(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-200534(P2015-200534A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】波長分散測定方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20151016BHJP
【FI】
G01M11/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-78440(P2014-78440)
(22)【出願日】2014年4月7日
(11)【特許番号】特許第5760115号(P5760115)
(45)【特許公報発行日】2015年8月5日
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】木内 等
(57)【要約】
【課題】本発明は、波長分散を広帯域に渡って同時に測定することができる波長分散測定方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】光成分の周波数間隔が互いに異なるコヒーレントな第1及び第2光コム信号22a,24aを用いる。第1及び第2光コム信号22a,24aを光混合器3に直接入力した際の光混合器3の出力から第1及び第2光コム信号22a,24aのビート信号である基準信号を取り出す。また、長距離伝送ファイバ1を通して第1光コム信号22aを光混合器3に入力するとともに、第2光コム信号24aを光混合器3に直接入力した際の光混合器の出力から第1及び第2光コム信号22a,24aのビート信号である基準信号を取り出す。基準信号と測定信号との比較により、第1光コム信号22aの各光成分の波長分散情報を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光ファイバを通過したときの光信号の波長分散を測定する波長分散測定方法であって、
所定の周波数間隔で離散された複数の光成分をそれぞれ含むとともに前記周波数間隔が互いに異なる第1及び第2光コム信号を生成する工程と、
前記被測定光ファイバを通して前記第1光コム信号を前記光混合器に入力するとともに、前記第2光コム信号を前記光混合器に直接入力し、該光混合器の出力から前記第1及び第2光コム信号のビート信号である測定信号を取り出す工程と、
前記第1及び第2光コム信号を光混合器に直接入力した際の前記光混合器の出力から取り出された前記第1及び第2光コム信号のビート信号である基準信号と前記測定信号との比較により、前記第1光コム信号が前記被測定光ファイバを通過した際の前記第1光コム信号の各光成分の波長分散情報を得る工程と
を含む波長分散測定方法。
【請求項2】
前記被測定光ファイバを通して前記第1光コム信号を前記光混合器に入力する際、前記被測定光ファイバの終端で反射された前記第1光コム信号を前記光混合器に入力することを特徴とする請求項1記載の波長分散測定方法。
【請求項3】
被測定光ファイバを通過したときの光信号の波長分散を測定する波長分散測定装置であって、
所定の周波数間隔で離散された複数の光成分をそれぞれ含むとともに前記周波数間隔が互いに異なる第1及び第2光コム信号を生成する生成手段と、
前記生成手段に接続された光混合器と、
前記生成手段と前記光混合器の入力端との間に介在され、前記第1光コム信号を前記光混合器に直接入力するか又は前記被測定光ファイバを通して前記第1光コム信号を前記光混合器に入力するかで、前記光混合器への前記第1光コム信号の入力を切り替える光スイッチと、
前記光スイッチと並列に前記生成手段と前記光混合器の入力端との間に介在され、前記第2光コム信号を前記光混合器に直接入力する接続線と、
前記光混合器の出力端に接続され、前記光混合器の出力から前記第1及び第2光コム信号のビート信号を取り出す取出手段と
を備え、
前記光スイッチにより前記第1光コム信号が前記光混合器に直接入力された際の前記ビート信号を基準信号とするとともに、前記光スイッチにより前記第1光コム信号が前記被測定光ファイバを通して前記光混合器に入力された際の前記ビート信号を測定信号として、前記基準信号と前記測定信号との比較により、前記第1光コム信号が前記被測定光ファイバを通過した際の前記第1光コム信号の各光成分の波長分散情報を得るように構成されている
ことを特徴とする波長分散測定装置。
【請求項4】
前記光スイッチと前記被測定光ファイバとの間に介在され、前記生成手段からの前記第1光コム信号を前記被測定光ファイバに入力するとともに、前記被測定光ファイバの終端で反射された前記第1光コム信号を前記光混合器に入力する送受分離器をさらに備えていることを特徴とする請求項3記載の波長分散測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定光ファイバを通過したときの光信号の波長分散を測定する波長分散測定方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信は日本のデータ通信の根幹を担っており、より高速・広帯域化が求められている。光ファイバを用いた広帯域光信号伝送では、光ファイバの受ける外力により広帯域光伝送信号伝送にとって重大な弊害となる様々な効果が生じる。そのような効果の一つとして、波長分散がある。波長分散は、光信号が伝送路を通過する際の伝搬速度の波長による差と定義され、屈折率の波長依存や、圧力、振動、音、曲げ、捻れ及び温度変化等の光ファイバに対するさまざまな外圧が原因となり生じる。波長分散は、光ファイバが風で揺れても生じてしまうため、今後さらに進展するであろう高速通信を行うにあたり実時間での補償技術の確立が重要である。
【0003】
従来用いられていたこの種の波長分散測定方法としては、例えば下記の非特許文献1等に示されている方法を挙げることができる。すなわち、従来方法としては、波長可変光源からの出力光に強度変調を加えて、被測定光ファイバ通過後の波長依存性をマイクロ波ネットワークアナライザ等で測定する変調位相シフト法や、波長可変光源の波長を掃引し干渉計で測定する(干渉計の2経路をそれぞれ参照経路と測定ファイバ経路とする)波長掃引干渉法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Agilent Technologies社のHP、“CD(波長分散)測定”、[平成26年4月3日検索]、インターネット<URL: http://www.home.agilent.com/agilent/editorial.jspx?ckey=803437&id=803437&lc=jpn&cc=JP >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来方法では、試験光の波長を掃引しつつ波長分散を測定するので、波長分散を広帯域に渡って同時に測定することが難しい。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、波長分散を広帯域に渡って同時に測定することができる波長分散測定方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る波長分散測定方法は、所定の周波数間隔で離散された複数の光成分をそれぞれ含むとともに周波数間隔が互いに異なる第1及び第2光コム信号を生成する工程と、被測定光ファイバを通して第1光コム信号を光混合器に入力するとともに、第2光コム信号を光混合器に直接入力し、該光混合器の出力から第1及び第2光コム信号のビート信号である測定信号を取り出す工程と、第1及び第2光コム信号を光混合器に直接入力した際の光混合器の出力から取り出された第1及び第2光コム信号のビート信号である基準信号と測定信号との比較により、第1光コム信号が被測定光ファイバを通過した際の第1光コム信号の各光成分の波長分散情報を得る工程とを含む。
【0008】
また、本発明に係る波長分散測定装置は、所定の周波数間隔で離散された複数の光成分をそれぞれ含むとともに周波数間隔が互いに異なる第1及び第2光コム信号を生成する生成手段と、生成手段に接続された光混合器と、生成手段と光混合器の入力端との間に介在され、第1光コム信号を光混合器に直接入力するか又は被測定光ファイバを通して第1光コム信号を光混合器に入力するかで、光混合器への第1光コム信号の入力を切り替える光スイッチと、光スイッチと並列に生成手段と光混合器の入力端との間に介在され、第2光コム信号を光混合器に直接入力する接続線と、光混合器の出力端に接続され、光混合器の出力から第1及び第2光コム信号のビート信号を取り出す取出手段とを備え、光スイッチにより第1光コム信号が光混合器に直接入力された際のビート信号を基準信号とするとともに、光スイッチにより第1光コム信号が被測定光ファイバを通して光混合器に入力された際のビート信号を測定信号として、基準信号と測定信号との比較により、第1光コム信号が被測定光ファイバを通過した際の第1光コム信号の各光成分の波長分散情報を得るように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の波長分散測定方法及びその装置によれば、光成分の周波数間隔が互いに異なるコヒーレントな第1及び第2光コム信号を用い、第1及び第2光コム信号のビート信号から第1光コム信号の各光成分の波長分散情報を得るので、波長分散を広帯域に渡って同時に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1による波長分散測定方法を実施するための波長分散測定装置を示すブロック図である。
【
図2】
図1の第1及び第2光コム信号を示す説明図である。
【
図3】
図1の波長分散測定装置を用いての波長分散測定方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態2による波長分散測定方法を実施するための波長分散測定装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による波長分散測定方法を実施するための波長分散測定装置を示すブロック図であり、
図2は
図1の第1及び第2光コム信号22a,24aを示す説明図である。
図1において、波長分散測定装置は、長距離伝送ファイバ1(被測定光ファイバ)を通過したときの光信号の波長分散を測定する装置である。この波長分散測定装置には、生成手段2、光混合器3、光スイッチ4、接続線5及び取出手段6が含まれている。
【0012】
生成手段2には、レーザ光源20、光分配器21、第1光コム信号発生器22、第1シンセサイザ23、第2光コム信号発生器24及び第2シンセサイザ25が含まれている。レーザ光源20は、帯域幅が狭い単一の光成分からなる狭線幅レーザ20aを出力する。レーザ光源20からの狭線幅レーザ20aは、光分配器21で分配されて、第1及び第2光コム信号発生器22,24に入力される。
【0013】
第1及び第2光コム信号発生器22,24は、第1及び第2シンセサイザ23,25の制御に応じてコヒーレントな第1及び第2光コム信号22a,24aを生成する。光コム信号とは、所定の周波数間隔(等間隔)で離散された複数の光成分を含む光信号である。
図2に示すように、第1及び第2光コム信号22a,24aは、光成分の周波数間隔が互いに異なる光信号である。以下、第1光コム信号22aの光成分の周波数間隔をFとし、第2光コム信号24aの光成分の周波数間隔をF+fとする。周波数fは、周波数Fに比べ非常に低い周波数である。例えば、周波数Fを25GHzとすると、周波数fは50kHz等である。すなわち、第1光コム信号22aの光成分の周波数間隔と第2光コム信号24aの光成分の周波数間隔との差は僅かである。
【0014】
図1に戻り、光混合器3は、光スイッチ4及び接続線5を介して第1及び第2光コム信号発生器22,24に接続されている。
【0015】
光スイッチ4は、生成手段2と光混合器3の入力端との間に介在されている。具体的には、光スイッチ4は、第1光コム信号発生器22と光混合器3の入力端との間に介在されている。光スイッチ4は、第1光コム信号発生器22からの第1光コム信号22aを光混合器3に直接入力するか又は長距離伝送ファイバ1を通して第1光コム信号22aを光混合器3に入力するかで、光混合器3への第1光コム信号22aの入力を切り替える。本実施の形態では、長距離伝送ファイバ1の終端は光混合器3の入力端に接続されている。
【0016】
接続線5は、光スイッチ4と並列に生成手段2と光混合器3の入力端との間に介在されている。具体的には、接続線5は、第2光コム信号発生器24と光混合器3の入力端との間に介在されている。接続線5は、第2光コム信号発生器24からの第2光コム信号24aを光混合器3に直接入力する。
【0017】
なお、第1及び第2光コム信号22a,24aを光混合器3に直接入力するとは、長距離伝送ファイバ1を通さずに第1及び第2光コム信号22a,24aを光混合器3に入力することを意味する。
【0018】
光混合器3は、第1光コム信号22aと第2光コム信号24aとを混合する。光混合は、光分配と可逆の動作である。
【0019】
取出手段6には、低周波光検出器60とFFT位相検出器61(高速フーリエ変換位相検出器)とが含まれている。低周波光検出器60は、光混合器3の出力に含まれる第1及び第2光コム信号22a,24aのビート信号60aを取り出す。このビート信号60aは、第1及び第2光コム信号22a,24aの各光成分の周波数差f,2f,3f…nf(nは4以上の自然数)(
図2参照)の周波数をそれぞれ有する複数の信号成分からなる信号であり、低周波マイクロ波コム信号として取り出すことができる。FFT位相検出器61は、ビート信号60aのそれぞれの信号成分の位相を検出する。
【0020】
次に、
図3は、
図1の波長分散測定装置を用いての波長分散測定方法を示すフローチャートである。
図1の波長分散測定装置を用いて長距離伝送ファイバ1を通過したときの光信号の波長分散を測定するには、まず、生成手段2により第1及び第2光コム信号22a,24aを生成する(ステップS1)。
【0021】
その次に、光スイッチ4を制御して、長距離伝送ファイバ1を通さずに第1及び第2光コム信号22a,24aを光混合器3に入力するとともに、そのときの光混合器3の出力から低周波光検出器60により第1及び第2光コム信号22a,24aのビート信号60aを取り出す(ステップS2)。このビート信号60aは、長距離伝送ファイバ1を含まない状態における第1光コム信号22aの搬送路で第1光コム信号22aが受ける影響を含む信号であり、基準信号として扱われる。
【0022】
その次に、光スイッチ4を制御して、長距離伝送ファイバ1を通して第1光コム信号22aを光混合器に入力するとともに、長距離伝送ファイバ1を通さずに第2光コム信号24aを光混合器3に入力し、そのときの光混合器3の出力から低周波光検出器60により第1及び第2光コム信号22a,24aのビート信号60aを取り出す(ステップS3)。このビート信号60aは、長距離伝送ファイバ1を通過した際に第1光コム信号22aが受けた影響を含む信号であり、測定信号として扱われる。
【0023】
その次に、上述した基準信号と測定信号との比較により、第1光コム信号22aが長距離伝送ファイバ1を通過した際の第1光コム信号22aの各光成分の波長分散情報を得る(ステップS4)。具体的には、FFT位相検出器61により検出された基準信号の各信号成分の位相とFFT位相検出器61により検出された測定信号の各信号成分の位相との比較により波長分散情報が得られる。
【0024】
なお、波長分散測定装置の状態に大きな変化が無ければ、基準信号にも大きな変化は生じない。このため、適切なタイミングで基準信号の校正を行えば、必ずしも波長分散の測定毎に基準信号を得る必要はない。
【0025】
このような波長分散測定方法及びその装置では、光成分の周波数間隔が互いに異なるコヒーレントな第1及び第2光コム信号22a,24aを用い、第1及び第2光コム信号22a,24aのビート信号から各光成分の波長分散情報を得るので、波長分散を広帯域に渡って同時に測定することができる。また、この構成を採ることで、高周波領域の波長分散をビート信号という低周波信号にて観測でき、波長分散の測定を容易に行うことができる。
【0026】
実施の形態2.
次に、
図4は、本発明の実施の形態2による波長分散測定方法を実施するための波長分散測定装置を示すブロック図である。本実施の形態2の波長分散測定装置は、実施の形態1の波長分散測定装置に送受分離器7を追加したものである。
【0027】
図4に示すように、送受分離器7は、光スイッチ4と長距離伝送ファイバ1との間に介在されている。長距離伝送ファイバ1の終端には、反射器8が設けられている。送受分離器7は、第1光コム信号発生器22(生成手段2)からの第1光コム信号22aを長距離伝送ファイバ1に入力するとともに、長距離伝送ファイバ1の終端で反射された第1光コム信号22aを光混合器3に入力する。第1光コム信号22aには長距離伝送ファイバ1を往復した際の波長分散が生じている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0028】
このような波長分散測定方法及びその装置では、長距離伝送ファイバ1の終端で反射された第1光コム信号22aを光混合器3に入力するので、実際に敷設されている長距離伝送ファイバ1での波長分散を測定できる。
【符号の説明】
【0029】
1 長距離伝送ファイバ(被測定光ファイバ)
2 生成手段
3 光混合器
4 光スイッチ
5 接続線
6 取出手段
7 送受分離器
22a,24a 第1及び第2光コム信号
60a ビート信号