【解決手段】絶縁層30の上に配線層22が形成された配線基板1と、絶縁層30及び配線層22の上に形成された光導波路40と、光導波路40の端側に形成され、傾斜面Sを備えた溝部40aと、傾斜面Sに形成された光路変換ミラーMと、光導波路40の下の配線層22に形成された開口部Gとを備え、溝部40aの下には配線層22が形成されていないことを含む。
前記光導波路は、下から順に、第1クラッド層、コア層及び第2クラッド層を含み、前記溝部は、第2クラッド層の上面から前記第1クラッド層の厚みの途中まで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0015】
図1〜
図9は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す図、
図10は実施形態の光導波路装置を示す図である。以下、光導波路装置の製造方法を説明しながら、光導波路装置の構造を説明する。
【0016】
実施形態の光導波路装置の製造方法では、まず、
図1(a)に示すように、両面側に第1配線層20がそれぞれ形成されたコア基板10を用意する。コア基板10はガラスエポキシ樹脂などの絶縁材料から形成され、第1配線層20は銅などの配線材料から形成される。
【0017】
コア基板10にはその厚み方向に貫通するスルーホールTHが設けられており、その中に貫通導体12が充填されている。両面側の第1配線層20は貫通導体12を介して相互接続されている。
【0018】
あるいは、コア基板10のスルーホールTHの側壁にスルーホールめっき層が形成され、残りの孔に樹脂が充填されていてもよい。この場合は、両面側の第1配線層20はスルーホールめっき層を介して相互接続される。
【0019】
次いで、
図1(b)に示すように、コア基板10の両面側に、第1配線層20に到達するビアホールVHが設けられた絶縁層30をそれぞれ形成する。絶縁層30はエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などから形成される。絶縁層30に形成されるビアホールVHは、レーザ加工によって形成してもよいし、感光性樹脂をフォトリソグラフィによってパターニングして形成してもよい。
【0020】
続いて、
図2(a)に示すように、コア基板10の両面側において、絶縁層30の上及びビアホールVHの側面に無電解めっき又はスパッタ法により、銅などからなるシード層22aを形成する。
【0021】
さらに、
図2(b)に示すように、コア基板10の両面側において、第2配線層が配置される領域に開口部14aが設けられためっきレジスト層14をそれぞれ形成する。
【0022】
次いで、
図3(a)に示すように、コア基板10の両面側において、シード層22aをめっき給電経路に利用する電解めっきにより、ビアホールVH内からめっきレジスト層14の開口部14aに銅などからなる金属めっき層22bを形成する。その後に、
図3(b)に示すように、めっきレジスト層14が除去される。
【0023】
続いて、
図4(a)に示すように、金属めっき層22bをマスクにしてシード層22aをウェットエッチングにより除去する。これにより、コア基板10の両面側の絶縁層30の上に第2配線層22がそれぞれ形成される。第2配線層22はシード層22a及び金属めっき層22bから形成される。
【0024】
両面側の第2配線層22はビアホールVH内のビア導体を介して第1配線層20にそれぞれ接続される。第2配線層22の厚みは、10μm〜20μm、例えば15μmに設定される。
【0025】
コア基板10の上面側には、光導波路が形成される光導波路形成領域Aと、光素子が電気的に接続される光素子接続領域Bとが画定されている。
【0026】
光素子接続領域Bに配置される第2配線層22は電気回路を構築する配線として形成される。
【0027】
また、光導波路形成領域Aに配置される第2配線層22は、グランドプレーンなどの電気回路を構築する配線として形成してもよいし、あるいは、電気回路を構築しないフローティングな配線として形成してもよい。
【0028】
例えば、光導波路形成領域Aに配置される第2配線層22は、前述した電解めっきで金属めっき層22bを形成する際に、コア基板10内での厚みの均一性を確保するために、ダミーパターンとして形成される場合がある。電解めっきでは、めっきパターンのトータルの面積が大きい方がコア基板10内での厚みの均一性が向上するからである。
【0029】
また、光導波路形成領域Aに配置される第2配線層22は、光導波路を形成する際に、下側に沈み込まないように平坦性を確保するためのダミーパターンとして形成される場合がある。
【0030】
図4(a)に
図4(b)の平面図を加えて参照すると、光導波路形成領域Aにおいて、光路変換用の溝部が形成される一端側には、第2配線層22が形成されていない帯状の非形成領域Nが設けられている。配線層の非形成領域Nの幅は、後述する光導波路を形成する際に段差が生じないように20μm〜300μmに設定される。
【0031】
また、光導波路形成領域Aの内部領域では、第2配線層22に複数の帯状のガス抜き開口部Gが並んで設けられる。ガス抜き開口部Gの幅においても、同様に、後述する光導波路を形成する際に段差が生じないように20μm〜300μmに設定される。
【0032】
また、複数のガス抜き開口部Gの間の間隔dは、例えば1mm〜3mm程度であり、光導波路形成領域Aの面積に応じてガス抜き開口部Gの配置個数は任意に設定することができる。
【0033】
以上により、本実施形態で使用される電気信号を扱う配線基板1が製造される。コア基板10の両面側において、配線層の積層数は任意に設定することができる。コア基板10の上面側の最上の配線層を上記した第2配線層22と同様なパターンで形成すればよい。
【0034】
このようにして、光導波路形成領域Aの端側に非形成領域Nが設けられた第2配線層22を備えた配線基板1を用意する。
【0035】
次に、配線基板1の上に光導波路を形成する方法について説明する。
図5に示すように、まず、コア基板10の上面側の絶縁層30及び第2配線層22の上に、第1クラッド層を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成し、フォトリソグラフィに基づいて露光/現像を行う。
【0036】
その後に、感光性樹脂層を100℃〜140℃程度の加熱処理によって硬化させることにより、所望の領域に第1クラッド層42を形成する。第1クラッド層42は、光素子接続領域Bの第2配線層22の接続部の上に第1ホールH1を備えて形成される。第1クラッド層42の厚みは、例えば10μm〜30μm程度である。第1クラッド層42をパターン化せずに全面に形成する場合は、非感光性樹脂を使用してもよい。
【0037】
感光性樹脂層としては、UV硬化型エポキシ樹脂などが好適に使用される。感光性樹脂層の形成方法としては、半硬化状態(B−ステージ)の感光性樹脂シートを貼付してもよいし、あるいは、液状の感光性樹脂を塗布してもよい。
【0038】
続いて、
図6(a)に示すように、第1クラッド層42の上にコア層を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成する。さらに、フォトリソグラフィに基づいて露光/現像を行った後に、感光性樹脂層を100℃〜140℃程度の加熱処理によって硬化させることより、第1クラッド層42の上にコア層44を形成する。
【0039】
図6(b)の平面図を加えて参照すると、コア層44は、第2配線層22の帯状の非形成領域N及び帯状のガス抜き開口部Gに直交する方向に延在して形成される。そして、コア層44は、光導波路形成領域Aの一端側から他端側に第2配線層22の非形成領域N及びガス抜き開口部Gを跨ぐようにして配置される。
【0040】
このようにして、コア層44は、光導波路形成領域Aの第1クラッド層42の上に複数の帯状パターンとして並んで形成される。
【0041】
コア層44の幅は5μm〜80μm程度に設定され、コア層34の厚みは5μm〜80μm程度に設定さる。
【0042】
次いで、
図7(a)に示すように、前述した第1クラッド層42の形成方法と同様な方法により、第1クラッド層42の上に、コア層44を被覆する第2クラッド層46をパターニングして形成する。
【0043】
このとき、第1クラッド層42の第1ホールH1の上に第2クラッド層46の第2ホールH2が連通して配置され、第1ホールH1及び第2ホールH2から接続ホールCHが形成される。接続ホールCHは光素子接続領域Bの第2配線層22の接続部上に配置される。
【0044】
これにより、コア層44が第1クラッド層42及び第2クラッド層46で囲まれた光導波路40が形成される。コア層44の屈折率は、第1クラッド層42及び第2クラッド層46の屈折率よりも高くなるように設定される。
【0045】
このようにして、配線基板1の光導波路形成領域Aの絶縁層30及び第2配線層22の上に光導波路40を形成する。
【0046】
なお、接続ホールCHをフォトリソグラフィによって形成したが、第1クラッド層42及び第2クラッド層46を非感光性樹脂から形成し、レーザによって接続ホールCHを形成してもよい。
【0047】
次いで、
図7(b)に示すように、
図7(a)の構造体の接続ホールCHに、はんだボールを搭載し、260℃程度の温度でリフロー加熱する。これにより、第2配線層22に接続されるはんだ電極24が接続ホールCH内に埋め込まれる。はんだボールを搭載する代わりに、接続ホールCH内にはんだペーストを印刷によって形成してもよい。
【0048】
図7(b)の構造体において、銅から形成される第1、第2配線層20,22はガスをバリアする特性を有し、樹脂から形成される絶縁層30及び光導波路40はガスが容易に透過する特性を有する。
【0049】
このため、
図7(b)の矢印で示すように、加熱処理によってコア基板10及び絶縁層30から発生するガスは、第2配線層22のガス抜き開口部Gを通って光導波路40を透過して外部に排出される。第1配線層20は一般的な電気配線のパターンで形成されて十分な開口部が確保されているため、第1配線層20でガスがバリアされることはない。
【0050】
また、第2配線層22の非形成領域Nにおいても、ガス抜きの経路として機能する。これにより、配線基板1内で発生したガスが第2配線層22の下に留まって膨張するおそれがなくなり、層間剥離などが発生することが防止される。
【0051】
次いで、
図8(a)及び(b)に示すように、切削装置の回転ブレード16aにより、光導波路40の末端側の上面から配線基板1の下面まで切断する。
【0052】
このとき、切断面に銅からなる第1、第2配線層20,22が露出すると、第1、第2配線層20,22が変形して、絶縁層30及び第1クラッド層42との界面から第1、第2配線層20,22が剥離する問題が発生する。
【0053】
この対策として、本実施形態では、切断面に第1配線層20及び第2配線層22が露出しないように、第1配線層20及び第2配線層22が切断部位に存在しないようにしている。
【0054】
これにより、切断面の近傍の第1配線層20の側面が絶縁層30で被覆された状態で切断される。また同様に、切断面の近傍の第2配線層22の側面が第1クラッド層42で被覆された状態で切断される。このようにして、切断面の近傍の配線層の信頼性が確保される。
【0055】
次いで、
図9(a)に示すように、光導波路40の光路変換部になる部分を切削装置の回転ブレード16bにより厚み方向に分断するように切削して加工する。これにより、
図19(b)に示すように、光導波路40の一端側に傾斜面Sを備えた溝部40aが形成される。
【0056】
溝部40aは、前述した第2配線層22の非形成領域Nに対応する領域の光導波路40に形成される。溝部40aの傾斜面Sはコア層44の延在方向(光伝播方向)と所定の角度(好ましくは45°)で交差して傾斜するように形成される。
【0057】
このとき、溝部40aの下の領域は、第2配線層22の非形成領域Nとなっているため、第2配線層22が切削装置の回転ブレード16aで切削されることがない。このため、溝部40aを形成する際に、第2配線層22が変形して第1クラッド層42との界面で剥離が発生することが防止される。
【0058】
続いて、
図10に示すように、マスク蒸着などにより溝部の傾斜面Sに光反射性の金属層を部分的に形成して光路変換ミラーMを得る。光反射性の金属としては、金又はアルミニウムなどがある。
【0059】
なお、第2配線層22の非形成領域Nからのガス抜き機能を高めたい場合は、第2配線層22の非形成領域Nの幅を溝部40aの開口端の幅よりも広く設定することが好ましい。これにより、光路変換ミラーMの周囲からガスが外部に効率よく排出される。
【0060】
以上により、実施形態の光導波路装置2が製造される。
【0061】
図10に示すように、実施形態の光導波路装置2は、配線基板1とその上に配置された導波路40とを備えている。配線基板1は、その厚み方向の中央部に前述した
図1(a)で説明した両面側に第1配線層20が形成されたコア基板10を備えている。コア基板10の両面側には第1配線層20に到達するビアホールVHが設けられた絶縁層30がそれぞれ形成されている。
【0062】
両面側の絶縁層30の上には、ビアホールVH内のビア導体を介して第1配線層20に接続される第2配線層22がそれぞれ形成されている。
【0063】
コア基板10の上面側には、光導波路形成領域Aと光素子接続領域Bとが画定されている。光導波路形成領域Aの絶縁層30及び第2配線層22の上に光導波路40が形成されている。光導波路40は、第1クラッド層42と、その上に形成されたコア層44と、コア層44を被覆して第1クラッド層42の上に形成された第2クラッド層46とから形成される。
【0064】
図11は、
図10を上側からみた平面図であり、各要素が透視的に示されている。以下、
図10に
図11の平面図を加えて参照すると、光導波路形成領域Aの第1クラッド層42の上面に複数の帯状のコア層44が並んで配置されている。
【0065】
そして、光導波路40の一端側の光路変換部に、傾斜面Sを備えた溝部40aが形成されている。溝部40aは第2クラッド層46及びコア層44を分断して第1クラッド層42の厚みの途中まで形成されている。
【0066】
あるいは、溝部40aは第1クラッド層42の厚み方向の全体を分断するように形成されてもよい。
図11の平面図に示すように、溝部40aは、コア層44の延在方向と直交して配置され、全てのコア層44を一括で分断するように帯状に形成されている。
【0067】
さらに、溝部10の傾斜面Sに光反射性の金属層が形成されて光路変換ミラーMが構築されている。
【0068】
溝部40aの下の領域では、第2配線層22が存在しない非形成領域Nが設けられており、溝部40aは第2配線層22と接触しない状態で形成されている。
【0069】
前述したように、光導波路40を切削して溝部40aを形成する際に、溝部40の切削面に第2配線層22が露出しないようにしている。このため、第2配線層22が変形して第1クラッド層42との界面から剥離することが防止される。
【0070】
また、光導波路形成領域Aの内部領域では、第2配線層22にガス抜き開口部Gが形成されている。これにより、
図7(b)で説明したように、はんだをリフロー加熱する際などの加熱工程で、コア基板10及び絶縁層30からガスが発生するとしても、第2配線層22のガス抜き開口部Gを通して、ガスを外部に排出することができる。第2配線層22の非形成領域Nにおいてもガス抜きの経路として機能する。
【0071】
また、本実施形態の光導波路装置2では、光導波路装置2の他端側の切断面に第1、第2配線層20,22が露出しない構造となっている。第1配線層20の側面が絶縁層30で被覆され、第2配線層22の側面が第1クラッド層42で被覆されている。
【0072】
このように、光導波路装置2の末端を切断する際に、第1、第2配線層20,22が露出しないため、第1、第2配線層20,22が変形して剥離する不具合が解消される。
【0073】
図12には、本実施形態の変形例の光導波路装置2aが示されている。変形例の光導波路装置2aでは、光導波路形成領域Aの第2配線層22に複数の楕円形又は円形のガス抜き開口部Gxが並んで形成されている。このように、第2配線層22に形成するガス抜き開口部は各種の形状を採用することができる。
【0074】
図12において、ガス抜き開口部Gx以外の要素は
図11と同一であるので、同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図11及び
図12の例では、光導波路形成領域Aの第2配線層22は一体的に繋がったベタパターンの内部に複数のガス抜き開口部を形成しているが、ガス抜き開口部によって第2配線層22のパターンが相互に分離されるようにしてもよい。
【0076】
次に、
図10の光導波路装置2に光素子を接続する方法について説明する。
【0077】
図13に示すように、下面に接続端子52を備えた光素子50を用意する。接続端子52は金バンプなどのバンプ電極から形成される。そして、光素子50の接続端子52を接続ホールCH内のはんだ電極24の上に配置し、260℃程度の温度でリフロー加熱する。これにより、光素子50の接続端子52がはんだ電極24に差し込まれて接合される。
【0078】
光素子50が発光素子の場合、下面に発光部50aを備え、発光部50aが光導波路40の光路変換ミラーMに光結合される。あるいは、光素子50が受光素子の場合、受光部50bを備え、受光部50bが光導波路40の光路変換ミラーMに光結合される。
【0079】
さらに、同じく
図13に示すように、ディスペンサなどにより、光素子50と光導波路40の第2クラッド層46との間にアンダーフィル樹脂54を充填する。
【0080】
以上により、
図10の光導波路装置2に光素子50が実装されて光装置として構築される。
【0081】
光素子50が発光素子の場合は、ドライバ素子(不図示)から出力される電気信号が発光素子に供給され、発光素子の発光面50aから下側に光が出射される。
【0082】
発光素子から出射される光は、アンダーフィル樹脂54を透過して光路変換ミラーMに到達する。さらに、光路変換ミラーMで光が反射され、光路が90°変換されてコア層44に入射する。次いで、コア層44に入射した光は、コア層44内で全反射を繰り返して他端側に伝播する。
【0083】
逆に、光素子50が受光素子の場合は、上記した光経路と逆方向に光伝搬され、受光素子の受光面50bに光が入射される。さらに、受光素子は光信号を電気信号に変換し、アンプ素子(不図示)に電気信号が供給される。
【0084】
図13の例では、光導波路40の右端部に光信号を入出力するための光コネクタが装着される。あるいは、
図13の光素子50(発光素子又は受光素子)に対応するように、光導波路40の他端側に受光素子又は発光素子を接続してよい。
【0085】
この場合においても、
図13の光導波路装置2の右端部の切断面と同様に、光導波路40及び配線基板1を切断する際に、切断面に第1、第2配線層20,22が露出せずに絶縁層30及び第1クラッド層42で被覆されるようにすればよい。