接続部5と裏側接続部6との間の静電容量が測定される。測定された静電容量に基づいて、その静電容量型センサ1の伸縮量が求められる。全ての静電容量型センサ1について、順次又は同時に表側接続部5と裏側接続部6との間の静電容量を測定することで、各静電容量型センサ1の伸縮量が求められる。当該歪み計測装置は、これらの各静電容量型センサ1の伸縮量に基づいて、複数の静電容量型センサ1が連結されて形成された面における歪み量及び歪み方向を求める。
【0057】
当該歪み量及び歪み方向計測方法は、上記歪み計測装置の互いの長手方向が一致しない向きで連結される3以上の静電容量型センサの端部の位置をノード、2つの静電容量型センサが成す角度をセンサ間角度とした場合、静電容量型センサの伸縮によるノード間距離の変化量から伸縮変形後の上記センサ間角度を求め、これらの求めたセンサ間角度から歪み量及び歪み方向を算出するものである。以下、各静電容量型センサ1の伸縮量から歪み量及び歪み方向を求める原理及び方法について詳細に説明する。
【0058】
図3を用いて、複数の静電容量型センサの伸縮量から歪み量及び歪み方向を求める原理を説明する。
図3に示す0〜4及びnは、ノードの位置を示している。ノードは、静電容量型センサの端部の位置(
図1の歪み計測装置では連結部10に該当)を示している。すなわち、各ノードを結ぶ直線が各静電容量型センサを示している。
【0059】
ノードiとノードjとの距離(すなわち、静電容量型センサの長さ)をl
ijとし、センサ要素ijとセンサ要素ikが成す角度(すなわち、ijで両端が示される静電容量型センサと、ikで両端が示される静電容量型センサとが成す角度)をθ
jkとしたとき、負荷をかけていないとき(変形前)の角度θ
jkは、下記式(1)で表される。
【0061】
そして、負荷をかけて変形した後のセンサ要素ijの伸び(負荷をかける前のl
ijに対する負荷をかけた後のl
ijの比)をn
ijとしたとき、変形後の角度θ´
jkは、下記式(2)で表される。
【0063】
従って、あるノードの周囲の各センサ要素ijの変形後の伸びn
ijから、変形後の各要素間の角度θ´
jkを算出することができる。
【0064】
図4に、本実施形態の歪み計測装置の静電容量型センサのモデルを示す。
図4(a)は、ノード0を中心とする平面視正方形の各頂点及び各辺の中点の位置に8つのノード1〜8を設けたモデルを示している。
【0065】
図4(a)に示すモデルに対して単純な剪断の負荷がかかると、各ノード1〜8の位置は、ノード0を中心として
図4(b)に示すように変化する。各ノードが
図4(b)のように変化した場合について、このモデルの歪み量及び歪み方向を求める手順1〜手順3を以下に説明する。
【0066】
(手順1)
図4(a)に示す変形前の各センサ要素jkの長さl
jkは既知である。そして、各センサ要素jkの変形後の伸びn
jkは、そのセンサ要素jkの静電容量を計測することにより求められる。上記式(2)を用いて、長さl
jk及び伸びn
jkから、変形後の全ての要素間角度θ´
jkを求める。そして、
図5に示すように、基準ノード0を中心として各要素間角度θ´
jkの方向に各伸びn
01〜n
08をプロットする。
【0067】
(手順2)
次に、
図5で各伸びn
01〜n
08をプロットした各点を通る楕円を、
図6に示すように描く。
【0068】
(手順3)
次に、
図7に示すように、
図6で描いた楕円の長軸半径λ
1、短軸半径λ
2及び長軸方向の角度θを計算する。ここで求めた長軸半径λ
1及び短軸半径λ
2がそれぞれ長軸方向及び短軸方向の伸びである。また、長軸方向の角度θが、基準ノード0を中心としたこのモデルの歪み方向である。
【0069】
以上の手順を用いることにより、あるノードを基準とした歪み量及び歪み方向を求めることができる。
【0070】
〔利点〕
当該歪み計測装置は、高い伸縮性を有する複数の静電容量型センサ1の端部同士が、互いの長手方向が一致しない向きで、さらに平面視で三角形の各辺を構成するように連結されているので、複数の静電容量型センサ1の伸縮量に基づいて、複数の静電容量型センサ1間の角度変化に基づく歪みの方向及び大きさを高精度に計測できる。
【0071】
また、当該歪み計測装置は、複数の静電容量型センサ1が規則的に配設されるため、歪みの方向及び大きさを計測領域全体で均等に計測することができる。
【0072】
なお、当該歪み計測装置は、複数の静電容量型センサ1の表側及び裏側のいずれも利用面として使用することができる。また、当該歪み計測装置の静電容量型センサ1の配置パターンは
図1のものに限定されず、より多数の三角形を含む構成とすることもできる。
【0073】
[第二実施形態]
図8に示す本発明の第二実施形態に係る歪み計測装置は、複数の静電容量型センサ1を備える。各静電容量型センサ1は、帯状の平面形状を有し、1の静電容量型センサ1の少なくとも一方の端部に少なくとも1つの他の静電容量型センサ1の一方の端部が互いの長手方向が一致しない向きで連結部10で連結される。これらの複数の静電容量型センサ1は、変形前において
図8に示すようにランダムに配設されている。各静電容量型センサ1は、平面視で三角形の各辺を構成するよう連結されており、上記連結部10がこの三角形の頂点に該当する。当該歪み計測装置では、静電容量型センサ1が構成する三角形には種々の形状が含まれる。
【0074】
上記静電容量型センサ1及び連結部10は、上記第一実施形態の歪み計測装置と同様のものである。本実施形態の歪み計測装置は、
図1に示した第一実施形態に対し、複数の帯状の静電容量型センサ1をランダムに配設している点で異なる。本実施形態の歪み計測装置も第一実施形態で説明した手順を用いることにより、これらの複数の静電容量型センサ1の長手方向の伸縮量から歪み量及び歪み方向を計測することができる。
【0075】
〔利点〕
当該歪み計測装置は、第一実施形態の歪み計測装置と同様に、各静電容量型センサ1の伸縮量に基づいて、静電容量型センサ1間の角度変化に基づく歪みの方向及び大きさを高精度に計測できる。これにより、複雑で広い範囲の形状の変形に対して、高精度に歪みの量及び方向を計測することができる。また、当該歪み計測装置は、静電容量型センサ1がランダムに配設されるため、計測対象の表面に追従し易くすることができるほか、計測領域内における一定領域ごとに計測精度等を異ならせることができる。
【0076】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施態様の他、種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0077】
上述した歪み計測装置は、1の静電容量型センサの両端部が他の静電容量型センサの端部に連結される構成としたが、
図9に示すように、一方の端部が他の静電容量型センサの端部に連結されない静電容量型センサが含まれていてもよい。
図9に示す歪み計測装置は、外側に配置される一部の静電容量型センサ1の端部が支持枠20に固定部11で固定されている。この歪み計測装置は支持枠20で支持や固定をすることができ、例えば手で支持枠20を持って計測対象部分に接触させることができるため、取扱いが容易となる。
【0078】
また、上記実施形態では、誘電層2、表側電極層3及び裏側電極層4を覆うように保護層7を設ける構成について説明したが、保護層7が省略された構成としてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、両端に一対の電極が形成される静電容量型センサを連結する構成について説明したが、複数の電極対が形成される静電容量型センサを用いて、これらの静電容量型センサの端部同士を連結する構成としてもよい。つまり、1つの静電容量型センサの伸縮量が取得できるものであれば、各静電容量型センサの伸縮量が複数の電極対で測定される静電容量に基づいて求められるものであってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、長手方向の両端付近まで電極層が形成される静電容量型センサを用いたが、静電容量型センサの電極層が端部付近まで形成されていなくてもよい。つまり、当該歪み計測装置で用いる静電容量型センサは、長手方向に伸縮することで静電容量が変化するものであればよく、長手方向の一部分に電極層が形成された静電容量型センサを用いてもよい。このように静電容量型センサの端部に電極層を形成しない領域を形成することで、この領域を連結部として使用することができる。